説明

ダイシング−ダイボンディングテープ及び粘接着剤層付き半導体チップの製造方法

【課題】粘接着剤層を精度よくダイシングでき、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができるダイシング−ダイボンディングテープを提供する。
【解決手段】ダイシング−ダイボンディングテープ1は、粘接着剤層3と、粘接着剤層3の一方の面3aに積層されている基材層4とを備える。ダイシング時に、基材層4の外周部分にダイシングリング26が貼り付けられる。基材層4は外周部分に貼付起点4Cを有する。貼付起点4Cを除く部分における基材層4のダイシングリング26に貼り付けられる部分の幅をW(mm)とし、貼付起点4Cを除く部分における基材層4の外径をD(mm)としたときに、基材層4の貼付起点4C側の外周先端から内側に向かって0.3W(mm)の距離の位置における貼付起点4Cの長さL(mm)は、0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、粘接着剤層付き半導体チップを得るために用いられ、該粘接着剤層付き半導体チップをダイボンディングするために用いられるダイシング−ダイボンディングテープ、並びに該ダイシング−ダイボンディングテープを用いた粘接着剤層付き半導体チップの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体ウェーハから半導体チップを切り出す際には、先ダイシング法と呼ばれているダイシング法が用いられている。先ダイシング法の一例は、例えば、下記の特許文献1に開示されている。
【0003】
先ダイシング法では、先ず、半導体ウェーハの表面に切り込みを形成する。次に、切り込みが形成された半導体ウェーハの表面に、保護シートを貼り付ける。その後、半導体ウェーハの裏面を切り込み部分まで研削して、半導体ウェーハの厚みを薄くし、個々の半導体チップに分割する。個々の半導体チップに分割された分割後半導体ウェーハの表面には、保護シートが貼り付けられている。
【0004】
また、上記先ダイシング法により得られた個々の半導体チップを基板上に容易に実装するために、半導体チップの裏面にダイボンディング層が貼り付けられることが多い。このダイボンディング層付き半導体チップを得るために、ダイボンディング層とダイシング層とを備えるダイシング−ダイボンディングテープが用いられている。
【0005】
ダイシング−ダイボンディングテープの一例として、下記の特許文献2には、剥離シート上にダイボンディング層が積層されており、該ダイボンディング層を被覆するように、剥離シート及びダイボンディング層上にダイシング層が積層されているダイシング−ダイボンディングテープが開示されている。ダイボンディング層は、ダイシング後に半導体チップとともに取り出され、半導体チップのダイボンディングに用いられる層である。ダイシング層を剥離シートから容易に剥離するために、ダイシング層の外周縁には、突出部が設けられている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2006−245467号公報
【特許文献2】特開2005−116790号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載のダイシング−ダイボンディングテープを用いてダイボンディング層付き半導体チップを得る際には、ダイシング層の突出部を剥離起点として、ダイボンディング層とダイシング層とを剥離シートから剥離して、ダイボンディング層とダイシング層の外周部分とを露出させる。次に、露出したダイボンディング層を分割後半導体ウェーハに貼り付けて、かつ露出したダイシング層の外周部分をダイシングリングに貼り付ける。次に、分割後半導体ウェーハの表面に貼り付けられている保護シートを剥離する。その後、分割後半導体ウェーハの切断部分に沿って、ダイボンディング層をダイシングする。ダイシングの後に、ダイボンディング層付き半導体チップを、ダイシング層から剥離して、取り出す。取り出されたダイボンディング層付き半導体チップは、ダイボンディング層側から基板上に実装される。
【0008】
特許文献1に記載のダイシング−ダイボンディングテープでは、該テープが局所的に変形した状態でダイシングリングに貼り付けられることがある。
【0009】
その場合、ダイシング層をダイシングリングに貼り付けた後に、ダイシング層には、通常、貼り付け時の引張応力を緩和する収縮力が作用し、ダイシング層の収縮力が部分的に異なることがある。このため、分割後半導体ウェーハの切断部分であるダイシングラインが湾曲する(カーフシフトと呼ばれる現象)ことがある。特に、保護シートを加熱して剥離する場合に、加熱によりダイシング層の貼り付け時の引張応力が緩和しやすく、ダイシングラインが湾曲しやすい。従って、ダイボンディング層を精度良くダイシングすることができなかったり、チップ間が均等に広がらず、ダイボディング層付き半導体チップのピックアップ性が低かったりすることがある。
【0010】
本発明の目的は、粘接着剤層付き半導体チップを得る際に、ダイシングリングへの貼り付けの時に部分的な変形を抑えられ、ダイシングの精度を高めることができ、また、チップ間が均等に広がることで粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができるダイシング−ダイボンディングテープ、並びに該ダイシング−ダイボディングテープを用いた半導体チップの製造方法を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明の広い局面によれば、粘接着剤層と、該粘接着剤層の一方の面に積層されている基材層とを備え、ダイシング時に、上記基材層の外周部分にダイシングリングが貼り付けられ、上記基材層が外周部分に、貼り付け開始時にダイシングリングに貼り付けられる貼付起点を有し、上記貼付起点を除く部分における上記基材層の上記ダイシングリングに貼り付けられる部分の幅をW(mm)とし、上記貼付起点を除く部分における上記基材層の外径をD(mm)としたときに、上記基材層の上記貼付起点側の外周先端から内側に向かって0.3W(mm)の距離の位置における上記貼付起点の長さL(mm)が、0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である、ダイシング−ダイボンディングテープが提供される。
【0012】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープのある特定の局面では、上記基材層の上記貼付起点側の外周先端の曲率は、上記基材層の上記貼付起点を除く部分の外周端の曲率よりも大きい。
【0013】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープの他の特定の局面では、上記基材層は、上記貼付起点側の外周端に凸部を有し、上記基材層の上記貼付起点側の外周先端は、上記凸部の頂点である。
【0014】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープのさらに他の特定の局面では、上記基材層は、上記貼付起点側の外周端に複数の凸部を有し、該複数の凸部が曲線で連なっている。
【0015】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの製造方法は、本発明に従って構成されたダイシング−ダイボンディングテープと、保護シート及び該保護シートの一方の面に積層されており、かつ個々の半導体チップに分割されている分割後半導体ウェーハを有する積層体とを用いて、上記ダイシング−ダイボンディングテープの上記粘接着剤層を、上記積層体の上記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、上記基材層の上記貼付起点を円環状のダイシングリングに貼り付けて、次に上記貼付起点を除く上記基材層の外周部分を上記ダイシングリングに貼り付ける工程と、上記保護シートを上記分割後半導体ウェーハから剥離する工程と、上記粘接着剤層を、上記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿ってダイシングする工程と、ダイシングの後に、上記半導体チップが貼り付けられた上記粘接着剤層を上記基材層から剥離し、半導体チップを上記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える。なお、上記ダイシング−ダイボンディングテープの上記粘接着剤層を、上記積層体の上記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、上記基材層の上記貼付起点を円環状のダイシングリングに貼り付けて、次に上記貼付起点を除く上記基材層の外周部分を上記ダイシングリングに貼り付ける工程とは同時に行われてもよい。
