説明

ターボ機械ブレードの亀裂を検出する方法及びシステム

【課題】ターボ機械を運転しながら潜在的な亀裂を検出する。
【解決手段】実施形態は、ターボ機械の圧縮機セクション内に設置されたブレードの潜在的な亀裂を検出する方法であって、ブレード110、115上の亀裂形成の可能性を判定する、圧縮機セクション105のリアルタイム監視を提供する。機械100のシャットダウンを必要とせず、圧縮機セクション105の音響信号にブレード110、115の亀裂に相当し得る変化が生じた場合、自動的に警報を発するように構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、概してターボ機械の圧縮機セクションに関し、より詳細には、圧縮機セクションのブレードの潜在的な亀裂を検出する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
例えばこれに限らないが、空気吸入式燃焼タービン等のターボ機械は、複数のロータ段に配列された複数のブレードを備えた圧縮機セクションを有する。正常運転時、これらのブレードの先端速度は音速又は超音速になり得る。ブレードの亀裂は、正常運転時にそのブレードが外れた場合に、ターボ機械全体を激しく傷める可能性がある。
【0003】
現在周知の亀裂検出の方法は、通常、ターボ機械がオフラインの間に静的検査プロセスによって実行される。しかし、これらの方法は、ターボ機械のシャットダウンを必要とする。この点で、ターボ機械のオペレータは、ターボ機械の運転停止を嫌がる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】米国特許第6659712B2号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
したがって、ブレードの亀裂検出方法の改善が望まれている。この方法は、ターボ機械を運転しながら潜在的な亀裂を検出でき、これによって、ブレード亀裂のオフライン検査の合間で、ターボ機械をより長く動作させ得るべきである。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明の一実施形態において、ターボ機械の圧縮機セクション内に設置されたブレードの潜在的な亀裂を検出する方法であって、複数のブレードを有する圧縮機セクションと;ターボ機械を運転しながら圧縮機セクションを監視するように構成され、複数のブレードに関する音響データを受信する音響検出装置とを有するターボ機械を準備するステップと、音響データを利用して複数のブレードに対応する音響信号を生成するステップと、音響信号が許容範囲内にあるかどうかを判定するステップとを含み、音響信号が許容範囲外であるという判定が、複数のブレードの少なくとも1つに亀裂の可能性があることを示す方法を提供する。
【0007】
本発明の代替的実施形態において、ターボ機械のブレードの亀裂の形成に関してターボ機械を監視する方法であって、複数のブレードと;運転中にターボ機械を監視するように構成され、複数のブレードに関する音響データを受信する音響検出装置とを有するターボ機械を準備するステップと、音響データを利用して複数のブレードに対応する音響信号を生成するステップと、音響信号を関連音響信号と比較するステップと、音響信号が許容範囲内にあるかどうかを判定するステップと、音響信号が関連音響信号の許容範囲内にあるかどうかを判定した結果に関する通知を作成するステップとを含み、音響信号が許容範囲外であるという判定は、複数のブレードの少なくとも1つに亀裂の可能性があることを示す方法を提供する。
【0008】
本発明の別の代替的実施形態において、ガスタービン内のブレードの亀裂の存在を検出するシステムであって、複数のブレードを有するガスタービンと、ガスタービンの動作を監視するように構成され、複数のブレードに関する音響データを受信し、圧縮機セクションに隣接して設置された音響検出装置と、音響データを利用して複数のブレードに対応する音響信号を生成するステップと;音響信号が許容範囲内にあるかどうかを判定するステップとを実行する制御システムと、を含むシステムを提供する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【図1】本発明の実施形態を実施可能な環境を示す概略図である。
【図2】図1で示した圧縮機セクションの回転ブレードの一例を示す概略断面図である。
【図3】本発明の実施形態に従って作成された周波数応答曲線の一例を示すグラフである。
【図4】本発明の実施形態に従った、ターボ機械の圧縮機を監視する方法を示すブロック図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
