説明

ターボ機械

【課題】製造時又はメンテナンス時における組立の手間を削減できるターボ機械を提供する。
【解決手段】本発明に係るターボ機械S1は、回転することで気体を流動させるインペラ1と、インペラ1を回転駆動させる駆動装置2と、駆動装置2の回転駆動力をインペラ1に伝達する回転軸3と、回転軸3を回転自在に支持する軸受4と、少なくとも駆動装置2及び回転軸3を収容するケーシング5と、を備えるターボ機械であって、ケーシング5には軸受4を潤滑するグリースを軸受4に供給するためのグリース流路7,8が形成されている、という構成を採用する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ターボ機械に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、気体を流動させるターボブロア等のターボ機械が使用されている。このようなターボ機械には、回転することで気体を流動させるインペラ(回転翼)と、インペラを回転駆動させるモータ等(駆動装置)と、モータの回転駆動力をインペラに伝達する回転軸と、を備えている。インペラ、モータ及び回転軸は、ターボ機械の外形を成すケーシング内に収容されている。回転軸は、ケーシングに設けられる軸受(例えば転がり軸受)を介して回転自在に支持されている。
【0003】
回転軸の円滑な回転を維持するため、軸受には潤滑油が供給されている。また、潤滑油を貯留するためのタンクを小型化でき、メンテナンスの手間を削減できる等の理由から、軸受にグリースを供給するグリース潤滑が使用されつつある(例えば特許文献1参照)。グリースとは、基油となる潤滑油に増ちょう材を分散させて半固体状にした潤滑剤である。グリース潤滑の方法としては、例えばターボ機械にグリース供給装置を設置し、一定時間毎にグリースを供給する方法が挙げられる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平6−216437号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、一般的に軸受とグリース供給装置との間は、グリースを供給するための供給管によって連結されている。
しかしながら、グリースを軸受に供給するための供給管を設けると、ターボ機械の製造時やメンテナンス時に供給管の配設(引き回し)及び接続の作業が生じ、ターボ機械の組立の手間が増大してしまうという課題があった。
【0006】
本発明は、以上のような点を考慮してなされたもので、製造時又はメンテナンス時における組立の手間を削減できるターボ機械を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記課題を解決するために、本発明は以下の手段を採用する。
本発明に係るターボ機械は、回転することで気体を流動させるインペラと、インペラを回転駆動させる駆動装置と、駆動装置の回転駆動力をインペラに伝達する回転軸と、回転軸を回転自在に支持する軸受と、少なくとも駆動装置及び回転軸を収容するケーシングと、を備えるターボ機械であって、ケーシングには軸受を潤滑するグリースを軸受に供給するためのグリース流路が形成されている、という構成を採用する。
【0008】
ターボ機械の製造時又はメンテナンス時には、インペラ、駆動装置、回転軸、軸受及びケーシング等を組み立てる組立作業が実施される。このとき、軸受にグリースを供給するための供給管等がターボ機械のケーシング内において用いられている場合には、このような供給管の配設、引き回し及び接続といった作業が発生し、ターボ機械の組立の手間が増大する虞がある。しかしながら、本発明によれば、グリースを軸受に供給するためのグリース流路が、ケーシング自体に形成されている。そのため、ターボ機械の組立作業において、ケーシングに形成されたグリース流路内に所定量のグリースを充填し、ケーシングに対して回転軸や軸受等を順次設置することで、ターボ機械の組立作業が完了する。すなわち、従来発生していた供給管の配設、引き回し及び接続といった作業が不要となる。
【0009】
また、本発明に係るターボ機械は、ケーシングが、少なくとも駆動装置及び回転軸を収容するケーシング本体と、ケーシング本体に着脱自在に設置されるとともに軸受を支持する軸受支持部と、を具備し、ケーシング本体にはグリース流路の一部を成す第1流路が形成され、軸受支持部にはグリース流路の一部を成すとともに第1流路に連通する第2流路が形成されている、という構成を採用する。