【0016】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの製造方法のある特定の局面では、半導体ウェーハの表面に、該半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割するための切り込みを形成する工程と、切り込みが形成された上記半導体ウェーハの表面に保護シートを貼り付ける工程と、上記保護シートが貼り付けられた上記半導体ウェーハの裏面を研削し、上記半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割し、上記積層体を得る工程がさらに備えられる。
【0017】
本発明に係る粘接着剤層付き半導体チップの他の製造方法は、本発明に従って構成されたダイシング−ダイボンディングテープと、半導体ウェーハとを用いて、上記ダイシング−ダイボンディングテープの上記粘接着剤層を、上記半導体ウェーハに貼り付ける工程と、上記基材層の上記貼付起点を円環状のダイシングリングに貼り付けて、次に上記貼付起点を除く上記基材層の外周部分を上記ダイシングリングに貼り付ける工程と、上記半導体ウェーハと上記粘接着剤層とをダイシングする工程と、ダイシングの後に、上記半導体チップが貼り付けられた上記粘接着剤層を上記基材層から剥離し、半導体チップを上記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える。なお、上記積層体の上記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、上記基材層の上記貼付起点を円環状のダイシングリングに貼り付けて、次に上記貼付起点を除く上記基材層の外周部分を上記ダイシングリングに貼り付ける工程とは同時に行われてもよい。
【発明の効果】
【0018】
本発明に係るダイシング−ダイボンディングテープは、貼付起点を除く部分における基材層のダイシングリングに貼り付けられる部分の幅をW(mm)とし、貼付起点を除く部分における基材層の外径をD(mm)としたときに、基材層の貼付起点側の外周先端から内側に向かって0.3W(mm)の距離の位置における貼付起点の長さL(mm)が、0.30D〜0.44D(mm)の範囲内であるので、基材層の貼付起点を円環状のダイシングリングに貼り付けて、次に貼付起点を除く基材層の外周部分をダイシングリングに貼り付けることにより、ダイシング−ダイボンディングテープをダイシングリングに局所的な変形を抑制して、貼り付けることができる。このため、ダイシング後のダイシングラインが湾曲し難い。従って、粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができる。
【0019】
さらに、保護シートと分割後半導体ウェーハとの積層体を用いて、粘接着剤層付き半導体チップを得る場合には、ダイシング−ダイボンディングテープの粘接着剤層を積層体の分割後半導体ウェーハに貼り付けて、保護シートを分割後半導体ウェーハから剥離したとしても、分割後半導体ウェーハの切断部分であるダイシングラインが湾曲し難い。このため、粘接着剤層を精度よくダイシングでき、ピックアップ性を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを模式的に示す部分切欠平面図及び部分切欠正面断面図である。
【図2】図2は、図1に示すダイシング−ダイボンディングテープの基材層のみを拡大して模式的に示す部分切欠平面図である。
【図3】図3は、ダイシング−ダイボンディングテープの基材層の変形例を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図4】図4は、ダイシング−ダイボンディングテープの基材層の他の変形例を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図5】図5(a)〜(d)は、粘接着剤層付き半導体チップを製造する際に用いられる積層体を得る各工程の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図6】図6(a)〜(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを用いて、粘接着剤層付き半導体チップを製造する方法の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図7】図7(a)〜(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを用いて、粘接着剤層付き半導体チップを製造する方法の一例を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図8】図8(a)は、ダイシング−ダイボンディングテープをダイシングリングに貼り付けるときの状態を示す正面断面図であり、図8(b)は、ダイシング−ダイボンディングテープをダイシングリングに貼り付けた後の状態を示す平面図である。
【図9】図9(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを用いて、粘接着剤層付き半導体チップを製造する他の方法を説明するための部分切欠正面断面図である。
【図10】図10は、比較例1の基材層の形状を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図11】図11は、比較例2の基材層の形状を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図12】図12は、比較例3の基材層の形状を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図13】図13は、比較例4の基材層の形状を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図14】図14は、比較例5の基材層の形状を模式的に示す部分切欠平面図である。
【図15】図15は、図1に示すダイシング−ダイボンディングテープの変形例を模式的に示す部分切欠平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、図面を参照しつつ、本発明の具体的な実施形態及び実施例を説明することにより、本発明を明らかにする。
【0022】
(ダイシング−ダイボンディングテープ)
図1(a)及び(b)は、本発明の一実施形態に係るダイシング−ダイボンディングテープを模式的に示す図である。図1(a)は部分切欠平面図であり、図1(b)は図1(a)中のI−I線に沿う部分切欠正面断面図である。なお、図1及び後述の図では、図示の便宜上、寸法及び大きさは、実際の寸法及び大きさから適宜変更している。
【0023】
図1(a)及び(b)に示すように、ダイシング−ダイボンディングテープ1は、長尺状の離型層2を有する。離型層2の上面2aに、粘接着剤層3と、基材層4と、ダイシング層5とがこの順に積層されている。粘接着剤層3の一方の面3a(第1の面)に、基材層4が積層されている。粘接着剤層3の他方の面3b(第2の面)に離型層2が積層されている。
【0024】
長尺状の離型層2の上面2aに、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5を有する複数の積層物が等間隔に配置されている。該積層物の側方において、離型層2の上面2aに保護シートが設けられていてもよい。
【0025】
離型層2は、例えば、離型フィルムである。離型層2は、粘接着剤層3の半導体ウェーハが貼り付けられる他方の面3bを保護するために用いられる。なお、離型層2は、必ずしも用いられていなくてもよい。
【0026】
離型層2を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリイミド樹脂などのプラスチック樹脂等が挙げられる。
