説明

ターゲット供給装置、そのノズルのクリーニング機構、および、そのノズルのクリーニング方法

【課題】ターゲット物質の出力位置の安定性が向上し、チャンバ外の異物がチャンバ内に侵入することを抑制し得るとともに、チャンバ内のターゲット物質がチャンバ外に放出されることを抑制し得るノズルのクリーニング機構を提供すること。
【解決手段】EUV光生成装置1のノズル712のクリーニング機構9は、EUV光252の生成が行われるチャンバ2内にターゲット物質271を出力するためのノズル712を、チャンバ2内で物理的にクリーニングしてもよい。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、極端紫外(EUV)光生成装置におけるターゲット供給装置、そのノズルのクリーニング機構、および、そのノズルのクリーニング方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、半導体プロセスの微細化に伴って、半導体プロセスの光リソグラフィにおける転写パターンの微細化が急速に進展している。次世代においては、70nm〜45nmの微細加工、さらには32nm以下の微細加工が要求されるようになる。このため、例えば32nm以下の微細加工の要求に応えるべく、波長13nm程度のEUV光を生成するための装置と縮小投影反射光学系とを組み合わせた露光装置の開発が期待されている。
【0003】
EUV光生成装置としては、ターゲット物質にレーザ光を照射することによって生成されるプラズマを用いたLPP(Laser Produced Plasma)方式の装置と、放電によって生成されるプラズマを用いたDPP(Discharge Produced Plasma)方式の装置と、軌道放射光を用いたSR(Synchrotron Radiation)方式の装置との3種類の装置が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第7405416号明細書
【概要】
【0005】
本開示の一態様によるクリーニング機構は、EUV光の生成が行われるチャンバ内にターゲット物質を出力するためのノズルを、チャンバ内で物理的にクリーニングするためのノズルのクリーニング機構でもよい。
【0006】
本開示の他の態様によるターゲット供給装置は、EUV光の生成が行われるチャンバ内にターゲット物質を出力するためのノズルと、前記チャンバ内で、前記ノズルを物理的にクリーニングするための上述のノズルのクリーニング機構と、前記ノズルと前記クリーニング機構とを一体化するためのユニット部と、を備えてもよい。
【0007】
本開示のさらに他の態様によるノズルのクリーニング方法は、EUV光の生成が行われるチャンバ内にターゲット物質を出力するためのノズルをクリーニングするための方法であって、大気圧よりも低い圧力の前記チャンバ内で、前記ノズルを物理的にクリーニングすることを含んでもよい。
【図面の簡単な説明】
【0008】
本開示のいくつかの実施形態を、単なる例として、添付の図面を参照して以下に説明する。
【図1】図1は、例示的なLPP方式のEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【図2】図2は、本開示の各実施形態に係るクリーニング機構が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【図3A】図3Aは、液体と固体との接触角が90°以下の状態を概略的に示す。
【図3B】図3Bは、液体と固体との接触角が90°を超える状態を概略的に示す。
【図4】図4は、第1実施形態に係るターゲット供給装置の構成を概略的に示す。
【図5】図5は、第1実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。
【図6A】図6Aは、第1実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。
【図6B】図6Bは、第1実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図6C】図6Cは、第1実施形態に係るクリーニング部材がノズルと接触している状態を示す。
【図6D】図6Dは、第1実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図7】図7は、第2実施形態および第3実施形態に係るターゲット供給装置の構成を概略的に示す。
【図8】図8は、第2実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。
【図9A】図9Aは、第2実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。
【図9B】図9Bは、第2実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図9C】図9Cは、第2実施形態に係るクリーニング部材がノズルに接近している状態を示す。
【図9D】図9Dは、第2実施形態に係り、所定量のターゲット物質が出力された状態を示す。
【図9E】図9Eは、第2実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図10】図10は、第3実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。
【図11A】図11Aは、第3実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。
【図11B】図11Bは、第3実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図11C】図11Cは、第3実施形態に係り、所定量のターゲット物質が出力された状態を示す。
【図11D】図11Dは、第3実施形態に係るクリーニング部材とノズルとが接近している状態を示す。
【図11E】図11Eは、第3実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図12】図12は、第4実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【図13】図13は、第4実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。
【図14A】図14Aは、第4実施形態に係る容器がノズルに対向していない状態を示す。
【図14B】図14Bは、第4実施形態に係る容器が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図14C】図14Cは、第4実施形態に係る容器内のクリーニング用物質とノズルとが接触している状態を示す。
【図14D】図14Dは、第4実施形態に係る容器がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図15】図15は、第5実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示し、オンデマンド方式でドロップレットが生成される状態を示す。
【図16】図16は、第5実施形態に係るEUV光生成装置をおいて、コンティニュアスジェット方式でジェットが生成される状態を示す。
【図17】図17は、第6実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【図18】図18は、第6実施形態に係るEUV光生成装置の要部を拡大して示す。
【図19】図19は、第6実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。
【図20A】図20Aは、第6実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。
【図20B】図20Bは、第6実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図20C】図20Cは、第6実施形態に係るクリーニング部材とノズルとが接触している状態を示す。
【図20D】図20Dは、第6実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【図21】図21は、第7実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。
【実施形態】
【0009】
内容
1.概要
2.EUV光生成装置の全体説明
2.1 構成
2.2 動作
3.クリーニング機構を備えたEUV光生成装置
3.1 構成
3.2 動作
3.2.1 EUV光生成時
3.2.2 クリーニング時
4. 液体金属と固体金属間の接触角
5.EUV光生成装置の実施形態
5.1 用語の説明
5.2 第1実施形態
5.2.1 概略
5.2.2 構成
5.2.3 動作
5.2.3.1 EUV光生成時
5.2.3.2 クリーニング時
5.3 第2実施形態
5.3.1 概略
5.3.2 構成
5.3.3 動作
5.3.3.1 クリーニング時
5.4 第3実施形態
5.4.1 概略
5.4.2 動作
5.4.2.1 クリーニング時
5.5 第4実施形態
5.5.1 概略
5.5.2 構成
5.5.3 動作
5.5.3.1 クリーニング時
5.6 第5実施形態
5.6.1 概略
5.6.2 構成
5.6.3 動作
5.6.3.1 EUV光生成時
5.7 第6実施形態
5.7.1 概略
5.7.2 構成
5.7.3 動作
5.7.3.1 クリーニング時
5.8 第7実施形態
5.8.1 概略
5.8.2 構成
【0010】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら詳しく説明する。以下に説明される実施形態は、本開示のいくつかの例を示すものであって、本開示の内容を限定するものではない。また、各実施形態で説明される構成および動作の全てが本開示の構成および動作として必須であるとは限らない。なお、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明を省略する。
【0011】
1.概要
本開示の実施形態においては、EUV光の生成が行われるチャンバ内で、ノズルを物理的にクリーニングするための機構が設けられている。ここで、ターゲット物質がノズル孔周縁に付着すると、ノズル孔から新たに出力されるターゲット物質がノズル孔周縁に付着したターゲット物質に接触してしまい、ノズルからのターゲット物質の出力方向(ターゲット出力方向と称する)が、曲げられてしまうおそれがある。
【0012】
上述のクリーニング機構によれば、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内で、ノズル孔周縁が物理的にクリーニングされ得る。このことにより、ノズル孔から新たに出力されるターゲット物質がノズル孔周縁に付着したターゲット物質に接触することが抑制され、ターゲット出力方向が曲げられる可能性が低減し、ターゲット物質の出力位置の安定性が向上し得る。また、チャンバを開放せずにノズルがクリーニングされ得るため、チャンバ外の異物がチャンバ内に侵入することが抑制され得る。さらには、チャンバ内のターゲット物質などが、チャンバ外に放出されることが抑制され得る。
【0013】
2.EUV光生成装置の全体説明
2.1 構成
図1は、例示的なLPP方式のEUV光生成装置1の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、少なくとも1つのレーザ装置3と共に用いられてもよい。EUV光生成装置1およびレーザ装置3を含むシステムを、以下、EUV光生成システム11と称する。図1を参照に、以下に詳細に説明されるように、EUV光生成装置1は、チャンバ2を含んでもよい。チャンバ2は、密閉可能であってもよい。EUV光生成装置1は、ターゲット供給装置7をさらに含んでもよい。ターゲット供給装置7は、例えばチャンバ2に取り付けられていてもよい。ターゲット供給装置7から供給されるターゲットの材料は、スズ、テルビウム、ガドリニウム、リチウム、キセノン、またはそれらのうちのいずれか2つ以上の組合せ等を含んでもよいが、これらに限定されない。
【0014】
