説明

ターボ冷凍機の運転状態データ選定装置

【課題】ターボ冷凍機の運転が安定しているか否かを自動判定し、安定時の運転状態データを自動選定する。
【解決手段】ターボ冷凍機の状態診断データDを、状態診断データ取り込み機能部111により、予め決めた一定周期間隔で取り込んでメモリ101に記憶し、記憶された状態診断データDの中の運転状態データRを、運転状態取り出し機能部112により、メモリ101から順次取り出してバッファ102に上書きして記憶し、バッファ102に記憶された運転状態データRを基に、運転状態選定機能部113により、ヒートバランスの値を計算し、その値が予め決めた指定時間だけ継続して安定範囲に入った場合に、指定時間の最後の時点の運転状態データRをリングバッファ103に記憶する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ冷凍機の運転状態データ選定装置に関し、ターボ冷凍機の運転が熱的に安定しているか否かを自動判定し、運転安定時の運転状態データを自動的に選定することができるように工夫したものである。
【背景技術】
【0002】
ターボ冷凍機は、IT産業・自動車業界などの工場空調、クリーンルーム、ショッピン
グセンター、病院など様々な分野で、冷房機器として使用されている。
【0003】
図4は、ターボ冷凍機システムの一例を示している。同図に示すように、ターボ冷凍機1は、凝縮器1aとオリフィス1bと蒸発器1cと圧縮機1dを配管で繋いで構成されており、冷媒が上記の各機器を循環している。凝縮器1aには冷却水が流れ、蒸発器1cには冷水が流れる。
操作・監視盤10は、その操作盤からターボ冷凍機1に操作指令Sを出すとともに、ターボ冷凍機1に備えた各種のセンサやマイコンから時系列的に出力される状態診断データDを監視盤で受信して、運転状態や診断状態等を表示する。
状態診断データDは、ターボ冷凍機の状態診断をするために必要となるデータであり、多種類(例えば100種類)の時系列的なデータにより構成されている。
【0004】
このようなターボ冷凍機システムを使用者(ユーザー)に納入した後においては、このシステムを製造して据付した製造会社の作業員や、この製造会社から委託を受けたサービス会社の作業員が、ターボ冷凍機システムを設置した現場に出向いて、現場点検作業(保守点検作業)をする。
例えば、ターボ冷凍機システムは、夏季のシーズンにおいて運転されるため、夏季シーズンの初めに実稼働運転する直前(シーズンイン)の時点や、夏季シーズンの終わりに実稼働運転をした直後(シーズンオフ)の時点において、現場点検作業をする。また、夏季シーズンの途中においては、一定期間ごとに、巡回サービスとして現場点検作業をする。
【0005】
現場点検作業では、ターボ冷凍機1の運転状態の点検をし、更に、潤滑油の油量や、油汚れや、配管の汚れ程度なども併せて点検する。そして、点検した各項目の状態(良否など)をまとめて記載した点検報告書を作成して、ユーザーなどに提出している。
【0006】
現場点検作業においてターボ冷凍機1の運転状態の点検をするためには、多種類(例えば100種類)の時系列的なデータからなる状態診断データDの中から、運転状態の点検をするために必要となる特定の種類(例えば30種類)のデータ(これらのデータを「運転状態データ」と称する)をサンプリングしなければならない。
しかも、運転状態データをサンプリングするタイミングは、ターボ冷凍機の運転状態が熱的に安定した時、即ち、ヒートバランスの値が予め決めた範囲内の値になった時でなければならない。
【0007】
なお、ヒートバランスとは、システム(本願の例ではターボ冷凍機)に加えられる熱量と、システムから取り出す熱量との釣り合いを言い、熱的に完全に釣り合っている状態では、ヒートバランスの値は1になる。熱エネルギーを利用するプラントやシステムでは、どのような入熱がありどのような出熱があるかを勘定することにより、そのプラントやシステムの操業・運転状態を詳細に把握することができる。
【0008】
ターボ冷凍機においてヒートバランスの演算をするためには、運転状態データ(例えば30種類のデータ)の中の、特定の種類(例えば8種類)のデータ(これらのデータを「ヒートバランス計算用データ」と称する)が必要である。