【0027】
離型層2の表面は離型処理されていてもよい。離型層は単層であってもよく、複数層であってもよい。離型層が複数層である場合には、各層は異なる樹脂により形成されていてもよい。
【0028】
離型層2の取扱い性又は剥離性をより一層高める観点からは、離型層2の厚みは、10〜100μmの範囲内であることが好ましい。
【0029】
粘接着剤層3は、半導体チップのダイボンディングに用いられる層である。粘接着剤層3は、半導体チップを基板又は他の半導体チップ等に接合するために用いられる。
【0030】
粘接着剤層3は、例えば適宜の硬化性樹脂などの硬化性化合物を含む硬化性樹脂組成物、又は熱可塑性樹脂等により形成される。硬化前の上記硬化性樹脂組成物は柔らかいので、外力により容易に変形する。粘接着剤層3付き半導体チップを得た後に、得られた粘接着剤層3付き半導体チップを粘接着剤層3側から基板等の被着体に積層する。その後、熱又は光のエネルギーを与えて、粘接着剤層3を硬化させることにより、粘接着剤層3を介して、被着体に半導体チップを強固に接合させることができる。
【0031】
上記硬化性樹脂組成物を硬化させるために、硬化剤が用いられる。該硬化剤としては、例えば、トリアルキルテトラヒドロ無水フタル酸等の加熱硬化型酸無水物系硬化剤、フェノール系硬化剤、アミン系硬化剤もしくはジシアンジアミド等の潜在性硬化剤、及びカチオン系触媒型硬化剤等が挙げられる。硬化速度又は硬化物の物性等を調整するために、上記硬化剤と硬化促進剤とを併用してもよい。
【0032】
粘接着剤層3の厚みは特に限定されない。粘接着剤層3の厚みは、1〜100μmの範囲内であることが好ましい。粘接着剤層3の厚みのより好ましい下限は3μm、より好ましい上限は60μmである。粘接着剤層3の厚みが上記範囲内にあると、半導体チップの貼り付けが容易であり、更に半導体装置の薄型化に対応できる。
【0033】
基材層4は、非粘着性を有する非粘着部4Aを有する。非粘着部4Aは、基材層4の中央の領域に設けられている。非粘着部4Aは、粘接着剤層3の半導体ウェーハが貼り付けられる位置に対応する部分に設けられている。非粘着部4Aの平面形状は、円形である。平面視において、基材層4は粘接着剤層3よりも大きく、非粘着部4Aは粘接着剤層3よりも大きい。従って、非粘着部4Aは、粘接着剤層3の外周側面3cよりも側方に張り出している領域を有する。このため、粘接着剤層3に半導体ウェーハを貼り付ける際に、粘接着剤層3の非粘着部4Aが貼り付けられている部分に、半導体ウェーハを正確に位置合わせすることができる。貼り付けの後には、半導体ウェーハが貼り付けられた粘接着剤層3の一方の面3a上に非粘着部4Aを確実に配置できる。このため、ダイシングの後に、粘接着剤層3付き半導体チップを、基材層4の非粘着部4Aから容易に剥離できる。このため、生産ロスを低減でき、歩止まりを向上できる。
【0034】
なお、「非粘着性」とは、表面が粘着性を有さないだけでなく、表面を指で触ったときにくっつかない程度の粘着性を有する場合も含まれることとする。具体的には、「非粘着」とは、基材層4の非粘着部4Aをステンレス板に貼り付けて、基材層4を300mm/分の剥離速度で剥離したときに、粘着力が0.05N/25mm幅以下であることを意味する。
【0035】
基材層4は、非粘着部4Aの外側部分の領域に、粘着性を有する粘着部4Bを有する。粘着部4Bは環状である。基材層4は粘接着剤層3を被覆しており、基材層4の粘着部4Bが離型層2の上面2aに貼り付けられている。粘接着剤層3の一方の面3aの全体に、基材層4の非粘着部4Aが積層されている。粘接着剤層3の一方の面3aに粘着部4Bは積層されていない。ダイシング時に、基材層4の粘着部4Bにダイシングリングが貼り付けられる。
【0036】
図2に、ダイシング−ダイボンディングテープ1の基材層4のみを拡大して平面図で示す。
【0037】
図2に示すように、基材層4は外周部分に、貼り付け開始時にダイシングリングに貼り付けられる貼付起点4Cを有する。貼付起点4Cは貼付開始部分である。粘接着剤層付き半導体チップを得る際には、貼付起点4Cから基材層4の外周部分をダイシングリングに貼り付ける。基材層4のダイシングリングに貼り付けられる部分は、粘着性を有する粘着部4Bである。
【0038】
基材層4の平面形状は略円形であり、貼付起点4C部分を除く基材層4の平面形状は円形の一部である。図2では、基材層4全体の平面形状が円形であるとした場合の仮想線を一点鎖線で示した。
【0039】
貼付起点4Cを除く基材層4のダイシングリングに貼り付けられる部分の幅をW(mm)とし、貼付起点4Cを除く部分における基材層4の外径(直径)をD(mm)とする。本実施形態では、基材層4の貼付起点4C側の外周先端から内側に向かって0.3W(mm)の距離の位置における貼付起点4Cの長さL(mm)は、0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である。長さLが0.30Dを下回ると、貼り付け時に局所的な変形が発生する可能性が高まる。また、長さLが0.44Dを上回ると、ダイシングリングからはみ出す可能性が高くなり、はみ出てしまった場合、次工程への搬送中に他のダイシングリングに貼り付いたり、加工装置内で周辺部に貼り付いたりするなどのトラブルの原因になることがある。さらに、貼付起点の長さが短すぎると、貼り付け開始時に、貼付起点に応力が集中しやすくなる。貼付起点の長さを長くすることにより、貼り付け開始時の応力を、貼付起点の長さ方向に分散させることができる。このため、先ダイシングされた分割後半導体ウェーハにおける複数の半導体チップの位置ずれを防ぐことができる。
【0040】
貼付起点4Cの先端が、基材層4全体の平面形状が円形であるとした場合の仮想線(図2の一点鎖線)の貼付方向における先端から貼付方向に突出した長さを突出長さZ(mm)とする。後述の実施形態でも、同様に突出した長さを突出長さZ(mm)とする。突出長さZ(mm)は0.20Wよりも小さいことが好ましく、突出度合いは小さいことが好ましい。突出量が大きくなるとダイシングリングに貼り付ける時にダイシングリングに貼り付けられる部分の幅が不均一になったり、ダイシングリングからはみ出したりすることがある。「貼付方向」とは、貼付開始時にダイシングリングに貼り付けられる貼付起点が設けられた基材層の一端と、該一端とは反対側の他端とを結ぶ方向である。
【0041】
幅Wは、基材層4をダイシングリングに貼り付けたときに、貼付起点4Cを除く部分における、ダイシングリングの内周端から基材層4の外周端までの距離である。
【0042】
貼付起点4C部分を除く基材層4の平面形状は円形の一部であり、外径Dは、円形部分における基材層4の外径(直径)を示す。
【0043】
貼付起点4Cは、幅方向と該幅方向よりも長い長さ方向とを有する。長さLは、基材層4の貼付起点4C側の外周先端から内側に向かって、すなわち貼付方向に内側に向かって、0.3Wの距離の位置における貼付起点4Cの長さ方向寸法を示す。長さLは、基材層4の貼付起点4C側の外周先端から、基材層4の貼付起点4C側とは反対側に向かって0.3Wの距離の位置における貼付起点4Cの長さ方向寸法を示す。
【0044】
基材層4は、貼付起点4C側の外周端に3つの凸部4a〜4cを有する。凸部4aと凸部4cとの間に、凸部4bが位置している。凸部4aの頂点をB1、凸部4bの頂点をA1、凸部4cの頂点をB2として図2に示した。A1は、基材層4の貼付起点4C側の外周先端である。
【0045】
基材層4では、B1とA1とは直線で連なっており、A1とB2とは直線で連なっている。B1、A1及びB2を結ぶ3つの直線により囲まれた部分の平面形状は、B1とA1とを結ぶ直線及びA1とB2とを結ぶ直線の長さが等しい二等辺三角形である。B1とB2とを結ぶ直線と、該直線にA1から下ろした垂線との交差点を、A11として図2に示した。
【0046】
B1と基材層4の円形部分、及びB2と基材層4の円形部分とは直線で連なっている。B1と基材層4の円形部分との接点をC1、B2と基材層4の円形部分のとの接点をC2として図2に示した。B1とC1とを結ぶ直線は、基材層4の円形部分のC1における接線である。B2とC2とを結ぶ直線は、基材層4の円形部分のC2における接線である。
【0047】
基材層4の非粘着部4Aと粘着部4Bとは一体的に形成されている。非粘着部4Aと粘着部4Bとは、同じ材料により形成されており、異なる材料により形成されてはいない。