チャンバ2の壁には、少なくとも1つの貫通孔が設けられていてもよい。その貫通孔をレーザ装置3から出力されたパルスレーザ光32が通過してもよい。あるいは、チャンバ2には、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光32が透過する少なくとも1つのウィンドウ21が設けられてもよい。チャンバ2の内部には例えば、回転楕円面形状の反射面を有するEUV集光ミラー23が配置されてもよい。EUV集光ミラー23は、第1および第2の焦点を有し得る。EUV集光ミラー23の表面には例えば、モリブデンとシリコンとが交互に積層された多層反射膜が形成されていてもよい。EUV集光ミラー23は、例えば、その第1の焦点がプラズマ生成位置またはその近傍(プラズマ生成領域25)に位置し、その第2の焦点が露光装置の仕様によって規定される所望の集光位置(中間焦点(IF)292)に位置するように配置されるのが好ましい。EUV集光ミラー23の中央部には、パルスレーザ光33が通過するための貫通孔24が設けられてもよい。
【0015】
EUV光生成装置1は、EUV光生成制御システム5に接続されていてもよい。また、EUV光生成装置1は、ターゲットセンサ4を含んでもよい。ターゲットセンサ4は、ターゲットの存在、軌道、位置等を検出してもよい。ターゲットセンサ4は、撮像機能を有してもよい。
【0016】
さらに、EUV光生成装置1は、チャンバ2内部と露光装置6内部とを連通させるための接続部29を含んでもよい。接続部29内部には、アパーチャが形成された壁291が設けられてもよい。壁291は、そのアパーチャがEUV集光ミラー23の第2の焦点位置に位置するように配置されてもよい。
【0017】
さらに、EUV光生成装置1は、レーザ光進行方向制御部34、レーザ光集光光学系22、ドロップレット27を回収するためのターゲット回収部28等を含んでもよい。レーザ光進行方向制御部34は、レーザ光の進行方向を規定するための光学素子と、この光学素子の位置や姿勢等を調整するためのアクチュエータとを備えてもよい。
【0018】
2.2 動作
図1を参照に、レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経て、パルスレーザ光32としてウィンドウ21を透過して、チャンバ2に入射してもよい。パルスレーザ光32は、少なくとも1つのレーザ光経路に沿ってチャンバ2内に進み、レーザ光集光光学系22で反射されて、パルスレーザ光33として少なくとも1つのドロップレット27に照射されてもよい。
【0019】
ターゲット供給装置7からは、ドロップレット27がチャンバ2内部のプラズマ生成領域25に向けて出力されてもよい。ドロップレット27には、パルスレーザ光33に含まれる少なくとも1つのパルスレーザ光が照射され得る。パルスレーザ光33が照射されたドロップレット27はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251が放射され得る。EUV光251は、EUV集光ミラー23によって集光されるとともに反射されてもよい。EUV集光ミラー23で反射されたEUV光252は、中間焦点292を通って露光装置6に出力されてもよい。なお、1つのドロップレット27に、パルスレーザ光33に含まれる複数のパルスレーザ光が照射されてもよい。
【0020】
EUV光生成制御システム5は、EUV光生成システム11全体の制御を統括してもよい。EUV光生成制御システム5は、ターゲットセンサ4によって撮像されたドロップレット27のイメージデータ等を処理してもよい。EUV光生成制御システム5は、例えば、ドロップレット27を出力するタイミングやドロップレット27の出力速度等を制御してもよい。また、EUV光生成制御システム5は、例えば、レーザ装置3のレーザ発振タイミングやパルスレーザ光32の進行方向やパルスレーザ光33の集光位置等を制御してもよい。上述の様々な制御は単なる例示に過ぎず、必要に応じて他の制御を追加してもよい。
【0021】
3.クリーニング機構を備えたEUV光生成装置
3.1 構成
図2は、本開示の各実施形態に係るクリーニング機構が適用されるEUV光生成装置の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1は、チャンバ2と、ターゲット供給装置7と、クリーニング機構9とを備えてもよい。ターゲット供給装置7は、ターゲット生成部70と、ターゲット制御装置80とを備えてもよい。
【0022】
ターゲット生成部70は、ターゲット生成器71と、圧力調整器72とを備えてもよい。ターゲット生成器71は、内部にターゲット物質270を収容するためのタンク711を備えてもよい。タンク711は、筒状であってもよい。タンク711には、当該タンク711内のターゲット物質270を、ターゲット物質271としてチャンバ2内に出力するためのノズル712が設けられていてもよい。ノズル712の先端部713には、ノズル孔714が設けられていてもよい。ターゲット生成器71は、タンク711がチャンバ2外部に位置し、ノズル712がチャンバ2内部に位置するように設けられてもよい。圧力調整器72は、タンク711に連結されていてもよい。
【0023】
チャンバ2の設置形態によっては、予め設定されるターゲット物質271の出力方向(ノズル712の軸方向(設定出力方向10A(図6A参照)と称する))は、必ずしも重力方向10B(図6A参照)と一致するとは限らない。重力方向10Bに対して、斜め方向や水平方向に、ターゲット物質271が出力されるよう構成されてもよい。
【0024】
ターゲット制御装置80は、ターゲット生成部70の駆動とクリーニング機構9の駆動とを制御するよう構成されてもよい。
【0025】
クリーニング機構9は、ノズル712のノズル孔714周辺に付着したターゲット物質270を取り除いて、ノズル712をクリーニングするよう構成されてもよい。クリーニング機構9は、クリーニング時には、ノズル712をクリーニングするためのクリーニング部材93をノズル712に接触させるか、あるいは、ノズル712に接近させるように駆動されてもよい。クリーニング機構9は、チャンバ2内の圧力を変化させることなく、すなわちチャンバ2を密閉状態に維持したまま、クリーニング部材93を駆動させてもよい。
【0026】
3.2 動作
3.2.1 EUV光生成時
EUV光生成時には、ターゲット制御装置80は、クリーニング機構9に退避信号を送信し、クリーニング部材93を実線で示す位置に退避させるよう構成されてもよい。ターゲット制御装置80は、EUV光生成制御システム5からのターゲット生成信号を受信したときに、タンク711内の圧力を調節するための信号を圧力調整器72に送信するよう構成されてもよい。圧力調整器72は、この信号を受信したときに、タンク711内の圧力をターゲット物質271が出力され得る圧力に調節するよう構成されてもよい。
【0027】
ターゲット生成器71はノズル712を介して、ターゲット物質271を出力するよう構成されてもよい。出力されたターゲット物質271の位置、速度、大きさ、進行方向、所定位置における通過タイミングおよび通過周期、それらの安定性等を示す情報は、ターゲットセンサ4によって検出されてもよい。この検出された情報は、それぞれ信号として、ターゲット制御装置80を経由してEUV光生成制御システム5で受信されてもよい。例えば、EUV光生成制御システム5は、ターゲット物質271の所定位置における通過タイミングを示す信号を受信すると、ターゲット物質271がプラズマ生成領域25に到達したときにターゲット物質271にパルスレーザ光33が照射されるように、レーザ装置3にパルスレーザ光31の発振トリガを入力するよう構成されてもよい。
【0028】
レーザ装置3から出力されたパルスレーザ光31は、レーザ光進行方向制御部34を経由して、パルスレーザ光32としてウィンドウ21を透過し、チャンバ2内に入射してもよい。チャンバ2内に入射したパルスレーザ光32は、レーザ光集光光学系22を介して、パルスレーザ光33としてターゲット物質271に照射されてもよい。ターゲット物質271にパルスレーザ光33が照射されると、ターゲット物質271はプラズマ化し、そのプラズマからEUV光251を含む電磁波が放射される。放射された電磁波のうち少なくともEUV光251は、EUV集光ミラー23によって反射され、EUV光252として中間焦点292に集光され、露光装置6に出力されてもよい。このようにしてEUV光が生成されて得る。
【0029】
3.2.2 クリーニング時
ノズル712のクリーニング方法は、大気圧よりも低い圧力のチャンバ2内でノズル712を物理的にクリーニングすることを含んでもよい。ここで、チャンバ2の圧力が大気圧よりも低い状態とは、EUV光生成後にチャンバ2が開放されず、当該チャンバ2内の圧力が、EUV光生成時とほぼ同じ状態であることを意味してもよい。
【0030】
ターゲット生成器71のノズル712のクリーニングは、以下のタイミングで実行されてもよい。
タイミング1:EUV光生成装置において、所定時間EUV光の生成が行われた後に、所定時間以上EUV光の生成が停止された場合。
タイミング2:ターゲット物質が出力される時間が所定時間を越えた場合、または、ターゲット物質がドロップレットの形状で出力される場合には、ドロップレットの出力数が所定値を超えた場合。
タイミング3:ターゲット物質の位置安定性が悪化した場合、または、ターゲット物質の位置ずれが許容範囲を超えた場合。
【0031】
EUV光生成制御システム5は、上述のタイミング1,2,3を監視/管理して、ターゲット制御装置80にクリーニング信号を送信するよう構成されてもよい。クリーニングが実行され得るタイミングにおいて、ターゲット制御装置80は、チャンバ2内の圧力が大気圧よりも低い状態において、クリーニング機構9にクリーニング信号を送信し、ターゲット生成器71のノズル712のクリーニングが実行されるよう構成されてもよい。
【0032】
クリーニング機構9は、クリーニング信号を受信したときに、クリーニング部材93を二点鎖線で示す位置に移動させ、ノズル712に接触させるか、あるいは、ノズル712に接近させることで、ターゲット物質270が付着したノズル712が物理的にクリーニングされるよう構成されてもよい。
【0033】
上述のように、クリーニング機構9は、大気圧よりも低い圧力のチャンバ2内で、クリーニング部材93によって、ノズル712が物理的にクリーニンされるようする構成されてもよい。これにより、ノズル712からクリーニング後に出力されるターゲット物質271が、ノズル孔714周縁に付着したターゲット物質270に接触することが抑制され、ターゲット物質271の出力方向が曲げられる可能性が低減され、ターゲット物質271の出力位置の安定性が向上し得る。
【0034】
また、チャンバ2を開放することなくノズル712がクリーニングされ得るため、チャンバ2外の異物がチャンバ2内に侵入したり、チャンバ2内のターゲット物質271などがチャンバ2外に放出されたりすることが抑制され得る。さらには、チャンバ2を開放することにより、チャンバ2内の圧力がクリーニングに先立って大気圧まで上がってしまった際、クリーニング後に、EUV光生成時の圧力まで下げる動作が不要となる可能性があり、EUV光生成再開までの時間が短縮され得る。
【0035】
4. 液体金属と固体金属間の接触角
図3Aは、液体と固体との接触角が90°以下の状態を概略的に示す。図3Bは、液体と固体との接触角が90°を超える状態を概略的に示す。一般に、液体と固体との間の濡れやすさは、接触角で評価され得る。接触角とは、液滴701の固体表面接触部における接線と固体表面702とのなす角度である。図3Aに示すように、接触角が0°以上、90°以下の場合は、浸漬濡れであり、液体が浸漬していつかは固体表面を覆い得る。一方、図3Bに示すように、接触角が90°を超える場合は、付着濡れであり、濡れが進行しないまま、ある程度液滴形状が維持され得る。
【0036】
液体金属と接触することによって固体金属が溶解しない場合の液体金属と固体金属との間の接触角に関しては、以下の式(1)で得られる値と、実験値とが、ある程度一致することが知られている。
1−cosθ=0.36(Tx/Ty−1)−0.04 … (1)
θ :接触角
Tx:固体金属の融点
Ty:液体金属の融点
【0037】
5.EUV光生成装置の実施形態
5.1 用語の説明
以下、図4,7,12,15,16,17,21における紙面上方向を+Z方向と表現し、下方向を−Z方向と表現し、上方向と下方向とをZ軸方向と表現する場合がある。同様に、図4,7,12,15,16,17,21における紙面右方向を+X方向と表現し、左方向を−X方向と表現し、右方向と左方向とをX軸方向と表現する場合がある。なお、これらの表現は、重力方向10Bとの関係を表すものではない。また、ターゲット出力停止圧力とは、ノズルからのターゲット物質の出力が停止される圧力を表す。