【0010】
また、本発明に係るターボ機械は、第1流路と第2流路とが連通する向きが、軸受支持部の着脱方向と同一である、という構成を採用する。
【0011】
また、本発明に係るターボ機械は、軸受支持部には回転軸の回転軸線周りに環状に配される環状流路が形成されており、環状流路は、第2流路の一部を成し、第1流路に連通して配されている、という構成を採用する。
【0012】
また、本発明に係るターボ機械は、軸受支持部に設けられるとともに軸受から排出されたグリースが貯留されるグリース貯留部を備える、という構成を採用する。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、以下の効果を得ることができる。
本発明によれば、ターボ機械の組立作業において、ケーシング内での供給管の配設、引き回し及び接続といった作業が不要となる。そのため、本発明によれば、製造時又はメンテナンス時における組立の手間を削減できるという効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明の第1の実施形態におけるターボブロアの概略構成を示す断面図である。
【図2】本発明の第1の実施形態におけるターボブロアの概略構成を示す分解断面図である。
【図3】図2におけるモジュール部の拡大断面図である。
【図4】図3のA−A線視断面図である。
【図5】図3のB矢視図である。
【図6】本発明の第1の実施形態におけるグリース受け皿の概略図である。
【図7】本発明の第2の実施形態におけるターボブロアの概略構成を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明の実施の形態を、図1から図7を参照して説明する。なお、以下の説明に用いる各図面では、各部材を認識可能な大きさとするため、各部材の縮尺を適宜変更している。
【0016】
〔第1実施形態〕
図1は、本実施形態におけるターボブロアS1の概略構成を示す断面図である。
ターボブロアS1は、外部から導入された気体を圧縮して流動させるターボ機械である。ターボブロアS1は、例えばガスレーザー(炭酸ガスレーザー等)で使用される。ガスレーザーで使用されるターボブロアS1は、ガスレーザーの媒体であるレーザーガスを、レーザー発振器に向けて流動させるために用いられる。
ターボブロアS1は、インペラ1と、モータ2(駆動装置)と、回転軸3と、軸受4と、ケーシング5と、グリース供給装置6と、を備えている。なお、図1から図3において、回転軸3の軸線方向を鉛直方向とし、インペラ1が設けられている側を上側とする。
【0017】
インペラ1は、回転することで気体を流動させる回転翼である。また、インペラ1は、回転することで、その回転軸線方向での一方側から気体を吸引し、吸引した気体を径方向外側に送り出すものである。
【0018】
モータ2は、インペラ1を回転させる駆動力を発生する駆動装置である。本実施形態におけるモータ2は、誘導モータであって、かご形に組まれたコア(鉄心)からなるロータ21と、ロータ21を囲んで設けられる巻線からなるステータ22とを備えている。モータ2は、ステータ22に電力が供給されることで、ロータ21が回転する構成となっている。なお、モータ2は、誘導モータ以外のモータであってもよい。さらに、モータ以外の駆動装置を用いてもよい。
【0019】
回転軸3は、モータ2の回転駆動力をインペラ1に伝達するための軸部材である。回転軸3は、鉛直方向に延在して設けられ、ロータ21に挿通されて固定されている。また、回転軸3の上側端部には、インペラ1が固定されている。回転軸3とインペラ1との固定方法としては、締結部材による締結や溶接が例示される。
【0020】
軸受4は、回転軸3を回転自在に支持するものである。軸受4は、ケーシング5に設置されている。すなわち、回転軸3は、軸受4を介してケーシング5に回転自在に支持されている。軸受4は、転がり軸受であり、より詳細にはアンギュラ玉軸受である。なお、軸受4はアンギュラ玉軸受に限定されず、深溝玉軸受や円錐ころ軸受等の、ラジアル荷重及びスラスト荷重をいずれも支持できる軸受を用いてもよい。
