説明

ダイシングシートおよびチップ体の製造方法

【課題】レーザーダイシングにおいて優れた性質が期待されるポリウレタンアクリレートフィルムを使用した基材のエキスパンド後の形状復元性を改善する。
【解決手段】ダイシングシートは、ポリウレタンアクリレートからなる基材と、その片面に形成された粘着剤層とからなる。ポリウレタンアクリレートが、ポリウレタンアクリレート100重量%あたり、ウレタンアクリレート系オリゴマー単位30〜70重量%より形成され、かつウレタンアクリレート系オリゴマーが、該ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量%あたり、構成単位としてエチレンオキシ基35〜95重量%を有する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、主にレーザー光でワークをダイシングしてチップ化する際にワークを固定するために好適に用いられるダイシングシート、および、該ダイシングシートを用いて好適に行われるチップ体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
レーザーダイシングは、ブレードダイシングでは切断困難なワークも切断可能である場合があり、近年特に注目されている。そのようなレーザーダイシングに用いられるダイシングシートの一例は本出願人によって開示されている(特許文献1)。
【0003】
レーザーダイシングにおいては、ダイシングシート上に固定されたワークにレーザー光を走査してワークを切断(ダイシング)している。この際、レーザー光の焦点は、次のように移動している。すなわち、ワークが貼付されていないダイシングシート表面(ワークの外縁部)から加速し、ワーク表面を一定速度で走査し、ワークの他方の外縁部で減速、停止する。その後、進行方向を反転し、加速後、ワーク表面を走査し、再度減速、停止、反転する。
【0004】
したがって、レーザー光焦点の移動における加速・減速時には、ワークが貼付されていないダイシングシートの端部に直接レーザー光が照射されている。この際、レーザー光がダイシングシートを透過し、チャックテーブルを損傷するという問題が発生することがあった。さらに、レーザー光によって加熱されたチャックテーブルに接するダイシングシートの面が溶融し、チャックテーブルに融着するという問題が発生することもあった。
【0005】
これらの問題を回避するために、厚いダイシングシートを用いて、ワークとチャックテーブル表面との距離を長くする手法がとられた(特許文献2)。この手法を用いれば、チャックテーブルに到達したレーザー光は焦点が合っておらず、したがってエネルギー密度が低いため、チャックテーブルの損傷には至らない。また、上記したダイシングシートの融着の問題も起こらない。しかし、基材が厚いため、ダイシング後のエキスパンドが困難になることがあった。
【0006】
また、特許文献3には、ウレタンアクリレート系オリゴマー等の硬化性樹脂を製膜・硬化して得られる基材上に粘着剤層を設けてなるダイシングシートが開示されている。しかし、特許文献3では、ブレードダイシングへの適用が意図されており、上述したようなレーザーダイシングに特有の課題は認識されていない。
【0007】
ウレタンアクリレート系オリゴマーを製膜、硬化して得られるフィルムは、架橋密度が高いため、レーザー光の直射を受けてもフィルムが受ける損傷は比較的軽微であることが期待される。また、エキスパンド性も良好であるため、ダイシング後にエキスパンドし、チップ間隔を離間することも容易である。このため、上記のようなダイシングシートの基材として、このようなフィルムを使用することが検討される。
【0008】
しかし、特許文献3に記載されたフィルムは、エキスパンド性に優れるものの伸張したフィルムは、伸張したまま元に戻りにくいという性質をもっている。すなわち、このようなフィルムをダイシングシートの基材として使用した場合、次のような問題点が懸念される。
【0009】
通常、エキスパンド工程後、チップをピックアップした後、ダイシングシートはリングフレームに張設された状態で、回収カセットに収納され回収される。回収後、ダイシングシートを除去し、リングフレームは洗浄工程等を経て再使用される。エキスパンドによりダイシングシートは延伸されているため、リングフレームからダイシングシートが垂れ下がった状態にある。この状態では、たるんだダイシングシートが、回収カセットに収納される他のリングフレームやシートに接触するため、回収カセットへの収納が円滑に行われない。
【0010】
このような結果、特許文献3に記載されたフィルムを用いたダイシングシートは、まだ実現されておらず、畢竟、レーザーダイシングシートとしての利用もなかった。
【特許文献1】特開2002−343747号公報
【特許文献2】特開2006−245487号公報
【特許文献3】特開2002−141306号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、例えばレーザーダイシングにおいて、レーザー光によるダイシングシートの切断、チャックテーブルの損傷およびダイシングシートのチャックテーブルへの融着を防止しうるダイシングシートおよびそれを用いたレーザーダイシング法によるチップ体の製造方法を提供することを目的としている。特に、本発明は、レーザーダイシングにおいて優れた性質が期待されるポリウレタンアクリレートフィルムを使用した基材のエキスパンド後の形状復元性を改善することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0012】