【0038】
5.2 第1実施形態
5.2.1 概略
本開示の第1実施形態によれば、クリーニング機構は、クリーニング部材と、温度調節部と、接触移動機構とを備えてもよい。クリーニング部材は、ターゲット物質との接触角が、ノズルとターゲット物質との接触角よりも小さい特性を有していてもよい。温度調節部は、クリーニング部材の温度をターゲット物質の融点以上に調節するよう構成されてもよい。接触移動機構は、クリーニング部材とノズルとが接触可能なように、クリーニング部材とノズルとを相対移動させてもよい。
【0039】
このような構成を用いて、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内でノズルがクリーニングされてもよい。このノズルのクリーニング方法は、クリーニング部材の温度をターゲット物質の融点以上に調節することと、クリーニング部材とノズルとを接触させることと、クリーニング部材とノズルとを離間させることと、を含んでもよい。
【0040】
以上のような構成により、クリーニング部材とノズルとを接触させることで、ターゲット物質との濡れ性が比較的低いノズルに付着していたターゲット物質のほとんどが、ターゲット物質との濡れ性が比較的高いクリーニング部材に付着し得る。そして、ターゲット物質が付着したクリーニング部材をノズルから離間させることで、ノズルに付着していたターゲット物質が物理的に除去され、ノズルがクリーニングされ得る。
【0041】
5.2.2 構成
図4は、第1実施形態に係るEUV光生装置の一部の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1Aは、チャンバ2と、ターゲット供給装置7Aと、クリーニング機構9Aとを備えてもよい。ターゲット供給装置7Aは、ターゲット生成部70Aと、ターゲット制御装置80Aとを備えてもよい。ターゲット生成部70Aは、ターゲット生成器71と、圧力調整器72と、第1温度調節部73Aとを備えてもよい。
【0042】
タンク711に収容されるターゲット物質270は、融点が232℃のスズ、融点が1312℃のガドリニウム、融点が1356℃のテルビウム等の金属であってもよい。
【0043】
ノズル712の少なくとも先端部713は、ターゲット物質270との濡れ性が低い材料で構成されるのが好ましい。具体的には、ターゲット物質270との濡れ性が低い材料とは、ターゲット物質270との接触角が90°を超える材料であり得る。先端部713がターゲット物質270との濡れ性が低い材料で構成されていない場合には、少なくとも先端部713の表面が、当該濡れ性が低い材料でコーティングされてもよい。
【0044】
圧力調整器72には、不活性ガスボンベ721Aが接続されていてもよい。圧力調整器72は、不活性ガスボンベ721Aから供給される不活性ガスの圧力を制御して、タンク711内の圧力を調節するよう構成されてもよい。
【0045】
第1温度調節部73Aは、タンク711内のターゲット物質270の温度を調節するよう構成されてもよい。第1温度調節部73Aは、第1ヒータ731Aと、第1ヒータ電源732Aと、第1温度センサ733Aと、第1温度コントローラ734Aとを備えてもよい。第1ヒータ731Aは、タンク711の外周面に設けられてもよい。第1ヒータ電源732Aは、第1ヒータ731Aと第1温度コントローラ734Aとに接続されていてもよい。第1ヒータ電源732Aは、第1温度コントローラ734Aからの信号に基づいて、第1ヒータ731Aに電力を供給して第1ヒータ731Aを発熱させてもよい。それにより、タンク711内のターゲット物質270が加熱され得る。
【0046】
第1温度センサ733Aは、タンク711の外周面におけるノズル712側に設けられてもよいし、タンク711内に設けられてもよい。第1温度センサ733Aには、第1温度コントローラ734Aが接続されていてもよい。第1温度センサ733Aは、タンク711内のターゲット物質270の温度を検出して、当該検出された温度に対応する信号を第1温度コントローラ734Aに送信するよう構成されてもよい。第1温度コントローラ734Aは、第1温度センサ733Aからの信号に基づいて、ターゲット物質270の温度を判定し、ターゲット物質270の温度を所定温度に調節するための信号を第1ヒータ電源732Aに出力するよう構成されてもよい。
【0047】
クリーニング機構9Aは、接触移動機構としての駆動機構91Aと、保持部92Aと、クリーニング部材93Aと、温度調節部としての第2温度調節部94Aとを備えてもよい。
駆動機構91Aは、クリーニング部材93Aとノズル712とが接触可能なように、クリーニング部材93Aをノズル712に対して移動させてもよい。駆動機構91Aは、チャンバ2内の圧力を変化させることなく、すなわちチャンバ2を密閉状態に維持したまま、クリーニング部材93Aを移動させるよう構成されてもよい。駆動機構91Aは、ステージ911Aと、Z駆動機構912Aと、X駆動機構913Aと、ドライバ914Aとを備えてもよい。
【0048】
ステージ911Aと、Z駆動機構912Aと、X駆動機構913Aとは、チャンバ2内に設けられてもよい。ステージ911Aは、Z駆動機構912AによってZ軸方向に移動可能なように設けられてもよい。Z駆動機構912Aは、X駆動機構913AによってX軸方向に移動可能なように設けられてもよい。
【0049】
ドライバ914Aは、チャンバ2外に設けられてもよい。ドライバ914Aは、チャンバ2の壁部に設けられた第1導入端子915Aを介して、Z駆動機構912AとX駆動機構913Aとに接続されていてもよい。
【0050】
保持部92Aは、チャンバ2内においてクリーニング部材93Aを保持してもよい。保持部92Aは、ポール921Aと、絶縁部材922Aと、ホルダ923Aとを備えてもよい。ポール921Aは、ステージ911Aの下面から−Z方向に延びるように設けられてもよい。絶縁部材922Aは、ポール921Aの先端側から、+X方向に延びるように設けられてもよい。ホルダ923Aは、伝熱性が良好な材料により円筒形状に形成されてもよい。ホルダ923Aは、円筒形状の内側においてクリーニング部材93Aを保持してもよい。ホルダ923Aは、その外周面が絶縁部材922Aの先端に接続されていてもよい。なお、ホルダ923Aは、多角筒形状に形成されてもよいし、底があってもなくてもよい。
【0051】
クリーニング部材93Aは、ターゲット物質270との接触角が、先端部713の表面とターゲット物質270との接触角よりも小さい材料、すなわちターゲット物質270との濡れ性が高い材料で構成されるのが好ましい。クリーニング部材93Aは、金属箔、または金属布であってもよいが、接触時に先端部713に与えるダメージが低減され得ることから金属箔であることが好ましい。
【0052】
クリーニング部材93Aの材料としては、ターゲット物質270がスズの場合には、以下の表1に示すものでもよい。ターゲット物質270がガドリニウムの場合には、以下の表2に示すものでもよい。ターゲット物質270がテルビウムの場合には、以下の表3に示すものでもよい。これらの表1〜表3に示す材料のうち、クリーニング部材93Aの材料としては、比較的軟らかく、かつ、さびにくいなど表面状態が安定しているという観点から、金、アルミニウム、銀、ニッケルなどが好ましい。また、クリーニング部材93Aは、表1〜表3に示す材料以外の材料で形成された部材の表面に、表1〜表3に示す材料がコーティングされて構成されてもよい。
【0053】
【表1】

【0054】
【表2】

【0055】
【表3】

【0056】
第2温度調節部94Aは、クリーニング部材93Aの温度を調節するよう構成されてもよい。第2温度調節部94Aは、第2ヒータ941Aと、第2ヒータ電源942Aと、第2温度センサ943Aと、第2温度コントローラ944Aとを備えてもよい。第2ヒータ941Aは、ホルダ923Aのノズル712に対向する側とは反対側に設けられてもよい。第2ヒータ941Aは、薄型のセラミックヒータでもよい。例えば、第2ヒータ941Aは、減圧熱分解CVD法で製造された、熱分解窒素ホウ素と熱分解グラファイトとが積層されたセラミックヒータでもよい。第2ヒータ電源942Aは、チャンバ2の壁部に設けられた第2導入端子945Aを介して、第2ヒータ941Aに接続されてもよい。第2ヒータ電源942Aは、第2温度コントローラ944Aに接続されてもよい。第2ヒータ電源942Aは、第2温度コントローラ944Aからの信号に基づいて、第2ヒータ941Aに電力を供給して、第2ヒータ941Aを発熱させてもよい。これにより、クリーニング部材93Aは、その下面側から輻射熱によって加熱され得る。あるいは、クリーニング部材93Aは、第2ヒータ941Aによりホルダ923Aが加熱されることによる伝熱によって、間接的に加熱されてもよい。
【0057】
第2温度センサ943Aは、ホルダ923Aの外周面に設けられてもよい。第2温度センサ943Aには、第2導入端子945Aを介して第2温度コントローラ944Aが接続されてもよい。第2温度センサ943Aは、クリーニング部材93Aの温度を検出して、当該検出された温度に対応する信号を第2温度コントローラ944Aに送信するよう構成されてもよい。第2温度コントローラ944Aは、第2温度センサ943Aからの信号に基づいて、クリーニング部材93Aの温度を判定し、クリーニング部材93Aの温度を所定温度に調節するための信号を第2ヒータ電源942Aに出力するよう構成されてもよい。
【0058】
ターゲット制御装置80Aは、EUV光生成制御システム5と、圧力調整器72と、第1温度コントローラ734Aと、ドライバ914Aと、第2温度コントローラ944Aとに接続されていてもよい。
【0059】
5.2.3 動作
5.2.3.1 EUV光生成時
チャンバ2内の圧力がEUV光を生成可能な圧力に調整された状態において、ターゲット制御装置80Aは、第1温度コントローラ734Aに信号を送信するよう構成されてもよい。この信号に基づいて、ターゲット生成器71内のターゲット物質270の温度が、当該ターゲット物質270の融点以上の温度になるように、第1ヒータ電源732Aが制御されるよう構成されてもよい。ターゲット物質270の融点以上の温度は、ターゲット物質270がスズの場合には232℃以上、ガドリニウムの場合には1312℃以上、テルビウムの場合には1356℃以上であってもよい。第1温度コントローラ734Aは、第1温度センサ733Aからの信号に基づいて、ターゲット生成器71内のターゲット物質270の温度を判定し、ターゲット物質270の温度が融点以上となるように、第1ヒータ電源732Aに供給される電力を制御するよう構成されてもよい。
【0060】
ターゲット制御装置80Aは、EUV光生成制御システム5からのターゲット生成信号を受信すると、不活性ガスボンベ721Aから供給される不活性ガスの圧力を調節するための圧力調整器72に信号を送信するよう構成されてもよい。この信号に基づいて、タンク711内の圧力が、ターゲット物質271が出力され得る圧力に調節されてもよい。すなわち、この信号に基づいて、圧力調整器72がタンク711内の圧力を上昇させると、ノズル712を介してターゲット物質270がターゲット物質271として出力され得る。この場合のターゲット物質271の形態は、ジェットであってもよいし、ドロップレットであってもよい。チャンバ2内に出力されたターゲット物質271は、パルスレーザ光33が照射されるとプラズマ化し得る。その結果、EUV光251が放射され得る。
【0061】
5.2.3.2 クリーニング時
図5は、第1実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。図6Aは、第1実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。図6Bは、第1実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。図6Cは、第1実施形態に係るクリーニング部材がノズルと接触している状態を示す。図6Dは、第1実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【0062】