本実施形態における軸受4としては、上側軸受41(軸受)と下側軸受42(軸受)とが用いられている。上側軸受41は、回転軸3の上側の端部、すなわちインペラ1側の端部を支持している。下側軸受42は、回転軸3の下側の端部、すなわちインペラ1と逆側の端部を支持している。本実施形態の上側軸受41及び下側軸受42には、グリースが供給されている。このグリースは、上側軸受41及び下側軸受42の円滑な回転を維持するためのものである。
【0021】
ケーシング5は、ターボブロアS1の外形を成すとともに、インペラ1、モータ2及び回転軸3を収容するためのものである。ケーシング5は、スクロールケーシング51と、ケーシング本体52と、上側軸受支持部53(軸受支持部)と、下側軸受支持部54(軸受支持部)と、を具備している。
【0022】
スクロールケーシング51は、インペラ1を囲んで設けられるものである。スクロールケーシング51には、吸入口51aと、ディフューザ51bと、スクロール室51cとが形成されている。
吸入口51aは、インペラ1に向けて気体が導入される箇所である。ディフューザ51bは、インペラ1を囲んで環状に形成されており、インペラ1が回転することで送り出された気体が導入される流路である。ディフューザ51bに導入された気体は圧縮され、その圧力は上昇する。スクロール室51cは、インペラ1を囲んで環状に形成されており、ディフューザ51bと連通して設けられる流路である。スクロール室51cには不図示の吐出口が設けられており、インペラ1の回転によって送り出された気体はディフューザ51b及びスクロール室51cを介して、この吐出口からケーシング5の外部に供給される。
【0023】
ケーシング本体52は、モータ2及び回転軸3を収容するものであって、モータケーシング55と、ベースプレート56とを具備している。
【0024】
モータケーシング55は、モータ2を収容するものである。モータケーシング55には、上述したスクロールケーシング51が締結ボルト等を用いて着脱自在に接続されている。モータケーシング55には、コネクタ55aと、水冷ジャケット55bと、吸引口55cとが形成されている。
【0025】
コネクタ55aは、モータ2に電力を供給する電源ケーブル(図示せず)との接続に用いられるものである。また、コネクタ55aとステータ22とは、所定の配線によって電気的に接続されている。なお、ターボブロアS1がガスレーザー等で使用される場合には、ケーシング5を密閉構造とする必要があるため、コネクタ55aには接続部分を密閉できるハーメチックコネクタが用いられる。
水冷ジャケット55bは、モータ2を冷却するためのものであって、モータ2を回転軸線周りで囲んで設けられている。
吸引口55cは、モータケーシング55を貫通して形成される開口部であって、モータ2が設置されている内部空間を吸引するための吸引装置(図示せず)が接続される箇所である。吸引装置の吸引により、上側軸受41を介してスクロールケーシング51からモータケーシング55に向かう気体の流れが作り出され、上側軸受41等に供給された潤滑油が揮発してスクロールケーシング51内に流入することを防止することができる。
【0026】
ベースプレート56は、モータケーシング55の下部に締結ボルト等を用いて固定されており、ターボブロアS1の台座部として用いられるものである。なお、本実施形態においては、モータケーシング55とベースプレート56とを別体で構成したが、これに限定されずケーシング本体52を一体的に成形してもよい。
【0027】
上側軸受支持部53は、上側軸受41を支持するものであり、ケーシング本体52のモータケーシング55に締結ボルト等を用いて着脱自在に設置されている。すなわち、上側軸受41は、上側軸受支持部53に設置されている。なお、上側軸受支持部53は、モータケーシング55に形成された凹部55d内に設置されている。
上側軸受支持部53は、スクロールケーシング51内のインペラ1が設置されている箇所と、モータケーシング55内のモータ2が設置されている箇所との間に設けられている。上側軸受支持部53は、円板状に成形された部材である。上側軸受支持部53のモータケーシング55に対する着脱の方向は、鉛直方向と同一である。上側軸受支持部53の中央部には回転軸3が隙間をあけて貫通しており、上側軸受41も上側軸受支持部53の中央部に設置されている。
【0028】
