説明

タービンエンジン構成要素の修復方法及び装置

【課題】圧縮機ブレードやベーンなどのタービンエンジン構成要素を容易に修復する方法を提供する。
【解決手段】タービンエンジン構成要素10の修復方法は、エアフォイル部16を有するタービンエンジン構成要素10を提供するステップと、エアフォイル部16にコーティング15を付与するステップと、コーティングされた材料をダイセット24内で加熱して流動させ、エアフォイル部16の先端部、翼弦、及び表面を単一の工程で初期寸法に修復するステップと、を備える。これらのステップを経て、該構成要素10が容易に修復される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、圧縮機ブレードやベーンなどのエンジン回転エアフォイルの特徴部を修復する方法及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
エンジン回転エアフォイルの特徴部を修復する従来の方法は、フライス切削や研削などの種々の適切な方法を用いて機械加工する必要がある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
これらの従来の方法が存在しているにも関わらず、修復を行うのが簡単で繰り返し可能で、かつ迅速な方法が依然必要である。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明によって、タービンエンジン構成要素を修復する方法がもたらされる。この方法は、エアフォイル部を有するタービンエンジン構成要素を提供するステップと、エアフォイル部にコーティングを付与するステップと、エアフォイル部の先端部、翼弦、及び表面を単一の工程で初期寸法に修復するステップと、を備える。
【0005】
さらに、本発明によれば、タービンエンジン構成要素を修復する装置がもたらされる。この装置は、タービンエンジン構成要素のエアフォイル部にコーティングを付与する手段と、エアフォイル部の先端部、翼弦、及び表面を単一の工程で初期寸法に同時に修復する手段と、を備える。
【0006】
圧縮機ブレードを修復する該ブレードの流し込み形成法の他の詳細ならびに、この方法の別の目的及び利点は、以下の詳細な説明ならびに添付の図面から説明される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0007】
上述のように、本発明は、使用された圧縮機ブレードやベーンなどのタービンエンジン構成要素の修復に関する。図1は、本発明の修復方法を概略的に示している。図1に示すように、タービンエンジン構成要素10は、ステップ12において初めに洗浄される。タービンエンジン構成要素10は、周知の適切な洗浄処理法を用いて洗浄することができる。洗浄処理の一部として、タービンエンジン構成要素10のエアフォイル部のコーティングを、周知の適切な方法を用いて除去することができる。
【0008】
ステップ14においては、コーティング15が、タービンエンジン構成要素10のエアフォイル部16を修復するために付与される。コーティング15は、周知の適切なコーティングからなってもよく、また周知の適切な方法を用いて付与することができる。例えば、コーティング15は、チタンをベースにしたコーティングである。図2に示すように、好ましくはエアフォイル部16の双方の表面17、19が、先端部18から概ね翼幅中間位置20までの領域に亘ってコーティングされる。翼幅中間位置20においては、コーティング15を、周知の適切な方法を用いてエアフォイル部16の表面17、19に融合(blend)させることができる。
【0009】
ステップ22においては、タービンエンジン構成要素10のエアフォイル部16が、図3に示されるようなダイセット24に配置されて流し込み形成工程にかけられる。流し込み形成工程は、特定のチタン合金のクリープ作用による下限値及びこの合金のβ変態(beta transus)による上限値により定まる温度範囲内で行うことができる。温度の上限値を設けることは、結晶粒の成長を避ける必要性によって推奨される。窒化ホウ素もしくは他の材料による型潤滑剤を、型部分からチタン部品を容易に分離するために用いることができる。ダイセット24は、エアフォイル部16の一方の表面形状を有する第1の型の半部26と、このフォイル部16の他方の表面形状を有する第2の型の半部28と、を有する。ダイセット24内において、コーティング工程によりタービンエンジン構成要素10の表面17、19に加えられた材料が、エアフォイル部16が原形かつ初期寸法に修復されるように、加熱されて所望の形状へと流動する。図4は、タービンエンジン構成要素10がダイセット24から取り外された後の、修復されたエアフォイル部16を示している。図4に示すように、先端部の修復、翼弦の修復、及び表面厚さの修復によって、3つの損傷が修復される。流し込み形成工程が完了した後に、タービンエンジン構成要素10のエアフォイル部16が、ダイセット24から取り外される。
【0010】
ステップ30においては、図5に示すように、エアフォイル部16の周囲のバリ32が除去される。バリ32は、周知の適切な方法を用いて除去することができる。例えば、バリ32を、周知の適切な方法を用いて機械加工によって除去してもよい。
【0011】
ステップ34においては、タービンエンジン構成要素10が、最終仕上げ工程にかけられる。最終仕上げ工程は、周知の適切な方法を用いて行うことができる。例えば、タービンエンジン構成要素10を、高サイクル疲労寿命を向上させるようにガラス玉によるピーニングにかけてもよい。
【0012】
本明細書に記載の流し込み形成法は、型内で材料を加圧し、迅速かつ繰り返し可能な方法でエアフォイル部16を初期寸法に戻す利点を有する。この流し込み形成は、従来の方法で機械加工された表面よりも向上した疲労特性を持つ可能性を有する。タービンエンジン構成要素10の流し込み形成に用いる材料の特性は、溶接材を用いる修復材の特性より優れている。流し込み形成工程の間に、コーティング工程で発生した欠陥が修正される。
【0013】
流し込み形成は、単一の工程で3つの主な損傷部分全てを修復するという斬新な特徴を有する。これらの損傷の修復は、先端部の修復、翼弦の修復、及び表面厚さの修復を含む。
【0014】