チャンバ2の圧力が大気圧よりも低い状態において、ターゲット制御装置80Aは、EUV光生成制御システム5からクリーニング信号を受信すると、図5に示すように、圧力調整器72に信号を送信して、圧力調整器72の設定圧力をターゲット出力停止圧力まで下げてもよい(ステップS1)。次に、ターゲット制御装置80Aが、第2温度コントローラ944Aに信号を送信して、クリーニング部材93Aの温度が、ターゲット物質270の融点以上の温度となるように、クリーニング部材93Aが加熱されてもよい(ステップS2)。この信号を受信した第2温度コントローラ944Aは、ホルダ923Aに固定された第2温度センサ943Aでの検出結果に基づいて、第2ヒータ941Aに供給される電力を制御してもよい。これにより、クリーニング部材93Aの温度が調節されてもよい。ステップS1およびステップS2においては、図6Aに示すように、クリーニング部材93Aは、ノズル712よりも、−X方向側に位置していてもよい。
【0063】
第2温度コントローラ944Aは、第2温度センサ943Aでの検出結果に基づいて、クリーニング部材93Aの温度がターゲット物質270の融点以上となったことを示す信号をターゲット制御装置80Aに送信するよう構成されてもよい。ターゲット制御装置80Aは、ドライバ914Aに信号を送信してもよい。これにより、図5に示すように、ドライバ914AがX駆動機構913Aにより保持部92Aを+X方向に移動させ、クリーニング部材93Aと先端部713とを対向させてもよい(ステップS3)。この結果、図6Bに示すように、クリーニング部材93Aが所定の間隔を開けて先端部713と対向するよう構成されてもよい。
【0064】
次に、ターゲット制御装置80Aは、ドライバ914Aに信号を送信してもよい。これにより、図5に示すように、ドライバ914AがZ駆動機構912Aを制御して、保持部92Aを+Z方向に移動させ、クリーニング部材93Aを先端部713に接触させてもよい(ステップS4)。この結果、図6Cに示すように、クリーニング部材93Aが先端部713に接触するよう構成されてもよい。
【0065】
クリーニング部材93Aを先端部713に接触させることによって、ノズル孔714周縁に付着していたターゲット物質270をクリーニング部材93Aに付着させてもよい。ここで、クリーニング部材93Aは、先端部713よりも、ターゲット物質270との濡れ性が高い材料で構成されているのが好ましい。この場合、ノズル孔714周縁に付着していたターゲット物質270のほとんどは、より濡れ性が低い先端部713からより濡れ性が高いクリーニング部材93Aに付着し得る。
【0066】
この後、ターゲット制御装置80Aは、ドライバ914Aを介してX駆動機構913Aを制御して、図5に示すように、クリーニング部材93Aを先端部713に接触させたまま、クリーニング部材93AをX軸方向に往復移動させてもよい(ステップS5)。なお、クリーニング部材93Aを、+X方向のみまたは−X方向のみに移動させてもよい。
【0067】
次いで、ターゲット制御装置80Aは、ドライバ914Aを介してZ駆動機構912Aを制御して、図5および図6Dに示すように、保持部92Aを−Z方向に移動させることで、クリーニング部材93Aを所定の間隔を開けて先端部713と対向させてもよい(ステップS6)。このときのクリーニング部材93Aと先端部713との間隔は、図6Bに示す状態における間隔と同じであってもよいし、異なっていてもよい。
【0068】
このように、クリーニング部材93Aと先端部713とを離間させることによって、先端部713に付着していたターゲット物質270のほとんどがクリーニング部材93Aに付着し、先端部713からターゲット物質270が除去され得る。
【0069】
そして、ターゲット制御装置80Aは、図5に示すように、クリーニングを終了するか否かを判断し(ステップS7)、終了しないと判断した場合には、ステップS4に戻ってもよい。
【0070】
一方で、ステップS7において、ターゲット制御装置80Aは、クリーニングを終了すると判断した場合、図5に示すように、第2温度コントローラ944Aに信号を送信して、クリーニング部材93Aの加熱を停止してもよい(ステップS8)。この信号を受信した第2温度コントローラ944Aは、第2ヒータ電源942Aを制御して、第2ヒータ941Aへの電力供給を停止させることで、クリーニング部材93Aの加熱を停止してもよい。
【0071】
この後、ターゲット制御装置80Aは、ドライバ914Aを介してX駆動機構913Aを制御して、図5に示すように、クリーニング部材93Aを、例えば図6Aに示す位置に退避させてもよい(ステップS9)。その後、ターゲット制御装置80Aは、図5に示すように、EUV光生成制御システム5にクリーニング完了信号を送信して、クリーニングを終了してもよい(ステップS10)。
【0072】
上述のように、ターゲット物質270との濡れ性がノズル712よりも高いクリーニング部材93Aを、ターゲット物質270の融点以上の温度まで加熱して、ノズル712に接触させてもよい。その後、クリーニング部材93Aをノズル712から離間させてもよい。このような構成および動作によって、ノズル712に付着していたターゲット物質270がクリーニング部材93Aにより物理的に除去され、ノズル712がクリーニングされ得る。また、設定出力方向10Aが重力方向10Bと一致する場合のみならず、重力方向10Bに対して斜めの場合、あるいは、重力方向10Bに対して直交する(水平方向と一致する)場合であっても、ノズル712に付着したターゲット物質270がクリーニング部材93Aに付着し、ノズル712がクリーニングされ得る。
【0073】
クリーニング部材93Aをノズル712に接触させたまま、クリーニング部材93AをX軸方向に往復移動させることで、ノズル712に対するクリーニング部材93Aの接触面積が広くなり得る。これにより、クリーニング部材93Aへのターゲット物質270の付着量が多くなり得る。
【0074】
なお、駆動機構91Aは、クリーニング部材93Aとノズル712との両方を移動させることで、または、ノズル712のみを移動させることで、クリーニング部材93Aとノズル712とを接触させるよう構成されてもよい。また、ステップS7の処理を行わずに、ステップS6の処理の後にステップS8の処理が行われるよう構成されてもよい。さらには、ステップS5の処理が行われないよう構成されてもよい。
【0075】
5.3 第2実施形態
5.3.1 概略
本開示の第2実施形態によれば、クリーニング機構は、クリーニング部材と、温度調節部と、接近移動機構と、出力調整部とを備えてもよい。クリーニング部材は、ターゲット物質との接触角が、ノズルとターゲット物質との接触角よりも小さい特性を有しているのが好ましい。温度調節部は、クリーニング部材の温度をターゲット物質の融点以上の温度に調節するよう構成されてもよい。接近移動機構は、クリーニング部材とノズルとが接近可能なように、クリーニング部材とノズルとを相対移動させるよう構成されてもよい。出力調整部は、ノズルから所定量のターゲット物質を出力させるよう構成されてもよい。
【0076】
このような構成により、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内でノズルがクリーニングされてもよい。このノズルのクリーニング方法は、クリーニング部材の温度をターゲット物質の融点以上の温度に調節することと、クリーニング部材とノズルとを接近させることと、ノズルから所定量のターゲット物質を出力させることと、クリーニング部材とノズルとを離間させることと、を含んでもよい。
【0077】
以上のような構成により、クリーニング部材とノズルとを接近させ、ノズルからターゲット物質を所定量出力させることで、ノズルとクリーニング部材との間がターゲット物質で満たされ得る。これによって、ノズルに付着していたターゲット物質のほとんどがノズルとクリーニング部材との間に満たされたターゲット物質に取り込まれ、クリーニング部材に付着し得る。この後、クリーニング部材とノズルとを離間させることで、ノズルに付着していたターゲット物質が物理的に除去され、ノズルがクリーニングされ得る。
【0078】
ノズルとクリーニング部材とを接触させなくても、クリーニング部材をノズルに接近させて、ノズルからターゲット物質を所定量出力させることで、ノズル孔周縁に付着していたターゲット物質がクリーニング部材に付着して除去され得る。この場合、ノズルとクリーニング部材とを接触させないため、ノズルの損傷が抑制され得る。
【0079】
なお、本開示の第2実施形態では、設定出力方向10Aが重力方向10Bと直交するように設定された場合を図9Aから図9Eを参照に例示する。また、以下の動作の説明においては、クリーニング時の動作について説明し、EUV光生成時の動作についての説明を省略する。
【0080】
5.3.2 構成
図7は、第2実施形態および後述する第3実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1Bは、チャンバ2と、ターゲット供給装置7Bと、クリーニング機構9Bとを備えてもよい。ターゲット供給装置7Bは、ターゲット生成部70Aと、ターゲット制御装置80Bとを備えてもよい。
【0081】
クリーニング機構9Bは、接近移動機構としての駆動機構91Aと、保持部92Aと、温度調節部としての第2温度調節部94Aとを備えてもよい。また、圧力調整器72は、クリーニング機構9Bを構成する出力制御部として機能するよう構成されてもよい。駆動機構91Aは、クリーニング部材93Aとノズル712とが接近可能なように、クリーニング部材93Aをノズル712に対して移動させるよう構成されてもよい。
【0082】
5.3.3 動作
5.3.3.1 クリーニング時
図8は、第2実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。図9Aは、第2実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。図9Bは、第2実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。図9Cは、第2実施形態に係るクリーニング部材がノズルと接近している状態を示す。図9Dは、第2実施形態に係り、所定量のターゲット物質が出力された状態を示す。図9Eは、第2実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【0083】
チャンバ2内の圧力が大気圧よりも低い状態において、EUV光生成装置1Bでは、まず、図8に示すようなステップS1およびステップS2の処理が行われてもよい。このとき、クリーニング部材93Aとノズル712との位置関係は、図9Aに示すような関係でもよい。その後、EUV光生成装置1Bは、図8および図9Bに示すように、所定の間隔を開けてクリーニング部材93Aと先端部713とを対向させるよう構成されてもよい(ステップS3)。
【0084】
ターゲット制御装置80Bは、ドライバ914Aに信号を送信してもよい。これにより、図8に示すように、ドライバ914Aは、保持部92Aを+Z方向に移動させて、クリーニング部材93Aを先端部713に接近させてもよい。(ステップS21)。この時点では、図9Cに示すように、クリーニング部材93Aと先端部713とを接近させることによって、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270をクリーニング部材93Aに付着させなくてもよい。
【0085】
この後、ターゲット制御装置80Bは、図8に示すように、圧力調整器72に信号を送信して、圧力調整器72の設定圧力をノズル712からターゲット物質270が所定量出力されるような圧力に制御してもよい(ステップS22)。ターゲット物質270を所定量出力させることによって、図9Dに示すように、先端部713とクリーニング部材93Aとの間がターゲット物質270で満たされ得る。これにより、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270は、先端部713とクリーニング部材93Aとの間に満たされたターゲット物質270に取り込まれ得る。それにより、ターゲット物質270はクリーニング部材93Aに付着し得る。その結果、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270のほとんどが、よりターゲット物質270との濡れ性が低い先端部713からより当該濡れ性が高いクリーニング部材93Aに付着し得る。
【0086】
その後、ターゲット制御装置80Bは、図8および図9Eに示すように、保持部92Aを−Z方向に移動させることで、所定の間隔を開けてクリーニング部材93Aと先端部713とを対向させてもよい(ステップS6)。