【0009】
ターボ冷凍機における、ヒートバランス計算用データとしては、「冷水流量」、「冷却水流量」、「電圧」、「電流」、「冷水入口温度」、「冷水出口温度」、「冷却水入口温度」、「冷却水出口温度」の各データがある。なお、上記の「電圧」とは、ターボ冷凍機の圧縮機を回転駆動するモータに印加される三相の電圧値であり、上記の「電流」とは、ターボ冷凍機の圧縮機を回転駆動するモータに供給される三相の電流値である。
【0010】
ヒートバランス計算は、次式(1)により行うことができる。
ヒートバランス=(冷凍能力+入力)÷熱容量・・・・(1)
ここにおいて、
冷凍能力=冷水温度差×冷水流量×比重×比熱÷860
入力=(電圧×電流×31/2×力率)
熱容量=冷却水温度差×冷却水流量×比重×比熱÷860
冷水温度差=冷水入口温度−冷水出口温度
冷却水温度差=冷却水出口温度−冷却水入口温度
である。
【0011】
ここでデータについてまとめると、「状態診断データ」の中で運転状態の点検をするために必要となる予め決めた特定の種類のデータが「運転状態データ」であり、「運転状態データ」の中でヒートバランスの演算をするために必要となる予め決めた特定の種類のデータが「ヒートバランス計算用データ」である。
【0012】
ところで従来においては、現場点検作業に携帯するパーソナルコンピュータを操作・監視盤10(図4参照)に接続して、時系列データである状態診断データDをバイナリ形式でファイルに記録するという技術はあった。
しかし、ターボ冷凍機の運転状態が熱的に安定した状態の時における運転状態データのみを選択して記録することはできなかった。
【0013】
そこで、現状では、人間の手作業により、現場点検作業の際に運転状態データを取得していた。その手法は次の通りである。
(1)作業員が操作・監視盤10の表示部等に表示されている、ヒートバランス計算用データ(例えば8種類のデータ)の値を目視で確認し、このデータ値を基に電卓等でヒートバランス計算をして、ターボ冷凍機1の運転状態が熱的に安定したか否か(ヒートバランスの値が予め決めた範囲内の値になったか否か)を判定する。
(2)ターボ冷凍機1の運転状態が熱的に安定したと判定した複数の時点において、操作・監視盤10の表示部等に表示されている、運転状態データ(例えば30種類のデータ)を紙に記録する。
(3)複数の各時点における、運転状態データ(例えば30種類のデータ)の値が、予め設定した基準値データ(許容範囲)の範囲内に入っているかのチェックを1点1点、手作業で行う。なお、基準値データ(許容範囲)は、据付・試運転時におけるデータを基に設定している。
【0014】
なお、下記の特許文献1(特開平6−44482号公報)に示す技術では、点検データと基準値データとを比較して正常・異常を判定しているが、点検データの保存は予め指定したタイミングで行っており、機器が安定しているかどうかを判定して安定時に点検データを保存しているものではない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0015】
【特許文献1】特開平6−44482号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
上述したように現状では、人間の手作業により、現場点検作業の際に運転状態データを取得していたため、次のような問題があった。
(1)目視で確認したヒートバランス計算用データ(例えば8種類のデータ)の値を基に電卓等でヒートバランス計算をして、ターボ冷凍機の運転状態が熱的に安定したか否かを判定しているため、目視ミスや計算ミスが発生することがあり、また、運転状態の判定は、標準的な基準やルールはなく、作業員の経験によって行われているため、作業員によっては判定にバラつきが生ずることがある。
(2)採取した複数の各時点における運転状態データ(例えば30種類の各データ)が、基準値データ(許容範囲)の範囲内に入っているかのチェックを、1点1点、手作業で行っており、チェック漏れやチェックミスといった問題が発生することがある。
【0017】