本発明は、ターボ機械の亀裂の可能性に関して作動中のターボ機械を監視するという技術的効果を有する。ターボ機械は、例えばこれに限らないが、耐久性ガスタービン、航空転用ガスタービン、航空エンジン、圧縮機を有するその他のエンジン等の空気吸入式燃焼タービンの形態をとる。本発明の実施形態はガスタービンに関して記載されているが、本発明の用途はガスタービンに限定されない。本明細書では記載されていないが、本発明の実施形態を、複数のブレードを有するその他の機械にも適用できる。更に、本発明の実施形態はターボ機械の圧縮機セクションのブレードに関して記載されているが、本発明の適用は複数のブレードを備えた圧縮機セクションを有するターボ機械に限定されない。本発明の実施形態を、例えばこれに限らないが、蒸気タービン等の圧縮機セクションを有さないターボ機械にも適用できる。
【0011】
本明細書において、詳細な例示的実施形態を開示する。しかし、本明細書において開示した構造及び機能詳細は、例示的実施形態を説明するための代表例にすぎない。むしろ、例示的実施形態を多くの代替形式で実行できる。例示的実施形態は、本明細書に記載の実施形態のみに限定されるものとして解釈すべきではない。
【0012】
このように、例示的実施形態には様々な変形例及び代替形態が可能であるが、そのうちの実施形態を一例として図示し、本明細書において詳述する。しかし、開示した特定の形態に例示的実施形態を限定する意図はなく、むしろ、例示的実施形態には、例示的実施形態の技術的範囲に含まれる全ての変形例、等価物、及び代替例を包含することを理解されたい。
【0013】
様々な要素を説明するために第1、第2等の表現が使用されるが、これらの要素はこれらの表現によって限定されるべきではないことを理解されたい。これらの用語は、1つの要素をもう1つの要素と区別する目的においてのみ使用される。例えば、例示的実施形態の範囲から逸脱することなく、第1の要素を第2の要素と名付けることができ、同様に、第2の要素を第1の要素と名付けることができる。本明細書で使用する場合、「及び/又は」という表現は、1つ以上の関連する記載項目のいずれか、及び全ての組み合わせを包含する。
【0014】
本明細書で使用する専門用語は、特定の実施形態を説明するものにすぎず、例示的実施形態を限定することを意図していない。本明細書で使用する場合、単数形の「1つの(a、an)」及び「その(該)(the)」は、特に文脈の明らかな指示がない場合は、複数形も包含することを意図している。更に、「備える(comprises)」、「を有する(comprising)」、「包含する(includes)」及び/又は「含む(including)」という表現は、本明細書で使用する場合、記載した特徴、整数、ステップ、動作、要素、及び/又は部品の存在を明示しているが、1つ以上のその他の特徴、整数、ステップ、動作、要素、部品、及び/又はそれらの群の存在又は追加を排除するものではないことを理解されたい。
【0015】
一部の代替的実施例では、記載した機能/作用が、図示の順序から外れて生じる可能性があることにも留意されたい。例えば、2つの連続する図が、実質的に同時に実行されても、場合によっては、関連する機能/動作に応じて逆順で実行されてもよい。
【0016】
次に、各種番号が幾つかの図にわたって同様の部品を表している図を参照する。図1は、本発明の実施形態を実施可能な環境を示す概略図である。本発明の実施形態はターボ機械100を有し、亀裂検出システム180によって受信される音響データ175を生成する。保存された音響データ185は、更に亀裂検出システム180に送信され、圧縮機セクション105の少なくとも1つのブレードの亀裂の可能性に関する通知190を行う。
【0017】
図1において、ガスタービン100の形態のターボ機械は、圧縮機セクション105と、燃焼システム130と、タービンセクション150とを包含する。一般的に、圧縮機セクション105は、入口セクション125で吸引した空気を圧縮するように構築された複数の固定ブレード110及び回転ブレード115を包含する。圧縮機セクション105は、少なくとも1つの音響検出装置170を更に包含する。ここでは、例えばこれに限らないが、音響検出装置170は、マイクロホン又はその他の音波感知装置の形態をとる。本発明の実施形態は、ファン又はターボファンセクション(図1には図示せず)と一体化された圧縮機セクション105に適用される。
【0018】
燃焼セクション130は、複数の燃焼缶135(1つだけ図示)と、複数の燃焼ノズル140と、複数の移行セクション145(1つだけ図示)とを包含する。複数の燃焼缶135は、燃料源(図示せず)に連結される。各燃焼缶135内で、圧縮機セクション105から圧縮空気が受け取られ、燃料源から受け取った燃料と混合される。空気と燃料の混合物が点火され、作動流体が発生する。作動流体は、一般的に、複数の燃料ノズル140の後部から下流に移行セクション145を通ってタービンセクション150に進入する。
【0019】