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下のとおりである。
【0013】
(1)ポリウレタンアクリレートからなる基材と、その片面に形成された粘着剤層とからなるダイシングシートであって、
該ポリウレタンアクリレートが、該ポリウレタンアクリレート100重量%あたり、ウレタンアクリレート系オリゴマー単位30〜70重量%より形成され、かつウレタンアクリレート系オリゴマーが、該ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量%あたり、エチレンオキシ基35〜95重量%を有するダイシングシート。
【0014】
(2)前記基材の50%伸長後の歪み復元率が80〜100%である(1)に記載のダイシングシート。
【0015】
(3)上記(1)または(2)に記載のダイシングシートの粘着剤層にワークを貼付し、
レーザー光によりワークを個片化してチップを作製し、
ダイシングシートをエキスパンドしてチップ間隔を離間し、
チップをピックアップする、チップ体の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明においては、基材として主にウレタンアクリレート系オリゴマーとエネルギー線硬化性のモノマーからなるポリウレタンアクリレートフィルムを用いているため、基材にレーザー光が照射されても、基材の受ける損傷は小さく、切断されない。また基材は損傷を受けなくとも基材を透過してチャックテーブルにまで到達する光量は低減される。この結果、レーザーダイシングにおいて、レーザー光によるダイシングシートの切断、チャックテーブルの損傷およびダイシングシートのチャックテーブルへの融着が防止され、レーザーダイシングによるチップ体の製造工程が円滑に行われるようになる。また、本発明で基材として使用するポリウレタンアクリレートフィルムは、所定比率のエチレンオキシ基を有するため、シートのエキスパンド後の形状復元性が改善され、リングフレームの回収を円滑に行えるようになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
以下、本発明についてさらに具体的に説明する。本発明に係るダイシングシートは、基材と、その上に形成された粘着剤層とからなる。
【0018】
基材は、ウレタンアクリレート系オリゴマーを主成分として反応させて得られるポリウレタンアクリレートからなる。ウレタンアクリレート系オリゴマーは、例えば一般式:Z−(Y−(X−Y)m)−Zで示される(ここで、Xはポリエーテル型ジオールにより誘導される構成単位であり、Yはジイソシアナートから誘導される構成単位であり、Zはヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートから誘導される構成単位である)。上記一般式においてmは、好ましくは1〜200、さらに好ましくは1〜50となるように選択される。
【0019】
本発明において、ポリウレタンアクリレートは、ポリウレタンアクリレート100重量%あたり、主成分であるウレタンアクリレート系オリゴマー単位を30〜70重量%、好ましくは40〜60重量%の構成比率で有する。
【0020】
また、該ウレタンアクリレート系オリゴマーは、オリゴマー100重量%あたり、エチレンオキシ基を35〜95重量%、好ましくは65〜90重量%の構成比率で有する。
【0021】
また、ポリウレタンアクリレートは、ポリウレタンアクリレート100重量%あたり、構成単位としてエチレンオキシ基を好ましくは10〜67重量%、特に好ましくは26〜54重量%の構成比率で有する。
【0022】
さらに、該ポリウレタンアクリレートおよびウレタンアクリレート系オリゴマーには、エチレンオキシ基以外のアルキレンオキシ基が含まれていてもよい。以下の説明では、エチレンオキシ基として、その上位概念であるアルキレンオキシ基を例示して説明することがあるが、本発明では、エチレンオキシ基が所定量含まれていれば、他のアルキレンオキシ基が含まれていてもよいとの趣旨である。
【0023】
ポリウレタンアクリレートは、所定量のウレタンアクリレート系オリゴマー単位を有し、かつ該ウレタンアクリレートオリゴマー単位が所定量のアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)を有する限り、その構造、組成、製法は特に限定はされないが、以下に一般的な製法について説明する。
【0024】
ポリウレタンアクリレートフィルムは、上述したポリウレタンアクリレートからなる樹脂フィルムである。ポリウレタンアクリレートは、エネルギー線硬化性のウレタンアクリレート系オリゴマーとエネルギー線硬化性モノマーとを含有する配合物を製膜後、これにエネルギー線を照射して得られる硬化物が好ましい。
【0025】