下側軸受支持部54は、下側軸受42を支持するものであり、ケーシング本体52のベースプレート56に着脱自在に設置されている。すなわち、下側軸受42は、下側軸受支持部54に設置されている。なお、下側軸受支持部54は、ベースプレート56に形成された凹部56a内に設置されている。
下側軸受支持部54は、有底の円筒状に成形された部材であり、その内部には空間54a(グリース貯留部)が形成されている。下側軸受支持部54の上側開口部からは、空間54a内に回転軸3の下側端部が突入して設けられている。また、下側軸受42は、下側軸受支持部54の上側開口部の近傍に設置されている。なお、空間54aは、下側軸受42から排出された排グリースが貯留される貯留部となっている。下側軸受支持部54のベースプレート56に対する着脱の方向は、鉛直方向と同一である。
【0029】
下側軸受支持部54の空間54a内には、下側軸受42を上側に向かって付勢する予圧バネ54bが設けられている。なお、下側軸受42は、回転軸3を介して上側軸受41と連結されている。そのため、予圧バネ54bの上側への付勢力は、下側軸受42だけでなく上側軸受41にも伝わり、上側軸受41及び下側軸受42のいずれに対しても鉛直方向での付勢力(すなわち予圧)を加えられる構成となっている。上側軸受41及び下側軸受42はアンギュラ玉軸受であることから、鉛直方向で適切な予圧が加えられることで、転動体(玉)が適切な位置に保持され、回転に伴う振動や騒音等が低減される。
【0030】
ケーシング5には、上側軸受41及び下側軸受42に対してグリースを供給するための、上側グリース流路7(グリース流路)と下側グリース流路8(グリース流路)とが形成されている。
【0031】
上側グリース流路7は、第1上側流路71(第1流路)と、第2上側流路72(第2流路)とを有している。
第1上側流路71は、ケーシング本体52のモータケーシング55に形成されている。第1上側流路71の一方の端部は、モータケーシング55の外部に向かって開口し、他方の端部は、凹部55d内に開口している。
第2上側流路72は、上側軸受支持部53に形成されている。第2上側流路72の一方の端部は、モータケーシング55の凹部55dに向かって開口し、他方の端部は、上側軸受41に接続されている。さらに、第2上側流路72の一方の端部は、第1上側流路71と連通する位置に設けられている。
すなわち、第1上側流路71及び第2上側流路72が形成されていることで、外部から供給されるグリースを上側軸受41に供給できる構成となっている。
【0032】
下側グリース流路8は、第1下側流路81(第1流路)と、第2下側流路82(第2流路)とを有している。
第1下側流路81は、ケーシング本体52のベースプレート56に形成されている。第1下側流路81の一方の端部は、ベースプレート56の外部に向かって開口し、他方の端部は、凹部56a内に開口している。
第2下側流路82は、下側軸受支持部54に形成されている。第2下側流路82の一方の端部は、ベースプレート56の凹部56aに向かって開口し、他方の端部は、下側軸受42に接続されている。さらに、第2下側流路82の一方の端部は、第1下側流路81と連通する位置に設けられている。
すなわち、第1下側流路81及び第2下側流路82が形成されていることで、外部から供給されるグリースを下側軸受42に供給できる構成となっている。
【0033】
グリース供給装置6は、ケーシング5の外部に設置され、上側軸受41及び下側軸受42にグリースを供給するためのものである。グリース供給装置6の内部には、グリースが充填された一対のシリンジ61が収容されている。また、グリース供給装置6の内部には、シリンジ61を動作させる駆動装置(図示せず)が設けられており、この駆動装置の作動によってシリンジ61が動作し、シリンジ61内のグリースを供給できる構成となっている。
【0034】
一対のシリンジ61には、それぞれ第1供給管62及び第2供給管63が接続されている。第1供給管62は、一方のシリンジ61と、モータケーシング55の第1上側流路71とを互いに連結している。第2供給管63は、他方のシリンジ61と、ベースプレート56の第1下側流路81とを互いに連結している。すなわち、グリース供給装置6の作動によって、ターボブロアS1における上側軸受41及び下側軸受42にグリースを供給することが可能となっている。
【0035】
