説明

ターボ圧縮機

【課題】設置場所の電源周波数に依らずに、排煙ファンに共通のモータを使用することができ、また、負圧量の調整が、動力を無駄にすることなく行えるターボ圧縮機を提供することを目的とする。
【解決手段】主電動機1によって増速歯車2を介して駆動される羽根車3と、オイルタンク5に蓄積された潤滑油を増速歯車2に供給するオイルポンプ4,9と、オイル流路を密閉するケースと、オイル流路内を負圧にする排煙ファン16と、オイル流路内の圧力を検知する圧力センサ12と、排煙ファン16のモータ回転数をインバータ14を介して制御する制御手段8とを備える。制御手段8は、圧力センサ12による検知結果に基づき、オイル流路内の圧力が所望の負圧になるように、排煙ファン16をインバータを介して制御する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、汎用ターボ圧縮機における排煙ファンの回転数制御に関する。
【背景技術】
【0002】
汎用ターボ圧縮機においては、図3に示すように、主電動機101により増速歯車102が駆動され、この増速歯車102により、羽根車103が駆動されるようになっている。また、増速歯車102により、主オイルポンプ104が駆動される。主オイルポンプ104は、オイルタンク105よりオイル(潤滑油)を吸い上げ、オイルクーラ106及びオイルフィルタ107を経由させて、増速歯車102を収納したギヤボックス内に供給する。
【0003】
主電動機101の駆動は、圧縮機制御盤108より発せられる主電動機運転/停止指令にしたがって制御される。
【0004】
一方、圧縮機制御盤108からは、補助オイルポンプ運転/停止指令が発せられる。この補助オイルポンプ運転/停止指令は、補助オイルポンプ109に送られる。補助オイルポンプ109は、補助オイルポンプ運転/停止指令にしたがって制御されて駆動し、オイルタンク105よりオイルを吸い上げ、オイルクーラ106及びオイルフィルタ107を経由させて、増速歯車102を収納したギヤボックス内に供給する。
【0005】
補助オイルポンプ109は、主電動機101が待機状態にあり、羽根車103及び主オイルポンプ104が停止している状態において、ギヤボックス内にオイルを供給するためのものである。すなわち、主電動機101が待機状態であるとき、主オイルポンプ104によってはオイルが供給されない。この状態において主電動機101が始動すると、ギヤボックス内のオイルが不足した状態となるので、補助オイルポンプ109により、予め、ギヤボックス内にオイルを供給しておくのである。補助オイルポンプ109は、主電動機101が始動し、主オイルポンプ104によるオイル供給が十分な状態になったときに、停止される。なお、補助オイルポンプ109によるオイルの流量は、圧力調整弁110による手動調整によって調整される。
【0006】
オイルタンク105からギヤボックスに至るオイルの流路は、密閉された状態となっている。ギヤボックスにおいて、羽根車に至る回転軸の周囲は、図4に示すように、回転軸シール115により閉塞されている。そして、オイルの流路内は、排煙ファン116により、負圧に維持されている。排煙ファン116は、圧力調整ダンパ117を介して、オイルの流路内の空気を吸引することにより、流路内を負圧に維持し、流路からのオイル漏れ及び圧縮空気通路部への油分混入を防止している。
【0007】
このターボ圧縮機において、排煙ファン116は、設置場所に応じた電源周波数(50Hz、または、60Hz)に応じた一定の回転数で駆動され、オンオフ制御される。つまり、回転数の制御はなされない。
【0008】
なお、特許文献1には、圧縮機の電動機をインバータによって制御する構成が記載されている。
【0009】
【特許文献1】特開昭63−213436号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0010】
ところで、前述のような従来のターボ圧縮機においては、排煙ファン116のモータは、設置場所の電源周波数(50Hz、または、60Hz)に応じて、異なるものを使用しなければならない。モータの回転数は、電源の周波数に応じてきまってしまうからである。モータを共通化した場合には、電源周波数が50Hzである地域においては、排煙ファン116回転数が低くなるために、より段数の多いファンを用いる必要がある。
【0011】
また、排煙ファン116のモータは一定回転数で駆動するため、負圧量の調整は、オリフィス機構を排煙装置ラインに設けることにより、手動で調整している。負圧量を調整してもモータは一定回転数で駆動しているため、動力が無駄になる。
【0012】
そこで、本発明は、前述の実情に鑑みて提案されるものであり、設置場所の電源周波数に依らずに、排煙ファンに共通のモータを使用することができ、また、負圧量の調整が、動力を無駄にすることなく行えるターボ圧縮機を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