本発明は、上記従来技術に鑑み、ターボ冷凍機の運転が熱的に安定しているか否かを自動判定し、安定運転時の運転状態データを自動的に選定することができる、ターボ冷凍機の運転状態データ選定装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決する本発明の構成は、
メモリと、
ターボ冷凍機から出力される多種類の時系列的なデータからなる状態診断データを、予め決めた一定周期間隔で取り込んで前記メモリに記憶する状態診断データ取り込み機能部と、
バッファと、
前記メモリに記憶された前記状態診断データの中から、ターボ冷凍機の運転状態の点検をするために必要となる予め決めた特定種類のデータである運転状態データを、前記メモリに記憶された順に順次取り出して前記バッファに上書きして記憶する運転状態取り出し機能部と、
複数の運転状態データを記憶することができるリングバッファと、
前記バッファに運転状態データが上書きして記憶されるたびに、当該運転状態データの中に含まれている、ヒートバランスの演算をするために必要な予め決めた特定種類のデータであるヒートバランス計算用データを基に、ターボ冷凍機のヒートバランスの値を計算し、ヒートバランスの値が予め決めた指定時間だけ継続して安定範囲に入った場合に、前記指定時間の最後の時点において前記バッファに記憶されている運転状態データを前記リングバッファに記憶する運転状態選定機能部と、
を有することを特徴とする。
【0019】
また本発明の構成は、
更に、表示部と、
前記リングバッファに記憶された運転状態データの中に含まれている各データが、それぞれ、各データごとに予め決めた許容範囲に入っているか否かを照合すると共に、前記リングバッファに記憶された運転状態データの中に含まれている各データを前記表示部に表示し、且つ、許容範囲から外れたデータについては前記表示部においてアラーム表示をするデータ照合機能部と、
を有することを特徴とする。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、運転状態データの選定をシステム化し自動的に行うことが可能となり、作業者による現場点検作業を効率化することができる。
また、据付・試運転時の基準値データ(許容範囲)を参照して、選定した運転状態データの照合を自動化することにより、チェック漏れやチェックミスを防止することができ、保守点検後のトラブル発生を未然に防止することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明の実施例に係る、ターボ冷凍機の運転状態データ選定装置を示すブロック構成図。
【図2】運転状態データ選定装置が搭載されたパーソナルコンピュータを用いて運転状態データを選定している状態を示す構成図。
【図3】運転状態データ選定機能部の動作状態を示すフローチャート。
【図4】ターボ冷凍機システムの一例を示す構成図。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、本発明の実施の形態について、実施例に基づき詳細に説明する。
【実施例】
【0023】
図1は、本発明の実施例に係るターボ冷凍機の運転状態データ選定装置100を示し、図2は運転状態データ選定装置100が搭載されたパーソナルコンピュータ20を用いて運転状態データを選定している状態を示している。
【0024】
図1に示すように、ターボ冷凍機の運転状態データ選定装置100は、メモリ101と、バッファ102と、リングバッファ103と、表示部104と、状態診断データ取り込み機能部111と、運転状態データ取り出し機能部112と、運転状態データ選定機能部113と、データ照合機能部114を有している。
このうち、メモリ101と、バッファ102と、リングバッファ103と、表示部104は、それぞれ、ハードウエア部材である。また、状態診断データ取り込み機能部111と、運転状態データ取り出し機能部112と、運転状態データ選定機能部113と、データ照合機能部114は、それぞれ、ソフトウエアとハードウエア(CPU等)が共働する具体的手段により、後述する特有の演算処理を実現するよう構築されたものである。
【0025】