【0087】
このように、クリーニング部材93Aと先端部713とを離間させることによって、先端部713に付着していたターゲット物質270のほとんどがクリーニング部材93Aに付着し、先端部713からターゲット物質270が除去され得る。
【0088】
この後、ターゲット制御装置80Bは、図8に示すように、ステップS7〜ステップS10の処理を行ってもよい。
【0089】
上述のように、ノズル712よりも、ターゲット物質270との濡れ性が高いクリーニング部材93Aを、ターゲット物質270の融点以上の温度まで加熱して、ノズル712に接近させるよう構成されてもよい。そして、ノズル712からターゲット物質270を所定量出力させることでノズル712とクリーニング部材93Aとの間がターゲット物質270で満たされ、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270がクリーニング部材93Aに付着し得る。この後、クリーニング部材93Aをノズル712から離間させるよう構成されてもよい。
【0090】
このような構成によって、ノズル712に付着しているターゲット物質270がクリーニング部材93Aにより物理的に除去され、ノズル712がクリーニングされ得る。また、設定出力方向10Aが重力方向10Bに対して直交する場合のみならず、重力方向10Bと一致する場合、あるいは、重力方向10Bに対して斜めの場合であっても、ノズル712に付着したターゲット物質270がクリーニング部材93Aに付着し、ノズル712がクリーニングされ得る。なお、ノズル712とクリーニング部材93Aとの間がターゲット物質270で満たされた状態は、ターゲット物質270の表面張力によって保持され得る。
【0091】
以上のように、ノズル712とクリーニング部材93Aとを接触させなくても、クリーニング部材93Aにノズル712を接近させて、ターゲット物質270を所定量出力させることで、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270がクリーニング部材93Aに付着して除去され得る。この場合、ノズル712とクリーニング部材93Aとを接触させないため、ノズル712の損傷が抑制され得る。
【0092】
5.4 第3実施形態
5.4.1 概略
本開示の第3実施形態に係るクリーニング機構は、第2実施形態に係るクリーニング機構と同様に構成されるクリーニング部材と、温度調節部と、接近移動機構と、出力調整部とを備えてもよい。このような構成において、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内でノズルがクリーニングされてもよい。このノズルのクリーニング方法は、クリーニング部材の温度をターゲット物質の融点以上の温度に調節することと、ノズルから所定量のターゲット物質を出力させることと、クリーニング部材とノズルとを接近させることと、クリーニング部材とノズルとを離間させることと、を含んでもよい。
【0093】
以上のような構成において、ノズルとクリーニング部材とが離間した状態でノズルからターゲット物質を所定量出力させた後に、ノズルとクリーニング部材とを接近させることで、ノズルとクリーニング部材との間がターゲット物質で満たされ得る。これによって、ノズルに付着しているターゲット物質のほとんどがノズルとクリーニング部材との間に満たされたターゲット物質に取り込まれ、クリーニング部材に付着し得る。この後、クリーニング部材とノズルとを離間させることで、ノズルに付着しているターゲット物質が物理的に除去され、ノズルがクリーニングされ得る。
【0094】
この場合、ノズルとクリーニング部材とを接触させなくても、ノズルからターゲット物質を所定量出力させた後に、クリーニング部材をノズルに接近させることで、ノズル先端部に付着しているターゲット物質がクリーニング部材に付着して除去され得る。このため、ノズルの損傷が抑制され得る。
【0095】
なお、本開示の第3実施形態では、図7に示すEUV光生成装置1Bにおいて、設定出力方向10Aを重力方向10Bに対して斜めに設定した場合を図11Aから図11Eを参照に例示する。また、以下の動作の説明においては、クリーニング時の動作について説明し、EUV光生成時の動作についての説明を省略する。
【0096】
5.4.2 動作
5.4.2.1 クリーニング時
図10は、第3実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。図11Aは、第3実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。図11Bは、第3実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。図11Cは、第3実施形態に係り、所定量のターゲット物質が出力された状態を示す。図11Dは、第3実施形態に係るクリーニング部材がノズルと接近している状態を示す。図11Eは、第3実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【0097】
チャンバ2内の圧力が大気圧よりも低い状態において、EUV光生成装置1Bでは、まず、図10に示すようなステップS1〜ステップS3の処理が行われてもよい。ステップS1およびステップS2におけるクリーニング部材93Aとノズル712との位置関係は、図11Aに示すような関係であってもよいし、ステップS3においては、図11Bに示すような関係であってもよい。
【0098】
この後、ターゲット制御装置80Bは、図10に示すように、圧力調整器72の設定圧力をノズル712からターゲット物質270が所定量出力され得る圧力に制御してもよい(ステップS31)。ターゲット物質270を所定量出力させることによって、図11Cに示すように、ノズル孔714を覆うように、ターゲット物質270を先端部713に付着させてもよい。
【0099】
その後、ターゲット制御装置80Bは、図10および図11Dに示すように、クリーニング部材93Aを先端部713に接近させてもよい(ステップS32)。クリーニング部材93Aを先端部713に接近させることで、ノズル孔714を覆っているターゲット物質270によって、先端部713とクリーニング部材93Aとの間が満たされ得る。これにより、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270は、先端部713とクリーニング部材93Aとの間に満たされたターゲット物質270に取り込まれ得る。これにより、ターゲット物質270はクリーニング部材93Aに付着し得る。その結果、ノズル孔714を覆っていたターゲット物質270のほとんどは、ターゲット物質270に対してより濡れ性が低い先端部713からより当該濡れ性が高いクリーニング部材93Aに付着し得る。
【0100】
次いで、ターゲット制御装置80Bは、図10および図11Eに示すように、所定の間隔を開けてクリーニング部材93Aと先端部713とを対向させることで(ステップS6)、先端部713に付着していたターゲット物質270のほとんどをクリーニング部材93Aに付着し、先端部713からターゲット物質270が除去され得る。この後、ターゲット制御装置80Bは、図10に示すように、ステップS7〜ステップS10の処理を行ってもよい。
【0101】
上述のように、ノズル712よりも、ターゲット物質270との濡れ性が高いクリーニング部材93Aがノズル712と離間した状態において、クリーニング部材93Aは、ターゲット物質270の融点以上の温度に加熱されてもよい。その後、ノズル712からターゲット物質270を所定量出力させ、クリーニング部材93Aをノズル712に接近させてもよい。これにより、ノズル712とクリーニング部材93Aとの間がターゲット物質270で満たされ、ノズル孔714を覆うようにノズル712に付着していたターゲット物質270がクリーニング部材93Aに付着し得る。その後、クリーニング部材93Aを先端部713から離間させてもよい。
【0102】
このような構成によって、ノズル712に付着していたターゲット物質270がクリーニング部材93Aにより物理的に除去され、ノズル712がクリーニングされ得る。また、設定出力方向10Aが重力方向10Bに対して斜めの場合のみならず、重力方向10Bと一致する場合、あるいは、重力方向10Bに対して直交する場合であっても、ノズル712に付着したターゲット物質270をクリーニング部材93Aに付着させることによって、ノズル712がクリーニングされ得る。なお、ノズル712とクリーニング部材93Aとの間がターゲット物質270で満たされた状態は、ターゲット物質270の表面張力によって保持され得る。
【0103】
上述のように、ノズル712とクリーニング部材93Aとを接触させなくても、ノズル712からターゲット物質270を所定量出力させた後に、クリーニング部材93Aをノズル712に接近させることで、ノズル孔714を覆っていたターゲット物質270がクリーニング部材93Aに付着し得る。このように、ノズル712とクリーニング部材93Aとを接触させないため、ノズルの損傷が抑制され得る。
【0104】
なお、第2実施形態および第3実施形態において、駆動機構91Aは、クリーニング部材93Aとノズル712との両方を移動させることで、または、ノズル712のみを移動させることで、クリーニング部材93Aとノズル712とを接近させるよう構成されてもよい。さらには、ステップS7の処理を行わずに、ステップS6の処理の後にステップS8の処理が行われてもよい。また、ステップS2とステップS3との順序が入れ替えられてもよい。
【0105】
5.5 第4実施形態
5.5.1 概略
本開示の第4実施形態によれば、クリーニング機構は、容器と、接触移動機構とを備えてもよい。容器には、金属が液状で貯留されてもよい。接触移動機構は、容器内の液体金属とノズルとが接触可能なように、容器とノズルとを相対移動させてもよい。このような構成により、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内でノズルがクリーニングされてもよい。このノズルのクリーニング方法は、液体金属とノズルとを接触させることと、液体金属とノズルとを離間させることと、を含んでもよい。
【0106】
以上のような構成により、液体金属とノズルとを接触させることにより、ノズルに付着していたターゲット物質のほとんどが液体金属に融解し得る。その後、液体金属とノズルとを離間させることで、ノズルに付着していたターゲット物質が物理的に除去され、ノズルがクリーニングされ得る。
【0107】
このように、ノズルと液体金属とを接触させることによって、ノズル孔周縁に付着していたターゲット物質が除去され得るため、ノズルの損傷が抑制され得る。
【0108】
上述のように、ノズルとクリーニング部材とを接触させなくても、ノズルからターゲット物質を所定量出力させた後に、クリーニング部材をノズルに接近させることで、ノズル先端部に付着したターゲット物質がクリーニング部材に付着して除去され得る。このため、ノズルの損傷が抑制され得る。
【0109】
また、本開示の第4の実施形態によれば、液体金属は、ノズルから出力されるターゲット物質と同種の物質であってもよい。この場合、クリーニング機構は、温度調整部を更に備えていてもよい。温度調整部は、容器に貯留された物質を、当該物質の融点以上の温度に調節するよう構成されてもよい。
【0110】
このような構成を用いて、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内でノズルをクリーニングする方法は、容器内の物質とノズルとを接触させることと、容器内の物質の温度を当該物質の融点以上の温度に調節することと、容器内の物質とノズルとを離間させることと、を含んでもよい。
【0111】
以上のような構成により、ノズルに付着していたターゲット物質のほとんどが、容器内の物質に取り込まれ、ノズルがクリーニングされ得る。
【0112】
あるいは、ターゲット物質とは異なる液体金属でノズルをクリーニングするよう構成されてもよい。この場合、ノズル先端部に付着したターゲット物質が除去され得る一方で、当該ターゲット物質と液体金属との反応物が容器内に蓄積され得る。これに対して、ノズルに付着したターゲット物質と同種の物質をノズルに接触させることで、上記のような反応物が容器内に蓄積されるのが抑制され得る。
【0113】
