説明

タンパク質組成物を乾燥させる方法、乾燥タンパク質組成物、及び乾燥タンパク質を含有する薬学的組成物

本発明は、タンパク質溶液を噴霧乾燥させる方法、及び噴霧乾燥させたタンパク質生成物に関する。また本発明は、このような噴霧乾燥させたタンパク質を含有する薬学的組成物、本発明の噴霧乾燥させたタンパク質を使用する糖尿病及び高血糖症を治療する方法、及び糖尿病及び高血糖症の治療におけるこのような噴霧乾燥させたタンパク質の使用に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、タンパク質溶液を乾燥させる方法及び乾燥させたタンパク質生成物に関する。また本発明は、このような乾燥させたタンパク質を含有する薬学的組成物、本発明の乾燥させたタンパク質を使用する糖尿病及び高血糖症を治療する方法、及び糖尿病及び高血糖症の処置における、このような乾燥させたタンパク質の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
乾燥とは、固体、半固体又は液体から、固形状態になるまで、蒸発により水分を除去する物質移動方法である。可能な乾燥方法は真空乾燥であり、生じた蒸気を真空システムにより除去しつつ、接触伝導又は放射線(又は電磁波)により、熱が供給される。他の技術はドラム乾燥であり、室外に蒸気を引き出す吸引装置及びエネルギーを提供するために、加熱表面が使用される。
フリーズドライ又凍結乾燥は、生化学工業で通常使用されている乾燥方法である。乾燥前に溶媒を凍結させ、ついで昇華させる、すなわち、溶媒の融点以下で固相から直接ガス相にさせる。フリーズドライは、多くの場合、乾燥可能な高圧下で実施され、適切な速度で続行される。タンパク質及びペプチドの変性は凍結中に生じ、品質の乏しいフリーズドライ製品に至るおそれがある。
噴霧乾燥は、化学工業、食品工業、及び生化学及び製薬工業において、広範囲に応用されている。噴霧乾燥は、1940年代の初期より製薬工業に使用されている。予め定められた特性、例えば粒度分布及び形状を有するパウダーを得る手段が提案されているため、薬剤可能の有用な方法であるとされている。さらに、多くの調製プロセスが、噴霧乾燥では一工程で達成可能であり:これらには、カプセル化、錯体形成、及び重合が含まれる。また噴霧乾燥は、熱に敏感な製薬、例えば活性の損失を最小限にしたタンパク質製剤を乾燥するのに便利な方法である。
【0003】
国際特許出願WO00/00176号には、所望しない多量の塩又は他の割形剤が同時に生成することなく、治療剤の実質的に純粋な溶液を噴霧乾燥させることにより得られる、微小粒子処方物が開示されている。塩は安定化効果を有しておらず、実際に、塩の量を減少させると安定化が増すために、塩は所望されないと言われている。インスリン微小粒子は、酸にZn-インスリンを溶解させ、インスリン溶液が例えばpH7以上になるようにアルカリ(NaOH)を添加し、インスリン溶液を噴霧乾燥させることで得られる。添加された塩酸及び水酸化ナトリウムは、塩分と共に、噴霧乾燥された微小粒子処方物中に残る。さらに、得られた処方物は、水に添加されると、噴霧乾燥に送られたタンパク質溶液と同じpHを有するようになるであろう。
【0004】
国際特許公開WO95/24183号は、インスリンの肺送達についての方法及び組成物に関する。インスリンパウダーは、7.5mg/mlの最終固体濃度及び6.7±0.3のpHが付与されるように、賦形剤(マンニトール及び/又はラフィノース)を含有するクエン酸バッファー中でバルク結晶インスリンを混合し、ついで、インスリン溶液を噴霧乾燥させることにより生成される。
国際特許公開WO05/092301号は、インスリンの等電点以下、好ましくは5.4以下のpHで、インスリンの透明溶液を噴霧乾燥させることに関する。ヒトGLP-1は、とりわけ回腸末端部のL-細胞、膵臓及び脳で合成される、プレプログルカゴンに由来する、37のアミノ酸残基ペプチドである。GLP-1は、グルコース代謝及び消化管の分泌及び代謝における調節機能を有する重要な消化管ホルモンである。GLP-1はグルコース依存性方式におけるインスリン分泌を刺激し、インスリンの生合成を刺激し、ベータ細胞の救助を促進し、グルカゴンの分泌、胃内容排出及び食物の取込を低下させる。ヒトGLP-1は、双方ともインスリン分泌ペプチドである、GLP-1(7-37)及びGLP-1(7-36)に加水分解される。
【0005】
治療用のホルモンインスリンは、血糖値に影響を与える小タンパク質である。それは、数百万の人々の糖尿病の薬物療法に、日々使用されている。糖尿病は、長期にわたる合併症に至る、高血糖値(高血糖症)に帰する、インスリン及びインスリン耐性の絶対的又は相対的欠乏症に起因する慢性病である。
【0006】
現在、1型糖尿病及び2型糖尿病の双方の糖尿病の処置は、いわゆる強化インスリン療法に依存する度合いがますます増加している。この治療法によれば、患者は、基礎インスリン必要量を補うための持続型インスリンの1日1又は2回の注射を含む複数回の毎日のインスリン注射に、食事に関連したインスリン必要量を補うための速効型インスリンのボーラス注射が補填された治療を受ける。
【0007】
インスリン分子は、それぞれ21及び30残基を有する2本の鎖A及びBからなる。A鎖は、鎖内ジスルフィド結合により、ヘリックスの一方に結合した短い伸長部分により離間した、2つのらせん状断片から組立られている。2つの付加的なジスルフィド結合が、A鎖とより長いB鎖とを結合させている。生物学的に活性な形態では、インスリンはモノマーとして存在しており、B鎖は2つの伸長した部分の側面に配された中心ヘリックス領域を含む。亜鉛等の二価イオンの存在下、モノマーはヘキサマーに組立られ、ここで、それぞれ2つの中心亜鉛イオンは、3つのヒスチジン残基に配位している。
インスリンは、十分に順序付けされたクロス-βアセンブリに至らしめる、フィブリル化、ミスフォールディングプロセスに敏感である。β細胞におけるフィブリル化の保護は、亜鉛ヘキサマー内の敏感な分子の金属イオン封鎖により提供される。インスリンの噴霧乾燥中にフィブリル化が生じた場合は、ノズルが詰まり、乾燥プロセスが中断されるおそれがある。
噴霧乾燥用ノズルの詰まりを回避するための他の重要な要因は、乾燥されるタンパク質が適切に溶液中に溶解していることである。送られる溶液に分散しているタンパク質により、装置の詰まりに至るおそれがある。
さらに、乾燥させたタンパク質のpHは非常に重要である。多くの場合、特定のpH、例えば生理的pHに匹敵するpHを有する乾燥生成物を得ることが所望されている。
【発明の概要】
【0008】
本発明は、タンパク質溶液を乾燥させる方法に関し、ここで
a)賦形剤を場合によっては含有する水とタンパク質を混合し、タンパク質溶液がアルカリ性になるように、揮発性塩基、非揮発性塩基、場合によっては非揮発性酸を用いて、pHを調節することによって、タンパク質溶液を得、
b)タンパク質溶液を乾燥させる。
さらに本発明は、上述した方法により得られる乾燥させたタンパク質、乾燥させたタンパク質を含有する薬学的組成物、及び糖尿病を使用するための方法に関する。
【0009】
(定義)
ここに記載するような「タンパク質溶液」とは、酸を使用することなく、タンパク質の等電点以上のpH値で溶解する、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体又はグルカゴンの溶液を意味する。
「揮発性塩基」とは、室温で65Pa以上の蒸気圧を有する塩基、又は室温で65Pa以上の蒸気圧を有する塩基を含む水性共沸混合物等、加熱及び/又は減圧時に、ある程度蒸発するであろう塩基を意味する。
ここに記載するような「非揮発性塩基」とは、室温で65Pa以下の蒸気圧を有する塩基等、加熱時に蒸発しない又は一部のみが蒸発する塩基を意味する。
【0010】
ここに記載するような「非揮発性酸」とは、リン酸等、室温で65Pa以下の蒸気圧を有する酸等、加熱時に蒸発しない又は一部のみが蒸発する酸を意味する。
ここに記載するような「強酸」とは、塩酸及び硫酸等、1以下のpKa値を有する酸を意味する。
ここで使用されるような「インスリン」とは、CysA7とCysB7との間、及びCysA20とCysB19との間にジスルフィド架橋、及びCysA6とCysA11との間に内部ジスルフィド架橋を有するヒトインスリン、ブタインスリン又はウシインスリン、又はそのインスリンアナログ又は誘導体を意味する。
ここで使用されるような「GLP-1」とは、グルカゴン様ペプチド-1を意味する。ヒトGLP-1は37のアミノ酸残基のペプチドである。ヒトGLP-1は、双方ともインスリン分泌ペプチドである、GLP-1(7-37)及びGLP-1(7-36)に加水分解される。
【0011】
「タンパク質溶液/インスリン溶液/GLP-1溶液/グルカゴン溶液のpH」とは、揮発性及び非揮発性塩基で調節した後、またタンパク質溶液を噴霧乾燥する前の、タンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴン溶液のpHを意味する。
「乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴンのpH」とは、少なくとも20mgの噴霧乾燥した/乾燥させたタンパク質と0.5mlの脱塩水を混合し、脱塩水のml当たり少なくとも40mg濃度のタンパク質/インスリン/GLP-1が得られるようにし、pHを測定した場合の、乾燥した/噴霧乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴンのpHを意味する。乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1のpHは、約300mgまでの噴霧乾燥した/乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1と0.5mlの脱塩水を混合し、pHを測定することにより決定することができる。例えば、pHは、約20〜約250mgの噴霧乾燥した/乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴンと0.5mlの脱塩水を混合し、約20〜約200mgの噴霧乾燥した/乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴンと0.5mlの脱塩水を混合し、約20〜約150mgの噴霧乾燥した/乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴンと0.5mlの脱塩水を混合し、又は約20〜約100mgの噴霧乾燥した/乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴンと0.5mlの脱塩水を混合し、pHを測定することにより決定される。
【0012】
「乾燥させたタンパク質の標的pH」とは、乾燥させたタンパク質を得るのに望ましい、乾燥させたタンパク質/インスリン/GLP-1/グルカゴンのpHを意味し、例えば、乾燥させたタンパク質の化学的安定性が最適であるか、又は乾燥させたタンパク質が生理的pHに匹敵するpHである。
「タンパク質溶液の標的pH」とは、乾燥した場合に、タンパク質溶液/インスリン溶液/GLP-1溶液/グルカゴン溶液にとって望ましいであろうpHを意味し、例えば高溶解性又は低凝集性とするのに、溶解したタンパク質にとっては最適なpHである。
【0013】
ここで使用される場合「アナログ」とは、天然に生じるインスリン中に生じる少なくとも一つのアミノ酸残基を欠失させ、及び/又は交換することにより、及び/又は少なくとも一つのアミノ酸残基を付加することによって、タンパク質の構造から形式的には誘導することができる分子構造を有するポリペプチドを意味する。付加された及び/又は交換されたアミノ酸残基は、コード可能なアミノ酸残基又は他の天然に生じる残基又は純粋に合成のアミノ酸残基の何れかとすることができる。インスリンアナログは、B鎖の28位が、天然Pro残基から、Asp、Lys又はIleの一つに修飾され得るものであってよい。他の態様において、インスリンのB29位のLysは、Pro又はGluに修飾されている。また、A21位のAsnは、Ala、Gln、Glu、Gly、His、Ile、Leu、Met、Ser、Thr、Trp、Tyr又はVal、特にGly、Ala、Ser、又はThr、好ましくはGlyに修飾されてもよい。さらに、B3位のAsnはLys、Thr、Ser、Gln、Glu又はAspに修飾されてよい。インスリンアナログのさらなる具体例は、des(B30)ヒトインスリン;des(B30)ヒトインスリンアナログ;PheB1が欠失しているインスリンアナログ;A鎖及び/又はB鎖がN-末端伸長を有しているインスリンアナログ、及びA鎖及び/又はB鎖がC-末端伸長を有しているインスリンアナログである。例えば、1又は2のArgが、B1位に付加されていてもよい。