次に、ターボブロアS1の分解構造を、より詳細に説明する。図2は、本実施形態におけるターボブロアS1の概略構成を示す分解断面図である。
【0036】
上述したように、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54は、ケーシング本体52に着脱自在に設置されている。また、図2に示すように、インペラ1、ロータ21及び回転軸3は一体的に固定されており、回転軸3は上側軸受41及び下側軸受42を介して上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54に回転自在に支持されている。そのため、インペラ1、ロータ21、回転軸3、上側軸受41、下側軸受42、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54は、一体的に組み立てられたモジュール部9として構成されている。
例えばターボブロアS1のメンテナンス時においては、ケーシング本体52からスクロールケーシング51を離脱させ、上側軸受支持部53をケーシング本体52に固定している締結ボルト等を取り外すのみで、モジュール部9をケーシング本体52から離脱させることが可能となっている。
【0037】
また、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54の、ケーシング本体52に対する着脱の方向は、いずれも鉛直方向と同一である。そのため、モジュール部9のケーシング本体52に対する着脱の方向は、鉛直方向と同一である。
【0038】
第1上側流路71と第2上側流路72との連通の向きは、鉛直方向と同一である。そのため、第1上側流路71と第2上側流路72との連通の向きは、上側軸受支持部53のケーシング本体52に対する着脱の方向と同一である。よって、上側軸受支持部53をケーシング本体52に設置するのみで、第1上側流路71と第2上側流路72とが互いに連通され、上側グリース流路7が形成される。なお、第1上側流路71と第2上側流路72とを互いに連通する位置に配置させるための位置決め部材(図示せず)等をケーシング本体52と上側軸受支持部53との間に設けてもよい。
【0039】
第1下側流路81と第2下側流路82との連通の向きは、鉛直方向と同一である。そのため、第1下側流路81と第2下側流路82との連通の向きは、下側軸受支持部54のケーシング本体52に対する着脱の方向と同一である。下側軸受支持部54をケーシング本体52に設置するのみで、第1下側流路81と第2下側流路82とが互いに連通され、下側グリース流路8が形成される。
【0040】
なお、第1上側流路71及び第2上側流路72の連通箇所を囲んで設けられ、上側軸受支持部53とモータケーシング55とによって挟持されるシール部材(図示せず)を配置してもよい。同様に、第1下側流路81及び第2下側流路82の連通箇所を囲んで設けられ、下側軸受支持部54とベースプレート56とによって挟持されるシール部材(図示せず)を配置してもよい。このようなシール部材を配置することで、それぞれの連通箇所におけるグリースの漏出を防止することができる。
【0041】
続いて、本実施形態におけるモジュール部9を、より詳細に説明する。図3は、図2におけるモジュール部9の拡大断面図である。また、図4は、図3のA−A線視断面図である。また、図5は、図3のB矢視図である。また、図6は、本実施形態におけるグリース受け皿57の概略図であって、(a)は平面図、(b)は(a)のC−C線視断面図である。
【0042】
図3に示すように、上側軸受支持部53には、第2上側流路72の一部を成すとともに上側軸受41の外周側に設けられる上側軸受外周流路72aが形成されている。図4に示すように、上側軸受外周流路72aは、上側軸受41を囲んで環状に形成されている。そのため、第2上側流路72を介して供給されるグリースは、上側軸受41の径方向外側の全周に亘って配される。また、上側軸受41の外輪には、径方向に向けて貫通する複数の貫通孔41aが形成されている。
よって、上側軸受外周流路72a内のグリースが、複数の貫通孔41aを介して、上側軸受41の内部(外輪と内輪との間)に供給され、転動体(玉)の円滑な転動を維持することが可能となる。
【0043】
