説明

タービンシステムおよびタービンシステム起動制御方法

【課題】タービンロータに発生する熱応力と、熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を規定値以下に抑えてタービンを起動することができるタービンシステムを提供する。
【解決手段】本発明によるタービンシステム1は、車室2と、この車室2内に回転自在に取り付けられたタービンロータ3とを有するタービン4と、このタービン4の車室2の上流側に連結された主蒸気管5とを備えている。この主蒸気管5に、車室2に流入する蒸気の流量を調節する制御弁6が設けられ、タービンロータ3に発電機7が連結されている。また、制御弁6に、制御弁6を操作する操作量を求めて制御弁6を制御してタービン4を起動させる起動制御装置10が接続されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、車室と、この車室内に回転自在に取り付けられたタービンロータとを有するタービンを起動制御するタービンシステムおよびタービンシステム起動制御方法に係り、とりわけ、タービンロータに発生する熱応力と、熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を規定値以下に抑えてタービンを起動することができるタービンシステムおよびタービンシステム起動制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、タービンを起動する際、タービンの車室に流入する蒸気の蒸気温度が上昇するとともに、この蒸気の蒸気流量が増大することにより、まず、タービンロータ表面の表面メタル温度が上昇する。その後、タービンロータ表面の熱が熱伝導によりタービンロータ内部に伝わる。このことにより、タービンロータ内部の内部メタル温度は、タービンロータ表面の表面メタル温度より遅れて温度上昇する。このため、タービンロータの表面と内部との間の温度分布に偏差が生じ、タービンロータに熱応力が発生する。この熱応力が大きい場合、タービンロータの寿命を著しく縮めてしまう場合がある。
【0003】
そこで、タービンのタービンロータに発生する熱応力を規定値以下に抑えるとともにタービンの起動時間が最短になるようにタービンの起動を制御する装置が知られている(例えば、特許文献1および特許文献2参照)。
【0004】
このうち、特許文献1に記載の蒸気タービン起動制御装置においては、タービンロータの外周に配置された第一段落の第一段落メタル温度等が、予め登録した所定の推移パターンに沿って推移するように、タービンロータのタービン回転数の変化率を表すタービン昇速率および発電機の負荷の上昇率を表す負荷上昇率を求めてタービンの起動を制御している。
【0005】
また、特許文献2に記載のタービン起動制御装置においては、タービンロータのタービン昇速率および発電機の負荷上昇率を一定と仮定して計算を行うことにより、計算の変数を少なくして計算を簡素化している。
【特許文献1】特開平9−317404号公報
【特許文献2】特開2006−257925号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながらタービンを起動する際、タービンロータとこのタービンロータを収納する車室との間に設けられた蒸気通路部を通過する蒸気の温度が上昇するとともに蒸気の流量が増大する。この場合、タービンロータおよび車室はいずれもタービンロータの長手軸方向に伸びる。ここで、タービンロータおよび車室は、素材および形状が各々異なる。このことにより、タービンロータの伸び量および車室の伸び量は異なるとともに、タービンロータの伸び量が変化する傾向および車室の伸び量が変化する傾向も異なる。このため、タービンロータの伸びと車室の伸びとの差である伸び差が大きくなり、最悪の場合タービンロータ側の回転部材が車室側の静止部材に接触することが考えられる。
【0007】
本発明は、このような点を考慮してなされたものであり、タービンロータに発生する熱応力と、熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を規定値以下に抑えてタービンを起動することができるタービンシステムおよびタービンシステム起動制御方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明は、車室と、この車室内に回転自在に取り付けられたタービンロータとを有するタービンと、このタービンの車室の上流側に連結された主蒸気管と、この主蒸気管に設けられ、車室に流入する蒸気の流量を調節する制御弁と、前記タービンロータに連結された発電機と、前記制御弁を制御してタービンを起動させる起動制御装置と、を備え、前記起動制御装置は、前記車室に流入する蒸気の蒸気条件、タービンロータのロータ温度および車室の車室温度に基づいて、所定の予測時間区間内にタービンロータに発生する熱応力と、熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を予測し、これら予測した熱応力および伸び差を規定値以下に抑えるように当該予測時間区間内における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算し、この操作量推移パターンに基づいて制御弁の操作量を求める起動制御手段と、この起動制御手段により求められた制御弁の操作量に基づいて制御弁を駆動させる制御弁制御手段と、を有することを特徴とするタービンシステムである。
【0009】