【0014】
このGLP-1ペプチドのアナログを記載するために、単純なシステムが使用される。よって、例えば[Gly]GLP-1(7-37)は、Glyで8位において自然に生じたアミノ酸残基(Ala)を置換することにより、GLP-1(7-37)から形式的に誘導されたGLP-1(7-37)のアナログを表す。GLP-1アナログは、GLP-1(7-37)の34位にある自然に生じたLysが、Argで置換されているものであってよい。光学異性体が記載されていない全てのアミノ酸は、L-異性体を意味していると理解される。
【0015】
本発明の態様においては、最大17のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大15のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大10のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大8のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大7のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大6のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大5のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大4のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大3のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、最大2のアミノ酸が修飾される。本発明の態様においては、1のアミノ酸が修飾される。
【0016】
「desB30インスリン」、「desB30ヒトインスリン」とは、B30アミノ酸残基を欠くインスリン又はそのアナログを意味する。
「親インスリン」とは、天然に生じるインスリン、例えばヒトインスリン又はブタインスリンを意味する。また親インスリンはインスリンアナログであってもよい。
ここで使用される場合「誘導体」とは、例えばタンパク質骨格の一又は複数の一に置換基を導入することにより、又はタンパク質のアミノ酸残基の基を酸化又は還元することにより、又は遊離のアミノ基又はヒドロキシ基をアシル化することにより、化学的に修飾された天然に生じるタンパク質又はそのアナログを意味する。
【発明を実施するための形態】
【0017】
本発明の方法を用いることで、乾燥されるタンパク質溶液のpHとは異なるpHを有する、乾燥させたタンパク質パウダーを得ることができる。
本発明は、タンパク質溶液を乾燥させる方法に関し、ここで
a)タンパク質溶液を、賦形剤を場合によっては含有する水とタンパク質とを混合することで得、アルカリ性になるように、揮発性塩基、非揮発性塩基、場合によっては非揮発性酸を用いて、タンパク質溶液のpHを調節し、
b)タンパク質溶液を乾燥させる;
ものである。
【0018】
本発明の一態様において、本方法は:
a)乾燥させたタンパク質の標的pHの選択、
b)タンパク質溶液の標的pHの選択、
c)水相の提供、
d)タンパク質の添加、
e)場合によっては賦形剤の添加、
f)非揮発性塩基、及び場合によっては非揮発性酸を用いた、乾燥させたタンパク質の標的pHへのpHの調節、
g)揮発性塩基を用いた、乾燥されるタンパク質溶液の標的pHへのpHの調節、
h)タンパク質溶液の噴霧乾燥、
を含み、
ここで、工程d、e、f及びgは、連続的に攪拌しつつ、任意の順序で実施することができる。
【0019】
一態様において、タンパク質溶液は、揮発性塩基及び非揮発性塩基で調節される。本方法の一態様において、タンパク質溶液は、約8℃以下、約6℃以下、約5℃以下、約4℃以下、約3℃以下、約2℃以下、又は約1℃以下の温度で得られる。
一態様において、水の凝固点は低下し、タンパク質溶液は0℃以下の温度で得られる。
【0020】
一態様において、タンパク質溶液は、約7.4、約7.6、約7.8、約8.0、約8.2、約8.4又は約8.6以上のpH又は標的pHを有する。
タンパク質溶液のpHが約7.6〜約11.0、約7.6〜約10.5、約7.8〜約11.0、約7.8〜約10.5、約8.0〜約11.0、約8.0〜約10.5、約8.2〜約11.0、約8.4〜約11.0、約8.6〜約10.0、約8.8〜約10.0、約9.0〜約10.0、又は約9.2〜約10.0である場合、タンパク質のフィブリル化傾向はあまり顕著ではない。
【0021】
本発明の一態様において、タンパク質は水溶液に添加される。水溶液は純水であってよく、また賦形剤又はアルカリを含有していてもよい。
本発明の一態様において、タンパク質溶液のpHは、非揮発性塩基を含有するアルカリ溶液で調節される。非揮発性塩基は、アルカリ金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属の水酸化物、及びアミノ酸、又はその組合せからなる群から選択可能である。例えば、pHは水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、又は任意のその組合せを用いて調節可能である。
【0022】
本発明の一態様において、タンパク質溶液のpHは、揮発性塩基を含有するアルカリ溶液で調節される。揮発性塩基は、水酸化アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、第2級アミン類、第3級アミン類、アリールアミン類、脂肪族アミン類又は重炭酸アンモニウム又は組合せからなる群から選択可能である。例えば、揮発性塩基は、重炭酸塩、炭酸塩、アンモニア、ヒドラジン、又は有機塩基、例えば低級脂肪族アミン類、特にトリメチルアミン、トリエチルアミン、ジエタノールアミン類、トリエタノールアミン類、及びそれらの塩であってよい。さらに、揮発性塩基は、水酸化アンモニウム、エチルアミン又はメチルアミン又はそれらの組合せであってよい。
インスリンを含有する水溶液に水酸化アンモニウムを添加すると、タンパク質、例えばインスリンはより素早く溶解するであろう。
【0023】
本発明の一態様において、タンパク質溶液のpHは、揮発性塩基及び非揮発性塩基を含有するアルカリ溶液で調節される。一態様において、タンパク質溶液のpHは、乾燥させたタンパク質についての標的pHには水酸化ナトリウムで、噴霧乾燥されるタンパク質溶液についての選択されたpHを得るには水酸化アンモニウムを用いて調節される。
【0024】
本発明の一態様において、揮発性塩基は、少なくとも約0.5pH単位、少なくとも約0.7pH単位、又は少なくとも約0.9pH単位、又は少なくとも約1.1pH単位、又は少なくとも約1.3pH単位、又は少なくとも約1.5pH単位でタンパク質溶液のpHを調節するために使用される。
【0025】
溶液において、インスリンの自己会合パターンは、タンパク質濃度、金属イオン、pH、イオン強度、及び溶媒組成の複合機能である。インスリン、亜鉛イオン、塩及びフェノール化合物を含有する、現在使用の溶液のいくつかについて、以下の平衡を考慮しなければならない:
6In ⇔ 3In
3In+ 2Zn2+H ⇔ In(T
⇔ T⇔ R
ここで、Inはインスリンであり、Inは二量体インスリンであり、Inは六量体インスリンであり、TはT立体構造中の六量体インスリンであり、TはT立体構造中の六量体インスリンであり、Rは六量体R状態での六量体インスリンである。
インスリンの公知の分解パターンには、a)線維形成;b)A18、A21及びB3でのアミド分解;c)アミノ基転移又はシッフ塩基形成を介した二量体形成;d)ジスルフィド交換反応が含まれる。
【0026】
Brange (Stability of Insulin, Kluwer Academic Press, 1994)によれば、これら分解反応のそれぞれは、六量体状態よりも単量体状態である方が、かなり早く進行する。よって、インスリン調製物を安定化させる最も効果的な手段は、上述した平衡をできる限り右側に押すことによる。質量作用のこの一般的効果に加えて、選択された残基の反応性は、T→R立体構造変化におけるそれらの直接的関与に依存して、さらに修飾される。例えば、B3Asnの反応性はT-状態にあるよりもR-状態(残基がアルファ-ヘリックスに存在する場合)にある方がかなり低い。2つの亜鉛インスリン六量体のT、T及びR立体構造の間の相互変換は、T、T及びR型に結合するリガンドにより修飾される。塩化物等のアニオンは、T及びRの金属イオンの第4配位位置に対する親和性を有し、さらにフェノール等の防腐剤はT及びR型の表面近傍に位置する疎水性ポケットに結合している(Derewenda, Nature and, Brzovic, Biochemistry 33, 130557,1994)。
よって、溶液中のインスリンのR立体構造に好ましい条件は、インスリンの変性を回避するための乾燥方法中、及び化学的安定性を最大にするための棚保管中の双方に有利である。
【0027】
本発明の一態様において、タンパク質溶液はフェノールを含有する。一態様において、タンパク質溶液は、タンパク質1モル当たり少なくとも約2モルのフェノール、又はタンパク質1モル当たり少なくとも約3モルのフェノール、又はタンパク質1モル当たり少なくとも約4モルのフェノールを含有する。一態様において、タンパク質溶液は、インスリン1モル当たり約4モルのフェノールを含有する。一態様において、タンパク質溶液は、インスリン1モル当たり約4モルのフェノールを含有し、タンパク質溶液は亜鉛を含有する。タンパク質溶液がインスリンを含有する場合、フェノールはインスリン六量体を安定化させる。
【0028】
本発明の一対応において、タンパク質は、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、及びGLP-1誘導体、グルカゴン、及び/又は任意のそれらの組合せからなる群から選択される。
【0029】
本発明の一態様において、タンパク質溶液は、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体からなる群から選択されるタンパク質を含有し、溶液は亜鉛をさらに含有する。インスリンを含有するタンパク質溶液の亜鉛含有量はインスリン六量体当たり約2〜約4亜鉛イオンの範囲とすることができ、又は亜鉛含有量はインスリン六量体当たり約2.1〜約3亜鉛イオンの範囲とすることができ、又は亜鉛含有量はインスリン六量体当たり約2.2〜約2.7亜鉛イオンの範囲とすることができる。インスリンを含有するタンパク質溶液の亜鉛含有量はインスリン六量体当たり約2.3亜鉛イオンとすることができる。
【0030】
本発明の一態様において、タンパク質溶液は、バッファー、洗浄剤、安定剤、プロテアーゼインヒビター、香料、担体、吸収プロタクト剤(absorption protacting agent)、増量剤、又は流動特性を改善する薬剤又は浸透促進剤を含有する。
本発明の一態様において、タンパク質溶液はグリシルグリシンを含有する。グリシルグリシンがタンパク質溶液に添加されている場合、タンパク質はさらに素早く溶解する。一態様において、グリシルグリシンは、インスリンを含有する水溶液に添加される。溶液中のグリシルグリシンの濃度は、約4mM〜約200mMの間であるであろう。
【0031】
本発明の一態様において、乾燥させたタンパク質の標的pHで、タンパク質溶液を乾燥又は噴霧乾燥する方法が決定される。乾燥又は噴霧乾燥されるタンパク質溶液のpHは、乾燥させたタンパク質の標的pH以上である。タンパク質溶液のpHは、乾燥させたタンパク質の標的pH以上、少なくとも約0.5pH単位であってよい。タンパク質溶液のpHは、噴霧乾燥させたタンパク質のpH以上、少なくとも約0.7、少なくとも約0.9、少なくとも約1.1、少なくとも約1.3、又は少なくとも約1.5、又は少なくとも約2.0、又は少なくとも約2.5pH単位であってよい。