エネルギー線硬化性ウレタンアクリレート系オリゴマーは、ポリエーテル型ジオールと、多価イソシアナート化合物とを反応させて得られる末端イソシアナートウレタンプレポリマーに、ヒドロキシル基を有する(メタ)アクリレートを反応させて得られる。
【0026】
ポリエーテル型ジオールは、一般にHO-(-R-O-)n-Hで示される。ここで、Rは2価のアルキレン基である。Rは好ましくは炭素数1〜6のアルキレン基であり、炭素数2のエチレンを含んでいる。また、エチレン以外の炭素数1〜6のアルキレン基としては好ましくはプロピレン、ブチレンまたはテトラメチレン、特に好ましくはプロピレンである。また、nは好ましくは2〜200,さらに好ましくは10〜100である。
【0027】
ポリエーテル型ジオールは、多価イソシアナート化合物との反応により、エーテル結合部(-(-R-O-)n-)を有する末端イソシアナートウレタンプレポリマーを生成する。このようなエーテル結合部は、アルキレンオキシドの環状エーテルの開環反応によって誘導される構造であってもよい。
【0028】
ウレタンアクリレート系オリゴマー中のアルキレンオキシ基の構成比率は、原料であるポリエーテル型ジオール、多価イソシアナート化合物、ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートなどの合計重量と、ポリエーテル型ジオールに含まれるアルキレンオキシ基の重量により決定される。また、ポリウレタンアクリレート中のウレタンアクリレート系オリゴマーの構成比率は、原料であるウレタンアクリレート系オリゴマー、エネルギー線硬化性モノマーなどの合計重量と、ウレタンアクリレート系オリゴマーの重量により決定される。したがって、ポリウレタンアクリレート中のアルキレンオキシ基の構成比率は、反応物の全重量に対する、ポリエーテル型ジオールに含まれるアルキレンオキシ基の重量からも算出される。また、得られたポリウレタンアクリレートフィルムを熱分解ガスクロマトグラフィ等により分析し、直接定量することもできる。
【0029】
上記のポリエーテル型ジオールと、多価イソシアナート化合物とを反応させて末端イソシアナートウレタンプレポリマーが得られる。
【0030】
多価イソシアナート化合物としては、たとえば4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナート、2,4−トリレンジイソシアナート、2,6−トリレンジイソシアナート、1,3−キシリレンジイソシアナート、1,4−キシリレンジイソシアナート、ジフェニルメタン4,4’−ジイソシアナートなどが用いられ、特に好ましくは4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート、イソホロンジイソシアナートが好ましく用いられる。
【0031】
次いで、末端イソシアナートウレタンプレポリマーとヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとを反応させて、ウレタンアクリレート系オリゴマーが得られる。ヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートとしては、たとえば2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、4−ヒドロキシブチルアクリレート、4−ヒドロキシブチルメタクリレート、ポリエチレングリコールアクリレート、ポリエチレングリコールメタクリレートなどが用いられ、特に2−ヒドロキシエチルアクリレートまたは2−ヒドロキシエチルメタクリレートが用いられる。
得られるウレタンアクリレート系オリゴマーは、分子内に光重合性の二重結合を有し、エネルギー線照射により重合硬化し、皮膜を形成する性質を有する。
【0032】
本発明で好ましく用いられるウレタンアクリレート系オリゴマーの重量平均分子量は、1000〜50000、さらに好ましくは2000〜30000の範囲にある(以下、分子量は重量平均分子量のことをいう)。上記のウレタンアクリレート系オリゴマーは一種単独で、または二種以上を組み合わせて用いることができる。
【0033】
上記のようなウレタンアクリレート系オリゴマーのみでは、製膜が困難な場合が多いため、本発明では、エネルギー線硬化性のモノマーとで希釈して製膜した後、これを硬化してフィルムを得る。エネルギー線硬化性モノマーは、分子内にエネルギー線重合性の二重結合を有し、特に本発明では、比較的嵩高い基を有するアクリルエステル系化合物が好ましく用いられる。
【0034】
このようなウレタンアクリレート系オリゴマーを希釈するために用いられるエネルギー線硬化性のモノマーの具体例としては、イソボルニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンタニル(メタ)アクリレート、ジシクロペンテニルオキシ(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート、アダマンタン(メタ)アクリレートなどの脂環式化合物、フェニルヒドロキシプロピルアクリレート、ベンジルアクリレート、フェノールエチレンオキシド変性アクリレートなどの芳香族化合物、もしくはテトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、モルホリンアクリレート、N−ビニルピロリドンまたはN−ビニルカプロラクタムなどの複素環式化合物が挙げられる。また必要に応じて多官能(メタ)アクリレートを用いてもよい。このようなエネルギー線硬化性モノマーは単独で、あるいは複数を組合せて用いても良い。