なお、本開示の第4実施形態では、設定出力方向10Aが重力方向10Bと一致するように設定された場合を図14Aから図14Dを参照に例示する。以下の動作の説明においては、クリーニング時の動作について説明し、EUV光生成時の動作についての説明を省略する。
【0114】
5.5.2 構成
図12は、第4実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1Cは、チャンバ2と、ターゲット供給装置7Cと、クリーニング機構9Cとを備えてもよい。ターゲット供給装置7Cは、ターゲット生成部70Aと、ターゲット制御装置80Cとを備えてもよい。
【0115】
クリーニング機構9Cは、接近移動機構としての駆動機構91Aと、保持部92Cと、温度調節部としての第2温度調節部94Aとを備えてもよい。また、圧力調整器72は、クリーニング機構9Cを構成する出力制御部として機能するよう構成されてもよい。保持部92Cは、ポール921Aと、絶縁部材922Aと、容器923Cとを備えてもよい。容器923Cには、液体金属であるクリーニング用物質93Cが貯留されてもよい。このクリーニング用物質93Cは、ノズル712から出力されるターゲット物質270と同種の物質でもよい。
【0116】
5.5.3 動作
5.5.3.1 クリーニング時
図13は、第4実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。図14Aは、第4実施形態に係る容器がノズルに対向していない状態を示す。図14Bは、第4実施形態に係る容器が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。図14Cは、第4実施形態に係る容器内のクリーニング用物質とノズルとが接触している状態を示す。図14Dは、第4実施形態に係る容器がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【0117】
チャンバ2内の圧力が大気圧よりも低い状態において、EUV光生成装置1Cでは、まず、図13に示すようなステップS1の処理が行われてもよい。ステップS1においては、図14Aに示すように、容器923C内に、ターゲット生成器71内のターゲット物質270と同様の物質がクリーニング用物質93Cとして貯留されていてもよい。この際、容器923Cは、ノズル712よりも、−X方向側に位置していてもよい。容器923C内のクリーニング用物質93Cの温度は、当該クリーニング用物質93Cの融点未満の温度であってもよい。クリーニング用物質93Cの温度が当該クリーニング用物質93Cの融点未満の温度である場合には、クリーニング用物質93Cは、固体の状態で容器923Cに収容されていてもよい。
【0118】
次いで、ターゲット制御装置80Cは、第2温度コントローラ944Aに信号を送信するよう構成されてもよい。これにより、図13に示すように、容器923Cの温度がクリーニング用物質93Cの融点以上の温度となるように、容器923Cが加熱され得る(ステップS41)。容器923Cが加熱されることによって、クリーニング用物質93Cの温度が当該クリーニング用物質93Cの融点以上の温度に上昇し、クリーニング用物質93Cが固体から液体に変化し得る。その後、ターゲット制御装置80Cは、図13および図14Bに示すように、所定の間隔を開けて容器923Cと先端部713とを対向させるよう構成されてもよい(ステップS42)。
【0119】
次に、ターゲット制御装置80Cは、図13および図14Cに示すように、容器923C内のクリーニング用物質93Cの液面をノズル712の先端部713に接触させるよう構成されてもよい(ステップS43)。このとき、容器923Cを+Z方向に移動させることで、クリーニング用物質93Cと先端部713とが接触し得る。クリーニング用物質93Cと先端部713とが接触することによって、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270がクリーニング用物質93Cに取り込まれ得る。ここで、クリーニング用物質93Cとターゲット物質270とが同様の物質である場合、ノズル孔714周縁に付着しているターゲット物質270は、先端部713から容器923C内に取り込まれ得る。
【0120】
その後、ターゲット制御装置80Cは、図13および図14Dに示すように、容器923Cを−Z方向に移動させて、所定の間隔を開けて容器923Cとノズル712とを対向させるよう構成されてもよい(ステップS44)。容器923Cとノズル712とを所定の間隔を開けて対向させることによって、先端部713に付着していたターゲット物質270が容器923C内に取り込まれ、先端部713からターゲット物質270が除去され得る。
【0121】
次に、ターゲット制御装置80Cは、図13に示すように、ステップS7の処理を行い、クリーニングを終了しない場合には、ステップS43の処理を行うよう構成されてもよい。一方で、クリーニングを終了する場合には、容器923Cの加熱を停止するよう構成されてもよい(ステップS45)。
【0122】
その後、ターゲット制御装置80Cは、容器923Cを、例えば図14Aに示す位置に退避させるよう構成されてもよい(ステップS46)。この後、ターゲット制御装置80Cは、EUV光生成制御システム5にクリーニング完了信号を送信して、クリーニングを終了してもよい(ステップS10)。
【0123】
上述のように、容器923Cに収容された液体金属とノズル712とを接触させた後に、液体金属とノズル712とを離間させるよう構成されてもよい。このような構成によって、ノズル712に付着していたターゲット物質270が液体金属に溶解し、容器923C内に取り込まれ得る。ターゲット物質270が液体金属に取り込まれることによって、ノズル712に付着していたターゲット物質270が物理的に除去され、ノズル712がクリーニングされ得る。また、設定出力方向10Aが重力方向10Bと一致する場合のみならず、重力方向10Bに対して多少斜めの場合であっても、ノズル712に付着したターゲット物質270が容器923C内に取り込まれ得る。
【0124】
液体金属として、ノズル712から出力されるターゲット物質270と同種の物質が、クリーニング用物質93Cとして適用されてもよい。これにより、クリーニング用物質93Cとターゲット物質270との反応物の生成が抑制され、容器923C内への反応物の蓄積が抑制され得る。
【0125】
クリーニング用物質93Cの液面とノズル712とが接触することによって、ノズル712がクリーニングされ得る。このような構成によれば、ノズル712を固体に接触させないので、ノズル712の損傷が抑制され得る。
【0126】
なお、駆動機構91Aは、容器923Cとノズル712との両方を移動させることで、または、ノズル712のみを移動させることで、クリーニング用物質93Cとノズル712とを接触させるよう構成されてもよい。また、ステップS7の処理を行わずに、ステップS44の処理の後にステップS45の処理を行うよう構成されてもよい。さらに、液体金属としては、ターゲット物質270とは異種の物質が適用しされてもよい。
【0127】
5.6 第5実施形態
5.6.1 概略
本開示の第5実施形態によれば、オンデマンド方式でドロップレットが生成されるよう構成されたEUV光生成装置、あるいは、コンティニュアスジェット方式でジェットが生成されるよう構成されたEUV光生成装置に、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内においてターゲット物質が付着したノズルをクリーニングするためのクリーニング機構が設けられてもよい。上述のクリーニング機構によって、ノズル孔周縁がクリーニングされることで、ターゲット出力方向が曲げられる可能性が低減され、ターゲット物質の出力方向の安定性が向上し得る。
【0128】
なお、本開示の第5実施形態では、図4に示すターゲット供給装置7Aにおいて、ターゲット生成部70Aの代わりにターゲット生成部70Dが設けられるとともに、ターゲット制御装置80Aの代わりにターゲット制御装置80Dが設けられたターゲット供給装置7Dを例示する。また、設定出力方向10Aが重力方向10Bと一致するように設定された場合を例示する。クリーニング方法としては、上述の第1実施形態に係る方法が適用されてもよい。
【0129】
5.6.2 構成
図15は、第5実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示し、オンデマンド方式でドロップレットが生成される状態を示す。図16は、第5実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示し、コンティニュアスジェット方式でジェットが生成される状態を示す。
【0130】
EUV光生成装置1Dは、チャンバ2と、ターゲット供給装置7Dと、クリーニング機構9Aとを備えてもよい。ターゲット供給装置7Dのターゲット生成部70Dは、ターゲット生成器71と、圧力調整器72と、第1温度調節部73Aと、ピエゾ押出部74Dとを備えてもよい。ピエゾ押出部74Dは、ピエゾ素子741Dと、ピエゾ素子電源742Dとを備えてもよい。ピエゾ素子741Dは、チャンバ2内において、ノズル712の外周面に設けられてもよい。ピエゾ素子741Dの代わりに、高速でノズル712に押圧力を加えることが可能な機構が設けられてもよい。ピエゾ素子電源742Dは、チャンバ2の壁部に設けられた第3導入端子743Dを介して、ピエゾ素子741Dに接続されてもよい。ピエゾ素子電源742Dは、ターゲット制御装置80Dに接続されてもよい。
【0131】
5.6.3 動作
5.6.3.1 EUV光生成時
EUV光生成時には、ターゲット制御装置80Dは、圧力調整器72に信号を送信して、タンク711内の圧力を所定の圧力に調節するよう構成されてもよい。この所定の圧力とは、ノズル孔714にターゲット物質270によるメニスカス面が形成される程度の圧力でよく、この状態ではドロップレット272は出力されなくともよい。
【0132】
その後、ターゲット制御装置80Dは、図15に示すように、オンデマンド方式でドロップレット272を生成するためのドロップレット生成信号12Dをピエゾ素子電源742Dに送信するよう構成されてもよい。ドロップレット生成信号12Dを受信したピエゾ素子電源742Dは、ピエゾ素子741Dに対して所定のパルス状の電力を供給するよう構成されてもよい。電力の供給を受けたピエゾ素子741Dは、電力の供給タイミングに合わせて変形し得る。これにより、ノズル712が高速で押圧され、ドロップレット272が出力され得る。タンク711内が所定の圧力に維持されていれば、電力供給のタイミングに合わせてドロップレット272が出力され得る。
【0133】
ターゲット制御装置80Dは、図16に示すように、コンティニュアスジェット方式でジェット273を生成するよう、タンク711内の圧力を調節するよう構成されてもよい。このときのタンク711内の圧力は上述の所定の圧力よりも高い圧力であってもよい。あるいは、ターゲット制御装置80Dは、ドロップレット272を生成するための振動信号13Dをピエゾ素子電源742Dに送信するよう構成されてもよい。振動信号13Dを受信したピエゾ素子電源742Dは、ピエゾ素子741Dに対して当該ピエゾ素子741Dを振動させるための電力を供給するよう構成されてもよい。電力の供給を受けたピエゾ素子741Dは、ノズル712を高速で振動させ得る。これにより、ジェット273は、一定周期で分断され、ドロップレット272として出力され得る。そして、このように出力されたドロップレット272にパルスレーザ光が照射されることで、EUV光が生成されてもよい。
【0134】
上述のように、ターゲット供給装置7Dにおいて、オンデマンド方式またはコンティニュアスジェット方式でドロップレット272が生成される場合でも、クリーニング機構9Aは、大気圧よりも低い圧力のチャンバ2内で、ノズル孔714周縁をクリーニングするよう構成され得る。これにより、ターゲット出力方向が曲げられる可能性が低減され、ドロップレット272の出力方向の安定性が向上し得る。なお、クリーニング方法としては、第2〜第4実施形態で示した方法が適用されてもよい。
【0135】
5.7 第6実施形態
5.7.1 概略
本開示の第6実施形態によれば、静電引出方式でドロップレットが生成されるよう構成されたEUV光生成装置に、大気圧よりも低い圧力のチャンバ内においてターゲット物質が付着したノズルをクリーニングするためのクリーニング機構が設けられてもよい。上述のクリーニング機構によって、ノズル孔周縁がクリーニングされることで、ターゲット出力方向が曲げられる可能性が低減され、ターゲット物質の出力方向の安定性が向上し得る。なお、本開示の第6実施形態では、設定出力方向10Aが重力方向10Bと一致するように設定された場合を例示する。