本発明は、タービンロータの外周にタービン動翼が設けられるとともに、車室内にタービンノズルが設けられ、当該タービンノズルとタービン動翼の一対で構成される段落を複数設けて蒸気通路部を形成し、起動制御装置の起動制御手段は、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落近傍の蒸気の第1段落蒸気温度および当該第1段落近傍の蒸気の熱伝達率を予測する第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段と、この第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落蒸気温度および熱伝達率と、第1段落の第1段落メタル温度とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落メタル温度変化率を予測する第1段落メタル温度予測手段と、この第1段落メタル温度予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落メタル温度変化率に基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにタービンロータに発生する熱応力を予測する熱応力予測手段と、前記車室に流入する蒸気の蒸気条件に基づいて当該予測時間区間内の各時間ステップにおける前記蒸気通路部を流れる蒸気の通路部蒸気温度および通路部蒸気流量を予測する通路部蒸気温度・流量予測手段と、この通路部蒸気温度・流量予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける通路部蒸気温度および通路部蒸気流量と、タービンロータのロータ温度とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率を予測するロータ温度予測手段と、通路部蒸気温度・流量予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける通路部蒸気温度および通路部蒸気流量と、車室の車室温度とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率を予測する車室温度予測手段と、ロータ温度予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率と、車室温度予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を予測する伸び差予測手段と、熱応力予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱応力と、伸び差予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける伸び差とを各々規定値以下に抑えるとともに、これらの熱応力と伸び差とに基づいて、当該予測時間区間内における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算し、この操作量推移パターンのうち最初の時間ステップにおける操作量を制御弁の操作量として求める操作量算出手段と、を有することを特徴とするタービンシステムである。
【0010】
本発明は、起動制御手段の第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段は、主蒸気管内の蒸気の管内蒸気圧力および管内蒸気温度と、タービンロータのタービン回転数と、発電機の発電機負荷と、起動制御手段の操作量算出手段において求められた当該予測時間区間内の各時間ステップにおける操作量推移パターンに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落蒸気温度および熱伝達率を予測することを特徴とするタービンシステムである。
【0011】
本発明は、起動制御手段の通路部蒸気温度・流量予測手段は、主蒸気管内の蒸気の管内蒸気圧力、管内蒸気温度、および管内蒸気流量と、タービンロータのタービン回転数と、発電機の発電機負荷と、起動制御手段の操作量算出手段において求められた当該予測時間区間内の各時間ステップにおける操作量推移パターンに基づいて、通路部蒸気温度および通路部蒸気流量を予測することを特徴とするタービンシステムである。
【0012】
本発明は、起動制御手段の熱応力予測手段は、予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるタービンロータに発生する熱応力に基づいて、タービンロータの寿命が消費されることに伴い消費される寿命を評価する機能を有することを特徴とするタービンシステムである。
【0013】
本発明は、起動制御手段の操作量算出手段は、求められた当該予測時間区間内の各時間ステップにおける操作量推移パターンに基づいて、タービンロータを起動する際に消費する燃料の燃料消費コストを求める機能と、タービンを起動してから発電機により発電された電力を売ることができる運転状態になるまでの間に、売ることができない電力の売電喪失コストを求める機能とを有し、操作量算出手段において、更に、熱応力予測手段により求められた前記タービンロータにて消費される寿命と、操作量算出手段により求められた燃料消費コストと、売電喪失コストとに基づいて、当該予測時間区間における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算することを特徴とするタービンシステムである。
【0014】
本発明は、起動制御手段の操作量算出手段は、実測された伸び差が規定値を超える場合、タービンロータのタービン回転数および発電機の負荷を、現在時間におけるタービン回転数および発電機の負荷に各々維持する機能を有することを特徴とするタービンシステムである。
【0015】
本発明は、起動制御手段の操作量算出手段は、実測された伸び差が規定値を超える場合、タービンロータの回転を停止する機能を有することを特徴とするタービンシステムである。
【0016】
本発明は、車室と、この車室内に回転自在に取り付けられたタービンロータとを有するタービンと、このタービンの車室の上流側に連結された主蒸気管と、この主蒸気管に設けられ、車室に流入する蒸気の流量を調節する制御弁と、前記タービンロータに連結された発電機と、前記制御弁を制御してタービンを起動させ、起動制御手段と制御弁制御手段とを有する起動制御装置とを備えたタービンシステムを起動するタービンシステム起動制御方法において、起動制御装置の起動制御手段により、前記車室に流入する蒸気の蒸気条件、タービンロータのロータ温度および車室の車室温度に基づいて、所定の予測時間区間内にタービンロータに発生する熱応力と、熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を予測し、これら予測した熱応力および伸び差を規定値以下に抑えるように当該予測時間区間内における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算し、この操作量推移パターンに基づいて制御弁の操作量を求める工程と、起動制御装置の制御弁制御手段により、この起動制御手段により求められた制御弁の操作量に基づいて制御弁を駆動させる工程と、を有することを特徴とするタービンシステム起動制御方法である。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、運転状況によらず、タービンロータに作用する熱応力およびタービンロータの伸びと車室の伸びとの差である伸び差を規定値以下に抑えながら迅速にタービンを起動させることができ、タービンの起動制御の精度を向上させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0018】