【0035】
ウレタンアクリレート系オリゴマーとエネルギー線硬化性モノマーとの反応比率は、得られるポリウレタンアクリレート中のウレタンアクリレート系オリゴマー単位の構成比率であればよく、好ましくはポリウレタンアクリレート中のエチレンオキシ基の構成比率が前記範囲となる比率であればよい。一般的には、上記エネルギー線硬化性モノマーは、ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量%に対して、好ましくは43〜233重量%、さらに好ましくは60〜160重量%の割合で用いられる。
【0036】
基材を構成するポリウレタンアクリレートフィルムは、ウレタンアクリレート系オリゴマーおよびエネルギー線硬化性モノマーを含む配合物を製膜、硬化して得られる。この際、該配合物に光重合開始剤を混入することにより、エネルギー線照射による重合硬化時間ならびにエネルギー線照射量を少なくすることができる。このような光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィノキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2−ヒドロキシ−2−メチル−1−フェニルプロパン−1−オン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β-クロールアントラキノンなどが挙げられる。
【0037】
光重合開始剤の使用量は、ウレタンアクリレート系オリゴマーおよびエネルギー線硬化性モノマーの合計100重量部に対して、好ましくは0.05〜15重量部、さらに好ましくは0.1〜10重量部、特に好ましくは0.3〜1重量部である。
【0038】
また、上述の配合物中には、炭酸カルシウム、シリカ、雲母などの無機フィラー、鉄、鉛等の金属フィラーを添加してもよい。さらに、上記成分の他にも、基材には顔料や染料等の着色剤等の添加物が含有されていてもよい。
【0039】
製膜方法としては、流延製膜(キャスト製膜)と呼ばれる手法が好ましく採用できる。具体的には、液状の配合物(硬化前の樹脂、樹脂の溶液等)を、たとえば工程シート上に薄膜状にキャストした後に、塗膜に紫外線、電子線などのエネルギー線を照射して重合硬化させてフィルム化する。このような製法によれば、製膜時に樹脂にかかる応力が少なく、フィッシュアイの形成が少ない。また、膜厚の均一性も高く、厚み精度は、通常2%以内になる。なお、製膜時に配合物の粘度が高い場合には、例えば50℃程度に加温しながら流延製膜を行ってもよい。
【0040】
以上、本発明のダイシングシートを構成するポリウレタンアクリレートフィルムの製法について説明したが、本発明で使用するポリウレタンアクリレートフィルムは、上述した製法により得られるものに限定はされない。最終的に得られたフィルム中のポリウレタンアクリレートに含まれるウレタンアクリレート系オリゴマーの構成比率、およびウレタンアクリレート系オリゴマー中のエチレンオキシ基の構成比率が上述した範囲にあればよい。また、前述したフィラー等の添加物は、ウレタンアクリレート系オリゴマーおよびエチレンオキシ基の構成比率を算出する際には算入されず、ウレタンアクリレート系オリゴマーおよびエチレンオキシ基の構成比率は、基材を構成する樹脂成分であるポリウレタンアクリレートの重量に基づいて決定される。
【0041】
基材の上面、すなわち粘着剤層が設けられる側の面には粘着剤との密着性を向上するために、コロナ処理を施したり、エチレン酢酸ビニル共重合体等によりプライマー層を設けてもよい。また粘着剤層とは反対面には剥離処理が施されていてもよい。本発明に係るダイシングシートは、上記のような基材上に粘着剤層を設けることで製造される。なお、粘着剤層を紫外線硬化型粘着剤により構成する場合には、基材は紫外線に対して透明である必要がある。本発明のダイシングシートにおいて、基材の厚みは、特に制限はないが、作業性などの面から、好ましくは10〜500μm、さらに好ましくは30〜300μm、特に好ましくは50〜200μmである。ポリウレタンアクリレートフィルムは、単層であってもよく、また同種のポリウレタンアクリレートフィルムの積層フィルムであってもよい。
【0042】
本発明で基材として使用するポリウレタンアクリレートフィルムは、単層であっても形状復元性を有する。従来開発されてきたポリウレタンアクリレートフィルムは、応力緩和性が高く、延伸してもその形状が復元することはない。これに対し、本発明で使用するポリウレタンアクリレートフィルムは、延伸後であっても、応力除去後には延伸前の形状に復元する性質を有する。
【0043】
形状復元性とは、ある程度のエキスパンド性を有し、エキスパンド後にエキスパンド前の形状に近く復元する性質を意味する。そのような性質は下記式で得られる応力緩和後の歪み復元率で表すことができる。ここで、歪み復元率は、好ましくは90〜100%、さらに好ましくは、95〜100%である。
【0044】