【0136】
5.7.2 構成
図17は、第6実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。図18は、第6実施形態に係るEUV光生成装置の要部を拡大して示す。EUV光生成装置1Eは、チャンバ2と、ターゲット供給装置7Eと、クリーニング機構9Eとを備えてもよい。ターゲット供給装置7Eは、ターゲット生成部70Eと、ターゲット制御装置80Eとを備えてもよい。ターゲット生成部70Eは、ターゲット生成器71Eと、圧力調整器72と、第1温度調節部73Aと、静電引出部75Eとを備えてもよい。
【0137】
ターゲット生成器71Eは、タンク711と、ノズル712Eとを備えてもよい。ノズル712Eは、ノズル本体713Eと、先端保持部714Eと、出力部715Eとを備えてもよい。ノズル本体713Eは、タンク711の下面からチャンバ2内に突出するように設けられてもよい。先端保持部714Eは、ノズル本体713Eの先端に設けられてもよい。先端保持部714Eは、ノズル本体713Eよりも直径が大きい円筒状に形成されてもよい。先端保持部714Eは、ノズル本体713Eとは別体として構成され、ノズル本体713Eに固定されてもよい。
【0138】
出力部715Eは、略円板状に形成されてもよい。出力部715Eは、ノズル本体713Eの先端面に密着するように、先端保持部714Eによって保持されてもよい。出力部715Eの中央部分には、チャンバ2内に突出する円錐台状の突出部716Eが設けられてもよい。突出部716Eは、そこに電界が集中し易いようにするために設けられてもよい。突出部716Eには、突出部716Eにおける円錐台上面部を構成する先端部717Eの略中央部に開口するノズル孔718Eが設けられてもよい。出力部715Eは、出力部715Eに対するターゲット物質270の濡れ性が低い材料で構成されるのが好ましい。出力部715Eが、出力部715Eに対するターゲット物質270の濡れ性が低い材料で構成されていない場合には、出力部715Eの少なくとも表面が、当該濡れ性が低い材料でコーティングされてもよい。
【0139】
タンク711と、ノズル712Eと、出力部715Eとは、電気絶縁材料で構成されてもよい。これらが、電気絶縁材料ではない材料、例えばモリブデンなどの金属材料で構成される場合には、チャンバ2とターゲット生成器71Eとの間や、出力部715Eと後述する引出電極751Eとの間に電気絶縁材料が配置されてもよい。この場合、タンク711と後述するパルス電圧生成器753Eとが電気的に接続されてもよい。
【0140】
静電引出部75Eは、引出電極751Eと、電極752Eと、パルス電圧生成器753Eとを備えてもよい。引出電極751Eは、略円板状に構成されてもよい。引出電極751Eの中央には、ドロップレットが通過するための円形状の貫通孔754Eが形成されてもよい。引出電極751Eは、出力部715Eとの間に隙間が形成されるように、先端保持部714Eによって保持されてもよい。引出電極751Eは、貫通孔754Eの中心軸と、円錐台状の突出部716Eの回転対称軸とが一致するように保持されるのが好ましい。引出電極751Eは、第4導入端子755Eを介してパルス電圧生成器753Eに接続されてもよい。
【0141】
電極752Eは、タンク711内のターゲット物質270中に配置されてもよい。電極752Eは、フィードスルー756Eを介してパルス電圧生成器753Eに接続されてもよい。パルス電圧生成器753Eは、ターゲット制御装置80Eに接続されてもよい。パルス電圧生成器753Eは、タンク711内のターゲット物質270と引出電極751Eとの間に電圧を印加するよう構成されてもよい。これにより、ターゲット物質270が静電気力によってドロップレットの形状で引き出され得る。
【0142】
クリーニング機構9Eは、駆動機構91Aと、保持部92Eと、クリーニング部材93Aと、第2温度調節部94Eとを備えてもよい。保持部92Eは、ポール921Aと、絶縁部材922Aと、ホルダ923Eとを備えてもよい。ホルダ923Eは、伝熱性を有する材料により、その直径が貫通孔754Eの内径よりも小さい略円柱状に構成されてもよい。ホルダ923Eの先端には、凹部924Eが設けられてもよい。凹部924Eの開口底面は、その直径が突出部716Eの先端部717Eの外径よりも大きい円形に構成されてもよい。あるいは、凹部924Eの開口底面は、先端部717Eの外径よりも大きければ、円形に構成されなくともよい。凹部924Eには、当該凹部924Eの底面を覆うようにクリーニング部材93Aが設けられてもよい。クリーニング部材93Aは、突出部716Eの少なくとも先端部717Eよりも、ターゲット物質270との濡れ性が高い材料で構成されるのが好ましい。また、クリーニング部材93Aは、先端部717Eに接触したときに、ノズル孔718E周縁に付着しているターゲット物質270がクリーニング部材93Aに付着するように、その直径が先端部717Eの外径よりも大きい円形に構成されてもよい。あるいは、クリーニング部材93Aは、先端部717Eの外径よりも大きければ、その外形は円形ではなくともよい。すなわち、クリーニング部材93Aは、クリーニング部材93Aによってノズル712Eがクリーニングされ得るように構成されてもよい。
【0143】
凹部924Eにクリーニング部材93Aを設けずに、ホルダ923Eを凹部924E内にターゲット物質を貯留する容器として機能させてもよい。また、ホルダ923Eは、引出電極751Eに接触せず、かつ、クリーニング部材93Aを先端部717Eに接触させることが可能なように構成されてもよい。
【0144】
第2温度調節部94Eは、第2ヒータ941Eと、第2ヒータ電源942Aと、第2温度センサ943Aと、第2温度コントローラ944Aと、第2導入端子945Aとを備えてもよい。第2ヒータ941Eは、ホルダ923Eの外周面を覆うように設けられてもよい。第2温度センサ943Aは、ホルダ923Eの外周面に設けられてもよい。
【0145】
5.7.3 動作
5.7.3.1 クリーニング時
図19は、第6の実施形態に係るクリーニング時の動作を示すフローチャートである。図20Aは、第6実施形態に係るクリーニング部材がノズルに対向していない状態を示す。図20Bは、第6実施形態に係るクリーニング部材が所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。図20Cは、第6実施形態に係るクリーニング部材とノズルとが接触している状態を示す。図20Dは、第6実施形態に係るクリーニング部材がクリーニング終了後に所定の間隔を開けてノズルと対向している状態を示す。
【0146】
チャンバ2内の圧力が大気圧よりも低い状態において、EUV光生成装置1Eでは、図19に示すように、ステップS1〜S4,S6〜S10の処理が行われてもよい。ステップS1〜S4,S6〜S10の処理は、第1実施形態と同様の内容でもよい。具体的には、EUV光生成装置1Eでは、ステップS1およびステップS2において、図20Aに示すように、クリーニング部材93Aを、ノズル712Eよりも、−X方向側に位置させてもよい。
【0147】
ターゲット制御装置80Eは、ステップS3において、図20Bに示すように、所定の間隔を開けてクリーニング部材93Aと先端部717Eとを対向させるよう構成されてもよい。このとき、ターゲット制御装置80Eは、貫通孔754Eの中心軸と略円柱状のホルダ923Eの回転対称軸とが一致するように、クリーニング機構9Eを制御するよう構成されてもよい。
【0148】
その後、ターゲット制御装置80Eは、ステップS4において、図20Cに示すように、クリーニング部材93Aを先端部717Eに接触させるよう構成されてもよい。このとき、ターゲット制御装置80Eは、ホルダ923Eが貫通孔754Eに挿入されるように、クリーニング機構9Eを制御するよう構成されてもよい。このように、クリーニング部材93Aと先端部717Eとを接触させることによって、ノズル孔718E周縁に付着していたターゲット物質270をクリーニング部材93Aに付着させてもよい。
【0149】
その後、ターゲット制御装置80Eは、ステップS6において、図20Dに示すように、ホルダ923Eを−Z方向に移動させることで、所定の間隔を開けてクリーニング部材93Aと先端部717Eとを対向させるよう構成されてもよい。このときのクリーニング部材93Aと先端部717Eとの間隔は、図20Bに示す際の間隔と同じでもよいし、異なってもよい。クリーニング部材93Aと先端部717Eとを離間させることによって、先端部717Eに付着していたターゲット物質270のほとんどがクリーニング部材93Aに付着し、先端部717Eからターゲット物質270が除去され得る。
【0150】
上述のように、いわゆる静電引出型のターゲット供給装置7Eによってドロップレットが生成される場合であっても、クリーニング機構9Eは、大気圧よりも低い圧力のチャンバ2内において、クリーニング部材93Aとノズル712Eとを接触させることにより、ノズル孔718E周縁をクリーニングすることで、ターゲット出力方向が曲げられる可能性が低減され、ターゲット物質の出力方向の安定性が向上し得る。
【0151】
また、クリーニング部材93Aを+Z方向に移動させて先端部717Eに接触させた後に、クリーニング部材93Aを−Z方向に移動させて先端部717Eから離間させることで、クリーニングが行われてもよい。ここで、クリーニング部材93Aを先端部717Eに接触させた後にX軸方向に往復移動させると、クリーニング性が向上され得る。しかし、円錐台状の突出部716Eは物理的接触に弱い形状および構成となることが多く、クリーニング部材93AをX軸方向へ往復移動させることよって、ノズル孔718Eの変形が生じる可能性が高い。クリーニング部材93Aを往復移動させることによって、突出部716EにX軸方向への力が作用し、突出部716Eが損傷し得る。これに対して、クリーニング部材93AをZ軸方向に往復移動させるだけでクリーニングが行われることで、X軸方向への力が突出部716Eに作用する可能性が低減され、突出部716Eの損傷が抑制され得る。
【0152】
なお、クリーニング方法として、第2〜第4実施形態で示した方法を適用して、突出部716Eに作用する力がさらに小さくなるように構成されてもよい。
【0153】
5.8 第7実施形態
5.8.1 概略
本開示の第7実施形態によれば、静電引出方式でドロップレットが生成されるよう構成されたEUV光生成装置において、ターゲット供給装置が、ノズルを備えるターゲット生成器と、クリーニング機構と、ターゲット生成器とクリーニング機構とを一体化するためのユニット部とによって構成されてもよい。上述のターゲット供給装置において、ノズル孔周縁がクリーニングされることで、ターゲット出力方向が曲げられる可能性が低減され、ターゲット物質の出力方向の安定性が向上し得る。
【0154】
ターゲット生成器をチャンバに配置しない状態であっても、ターゲット生成器に対するクリーニング機構の位置決めや位置調整、または、動作チェックが行われ得る。また、ターゲット生成器のメンテナンス時や交換時に、クリーニング機構のメンテナンスや交換が行われ得る。
【0155】
なお、本開示の第7実施形態では、設定出力方向10Aが重力方向10Bと一致するように設定された場合を例示する。また、第7実施形態では、第6実施形態のEUV光生成装置1Eに、ユニット部としてのプレート100Fが追加された構成を例示する。以下においては、構成のみを説明し、クリーニング時の動作については、第6実施形態と同様のため、重複する説明を省略する。
【0156】
5.8.2 構成
図21は、第7実施形態に係るEUV光生成装置の構成を概略的に示す。EUV光生成装置1Fは、チャンバ2Fと、ターゲット供給装置7Fとを備えてもよい。チャンバ2Fは、プレート100Fで閉塞可能な大きさの開口部20Fを備えてもよい。ターゲット供給装置7Fは、ターゲット生成部70Eと、ターゲット制御装置80Eと、クリーニング機構9Eと、プレート100Fとを備えてもよい。
【0157】