タービンセクション150は、複数の回転部品155と、複数の固定部品160と、複数のホイール空間領域165とを包含する。一般的に、タービンセクション150は、作動流体を、負荷(図示せず)の駆動に用いられる機械的トルクに変換する。
【0020】
図2は、図1で示した圧縮機セクション105の回転ブレード115の一例を示す概略断面図である。図2は、圧縮機セクション105の段の内部にある代表的な回転ブレード115の特定の寸法特性に関する概要を示す。この断面図は、半径方向外側先端付近の、音速又は超音速となる回転ブレード115の一部を示す。角度θは、図示した特定断面における回転ブレード115の食い違い角を表している。食い違い角は、該断面における実コード119とガスタービン100の回転軸X−Xとの間にある。図示した「t」は、位置120における厚さを表しており、該断面の前縁厚さである。位置120は、空気流117と噛み合う翼厚を示す回転ブレード115上の位置である。
【0021】
回転ブレード115が音速先端速度で動作すると、衝撃波が発生する。衝撃波の原因は、隣接する回転ブレード115どうしの幾何学的形状のわずかな相違である。衝撃波により、一般に多階調純音(MPT)とよばれる音響信号が生成される。MPT音響信号は、軸速度の整数倍で生成された音響トーンで生じる。これらの音響トーンの振幅は、圧縮機セクション105の各段の内部の各回転ブレード115の特定の食い違い角に特有のものである。
【0022】
本発明の実施形態は、回転ブレード115の亀裂の存在を示し得る、食い違い角が変化しているかどうかを判定する方法を提供する。本発明の実施形態は、圧縮機セクション105のMPT信号を監視し、自動的にMPT信号の変化を検出できる。この変化は、少なくとも1つの回転ブレード115の食い違い角が変化していることを示し、回転ブレード115で亀裂が進行していることを示唆している。この方法の実施形態では、ガスタービン100を運転しながら圧縮機セクション105を監視できる。
【0023】
図3は、本発明の実施形態に従って作成された周波数応答曲線の一例を示すグラフ300である。図3は、MPTが本発明の実施形態に従ってどのように生成されるかを示している。周波数帯域振幅305は、1/3オクターブ帯域レベルで収集された衝撃波データを表している。音響信号310は、周波数帯域振幅の狭スペクトル下で収集された衝撃波データを表している。これらの衝撃波は、入口セクション125を通って上流に移動して、音響信号310になる。特定の音響信号310に関連する周波数帯域振幅の狭スペクトルは、食い違い角の変化に対して最も敏感な狭帯域トーンを形成する。周波数帯域振幅305及び音響信号310は、一般的に、ブレードどうしの幾何学的変化及び回転ブレード115間の食い違い角に特有のものである。
【0024】
本発明では、リアルタイムで、ガスタービン100を運転しながら、新品又は「正常な」ガスタービン100に関する基準MPT信号を生成できる。この基準MPT信号からの変動が、回転ブレード115の幾何学的形状及び食い違い角の変化を示す。亀裂が発生すると、回転ブレード115の先端たわみが変化して、MPT信号を変化させる。
【0025】
明らかなように、本発明を、方法、システム、又はコンピュータプログラム製品として実施できる。したがって、本発明は、完全なハードウェア実施形態、完全なソフトウェア実施形態(ファームウェア、常駐ソフトウェア、マイクロコード等を含む)又は、本明細書において概して「回路」、「モジュール」、又は「システム」と称されるソフトウェアとハードウェアの全ての側面を組み合わせた実施形態の形態をとり得る。更に、本発明は、媒体内で実施されるコンピュータ使用可能なプログラムコードを有するコンピュータ使用可能な記憶媒体上のコンピュータプログラム製品の形態をとり得る。本明細書で使用する場合、「ソフトウェア」及び「ファームウェア」という表現は置き換え可能であり、RAMメモリ、ROMメモリ、EPROMメモリ、EEPROMメモリ、及び不揮発性RAM(NVRAM)メモリを含むメモリに格納された、プロセッサによって実行されるあらゆるコンピュータプログラムを包含する。上記のメモリ型は例示にすぎず、コンピュータプログラムの保存に使用可能なメモリの型に関しては限定されない。
【0026】
あらゆる適切なコンピュータ読み取り可能媒体を利用することができる。コンピュータ使用可能又はコンピュータ読み取り可能媒体は、例えばこれに限定されないが、電子、磁気、光、電磁、赤外線、又は半導体システム、機器、装置、或いは伝搬媒質であってもよい。コンピュータ読み取り可能媒体のより具体的な例(非限定的なリスト)としては、1つ以上のワイヤを有する電気的接続、ポータブルコンピュータディスケット、ハードディスク、ランダムアクセスメモリ(RAM)、リードオンリーメモリ(ROM)、消去可能プログラマブルリードオンリーメモリ(EPROM又はフラッシュメモリ)、光ファイバー、ポータブルコンパクトディスクリードオンリーメモリ(CD−ROM)、光記憶装置、インターネット又はイントラネットをサポートするような伝送媒体、或いは磁気記憶装置が挙げられる。ここで留意すべきは、プログラムは、例えば、紙又はその他の媒体の光学式走査を介して電子的に取り込んでから、編集、翻訳、又は別の適切な方法で処理した後、必要に応じて、コンピュータメモリに格納できるので、コンピュータ使用可能又はコンピュータ読み取り可能な媒体は、プログラムが印刷された紙又はその他の適切な媒体であってもよいことである。本書の文脈において、コンピュータ使用可能又はコンピュータ読み取り可能な媒体は、命令実行システム、機器、又は装置によって、或いはそれらに接続して使用するためのプログラムを格納、保存、伝達、伝播、又は転送可能な任意の媒体であってよい。