前述の課題を解決し、前記目的を達成するため、本発明に係るターボ圧縮機は、以下の構成のいずれか一を有するものである。
【0014】
〔構成1〕
主電動機によって増速歯車を介して駆動される羽根車と、オイルタンクに蓄積された潤滑油を前記増速歯車に供給するオイルポンプと、オイルタンクから増速歯車に至るオイルの流路を密閉するケースと、オイルの流路内を負圧にする排煙ファンと、オイルの流路内の圧力を検知する圧力センサと、排煙ファンを駆動するモータの回転数をインバータを介して制御する制御手段とを備え、制御手段は、圧力センサによる検知結果に基づいて、オイルの流路内の圧力が所望の負圧になるように、排煙ファンをインバータを介して制御することを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0015】
構成1を有する本発明に係るターボ圧縮機においては、制御手段は、圧力センサによる検知結果に基づいて、オイルの流路内の圧力が所望の負圧になるように、排煙ファンをインバータを介して制御するので、設置場所の電源周波数に依らずに、排煙ファンに共通のモータを使用することができ、負圧量の調整が、動力を無駄にすることなく自動的に行え、また、排煙ファンへの供給電流が過負荷となることがなく、排煙ファンの能力を最大限まで使用することができる。
【0016】
すなわち、本発明は、設置場所の電源周波数に依らずに、排煙ファンに共通のモータを使用することができ、また、負圧量の調整が、動力を無駄にすることなく行えるターボ圧縮機を提供することができるものである。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明の実施の形態を図面に基づいて説明する。
【0018】
図1は、本発明に係るターボ圧縮機の構成を示すブロック図である。
【0019】
本発明に係るターボ圧縮機は、図1に示すように、主電動機1により増速歯車2が駆動され、この増速歯車2により、羽根車3が駆動されるようになっている。また、増速歯車2により、主オイルポンプ4が駆動される。主オイルポンプ4は、オイルタンク5よりオイル(潤滑油)を吸い上げ、オイルクーラ6及びオイルフィルタ7を経由させて、増速歯車2を収納したギヤボックス内に供給する。
【0020】
主電動機1の駆動は、制御手段となる圧縮機制御盤8より発せられる主電動機運転/停止指令にしたがって制御される。
【0021】
一方、圧縮機制御盤8からは、補助オイルポンプ運転/停止指令が発せられる。この補助オイルポンプ運転/停止指令は、インバータ11を介して、補助オイルポンプ9に送られる。補助オイルポンプ9は、補助オイルポンプ運転/停止指令にしたがって、インバータ11を介して制御されて駆動し、オイルタンク5よりオイルを吸い上げ、オイルクーラ6及びオイルフィルタ7を経由させて、増速歯車2を収納したギヤボックス内に供給する。
【0022】
補助オイルポンプ9は、主電動機1が待機状態にあり、羽根車3及び主オイルポンプ4が停止している状態において、ギヤボックス内にオイルを供給するためのものである。すなわち、主電動機1が待機状態であるとき、主オイルポンプ4によってはオイルが供給されない。この状態において主電動機1が始動すると、ギヤボックス内のオイルが不足した状態となるので、補助オイルポンプ9により、予め、ギヤボックス内にオイルを供給しておくのである。補助オイルポンプ9は、主電動機1が始動し、主オイルポンプ4によるオイル供給が十分な状態になったときに、停止される。
【0023】
図2は、本発明に係るターボ圧縮機の要部(排煙ファン)の構成を示すブロック図である。
【0024】
オイルタンク5からギヤボックスに至るオイルの流路は、ケースにより密閉された状態となっている。ギヤボックスにおいて、羽根車に至る回転軸の周囲は、図2に示すように、回転軸シール15により閉塞されている。そして、オイルの流路内は、圧縮機制御盤8に制御される排煙ファン16により、負圧に維持されている。排煙ファン16は、オイルの流路内の空気を吸引して外部に排気することにより、流路内を負圧に維持し、流路からのオイル漏れ及び圧縮空気通路部への油分混入を防止している。
【0025】
このターボ圧縮機において、排煙ファン16は、圧縮機制御盤8により、インバータ14を介して、回転数を制御される。すなわち、インバータ14の図示しない電源回路においては、電磁開閉器2次側に、インバータ14が設置されている。このターボ圧縮機の運転中は、オイルタンク5からギヤボックスに至るオイルの流路内の負圧を一定に保つように、インバータ14により入力周波数制御が行われ、回転数の制御がなされる。
【0026】
このような、圧縮機制御盤8による排煙ファン16のモータの回転数制御は、オイルタンク5からギヤボックスに至るオイル流路内の圧力を検出する圧力センサ12による検知結果に基づいて行われる。圧力センサ12が圧力を検出する位置は、オイルタンク5内であってもギヤボックス内であってもよい。
【0027】