第1の実施の形態
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態について説明する。ここで、図1乃至図3は、本発明の第1の実施の形態におけるタービンシステムを示す図である。このうち図1は、本発明の第1の実施の形態におけるタービンシステムの全体構成を示す図であり、図2は、本発明の第1の実施の形態におけるタービンシステムのタービンの構成を示す図である。また、図3(a)は、本発明の第1の実施の形態におけるタービンシステムを起動する際、管内蒸気圧力、管内蒸気温度、タービン回転数、および発電機負荷の推移を示す図であり、図3(b)は、予測された熱応力の推移を示す図であり、図3(c)は、予測された伸び差の推移を示す図である。
【0019】
まず、図1および図2により、本発明によるタービンシステム1の全体構成について説明する。ここでタービンシステム1は、車室2と、この車室2内に回転自在に取り付けられたタービンロータ3とを有するタービン4を起動制御するためのものである。
【0020】
図1および図2に示すようにタービンシステム1は、車室2と、この車室2内に回転自在に取り付けられたタービンロータ3とを有するタービン4と、一端がこの車室2の上流側に連結され、他端が図示しないボイラ等の蒸気発生装置に連結された主蒸気管5とを備えている。この主蒸気管5に、蒸気発生装置から車室2に流入する蒸気の流量を調節する制御弁6が設けられ、タービンロータ3に発電機7が連結されている。また、タービンロータ3の外周にタービン動翼8aが設けられるとともに、車室2内にタービンノズル8bが設けられる。円周方向に亘り設けられたタービンノズル8bとタービン動翼8aの一対が段落8を構成し、段落8は軸方向に複数設けられて蒸気通路部2aを形成している。この各段落8のうち、車室2に接続された主蒸気管5に最も近い側である上流側に配置された、タービン動翼9aとタービンノズル9bからなるものを第1段落9という。なお、車蒸気通路部2aは、車室2とタービンロータ3との間の、特に蒸気が流れる部分を示す。
【0021】
また、図1に示すように、制御弁6には、制御弁6を操作する操作量を求めて制御弁6を制御し、タービン4を起動させる起動制御装置10が接続されている。
【0022】
この起動制御装置10は、所定の予測時間区間内にタービンロータ3に発生する熱応力σs(k+j)(j=1、2、・・・、m)と、熱膨張による車室2の伸びとタービンロータ3の伸びとの差である伸び差Exs(k+j)とを予測し、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける制御弁6の操作量推移パターンを求め、この操作量推移パターンに基づいて制御弁6の操作量を求める起動制御手段11と、この起動制御手段11により求められた操作量に基づいて制御弁7を駆動させる制御弁制御手段12とを有している。ここで予測時間区間とは、現在時間kに対して、将来時間となるk+1からk+mの間に渡った時間区間をいう。
【0023】
このうち起動制御手段11は、タービンシステム1の状態量、すなわち蒸気条件、回転数、発電機負荷などに基づいて当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落9近傍の蒸気の第1段落蒸気温度Ts(k+j)および第1段落9近傍の蒸気の熱伝達率hf(k+j)を予測する第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13を有している。この第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13において第1段落蒸気温度Ts(k+j)および熱伝達率hf(k+j)を予測する際、現在時間以前に実測された主蒸気管5内の蒸気条件である管内蒸気圧力Pmsおよび管内蒸気温度Tmsと、タービンロータ3のタービン回転数wと、発電機7の発電機負荷MWと、後述する操作量算出手段20により求められる制御弁6の操作量推移パターンとが用いられる。ここで操作量推移パターンは、タービンロータ3のタービン回転数wの変化率を示すタービン昇速率dw(k+j)、および発電機7の負荷MWの上昇率を示す負荷上昇率dMW(k+j)とで表される。この第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13において用いられるタービン昇速率dw(k+j)および負荷上昇率dMW(k+j)は、後述する操作量算出手段20により当該予測時間区間内の各時間ステップにおいて直前の繰り返し計算により求められた値となっている。
【0024】
この第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13に、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落メタル温度変化率dTmet(k+j)を予測する第1段落メタル温度予測手段14が接続されている。この第1段落メタル温度予測手段14において第1段落メタル温度変化率dTmet(k+j)を予測する際、第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落蒸気温度Ts(k+j)および熱伝達率hf(k+j)と、現在時間以前に実測された第1段落9近傍のタービンロータ3の表面温度を示す第1段落メタル温度Tmetとが用いられる。
【0025】