【0027】
本明細書で使用する場合、プロセッサという表現は、中央処理装置、マイクロプロセッサ、マイクロコントローラ、縮小命令セット回路(RISC)、特定用途向け集積回路(ASIC)、ロジック回路、及び本明細書に記載の機能を実行可能な任意のその他の回路又はプロセッサを指す。
【0028】
本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、Java7(商標)、Smalltalk(商標)又はC++等のオブジェクト指向プログラミング言語で書かれている。しかし、本発明の動作を実行するためのコンピュータプログラムコードは、「C」プログラミング言語、又は類似言語等の従来の手続き型プログラミング言語で書かれていてもよい。プログラムコードを、完全にユーザのコンピュータ上で、又は部分的にユーザのコンピュータ上で、スタンドアロン型ソフトウェアパッケージとして実行しても、或いは部分的にユーザのコンピュータ上で実行して部分的にリモートコンピュータ上で実行するようにしても、完全にリモートコンピュータ上で実行してもよい。後者の状況において、リモートコンピュータを、ローカルエリアネットワーク(LAN)又は広域ネットワーク(WAN)を介してユーザのコンピュータに接続しても、外部コンピュータに(例えば、インターネットサービスプロバイダーを使用したインターネットを介して)接続してもよい。
【0029】
本発明の実施形態による方法、装置(システム)及びコンピュータプログラム製品のフローチャート図及び/又はブロック図を参照して、本発明を以下に記載する。フローチャート図及び/又はブロック図の各ブロック、及びフローチャート図及び/又はブロック図におけるブロックの組み合わせは、コンピュータプログラム命令によって実施されることが理解できよう。これらのコンピュータプログラム命令は、汎用コンピュータ、専用コンピュータ、又はマシンを生成するためのその他のプログラマブルデータ処理機械のプロセッサに提供され、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理機械のプロセッサを介して実行される命令が、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又はブロック群で指定された機能/作用を実施する手段を形成するようになっている。
【0030】
これらのコンピュータプログラム命令は、例えばコンピュータ読み取り可能メモリに格納される。これらの命令により、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理機械が特定の態様で機能するように指示できる。こうして、コンピュータ読み取り可能メモリに格納された命令により、フローチャート及び/又はブロック図のブロック又はブロック群で示した機能/作用を実施する命令手段を含む製品が構築される。コンピュータプログラム命令を、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理機械にロードすることもできる。これらの命令により、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理機械で実行すべき一連の動作ステップが実施され、コンピュータ実装プロセスが構築される。この場合、コンピュータ又はその他のプログラマブルデータ処理機械で実行する命令は、フローチャート及び/又はブロック図のブロック群で示した機能/作用を実施するステップを提供する。
【0031】
再び図面を参照すると、図4は、本発明の実施形態に従った、ターボ機械の圧縮機を監視する方法400を示すブロック図である。本発明の実施形態において、オペレータは、グラフィカルユーザインタフェース(GUI)等を介して制御システムを使用して、方法400の動作を監視又は制御できる。
【0032】
方法400の実施形態は、少なくとも1つのアルゴリズムを組み込んでおり、以下のステップを実行することができる。先に述べたように、各圧縮機セクション105は、固有のMPT信号を有している。アルゴリズムは、先ず、圧縮機セクション105の基準MPT信号を確立する。このステップは、圧縮機セクション105が新品又は「正常な」状態の場合に実行されるべきである。ターボ機械100を運転しながら、音響検出装置170で常に音響信号を監視でき、プロセッサで音響周波数スペクトルを計算した後、基準MPT信号を生成できる。