【0048】
基材層4は、例えば、活性エネルギー線硬化型又は熱硬化型の粘着性を有する組成物を用いて形成できる。活性エネルギー線硬化型の組成物の場合には、組成物に対する活性エネルギー線の照射量を部分的に調整することにより、基材層4の粘着性を部分的に異ならせることができる。基材層4が非粘着性を有するようにするためには、活性エネルギー線の照射量を多くすればよい。基材層4が粘着性を有するようにするためには、活性エネルギー線を照射しなかったり、活性エネルギー線の照射量を少なくしたりすればよい。
【0049】
基材層4は、アクリル系ポリマーを含む組成物により形成されていることが好ましい。基材層4は、アクリル系ポリマーを含む組成物を架橋させた架橋体により形成されていることが好ましい。この場合には、ダイシングの際の切削性をより一層高くすることができる。また、基材層4の極性、貯蔵弾性率又は破断伸度を容易に制御及び設計できる。
【0050】
上記アクリル系ポリマーは特に限定されない。上記アクリル系ポリマーは、(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーであることが好ましい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーとして、炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーが好適に用いられる。炭素数1〜18のアルキル基を有する(メタ)アクリル酸アルキルエステルポリマーの使用により、基材層4の極性を充分に低くすることができ、基材層4の表面エネルギーを低くすることができ、かつ粘接着剤層3の基材層4からの剥離性を高くすることができる。
【0051】
上記組成物は、活性エネルギー線反応開始剤及び熱反応開始剤の内の少なくとも一方を含むことが好ましく、活性エネルギー線反応開始剤を含むことがより好ましい。活性エネルギー線反応開始剤は、光反応開始剤であることが好ましい。
【0052】
上記活性エネルギー線には、紫外線、電子線、α線、β線、γ線、X線、赤外線及び可視光線が含まれる。これらの活性エネルギー線のなかでも、硬化性に優れ、かつ硬化物が劣化し難いため、紫外線又は電子線が好ましい。
【0053】
上記光反応開始剤として、例えば、光ラジカル発生剤又は光カチオン発生剤等を使用できる。上記熱反応開始剤としては、熱ラジカル発生剤等が挙げられる。上記組成物には、粘着力を制御するためにイソシアネート系架橋剤を添加してもよい。
【0054】
基材層4の厚みは特に限定されない。基材層4の厚みは、1〜100μmの範囲内であることが好ましい。基材層4の厚みのより好ましい下限は5μm、より好ましい上限は60μmである。基材層4の厚みが上記好ましい下限を満たすと、エクスパンド性をより一層高めることができる。基材層4の厚みが上記好ましい上限を満たすと、厚みがより一層均一になり、ダイシングの精度をよく一層高めることができる。
【0055】
ダイシング層5は、例えば、ダイシングフィルムである。ダイシング層5を構成する材料としては、ポリエチレンテレフタレート樹脂等のポリエステル系樹脂、ポリテトラフルオロエチレン樹脂、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂、ポリメチルペンテン樹脂、ポリビニルアセテート樹脂等のポリオレフィン系樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、及びポリイミド樹脂などのプラスチック樹脂等が挙げられる。なかでも、エクスパンド性に優れており、環境負荷が小さいため、ポリオレフィン系樹脂が好適に用いられる。
【0056】
ダイシング層5の厚みは特に限定されない。ダイシング層5の厚みは、10〜200μmの範囲内であることが好ましい。ダイシング層5の厚みのより好ましい下限は60μm、より好ましい上限は150μmである。ダイシング層5の厚みが上記範囲内であると、離型層2の剥離性及びダイシング層5のエクスパンド性をより一層高くすることができる。
【0057】
本実施形態では、ダイシング層5の平面形状は、基材層4の平面形状と等しい。ダイシング層5の平面形状は、基材層4の平面形状と異なっていてもよい。ダイシング層5の大きさは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、基材層4の大きさよりも大きくてもよく、小さくてもよい。ダイシング層5の大きさは、基材層4の大きさよりも大きい方が好ましい。
【0058】
ダイシング−ダイボンディングテープ1では、ダイシング層5が用いられている。ダイシング層5が省略されて、基材層4がダイシング層を兼ねていてもよい。ダイシング−ダイボンディングテープ1では、基材層4の粘着部4Bにダイシングリングを貼り付けることができるため、ダイシング層5にダイシングリングを貼り付ける必要がない。このため、ダイシング層5を省略できる。ダイシング層5にはダイシングリングを貼り付ける必要がないので、ダイシング層5は粘着力を有していなくてもよい。従って、ダイシング層5を構成する材料及び組成をより広い範囲から選択できる。
【0059】
ダイシングの際に、半導体チップの飛び等をより一層効果的に防止できるので、基材層4の粘接着剤層3が貼り付けられた一方の面とは反対側の他方の面にダイシング層5が貼り付けられていることが好ましい。この場合には、基材層4にエクスパンド性等が大きく要求されないため、基材層4を構成する材料及び組成をより広い範囲から選択できる。
【0060】
図3及び図4に、基材層の変形例を示す。
【0061】
図3,4に示す基材層11,12は、貼付起点の形状が異なること以外は基材層4と同様に構成されている。基材層11,12は、非粘着部11A,12Aと、非粘着部11A,12Aの外周部分の領域に粘着部11B,12Bとを有する。基材層11,12のダイシングリングに貼り付けられる部分は、粘着性を有する粘着部11B,12Bである。
【0062】
基材層11,12の平面形状は略円形であり、貼付起点11C,12C部分を除く基材層11,12の平面形状は円形の一部である。図3,4では、基材層11,12全体の平面形状が円形であるとした場合の仮想線を一点鎖線で示した。基材層11,12の貼付起点11C,12Cを除く部分における基材層11,12のダイシングリングに貼り付けられる部分の幅W(mm)とし、貼付起点11C,12Cを除く部分における基材層11,12の外径をD(mm)とする。基材層11,12の貼付起点11C,12C側の外周先端から内側に向かって0.3W(mm)の距離の位置における貼付起点11C,12Cの長さL(mm)は、0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である。長さLが0.30Dを下回ると、貼り付け時に局所的な変形が発生する可能性が高まる。また、長さLが0.44Dを上回ると、ダイシングリングからはみ出す可能性が高くなり、はみ出てしまった場合、次工程への搬送中に他のダイシングリングに貼り付いたり、加工装置内で周辺部に貼り付いたりするなどのトラブルの原因になることがある。
【0063】
図3に示す基材層11は、貼付起点11C側の外周端に4つの凸部11a〜11dを有する。凸部11aと凸部11dとの間に凸部11bと凸部11cとが位置しており、凸部11bが凸部11a側に位置しており、凸部11cが凸部11d側に位置している。凸部11aの頂点をB1、凸部11bの頂点をA1、凸部11cの頂点をA2、凸部11dの頂点をB2として図3に示した。A1とA2とは、基材層11の貼付起点11C側の外周先端である。
【0064】
基材層11では、B1とA1とは直線で連なっており、A1とA2とは曲線で連なっており、A2とB2とは直線で連なっている。B1、A1、A2及びB2を結ぶ4つの直線により囲まれた部分の平面形状は、A1とA2とを結ぶ直線を上底、B1とB2とを結ぶ直線を下底とする等脚台形である。凸部11bと凸部11cとの間の凹部の最深部をA11として図3に示した。また、B1とB2とを結ぶ直線と、該直線にA1から下ろした垂線との交差点をA21とし、B1とB2とを結ぶ直線と、該直線にA2から下ろした垂線との交差点をA22として図3に示した。
【0065】