現場点検作業の際に運転状態データを選定するためには、図2に示すように、運転状態データ選定装置100が搭載されたパーソナルコンピュータ20を、操作・監視盤10の監視盤に接続し、運転状態データ選定装置100を起動する。
このときターボ冷凍機1が作動していると、ターボ冷凍機1から出力された状態診断データDが、操作・監視盤10を介して、パーソナルコンピュータ20内に構築した運転状態データ選定装置100に送られてくる。なお、状態診断データDは、ターボ冷凍機の状態診断をするために必要なデータであり、多種類(例えば100種類)の時系列的なデータd1〜d100により構成されている。
【0026】
運転状態データ選定装置100が起動すると、状態診断データ取り込み機能部111は、状態診断データD(d1〜d100)を、予め決めた一定周期間隔(例えば1秒周期間隔)で、取り込んでメモリ101に記憶する。
このため、メモリ101には、
・時刻t0での状態診断データD(d1〜d100:t0)
・時刻t0から1秒後の時刻t1での状態診断データD(d1〜d100:t1)
・時刻t1から1秒後の時刻t2での状態診断データD(d1〜d100:t2)
・時刻t2から1秒後の時刻t3での状態診断データD(d1〜d100:t3)
・時刻t3から1秒後の時刻t4での状態診断データD(d1〜d100:t4)
というごとく、1秒周期間隔で、各時刻での状態診断データDが順次記憶される。
【0027】
状態診断データD(d1〜d100)の中には、運転状態の点検をするために必要となる予め決めた特定種類(例えば30種類)の運転状態データR(d1〜d30)が含まれている。
運転状態データ取り出し機能部112は、メモリ101に記憶された各状態診断データD(d1〜d100)の中から、運転状態データR(d1〜d30)を、メモリ101への取り込み順(記憶順)に順次取り出し、取り出した運転状態データR(d1〜d30)をバッファ102に上書きして記憶する。
この運転状態データ取り出し機能部112による、運転状態データR(d1〜d30)を取り出してバッファ102に上書・記憶する動作は、例えば1秒周期間隔で行っている。
【0028】
バッファ102は、先行する運転状態データR(d1〜d30)が記憶されている状態で、これに続く次の運転状態データR(d1〜d30)が記憶されると、先行する運転状態データR(d1〜d30)は消去されて、次の運転状態データR(d1〜d30)が記憶されるという、上書き状態で記憶がされる。
したがって本実施例では、バッファ102には、例えば、1秒ごとに新たな運転状態データR(d1〜d30)が記憶される。
【0029】
運転状態データ取り出し機能部112及びバッファ102の動作状態を具体的に説明すると次の通りである。
・時刻t0でメモリ101に記憶された状態診断データD(d1〜d100:t0)の中から、運転状態データR(d1〜d30:t0)が取り出されて、バッファ102に運転状態データR(d1〜d30:t0)が上書きして記憶され、
・時刻t1でメモリ101に記憶された状態診断データD(d1〜d100:t1)の中から、運転状態データR(d1〜d30:t1)が取り出されて、バッファ102に運転状態データR(d1〜d30:t1)が上書きして記憶され、
・時刻t2でメモリ101に記憶された状態診断データD(d1〜d100:t2)の中から、運転状態データR(d1〜d30:t2)が取り出されて、バッファ102に運転状態データR(d1〜d30:t2)が上書きして記憶され、
・時刻t3でメモリ101に記憶された状態診断データD(d1〜d100:t3)の中から、運転状態データR(d1〜d30:t3)が取り出されて、バッファ102に運転状態データR(d1〜d30:t3)が上書きして記憶される、
というように、バッファ102に次々と新たな運転状態データR(d1〜d30)が上書きして記憶される。
【0030】
運転状態データ選定機能部113は、バッファ102に記憶された運転状態データR(d1〜d30)の中に含まれている、ヒートバランスの演算をするために必要となる予め決めた特定種類のデータd1〜d8を基に、前述した式(1)の演算をして、ヒートバランスの値を求める。ちなみに、ヒートバランスの演算をするために必要となる予め決めた特定種類のデータd1〜d8とは、「冷水流量」、「冷却水流量」、「電圧」、「電流」、「冷水入口温度」、「冷水出口温度」、「冷却水入口温度」、「冷却水出口温度」の各データである。
