説明

ターボ回転機械の車室支持構造

【課題】突出部(猫足)に温度勾配が形成される場合であっても車室ミスアライメントを低減可能であるターボ回転機械の車室支持構造を提供する。
【解決手段】車室指示構造10は、水平分割面20において車室下半部12と車室上半部14とに分割可能である車室11と、車室下半部14から突出して設けられた突出部16と、突出部16が載置されるサポート取合面22を有し、突出部16を支持する車室サポート18とを備える。車室下半部14への突出部16の接続位置24は、車室11の水平分割面20よりも下方、かつ、サポート取合面22よりも下方である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば、蒸気タービン、ガスタービン、圧縮機等のターボ回転機械の車室支持構造に関する。
【背景技術】
【0002】
蒸気タービン、ガスタービン、圧縮機等のターボ回転機械には、回転部材(ロータや動翼)および静止部材(ブレードリングや静翼)を収納する車室に猫足と呼ばれる突出部が設けられ、この突出部(猫足)を介して車室を支持したものが知られている。具体的には、車室サポートと呼ばれるサポート部材を地盤上に立設し、この車室サポートのサポート取合面に突出部を載置することで車室を支持している。
【0003】
突出部(猫足)を用いた車室の支持構造は、車室サポートのサポート取合面よりも上方に車室の水平分割面がある非センターサポート式のものと、車室サポートのサポート取合面と車室の水平分割面とが同一平面内にあるセンターサポート式のものとに大別される。
【0004】
例えば、特許文献1には、タービン停止時に猫足を強制冷却し回転部材と静止部材との下部遊隙を広げる猫足冷却手段を設けた非センターサポート式の蒸気タービンが記載されている。
この蒸気タービンでは、猫足冷却手段によって猫足を強制冷却することで、上半車室と下半車室との温度差に起因する車室の反り(いわゆるキャットバック)によって狭くなりがちな車室下部の遊隙の変動を抑えるようになっている。
【0005】
特許文献2には、蒸気タービン停止時に猫足の上面部分を強制冷却し回転部材と静止部材との下部遊隙を広げる猫足冷却手段を設けたセンターサポート式の蒸気タービンが記載されている。
この蒸気タービンでは、猫足冷却手段によって猫足の上面部分を強制冷却することで、猫足自身に上下温度分布を生じせしめて猫足を撓ませることで、キャットバックによって狭くなりがちな車室下部の遊隙の変動を抑えるようになっている。
【0006】
特許文献3には、突出部(猫足)を含む下半車室及び上半車室の表面を保温材で覆ったセンターサポート式のタービンが記載されている。
このタービンでは、突出部を含む下半車室及び上半車室の表面が保温材に覆われており、タービン停止時における上半車室と下半車室との温度を同等にして、キャットバックを抑えるようになっている。
【0007】
また特許文献4には、猫足の近傍に配置される上半グランド部分に比べて放熱しにくくなるように下車室本体部分を保温材で被覆したタービンが記載されている。そして、このタービンの一例として、非センターサポート式のタービンが示されている(特許文献4の図1参照)。
このタービンでは、猫足から外部に放熱されることにより上車室よりも温度が低くなりやすい下車室本体部分を保温材で被覆することで、上車室と下車室との温度差を低減し、回転部材と静止部材とのクリアランスの変動を抑制するようになっている。
【0008】
以下、非センターサポート式の車室支持構造およびセンターサポート式の車室支持構造について、図8及び9を用いて説明する。
【0009】
図8は、非センターサポート式の車室支持構造を示す図である。同図に示す車室支持構造100は、車室上半部102及び車室下半部104からなる車室101と、車室下半部104から突出する突出部106と、突出部106を支持する車室サポート108とを備える。この車室支持構造100は、車室101の水平分割面110が車室サポート108のサポート取合面112よりも上方にある。すなわち、車室支持構造100は非センターサポート式である。
【0010】
ところで、非センターサポート式の車室支持構造100は、ターボ回転機械の運転時に車室101からの熱伝達によって突出部106の温度が上昇し、突出部106の熱膨張によって車室101が上方に持ち上げられてしまう。一方、ロータ軸受で支持されるロータ(不図示)は、ターボ回転機械の運転時も停止時も、鉛直方向位置はさほど変わらない。このため、ターボ回転機械の運転時に、車室101がロータに対して相対的に上方に動き、車室ミスアライメントが生じ、回転部材(ロータや動翼)と静止部材(翼環又は翼根リングや静翼)との間隙が狭くなってしまう。