【0033】
次に、アルゴリズムは、リアルタイムMPT信号を基準MPT信号と比較する。次に、アルゴリズムは、狭帯域、即ち比例オクターブ、帯域周波数スペクトルを決定する。次に、アルゴリズムは、個々の周波数成分を決定する。次に、各周波数成分の振幅を、対応する基準周波数成分の振幅と比較する。このとき、周波数成分の振幅が所定の閾値だけ外れ始めている場合、本発明の実施形態により、亀裂発生の可能性があることをオペレータに通知できる。
【0034】
本発明の実施形態において、周波数成分の比較は、帯域ごとに、即ち近隣帯域の群を比較することによって行われる。本発明の別の実施形態においては、比較には、広範囲の周波数を検討して、スペクトル形状全体の変化を検出することを包含する。
【0035】
方法400の実施形態は、以下のステップを実行する。ステップ410において、方法400は、少なくとも1つの音響検出装置から音響データを受信する。本発明の実施形態では、音響検出装置は圧縮機セクションの入口セクションに設置される。先に述べたように、音響検出装置は、マイクロホン又は音波感知装置の形態をとる。音響検出装置により、音響データを受信できる。更に、音響検出装置は、電気信号等を介して、この音響データを制御システムに伝達できる。
【0036】
ステップ420において、方法400は、ステップ410で伝達された現在の音響データを受信する。次に、例えばこれに限らないが、MPT等の音響信号が生成される。本発明の実施形態では、方法400では、新たに生成したMPTをローカル記憶装置及び/又はリモート記憶装置に格納する。
【0037】
ステップ430において、方法400は、ステップ420に、例えばこれに限らないが、MPT等の以前の音響データを伝達する。本発明の実施形態では、以前の音響データを同一のガスタービンから取得する。この場合、以前の音響データはガスタービンの基準値としての役割を果たす。本発明の代替的実施形態では、以前の音響データを、異なるガスタービン及び/又はその他の一連のガスタービンから取得する。次に、方法400は、動作中の機械からのMPT信号とステップ430で伝達された以前の音響データとを分析及び比較するアルゴリズムを利用する。
【0038】
ステップ440において、方法400は、通知を作成すべきかどうかを判定する。本発明の実施形態では、通知は、現在のMPTが基準MPTの所望の範囲にないことを示しており、回転ブレードの潜在的な亀裂を示している。通知を作成すべき場合は、方法400はステップ450に進み、そうでない場合は、方法400はステップ420に戻って、監視プロセスを継続する。
【0039】
本発明の実施形態では、ガスタービンは、遠隔監視診断システム(RMD)と一体化されている。この場合、RMDは、音響データを受信し、ガスタービンのオペレータに直接、潜在的な亀裂の直接通知を行う。
【0040】
ステップ450において、方法400は通知を作成する。この場合、通知は、可聴及び/又は可視警報の形態、或いは一般的に使用されるその他のコミュニケーション形態であってもよい。
【0041】
先に述べたように、本発明の実施形態により、回転ブレード上の亀裂形成の可能性に関して圧縮機セクションのリアルタイム監視が可能になる。本発明は、ガスタービンのシャットダウンを必要とせず、圧縮機の音響信号にブレードの亀裂に相当し得る変化が生じた場合に自動的に警報を発するように自動化が可能である。
【0042】
当業者であればわかるように、幾つかの例示的実施形態に関して上記した多くの様々な特徴及び構成を更に選択的に適用することにより、本発明のその他の可能な実施形態を構成できる。当業者には更に、幾つかの請求項又はその他のものによって包含された全ての組み合わせ及び可能な実施形態が本出願の一部であることを意図している場合であっても、本発明の可能な反復の全てが詳細に提供又は記述されるわけではないことが理解できよう。更に、本発明の幾つかの例示的実施形態の上記説明から、当業者は、改良、変更、及び修正に想到するであろう。当該技術に含まれるそのような改良、変更、及び修正を、添付の特許請求の範囲が包含することも意図されている。更に、以上の説明は本出願の記載した実施形態のみに関連し、添付の特許請求の範囲及びその等価物によって明示される本出願の技術的範囲から逸脱することなく、これらに数多くの変更及び修正を加え得ることが明らかであろう。
【符号の説明】
【0043】
100 ターボ機械
105 圧縮機セクション
110 固定ブレード
115 回転ブレード
117 空気流
119 コード
120 位置
125 入口セクション
130 燃焼システム
135 燃焼缶
140 燃料ノズル
145 移行セクション
150 タービンセクション
155 回転部品
160 固定部品