歪み復元率(%)=(l−l)/(l−l) ×100
:初期の長さ
:50%伸長時の長さ
:復元後の長さ
本発明に係るダイシングシートは、上記基材と、該基材上に形成された粘着剤層とからなる。
【0045】
粘着剤層は、従来より公知の種々の感圧性粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、エネルギー線硬化型や加熱発泡型、水膨潤型の粘着剤も用いることができる。
【0046】
エネルギー線硬化(エネルギー線硬化、紫外線硬化、電子線硬化)型粘着剤としては、特に紫外線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
【0047】
粘着剤層の厚さは、好ましくは1〜100μm、さらに好ましくは3〜80μm、特に好ましくは5〜50μmである。なお、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。
【0048】
剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
【0049】
基材表面に粘着剤層を設ける方法は、剥離シート上に所定の膜厚になるように塗布し形成した粘着剤層を基材表面に転写しても構わないし、基材表面に直接塗布して粘着剤層を形成しても構わない。
【0050】
次に、本発明のダイシングシートを使用したチップ体の製造方法について説明する。
【0051】
本発明のチップ体の製法では、上記ダイシングシートをリングフレームに張設し、該シートの粘着剤層にシリコンウエハ等のワークを貼付し、ワーク表面をレーザー光で走査し、ワークを切断してチップ体を得る。この際、ダイシングシートの下面はチャックテーブルに固定される。このようなレーザーダイシング方法自体は公知である。レーザーダイシングにおいては、レーザー光の焦点は、次のように移動している。すなわち、ワークが貼付されていないダイシングシートの露出表面(ワークの外縁部)から加速し、ワーク表面を一定速度で走査し、ワークの他方の外縁部で減速、停止する。その後、進行方向を反転し、加速後、再度ワーク表面を走査し、再度減速、停止、反転する。通常は、ひとつのダイシングラインあたり、1〜複数回程度のレーザー光走査を行う。
【0052】
レーザー光焦点の移動における加速・減速時には、ワークが貼付されていないダイシングシートの端部に直接レーザー光が照射されている。この際、レーザー光がダイシングシートを切断することがあった。また、レーザー光がダイシングシートを透過し、チャックテーブルを損傷するという問題が発生することがあった。さらに、レーザー光によって加熱されたチャックテーブルに接するダイシングシートの面が溶融し、チャックテーブルに融着するという問題が発生することもあった。
【0053】
しかし、本発明においては、ダイシングシートの基材として、上述したポリウレタンアクリレートフィルムを使用することで、上記の課題を解決している。すなわち、本発明のダイシングシートを使用した場合、たとえレーザー光がダイシングシートに直接照射されても、基材は、レーザー光による損傷を受けにくいことが確認された。具体的には、基材であるポリウレタンアクリレートフィルム表面の一部分がレーザー光により切り込まれるのみであり、基材が切断されることがない。また、高いエネルギーをもったレーザー光が基材を透過してチャックテーブルに至ることもなく、ダイシングシートの融着も確認されなかった。
【0054】
レーザーダイシングを終えた後、ダイシングシートをエキスパンドして、チップ間隔を広げる。チップ間隔を広げることで、チップ同士の接触による損傷が低減される。その後、チップをピックアップして取り出し、チップ体を得る。なお、粘着剤層が紫外線硬化型粘着剤からなる場合は、必要に応じて、ピックアップ前に紫外線照射を行う。紫外線硬化型粘着剤は、紫外線の照射により重合硬化し、粘着力が低下するため、チップのピックアップを円滑に行えるようになる。
【0055】
チップをピックアップした後、ダイシングシートはリングフレームに張設された状態で、回収カセットに収納され回収される。回収後、ダイシングシートを除去し、リングフレームは洗浄工程等を経て再使用される。エキスパンドによりダイシングシートは延伸されているため、形状復元性の低いダイシングシートは、リングフレームから垂れ下がった状態となる。この状態では、たるんだダイシングシートが回収カセットに収納される際に、他のリングフレームやシートに接触するため、回収カセットへの収納が円滑に行われない。例えば、通常のポリウレタンアクリレートフィルムはエキスパンド性に優れるものの、形状復元性に劣る。
【0056】
しかし、本発明では、上記した特殊なポリウレタンアクリレートフィルムを基材として用いているため、ダイシングシートの垂れ下がりを簡便に解消できる。この結果、回収カセットへのリングフレームの収納が円滑になり、チップ体の生産効率が向上する。
【0057】
本発明において適用可能なワークとしては、レーザー光によって切断処理を実施することができる限り、その素材に限定はなく、たとえば半導体ウエハ、ガラス基板、セラミック基板、FPC等の有機材料基板、又は精密部品等の金属材料など種々の物品を挙げることができる。
【0058】