なお、ここでいう車室ミスアライメントは、車室101の中心(通常は水平分割面110)とロータ軸中心との鉛直方向におけるずれである。
【0011】
これに対し、センターサポート式の車室支持構造は、車室ミスアライメントが抑制可能であり、有利であると考えられている。
図9は、センターサポート式の車室支持構造を示す図である。同図に示す車室支持構造120は、車室上半部122及び車室下半部124からなる車室121と、車室下半部124から突出する突出部126と、突出部126を支持する車室サポート128とを備える。この車室支持構造120は、車室121の水平分割面130と車室サポート128のサポート取合面132とが同一平面内にある。すなわち、車室支持構造120はセンターサポート式である。
この車室支持構造120では、ターボ回転機械の運転時に突出部126の温度が上昇しても、水平分割面130とサポート取合面132とが同じ高さにある状態を維持しながら、突出部126が上下に熱伸びする。よって、車室121が突出部126によって持ち上げられることがなく、車室121の鉛直方向位置の変動は少ないと考えられてきた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特許第3448160号公報
【特許文献2】特許第3448166号公報
【特許文献3】特許第4347269号公報
【特許文献4】特許第4410651号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
しかしながら、センターサポート式の車室支持構造120であっても、車室ミスアライメントが全く生じないというわけではない。
確かに、突出部126の温度が均一であれば、水平分割面130及びサポート取合面132が含まれる平面を対称面として突出部126が上下に熱伸びして、水平分割面130とサポート取合面132とが同じ高さにある状態が維持されるはずである。ところが、実際には、定常状態において、車室から遠ざかるにつれて温度が低下する温度勾配が突出部に形成されており、該温度勾配に起因して突出部の熱伸びは複雑な挙動を示し、依然として車室ミスアライメントが生じてしまう。
特に、ターボ回転機械の車室の温度が高い場合、突出部の内部における温度勾配による影響もその分だけ大きく、車室ミスアライメントが大きくなってしまう。
【0014】
本発明は、上述の事情に鑑みてなされたものであり、突出部(猫足)に温度勾配が形成される場合であっても車室ミスアライメントを低減可能であるターボ回転機械の車室支持構造を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明に係るターボ回転機械の車室支持構造は、水平分割面において車室下半部と車室上半部とに分割可能である車室と、前記車室下半部から突出して設けられた突出部と、前記突出部が載置されるサポート取合面を有し、前記突出部を支持する車室サポートとを備え、前記車室下半部への前記突出部の接続位置は、前記車室の水平分割面よりも下方、かつ、前記サポート取合面よりも下方であることを特徴とする。
【0016】
この車室支持構造によれば、車室下半部への突出部の接続位置を車室の水平分割面よりも下方に設けたので、突出部の接続位置を起点とする車室の熱伸びによって車室の中心(通常は水平分割面)が上方に動こうとする。一方、車室下半部への突出部の接続位置を車室サポートのサポート取合面よりも下方に設けたので、突出部自身はサポート取合面を起点として下方に伸びようとする。
したがって、突出部に温度分布が形成される場合であっても、車室の熱伸びに起因する車室中心の上方に向かう動きと、突出部の下方への熱伸びとが少なくとも部分的に相殺され、車室ミスアライメントを低減できる。
【0017】
上記ターボ回転機械の車室支持構造において、前記突出部は、線膨張係数が前記車室よりも大きくてもよい。
【0018】
ターボ回転機械の運転時において車室からの熱伝導で突出部が温められるのであるから、当然、定常状態では車室のほうが突出部よりも高温である。このため、車室と突出部との線膨張係数や熱伸びの基準サイズが同等であれば、定常状態における温度が車室よりも低い突出部の下方への熱伸びの量は、車室の熱伸びに起因する車室の中心の上方への変位量よりも小さくなり、両者を効果的に相殺することができない。なお、熱伸びの基準サイズとは、突出部の場合は突出部の鉛直方向長さであり、車室の場合は車室下半部への突出部の接続位置と水平分割面との間の鉛直方向距離である。
そこで、突出部の線膨張係数を車室よりも大きくすることで、定常状態における温度が車室よりも低い突出部の下方への熱伸びの量を、車室の熱伸びに起因する車室中心の上方への変位量に近づけて、両者の大半を相殺し、車室ミスアライメントをより一層低減できる。