このターボ圧縮機において、排煙ファン16のモータは、設置場所によって異なる電源周波数(50Hz、または、60Hz)に依らず、インバータ14によって回転数を制御されて駆動される。そして、排煙ファン16による負圧量は、モータの回転数に応じて調整される。したがって、このターボ圧縮機においては、排煙ファン16のモータは、設置場所の電源周波数(50Hz、または、60Hz)に依らず、共通のものを使用することができる。また、このターボ圧縮機においては、排煙ファン16による負圧量に応じて消費電力が変化し、負圧量が少ないときには、消費電力も少なくなる。
【0028】
なお、圧縮機制御盤8による排煙ファン16の制御は、オイル流路内の圧力のみならず、オイル流路内の温度にも基づいて行ってもよい。この場合には、図1に示すように、圧縮機制御盤8には、温度センサ13を設ける。温度センサ13は、オイルタンク5からギヤボックスに至るオイル流路内の温度を検出する。オイル流路内の温度が高い場合には、オイルの粘度が低くなるため、負圧量を多くするとよい。そして、オイル流路内の温度が低い場合には、オイルの粘度が高くなるため、負圧量を少なくすることができる。
【0029】
このターボ圧縮機において、主電動機1に待機指令が出されており、主電動機1が待機状態であるとき、主オイルポンプ4によってはオイルが供給されない。この状態において主電動機1が始動すると、ギヤボックス内のオイルが不足した状態となるので、補助オイルポンプ9により、予め、ギヤボックス内にオイルを供給しておく。このとき、補助オイルポンプ9は、定格回転数よりも低い回転数で駆動される。
【0030】
そして、主電動機1に運転指令が出されると、圧縮機制御盤8は、補助オイルポンプ9のモータの回転数を、定格回転数まで増速させる。このとき、ギヤボックスへの給油量(給油圧力)は、運転時に必要な給油量に達する。
【0031】
運転指令が出された後、所定のタイムラグを経て主電動機1が起動されると、主オイルポンプ4が駆動され、ギヤボックスへの給油量(給油圧力)は、運転時に必要な給油量を上回る。このとき、圧縮機制御盤8は、補助オイルポンプ9のモータを停止させる。すると、ギヤボックスへの給油量(給油圧力)は、運転時に必要な給油量を僅かに上回った状態に維持される。
【0032】
このような、圧縮機制御盤8による補助オイルポンプ9のモータの回転数制御は、主オイルポンプ4及び補助オイルポンプ9によって供給されるオイルの流量に基づいて行われる。オイルの流量は、オイル流路内の圧力及びオイルの温度に基づいて、算出することができる。すなわち、圧力センサ12及び温度センサ13により検出される圧力及び温度に基づいて、オイルの流量を算出することができる。
【0033】
なお、このターボ圧縮機において、補助オイルポンプ9のモータは、設置場所によって異なる電源周波数(50Hz、または、60Hz)に依らず、インバータ11によって回転数を制御されて駆動される。そして、補助オイルポンプ9によるオイルの流量は、モータの回転数に応じて調整される。したがって、このターボ圧縮機においては、補助オイルポンプ9のモータは、設置場所の電源周波数(50Hz、または、60Hz)に依らず、共通のものを使用することができる。また、このターボ圧縮機においては、潤滑油の供給量に応じて消費電力が変化し、供給量が少ないときには、消費電力も少なくなる。
【図面の簡単な説明】
【0034】
【図1】本発明に係るターボ圧縮機の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明に係るターボ圧縮機の要部(排煙ファン)の構成を示すブロック図である。
【図3】従来のターボ圧縮機の構成を示すブロック図である。
【図4】従来の汎用ターボ圧縮機の排煙ファンの構成を示すブロック図である。
【符号の説明】
【0035】
1 主電動機
2 増速歯車
3 羽根車
4 主オイルポンプ
5 オイルタンク
8 圧縮機制御盤
14 インバータ
16 排煙ファン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
主電動機によって増速歯車を介して駆動される羽根車と、
オイルタンクに蓄積された潤滑油を前記増速歯車に供給するオイルポンプと、
前記オイルタンクから前記増速歯車に至るオイルの流路を密閉するケースと、
前記オイルの流路内を負圧にする排煙ファンと、
前記オイルの流路内の圧力を検知する圧力センサと、
前記排煙ファンを駆動するモータの回転数を、インバータを介して制御する制御手段と
を備え、
前記制御手段は、前記圧力センサによる検知結果に基づいて、前記オイルの流路内の圧力が所望の負圧になるように、前記排煙ファンを前記インバータを介して制御する
ことを特徴とするターボ圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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