B1と基材層11の円形部分、及びB2と基材層11の円形部分とは直線で連なっている。B1と基材層11の円形部分との接点をC1、B2と基材層11の円形部分のとの接点をC2として図3に示した。B1とC1とを結ぶ直線及びB2とC2とを結ぶ直線はそれぞれ、基材層11の円形部分のC1,C2における接線である。
【0066】
図4に示す基材層12は、貼付起点12C側の外周端に4つの凸部12a〜12dを有する。凸部12aと凸部12dとの間に凸部12bと凸部12cとが位置しており、凸部12bが凸部12a側に位置しており、凸部12cが凸部12d側に位置している。凸部12aの頂点をA1、凸部12bの頂点をA2、凸部21cの頂点をA3、凸部21dの頂点をA4として図4に示した。A1とA2とA3とA4とはいずれも、基材層12の貼付起点12C側の外周先端である。
【0067】
基材層12では、A1とA2、A2とA3、A3とA4とはそれぞれ、曲線で連なっている。凸部12aと凸部12bとの間の凹部の最深部をA11、凸部12bと凸部12cとの間の凹部の最深部をA12、凸部12cと凸部12dとの間の凹部の最深部をA13として図4に示した。
【0068】
A1と基材層12の円形部分、及びA4と基材層12の円形部分とは連なっている。A1と基材層12の円形部分との接点をC1、A4と基材層12の円形部分との接点をC2として図4に示した。A1とC1とは、曲線と直線とで連なっており、A1側が曲線、C1側が直線である。A1から延びる曲線とC1から延びる直線との境界をB1として図4に示した。A4とC2とは曲線と直線とで連なっており、A4側が曲線、C2側が直線である。A4から延びる曲線とC2から延びる直線との境界をB2として図4に示した。C1から延びる直線及びC2から延びる直線はそれぞれ、基材層12の円形部分のC1,C2における接線である。
【0069】
B1とB2とを結ぶ直線と、該直線にA1から下ろした垂線との交差点をA21とし、B1とB2とを結ぶ直線と、該直線にA2から下ろした垂線との交差点をA22とし、B1とB2とを結ぶ直線と、該直線にA3から下ろした垂線との交差点をA23とし、B1とB2とを結ぶ直線と、該直線にA4から下ろした垂線との交差点をA24として図4に示した。
【0070】
凸部12a〜12dの先端は曲線である。基材層12の貼付起点12C側の外周先端のA1〜A4における曲率は、基材層12の貼付起点12Cを除く部分の外周端の曲率よりも大きい。
【0071】
図3及び図4に示すように、基材層の貼付起点側の外周先端から内側に向かって0.3W(mm)の距離の位置における貼付起点の長さL(mm)が0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である限り、基材層の貼付起点の平面形状は適宜変更できる。
【0072】
基材層12のように、基材層の貼付起点側の外周先端の曲率は、基材層の貼付起点を除く部分の外周端の曲率よりも大きいことが好ましい。この場合には、離型層2より剥がす時に、基材層の貼付起点側の外周先端が剥離起点となって、容易に剥離することが可能になり、粘接着剤層付き半導体チップを得る際に、粘接着剤層をより一層精度よくダイシングできる。
【0073】
基材層4の貼付起点4C側の外周先端は、凸部4bの頂点A1である。基材層11の貼付起点11C側の外周先端は、凸部11b,11cの頂点A1,A2である。基材層12の貼付起点12C側の外周先端は、凸部12a〜12dの頂点A1〜A4である。このように、基材層は、貼付起点側の外周端に凸部を有し、基材層3の貼付起点側の外周先端が該凸部の頂点であることが好ましい。この場合には、離型層2より剥がす時に、基材層の貼付起点側の凸部が剥離起点となって、容易に剥離することが可能になり、粘接着剤層付き半導体チップを得る際に、粘接着剤層をより一層精度よくダイシングできる。
【0074】
基材層11は、貼付起点11C側の外周端に複数の凸部11a〜11dを有し、凸部11bと凸部11cとが曲線で連なっている。基材層12は、貼付起点12C側の外周端に複数の凸部12a〜12dを有し、該複数の凸部12a〜12dは曲線で連なっている。このように、基材層は、貼付起点側の外周端に複数の凸部を有し、該複数の凸部が曲線で連なっていることが好ましい。この場合には、離型層2より剥がす時に剥離起点となり、容易に剥離することができ、粘接着剤層付き半導体チップを得る際に、粘接着剤層をより一層精度よくダイシングできる。
【0075】
また、基材層4,11,12では、貼付起点4C,11C,12Cと、貼付起点4C,11C,12Cを除く部分とのなす内角は180度以下である。すなわち、貼付起点4C,11C,12Cにおける基端部分において、貼付起点4C,11C,12Cと、貼付起点4C,11C,12Cを除く部分とは、内角が180度以下であるように連なっている。このように、上記内角が180度以下であると、貼付起点の基端において基材層が切れるのを防ぐことができる。上記内角が180度を超えると、貼付起点の基端において基材層が切れやすくなる傾向がある。
【0076】
図1に示すダイシング−ダイボンディングテープ1では、1つの基材層4に貼付起点4Cが1箇所のみ設けられている。貼付起点4Cは、長尺状の離型層2の長さ方向の一端側に設けられている。図15に、ダイシング−ダイボンディングテープの変形例を示す。図1に示すダイシング−ダイボンディングテープ1と図15に示すダイシング−ダイボンディングテープ51とは、基材層における貼付起点の個数及び形成位置が異なっており、それに伴ってダイシング層も異なっている。ダイシング−ダイボンディングテープ1に設けられた貼付起点4Cと、ダイシング−ダイボンディングテープ51に設けられた基材層52の貼付起点52Cとの形状は同じである。ダイシング−ダイボンディングテープ51に設けられた基材層52とダイシング層53との形状は同じである。なお、図15では、基材層52は、ダイシング層53により覆われている。
【0077】
図15に示すダイシング−ダイボンディングテープ51では、1つの基材層52に貼付起点52Cが2箇所設けられている。貼付起点52Cは、長尺状の離型層2の長さ方向の一端側と、該一端側とは反対の他端側とに設けられている。このように、1つの基材層に複数の貼付起点が設けられていることが好ましく、少なくとも2つの貼付起点が設けられていることが好ましい。1つの基材層に複数の貼付起点が設けられている場合には、基材層の一端側と該一端側とは反対の他端側とに、貼付起点が設けられていることが好ましい。この場合には、ダイシング−ダイボンディングテープの使用時の方向性をなくすことができる。また、例えば、一端側の貼付起点から基材層をうまく貼り付けられない場合などに、他端側の貼付起点から基材層を貼り付けることが可能である。より具体的には、一端側の貼付起点から基材層をうまく貼り付けられない場合などに、長尺状のダイシング−ダイボンディングテープを一旦巻き取った後に、再度巻き出すことにより、他端側の貼付起点から基材層を貼り付けることが可能である。
【0078】
(粘接着剤層付き半導体チップの製造方法)
次に、図1(a),(b)及び図2に示すダイシング−ダイボンディングテープ1を用いた場合の粘接着剤層付き半導体チップの製造方法の一例を以下説明する。
【0079】
先ず、ダイシング−ダイボンディングテープ1と、積層体21とを有する。
【0080】
図5(d)に示すように、積層体21は、保護シート22と、保護シート22の一方の面22aに積層されている分割後半導体ウェーハ23とを有する。分割後半導体ウェーハ23は個々の半導体チップに分割されている。分割後半導体ウェーハ23の平面形状は円形である。
【0081】
積層体21は、図5(a)〜(d)に示す各工程を経て、以下のようにして得ることができる。
【0082】
先ず、図5(a)に示すように、半導体ウェーハ23Aを用意する。半導体ウェーハ23Aは分割前半導体ウェーハである。半導体ウェーハ23Aの平面形状は円形である。半導体ウェーハ23Aの表面23aには、マトリックス状にストリートによって区画された各領域に、個々の半導体チップを構成するための回路が形成されている。
【0083】
図5(b)に示すように、用意した半導体ウェーハ23Aを表面23a側からダイシングする。ダイシングの後、半導体ウェーハ23Aは分断されていない。半導体ウェーハ23Aの表面23aには、個々の半導体チップに分割するための切り込み23cが形成されている。ダイシングは、例えば、高速回転するブレードを備えるダイシング装置等を用いて行われる。
【0084】