本発明の修復方法は、多数の利点を有する。修復を簡単に、繰り返し可能に、かつ迅速に行える。また、本発明の修復方法によって、コーティングの欠陥が修正されるとともに、全ての損傷が単一の工程で修復される。さらに、本発明の修復方法によって、タービンエンジン構成要素10の機械的特性ならびに疲労特性が向上し、また母材の特性を有する修復品が得られる。
【0015】
使用されたタービンエンジン構成要素を修復するのに用いられる本発明の方法を説明したが、この方法はまた、1つ或いは複数の欠陥を有する新たに製造された構成要素を修復するのに用いることができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【図1】本発明の修復方法のステップを示す流れ図。
【図2】コーティング工程が完了したタービンエンジン構成要素の図。
【図3】流し込み形成を行う型の図。
【図4】型への流し込み形成工程が完了したタービンエンジン構成要素の図。
【図5】特徴部が修復されたタービンエンジン構成要素からバリを除去した図。
【符号の説明】
【0017】
10…タービンエンジン構成要素
16…エアフォイル部
24…ダイセット
26…第1の型の半部
28…第2の型の半部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
タービンエンジン構成要素を修復する方法であって、
エアフォイル部を有するタービンエンジン構成要素を提供するステップと、
上記エアフォイル部にコーティングを付与するステップと、
上記エアフォイル部の先端部、翼弦、及び表面を単一の工程で初期寸法に修復するステップと、を備えることを特徴とする修復方法。
【請求項2】
上記のエアフォイル部を修復するステップは、上記タービンエンジン構成要素のコーティングされた上記エアフォイル部をダイセットに配置し、修復材料が上記ダイセット内で流れるように、このダイセット内の上記のコーティングされたエアフォイル部を加熱し、これによりこのエアフォイル部の先端部、翼弦、及び表面が修復されることを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項3】
上記のコーティングを付与するステップは、チタンコーティングを上記エアフォイル部に付与することを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項4】
上記のコーティングを付与するステップは、コーティングを上記エアフォイル部の両側の表面に付与することを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項5】
上記のコーティングを付与するステップは、コーティングを上記エアフォイル部の先端部から翼幅中間位置までに亘って両側の表面に付与することを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項6】
さらに、上記コーティングを上記エアフォイル部の表面に融合させるステップを有することを特徴とする請求項5に記載の修復方法。
【請求項7】
さらに、上記コーティングの付与に先立って、上記タービンエンジン構成要素を洗浄するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項8】
さらに、上記エアフォイル部を修復するステップの後に、このエアフォイル部からバリを除去するステップを有することを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項9】
さらに、上記バリを除去するステップの後に、上記タービンエンジン構成要素を仕上げ工程にかけることを特徴とする請求項8に記載の修復方法。
【請求項10】
上記のタービンエンジン構成要素を提供するステップは、ブレードを提供することを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項11】
上記のタービンエンジン構成要素を提供するステップは、ベーンを提供することを特徴とする請求項1に記載の修復方法。
【請求項12】
エアフォイル部を有するタービンエンジン構成要素を修復する装置であって、
この装置は、
上記タービンエンジン構成要素のエアフォイル部にコーティングを付与する手段と、
上記エアフォイル部の先端部、翼弦、及び表面を単一の工程で初期寸法に同時に修復する手段と、を備えることを特徴とする修復装置。
【請求項13】
上記のコーティングを付与する手段は、チタンコーティングを上記エアフォイル部の表面に付与する手段からなることを特徴とする請求項12に記載の修復装置。
【請求項14】
上記修復手段は、ダイセットを備えるとともに、上記エアフォイル部の先端部、翼弦、及び表面を初期寸法に修復するために、上記コーティングを形成している材料を上記ダイセット内で流す手段からなることを特徴とする請求項12に記載の修復装置。
【請求項15】
上記ダイセットは、上記エアフォイル部の第1の表面形状を有する第1の型と、このエアフォイル部の第2の表面形状を有する第2の型と、を備えることを特徴とする請求項14に記載の修復装置。
【請求項16】
さらに、上記コーティングの付与に先立って、上記タービンエンジン構成要素を洗浄する手段を備えることを特徴とする請求項12に記載の修復装置。
【請求項17】
さらに、上記エアフォイル部を上記修復手段から取り外した後に、バリをこのエアフォイル部から除去する手段を備えることを特徴とする請求項12に記載の修復装置。
【請求項18】
さらに、上記バリを除去した後に、上記タービンエンジン構成要素を仕上げ工程にかける手段を備えることを特徴とする請求項17に記載の修復装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2007−162684(P2007−162684A)
【公開日】平成19年6月28日(2007.6.28)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−317900(P2006−317900)
【出願日】平成18年11月27日(2006.11.27)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】