一方、図3に示すように、下側軸受支持部54には、第2下側流路82の一部を成すとともに下側軸受42の外周側に設けられる下側軸受外周流路82aが形成されている。下側軸受外周流路82a及び下側軸受42の構成は、上側軸受支持部53及び上側軸受41の構成と同様のものであるため、その説明を省略する。
上側軸受41及び下側軸受42にグリースが供給されることで、回転軸3の円滑な回転を維持することが可能となる。
【0044】
また、下側軸受支持部54には、第2下側流路82の一部を成すとともに回転軸3の回転軸線周りで環状に設けられる環状流路82bが形成されている。図5に示すように、環状流路82bは、下側軸受支持部54の下面に設けられた溝状の流路である。環状流路82bは第1下側流路81(図1又は図2参照)の凹部56aにおける開口部と対向する位置に形成されている。また、環状流路82bが回転軸3の回転軸線周りに形成されていることから、下側軸受支持部54が上記回転軸線周りで回転しどのような向きになったとしても、第1下側流路81と第2下側流路82との連通を確保することが可能となっている。
【0045】
図3に戻り、上側軸受支持部53には、グリース受け皿57(グリース貯留部)が設けられている。グリース受け皿57は、上側軸受41から排出される排グリースを貯溜するための部材である。図6に示すように、グリース受け皿57は円板状の部材として成形されており、その中央部には回転軸3を貫通させるための開口部57aが形成されている。
開口部57aの周囲には、上側軸受41から排出された排グリースが貯留される箇所である、貯留部57bが形成されている。貯留部57bは、開口部57aを囲んで環状に設けられている。
グリース受け皿57の周縁部近傍には、板厚方向で貫通する複数の貫通孔57cが形成されている。貫通孔57cは、締結ボルト等により、グリース受け皿57を上側軸受支持部53に着脱自在に設置するために用いられる孔部である。
【0046】
図3に戻り、下側軸受支持部54の空間54aは、下側軸受42から排出される排グリースを貯溜するための貯留部となっている。
【0047】
続いて、本実施形態におけるターボブロアS1の作用を説明する。
インペラ1を回転させて気体を圧送するために、モータ2は回転軸3を高速で回転させる(例えば数万rpm)。そのため、上側軸受41及び下側軸受42は高速で回転し、軸受に供給されたグリースは攪拌される。また、インペラ1における流動の損失やモータ2の動作を原因として、熱が生じる。この熱は上側軸受41及び下側軸受42に伝わり、軸受に供給されたグリースの温度は上昇する。
このような回転による攪拌や熱の影響により、グリースが変質・劣化し、基油である潤滑油が枯渇する虞がある。グリースの潤滑油が枯渇すれば、上側軸受41及び下側軸受42の焼き付きが生じる虞がある。
【0048】
しかしながら、本実施形態におけるターボブロアS1には、グリース供給装置6が設けられ、且つ上側軸受41及び下側軸受42に対してグリースを供給するための上側グリース流路7及び下側グリース流路8が形成されている。よって、一定量のグリースを定期的に、上側軸受41及び下側軸受42に対して供給することができ、上側軸受41及び下側軸受42の円滑な回転を維持しつつ焼き付き等の不具合を防止することができる。
【0049】
また、ターボブロアS1の製造時又はメンテナンス時には、インペラ1、モータ2、回転軸3、上側軸受41、下側軸受42及びケーシング5等を組み立てる組立作業が実施される。このとき、上側軸受41及び下側軸受42にグリースを供給するための供給管等がケーシング5内に設けられる場合には、このような供給管の配設、引き回し及び接続といった作業が発生し、ターボブロアS1の組立の手間が増大する虞がある。しかしながら、本実施形態によれば、グリースを上側軸受41及び下側軸受42に供給するための上側グリース流路7及び下側グリース流路8が、ケーシング5に形成されている。そのため、ターボブロアS1の組立作業において、ケーシング5に形成された上側グリース流路7及び下側グリース流路8内に所定量のグリースを充填し、ケーシング5に対して回転軸3、上側軸受41及び下側軸受42等を順次設置することで、ターボブロアS1の組立作業が完了する。すなわち、従来発生していた供給管の配設、引き回し及び接続といった作業が不要となる。結果として、ターボブロアS1の製造時又はメンテナンス時における組立の手間を削減できる。
【0050】