次に、図5(c)に示すように、半導体ウェーハ23Aの表面23aに、保護シート22を貼り付ける。その後、半導体ウェーハ23Aの裏面23bを研削し、半導体ウェーハ23Aの厚みを薄くする。ここでは、半導体ウェーハ23Aの裏面23bは、切り込み23c部分まで研削している。このようにして、図5(d)に示す積層体21を得ることができる。
【0085】
半導体ウェーハ23Aの裏面23bは、切り込み23c部分まで研削することが好ましい。研削は、例えば研削磁石等を備えるグラインダなどの研削機を用いて行われる。研削時には、半導体ウェーハ23Aの表面23aには保護シート22が貼り付けられているので、回路に研削屑が付着しない。また、研削後に半導体ウェーハ23Aが個々の半導体チップに分割されても、複数の半導体チップがばらばらにならずに保護シート22に貼り付けられたままである。
【0086】
積層体21を得た後、図6(a)に示すように、積層体21を保護シート22側からステージ25上に載せる。ステージ25上には、分割後半導体ウェーハ23の外周側面から一定間隔を隔てられた位置に、円環状のダイシングリング26が設けられている。ダイシング−ダイボンディングテープ1の離型層2を剥離しながら、又は離型層2を剥離した後に、露出した粘接着剤層3の他方の面3bを、分割後半導体ウェーハ23の裏面23bに貼り付ける。また、露出した基材層4の外周部分を、貼付起点4Cからダイシングリング26に貼り付ける。
【0087】
図8(a)に基材層4をダイシングリング26に貼り付ける際の状態を正面断面図で示し、図8(b)に基材層4をダイシングリング26に貼り付けた後の状態を平面図で示す。
【0088】
図8(a)及び(b)に示すように、通常、基材層4をダイシングリング26に貼り付ける際には、剥離エッジ32を用いて、基材層4及びダイシング層5を離型層2の上面2aから剥離する。基材層4の貼付起点4Cをダイシングリング26に貼り付けて、貼付起点4C上をロール31で押さえ付ける。そして、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5に皺が生じないように、粘接着剤層3、基材層4及びダイシング層5を引き延ばしながら、基材層4の外周部分をダイシングリング26に貼り付ける。ダイシングリング26に貼り付けられた基材層4及びダイシング層5には収縮力が作用している。
【0089】
上記収縮力が部分的に異なると、例えば、基材層をダイシングリングに貼り付けた後に、又は分割後半導体ウェーハから保護シートを剥離した後に、分割後半導体ウェーハの切断部分すなわちダイシングラインが湾曲しやすい。
【0090】
ダイシング−ダイボンディングテープ1では、長さL(mm)が0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である。すなわち、ダイシング−ダイボンディングテープ1の基材層4をダイシングリングに貼り付ける際には、基材層4の貼付起点4C側の外周先端から内側に向かって0.3Wの距離の位置をダイシングリング26に貼り付けて、次に貼付起点4Cを除く基材層4の外周部分をダイシングリング26に貼り付ける。言い換えれば、貼り付けの開始時に、ダイシングリング26に貼り付けられる基材層4部分の長さL(mm)が0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である。従って、ダイシングリング26に貼り付けられた基材層4及び該基材層4に積層された粘接着剤層3及びダイシング層5の収縮力が部分的に大きく異なり難い。
【0091】
従って、基材層4をダイシングリング26に貼り付けた後に、又は粘接着剤層3に貼り付けられた分割後半導体ウェーハ23から保護シート22を剥離した後に、分割後半導体ウェーハ23のダイシングラインが湾曲し難い。このため、粘接着剤層3を精度よくダイシングできる。さらに、粘接着剤層3付き半導体チップのピックアップ性を高めることができる。
【0092】
基材層4をダイシングリング26に貼り付けた後、図6(b)に示すように、粘接着剤層3が貼り付けられた分割後半導体ウェーハ23をステージ25から取り出して、裏返す。このとき、ダイシングリング26を基材層4の粘着部4Bに貼り付けた状態で取り出す。取り出した分割後半導体ウェーハ23を表面23aが上方になるように裏返して、別のステージ27上に載せる。
【0093】
次に、図7(a)に示すように、分割後半導体ウェーハ23の表面23aから保護シート22を剥離する。保護シート22を剥離する際に、剥離を容易にするために、保護シート22を加熱してもよい。
【0094】
次に、図7(b)に示すように、分割後半導体ウェーハ23の切り込み23c(切断部分)に沿って、すなわちダイシングラインに沿って粘接着剤層3をダイシングする。粘接着剤層3を両面を貫通するようにダイシングし、個々の半導体チップの大きさに分割する。ダイシングの後に、粘接着剤層3には切断部分3dが形成される。ダイシング−ダイボンディングテープ1を用いた場合には、分割後半導体ウェーハ23が貼り付けられている粘接着剤層3部分の下方には、非粘着性を有する非粘着部4Aが位置しているので、ダイシングを精度よく行うことができる。このため、ダイシングの後に、接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を高めることができる。
【0095】
ダイシングは、粘接着剤層3を貫通するように行われれば特に限定されない。粘接着剤層3をダイシングする方法としては、ダイシングブレードを用いる方法、及びレーザーダイシングする方法等が挙げられる。分割後半導体ウェーハ23を用いる場合には、一般的には、レーザーダイシングする方法が用いられる。
【0096】
中間層4の非粘着部4Aが、例えば硬化されている場合には、非粘着部4Aがレーザー光の照射により反応し難い。このため、基材層4が粘接着剤層3に融着し難い。従って、レーザー光を用いたダイシングを行った場合でも、半導体チップのピックアップを無理なく行うことができる。
【0097】
半導体ウェーハをダイシングし、個々の半導体チップに分割した後、ダイシング層5を引き延ばして、分割された個々の半導体チップ間の間隔を拡張する。その後、半導体チップを粘接着剤層3ごと基材層4から剥離して、取り出す。このようにして、粘接着剤層3付き半導体チップを得ることができる。
【0098】
また、ダイシングの後に、粘接着剤層3と非粘着部4Aとの間の剥離力を変化させることなく、半導体チップを取り出すことが好ましい。基材層4の粘接着剤層3に貼り付けられている非粘着部4Aは非粘着性を有する。従って、ダイシングの後に、上記剥離力を変化させなくても、粘接着剤層3付き半導体チップを無理なく取り出すことができる。
【0099】
次に、図9(a),(b)に示すダイシング−ダイボンディングテープ1を用いた粘接着剤層付き半導体チップの製造方法の他の例を以下説明する。
【0100】
先ず、上述したダイシング−ダイボンディングテープ1と、半導体ウェーハ41とを用意する。半導体ウェーハ41の平面形状は円形である。半導体ウェーハ41は個々の半導体チップに分割されていない。
【0101】
図9(a)に示すように、半導体ウェーハ41を裏返して、裏返された半導体ウェーハ41を表面41a側からステージ25上に載せる。ステージ25上には、半導体ウェーハ41の外周側面から一定間隔を隔てられた位置に、円環状のダイシングリング26が設けられている。ダイシング−ダイボンディングテープ1の離型層2を剥離しながら、又は離型層2を剥離した後に、露出した粘接着剤層3の他方の面3bを、半導体ウェーハ41の裏面41bに貼り付ける。また、露出した基材層4の外周部分を貼付起点4Cから、ダイシングリング26に貼り付ける。
【0102】
次に、図9(b)に示すように、粘接着剤層3が貼り付けられた半導体ウェーハ41をステージ25から取り出して、裏返す。このとき、ダイシングリング26を基材層4の粘着部4Bに貼り付けられた状態で取り出す。取り出した半導体ウェーハ41を表面41aが上方になるように裏返して、別のステージ27上に載せる。次に、半導体ウェーハ41を粘接着剤層3ごとダイシングし、個々の半導体チップに分割する。半導体ウェーハ41及び粘接着剤層3をそれぞれ、両面を貫通するように分断する。ダイシングの後に、半導体ウェーハ41に切断部分41cが形成され、粘接着剤層3に切断部分3dが形成され、かつ基材層4に切り込みが形成される。
【0103】