【0032】
本発明の一態様において、噴霧乾燥させたタンパク質のpH又は標的pHは、約6.0〜約8.5、約6.2〜約8.4、約6.4〜約8.3、約6.6〜約8.2、約6.8〜約8.1、約7.0〜約8.0、約7.2〜約7.9、約7.4〜約7.8、又は約7.6〜約7.7である。
【0033】
本発明の一態様において、タンパク質溶液は、約10%以下の水分含有量となるように乾燥又は噴霧乾燥される。水分含有量は、実験部分で記載されているように、乾燥テスト(重量測定)において算出して/損失を測定して、約6%以下、約4%以下、約2%以下、又は約1%以下であってよい。
【0034】
本発明の一態様において、乾燥又は噴霧乾燥されるタンパク質は、AspB28ヒトインスリン;LysB28ProB29ヒトインスリン、及びLysB3GluB29ヒトインスリンからなる群から選択される。
一態様において、本発明は、本発明の方法により得られる乾燥させたタンパク質に関する。
一態様において、本発明は、実施例に記載されるような乾燥させたタンパク質に関する。
【0035】
一態様において、本発明は、治療的有効量の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン、及び/又は本発明のそれらの任意の組合せを含有する薬学的組成物に関し、ここで該組成物により、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態の処置を提供することができる。
一態様において、本発明は、治療的有効量の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン、及び/又はそれらの任意の組合せを、製薬的に許容可能な担体及び/又は製薬的に許容可能な添加剤と共に含有する薬学的組成物に関し、ここで該組成物により、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態の処置を提供することができる。
【0036】
本発明の一態様において、本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン及び/又はそれらの任意の組合せを含有する薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を治療する方法を提供する。
本発明の一態様において、本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン及び/又はそれらの任意の組合せを、場合によっては製薬的に許容可能な担体及び/又は製薬的に許容可能な添加剤と共に含有する薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を治療する方法を提供する。
【0037】
本発明の一態様において、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を治療する薬学的組成物を提供し、該組成物は、治療的有効量の本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴンを、1又は2の本発明の噴霧乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴンと混合して、場合によっては製薬的に許容可能な担体及び/又は添加剤と共に含有する。
【0038】
本発明の一態様において、本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴンを、1又は2の本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴンと混合して、場合によっては製薬的に許容可能な担体及び/又は製薬的に許容可能な添加剤と共に含有する薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態を治療する方法を提供する。
【0039】
本発明の一態様は、治療的有効量の本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン及び/又はそれらの任意の組合せを、場合によっては製薬的に許容可能な担体及び/又は製薬的に許容可能な添加剤と共に含有する薬学的組成物で、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態の肺処置用に提供可能な薬学的組成物に関する。
【0040】
本発明の一態様は、このような処置を必要とする患者における、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態の肺処置用の薬学的組成物の用途に関し、該薬学的組成物は、治療的有効量の本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン及び/又はそれらの任意の組合せを、場合によっては急速に作用を開始するインスリン又はインスリンアナログと混合して、製薬的に許容可能な担体及び/又は添加剤と共に含有する。
【0041】
本発明の一態様において、1型糖尿病、2型糖尿病、及び高血糖症に起因する他の状態の処置に使用される薬学的組成物を製造する方法を提供し、該組成物は肺に使用され、治療的有効量の本発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン及び/又はそれらの任意の組合せを、場合によっては急速に作用を開始するインスリン又はインスリンアナログと混合して、製薬的に許容可能な担体及び/又は製薬的に許容可能な添加剤と共に含有する。
【0042】
(インスリンの生成)
インスリン又はその前駆体は、よく知られたペプチド合成、又は適切に形質転換された微生物におけるよく知られた組換え生成のいずれかにより生成させることができる。例えば、インスリンは、ポリペプチドをコードするDNA配列を含有し、ペプチドの発現が可能な条件下、適切な栄養培地でポリペプチドを発現可能な宿主細胞を培養し、その後、得られたペプチドを培養体から回収することを含む方法により生成することができる。
本発明の製薬用処方物に使用されるインスリン誘導体を調製する場合、置換用の出発生成物、親インスリン又はインスリンアナログ又はその前駆体は、よく知られたペプチド合成、又は適切に形質転換された微生物におけるよく知られた組換え生成のいずれかにより生成させることができる。例えば、インスリン出発生成物は、ポリペプチドをコードするDNA配列を含有し、ペプチドの発現が可能な条件下、適切な栄養培地でポリペプチドを発現可能な宿主細胞を培養し、その後、得られたペプチドを培養体から回収することを含む方法により生成することができる。国際特許出願WO2005/012347号が参照される。
【0043】
(薬学的組成物)
この発明の乾燥させたタンパク質は、例えば皮下的、経口的、経鼻的又は肺的に投与することができる。
皮下投与用として、乾燥したインスリンは、公知のインスリンの処方物と同じように処方される。さらに、皮下投与用として、この発明の乾燥したインスリンは、公知のインスリンの投与と同じように投与され、一般的に、医者はこの手順に通じている。
【0044】
この発明の乾燥したインスリンは、循環インスリンレベルを増加させ、及び/又は循環グルコースレベルを低下させるための用量効果的方式で、吸入により投与されてよい。このような投与は、糖尿病又は高血糖症等の疾患を治療するのに効果的である。インスリンの効果的な投与を達成するには、この発明の乾燥したインスリンを、約0.5μg/kg〜約50μg/kg以上の吸入量で投与することが必要である。治療的有効量は、インスリンレベル、血糖値、患者の身体コンディション、患者の肺の状態等を含む要因を考慮し、博識な実施者により決定することができる。
【0045】
本発明において、この発明の乾燥したインスリンは、その素早い吸収を達成するために、吸入により送達されてもよい。吸入による投与は、インスリンの皮下投与に匹敵する薬物動態をもたらすことができる。この発明の乾燥したインスリンを吸入することで、循環インスリンレベルの素早い上昇、続いて血糖値の素早い低下に至る。同様の粒子径及び同様の肺沈着レベルで比較される場合、典型的には、種々の吸入装置により、同様の薬物動態が提供される。
【0046】
本発明において、この発明の乾燥したインスリンは、吸入による治療剤の投与において、当該技術で公知の任意の様々な吸入装置により送達され得る。これらの装置には、定量噴霧式吸入器、ネブライザー、乾燥パウダー発生器、スプレー等が含まれる。この発明の乾燥したインスリンは、乾燥パウダー吸入器又はスプレーにより送達される。この発明の乾燥したインスリンを投与するための吸入装置には、いくつかの所望される特徴がある。例えば、吸入装置による送達には、有利には信頼性、再現性及び正確性がある。良好な呼吸性のためには、吸入装置は、小粒子、例えば約10μm未満、例えば約1-5μm未満の粒子を送達すべきである。この発明の実施に適した商業的に入手可能な吸入装置のいくつかの特定の例は、TurbohalerTM(Astra)、Rotahaler(登録商標)(Glaxo)、Diskus(登録商標)(Glaxo)、SpirosTM吸入器(Dura)、吸入治療用に市販されている装置、AERxTM(Aradigm)、Ultravent(登録商標)ネブライザー(Mallinckrodt)、Acorn II(登録商標)ネブライザー(Marquest Medical Products)、Ventolin(登録商標)定量噴霧式吸入器(Glaxo)、Spinhaler(登録商標)パウダー吸入器(Fisons)等である。
【0047】
当業者が認識しているように、本発明の乾燥させたタンパク質の処方、送達される処方物の量、及び単一用量の投与の持続時間は、使用される吸入装置の種類に依存している。ネブライザー等、いくつかのエアゾール送達システムにとって、投与頻度及びシステムが稼働している時間の長さは、主として、エアゾール中のインスリンコンジュゲートの濃度に依存するであろう。例えば、投与時間が短いと、ネブライザー溶液においては、より高い濃度のインスリンコンジュゲートを使用することができる。定量噴霧式吸入器等の装置は、高濃度のエアゾールを生成することができ、所望の量のインスリンコンジュゲートの送達を、より短い時間で作動させることができる。パウダー吸入器等の装置は、付与された充填量の薬剤が装置から排出されるまで、活性剤を送達させる。この種の吸入器において、付与されたパウダー量における、この発明の乾燥したインスリンの量は、一回の投与で送達される用量を決定する。
【0048】
吸入装置で送達される処方物におけるこの発明の乾燥したインスリンの粒子径は、肺、気道下部及び肺胞内においてなされる、インスリンの能力に関して重要である。この発明の乾燥したインスリンは、送達されるインスリンコンジュゲートの少なくとも約10%、例えば約10%〜20%、又はそれ以上が肺に沈着するように処方される。口呼吸するヒトにとって、肺沈着の最大効率は、約2μm〜約3μmの粒子径で得られることが知られている。粒子径が約5μm以上になると、肺沈着はかなり低減する。粒子径が約1μm以下であると、肺沈着の低下が引き起こされ、治療に有効な十分な量の粒子を送達することが困難になる。よって、吸入器により送達される乾燥させたタンパク質の粒子は、約10μm未満、例えば約1μm〜5μmの範囲の粒子径を有する。乾燥させたタンパク質の処方は、選択された吸入装置において所望される粒子径が生じるように選択される。
【0049】
乾燥パウダーとしての投与に有利には、この発明の乾燥させたタンパク質は、約10μm未満、例えば約1μm〜約5μmの粒子径を有する微粒子型に調製される。粒子径は、患者の肺の肺胞に送達するのに効果的なものである。乾燥パウダーは、多くの粒子が所望する範囲のサイズを有するように生成された粒子から、ほとんどなる。有利には、乾燥パウダーの少なくとも50%が、約10μm未満の直径を有する粒子から作製される。
【0050】
粒子は、通常、容器中で乾燥パウダー処方物から分離され、ついで運搬気流を介して患者の肺に移送される。典型的には、現在の乾燥パウダー吸入器において、固形物を破壊する力は、単に、患者の吸入により提供される。他の種類の吸入器においては、患者の吸入により生じる気流が、粒子を凝集させない推進モーターを駆動させる。