また、上側軸受支持部53及び下側軸受支持部54は、いずれもモジュール部9の構成要素であるため、モジュール部9をケーシング本体52に設置することで、上側グリース流路7及び下側グリース流路8がいずれも形成される。
【0051】
また、第1上側流路71と第2上側流路72との連通の向きは、上側軸受支持部53のケーシング本体52に対する着脱の方向と同一である。よって、上側軸受支持部53をケーシング本体52に設置するのみで、第1上側流路71と第2上側流路72とが互いに連通され、上側グリース流路7が形成される。さらに、第1上側流路71及び第2上側流路72の連通箇所を囲んで設けられるシール部材を配置する場合には、上側軸受支持部53をケーシング本体52におけるモータケーシング55に設置することで、シール部材が上側軸受支持部53とモータケーシング55とにより挟持される。よって、シール部材によって、第1上側流路71及び第2上側流路72の連通箇所を適切に密閉でき、連通箇所からのグリースの漏出を防止できる。
【0052】
また、第1下側流路81と第2下側流路82との連通の向きは、下側軸受支持部54のケーシング本体52に対する着脱の方向と同一である。よって、下側軸受支持部54をケーシング本体52に設置するのみで、第1下側流路81と第2下側流路82とが互いに連通され、下側グリース流路8が形成される。さらに、第1下側流路81及び第2下側流路82の連通箇所を囲んで設けられるシール部材を配置する場合には、下側軸受支持部54をケーシング本体52におけるベースプレート56に設置することで、シール部材が下側軸受支持部54とベースプレート56とにより挟持される。よって、シール部材によって、第1下側流路81及び第2下側流路82の連通箇所を適切に密閉でき、連通箇所からのグリースの漏出を防止できる。
【0053】
また、下側軸受支持部54には環状流路82bが形成されている。
スクロールケーシング51をケーシング本体52から離脱させた状態では、上側軸受支持部53の設置位置や姿勢は、外部から確認できる。また、上側軸受支持部53とケーシング本体52(モータケーシング55)との間の位置合わせのための位置決め部材が用いられる場合もある。そのため、第1上側流路71と第2上側流路72とを互いに連通させることは容易である。一方、下側軸受支持部54は、ケーシング本体52内に配置されるため、外部からその姿勢を確認することが難しい。
本実施形態では、環状流路82bが形成されることで、下側軸受支持部54が上記回転軸線周りで回転しどのような向きになったとしても、第1下側流路81と第2下側流路82との連通を確保できる。よって、第1下側流路81と第2下側流路82とを互いに連通させるための手間を削減することができる。
【0054】
また、上側軸受支持部53にはグリース受け皿57が設けられ、下側軸受支持部54には空間54aが形成されている。
グリース受け皿57及び空間54aは、いずれも排グリースが貯留される貯留部として用いられる。そのため、排グリースによってケーシング5の内部が汚濁されることを防止できる。また、グリース受け皿57は上側軸受支持部53に設けられ、空間54aは下側軸受支持部54の内部に形成されていることから、ターボブロアS1のメンテナンス時にモジュール部9をケーシング本体52から離脱させて、グリース受け皿57及び空間54aに貯留された排グリースを除去・清掃することができる。
【0055】
したがって、本実施形態によれば、ターボブロアS1の組立作業において、ケーシング5内での、グリースを供給するための供給管の配設、引き回し及び接続といった作業が不要となる。そのため、本実施形態によれば、ターボブロアS1の製造時又はメンテナンス時における組立の手間を削減できるという効果がある。
【0056】
〔第2実施形態〕
図7は、本実施形態におけるターボブロアS2の概略構成を示す断面図である。なお、図7において、図1に示す第1の実施形態と同一の要素については同一の符号を付し、その説明を省略する。
【0057】
ターボブロアS2におけるケーシング5には、上側軸受41に対してグリースを供給するための上側グリース流路7が形成されている。一方、下側軸受42に対してグリースを供給するためのグリース流路は形成されていない。下側軸受42に対しては、ターボブロアS2の製造時にグリースを供給するのみであって、ターボブロアS2の使用中はグリースの供給を行わない構成となっている。