165 ホイール空間領域
170 音響検出装置
175 音響データ
180 亀裂検出システム
185 格納された音響データ
190 潜在的欠陥通知
300 グラフ
305 周波数帯域振幅
310 音響信号
400 方法

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ターボ機械(100)の圧縮機セクション(105)内に設置されたブレード(110、115)の潜在的な亀裂を検出する方法(400)であって、
複数のブレード(110、115)を有する圧縮機セクション(105)と;前記ターボ機械(100)を運転しながら前記圧縮機セクション(105)を監視するように構成され、前記複数のブレード(110、115)に関する音響データを受信する音響検出装置(170)とを有するターボ機械(100)を準備するステップ(410)と、
前記音響データを利用して、前記複数のブレード(110、115)に対応する音響信号を生成するステップ(420)と、
前記音響信号が許容範囲内にあるかどうかを判定するステップ(420)と、を含み、
前記音響信号が前記許容範囲外であるという判定が、前記複数のブレード(110、115)の少なくとも1つに亀裂の可能性があることを示す、方法。
【請求項2】
前記音響検出装置(170)が、前記圧縮機セクション(105)の入口セクションに隣接して設置される、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項3】
前記音響信号が許容範囲内にあるかどうかを判定するステップの結果に関する通知を作成するステップ(440、450)を更に含む、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項4】
関連音響信号を記憶装置から取り出すステップ(430)を更に含む、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項5】
前記音響信号を遠隔監視診断センターに伝達するステップ(450)を更に含む、請求項1に記載の方法(400)。
【請求項6】
前記音響信号を関連音響信号と比較するステップ(420、430)を更に含む、請求項4に記載の方法(400)。
【請求項7】
前記関連音響信号が前記ターボ機械(100)から取得される、請求項6に記載の方法(400)。
【請求項8】
前記関連音響信号が少なくとも1つの別個のターボ機械(100)から取得される、請求項6に記載の方法(400)。
【請求項9】
ターボ機械(100)のブレードの亀裂形成に関してターボ機械(100)を監視する方法(400)であって、
複数のブレード(110、115)と;運転中に前記ターボ機械(100)を監視するように構成され、前記複数のブレード(110、115)に関する音響データを受信する音響検出装置(170)とを有するターボ機械(100)を準備するステップと、
前記音響データを利用して、前記複数のブレード(110、115)に対応する音響信号を生成するステップ(420)と、
前記音響信号を関連音響信号と比較するステップ(420、430)と、
前記音響信号が許容範囲内にあるかどうかを判定するステップ(430)と、
前記音響信号が前記関連音響信号の許容範囲内にあるかどうかを判定した結果に関する通知を作成するステップ(440)とを含み、
前記音響信号が前記許容範囲外であるという判定が、前記複数のブレード(110、115)の少なくとも1つに亀裂の可能性があることを示す、方法。
【請求項10】
ガスタービン(100)内のブレード(110、115)の亀裂の存在を検出するシステムであって、
複数のブレード(110、115)を有するガスタービン(100)と、
前記ガスタービン(100)の動作を監視するように構成され、前記複数のブレード(110、115)に関する音響データを受信し、圧縮機セクション(105)に隣接して設置された音響検出装置(170)と、
制御システム(180)であって、
前記音響データを利用して、前記複数のブレード(110、115)に対応する音響信号を生成するステップ(420)と、
前記音響信号が許容範囲内にあるかどうかを判定するステップ(430)と、を実行する制御システム(180)と、
を有するシステム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−132953(P2011−132953A)
【公開日】平成23年7月7日(2011.7.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−279970(P2010−279970)
【出願日】平成22年12月16日(2010.12.16)
【出願人】(390041542)ゼネラル・エレクトリック・カンパニイ (6,332)
【氏名又は名称原語表記】GENERAL ELECTRIC COMPANY
【Fターム(参考)】