【0051】
乾燥パウダー吸入器から投与されるこの発明の乾燥させたタンパク質の処方物は、典型的には、乾燥させたタンパク質を含有する微細に分割された乾燥パウダーを含むが、パウダーは、さらに増量剤、担体、賦形剤、他の添加剤等をさらに含むことができる。例えば特定のパウダー吸入器から送達させるのに必要なパウダーを希釈するため、処方のプロセシングを容易にするため、処方物に有利なパウダー性を付与するため、吸入装置からのパウダーの分散を容易にするため、処方物を安定させるため(例えば、酸化防止剤又はバッファー)、処方物に味を付与するため等に、添加剤をインスリンコンジュゲートの乾燥パウダー処方物に含有させることができる。有利には、添加剤は患者の気道に悪影響を与えないものである。乾燥させたタンパク質は分子レベルで添加剤と混合することができ、又は固体状処方物は添加剤の粒子と混合、又はこれでコーティングされて、タンパク質コンジュゲートの粒子を含有することができる。典型的な添加剤には、単糖類、二糖類、及び多糖類;糖アルコール類及び他のポリオール類、例えばラクトース、グルコース、ラフィノース、メレジトース、ラクチトール(lactitol)、マルチトール、トレハロース、スクロース、マンニトール、デンプン、又はそれらの組合せ;界面活性剤、例えばソルビトール類、ジホスファチジルコリン、又はレシチン等が含まれる。典型的には、添加剤、例えば増量剤は、上述した目的に対して有効な量、多くの場合は処方物の重量に対して約50%〜約90%の量で存在している。インスリンアナログタンパク質等の、タンパク質の処方物について、当該技術で公知の添加剤も、本処方物に含めることができる。
【0052】
タンパク質溶液は、場合によっては、呼吸器官及び肺投与に適した製薬用の担体又は賦形剤と組合せてもよい。このような担体は、患者に送達されるパウダー中のインスリン濃度を低下させることが所望されている場合は、単に増量剤として供給されてもよいが、インスリン組成物の安定性を高め、インスリンのさらに効率的で再生可能な送達を提供するのに、パウダー分散装置内におけるパウダーの分散性を改善し、インスリンの操作性、トリ製造及びパウダー充填が容易になるような流動性及びコンシステンシーを改善するために供給されてもよい。
【0053】
適切な担体物質は、非晶質パウダー、結晶質パウダー、又は非晶質及び結晶質パウダーの組合せの形態であってもよい。適切な物質には、炭水化物、例えば単糖類、特にフルクトース、ガラクトース、グルコース、D-マンノース、ソルボース等;二糖類、例えばラクトース、トレハロース、セロビオース等;シクロデキストリン類、例えば2-ヒドロキシプロピル-シクロデキストリン;及び多糖類、例えばラフィノース、マルトデキストリン類、デキストラン類等;(b)アミノ酸、例えばグリシン、アルギニン、アスパラギン酸、グルタミン酸、システイン、リジン等;(c)有機酸と塩基から調製される有機塩、例えばクエン酸ナトリウム、アスコルビン酸ナトリウム、グルコン酸マグネシウム、グルコン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン等;(d)ペプチド及びタンパク質、例えばアスパルテーム、ヒト血清アルブミン、ゼラチン等;(e)アルジトール類、例えばマンニトール、キシリトール等は含まれる。担体の好ましい群には、ラクトース、トレハロース、ラフィノース、マルトデキストリン、グリシン、クエン酸ナトリウム、塩酸トロメタミン、ヒト血清アルブミン、及びマンニトール含まれる。
このような担体物質は、噴霧乾燥前に、すなわち噴霧乾燥用に調製されるタンパク質溶液又は水溶液に担体物質を添加することにより、インスリンと組合せられてもよい。そのように、担体物質はタンパク質粒子の一部として、又は同時に形成されるであろう。
【0054】
典型的には、担体がタンパク質と共に噴霧乾燥により形成される場合、タンパク質は5%〜95%、好ましくは20%〜80%の範囲の重量パーセントで、個々の粒子に存在しているであろう。粒子の残りは、主として担体物質(典型的には、重量で5%〜95%、通常は20%〜80%)であるが、上述した他の成分を含む、バッファー(類)を含有していてもよい。
【0055】
また、担体は、乾燥パウダー形態に別々に調製され、混合することにより、乾燥パウダータンパク質を組合せてもよい。別々に調製されたパウダー状担体は、通常、結晶質(水分吸収を回避するため)であるが、いくつかのケースでは、非晶質、又は結晶質と非晶質の混合であってもよい。担体粒子のサイズは、典型的には25m〜100mの範囲である、インスリンパウダーの流動性が改善されるように選択されてよい。このサイズ範囲の担体粒子は、一般的には、肺の肺胞領域に浸透せず、多くの場合、吸入前に、送達装置においてインスリンから分離するであろう。よって、肺の肺胞領域に浸透する粒子は、本質的にインスリンとバッファーとからなるであろう。好ましい担体物質は、上述した範囲のサイズを有する結晶性マンニトールである。
【0056】
本発明の乾燥インスリンパウダーは、他の活性成分と組合せられてもよい。例えば、糖尿病の処置性を改善するために、インスリンパウダーに、少量のアミリン又は活性アミリンアナログを組合せることが望ましい場合もある。アミリンは、正常な(糖尿病ではない)個人において、膵臓0-細胞からインスリンと共に分泌されるホルモンである。アミリンはインビボにおいてインスリン活性を調節すると考えられており、インスリンとアミリンの同時投与により、血中グルコースの制御を改善することが提案されている。本発明の組成物において、インスリンと乾燥パウダーアミリンとを組合せることにより、このような同時投与を達成するための、特に簡便な生成物が提供されるであろう。アミリンは、0.1重量%〜10重量%(一服中のインスリンの全重量に基づく)、好ましくは0.5重量%〜2.5重量%のインスリンと組合せてよい。アミリンは商業的供給者、例えばAmylin Corporation, San Diego, Californiaから入手され、本発明の組成物に容易に処方することができる。例えば、アミリンは、インスリン、場合によっては担体、パウダー状生成物を生成するために乾燥された溶液スプレーと共に、水溶液又は他の適切な溶液に溶解されていてもよい。
【0057】
この発明の乾燥させたタンパク質を含むスプレーは、タンパク質コンジュゲートの懸濁液又は溶液を、加圧下にて、強いてノズルを通過させることにより製造することができる。ノズルサイズ及び構造、適用圧力、及び液体供給速度は、所望する出量及び粒子径が達成されるように選択することができる。例えば、キャピラリー又はノズルフィード部に接続した電場により、電気スプレーを製造することができる。有利には、スプレーにより送達されるインスリンコンジュゲートの粒子は、約10μm未満、例えば約1μm〜約5μmの範囲の粒子径を有する。
【0058】
スプレーを用いて使用するのに適したこの発明の乾燥したインスリンの処方物は、典型的には、溶液1ml当たり、約1mg〜約20mgのタンパク質コンジュゲート濃度で、水溶液中にタンパク質を含有している。処方物は、賦形剤、バッファー、等張剤、防腐剤、界面活性剤、例えば亜鉛等の薬剤を含有することができる。また処方物は、賦形剤、又は結晶を安定化させるための薬剤、例えばバッファー、還元剤、バルクタンパク質、又は炭水化物をさらに含有可能である。乾燥させたタンパク質コンジュゲートの処方に有用なバルクタンパク質には、アルブミン、プロタミン等が含まれる。タンパク質コンジュゲートの処方に有用な典型的な炭水化物には、スクロース、マンニトール、ラクトース、トレハロース、グルコース等が含まれる。また結晶処方物は、エアゾールの形成において、溶液の噴霧化により生じるインスリンコンジュゲートの表面誘起凝集を低減又は防止可能な界面活性剤を、さらに含有することができる。種々の従来からの界面活性剤、例えばポリオキシエチレン脂肪酸エステル及びアルコール類、及びポリオキシエチレンソルビトール脂肪酸エステルを使用することができる。量は、一般的には、処方物の重量に対して約0.001〜約4%の範囲である。
【0059】
また、本発明の乾燥させたタンパク質を含有する薬学的組成物は、経鼻的に投与されてよい。薬学的組成物は、液状組成物、乾燥組成物又はゲルとして投与されてもよい。鼻を介した薬剤送達にとって、鼻腔への沈着を保証し、粒子が気道内及び肺領域にさらに運ばれるのを回避するために、結晶は10μm以上であってよい。サイズの上限についての理解は明らかではないが、多くの理由で、粒子が効能を示さず、局所刺激に至らしめるおそれのある粒子サイズ以上が、おそらく上限であろう。
【0060】
本発明の乾燥させたタンパク質を含有する薬学的組成物は、このような処置を必要とする患者に、非経口的に投与されてもよい。非経口投与は、シリンジ、場合によってはペン様シリンジにより、皮下、筋肉内又は静脈内注射で実施されてよい。また非経口投与は、注入ポンプにより実施することもできる。
【0061】
本発明の乾燥させたタンパク質の注射用組成物は、所望する最終生成物が付与されるのに適切なように、成分を溶解及び混合することを含む、製薬工業の従来からの技術を使用して調製することができる。よって、一手順において、本発明のインスリンを含有する結晶は、調製される組成物の最終容量よりも幾分少ない量の水に溶解される。必要に応じて、等張剤、防腐剤及びバッファーが添加され、必要ならば、塩酸等の酸、又は水酸化ナトリウム水等の塩基を使用して、溶液のpH値が調節される。最後に、溶液の容量は、所望の濃度の成分が付与されるように、水を用いて調節される。
【0062】
本発明のさらなる態様において、バッファーは酢酸ナトリウム、炭酸ナトリウム、シタラート、グリシルグリシン、ヒスチジン、グリシン、リジン、アルギニン、リン酸二水素ナトリウム、リン酸水素二ナトリウム、リン酸ナトリウム、及びトリス(ヒドロキシメチル)-アミノメタン、ビシン(bicine)、トリシン、リンゴ酸、スクシナート、マレイン酸、フマル酸、酒石酸、アスパラギン酸、又はそれらの混合物からなる群から選択される。これらの特定のバッファーのそれぞれ一つは、本発明の別の態様を構成する。
【0063】
本発明のさらなる態様において、処方物は、フェノール、o-クレゾール、m-クレゾール、p-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル、p-ヒドロキシ安息香酸プロピル、2-フェノキシエタノール、p-ヒドロキシ安息香酸ブチル、2-フェニルエタノール、ベンジルアルコール、クロロブタノール、及びチオメロサル(thiomerosal)、ブロノポール、安息香酸、イミド尿素、クロロヘキシジン、デヒドロ酢酸ナトリウム、クロロクレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸エチル、塩化ベンゼトニウム、クロルフェネシン(chlorphenesine)(3p-クロルフェノキシプロパン-1,2-ジオール)又はそれらの混合物からなる群から選択され得る、製薬的に許容可能な防腐剤をさらに含有する。本発明のさらなる態様において、防腐剤は、0.1mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様において、防腐剤は、0.1mg/ml〜5mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様において、防腐剤は5mg/ml〜10mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様において、防腐剤は10mg/ml〜20mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の防腐剤各自は、本発明の別の態様を構成する。薬学的組成物に防腐剤を使用することは、当業者によく知られている。便宜的な参照として、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版、1995が挙げられる。
【0064】