プレート100Fには、タンク711が当該プレート100Fの一面(図21中+Z方向)に位置し、かつ、ノズル712Eが当該プレート100Fを貫通するように、ターゲット生成器71Eが固定されてもよい。プレート100Fには、ターゲット生成器71Eとの接合部に図示しない気密シール部が設けられてもよい。また、プレート100Fの他面(図21中−Z方向)には、クリーニング機構9Eの駆動機構91Aが固定されてもよい。さらに、プレート100Fには、第1導入端子915Aと、第2導入端子945Aと、第4導入端子755Eとが当該プレート100Fを貫通するように固定されてもよい。ターゲット生成器71Eとクリーニング機構9Eとが固定されたプレート100Fは、開口部20Fを閉塞するようにチャンバ2Fに固定されてもよい。また、プレート100Fと開口部20Fとの間には、チャンバ2Fを密閉するための図示しない気密シール部が設けられてもよい。
【0158】
上述のように構成されるターゲット供給装置7Fは、第6実施形態におけるターゲット供給装置7Eと同様の機能を果たし得る。また、ターゲット生成器71Eと、クリーニング機構9Eとがプレート100Fで一体化されてもよい。これにより、ターゲット生成器71Eがチャンバ2Fに配置されない状態、例えば、図示しない調整スタンド等にターゲット生成器71Eが配置されて、ターゲット生成器71Eに対するクリーニング機構9Fの位置決めや動作チェックが行われ得る。さらに、ターゲット生成器71Eのメンテナンス時や交換時に、クリーニング機構9Fのメンテナンスや交換が行われ得る。
【符号の説明】
【0159】
2,2F…チャンバ、7F…ターゲット供給装置、9,9A,9B,9C,9E,9F…クリーニング機構、72…出力調整部としても機能し得る圧力調整器、91A…接触移動機構または接近移動機構としても機能し得る駆動機構、93,93A…クリーニング部材、93C…液体金属であるクリーニング用物質、94A,94E…温度調節部としての第2温度調節部、100F…ユニット部としてのプレート、270…ターゲット物質、712,712E…ノズル、923C…容器。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
EUV光の生成が行われるチャンバ内にターゲット物質を出力するためのノズルを、チャンバ内で物理的にクリーニングするためのノズルのクリーニング機構。
【請求項2】
請求項1に記載のノズルのクリーニング機構において、
前記ノズルから出力される前記ターゲット物質との接触角が、前記ノズルと前記ターゲット物質との接触角よりも小さいクリーニング部材と、
前記クリーニング部材の温度を前記ターゲット物質の融点以上の温度に調節するための温度調節部と、
前記クリーニング部材と前記ノズルとが接触可能なように、前記クリーニング部材と前記ノズルとを相対移動させるための接触移動機構と、を備えるノズルのクリーニング機構。
【請求項3】
請求項1に記載のノズルのクリーニング機構において、
前記ノズルから出力される前記ターゲット物質との接触角が、前記ノズルと前記ターゲット物質との接触角よりも小さいクリーニング部材と、
前記クリーニング部材の温度を前記ターゲット物質の融点以上の温度に調節するための温度調節部と、
前記クリーニング部材と前記ノズルとが接近可能なように、前記クリーニング部材と前記ノズルとを相対移動させるための接近移動機構と、
前記ノズルから前記ターゲット物質を出力させるための出力調整部と、を備えるノズルのクリーニング機構。
【請求項4】
請求項1に記載のノズルのクリーニング機構において、
液体金属を貯留するための容器と、
前記液体金属と前記ノズルとが接触可能なように、前記容器と前記ノズルとを相対移動させるための接触移動機構と、を備えるノズルのクリーニング機構。
【請求項5】
請求項4に記載のノズルのクリーニング機構において、
前記液体金属は、前記ノズルから出力される前記ターゲット物質と同種の物質であり、
前記容器に貯留された前記物質の温度を該物質の融点以上の温度に調節するための温度調節部をさらに備えるノズルのクリーニング機構。
【請求項6】
EUV光の生成が行われるチャンバ内にターゲット物質を出力するためのノズルと、
前記チャンバ内で、前記ノズルを物理的にクリーニングするための請求項1から請求項5のいずれかに記載のノズルのクリーニング機構と、
前記ノズルと前記クリーニング機構とを一体化するためのユニット部と、を備えるターゲット供給装置。
【請求項7】
EUV光の生成が行われるチャンバ内にターゲット物質を出力するためのノズルをクリーニングするためのノズルのクリーニング方法において、
大気圧よりも低い圧力の前記チャンバ内で、前記ノズルを物理的にクリーニングすることを含むノズルのクリーニング方法。
【請求項8】
請求項7に記載のノズルのクリーニング方法において、
前記ノズルから出力される前記ターゲット物質との接触角が、前記ノズルと前記ターゲット物質との接触角よりも小さいクリーニング部材を用い、
前記ノズルを物理的にクリーニングすることは、
前記クリーニング部材の温度を前記ターゲット物質の融点以上の温度に調節することと、
前記クリーニング部材と前記ノズルとを接触させることと、
前記クリーニング部材と前記ノズルとを離間させることと、を含むノズルのクリーニング方法。
【請求項9】
請求項7に記載のノズルのクリーニング方法において、
前記ノズルから出力される前記ターゲット物質との接触角が、前記ノズルと前記ターゲット物質との接触角よりも小さいクリーニング部材を用い、
前記ノズルを物理的にクリーニングすることは、
前記クリーニング部材の温度を前記ターゲット物質の融点以上の温度に調節することと、
前記クリーニング部材と前記ノズルとを接近させることと、
前記ノズルから所定量の前記ターゲット物質を出力させることと、
前記クリーニング部材と前記ノズルとを離間させることと、を含むノズルのクリーニング方法。
【請求項10】
請求項7に記載のノズルのクリーニング方法において、
前記ノズルから出力される前記ターゲット物質との接触角が、前記ノズルと前記ターゲット物質との接触角よりも小さいクリーニング部材を用い、
前記ノズルを物理的にクリーニングすることは、
前記クリーニング部材の温度を前記ターゲット物質の融点以上の温度に調節することと、
前記ノズルから所定量の前記ターゲット物質を出力させることと、
前記クリーニング部材と前記ノズルとを接近させることと、
前記クリーニング部材と前記ノズルとを離間させることと、を含むノズルのクリーニング方法。
【請求項11】
請求項7に記載のノズルのクリーニング方法において、
液体金属が貯留された容器を用い、
前記ノズルを物理的にクリーニングすることは、
前記容器内の液体金属と前記ノズルとを接触させることと、
前記容器内の液体金属と前記ノズルとを離間させることと、を含むノズルのクリーニング方法。
【請求項12】
請求項11に記載のノズルのクリーニング方法において、
前記液体金属として、前記ノズルから出力される前記ターゲット物質と同種の物質を用い、
前記ノズルを物理的にクリーニングすることは、
前記容器内の前記物質と前記ノズルとを接触させることと、
前記容器内の前記物質の温度を該物質の融点以上の温度に調節することと、
前記容器内の前記物質と前記ノズルとを離間させることと、をさらに含むノズルのクリーニング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3A】
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【図3B】
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【図4】
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【図5】
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【図6A】
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【図6B】
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【図6C】
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【図6D】
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【図7】
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【図8】
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【図9A】
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【図9B】
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【図9C】
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【図9D】
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【図9E】
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【図10】
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【図11A】
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【図11B】
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【図11C】
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【図11D】
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【図11E】
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【図12】
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【図13】
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【図14A】
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【図14B】
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【図14C】
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【図14D】
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【図15】
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【図16】
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【図17】
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【図18】
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【図19】
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【図20A】
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【図20B】
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【図20C】
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【図20D】
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【図21】
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【公開番号】特開2013−37787(P2013−37787A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170541(P2011−170541)
【出願日】平成23年8月3日(2011.8.3)
【出願人】(300073919)ギガフォトン株式会社 (227)
【Fターム(参考)】