そして、例えば、ヒートバランスの値が1±3%(即ち、ヒートバランスの値が0.97〜1.03の安定範囲内)であれば、ターボ冷凍機1が熱的に安定して運転していると判定する。
【0031】
このようにして、運転状態データ選定機能部113は、1秒周期間隔ごとにバッファ102に記憶される新たな運転状態データR(d1〜d30)を基にして、ターボ冷凍機1が熱的に安定して運転しているか否かを、1秒周期間隔ごとに判定する。
【0032】
更に、運転状態データ選定機能部113は、上述した演算をして、ターボ冷凍機1が熱的に安定して運転していることを判定した時点から、指定した時間(例えば1分間)だけ継続して各時刻(1秒周期間隔の各時刻)において、ターボ冷凍機1が熱的に安定して運転していることを判定したら、前記の指定した時間の最後の時点における運転状態データR(d1〜d30)を、スナップショット的にリングバッファ103に記憶する。
【0033】
運転状態データ選定機能部113は、スナップショット的に運転状態データR(d1〜d30)をリングバッファ103に記憶した後においても、上述した演算をして、ターボ冷凍機1が熱的に安定して運転していることを判定した時点から、指定した時間(例えば1分間)だけ継続して各時刻(1秒周期間隔の各時刻)において、ターボ冷凍機1が熱的に安定して運転していることを判定したら、前記の指定した時間の最後の時点における運転状態データR(d1〜d30)を、スナップショット的にリングバッファ103に記憶するという動作を繰り返し行う。
【0034】
図3は、運転状態データ選定機能部113の動作状態を示すフローチャートである。
同図に示すように、ステップ1で運転状態データR(d1〜d30)をバッファ102から取り込んで、ヒートバランス計算をする。
ヒートバランスの値が指定した範囲内に入っているか否かを判定し(ステップ2)、指定した範囲内に入っていなければタイマーをリセットし(ステップ3)、指定した範囲内に入っていればタイマーをカウントアップしていき、タイマーが指定した時間経過したら(ステップ5)、指定時間経過時の運転データデータR(d1〜d30)をリングバッファ103に格納し(ステップ6)、タイマーをリセットする(ステップ7)。
【0035】
リングバッファ103は、ファーストイン・ファーストアウト方式で運転状態データR(d1〜d30)を記憶するものであり、最大で7個の運転状態データR(d1〜d30)を記憶する。このリングバッファ103に記憶される、最大7個の運転状態データR(d1〜d30)は、ターボ冷凍機1が熱的に安定した運転状態になった時点におけるものである。
なお、7個の運転状態データR(d1〜d30)がリングバッファ103に記憶されている状態で、運転状態データ選定機能部113により新たな運転データデータR(d1〜d30)がリングバッファ103に記憶される場合には、最先に記憶されていた運転状態データR(d1〜d30)が消去される。
【0036】
ここでは例えば、時刻t60、t120、t250、t310、t370、t450、t510の各時点の運転状態データR(d1〜d30:t60)、R(d1〜d30:t120)、R(d1〜d30:t250)、R(d1〜d30:t310)、R(d1〜d30:t370)、R(d1〜d30:t450)、R(d1〜d30:t510)が、リングバッファ103に記憶されているとする。
【0037】
データ照合機能部114には、運転状態データR(d1〜d30)のうち、ヒートバランスの演算をするために必要となる予め決めた特定種類のデータd1〜d8を除く、データd9〜d30のそれぞれについて、許容範囲が設定されている。
データ照合機能部114は、各運転状態データR(d1〜d30:t60)、R(d1〜d30:t120)、R(d1〜d30:t250)、R(d1〜d30:t310)、R(d1〜d30:t370)、R(d1〜d30:t450)、R(d1〜d30:t510)のデータd9〜d30のそれぞれについて、基準値データ(許容範囲)に入っているか否かを照合する。
【0038】