本発明のさらなる態様において、処方物は、塩(例えば塩化ナトリウム)、糖又は糖アルコール、アミノ酸(例えば、グリシン、L-ヒスチジン、アルギニン、リジン、イソロイシン、アスパラギン酸、トリプトファン、スレオニン)、アルジトール(例えばグリセロール(グリセリン)、1,2-プロパンジオール(プロピレングリコール)、1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール)ポリエチレングリコール(例えばPEG400)、又はそれらの混合物からなる群から選択され得る等張剤をさらに含有する。任意の糖、例えば単糖類、二糖類又は多糖類、又は水溶性グルカン類、例えばフルクトース、グルコース、マンノース、ソルボース、キシロース、マルトース、ラクトース、スクロース、トレハロース、デキストラン、プルラン、デキストリン、シクロデキストリン、可溶性デンプン、ヒドロキシエチルデンプン、及びカルボキシメチルセルロース-Naを使用してもよい。一態様において、糖添加剤はスクロースである。糖アルコールは、少なくとも一の-OH基を有するC4-C8炭化水素と定義され、例えばマンニトール、ソルビトール、イノシトール、ガラクチトール(galactitol)、ズルシトール、キシリトール、及びアラビトールを含む。一態様において、糖アルコール添加剤はマンニトールである。上述した糖又は糖アルコールは、個々に又は組合せて使用されてよい。使用される量は、糖又は糖アルコールが液状調製物に溶解し、本発明の方法を使用して得られた安定化効果に悪影響を与えない限りは、限定されて固定されるものではない。一態様において、糖又は糖アルコールの濃度は、約1mg/ml〜約150mg/mlである。本発明のさらなる態様において、等張剤は1mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在している、本発明のさらなる態様において、等張剤は1mg/ml〜7mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様において、等張剤は8mg/ml〜24mg/mlの濃度で存在している。本発明のさらなる態様において、等張剤は25mg/ml〜50mg/mlの濃度で存在している。これらの特定の等張剤各自は、本発明の別の実施態様を構成する。薬学的組成物に等張剤を使用することは、当業者によく知られている。便宜的な参照として、Remington:The Science and Practice of Pharmacy, 第19版、1995が挙げられる。
【0065】
典型的な等張剤は、塩化ナトリウム、マンニトール、ジメチルスルホン及びグリセロールであり、典型的な防腐剤は、フェノール、m-クレゾール、p-ヒドロキシ安息香酸メチル及びベンジルアルコールである。
適切なバッファーの例は、酢酸ナトリウム、グリシルグリシン、HEPES(4-(2-ヒドロキシエチル)-1-ピペラジンエタンスルホン酸)及びリン酸ナトリウムである。
【0066】
この発明の乾燥させたタンパク質、例えばインスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴンを含有する組成物は、インスリンに対して敏感な状態の処置に使用することができる。よってそれらは、1型糖尿病、2型糖尿病及び例えば重篤に傷害を被った人及び大手術を受けた人にしばしば見られる高血糖症の処置に使用することができる。任意の患者に対する最適な用量レベルは、用いられる特定のインスリンの効能、年齢、体重、身体活動性、及び患者の食事、他の薬剤との併用の可能性、治療される状態の重篤度を含む様々な要因に依存する。この発明の乾燥させたタンパク質の毎日の投薬量が、既知の薬学的組成物に対するものと同様の方法で当業者によって各個々の患者に対して決定されることが推奨される。
都合がよいことに、この発明の乾燥させたタンパク質は、他のタイプのタンパク質、例えばさらに速効で作用を開始するインスリンアナログと混合して使用してもよい。このようなインスリンアナログの具体例は、例えば、公開番号EP214826(Novo Nordisk A/S)、EP375437(Novo Nordisk A/S)及びEP383472(Eli Lilly & Co)を有する欧州特許出願に記載されている。
【0067】
ここに引用された刊行物、特許出願及び特許を含む全ての文献は、各文献が、出典明示により個々にかつ特に援用され、その全内容がここに記載されているかの如く、その全体が出典明示によりここに援用される(法律により許容される最大範囲)。
全ての表題及び副題は、ここでは便宜的にのみ使用されており、いかなる方法であっても、本発明を限定するものとは解釈されない。
ここで提供される任意の及び全ての例、又は例示的言語(例えば、「等」)の使用は、単に、本発明をより解明することを意図したものであり、特に示さない限りは、本発明の範囲を制限するものではない。明細書におけるいずれの言語も、請求項に記載していない要素を本発明の実施に必須であることを示していると解してはならない。
ここでの特許公報の引用及び導入は便宜上のものであって、このような特許公報の正当性、特許性及び/又は執行可能性についての見解を示すものではない。
この発明は、適応される法律により許容されるよう、ここに提案された請求項に列挙された主題事項の全ての修正及び等価事項を含む。
【0068】
本発明は以下のパラグラフに要約されるであろう。
1.タンパク質溶液を乾燥させる方法であって、
a)タンパク質溶液を、賦形剤を場合によっては含有する水とタンパク質とを混合することで得、アルカリ性になるように、揮発性塩基、非揮発性塩基、場合によっては非揮発性酸を用いて、タンパク質溶液のpHを調節し、
b)タンパク質溶液を乾燥させる;
方法。
【0069】
2.a)乾燥させたタンパク質の標的pHの選択、
b)タンパク質溶液の標的pHの選択、
c)水相の提供、
d)タンパク質の添加、
e)場合によっては賦形剤の添加、
f)非揮発性塩基、及び場合によっては非揮発性酸を用いた、乾燥させたタンパク質の標的pHへのpHの調節、
g)揮発性塩基を用いた、乾燥されるタンパク質溶液の標的pHへのpHの調節、及び
h)タンパク質溶液の噴霧乾燥、
を含み、
ここで、工程d、e、f及びgが、連続的に攪拌しつつ、任意の順序で実施可能である、パラグラフ1の方法。
3.工程d、e、f及びgが、連続的に攪拌しつつ、任意の順序で実施可能である、パラグラフ2の方法。
【0070】
4.タンパク質溶液が8℃以下の温度で得られる、パラグラフ1-3の方法。
5.タンパク質溶液が、6℃以下、5℃以下、4℃以下、3℃以下、2℃以下、又は1℃以下の温度で得られる、パラグラフ1-4の方法。
6.水相の凝固点が低下し、タンパク質溶液が0℃以下の温度で得られる、パラグラフ1-5の方法。
7.乾燥方法が、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、及び真空乾燥からなる群から選択される、パラグラフ1-6の方法。
【0071】
8.タンパク質溶液が7.4以上のpHを有している、パラグラフ1-7の方法。
9.タンパク質溶液が、7.6以上、7.8以上、8.0以上、8.2以上、8.4以上又は8.6以上のpHを有する、パラグラフ1-8の方法。
10.タンパク質溶液が7.4〜11.0のpHを有している、パラグラフ1-8の方法。
11.タンパク質溶液が、約7.6〜約11.0、約7.6〜約10.5、約7.8〜約11.0、約7.8〜約10.5、約8.0〜約11.0、約8.0〜約10.5、約8.2〜約11.0、約8.4〜約11.0、約8.6〜約10.0、約8.8〜約10.0、約9.0〜約10.0、又は約9.2〜約10.0のpHを有する、パラグラフ1-8及び10の方法。
【0072】
12.非揮発性塩基が、アルカリ金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属の水酸化物、及びアミノ酸、又はそれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ1-11の方法。
13.非揮発性塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、又はそれらの任意の組合せをである、パラグラフ12の方法。
14.揮発性塩基が、水酸化アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、第2級アミン類、第3級アミン類、アリールアミン類、脂肪族アミン類又は重炭酸アンモニウム又はそれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ1-13の方法。
15.揮発性塩基が、水酸化アンモニウム、エチルアミン又はメチルアミン又はそれらの組合せである、パラグラフ14の方法。
【0073】
16.揮発性塩基で、少なくとも0.5pH単位を有するタンパク質溶液のpHを調節する、パラグラフ1-15の方法。
17.揮発性塩基で、少なくとも0.7pH単位、又は少なくとも0.9pH単位、又は少なくとも1.1pH単位、又は少なくとも1.3pH単位、又は少なくとも1.5pH単位を有するタンパク質溶液のpHを調節する、パラグラフ1-16の方法。
18.タンパク質溶液のpHが、水酸化ナトリウム及び水酸化アンモニウムを含有する溶液で調節される、パラグラフ1-17の方法。
【0074】
19.タンパク質が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、及びGLP-1誘導体、グルカゴン、及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、パラグラフ1-18の方法。
20.タンパク質溶液が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体からなる群から選択されるタンパク質を含有し、溶液が亜鉛をさらに含有する、パラグラフ1-19の方法。
21.タンパク質溶液がフェノールを含有する、パラグラフ20の方法。
22.タンパク質溶液が、タンパク質1モル当たり約4モルのフェノールを含有する、パラグラフ20-21の方法。
【0075】
23.タンパク質溶液が、バッファー、洗浄剤、安定剤、プロテアーゼインヒビター、香料、担体、吸収プロタクト剤、増量剤、又は流動特性を改善する薬剤又は浸透促進剤、又はそれらの組合せを含有する、パラグラフ1-22の方法。
24.タンパク質溶液がグリシルグリシンを含有する、パラグラフ23の方法。
【0076】
25.タンパク質溶液のpHが乾燥させたタンパク質のpH以上である、パラグラフ1-24の方法。
26.タンパク質溶液のpHが、乾燥させたタンパク質のpH以上、少なくとも0.5pH単位である、パラグラフ25の方法。
27.タンパク質溶液のpHが、乾燥させたタンパク質のpH以上、少なくとも0.7、少なくとも0.9、少なくとも1.1、少なくとも1.3、又は少なくとも1.5pH単位である、パラグラフ1-26の方法。
【0077】
28.乾燥させたタンパク質のpHが約6.0〜約8.5である、パラグラフ1-27の方法。
29.乾燥させたタンパク質のpHが、約6.2〜約8.4、約6.4〜約8.3、約6.6〜約8.2、約6.8〜約8.1、約7.0〜約8.0、約7.2〜約7.9、約7.4〜約7.8、又は約7.6〜約7.7である、パラグラフ1-28の方法。
30.タンパク質溶液が、約10%以下、約6%以下、約4%以下、約2%以下、又は約1%以下の水分含有量の噴霧乾燥させたタンパク質が得られるように乾燥される、パラグラフ1-29の方法。
31.タンパク質がインスリンアナログであり、AspB28ヒトインスリン;LysB28ProB29ヒトインスリン、及びLysB3GluB29ヒトインスリンからなる群から選択される、パラグラフ1-30の方法。
【0078】
32.パラグラフ1-31の方法により得られる乾燥させたタンパク質。
【0079】
33.パラグラフ32の噴霧乾燥させたタンパク質を治療的有効量含有する薬学的組成物。
34.組成物が、糖尿病又は高血糖症の肺、非経口、鼻又は経口処置用である、パラグラフ33の薬学的組成物。
35.パラグラフ32の乾燥させたタンパク質を治療的有効量含有する、このような処置を必要とする患者における糖尿病又は高血糖症を治療するための薬学的組成物であって、該タンパク質が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される組成物。
【0080】
36.パラグラフ32の乾燥させたタンパク質、又はパラグラフ33-35の薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における糖尿病の処置方法。