レーザーは、波長及び位相が揃った光を発生させる装置であり、YAG(基本波長=1064nm)、もしくはルビー(基本波長=694nm)などの固体レーザー、又はアルゴンイオンレーザー(基本波長=1930nm)などの気体レーザーおよびこれらの高調波などが知られており、本発明ではそれらの種々のレーザーを用いることができる。
【産業上の利用可能性】
【0059】
本発明においては、基材として特殊なポリウレタンアクリレートフィルムを用いているため、基材にレーザー光が照射されても、基材の受ける損傷は小さく、また基材を透過してチャックテーブルにまで到達する光量は低減される。この結果、レーザーダイシングにおいて、レーザー光によるチャックテーブルの損傷およびダイシングシートのチャックテーブルへの融着が防止され、レーザーダイシングによるチップ体の製造工程が円滑に行われるようになる。また、上記ポリウレタンアクリレートフィルムによれば、シートのエキスパンド後の形状復元性が改善され、リングフレームの回収を円滑に行えるようになる。
【0060】
(実施例)
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0061】
[歪み復元率]
以下の条件で基材の引張り試験を行って得られた値から歪み復元率を求めた。
【0062】
歪み復元率(%)=(l−l)/(l−l) ×100
:初期の長さ
:50%伸長時の長さ
:復元後の長さ
具体的には、実施例・比較例における基材を長さ140mm×幅15mm(厚さは実施例で用いられる厚さ)に切断し、23℃湿度65%の環境下で、測定間隔が100mm(l)になるように基材の両端を把持して引張り試験機に固定し、200mm/minの速度で測定間隔が150mm(l)になるまで伸長し、1分間保持した。その後、引張り試験機から外し、5分間静置した後に基材の長さ(l)を測定した。
【0063】
なお、以下の実施例および比較例において、粘着剤として下記組成物を用いた。
【0064】
[粘着剤組成物]
ブチルアクリレート84重量部、メチルメタクリレート10重量部、アクリル酸1重量部、2-ヒドロキシエチルアクリレート5重量部からなる共重合体(分子量700,000)のトルエン30重量%溶液に対し、多価イソシアナート化合物(コロネートL(日本ポリウレタン社製))3重量部を混合し感圧粘着剤組成物を得た。
【0065】
また、レーザーダイシング条件およびダイシング結果の評価法を以下に示す。
【0066】
[レーザーダイシング条件]
・ 装置 :Nd−YAGレーザー
・ チャックテーブル材質:石英
・ 波長 :355nm(第3高調波)
・ 出力 :5.5W
・ 繰り返し周波数 :10kHz
・ 照射回数 :8回/1ライン
・ カット速度 :200mm/sec
・ デフォーカス量 :テープ表面上から+100μm(ウエハの表面上に焦点)
・ ウエハ材質 :シリコン
・ ウエハ厚 :100μm
・ ウエハサイズ :6インチ
・ カットチップサイズ :5mm□
・ ウエハの外にレーザーが走査する距離:5mm
[切込深さ評価]
レーザーダイシングが終了した後にカットラインを断面観察し、粘着剤層を含むシート表面からの切込深さを計測した(観察部位はウエハが貼られていない、レーザーが直射される部分)。
【0067】
[チャックテーブルの損傷]
レーザーダイシングが終了した後にテーブル表面を目視で観察し、損傷がないか確認した。テーブルに損傷がなかったものを「なし」とし、損傷があったものを「あり」とした。
【0068】
[チャックテーブルへの融着]
レーザーダイシング後にレーザーダイシング装置内臓の搬送機構でダイシングテーブルからダイシングシート付きのウエハを取り出す際、搬送に問題がなかったものを融着「なし」とし、ダイシングシートがテーブルに熱融着してスムーズな搬送が困難だったものを融着「あり」とした。
【0069】
[エキスパンド性]
ウエハが貼られていないダイシングシートを23℃湿度65%の環境でNECマシナリー社製ダイボンダーCSP-100VXを用いて引き落とし量5mmでエキスパンドを試みた。エキスパンド可能であったものを「良好」、基材フィルムが強靭であるために装置が停止またはリングフレームからダイシングシートが脱落したものを「不良」とした。
【0070】
[復元性]
エキスパンド状態で1分間保持し、装置から取り外した後、70℃の乾燥機に1分間投入した。室温に戻した後、図1に示すように、リングフレームの下面に定義される平面と、ダイシングシートとの最大距離(以下「たるみ量」)を計測した。たるみ量が5mm以下であるものを「良好」、5mmを超えるものを「不良」とした。
【0071】
(実施例1)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)およびポリエチレングリコール(PEG:分子量2,000)を、2HEA:IPDI:PEG=2:7:6のモル比で用意した。始めにIPDIとPEGとを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0072】
次いで、ウレタンアクリレート系オリゴマー50重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(イソボルニルアクリレート)50重量部と、光開始剤(チバ・スペシャルティ・ケミカルズ社製ダロキュア1173)0.5重量部とを混合し、フィルム形成用のコーティング液を得た。
