説明

タービンエンジン用シール装置、タービンエンジン、およびシーリング方法

【課題】タービンエンジンが熱膨張している間にも、シールランドに接近したままで機能するシールを提供する。
【解決手段】タービンエンジンは支持構造12を有するシール装置11を含む。シール14のセグメント15aの両端部22にバイメタル材料からなる熱膨張部材18が配置されており、セグメント15aに対して適当な支持を与える。熱膨張部材18はコイルスプリングの形状に構成され、ピン30を使ってケージ24によって支えられている。ケージ24はねじ留め具26によって支持構造にしっかり取り付けられている。その自由端32はリベットのような留め具34でシール14に固定されている。温度上昇にともない、コイル38は延びて、シール14を支持構造12から遠ざけシールランド16の方向へ動かし、領域Rでシール14がシールランド16に接近することを確実にする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えばタービンエンジンなどの内部で用いられるのに適したエアシールに関するものである。
【背景技術】
【0002】
タービンエンジンなどの内部では望ましくない流体流れを防ぐために直線状あるいは環状の多様なシールが用いられている。これらのシールはエンジンの内部にある静的構造あるいは回転構造のシーリングをするために用いられる。代表的なシールの型には、エアシール、ラビリンスシール、ブラシシール、ナイフエッジシール、ハニカムシールなどがある。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
タービンエンジン内部における一般的なシール装置は支持構造に取り付けられしっかり固定されたシールを有する。タービンエンジン内部では多様な構成要素が熱膨張を起こすことにより、シールがシールランドから離れて隙間を作り、シールを越えて流体が漏れる量を増やしてしまう。そこで、タービンエンジンが熱膨張してもシールランドに接近したままであることのできるシールが求められている。
【課題を解決するための手段】
【0004】
タービンエンジンはシールを支持する第1タービン構造を含む。シールは第1タービン構造の凹み内で可動である。このシールは、シールおよびシールランドを通過して流体が漏れることを防ぐために第2タービン構造のシ−ルランドに接近して設置されている。熱膨張部材は第1タービン構造とシールとを連結している。熱膨張部材は温度上昇に反応してシールをシールランドの方向へ動かし、熱膨張によって一般的に生じるシールとシールランドとの間の隙間が拡大することを防ぐ。一実施例では、シールセグメントの両端に配置された熱膨張部材は、バイメタルのコイルバネであり、ケージによって第1タービン構造に支持されている。このコイルバネの自由端はシールの両端部においてシールにしっかりと固定されている。
【0005】
したがって、シールはタービンエンジンが熱膨張している間にも、シールランドに接近したままで機能することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0006】
タービンエンジン10の概略を図1に示す。タービンエンジン10はハウジング13(図2に示す)のような支持構造12を有するシール装置11を含む。シール14はシャフト表面のようなシールランド16についてシーリングをつくる2つ以上のセグメント15a、15bを含みうる。これは、いかなる個数のセグメントを使用してもよい。さらに数多くのセグメントを用いれば、間隔の均一性が高まる。シール14の形状は直線状あるいは環状のどちらにもなりうる。さらに、シールランド16は静的構造あるいは回転構造のどちらにも利用されうる。シール14は、エアシール、ラビリンスシール、ブラシシール、ナイフエッジシール、ハニカムシールなどの最適な型のものを選ぶことができる。
【0007】
図2に、支持構造12にシール14を連結する熱膨張部材18の概略を示す。シール14は支持構造12から浮き上がっている。ギャップ20がシール14と支持構造12との間にあって、シール14をシールランド16の方向へ動かしたり遠ざけたりすることを可能にする。
【0008】
一例として、図3にシール装置11の拡大図を示す。シール14のセグメント15aは両端部22を有する。図に示されるように、各々の端部22に熱膨張部材18が配置されており、セグメント15aに対して適当な支持を与える。支持構造12は凹み36を含み、ここへシール14が収容かつ配置される。ギャップ20はシール14と支持構造12の間に距離Dを与える。熱膨張部材18が高い温度に晒されると、シール14が熱膨張部材18の膨張に対応して矢印2の方向に向かって動く。温度が下がるときには、シール14が熱膨張部材18の収縮に対応して矢印1の方向に向かって凹み36の中に収容される。
【0009】
一実施例では、熱膨張部材はこの技術分野で周知のバイメタル材料でできている。図に示されるように、バイメタル材料はコイルスプリングの形状に構成され、ピン30を使ってケージ24によって支えられている。ケージ24はコイル38が望ましい方向へ動くことを確実にする。図に示されるように、ケージ24はねじ留め具26によって支持構造にしっかり取り付けられている。他の実施例では、ケージ24はシール14に固定されている。バイメタル材料28はコイル38として構成され、その自由端32はリベットのような留め具34でシール14に固定されている。温度上昇にともない、コイル38は延びて、シール14を支持構造12から遠ざけシールランド16の方向へ動かし、領域Rでシール14がシールランド16に接近することを確実にする。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】一実施例のシール装置を含むタービンエンジンの概略を示す図。
【図2】一実施例のシール装置の概略を示す図。
【図3】一実施例のシールの拡大図。
【符号の説明】
【0011】
10…タービンエンジン
11…シール装置
12…支持構造
13…ハウジング
14…シール
15…セグメント
16…シールランド
18…熱膨張部材
20…ギャップ
22…末端部
24…ケージ
26…ねじ留め具
28…バイメタル材料
30…ピン
32…自由端
34…留め具
36…凹み
38…コイル
D…ギャップ間距離