37.タンパク質が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、グルカゴン及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、パラグラフ36の方法。
38.実施例に記載するような乾燥させたタンパク質。
【0081】
1a.タンパク質溶液を乾燥させる方法であって、
a)タンパク質溶液を、賦形剤を場合によっては含有する水とタンパク質とを混合することで得、アルカリ性になるようにpHを調節し、
b)タンパク質溶液を乾燥させる;
方法。
【0082】
2a.a)乾燥させたタンパク質の標的pHの選択、
b)タンパク質溶液の標的pHの選択、
c)水相の提供、
d)タンパク質の添加、
e)場合によっては賦形剤の添加、
f)非揮発性塩基を用いた、乾燥させたタンパク質の標的pHへのpHの調節、
g)揮発性塩基を用いた、乾燥されるタンパク質溶液の標的pHへのpHの調節、及び
h)タンパク質溶液の噴霧乾燥、
を含み、
ここで、工程d、e、f及びgが、連続的に攪拌しつつ、任意の順序で実施可能である、タンパク質溶液から乾燥させたタンパク質を生成する方法。
3a.タンパク質溶液が、揮発性塩基及び非揮発性塩基を用いて調節される、パラグラフ1aの方法。
【0083】
4a.タンパク質溶液が8℃以下の温度で得られる、パラグラフ1a-3aの方法。
5a.タンパク質溶液が、6℃以下、5℃以下、4℃以下、3℃以下、2℃以下、又は1℃以下の温度で得られる、パラグラフ1a-4aの方法。
6a.水相の凝固点が低下し、タンパク質溶液が0℃以下の温度で得られる、パラグラフ1a-5aの方法。
7a.乾燥方法が、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、及び真空乾燥からなる群から選択される、パラグラフ1a-6aの方法。
【0084】
8a.タンパク質溶液が7.4以上のpHを有している、パラグラフ1a-7aの方法。
9a.タンパク質溶液が、7.6以上、7.8以上、8.0以上、8.2以上、8.4以上又は8.6以上のpHを有する、パラグラフ1a-8aの方法。
10a.タンパク質溶液が7.4〜11.0のpHを有している、パラグラフ1a-8aの方法。
11a.タンパク質溶液が、約7.6〜約11.0、約7.6〜約10.5、約7.8〜約11.0、約7.8〜約10.5、約8.0〜約11.0、約8.0〜約10.5、約8.2〜約11.0、約8.4〜約11.0、約8.6〜約10.0、約8.8〜約10.0、約9.0〜約10.0、又は約9.2〜約10.0のpHを有する、パラグラフ1a-8a及び10aの方法。
【0085】
12a.非揮発性塩基が、アルカリ金属塩、アルカリ金属の水酸化物、アルカリ土類金属塩、アルカリ土類金属の水酸化物、及びアミノ酸、又はそれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ1a-11aの方法。
13a.非揮発性塩基が、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、酸化カルシウム、又はそれらの任意の組合せをである、パラグラフ12aの方法。
14a.揮発性塩基が、水酸化アンモニウム、テトラアルキルアンモニウム水酸化物、第2級アミン類、第3級アミン類、アリールアミン類、脂肪族アミン類又は重炭酸アンモニウム又はそれらの組合せからなる群から選択される、パラグラフ1a-11aの方法。
15a.揮発性塩基が、水酸化アンモニウム、エチルアミン又はメチルアミン又はそれらの組合せである、パラグラフ14aの方法。
【0086】
16a.揮発性塩基で、少なくとも0.5pH単位を有するタンパク質溶液のpHを調節する、パラグラフ1a-15aの方法。
17a.揮発性塩基で、少なくとも0.7pH単位、又は少なくとも0.9pH単位、又は少なくとも1.1pH単位、又は少なくとも1.3pH単位、又は少なくとも1.5pH単位を有するタンパク質溶液のpHを調節する、パラグラフ1a-16aの方法。
18a.タンパク質溶液のpHが、水酸化ナトリウム及び水酸化アンモニウムを含有する溶液で調節される、パラグラフ1a-17aの方法。
【0087】
19a.タンパク質溶液がフェノールを含有する、パラグラフ1a-18aの方法。
20a.タンパク質が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、エキセンディン、エキセンディンアナログ及び誘導体、及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、パラグラフ1a-19aの方法。
21a.タンパク質が、アミリン、アミリンアナログ、アミリン誘導体、α-MSH、α-MSHアナログ、α-MSH誘導体、及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、パラグラフ1a-20aの方法。
22a.タンパク質溶液が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体からなる群から選択されるタンパク質を含有し、溶液が亜鉛をさらに含有する、パラグラフ1a-20aの方法。
【0088】
23a.タンパク質溶液が、バッファー、洗浄剤、安定剤、プロテアーゼインヒビター、香料、担体、吸収プロタクト剤、増量剤、又は流動特性を改善する薬剤又は浸透促進剤、又はそれらの組合せを含有する、パラグラフ1a-22aの方法。
24a.タンパク質溶液がグリシルグリシンを含有する、パラグラフ23aの方法。
【0089】
25a.タンパク質溶液のpHが乾燥させたタンパク質のpH以上である、パラグラフ1a-24aの方法。
26a.タンパク質溶液のpHが、乾燥させたタンパク質のpH以上、少なくとも0.5pH単位である、パラグラフ25aの方法。
27a.タンパク質溶液のpHが、乾燥させたタンパク質のpH以上、少なくとも0.7、少なくとも0.9、少なくとも1.1、少なくとも1.3、又は少なくとも1.5pH単位である、パラグラフ1a-26aの方法。
【0090】
28a.乾燥させたタンパク質のpHが約6.0〜約8.5である、パラグラフ1a-27aの方法。
29a.乾燥させたタンパク質のpHが、約6.2〜約8.4、約6.4〜約8.3、約6.6〜約8.2、約6.8〜約8.1、約7.0〜約8.0、約7.2〜約7.9、約7.4〜約7.8、又は約7.6〜約7.7である、パラグラフ1a-28aの方法。
30a.タンパク質溶液が、約10%以下、約6%以下、約4%以下、約2%以下、又は約1%以下の水分含有量の噴霧乾燥させたタンパク質が得られるように乾燥される、パラグラフ1a-29aの方法。
31a.タンパク質がインスリンアナログであり、AspB28ヒトインスリン;LysB28ProB29ヒトインスリン、及びLysB3GluB29ヒトインスリンからなる群から選択される、パラグラフ1a-30aの方法。
【0091】
32a.パラグラフ1a-31aの方法により得られる乾燥させたタンパク質。
【0092】
33a.パラグラフ32の噴霧乾燥させたタンパク質を治療的有効量含有する薬学的組成物。
34a.組成物が、糖尿病又は高血糖症の肺、非経口、鼻又は経口処置用である、パラグラフ33aの薬学的組成物。
35a.パラグラフ32aの乾燥させたタンパク質を治療的有効量含有する、このような処置を必要とする患者における糖尿病又は高血糖症を治療するための薬学的組成物であって、該タンパク質が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、エキセンディン、エキセンディンアナログ及び誘導体、及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される組成物。
【0093】
36a.パラグラフ32aの乾燥させたタンパク質、又はパラグラフ33a-35aの薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における糖尿病の処置方法。
37a.タンパク質が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、GLP-1誘導体、エキセンディン、エキセンディンアナログ及び誘導体、及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、パラグラフ36aの方法。
38a.実施例に記載するような乾燥させたタンパク質。
【0094】
分析方法
HMWP含有量を、Ph. Eur法に基づき、アイソクラチックサイズ排除コンジュゲート法により測定した。ウォーターズ(Waters)インスリンHMWP7.8x300mmカラムを、65%の1.0mg/ml L-アルギニン溶液、20%のアセトニトリル、及び15%の氷酢酸を含有する、0.5ml/分流速の移動相と共に使用した。注射容量は100μlであった。カラム温度を周囲であった。276nmの紫外吸光度により検出を行った。ピーク面積対全ピーク面積基準において、クロマトグラムを分析した。
【0095】
ウォーターズ・サンファイア(Sunfire)C18、3.5μm、内径150x4.6mmのカラムを利用し、逆相コンジュゲート法を使用して純度を測定した。カラム温度を35℃にし、流速を1ml/分にした。勾配系には、1.4%(w/w)の硫酸ナトリウム、0.2%(w/w)のo-リン酸、7.7%(w/w)のアセトニトリルを含有する移動相A、pH3.6と、水中に42.8%(w/w)のアセトニトリルを含有する移動相Bを使用した。勾配系は、30分で、約42%の移動相Bに均一濃度化し始めた。ついで、移動相Bが、3分以上かけて42%から80%に直線的に増加し、2分で均一濃度のままであった。ついで、1分以上かけて、初期条件が42%の移動相Bに戻り、20分、そのままであった。214nmでの紫外吸光度により検出した。注射容量は10μlであった。ピーク面積対全ピーク面積基準において、クロマトグラムを分析した。本方法により、インスリンのデスアミノ(desamido)形態を含む不純物に関連したインスリンが検出される。
【0096】
噴霧乾燥したパウダーの容量粒度分布を、湿潤モードで操作されるレーザー回折装置、マスターサイザー(Mastersizer) (Malvern Instruments, United Kingdom)を使用して測定した。装置を湿潤分散システム(Malvern QS Small Volume Sample Dispersion Unit)に取り付け、微小粒子を、約0.05%のトゥイーン80を含有するイソプロパノールに懸濁させた。ついで、サンプルを測定し、マルバーン(Malvern)ソフトウェアを使用し、散乱データに基づき粒度分布を算出する。体積中央径D[v,0.5]は直径であり、分布の50%が上で、50%が下である。
【0097】
噴霧乾燥したパウダーの空気力学的粒度分布を、流れ加速ノズル(flow accelerating nozzle)の直接下流の粒子速度に基づき、個々の粒子の空気力学的直径を測定するレーザーベースの粒子測定器である、モデル3321エアロダイナミック・パーティクル・サイザー(Aerodynamic Particle Sizer)(登録商標)(APS)分光計(TSI incorporated)を使用して測定した。スモール・スケール・パウダー・ディスパーサーモデル3433(Small Scale powder Disperser model)(TSI incorporated)を用いて、パウダーをエアロゾル化した。これらの測定から、ほぼリアルタイムで、サイズ分布が測定される。空気動力学的質量中央径(MMAD)は空気力学的径であり、分布の50%が上で、50%が下である。
噴霧乾燥したパウダーの残留水分量を、パーキンエルマー・ピリス TGA1 熱質量分析器(PerkinElmer Pyris TGA1 thermogravimetric analyzer)を使用し、最小で3時間、110℃で乾燥させることによる損失で測定した。水分損失による重量変化を記録し、重量によるパーセンテージで表した。
【実施例】
【0098】
実施例1
pH9.5でのヒトインスリンの溶解