この第1段落メタル温度予測手段14に、当該予測時間区間内の各時間ステップにタービンロータ3に発生する熱応力σs(k+j)を予測する熱応力予測手段15が接続されている。この熱応力予測手段15において熱応力σs(k+j)を予測する際、第1段落メタル温度予測手段14により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落メタル温度変化率dTmet(k+j)が用いられる。
【0026】
また、起動制御手段11は、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける蒸気通路部2aを流れる蒸気の通路部蒸気温度Tsp(k+j)およびこの蒸気の通路部蒸気流量Qsp(k+j)を予測する通路部蒸気温度・流量予測手段16を有している。この通路部蒸気温度・流量予測手段16において通路部蒸気温度Tsp(k+j)および通路部蒸気流量Qsp(k+j)を予測する際、現在時間以前に実測された主蒸気管5内の蒸気条件である管内蒸気圧力Pms、管内蒸気温度Tms、および管内蒸気流量Flと、タービンロータ3のタービン回転数wと、発電機7の発電機負荷MWと、後述する操作量算出手段20により求められる制御弁6の操作量推移パターンとが用いられる。この通路部蒸気温度・流量予測手段16において用いられるタービン昇速率dw(k+j)および発電機7の負荷上昇率dMW(k+j)は、上述したように、操作量算出手段20において当該予測時間区間内の各時間ステップにおいて直前の繰り返し計算により求められた値となっている。
【0027】
この通路部蒸気温度・流量予測手段16に、当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率dTr(k+j)を予測するロータ温度予測手段17が接続されている。このロータ温度予測手段17においてロータ温度変化率dTr(k+j)を予測する際、通路部蒸気温度・流量予測手段16により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける通路部蒸気温度Tsp(k+j)および通路部蒸気流量Qsp(k+j)と、現在時間以前に実測されたタービンロータ3のロータ温度Trとが用いられる。なお、ロータ温度Trとして、タービンロータ3の例えば中心部分にて実測した温度に限らず、第1段落メタル温度Tmetの値を用いることも可能である。あるいは、ロータ温度Trを、ロータの形状・材質などを基に第1段落メタル温度Tmetや第1段落メタル温度変化率dTmet(k+j)から推定した値とすることもできる。この場合、タービンロータ3の複数の箇所について推定した温度をそれぞれロータ温度Trとすることも可能となる。
【0028】
また、通路部蒸気温度・流量予測手段16に、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率dTc(k+j)を予測する車室温度予測手段18が接続されている。この車室温度予測手段18において車室温度変化率dTc(k+j)を予測する際、通路部蒸気温度・流量予測手段16により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける通路部蒸気温度Tsp(k+j)および通路部蒸気流量Qsp(k+j)と、現在時間以前に実測された車室2の車室温度Tcとが用いられる。
【0029】
また、ロータ温度予測手段17および車室温度予測手段18に、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱膨張による車室2の伸びとタービンロータ3の伸びとの差である伸び差Exs(k+j)を予測する伸び差予測手段19が接続されている。この伸び差予測手段19において伸び差Exs(k+j)を予測する際、ロータ温度予測手段17により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率dTr(k+j)と、車室温度予測手段18により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率dTc(k+j)とが用いられる。
【0030】
さらに、熱応力予測手段15および伸び差予測手段19に、当該予測時間区間内における制御弁6の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算し、この操作量推移パターンに基づいて、制御弁6の操作量を求める操作量算出手段20が接続されている。この操作量算出手段20において制御弁6の操作量を求める際、熱応力予測手段15により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱応力σs(k+j)と、伸び差予測手段19により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける伸び差Exs(k+j)とを各々規定値以下に抑えるとともに、タービン4を起動する時間を最短にするように当該予測時間区間内における制御弁6の操作量推移パターンが時間ステップ毎に計算される。ここで、熱応力に対する規定値は、タービンロータ3の寿命を著しく低下させることがない所定の値であり、伸び差に対する規定値は、タービンロータ3側のタービン動翼8aが車室2側のタービンノズル8bに接触することなく、タービン4を運転させることができる所定の値となっている。
【0031】
また、操作量算出手段20において、上述のようにして計算された操作量推移パターン、すなわちタービン昇速率dw(k+j)および負荷上昇率dMW(k+j)のうち最初の時間ステップにおける昇速率dwoptおよび負荷上昇率dMWoptが制御弁6の操作量として求められる。
【0032】
また、この操作量算出手段20は、現在時間に実測された伸び差Exs(k+j)が規定値を超える場合、タービンロータ3のタービン回転数wおよび発電機7の負荷MWを、現在時間におけるタービン回転数wおよび発電機7の負荷MWに各々維持する機能を有している。
【0033】
次に、このような構成からなる本実施の形態の作用、すなわち本発明によるタービンシステム起動制御方法について説明する。
【0034】