更に、データ照合機能部114は、各運転状態データR(d1〜d30:t60)、R(d1〜d30:t120)、R(d1〜d30:t250)、R(d1〜d30:t310)、R(d1〜d30:t370)、R(d1〜d30:t450)、R(d1〜d30:t510)のデータd9〜d30を表示部104に表示する。
この表示をする際に、基準値データ(許容範囲)に入っていないデータd9〜d30については、アラーム表示(例えば赤色表示)をする。
【0039】
なおデータ照合機能部114における、データd9〜d30が許容範囲に入っているか否かの照合計算や、各運転状態データRの表示やアラーム表示は、表計算ソフトを用いて実現することができる。
【0040】
なお上記の例では、データ照合機能部114及び表示部104を運転状態データ選定装置100に組み込んでいるが、データ照合機能部114及び表示部104を、パーソナルコンピュータ20ではない他のコンピュータに搭載することも可能である。
【0041】
本実施例によれば、運転状態データの選定をシステム化し自動的に行うことが可能となり、作業者による現場点検作業を効率化することができる。
また、据付・試運転時の基準値データ(許容範囲)を参照して、選定した運転状態データの照合を自動化することにより、チェック漏れやチェックミスを防止することができ、保守点検後のトラブル発生を未然に防止することができる。
【符号の説明】
【0042】
1 ターボ冷凍機
1a 凝縮器
1b オリフィス
1c 蒸発器
1d 圧縮機
10 操作・監視盤
20 パーソナルコンピュータ
100 運転状態データ選定装置
101 メモリ
102 バッファ
103 リングバッファ
104 表示部
111 状態診断データ取り込み機能部
112 運転状態データ取り出し機能部
113 運転状態データ選定機能部
114 データ照合機能部
D 状態診断データ
S 操作指令
R 運転状態データ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
メモリと、
ターボ冷凍機から出力される多種類の時系列的なデータからなる状態診断データを、予め決めた一定周期間隔で取り込んで前記メモリに記憶する状態診断データ取り込み機能部と、
バッファと、
前記メモリに記憶された前記状態診断データの中から、ターボ冷凍機の運転状態の点検をするために必要となる予め決めた特定種類のデータである運転状態データを、前記メモリに記憶された順に順次取り出して前記バッファに上書きして記憶する運転状態取り出し機能部と、
複数の運転状態データを記憶することができるリングバッファと、
前記バッファに運転状態データが上書きして記憶されるたびに、当該運転状態データの中に含まれている、ヒートバランスの演算をするために必要な予め決めた特定種類のデータであるヒートバランス計算用データを基に、ターボ冷凍機のヒートバランスの値を計算し、ヒートバランスの値が予め決めた指定時間だけ継続して安定範囲に入った場合に、前記指定時間の最後の時点において前記バッファに記憶されている運転状態データを前記リングバッファに記憶する運転状態選定機能部と、
を有することを特徴とするターボ冷凍機の運転状態データ選定装置。
【請求項2】
請求項1において、
表示部と、
前記リングバッファに記憶された運転状態データの中に含まれている各データが、それぞれ、各データごとに予め決めた許容範囲に入っているか否かを照合すると共に、前記リングバッファに記憶された運転状態データの中に含まれている各データを前記表示部に表示し、且つ、許容範囲から外れたデータについては前記表示部においてアラーム表示をするデータ照合機能部と、
を有することを特徴とするターボ冷凍機の運転状態データ選定装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2013−36632(P2013−36632A)
【公開日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−170763(P2011−170763)
【出願日】平成23年8月4日(2011.8.4)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】