10.0gのヒトインスリンを、387.3gの氷冷水に分散させた。分散液を氷浴に配し、pHが5.03と測定された。ついで、氷冷された0.2Nの水酸化ナトリウムを、pH8.99になるまで段階的に添加した。45分後、pHを8.77まで低下させ、さらに4時間以上かけて、氷冷された0.2Nの水酸化ナトリウムを、pH8.75になるまで添加した。溶液はまだ透明ではなく、一晩、冷蔵庫に配した。
次の日、pHが8.75と測定され、溶液はまだ透明ではなかった。氷冷された0.2Nの水酸化ナトリウムにより、pHを9.48に調節し、ついで、不透明溶液を、次の5日間、冷蔵庫に配した。
5日後、溶液は透明になり、0.2Nの塩化水素を用いて、9.37から7.59になるまでpHを調節した。
【0099】
実施例2
A)揮発性塩基を用いたタンパク質溶液の噴霧乾燥
B)噴霧乾燥させたタンパク質のpHの測定
9.5gのヒトインスリンを、200g氷冷水に分散させた。分散液を氷浴に配し、最初のpHはpH5.12と測定された。ついで、氷冷された0.2Nの水酸化ナトリウムを5.8g使用し、pHを7.04に調節した。溶液をさらに2時間、氷浴で保持し、ついで、脱塩水を全重量240gになるまで添加した。
pH7.4の溶液の50gをさらに処理した。氷冷された1NのNHOHを用いて、7.04から7.50にpHを調節し、ついで、一晩、冷蔵庫に配した。次の日、pHが7.32と測定され、氷冷された1NのNHOHを用いて、pHをpH8.06に調節した。ついで、60.0gになるまで水を添加した。ヒトインスリンの最終濃度は、約30mg/mlであった。
【0100】
乾燥した固形微小粒子を、0.7mmの並流2液ノズル(co-current two-fluid nozzle)を具備するブッチ製(Buchi)B-290ミニスプレー乾燥機(Buchi, Labortechnik AG Flawil, Switzerland)で調製した。ヒトインスリン溶液を、2ml/分の液体供給速度、及び600−800リットル/時間の霧化空気流で、乾燥チャンバー内の温気流に霧化した。
乾燥した空気は、150℃の入口温度と、35m/時間の乾燥空気流速度を有していた。出口温度は約70℃であった。
固形微小粒子を、乾燥チャンバーに接続したサイクロンにより捕捉し、収集し、乾燥条件下で保存した。
噴霧乾燥したヒトインスリン(噴霧乾燥する前、タンパク質溶液のpHは8.06であった)を、40mg/mL、80mg/mL及び160mg/mLの濃度で脱塩水に再溶解させ、様々な濃度が測定されるpH値に影響を及ぼすかどうかを研究した:
25.3mgを633μLの水に添加した:pHは6.95と測定された
43.5mgを545μLの水に添加した:pHは6.95と測定された
81.7mgを510μLの水に添加した:pHは7.01と測定された
【0101】
実施例3
噴霧乾燥したインスリンアスパルト(B28Aspヒトインスリン)を、様々な比率の揮発性及び非揮発性塩によって、溶解させた。
噴霧乾燥前に、安定化賦形剤を含むか又は含まない様々なインスリンアスパルト溶液を調製した:
【0102】
調製物A
溶液A1:16gのインスリンアスパルトを、氷浴において150mlの水に懸濁させた。ついで、2.6mlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.53になるまで段階的に添加し、透明溶液を得た。最後に、全容量が200mlになるまで水を添加した。インスリンアスパルトの濃度は80mg/mlであった。
溶液A2:65mlの溶液A1を、さらに130mlに希釈した。インスリンアスパルトの濃度は40mg/mlであった。
【0103】
調製物B
溶液B1:16gのインスリンアスパルトを、氷浴において150mlの水に懸濁させた。最初2.2mlの氷冷された1NのNaOH、ついで750μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.52になるまで段階的に添加し、透明溶液を得た。最後に、全容量が200mlになるまで水を添加した。インスリンアスパルトの濃度は80mg/mlであった。
溶液B2:65mlの溶液B1を、さらに130mlに希釈した。インスリンアスパルトの濃度は40mg/mlであった。
【0104】
調製物C
溶液C1:16gのインスリンアスパルトを、氷浴において150mlの水に懸濁させた。最初4.4mlの氷冷された1NのNaOH、ついで750μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.48になるまで段階的に添加し、透明溶液を得た。最後に、全容量が200mlになるまで水を添加した。インスリンアスパルトの濃度は80mg/mlであった。
溶液C2:65mlの溶液C1を、さらに130mlに希釈した。インスリンアスパルトの濃度は40mg/mlであった。
【0105】
調製物D
溶液D1:16gのインスリンアスパルトを、氷浴において150mlの水に懸濁させた。最初6.6mlの氷冷された1NのNaOH、ついで370μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.47になるまで段階的に添加し、透明溶液を得た。最後に、全容量が200mlになるまで水を添加した。インスリンアスパルトの濃度は80mg/mlであった。
溶液D2:65mlの溶液D1を、さらに130mlに希釈した。インスリンアスパルトの濃度は40mg/mlであった。
【0106】
調製物E
溶液E1:16gのインスリンアスパルトを、氷浴において150mlの水に懸濁させた。最初6.6mlの氷冷された1NのNaOH、ついで370μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.47になるまで段階的に添加し、透明溶液を得た。最後に、全容量が200mlになるまで水を添加した。インスリンアスパルトの濃度は80mg/mlであった。
溶液E2:65mlの溶液E1を、さらに130mlに希釈した。インスリンアスパルトの濃度は40mg/mlであった。
【0107】
調製物F
1.8gのインスリンアスパルトを、氷浴において40mlの水に懸濁させた。最初175μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.83になるまで段階的に添加した。
1.1mlの0.1M ZnCl溶液と3.6mlの0.32M フェノール溶液を、さらに溶液に添加した。
最後に、85μlの希アンモニア水(8%w/w)を用いて、pHを7.99に調製し、全容量が60mlになるまで水を添加した。溶液は透明であり、インスリンアスパルトの濃度は30mg/mlであった。
【0108】
調製物G
1.8gのインスリンアスパルトを、氷浴において40mlの水に懸濁させた。最初288μlの氷冷された1N NaOH、ついで、120μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.86になるまで段階的に添加した。
1.1mlの0.1M ZnCl溶液と3.6mlの0.32M フェノール溶液を、さらに溶液に添加した。
最後に、80μlの希アンモニア水(8%w/w)を用いて、pHを8.03に調節し、全容量が60mlになるまで水を添加した。溶液は透明であり、インスリンアスパルトの濃度は30mg/mlであった。
【0109】
調製物H
1.8gのインスリンアスパルトを、氷浴において40mlの水に懸濁させた。最初864μlの氷冷された1N NaOH、ついで、50μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.85になるまで段階的に添加した。
1.1mlの0.1M ZnCl溶液と3.6mlの0.32M フェノール溶液を、さらに溶液に添加した。
最後に、60μlの希アンモニア水(8%w/w)を用いて、pHを7.98に調節し、全容量が60mlになるまで水を添加した。溶液は透明であり、インスリンアスパルトの濃度は30mg/mlであった。
【0110】
調製物I
1.8gのインスリンアスパルトを、氷浴において40mlの水に懸濁させた。最初150μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.99になるまで段階的に添加した。
4.6mlの0.25M グリシルグリシン溶液、1.1mlの0.1M ZnCl溶液及び3.6mlの0.32M フェノール溶液を、さらに溶液に添加した。
最後に、245μlの希アンモニア水(8%w/w)を用いて、pHを7.98に調節し、全容量が60mlになるまで水を添加した。溶液は透明であり、インスリンアスパルトの濃度は30mg/mlであった。
【0111】
調製物J
1.8gのインスリンアスパルトを、氷浴において40mlの水に懸濁させた。最初288μlの氷冷された1N NaOH、ついで、125μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが8.18になるまで段階的に添加した。
4.6mlの0.25M グリシルグリシン溶液、1.1mlの0.1M ZnCl溶液及び3.6mlの0.32M フェノール溶液を、さらに溶液に添加した。
最後に、125μlの希アンモニア水(8%w/w)を用いて、pHを7.98に調節し、全容量が60mlになるまで水を添加した。溶液は透明であり、インスリンアスパルトの濃度は30mg/mlであった。
【0112】
調製物K
1.8gのインスリンアスパルトを、氷浴において40mlの水に懸濁させた。最初288μlの氷冷された1N NaOH、ついで、125μlの氷冷された濃アンモニア水(25%w/w)を、pHが7.93になるまで段階的に添加した。
1.1mlの0.1M ZnCl溶液と1.9mlの0.32M フェノール溶液を、さらに溶液に添加した。
最後に、40μlの希アンモニア水(8%w/w)を用いて、pHを7.98に調節し、全容量が60mlになるまで水を添加した。溶液は透明であり、インスリンアスパルトの濃度は30mg/mlであった。
【0113】
乾燥固形微小粒子を、0.7mmの並流2液ノズルを具備するブッチB-290ミニスプレー乾燥機(Buchi, Labortechnik AG Flawil, Switzerland)で調製した。液状供給物(調製物A1、A2、B1、B2、C1、C2、D1、D2、E1、E2、F、G、H、I、J、及びK)を、2ml/分の液体供給速度、及び600−800リットル/時間の霧化空気流で、乾燥チャンバー内の温気流に霧化した。
乾燥した空気は、150℃の入口温度と、35m/時間の乾燥空気流速度を有していた。出口温度は41〜61℃で変化した。
固形微小粒子を、乾燥チャンバーに接続したサイクロンにより捕捉し、収集し、乾燥条件下で保存した。
【0114】
40℃で1ヶ月保存した後のインスリンの化学的不安定性を、Hvass, 2003, (A. Hvass, M. Hach, and M. U. Jars. Complementary analytical HPLC methods for insulin-related degradation products. American Biotechnology Laboratory 21 (2): 8-12, 2003)に記載されているようにして、HPLC分析により研究した。共有結合したダイマーと高分子量のポリマー(HMWP)を、サイズ排除(SE)クロマトグラフィーで分析した。勾配溶離での逆相(RP)クロマトグラフィー(pH3.6)を、分解産物(インスリンのデスアミド形態及び他のインスリン関連不純物)の分離に使用した。
【0115】
噴霧乾燥した微小粒子の水分量を、パーキンエルマー・ピリス TGA1 熱質量分析器を使用し、最小で3時間、110℃での乾燥時の損失によって決定した。水分損失により生じた重量変化を記録し、重量パーセントで表した。
エアロダイナミック・パーティクル・サイザー(登録商標)(APS)分光計を使用して、粒度分布(空気動力学的中央粒子径)を決定した。
噴霧乾燥したインスリンのpHを、約40mg/mlの濃度になるまで、脱塩水に噴霧乾燥パウダーを溶解させ、電位差計(Radiometer, Denmark)によりpHを測定することにより、測定した。
【0116】
噴霧乾燥した調製物A−Kの特徴付けした結果を、以下の表1にまとめる。

【0117】
実施例4
インスリンアスパルトの噴霧乾燥
361.8gのインスリンアスパルトを、4.5リットルの氷冷された脱塩水に分散させた。氷冷された0.2のNaOHを用い、pHを7.68に調節した。9リットルになるまで水を添加した。インスリンアスパルトの最終濃度は37g/lであった。噴霧乾燥する前に、滅菌フィルター(0.2μm)を介して溶液を濾過した。