【特許請求の範囲】
【請求項1】
支持構造と、
シールランドとの間を通過して流体が漏れることを防ぐために、支持構造から離れて配置されるとともにシールランドに接近したシールと、
これらの支持構造とシールとを連結し、かつ温度上昇に反応してシールをシールランドの方向へ動かすように膨張する熱膨張部材と、
を備えるタービンエンジン用のシール装置。
【請求項2】
上記シールは、第1セグメントおよび第2セグメントを含み、これら第1セグメントおよび第2セグメントの少なくとも一方が両端部を有し、その各端部に上記熱膨張部材が配置されていることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項3】
上記シールランドは、概ね円筒状に構成され、第1セグメントおよび第2セグメントが上記シールランドを囲むことを特徴とする請求項2に記載のシール装置。
【請求項4】
上記シールと上記支持構造の間にあるギャップが距離を与え、上記シールが温度上昇に反応して第1の方向へ動くことでその距離を広げることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項5】
上記支持構造は、凹みを有し、上記シールが上記凹みに配置されることを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項6】
上記熱膨張部材が、温度上昇に反応して膨張するバイメタル材料を含むことを特徴とする請求項1に記載のシール装置。
【請求項7】
上記熱膨張部材がコイルバネになっていることを特徴とする請求項6に記載のシール装置。
【請求項8】
上記熱膨張部材は、上記コイルバネを支持するケージを有し、このケージは上記シールおよび上記支持構造の一方に固定されていることを特徴とする請求項7に記載のシール装置。
【請求項9】
上記コイルバネが、上記シールおよび上記支持構造の他方に固定された自由端を有することを特徴とする請求項8に記載のシール装置。
【請求項10】
第1タービン構造と、
流体がシールランドとの間を通過して漏れることを防ぐために第2タービン構造のシールランドに接近して配置されたシールと、
上記第1タービン構造と上記シールとを連結し、かつ温度上昇に反応して膨張して上記シールを上記シールランドの方向へ動かす熱膨張部材と、
を備えるタービンエンジン。
【請求項11】
上記第2タービン構造は上記タービンエンジンのハウジングに対して回転可能であることを特徴とする請求項10に記載のタービンエンジン。
【請求項12】
上記第2タービン構造は上記タービンエンジンのハウジングに対して固定されていることを特徴とする請求項10に記載のタービンエンジン。
【請求項13】
上記シールが、上記シールと上記シールランドとの交差する箇所で流体の流れを塞ぐことを特徴とする請求項10に記載のタービンエンジン。
【請求項14】
上記シールが上記シールランドから離れる第1の方向へ動き、上記熱膨張部材が温度上昇によって膨張すると、第1の方向と反対に上記シールランドへ向かう第2の方向へ上記シールを動かすことを特徴とする請求項9に記載のタービンエンジン。
【請求項15】
熱膨張しやすい構成要素をシーリングする方法であって、
(a)シールと支持構造との間に熱膨張部材を配置するステップと、
(b)上記熱膨張部材の箇所の温度上昇に反応して、上記シールを上記支持構造から遠ざけ、上記シールに近接するシールランドの方向へ動かすステップと、
を含むことを特徴とするシーリング方法。
【請求項16】
上記シールが、上記シールと上記シールランドの交差する箇所で流体が流れることを塞ぐことを特徴とする請求項15に記載のシーリング方法。
【請求項17】
上記ステップ(b)が膨張するバイメタルコイルを含むことを特徴とする請求項15に記載のシーリング方法。
【請求項18】
上記ステップ(b)が上記シールと上記支持構造の間にあるギャップの距離を広げることを特徴とする請求項15に記載のシーリング方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−14298(P2008−14298A)
【公開日】平成20年1月24日(2008.1.24)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−107918(P2007−107918)
【出願日】平成19年4月17日(2007.4.17)
【出願人】(590005449)ユナイテッド テクノロジーズ コーポレイション (581)
【氏名又は名称原語表記】UNITED TECHNOLOGIES CORPORATION
【Fターム(参考)】