停止しているタービン4を起動する場合、図1に示すように、まず、現在時間(k)以前における主蒸気管5内の蒸気の蒸気条件である管内蒸気圧力Pms、管内蒸気温度Tms、および管内蒸気流量Flと、タービンロータ3のタービン回転数w、発電機7の発電機負荷MWと、第1段落9(図2参照)近傍のタービンロータ3の表面温度である第1段落メタル温度Tmetと、タービンロータ3のロータ温度Trと、車室の車室温度Tcとがそれぞれプラント状態量として実測される。
【0035】
次に、第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13において、実測された管内蒸気圧力Pms、管内蒸気温度Tms、タービン回転数w、および発電機負荷MW、並びに後述する操作量算出手段20により所定の予測時間区間内の各時間ステップにおいて直前の繰り返し計算により求められたタービン昇速率dw(k+j)(j=1、2、・・・、m)および負荷上昇率dMW(k+j)に基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落9近傍の蒸気の第1段落蒸気温度Ts(k+j)および第1段落9近傍の蒸気と第1段落9近傍のタービンロータ3表面との間の熱伝達率hf(k+j)が予測される。
【0036】
次に、第1段落メタル温度予測手段14において、第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13により予測された第1段落蒸気温度Ts(k+j)および熱伝達率hf(k+j)と、実測された第1段落メタル温度Tmetとに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落メタル温度変化率dTmet(k+j)が予測される。
【0037】
次に、熱応力予測手段15において、第1段落メタル温度予測手段14により予測された第1段落メタル温度変化率dTmet(k+j)に基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにタービンロータ3に発生する熱応力σs(k+j)が予測される。
【0038】
上述した第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13により第1段落蒸気温度Ts(k+j)および熱伝達率hf(k+j)が予測されることと並行して、通路部蒸気温度・流量予測手段16において、実測された管内蒸気圧力Pms、管内蒸気温度Tms、タービン回転数w、発電機負荷MW、および管内蒸気流量Fl、並びに後述する操作量算出手段20により当該予測時間区間内の各時間ステップにおいて直前の繰り返し計算により求められたタービン昇速率dw(k+j)および負荷上昇率dMW(k+j)に基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける蒸気通路部2aを流れる蒸気の通路部蒸気温度Tsp(k+j)およびこの蒸気の通路部蒸気流量Qsp(k+j)が予測される。
【0039】
次に、ロータ温度予測手段17において、通路部蒸気温度・流量予測手段16により予測された通路部蒸気温度Tsp(k+j)および通路部蒸気流量Qsp(k+j)と、実測されたロータ温度Trとに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率dTr(k+j)が予測される。
【0040】
次に、この車室温度予測手段18において、通路部蒸気温度・流量予測手段16により予測された通路部蒸気温度Tsp(k+j)および通路部蒸気流量Qsp(k+j)と、実測された車室温度Tcとに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率dTc(k+j)が予測される。
【0041】
次に、伸び差予測手段17において、ロータ温度予測手段17により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率dTr(k+j)と、車室温度予測手段18により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率dTc(k+j)とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱膨張による車室2の伸びとタービンロータ3の伸びとの差である伸び差Exs(k+j)が予測される。この場合、まず、車室2の伸びが予測されるとともに、タービンロータ3の伸びが予測され、その後、この車室2の伸びとタービンロータ3の伸びとの差である伸び差Exs(k+j)が求められる。
【0042】
次に、操作量算出手段20において、制御弁6の操作量が求められる。この場合、まず、熱応力予測手段15により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱応力σs(k+j)と、伸び差予測手段19により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける伸び差Exs(k+j)とを各々規定値以下に抑えるとともに、これらの熱応力σs(k+j)と伸び差Exs(k+j)とに基づいて、タービン4を起動する時間を最短にするように当該予測時間区間内における制御弁6の操作量推移パターン、すなわちタービンロータ3のタービン昇速率dw(k+j)および発電機7の負荷上昇率dMW(k+j)が時間ステップ毎に計算される。
【0043】
次に、この操作量算出手段20により計算されたタービン昇速率dw(k+j)および負荷上昇率dMW(k+j)は、第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段13および通路部蒸気温度・流量予測手段16にフィードバックされ、次の繰り返し計算に用いられる。このようにして、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける上述した計算過程が、所定の条件を満たすまで繰り返し行われる。
【0044】
繰り返し計算が終了した後、操作量算出手段20において、当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるタービン昇速率dw(k+j)および負荷上昇率dMW(k+j)のうち最初の時間ステップ(k+1)における値に基づいて操作用タービン昇速率dwoptおよび操作用負荷上昇率dMWoptが制御弁6の操作量として求められる。