インスリンアスパルト溶液の噴霧乾燥を、1.0mmの開口径を有する2流体ノズルを具備するパイロットスケールのスプレー乾燥機(model Mobile Minor, Niro, Denmark)で実施した。乾燥ガス及び噴霧ガスとして、窒素を使用した。
【0118】
入口及び出口温度は、それぞれ110及び62℃であった。供給流は約1kg/hであり、ガス/供給比は約11であった。
スプレー乾燥機は、サイクロンとバグフィルターの双方を具備している。噴霧乾燥中、サイクロンとバグフィルターの双方から同時にパウダーを収集した。
粒度分布を、レーザー回折(Mastersizer, Malvern)及びエアロダイナミック・パーティクル・サイジング分光計(APS)の双方により、粒度分布を分析した。40℃で1ヶ月保存した後の、噴霧乾燥されたインスリンアスパルトの化学的完全性を、実施例2に記載したようにして、SE又はRP-HPLCにより研究した。

【0119】
実施例5
様々なpH値での凍結乾燥インスリンアスパルト乾燥パウダーの保存安定性
0.806gのインスリンアスパルトを、10mlの氷冷水に分散させた。懸濁液を氷浴に配し、最初のpHはpH4.58と測定された。氷冷された0.2Nの水酸化ナトリウムを用いて、pHを7.39に調節し、これによりインスリンアスパルトを溶解させた。全重量が20.4gになるまで、脱塩水を添加した。
溶解したインスリンアスパルトを2.5mlの6つのアリコートに分割し、それぞれpH7.0、7.7、8.0、8.5、9.0及び9.5に調節した。全重量が3.06gになるまで、脱塩水を添加した。
インスリンアスパルト溶液を、標準的な凍結乾燥プログラムを使用し、ガラスバイアルにおいて、0.9mlのアリコートに、クリスト・アルファ2-4LSC(Christ Alpha 2-4 LSC(Christ Alpha, Germany))装置にて凍結乾燥した。
0.5mlの脱塩水を、約33mgのインスリンアスパルトパウダーに添加し、ついで、15分後、pH電極を具備する電位差計を用いてpHを測定することにより、凍結乾燥したインスリンアスパルトパウダーのpHを測定した。
【0120】
−18℃のコントロールと比較して、40℃で2週間、乾燥(シリカゲル上)保存した後の、噴霧乾燥インスリンアスパルトの化学的完全性を、実施例2に記載したようにして、SE-HPLCにより研究した。

【0121】
実施例6
様々なpH値での噴霧乾燥インスリンアスパルト乾燥パウダーの保存安定性
20.6gのインスリンアスパルトを、300mlの氷冷水に分散させた。懸濁液を氷浴に配し、最初のpHはpH4.63と測定された。100mlの氷冷された0.1N 水酸化ナトリウムを用いて、pHを7.50に調節し、これによりインスリンアスパルトを溶解させた。
溶解したインスリンアスパルトを6つのアリコート65gに分割し、それぞれpH7.0、7.7、8.0、8.5、9.0及び9.5に調節した。全重量が80.0gになるまで、各アリコートに脱塩水を添加した。インスリンアスパルトの濃度は約38mg/mlであった。
【0122】
乾燥した固形微小粒子を、0.7mmの並流2液ノズルを具備するブッチ製B-290ミニスプレー乾燥機(Buchi, Labortechnik AG Flawil, Switzerland)で調製した。液状供給物(80ml)を、2ml/分の液体供給速度、及び600−800リットル/時間の霧化空気流で、乾燥チャンバー内の温気流に霧化した。
乾燥した空気は、150℃の入口温度と、35m/時間の乾燥空気流速度を有していた。出口温度は49〜61℃で変化した。固形微小粒子を、乾燥チャンバーに接続したサイクロンにより捕捉し、収集し、乾燥条件下で保存した。
【0123】
噴霧乾燥したインスリンアスパルトのpHを、70−80mg/mlの濃度になるまで、脱塩水に噴霧乾燥したパウダーを溶解させ、電位差計(Radiometer, Denmark)によりpHを測定することにより測定した。−18℃のコントロールと比較して、40℃で4週間、乾燥(シリカゲル上)保存した後の、噴霧乾燥インスリンアスパルトの化学的な完全性を、実施例2に記載したようにして、SE-HPLC及びRP-HPLCにより研究した。

【0124】
実施例7
20000nmolのリジン-アシル化GLP1アナログN-イプシロン26-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4カルボキシ-4-(17カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]-エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)を、4000nmol/mL(分子量4113g/mol)になるように、水に溶解させた。水酸化ナトリウムにより、2mLの溶液をpH7.6に調節し、さらに2つに分け、一方には、pH9.6になるまでアンモニア(水中に25%)を添加した。同様に、2mLの溶液には、pH8.7になるまで水酸化ナトリウムを添加し、2つに分け、一方には、pH10.3になるまでアンモニア(水中に25%)を添加した。最後に、1mLのGLP1アナログ溶液には、pH10.3になるまで水酸化ナトリウムを添加した。5つのサンプルを全て凍結乾燥し、40mg/mLなるように再溶解させた。サンプルのpH値を測定したところ、それぞれ7.5、7.6、8.6、8.6及び9.7であった。
【0125】
実施例8
揮発性塩基を用いたGLP-1アナログの噴霧乾燥
180mg(43800nmol)のリジン-アシル化GLP1アナログN-イプシロン26-[2-(2-{2-[2-(2-{2-[(S)-4-カルボキシ-4-(17-カルボキシヘプタデカノイルアミノ)ブチリルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチルアミノ]エトキシ}エトキシ)アセチル][Aib8,Arg34]GLP-1-(7-37)を、7mlの脱塩水に溶解させ、0.2Nの塩酸を用いて、pH7.53からpH7.03に調節した。ついで、0.25%w/wのアンモニア水を用い、溶液をpH9.96に調節し、脱塩水を添加したところ、最終濃度20mg/mlのGLP-1アナログが得られた。
溶液を、2ml/分の液体供給速度、及び600−800リットル/時間の霧化空気流で、0.7mmの並流2液ノズルを具備するブッチ製B-290ミニスプレー乾燥機(Buchi, Labortechnik AG Flawil, Switzerland)の乾燥チャンバー内において、温気流に霧化した。乾燥した空気は、150℃の入口温度と、35m/時間の乾燥空気流速度を有していた。出口温度は約63℃であった。固形微小粒子を、乾燥チャンバーに接続したサイクロンにより捕捉した。
120mg/mlになるように、パウダーを脱塩水に再溶解させたところ、pHはpH6.9と測定された。
【0126】
実施例9
強アルカリのpH値でのインスリンアスパルトの化学的不安定性
720mgのインスリンアスパルトを、9mlの脱塩水に溶解させた。2Nの水酸化アンモニウム溶液を用い、2.25mlの溶液をpH7.6からpH10.0に調節した。2Nの水酸化アンモニウム溶液を用い、さらなる2.25mlの溶液をpH11.0に調節した。2Nの水酸化アンモニウム溶液と1Nの水酸化ナトリウム溶液を用い、さらなる2.25mlの溶液をpH12.0に調節した。2Nの水酸化アンモニウム溶液と1Nの水酸化ナトリウム溶液を用い、最後の2.25mlの溶液をpH12.6に調節した。
4つのpH調節された溶液を、3−8℃の冷蔵庫で24時間保持し、その後、化学的分解を停止させるために、1Nの塩酸を用いて、4つの溶液を中性のpHに調節した。
中和された溶液におけるインスリンの化学的不安定性を、実施例2に記載したような、サイズ排除及び逆相HPLCにより研究した。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
タンパク質溶液を乾燥させるための方法であって、
a)タンパク質溶液を、賦形剤を場合によっては含有する水とタンパク質を混合し、タンパク質溶液がアルカリ性になるように、揮発性塩基、非揮発性塩基、及び場合によっては非揮発性酸を用いてpHを調節することにより得て、
b)タンパク質溶液を乾燥させる
方法。
【請求項2】
a)乾燥させたタンパク質に対する標的pHを選択し、
b)タンパク質溶液の標的pHを選択し、
c)水相を提供し、
d)タンパク質を添加し、
e)場合によっては賦形剤を添加し、
f)非揮発性塩基及び場合によっては非揮発性酸を用いて、乾燥させたタンパク質の標的pHにpHを調節し、
g)揮発性塩基を用いて、乾燥せしめられるタンパク質溶液の標的pHにpHを調節し、
h)タンパク質溶液を噴霧乾燥させる、
ことを含み、
ここで、工程d、e、f及びgが、連続攪拌しながら、任意の順序で実施可能である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
タンパク質溶液が8℃以下の温度で得られる、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
タンパク質溶液が7.4〜11.0のpHを有している、請求項1から3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
揮発性塩基が、少なくとも0.5pH単位でタンパク質溶液のpHを調節する、請求項1から4のいずれか一項に記載の方法。
【請求項6】
タンパク質が、インスリン、インスリンアナログ、インスリン誘導体、GLP-1、GLP-1アナログ、及びGLP-1誘導体、グルカゴン、及び/又はそれらの任意の組合せからなる群から選択される、請求項1ないし5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
タンパク質溶液が、バッファー、洗浄剤、安定剤、プロテアーゼインヒビター、香料、担体、吸収プロタクト剤、増量剤、又は流動特性を改善する薬剤又は浸透促進剤、又はそれらの組合せを含有する、請求項1から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
タンパク質溶液がグリシルグリシン及び/又はフェノールを含有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
タンパク質溶液が、タンパク質1モル当たり約4モルのフェノールを含む、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
タンパク質溶液のpHが、乾燥させたタンパク質のpH以上である、請求項1から9のいずれか一項に記載の方法。
【請求項11】
乾燥方法が、噴霧乾燥、噴霧凍結乾燥、流動床乾燥、凍結乾燥、及び真空乾燥からなる群から選択される、請求項1から10のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
請求項1から11のいずれか一項に記載の方法により得られうる乾燥タンパク質。
【請求項13】
請求項12に記載の乾燥タンパク質を治療的有効量含有する薬学的組成物。
【請求項14】
組成物が、糖尿病又は高血糖症の肺、非経口、鼻又は経口処置用である、請求項13に記載の薬学的組成物。
【請求項15】
請求項11に記載の乾燥させたタンパク質、又は請求項13又は14に記載の薬学的組成物を治療的有効量、患者に投与することを含む、このような処置を必要とする患者における糖尿病の治療方法。
【請求項16】
実施例に記載された乾燥させたタンパク質。

【公表番号】特表2010−526039(P2010−526039A)
【公表日】平成22年7月29日(2010.7.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−504739(P2010−504739)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【国際出願番号】PCT/EP2008/055306
【国際公開番号】WO2008/132224
【国際公開日】平成20年11月6日(2008.11.6)
【出願人】(596113096)ノボ・ノルデイスク・エー/エス (241)
【Fターム(参考)】