【0019】
上記ターボ回転機械の車室支持構造において、前記突出部の鉛直方向長さが、前記車室下半部への前記突出部の接続位置と前記車室の水平分割面との間の鉛直方向距離よりも長くてもよい。
【0020】
これにより、定常状態における温度が車室よりも低い突出部の下方への熱伸びの量を、車室の熱伸びに起因する車室中心の上方への変位量に近づけて、両者の大半を相殺し、車室ミスアライメントをより一層低減できる。
【0021】
上記ターボ回転機械の車室支持構造は、前記車室サポートを冷却する冷却機構をさらに備えていてもよい。
【0022】
突出部を介した車室からの熱伝導などによって車室サポートの温度が上昇すると、車室サポートは地盤を起点として上方に向かって熱伸びする。車室下半部から突出する突出部は車室サポートのサポート取合面上に載置されるから、車室サポートの上方に向かう熱伸びによって、突出部とともに車室が上方に押し上げられる。
そこで、冷却機構によって車室サポートを強制的に冷却して、車室サポートの上方に向かう熱伸びを抑制することで、車室ミスアライメントを低減できる。また、冷却機構によって車室サポートの温度をさらに低下させることで、車室サポートを収縮させて(常温における基準寸法よりも縮めて)、車室の熱伸びに起因する車室中心の上方に向かう動きを、突出部の下方への熱伸びと車室サポートの収縮とによって相殺して、車室ミスアライメントをより一層低減することも可能である。
【0023】
上記ターボ回転機械の車室支持構造において、前記車室サポートは、架台と、該架台の上に設けられて前記サポート取合面において前記突出部を支持するスペーサとを含んでいてもよい。
【0024】
これにより、スペーサの高さを変更することで、サポート取合面の位置を任意に調節して、回転部材と静止部材との間隙を最適な範囲内に収めることができる。
また、既存のターボ回転機械の車室支持構造を改造する際、突出部の形状(鉛直方向長さ)を変更すると、これに応じて車室サポートの高さも変える必要が生じることがある。このような場合であっても、既に存在する架台と突出部との間に任意の高さのスペーサを介在させるだけで足りる。
【0025】
この場合、前記スペーサは、線膨張係数が前記突出部よりも小さくてもよい。
【0026】
突出部を介した車室からの熱伝導などによってスペーサの温度が上昇すると、スペーサは架台の上面を起点として上方に向かって熱伸びする。車室下半部から突出する突出部はスペーサのサポート取合面上に載置されるから、スペーサの上方に向かう熱伸びによって、突出部とともに車室が上方に押し上げられる。
そこで、スペーサの線膨張係数を突出部よりも小さくすることで、スペーサの上方に向かう熱伸びを抑制して、車室ミスアライメントを低減できる。
【発明の効果】
【0027】
本発明によれば、車室下半部への突出部の接続位置を車室の水平分割面よりも下方に設けたので、突出部の接続位置を起点とする車室の熱伸びによって車室中心が上方に動こうとする。一方、車室下半部への突出部の接続位置を車室サポートのサポート取合面よりも下方に設けたので、突出部自身はサポート取合面を起点として下方に伸びようとする。
したがって、突出部に温度分布が形成される場合であっても、車室の熱伸びに起因する車室中心の上方に向かう動きと、突出部の下方への熱伸びとが少なくとも部分的に相殺され、車室ミスアライメントを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0028】
【図1】第1実施形態に係る蒸気タービンの車室支持構造の構成例を示す正面図である。
【図2】図1におけるA方向から視た平面図である。
【図3】第2実施形態に係る蒸気タービンの車室支持構造の構成例を示す正面図である。
【図4】第3実施形態に係る蒸気タービンの車室支持構造の構成例を示す正面図である。
【図5】車室サポートを冷却する冷却機構の一例を示す図である。
【図6】車室サポートを冷却する冷却機構の別の例を示す図である。
【図7】ロータ軸方向に直交する方向に沿って延びる突出部を示す平面図である。
【図8】非センターサポート式の車室支持構造を示す図である。
【図9】センターサポート式の車室支持構造を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0029】
以下、添付図面に従って本発明の実施形態について説明する。ただし、この実施形態に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対的配置等は、特定的な記載がない限り本発明の範囲をこれに限定する趣旨ではなく、単なる説明例にすぎない。
【0030】