【0045】
次に、制御弁制御手段12において、起動制御手段11の操作量算出手段20により制御弁6の操作量として求められた操作用タービン昇速率dwoptおよび操作用負荷上昇率dMWoptに基づいて、制御弁6が駆動される。すなわち、この操作量に基づいて制御弁6の弁開度が調節され、図示しないボイラ等の蒸気発生装置から主蒸気管5および制御弁6を通って車室2に流入される蒸気の流量が調節される。
【0046】
ここで、伸び差実測手段(図示せず)により現在時間以前に実測された伸び差が規定値を超える場合、操作量算出手段20において、タービンロータ3のタービン回転数2および発電機7の負荷MWが、現在時間におけるタービン回転数wおよび発電機の負荷MWに各々維持される。この場合、予測された伸び差と規定値との比較だけではなく、実測された伸び差と規定値との比較をも行うことができ、タービンロータ3側のタービン動翼8aが車室2側のタービンノズル8bに接触することを確実に防止することができる。
【0047】
次に、車室2に流入した蒸気の圧力をタービンロータ3の外周に設けられた複数の段落8のタービン動翼8aが受けてタービンロータ3が回転し、タービンロータ3に連結された発電機7が発電する。
【0048】
その後、制御弁6の操作量として求められた操作用タービン昇速率dwoptおよび操作用負荷上昇率dMWoptの時間ステップ(k+1)を現在時間に繰り上げて、上述した計算過程が新たな予測時間区間を設定して行われる。このようにして操作量算出手段20において制御弁6の操作量推移パターンが順次更新され、この更新された操作量推移パターンに基づいて、制御弁6の操作量が制御されタービン4が起動して運転する。
【0049】
上述のようにしてタービンを起動させた場合における主蒸気管5内の蒸気の管内蒸気圧力Pms、管内蒸気温度Tms、タービンロータ3のタービン回転数w、および発電機7の発電機負荷MWの推移を図3(a)に示す。また、予測された熱応力σs(k+j)の推移を図3(b)に、予測された伸び差Exs(k+j)の推移を図3(c)に示す。図3(b)、(c)に示すように、タービン4を起動する際、熱応力σs(k+j)および伸び差(k+j)が、各々規定値以下に抑えられていることがわかる。
【0050】
このように本実施の形態によれば、タービンロータ3の熱応力およびタービンロータ3の伸びと車室2の伸びとの差である伸び差を規定値以下に抑えながら、タービン4の起動時間を最短にすることができる。このことにより、タービンロータ3の寿命を著しく低下させることなく、かつタービンロータ3側のタービン動翼8aが車室2側のタービンノズル8bに接触することなくタービン4を起動して運転させることができる。また、タービン4を起動させてから発電機7により発電された電力を売ることができる運転状態になるまでの時間を短くすることができる。このため、タービン4を起動させた後、得られた電力を売電する機会を喪失することを抑制することができる。
【0051】
なお、本実施の形態においては、通路部蒸気温度・流量予測手段16において通路部蒸気温度Tsp(k+j)および通路部蒸気流量Qsp(k+j)を求める際、実測された管内蒸気流量Flを用いているが、このことに限られることはなく、プラント状態量である制御弁6の入口の蒸気の圧力と、この制御弁6の弁開度とを実測して、この圧力と弁開度とを用いて管内蒸気流量Flを求めて、通路部蒸気温度Tsp(k+j)および通路部蒸気流量Qsp(k+j)を求めることもできる。
【0052】
本発明の変形例
次に、本発明によるタービンシステムの変形例について説明する。本変形例は、実測された伸び差が規定値を超える場合タービンロータの回転を停止するものであり、他の構成は図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。
【0053】
本変形例によれば、伸び差実測手段(図示せず)により現在時間以前に実測された伸び差が規定値を超える場合、操作量算出手段20により、タービンロータ3の回転が停止する。このことにより、タービンロータ3側のタービン動翼8aが車室2側のタービンノズル8bに接触することを確実に防止することができる。
【0054】
第2の実施の形態
次に、図4により、本発明の第2の実施の形態におけるタービンシステムについて説明する。ここで図4は、本発明の第2の実施の形態におけるタービンシステムにおいて、寿命消費コストと燃料消費コストと売電喪失コストとの関係を示した図である。
【0055】
図4に示す第2の実施の形態において、タービンシステムは、操作量推移パターンを求める際、寿命消費コスト、燃料消費コスト、および売電喪失コストが考慮される点が異なるのみであり、他の構成は、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と略同一である。なお、図4において、図1乃至図3に示す第1の実施の形態と同一部分には同一符号を付して詳細な説明は省略する。
【0056】
本実施の形態における熱応力予測手段15(図1参照)は、予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるタービンロータ3に発生する熱応力σs(k+j)に基づいて、タービンロータ3の寿命が消費されることに伴い消費される寿命を評価する機能を有している。すなわち、第1の実施の形態においては、タービンロータ3に発生すると予測される熱応力σs(k+j)が規定値以下になるように起動制御するものであったが、本実施の形態は、そもそもこの熱応力の規定値がタービンの寿命消費に基づいて定められている点に着目したものである。つまり、タービンシステム1において、起動時に発生する最大の熱応力は、タービンロータ3の寿命をある時間だけ縮めるものであるから、本実施の形態においては、熱応力の規定値を固定値として定めるのではなく、起動制御手段11の熱応力予測手段15内に熱応力の最大値と寿命消費の関係を規定する関数を持たせたことを特徴としている。そして、予め求められているタービンロータ3の寿命とタービンロータ3を交換する際のコストとの関係に基づいて、各時間ステップにおいて予測されるタービンロータ3の寿命消費に相当するコストが寿命消費コストとして算出される。
