説明

ダイアフラムポンプ

【課題】簡易な構成のダイアフラムポンプを提供する。
【解決手段】ハウジングプレート18に形成された凹部20に対向して、ダイアフラム32を配置し、これらによりポンプ室12を形成する。ダイアフラム32には、おもり44を固定する。また、ポンプ室12には、逆止弁を備えた吸込流路14と、吐出流路16が接続されている。ハウジングプレート18を内燃機関などの振動する振動体に取り付け、ダイアフラムポンプ10を振動させる。おもり44は慣性により、その位置に留まろうとして、ハウジングプレート18に対して相対的に変位し、ポンプ室12の容積が増減する。これにより、取扱い流体が吸込流路14より吸い込まれ、吐出流路16より吐出される。ダイアフラムの駆動のために電力等を供給する必要がなく、また駆動機構の構成も簡易となる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイアフラムポンプに関し、特にダイアフラムの駆動に関する。
【背景技術】
【0002】
容積型ポンプの一種としてダイアフラムポンプが知られている。このダイアフラムポンプは、ハウジングと共にポンプ室を形成するダイアフラムを変形させてポンプ室の容積を増減してポンプ作用を生じさせるものである。ダイアフラムを変形させるための駆動手段として、プラント設備などで用いられるものにおいては、電動機、ソレノイドなどの電磁気力を駆動源として運転している。また、流量が数μL/分程度のマイクロポンプなどでは、例えば下記特許文献1のように、ダイアフラムに圧電素子を貼着し、圧電素子に電圧を印加して変形させる例がある。
【0003】
【特許文献1】特開2003−320020号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
従来のダイアフラムポンプにおいては、ダイアフラムを駆動するための電力などのエネルギを外部より供給する必要があり、また、電気配線や機械的な動力伝達系などの構成が必要である。このため、構造が複雑で、大きな外形となるという問題があった。
【0005】
本発明は、ダイアフラムポンプの構造を簡易なものとする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のダイアフラムポンプは、ハウジングと共にポンプ室を形成するダイアフラムにおもりを固定し、ハウジングとおもりを相対的に振動させることでダイアフラムを変位させて、ポンプ室の容積を増減させて取扱い流体の吸込み、吐出を行う。
【0007】
ハウジングは、振動する物体、好ましくは振動する機械、より好ましくは内燃機関に取り付ける。ハウジングは、振動する物体である振動体の振動を受けて振動する一方、おもりはそれ自身の慣性のために、その位置に留まろうとする。これにより、ハウジングとおもりは相対的に振動して、ダイアフラムが変位し、ポンプ室の容積が増減する。ポンプ室の容積の増減に伴い、逆止機能を有する吸込弁および吐出弁の機能により、取扱い流体が吸込み、吐出される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0008】
以下、本発明の実施形態を、図面に従って説明する。図1は、ダイアフラムポンプ10の概略構成を示す、図2に示すA−A線断面図である。図2は、ダイアフラムポンプ10のポンプ室12、吸込流路14および吐出流路16の概略構成を示す図である。
【0009】
ハウジングプレート18は、基板にポンプ室12となる凹部20と、それぞれ吸込流路14および吐出流路16となる溝22,24が形成されている。凹部20は略円形であり、個々に溝22,24が接続している。溝22,24の途中には、それぞれ堰26,28が形成されており、後述する弁体と協働して、逆止弁を構成する。
【0010】
ハウジングプレート18の上、図1中においては右側に位置するダイアフラムプレート30には、ダイアフラム32、弁体34,36が形成されている。ダイアフラム32は、前述のハウジングプレート18に形成された凹部20に対向して設けられる薄膜部分であり、この凹部20と共にポンプ室12を形成している。よって、ハウジングプレート18の凹部20を構成している部分がダイアフラムポンプのハウジングとして機能する。
【0011】
また、吸込流路14側に形成された弁体34は、図1において下側、図2においては右側が固定され、他端は自由端となっている。この自由端は、堰26に当接する位置まで延びており、ここに当接した状態では、吸込流路14が塞がれた状態となる。弁体34は、取扱い流体の流れがポンプ室12に向かうとき、図1に鎖線で示すように撓んで、吸込流路14を通した状態とすることができる。このように弁体34と堰26は、協働して逆止弁である吸込弁として機能する。また、吐出流路16側に形成された弁体36も、堰28と協働して逆止弁である吐出弁として機能する。ただし、こちらはポンプ室12から取扱い流体が流れ出す向きのとき、これを許容する逆止弁となる。