【0073】
上記コーティング液をファウンテンダイ方式により、シリコーン剥離処理を行ったポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(リンテック社製SP-PET3801)上に厚みが100μmとなるように塗工して樹脂組成物層を形成した。塗工直後に、樹脂組成物層の上に、同じシリコーン剥離処理を行ったPETフィルムをラミネートし、その後、高圧水銀ランプを用いて、照度250mW/cm2、光量600mJ/cm2の条件でエネルギー線(紫外線)照射を行うことにより樹脂組成物層を架橋・硬化させて、厚さ100μmのポリウレタンアクリレートフィルムを得た。得られたポリウレタンアクリレートフィルムにおけるウレタンアクリレート系オリゴマーの構成比率、ウレタンアクリレート系オリゴマーにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率、ポリウレタンアクリレートフィルムにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率および歪み復元率を表1に示す。
【0074】
両面に積層された剥離フィルムは、後述する粘着剤層を転写する前に剥離した。
【0075】
別に、前記粘着剤組成物を、シリコーン剥離処理を行ったPETフィルム(リンテック社製SP-PET3801)上に乾燥膜厚が10μmとなるように塗布乾燥(100℃、1分間)し、PETフィルム上に粘着剤層を形成した。
【0076】
剥離フィルムを剥離したポリウレタンアクリレートフィルムの片面に、PETフィルム上の粘着剤層を積層して、PETフィルム/粘着剤層/ポリウレタンアクリレートフィルムの層構成を有するダイシングシートを得た。
【0077】
粘着剤層上のPETフィルム(リンテック社製SP-PET3801)を剥離して、100μm厚のシリコンウエハを貼付し、上記した「レーザーダイシング条件」の条件でレーザーダイシングを行った。結果を表2に示す。
【0078】
(実施例2)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、ヘキサヒドロキシレンジイソシアナート(H6XDI)、ポリエチレングリコール(PEG:分子量1,000)を、2HEA:H6XDI:PEG=2:5:4のモル比で用意した。始めにH6XDI、PEGを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0079】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いて、ウレタンアクリレート系オリゴマー60重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(イソボルニルアクリレート)40重量部と、光開始剤0.5重量部とを混合したものをフィルム形成用のコーティング液としポリウレタンアクリレートフィルムを調製した以外は実施例1と同様の操作を行ってポリウレタンフィルムを作製し、これを用いたダイシングシートを得た。なお、得られたポリウレタンアクリレートフィルムにおけるウレタンアクリレート系オリゴマーの構成比率、ウレタンアクリレート系オリゴマーにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率、ポリウレタンアクリレートフィルムにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率および歪み復元率を表1に示す。実施例1と同様の条件を用いてレーザーダイシングを行った結果を表2に示す。
【0080】
(実施例3)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、ジシクロヘキシルメタンジイソシアナート(H12MDI)、ポリエチレングリコール(PEG:分子量4,000)を、2HEA:H12MDI:PEG=2:3:2のモル比で用意した。始めにH12MDIおよびPEGを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0081】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いて、ウレタンアクリレート系オリゴマー40重量部と、エネルギー線硬化性モノマー(イソボルニルアクリレート)60重量部と、光開始剤0.5重量部とを混合したものをフィルム形成用のコーティング液としポリウレタンアクリレートフィルムを調製した以外は実施例1と同様の操作を行ってポリウレタンフィルムを作製し、これを用いたダイシングシートを得た。なお、得られたポリウレタンアクリレートフィルムにおけるウレタンアクリレート系オリゴマーの構成比率、ウレタンアクリレート系オリゴマーにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率、ポリウレタンアクリレートフィルムにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率および歪み復元率を表1に示す。実施例1と同様の条件を用いてレーザーダイシングを行った結果を表2に示す。