次にダイシング層5を引き延ばして、半導体チップを粘接着剤層3ごと基材層4から剥離して、取り出すことにより、粘接着剤層3付き半導体チップを得ることができる。
【0104】
以下、実施例及び比較例を挙げることにより、本発明を具体的に説明する。本発明は、以下の実施例に限定されない。
【0105】
(アクリル系ポリマー1)
2−エチルヘキシルアクリレート95重量部、2−ヒドロキシエチルアクリレート5重量部、光ラジカル発生剤であるイルガキュア651(チバガイギ社製、50%酢酸エチル溶液)0.2重量部、及びラウリルメルカプタン0.01重量部を酢酸エチルに溶解させ、溶液を得た。この溶液に紫外線を照射して重合を行い、ポリマーの酢酸エチル溶液を得た。さらに、この溶液の固形分100重量部に対して、2−メタクリロイルオキシエチルイソシアネート(昭和電工社製、カレンズMOI)3.5重量部を反応させて、アクリル共重合体(アクリル系ポリマー1)を得た。得られたアクリル系ポリマー1の重量平均分子量は70万であり、酸価は0.86(mgKOH/g)であった。
【0106】
また、基材層を形成するための組成物を構成する材料として、以下の化合物を用意した。
【0107】
(光重合開始剤)
イルガキュア651(チバ・ジャパン社製)
【0108】
(オリゴマー)
U324A:新中村化学工業社製、ウレタンアクリルオリゴマー(10官能のウレタンアクリルオリゴマー)、重量平均分子量:1,300
【0109】
(架橋剤)
コロネートL−45:日本ポリウレタン工業社製、イソシアネート系架橋剤
【0110】
(ダイシング層)
ポリエチレン(プライムポリマー社製、M12)を原料として用いて、Tダイ法により、厚み100μmのダイシング層であるポリエチレンフィルムを製造した。
【0111】
(実施例1)
実施例1では、図1(a),(b)及び図2に示す形状のダイシング−ダイボンディングテープ及び基材層を形成した。
【0112】
(1)第1の積層体の作製
上記アクリル系ポリマー1を100重量部と、イルガキュア651を1重量部と、ウレタンアクリルオリゴマーであるU324Aを15重量部と、コロネートL−45を1重量部とを配合し、粘着剤組成物を得た。得られた粘着剤組成物を離型PETフィルム上に塗工し、110℃で5分間乾燥し、溶媒を除去し、組成物層を形成した。
【0113】
ダイシング層であるポリエチレンフィルムの基材層が積層される面を、鏡面加工及びコロナ処理した。組成物層の離型PETフィルムが貼り付けられた面とは反対側の面に、ポリエチレンフィルムを貼り付けた。その後、40℃で24時間保管した。
【0114】
次に、得られた組成物層の中央の領域に、水銀灯を用いて、2000mJ/cmのエネルギーとなるように光を照射し、組成物層を硬化させた。このようにして、中央の領域に非粘着部を有し、該非粘着部の外側部分の領域に粘着部を有する基材層(厚み20μm)を得た。
【0115】
このようにして、離型PETフィルム、基材層及びダイシング層がこの順で積層された第1の積層体を得た。
【0116】
(2)第2の積層体の作製
G−2050M(日油社製、エポキシ含有アクリルポリマー、重量平均分子量Mw20万)15重量部と、EXA−7200HH(DIC社製、ジシクロペンタジエン型エポキシ)70重量部と、HP−4032D(DIC社製、ナフタレン型エポキシ)15重量部と、YH−309(三菱化学社製、酸無水物系硬化剤)38重量部と、2MAOK−PW(四国化成社製、イミダゾール)8重量部と、S320(チッソ社製、アミノシラン)2重量部と、MT−10(トクヤマ社製、表面疎水化ヒュームドシリカ)4重量部とを配合し、配合物を得た。得られた配合物を溶剤であるメチルエチルケトン(MEK)に固形分60重量%となるように添加し、攪拌し、塗液を得た。
【0117】
得られた塗液を離型PETフィルム上に厚み10μmになるように塗工し、110℃のオーブン内で2分間加熱乾燥した。
【0118】
その後、粘接着剤層の平面形状が、下記の表1に示す直径の円形になるように加工し、離型PETフィルム上に、粘接着剤層が積層されている第2の積層体を得た。
【0119】
(3)ダイシング−ダインボンディングテープの作製
次に、第1の積層体の離型PETフィルムを剥離して、基材層を露出させた。基材層とダイシング層との積層体を基材層側から、粘接着剤層上に60℃でラミネートし、ラミネート体を得た。その後、図1(a),(b)及び図2に示す形状であって、下記の表1に示す寸法となるように、基材層及びダイシング層に切り抜いた。このようにして、離型PETフィルム/粘接着剤層/基材層/ダイシング層がこの順で積層された4層の積層構造を有するダイシング−ダイボンディングテープを作製した。
【0120】
得られたダイシング−ダイボンディングテープでは、非粘着部が粘接着剤層よりも大きく、非粘着部が、粘接着剤層の外周側面よりも側方に張り出している領域を有していた。
【0121】
(実施例2〜4)
実施例2〜4では、図1(a),(b)及び図2に示す形状のダイシング−ダイボンディングテープ及び基材層を形成した。基材層及びダイシング層の寸法を、下記の表1に示すように変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを作製した。なお、図2では、貼付起点4Cの先端が、基材層4全体の平面形状が円形であるとした場合の仮想線(一点鎖線)の貼付方向における先端から貼付方向に突出していないが、実施例4では、貼付起点4Cの先端が、仮想線の貼付方向における先端から貼付方向に突出していた。
【0122】
【表1】

【0123】
(実施例5〜6)
実施例2〜6では、基材層及びダイシング層の形状及び寸法を、図3に示す形状であって、下記の表2に示寸法に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを作製した。なお、図3では、貼付起点11Cの先端が、基材層11全体の平面形状が円形であるとした場合の仮想線(一点鎖線)の貼付方向における先端から貼付方向に突出していないが、実施例6では、貼付起点11Cの先端が、仮想線の貼付方向における先端から貼付方向に突出していた。
【0124】
【表2】

【0125】
(実施例7)
実施例7では、基材層及びダイシング層の形状及び寸法を、図4に示す形状であって、下記の表3に示す寸法に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを作製した。
【0126】
【表3】

【0127】
(比較例1〜5)
比較例1〜5では、基材層及びダイシング層の形状及び寸法を、下記の表4に示す図10〜14の内のいずれかの形状であって、下記の表4に示す寸法に変更したこと以外は実施例1と同様にして、ダイシング−ダイボンディングテープを作製した。
【0128】
比較例1,2,4,5では、基材層の平面形状は略円形であり、貼付起点部分を除く基材層の平面形状は円形の一部であった。図10〜11,13〜14では、基材層101〜102,104〜105全体の平面形状が円形であるとした場合の仮想線を一点鎖線で示した。比較例3では、基材層103の平面形状は円形であった。
【0129】
【表4】

【0130】
(評価)
直径300mm(12inch)の半導体ウェーハ(シリコンウェーハ、厚み80μm)の表面に深さ100μmの切り込みを入れた。次に、半導体ウェーハの表面に保護シートであるバックグラインディングテープ イクロスSB135S−BN(三井化学社製、オレフィンの片面にアクリル系粘着剤が塗布されている)をアクリル系粘着剤側からラミネートした。次に、半導体ウェーハの厚みが35μmになるまで半導体ウェーハの裏面を研削した後、CMPスラリーを用いて、半導体ウェーハの厚みが30μmになるまで半導体ウェーハの裏面の鏡面仕上げを行った。このようにして、保護シートと、分割後半導体ウェーハとの積層体を得た。
【0131】
次に、ウェーハマウンターDAM−812M(タカトリ社製)を用いてダイシングダイボンディングフィルムを積層体の分割後半導体ウェーハの裏面及びダイシングリング(外径400mm、内径350mm)に貼り付けた。尚、積層体の分割後半導体ウェーハをのせるステージは60℃に設定した。
【0132】
次に、粘接着剤層が貼り付けられた分割後半導体ウェーハをステージから取り出して、裏返し、別のステージ上に載せた。その後、分割後半導体ウェーハの表面から、60℃で保護シートを剥離した。
【0133】