【0012】
ダイアフラムプレート30の上には、さらにカバープレート38が覆っており、弁体34,36が動けるように設けられる弁室40,42を覆っている。さらに、ダイアフラム32にはおもり44が貼着するなどして固定されている。
【0013】
ダイアフラムポンプ10は、振動する物体である振動体、好ましくは振動する機械、より好ましくは内燃機関にハウジングプレート18を固定して、取り付けられる。振動体の振動によりダイヤフラムポンプ10も振動するが、おもり44は、それ自身の慣性のために、その位置に留まり続けようとして、ハウジングプレート18などと相対的に振動する。この振動によりダイアフラム32が例えば図1に鎖線で示すように変位し、ポンプ室12の容積が変化する。ポンプ室12の容積が増加するときには、ポンプ室12内の圧力が減少し、吸込弁の弁体34が反って流路を開放し、吸込流路14から取扱い流体がポンプ室12に流れ込む。このとき、吐出弁の弁体36には、堰28に当接する方向に圧力が作用するため、吐出流路16が閉止される。逆に、ポンプ室12の容積が減少するときは、吸込弁が閉じ、吐出弁が開いて、取扱い流体が吐出流路16より吐出される。
【0014】
ダイアフラムポンプ10は、ダイアフラム32の直径が10mm以下、ダイアフラムの変位量(ストローク長)が両振幅で20μm程度のマイクロポンプとして構成することが好ましい。ダイアフラム32に必要な変位が、両振幅で数十μmであるときに、振動体の取り付けられる部分の変位が、数十〜数百μmであれば、十分ポンプとして機能する。逆に、ダイアフラムの必要変位量が、振動体の振動の数倍あるとダイアフラムは振動するだけで、十分な変位が得られず、ポンプとしての動作ができない。例えば、小形回転機器の振動許容値が、100〜200μm程度であれば、ポンプのダイアフラムの変位量は、10〜20μm程度が好適である。
【0015】
このような、マイクロダイアフラムポンプは、シリコン基板等にエッチング処理を施して所望の凹部、溝等を形成する公知の技術により製作することができる。この他にも、繊維入りの合成ゴムを用いてダイアフラムを構成することもできる。
【0016】
本実施形態のダイアフラムポンプは、例えば内燃機関に取り付けて、潤滑油の微量注入、燃料への水の微量注入などを行うポンプとして利用することができる。また、一般機械の自動注油ポンプとしても利用できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】本実施形態のダイアフラムポンプ10の断面図である。
【図2】ダイアフラムポンプ10の特にハウジングプレート18の形状を示す図である。
【符号の説明】
【0018】
10 ダイアフラムポンプ、12 ポンプ室、14 吸込流路、16 吐出流路、18 ハウジングプレート、30 ダイアフラムプレート、32 ダイアフラム、34,36 弁体、44 おもり。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ハウジングと、
ハウジングと共にポンプ室を形成するダイアフラムと、
ポンプ室に接続される逆止弁である吸込弁および吐出弁と、
ダイアフラムに固定され、ハウジングと相対的に振動してダイヤフラムを変位させてポンプ室の容積を増減させるおもりと、
を有するダイアフラムポンプ。
【請求項2】
振動する機械に取り付けられるダイアフラムポンプであって、
ハウジングと、
ハウジングと共にポンプ室を形成するダイアフラムと、
ポンプ室に接続される逆止弁である吸込弁および吐出弁と、
ダイアフラムに固定され、前記機械の振動によりハウジングと相対的に振動してダイヤフラムを変位させてポンプ室の容積を増減させるおもりと、
を有するダイアフラムポンプ。
【請求項3】
ハウジングとダイアフラムによってポンプ室が形成され、ポンプ室に接続される逆止弁である吸込弁および吐出弁を有するダイアフラムポンプのダイアフラムを駆動する方法であって、
ダイアフラムにおもりを固定するステップと、
ハウジングを振動体に取り付けるステップと、
振動体を振動させて、おもりとハウジングを相対的に振動させ、ダイアフラムを変位させてポンプ室の容積を増減させるおもりと、
を有するダイアフラムの駆動方法。

【図1】
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【図2】
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