【0057】
また、操作量算出手段20(図1参照)は、制御弁6の操作量推移パターン、すなわち当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるタービン昇速率dW(k+j)および発電機7の負荷上昇率dMW(k+j)に基づいて、タービンロータ3を起動する際に消費する燃料の燃料消費コストを求める機能を有している。さらに、操作量算出手段20は、タービン4を起動してから発電機7により発電された電力を売ることができる運転状態になるまでの間に売ることができない電力の売電喪失コストを求める機能を有している。
【0058】
本実施の形態においてタービン4を起動する際、タービン4の起動操作を行うオペレータは、寿命消費コストと、燃料消費コストと、売電喪失コストとの関係から、タービン4を起動する際の条件を選択する。すなわち、図4において、オペレータが、例えば、図4に示す被選択運転点における条件を選択する場合、この選択された条件に基づいて操作量算出手段20により操作量推移パターンが算出される。
【0059】
このように本実施の形態によれば、オペレータは、タービン4を起動する際、タービンロータ3の寿命が消費されることを抑えたいと考える場合には、寿命消費コストが抑制される条件を選択することができる。また、タービン4を起動する際の燃料の消費を抑えたいと考える場合には、燃料消費コストが抑制される条件を選択することができる。さらに、発電機7により発電された電力を売電機会を喪失することなく売電したいと考える場合には、売電喪失コストが抑制される条件を選択することができる。このため、タービン4を起動する際、タービンロータ3の熱応力およびタービンロータ3と車室2との伸び差を規定値以下に抑えながらタービン4の起動時間を最短にするとともに、寿命消費コスト、燃料消費コスト、および売電喪失コストとの関係から定められる起動条件を任意に選択して、タービン4を起動して運転させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】図1は、本発明の第1の実施の形態におけるタービンシステムの全体構成を示す図。
【図2】図2は、本発明の第1の実施の形態におけるタービンシステムのタービンの構成を示す図。
【図3】図3(a)は、本発明の第1の実施の形態におけるタービンシステムを起動する際、管内蒸気圧力、管内蒸気温度、タービン回転数、および発電機負荷の推移を示す図であり、図3(b)は、予測された熱応力の推移を示す図であり、図3(c)は、予測された伸び差の推移を示す図。
【図4】図4は、本発明の第2の実施の形態におけるタービンシステムにおいて、寿命消費コストと燃料消費コストと売電喪失コストとの関係を示した図。
【符号の説明】
【0061】
1 タービンシステム
2 車室
2a 蒸気通路部
3 タービンロータ
4 タービン
5 主蒸気管
6 制御弁
7 発電機
8 段落
8a タービン動翼
8b タービンノズル
9 第1段落
9a タービン動翼
9b タービンノズル
10 起動制御装置
11 起動制御手段
12 制御弁制御手段
13 第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段
14 第1段落メタル温度予測手段
15 熱応力予測手段
16 通路部蒸気温度・流量予測手段.
17 ロータ温度予測手段
18 車室温度予測手段
19 伸び差予測手段
20 操作量算出手段

【特許請求の範囲】
【請求項1】
車室と、この車室内に回転自在に取り付けられたタービンロータとを有するタービンと、
このタービンの車室の上流側に連結された主蒸気管と、
この主蒸気管に設けられ、車室に流入する蒸気の流量を調節する制御弁と、
前記タービンロータに連結された発電機と、
前記制御弁を制御してタービンを起動させる起動制御装置と、を備え、
前記起動制御装置は、前記車室に流入する蒸気の蒸気条件、タービンロータのロータ温度および車室の車室温度に基づいて、所定の予測時間区間内にタービンロータに発生する熱応力と、熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を予測し、これら予測した熱応力および伸び差を規定値以下に抑えるように当該予測時間区間内における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算し、この操作量推移パターンに基づいて制御弁の操作量を求める起動制御手段と、
この起動制御手段により求められた制御弁の操作量に基づいて制御弁を駆動させる制御弁制御手段と、を有することを特徴とするタービンシステム。
【請求項2】
タービンロータの外周にタービン動翼が設けられるとともに、車室内にタービンノズルが設けられ、当該タービンノズルとタービン動翼の一対で構成される段落を複数設けて蒸気通路部を形成し、
起動制御装置の起動制御手段は、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落近傍の蒸気の第1段落蒸気温度および当該第1段落近傍の蒸気の熱伝達率を予測する第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段と、
この第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落蒸気温度および熱伝達率と、第1段落の第1段落メタル温度とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落メタル温度変化率を予測する第1段落メタル温度予測手段と、
この第1段落メタル温度予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落メタル温度変化率に基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにタービンロータに発生する熱応力を予測する熱応力予測手段と、
前記車室に流入する蒸気の蒸気条件に基づいて当該予測時間区間内の各時間ステップにおける前記蒸気通路部を流れる蒸気の通路部蒸気温度および通路部蒸気流量を予測する通路部蒸気温度・流量予測手段と、