[第1実施形態]
図1は、第1実施形態に係る蒸気タービンの車室支持構造の構成例を示す正面図である。図2は、図1におけるA方向から視た平面図である。
【0031】
図1に示すように、蒸気タービンの車室支持構造10は、主として、車室上半部12及び車室下半部14からなる車室11と、車室下半部14から突出して設けられた突出部(猫足)16と、突出部16を支持する車室サポート18とにより構成される。
【0032】
車室11は、ロータ及び該ロータに取り付けられた動翼で構成される回転部材と、車室11側に設けられたブレードリング及び該ブレードリングに取り付けられた静翼で構成される静止部材とを収納する略円筒状の容器である。車室11は、水平分割面20において、車室下半部12と車室下半部14とに分割可能な半割構造になっている。
【0033】
突出部16は、図2に示すように、ロータ軸方向に沿って延びるように、車室11の両端においてロータ軸を挟むように一対ずつ(合計で4つ)設けられる。各突出部16の一端は、サポート取合面22において車室サポート18によって支持される。各突出部16の他端は、接続位置24において車室下半部12に接続される。突出部16は、鋳造等により車室下半部12と一体に形成されている。
なお、接続位置24とは、車室下半部14への突出部16の接続端の鉛直方向中央(接続端の上面と下面との中央)の位置である。
【0034】
突出部16を支持する車室サポート18は、ロータ軸方向における車室11の両側において、地盤19に立設されている。車室サポート18は、各突出部16が載置されるサポート取合面22を有する。
また、各車室サポート18には、ロータを回転自在に支持するロータ軸受が収納された軸受箱(不図示)を設置するための凹部26が設けられている。凹部26は、ロータを挟んで対向するサポート取合面22の間に形成される。これにより、車室サポート18がロータと干渉しないようになっている。
【0035】
本実施形態では、車室下半部14への突出部16の接続位置24は、車室11の水平分割面20よりも下方、かつ、サポート取合面22よりも下方である。
車室構造10では、車室下半部14への突出部16の接続位置24を車室11の水平分割面20よりも下方に設けたので、突出部16の接続位置24を起点とする車室11の熱伸びによって車室11の中心(通常は水平分割面20)が上方に動こうとする。一方、車室下半部14への突出部16の接続位置24を車室サポート18のサポート取合面22よりも下方に設けたので、突出部16自身はサポート取合面22を起点として下方に伸びようとする。
したがって、突出部16に温度勾配が形成される場合であっても、車室11の熱伸びに起因する車室11の中心の上方に向かう動きと、突出部16の下方への熱伸びとが少なくとも部分的に相殺され、車室ミスアライメントを低減できる。
【0036】
また、突出部16の鉛直方向長さLは、車室下半部14への突出部16の接続位置24と車室11の水平分割面20との間の鉛直方向距離dよりも大きいことが好ましい。
これにより、定常状態における温度が車室11よりも低い突出部16の下方への熱伸びの量を、車室11の熱伸びに起因する車室11の中心の上方への変位量に近づけて、両者の大半を相殺し、車室ミスアライメントをより一層低減できる。
なお、突出部16の鉛直方向長さLは、突出部16の車室下半部14への接続位置24と、サポート取合面22に載置される突出部16の端部の上面及び下面の中央の位置との間の距離である。
【0037】
[第2実施形態]
図3は、第2実施形態に係る蒸気タービンの車室支持構造の構成例を示す正面図である。同図に示す車室支持構造30は、突出部の大部分が車室下半部14とは別体である点を除けば、第1実施形態に係る車室支持構造10と同一である。したがって、ここでは車室支持構造10と共通する箇所には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0038】
突出部36は、サポート取合面22において車室サポート18によって支持される屈曲部材36Aと、この屈曲部材36Aを接続位置24において車室下半部14に接続するための車室側部材36Bとを有する。なお、屈曲部材36Aと車室側部材36Bとは、ボルト締結や、溶接等の任意の手法によって固定されている。
【0039】
屈曲部材36Aは、突出部36の大部分を構成しており、その形状は、車室下半部14への突出部36の接続位置24が、車室11の水平分割面20よりも下方、かつ、サポート取合面22よりも下方となるように屈曲している。なお、屈曲部材36Aの形状は、特に限定されない。
【0040】
このように、突出部36の大部分を構成する屈曲部材36Aを車室下半部14の別体として設けることで、屈曲部材36Aの形状(鉛直方向長さ)を変更することで、サポート取合面22の位置を任意に調節できる。