次に、ダイシング装置DFL7160(ディスコ社製)を用いて、レーザー出力0.5W、周波数50kHz、送り速度100mm/秒、デフォーカス量−0.05mm、焦点位置粘接着剤層表面で、粘接着剤層を個々の半導体チップの大きさにダイシングした。ダイシングの後に、ダイボンダーbestem D−02(キャノンマシーナリー社製)を用いて、コレットサイズ8mm角、突き上げ速度5mm/秒、ピックアップ温度23℃の条件で、20個の粘接着剤層付き半導体チップを連続してピックアップした。
【0134】
上記粘接着剤層付き半導体チップの製造において、下記の(1)〜(4)の評価項目について評価を行った。
【0135】
(1)突き出し性
基材層の外周部分を貼付起点からダイシングリングに貼り付ける際の突き出し性を、下記の判定基準で判定した。
【0136】
[突き出し性の判定基準]
○:基材層を問題なくダイシングリングに貼り付けることができた
×:基材層の貼付起点をダイシングリングに貼り付けられないことがあった
【0137】
(2)貼り付け後の基材層の切れ又は変形の有無
分割後半導体ウェーハに貼り付けた後の基材層の切れ又は変形の有無を下記の判定基準で判定した。
【0138】
[貼り付け後の基材層の切れ又は変形の有無の判定基準]
○:貼り付け後に基材層の切れ又は変形なし
△:貼り付け後に基材層は切れていないものの、引き延ばされていた
×:貼り付け後に基材層が切れていた
【0139】
(3)基材層のはみ出し
基材層の外周部分を貼付起点からダイシングリングに貼り付ける際の基材層のはみ出しを、下記の判定基準で判定した。
【0140】
[貼り付け後の基材層のはみ出しの判定基準]
○:貼り付け後に基材層がダイシングリングからはみ出さなかった
×:貼り付け後に基材層がダイシングリングからはみ出した
【0141】
(4)カーフシフト
保護シートを剥離した後に、分割後半導体ウェーハの切断部分を観察し、カーフシフトを下記の判定基準で判定した。
【0142】
[カーフシフトの判定基準]
○:複数の半導体チップの整列異常がなく、2つの半導体チップ間の切断部分の延長線上に、該2つの半導体チップに隣接する2つの半導体チップ間の切断部分が存在しない部分がない
×:複数の半導体チップの整列異常があり、2つの半導体チップ間の切断部分の延長線上に、該2つの半導体チップに隣接する2つの半導体チップ間の切断部分が存在しない部分がある
【0143】
(5)ピックアップ性
粘接着剤層付き半導体チップのピックアップ性を下記の判定基準で判定した。
【0144】
[ピックアップ性の判定基準]
○:ピックアップできなかった半導体チップなし
×:ピックアップできなかった半導体チップあり
【0145】
なお、このピックアップ不良は、カーフの異常(半導体チップの整列異常)による半導体チップの傾きが主な原因であり、半導体チップの認識不足によるものであった。
【0146】
結果を下記の表5に示す。
【0147】
【表5】

【符号の説明】
【0148】
1…ダイシング−ダイボンディングテープ
2…離型層
2a…上面
3…粘接着剤層
3a…一方の面
3b…他方の面
3c…外周側面
3d…切断部分
4…基材層
4A…非粘着部
4B…粘着部
4C…貼付起点
4a〜4c…凸部
5…ダイシング層
11,12…基材層
11A,12A…非粘着部
11B,12B…粘着部
11C,12C…貼付起点
11a〜11d,12a〜12d…凸部
21…積層体
22…保護シート
22a…一方の面
23…分割後半導体ウェーハ
23A…半導体ウェーハ
23a…表面
23b…裏面
23c…切り込み
25…ステージ
26…ダイシングリング
27…ステージ
31…ロール
32…剥離エッジ
41…半導体ウェーハ
41a…表面
41b…裏面
41c…切断部分
51…ダイシング−ダイボンディングテープ
52…基材層
52c…貼付起点
53…ダイシング層

【特許請求の範囲】
【請求項1】
粘接着剤層と、
前記粘接着剤層の一方の面に積層されている基材層とを備え、
ダイシング時に、前記基材層の外周部分にダイシングリングが貼り付けられ、
前記基材層が外周部分に、貼り付け開始時にダイシングリングに貼り付けられる貼付起点を有し、
前記貼付起点を除く部分における前記基材層の前記ダイシングリングに貼り付けられる部分の幅をW(mm)とし、前記貼付起点を除く部分における前記基材層の外径をD(mm)としたときに、
前記基材層の前記貼付起点側の外周先端から内側に向かって0.3Wの距離の位置における前記貼付起点の長さL(mm)が、0.30D〜0.44D(mm)の範囲内である、ダイシング−ダイボンディングテープ。
【請求項2】
前記基材層の前記貼付起点側の外周先端の曲率が、前記基材層の前記貼付起点を除く部分の外周端の曲率よりも大きい、請求項1に記載のダイシング−ダイボンディングテープ。
【請求項3】
前記基材層は、前記貼付起点側の外周端に凸部を有し、
前記基材層の貼付起点側の外周先端は、前記凸部の頂点である、請求項1又は2に記載のダイシング−ダイボンディングテープ。
【請求項4】
前記基材層が、前記貼付起点側の外周端に複数の凸部を有し、該複数の凸部が曲線で連なっている、請求項1に記載のダイシング−ダイボンディングテープ。
【請求項5】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイシング−ダイボンディングテープと、保護シート及び該保護シートの一方の面に積層されており、かつ個々の半導体チップに分割されている分割後半導体ウェーハを有する積層体とを用いて、
前記ダイシング−ダイボンディングテープの前記粘接着剤層を、前記積層体の前記分割後半導体ウェーハに貼り付ける工程と、
前記基材層の前記貼付起点を円環状のダイシングリングに貼り付けて、次に前記貼付起点を除く前記基材層の外周部分を前記ダイシングリングに貼り付ける工程と、
前記保護シートを前記分割後半導体ウェーハから剥離する工程と、
前記粘接着剤層を、前記分割後半導体ウェーハの切断部分に沿ってダイシングする工程と、
ダイシングの後に、前記半導体チップが貼り付けられた前記粘接着剤層を前記基材層から剥離し、半導体チップを前記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える、粘接着剤層付き半導体チップの製造方法。
【請求項6】
半導体ウェーハの表面に、該半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割するための切り込みを形成する工程と、
切り込みが形成された前記半導体ウェーハの表面に保護シートを貼り付ける工程と、
前記保護シートが貼り付けられた前記半導体ウェーハの裏面を研削し、前記半導体ウェーハを個々の半導体チップに分割し、前記積層体を得る工程をさらに備える、請求項5に記載の粘接着剤層付き半導体チップの製造方法。
【請求項7】
請求項1〜4のいずれか1項に記載のダイシング−ダイボンディングテープと、半導体ウェーハとを用いて、
前記ダイシング−ダイボンディングテープの前記粘接着剤層を、前記半導体ウェーハに貼り付ける工程と、
前記基材層の前記貼付起点を円環状のダイシングリングに貼り付けて、次に前記貼付起点を除く前記基材層の外周部分を前記ダイシングリングに貼り付ける工程と、
前記半導体ウェーハと前記粘接着剤層とをダイシングする工程と、
ダイシングの後に、前記半導体チップが貼り付けられた前記粘接着剤層を前記基材層から剥離し、半導体チップを前記粘接着剤層ごと取り出す工程とを備える、粘接着剤層付き半導体チップの製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【図14】
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【図15】
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【公開番号】特開2012−84916(P2012−84916A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−287414(P2011−287414)
【出願日】平成23年12月28日(2011.12.28)
【分割の表示】特願2011−505312(P2011−505312)の分割
【原出願日】平成23年2月8日(2011.2.8)
【出願人】(000002174)積水化学工業株式会社 (5,781)
【Fターム(参考)】