【0082】
(比較例1)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、イソホロンジイソシアナート(IPDI)およびポリプロピレングリコール(PPG:分子量2,000)を、2HEA:HDI:PPG=2:5:4のモル比で用意した。始めにIPDIおよびPPGを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0083】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いて、ポリウレタンアクリレートフィルムを調製した以外は実施例1と同様の操作を行ってポリウレタンフィルムを作製し、これを用いたダイシングシートを得た。なお、得られたポリウレタンアクリレートフィルムにおけるウレタンアクリレート系オリゴマーの構成比率、ウレタンアクリレート系オリゴマーにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率、ポリウレタンアクリレートフィルムにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率および歪み復元率を表1に示す。実施例1と同様の条件を用いてレーザーダイシングを行った結果を表2に示す。
【0084】
(比較例2)
2−ヒドロキシエチルアクリレート(2HEA)、ヘキサヒドロキシレンジイソシアナート(H6XDI)、ポリエチレングリコール(PEG:分子量2,000)およびポリプロピレングリコール(PPG:分子量2,000)を、2HEA:H6XDI:PEG:PPG=2:6:1:4のモル比で用意した。始めにH6XDI、PEGおよびPPGを反応させ、得られた反応生成物に、2HEAを付加させることでウレタンアクリレート系オリゴマーを得た。
【0085】
上記ウレタンアクリレート系オリゴマーを用いて、ポリウレタンアクリレートフィルムを調製した以外は実施例1と同様の操作を行ってポリウレタンフィルムを作製し、これを用いたダイシングシートを得た。なお、得られたポリウレタンアクリレートフィルムにおけるウレタンアクリレート系オリゴマーの構成比率、ウレタンアクリレート系オリゴマーにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率、ポリウレタンアクリレートフィルムにおけるアルキレンオキシ基(エチレンオキシ基)の構成比率および歪み復元率を表1に示す。実施例1と同様の条件を用いてレーザーダイシングを行った結果を表2に示す。
【0086】
(比較例3)
ポリウレタンアクリレートフィルムに代えて、応力除去後の歪み復元率が95%の厚さ80μmのポリエチレンフィルムを使用した以外は、実施例1と同様の操作を行って、これを用いたダイシングシートを得た。実施例1と同様の条件を用いてレーザーダイシングを行った結果を表2に示す。
【表1】

【表2】

【0087】
実施例1〜3のダイシングシートは、切断されることもなく、チャックテーブルの損傷およびチャックテーブルへの融着もみられなかった。また、エキスパンド性および復元性も良好であった。比較例1および2のダイシングシートは切断されることもなく、チャックテーブルの損傷およびチャックテーブルへの融着もみられなかった。また、エキスパンド性および復元性も良好であった。しかし、復元性が不良であった。比較例3のダイシングシートは、チャックテーブルの損傷およびチャックテーブルへの融着がみられた。
【図面の簡単な説明】
【0088】
【図1】実施例において評価した「たるみ量」を説明する図面である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリウレタンアクリレートからなる基材と、その片面に形成された粘着剤層とからなるダイシングシートであって、
該ポリウレタンアクリレートが、該ポリウレタンアクリレート100重量%あたり、ウレタンアクリレート系オリゴマー単位30〜70重量%より形成され、かつウレタンアクリレート系オリゴマーが、該ウレタンアクリレート系オリゴマー100重量%あたり、構成単位としてエチレンオキシ基35〜95重量%を有するダイシングシート。
【請求項2】
前記基材の50%伸長後の歪み復元率が80〜100%である請求項1に記載のダイシングシート。
【請求項3】
請求項1または2に記載のダイシングシートの粘着剤層にワークを貼付し、
レーザー光によりワークを個片化してチップを作製し、
ダイシングシートをエキスパンドしてチップ間隔を離間し、
チップをピックアップする、チップ体の製造方法。

【図1】
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【公開番号】特開2008−243858(P2008−243858A)
【公開日】平成20年10月9日(2008.10.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−77906(P2007−77906)
【出願日】平成19年3月23日(2007.3.23)
【出願人】(000102980)リンテック株式会社 (1,750)
【Fターム(参考)】