【0041】
また、車室下半部14とは別体である屈曲部材36Aは、線膨張係数が車室11よりも大きいことが好ましい。
【0042】
蒸気タービンの運転時において車室11からの熱伝導で突出部36が温められるのであるから、当然、定常状態では車室11のほうが突出部36よりも高温である。このため、車室11と突出部36との線膨張係数や熱伸びの基準サイズが同等であれば、定常状態における温度が車室11よりも低い突出部36の下方への熱伸びの量は、車室11の熱伸びに起因する車室11の中心の上方への変位量よりも小さくなり、両者を効果的に相殺することができない。なお、熱伸びの基準サイズとは、突出部36の場合は突出部36の鉛直方向長さであり、車室11の場合は車室下半部14への突出部36の接続位置24と水平分割面20との間の鉛直方向距離である。
そこで、突出部36の線膨張係数を車室11よりも大きくすることで、定常状態における温度が車室11よりも低い突出部36の下方への熱伸びの量を、車室11の熱伸びに起因する車室11の中心の上方への変位量に近づけて、両者の大半を相殺し、車室ミスアライメントをより一層低減できる。
【0043】
なお、図3には車室側部材36Bを介して屈曲部材36Aを車室下半部14に接続する例を示したが、車室側部材36Bを介さず、車室下半部14とは別体の屈曲部材36Aを車室下半部14の外周面に直接接続してもよい。
【0044】
[第3実施形態]
図4は、第3実施形態に係る蒸気タービンの車室支持構造の構成例を示す正面図である。同図に示す車室支持構造40は、車室サポートの構成を除けば、第1実施形態に係る車室支持構造10と同一である。したがって、ここでは車室支持構造10と共通する箇所には同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0045】
車室サポート48は、地盤19上に立設された架台48Aと、この架台48Aの上に設けられてサポート取合面22において突出部16を支持するスペーサ48Bとを含む。
【0046】
これにより、スペーサ48Bの高さを変更することで、サポート取合面22の位置を任意に調節して、回転部材と静止部材との間隙を最適な範囲内に収めることができる。
また、既存の蒸気タービンの車室支持構造を改造する際、突出部16の形状(鉛直方向長さ)を変更すると、これに応じて車室サポート48の高さも変える必要が生じることがある。このような場合であっても、既に存在する架台48Aと突出部16との間に任意の高さのスペーサ48Bを介在させるだけで足りる。
【0047】
また、スペーサ48Bは、線膨張係数が突出部16よりも小さいことが好ましい。
【0048】
突出部16を介した車室11からの熱伝導などによってスペーサ48Bの温度が上昇すると、スペーサ48Bは架台48Aの上面を起点として上方に向かって熱伸びする。車室下半部14から突出する突出部16はスペーサ48Bのサポート取合面22上に載置されるから、スペーサ48Bの上方に向かう熱伸びによって、突出部16とともに車室11が上方に押し上げられる。
そこで、スペーサ48Bの線膨張係数を突出部16よりも小さくすることで、スペーサ48Bの上方に向かう熱伸びを抑制して、車室ミスアライメントを低減できる。
【0049】
[第4実施形態]
第4実施形態に係る蒸気タービンの車室支持構造は、車室サポートを冷却する冷却機構を設けた点を除けば、第1実施形態に係る車室支持構造10と同一である。したがって、ここでは車室支持構造10と共通する箇所には同一の符号を用い、その説明を省略する。
【0050】
図5は、車室サポートを冷却する冷却機構の一例を示す図である。図6は、車室サポートを冷却する冷却機構の別の例を示す図である。
【0051】
図5に示す冷却機構50は、車室サポート18に形成された冷却通路からなる。この冷却通路に、水や空気等の任意の冷媒を流すことで車室サポート18を冷却するようになっている。なお、冷却機構(冷却通路)50は、車室サポート18の内部に形成された冷却通路であってもよいし、車室サポート18の外周に取り付けた部材(冷却ジャケット)の内部に形成された冷却通路であってもよい。
また、図6に示す冷却機構52は、車室サポート18の外表面に立設された複数のフィンからなる。
【0052】
蒸気タービンの運転時において突出部16を介した車室11からの熱伝導などによって車室サポート18の温度が上昇すると、車室サポート18は地盤19を起点として上方に向かって熱伸びする。車室下半部14から突出する突出部16は車室サポート18のサポート取合面22上に載置されるから、車室サポート18の上方に向かう熱伸びによって、突出部16とともに車室11が上方に押し上げられる。