なお、本実施形態におけるグリース供給装置6Aに設けられるシリンジ61は、1つのみである。
【0058】
モータ2の動作を原因として生じる熱は、上側軸受41及び下側軸受42のいずれに対しても伝わる。一方、インペラ1における気体の流動の損失によって生じる熱は、インペラ1の近傍に設けられる上側軸受41には伝わるが、回転軸3のインペラ1と逆側の端部に設けられる下側軸受42には積極的に伝わることがない。よって、上側軸受41に比べ、の温度は低くなる。
このように温度が異なることで、上側軸受41よりも、下側軸受42に供給されるグリースの消費は抑えられ、ターボブロアS2の運転状況(例えば回転軸3の回転数)によっては、最初にグリースを供給するのみで、使用中の下側軸受42に対するグリース供給が不要となる場合がある。
【0059】
本実施形態によれば、上述した知見に基づき使用中における下側軸受42に対するグリース供給を不要とすることで、下側軸受42にグリースを供給するためのグリース流路やグリース供給装置を省略でき、ターボブロアS2のコストを削減できるという効果がある。
【0060】
以上、添付図面を参照しながら本発明に係る好適な実施形態について説明したが、本発明は係る例に限定されないことは言うまでもない。上述した例において示した各構成部材の諸形状や組み合わせ等は一例であって、本発明の主旨から逸脱しない範囲において設計要求等に基づき種々変更可能である。
【符号の説明】
【0061】
1…インペラ、2…モータ(駆動装置)、3…回転軸、4…軸受、41…上側軸受(軸受)、42…下側軸受(軸受)、5…ケーシング、52…ケーシング本体、53…上側軸受支持部(軸受支持部)、54…下側軸受支持部(軸受支持部)、54a…空間(グリース貯留部)、57…グリース受け皿(グリース貯留部)、7…上側グリース流路(グリース流路)、71…第1上側流路(第1流路)、72…第2上側流路(第2流路)、8…下側グリース流路(グリース流路)、81…第1下側流路(第1流路)、82…第2下側流路(第2流路)、82b…環状流路、S1,S2…ターボブロア


【特許請求の範囲】
【請求項1】
回転することで気体を流動させるインペラと、前記インペラを回転駆動させる駆動装置と、前記駆動装置の回転駆動力を前記インペラに伝達する回転軸と、前記回転軸を回転自在に支持する軸受と、少なくとも前記駆動装置及び前記回転軸を収容するケーシングと、を備えるターボ機械であって、
前記ケーシングには、前記軸受を潤滑するグリースを前記軸受に供給するためのグリース流路が形成されていることを特徴とするターボ機械。
【請求項2】
請求項1に記載のターボ機械において、
前記ケーシングは、少なくとも前記駆動装置及び前記回転軸を収容するケーシング本体と、前記ケーシング本体に着脱自在に設置されるとともに前記軸受を支持する軸受支持部と、を具備し、
前記ケーシング本体には、前記グリース流路の一部を成す第1流路が形成され、
前記軸受支持部には、前記グリース流路の一部を成すとともに前記第1流路に連通する第2流路が形成されていることを特徴とするターボ機械。
【請求項3】
請求項2に記載のターボ機械において、
前記第1流路と前記第2流路とが連通する向きは、前記軸受支持部の着脱方向と同一であることを特徴とするターボ機械。
【請求項4】
請求項2又は3に記載のターボ機械において、
前記軸受支持部には、前記回転軸の回転軸線周りに環状に配される環状流路が形成されており、
前記環状流路は、前記第2流路の一部を成し、前記第1流路に連通して配されていることを特徴とするターボ機械。
【請求項5】
請求項2から4のいずれか一項に記載のターボ機械において、
前記軸受支持部に設けられるとともに、前記軸受から排出された前記グリースが貯留されるグリース貯留部を備えることを特徴とするターボ機械。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2012−2147(P2012−2147A)
【公開日】平成24年1月5日(2012.1.5)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−138358(P2010−138358)
【出願日】平成22年6月17日(2010.6.17)
【出願人】(000000099)株式会社IHI (5,014)
【Fターム(参考)】