この通路部蒸気温度・流量予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける通路部蒸気温度および通路部蒸気流量と、タービンロータのロータ温度とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率を予測するロータ温度予測手段と、
通路部蒸気温度・流量予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける通路部蒸気温度および通路部蒸気流量と、車室の車室温度とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率を予測する車室温度予測手段と、
ロータ温度予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるロータ温度変化率と、車室温度予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける車室温度変化率とに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を予測する伸び差予測手段と、
熱応力予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける熱応力と、伸び差予測手段により予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおける伸び差とを各々規定値以下に抑えるとともに、これらの熱応力と伸び差とに基づいて、当該予測時間区間内における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算し、この操作量推移パターンのうち最初の時間ステップにおける操作量を制御弁の操作量として求める操作量算出手段と、を有することを特徴とする請求項1に記載のタービンシステム。
【請求項3】
起動制御手段の第1段落蒸気温度・熱伝達率予測手段は、主蒸気管内の蒸気の管内蒸気圧力および管内蒸気温度と、タービンロータのタービン回転数と、発電機の発電機負荷と、起動制御手段の操作量算出手段において求められた当該予測時間区間内の各時間ステップにおける操作量推移パターンに基づいて、当該予測時間区間内の各時間ステップにおける第1段落蒸気温度および熱伝達率を予測することを特徴とする請求項2に記載のタービンシステム。
【請求項4】
起動制御手段の通路部蒸気温度・流量予測手段は、主蒸気管内の蒸気の管内蒸気圧力、管内蒸気温度、および管内蒸気流量と、タービンロータのタービン回転数と、発電機の発電機負荷と、起動制御手段の操作量算出手段において求められた当該予測時間区間内の各時間ステップにおける操作量推移パターンに基づいて、通路部蒸気温度および通路部蒸気流量を予測することを特徴とする請求項2または3に記載のタービンシステム。
【請求項5】
起動制御手段の熱応力予測手段は、予測された当該予測時間区間内の各時間ステップにおけるタービンロータに発生する熱応力に基づいて、タービンロータの寿命が消費されることに伴い消費される寿命を評価する機能を有することを特徴とする請求項2乃至4のいずれかに記載のタービンシステム。
【請求項6】
起動制御手段の操作量算出手段は、求められた当該予測時間区間内の各時間ステップにおける操作量推移パターンに基づいて、タービンロータを起動する際に消費する燃料の燃料消費コストを求める機能と、タービンを起動してから発電機により発電された電力を売ることができる運転状態になるまでの間に、売ることができない電力の売電喪失コストを求める機能とを有し、
操作量算出手段において、更に、熱応力予測手段により求められた前記タービンロータにて消費される寿命と、操作量算出手段により求められた燃料消費コストと、売電喪失コストとに基づいて、当該予測時間区間における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算することを特徴とする請求項5に記載のタービンシステム。
【請求項7】
起動制御手段の操作量算出手段は、実測された伸び差が規定値を超える場合、タービンロータのタービン回転数および発電機の負荷を、現在時間におけるタービン回転数および発電機の負荷に各々維持する機能を有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載のタービンシステム。
【請求項8】
起動制御手段の操作量算出手段は、実測された伸び差が規定値を超える場合、タービンロータの回転を停止する機能を有することを特徴とする請求項2乃至6のいずれかに記載のタービンシステム。
【請求項9】
車室と、この車室内に回転自在に取り付けられたタービンロータとを有するタービンと、このタービンの車室の上流側に連結された主蒸気管と、この主蒸気管に設けられ、車室に流入する蒸気の流量を調節する制御弁と、前記タービンロータに連結された発電機と、前記制御弁を制御してタービンを起動させ、起動制御手段と制御弁制御手段とを有する起動制御装置とを備えたタービンシステムを起動するタービンシステム起動制御方法において、
起動制御装置の起動制御手段により、前記車室に流入する蒸気の蒸気条件、タービンロータのロータ温度および車室の車室温度に基づいて、所定の予測時間区間内にタービンロータに発生する熱応力と、熱膨張による車室の伸びとタービンロータの伸びとの差である伸び差を予測し、これら予測した熱応力および伸び差を規定値以下に抑えるように当該予測時間区間内における制御弁の操作量推移パターンを時間ステップ毎に計算し、この操作量推移パターンに基づいて制御弁の操作量を求める工程と、
起動制御装置の制御弁制御手段により、この起動制御手段により求められた制御弁の操作量に基づいて制御弁を駆動させる工程と、を有することを特徴とするタービンシステム起動制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−281248(P2009−281248A)
【公開日】平成21年12月3日(2009.12.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−133366(P2008−133366)
【出願日】平成20年5月21日(2008.5.21)
【出願人】(000003078)株式会社東芝 (54,554)
【Fターム(参考)】