そこで、冷却機構50,52によって車室サポート18を強制的に冷却して、車室サポート18の上方に向かう熱伸びを抑制することで、車室ミスアライメントを低減できる。また、冷却機構50,52によって車室サポート18の温度をさらに低下させることで、車室サポート18を収縮させて(常温における基準寸法よりも縮めて)、車室11の熱伸びに起因する車室11の中心の上方に向かう動きを、突出部16の下方への熱伸びと車室サポート18の収縮とによって相殺して、車室ミスアライメントをより一層低減できる。
【0053】
なお、図4に示すように、架台48A及びスペーサ48Bからなる車室サポート48を用いる場合、冷却機構50,52は車室サポート48のスペーサ48Bに設けてもよい。
【0054】
以上、本発明の実施形態について詳細に説明したが、本発明はこれに限定されず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、各種の改良や変形を行ってもよいのはいうまでもない。
【0055】
例えば、上述の実施形態では、蒸気タービンの車室支持構造の例について説明したが、本発明があらゆる種類のターボ回転機械の車室支持構造に適用可能であることは言うまでもない。
【0056】
また、上述の実施形態では、突出部16,36がロータ軸方向に沿って延びる例について説明したが、突出部は車室下半部から突出して設けられていれば、その延在方向はこの例に限定されない。例えば、突出部は、ロータ軸方向に直交する方向に沿って延びるように、車室下半部の外周面から突出して設けられていてもよい。
図7は、ロータ軸方向に直交する方向に沿って延びる突出部を示す平面図である。同図に示すように、突出部16は、車室11(具体的には車室下半部)の外周面から、ロータ軸方向に直交する方向に突出している。突出部16は、ロータ軸を挟んで車室11の両側に一対ずつ設けられている。
【符号の説明】
【0057】
10 車室支持構造
11 車室
12 車室上半部
14 車室下半部
16 突出部(猫足)
18 車室サポート
19 地盤
20 水平分割面
22 サポート取合面
24 接続位置
26 凹部
30 車室支持構造
36 突出部(猫足)
36A 屈曲部材
36B 車室側部材
40 車室支持構造
48 車室サポート
48A 架台
48B スペーサ
50 冷却機構
52 冷却機構
100 車室支持構造
101 車室
102 車室上半部
104 車室下半部
106 突出部(猫足)
108 車室サポート
110 水平分割面
112 サポート取合面
120 車室支持構造
121 車室
122 車室上半部
124 車室下半部
126 突出部(猫足)
128 車室サポート
130 水平分割面
132 サポート取合面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
水平分割面において車室下半部と車室上半部とに分割可能である車室と、
前記車室下半部から突出して設けられた突出部と、
前記突出部が載置されるサポート取合面を有し、前記突出部を支持する車室サポートとを備え、
前記車室下半部への前記突出部の接続位置は、前記車室の水平分割面よりも下方、かつ、前記サポート取合面よりも下方であることを特徴とするターボ回転機械の車室支持構造。
【請求項2】
前記突出部は、線膨張係数が前記車室よりも大きい請求項1に記載のターボ回転機械の車室支持構造。
【請求項3】
前記突出部の鉛直方向長さが、前記車室下半部への前記突出部の接続位置と前記車室の水平分割面との間の鉛直方向距離よりも長い請求項1又は2に記載のターボ回転機械の車室支持構造。
【請求項4】
前記車室サポートを冷却する冷却機構をさらに備える請求項1乃至3のいずれか一項に記載のターボ回転機械の車室支持構造。
【請求項5】
前記車室サポートは、架台と、該架台の上に設けられて前記サポート取合面において前記突出部を支持するスペーサとを含む請求項1乃至4のいずれか一項に記載のターボ回転機械の車室支持構造。
【請求項6】
前記スペーサは、線膨張係数が前記突出部よりも小さい請求項5に記載のターボ回転機械の車室支持構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−159051(P2012−159051A)
【公開日】平成24年8月23日(2012.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−20409(P2011−20409)
【出願日】平成23年2月2日(2011.2.2)
【出願人】(000006208)三菱重工業株式会社 (10,378)
【Fターム(参考)】