説明

ダイナミックダンパ

【課題】質量部材の回転方向の振動を抑制することで安定した制振性能を確保することができるダイナミックダンパを提供する。
【解決手段】振動源側に固定される一対の支持部材12と、一対の支持部材12の間に設けられた質量部材14と、一対の支持部材12と質量部材14とを連結するゴム弾性体16とを備え、ゴム弾性体16は、壁状の主連結部と、主連結部の両端部から垂直に延びる補助連結部とを備えることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの車両に組み込まれて、その振動を低減させるダイナミックダンパに関するものである。
【背景技術】
【0002】
自動車などの車両においては、車体を構成するメンバーやサスペンションの部品、排気管、ドアなど振動源の振動を抑制するために、ダイナミックダンパが組み込まれることがある。ダイナミックダンパは、それによって構成される副振動系の固有振動数を、振動体の固有振動数にチューニングすることにより、振動体の振動低減を図るものであり、従来より種々の提案がなされている(例えば、下記特許文献1、2参照)。
【0003】
図4は、従来例に係るダイナミックダンパ100を示したものである。図示するように、ダイナミックダンパ100は、振動源側に固定される一対の支持部材102と、一対の支持部材102の間に設けられた質量部材104と、一対の支持部材102と質量部材104とを連結するゴム弾性体106とを備えてなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平9−184538号公報
【特許文献2】特開2000−18317号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
このような従来例に係るダイナミックダンパ100では、両端部に連結したゴム弾性体106が質量部材104を支持しているため、質量部材104が、図4において矢印Rで示す、ゴム弾性体106に支持される位置を結ぶ直線を中心とする回転方向に振動しやすい。このような質量部材104の回転方向Rの振動は、本来要求される共振モードとしての並進方向(例えば、図4において矢印Xで示す方向)の振動と近い周波数にあることが多く、その場合、両者が連成することで、並進モードの共振倍率が低下してしまい、狙いの性能が得られないという問題がある。
【0006】
なお、ゴム弾性体106を肉厚に設けたり、ゴム弾性体106を間隔をあけて複数設けたりすることで、質量部材104の回転方向Rの振動を抑制することも考えられる。
【0007】
しかしながら、ダイナミックダンパ100は、質量部材104の質量とゴム弾性材106のばね定数とを適宜設定することにより、抑制する共振周波数をチューニングするため、抑制する共振周波数によっては充分にゴム弾性体106を肉厚に設けることができないことがある。また、ダイナミックダンパ100では、軽量・小型化が強く要請されているため、質量部材104においてゴム弾性体106を連結する面が狭く、間隔をあけて複数のゴム弾性体106を設けることが困難であったり、ゴム弾性体106を加硫成形型から脱型する際にゴム弾性体106が破断しやすいという問題がある。
【0008】
本発明は、以上の点に鑑みてなされたものであり、質量部材の回転方向の振動を抑制することで安定した制振性能を確保することができるダイナミックダンパを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係るダイナミックダンパは、振動源側に固定される一対の支持部材と、前記一対の支持部材の間に設けられた質量部材と、前記一対の支持部材と前記質量部材とを連結するゴム弾性体とを備え、前記ゴム弾性体は、壁状の主連結部と、前記主連結部の両端部から垂直に延びる補助連結部とを備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明において、前記補助連結部が、前記主連結部の両側から垂直に延びるように設けられてもよい。
【発明の効果】
【0011】
本発明では、質量部材を支持部材に連結するゴム弾性体が、壁状の主連結部とその両端部から垂直に延びる補助連結部とを備えるため、質量部材の回転方向の振動を抑制することができ安定した制振性能を確保することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【図1】本発明の第1の実施形態に係るダイナミックダンパの平面図である。
【図2】図1に示すダイナミックダンパの正面図である。
【図3】図1のA−A断面図である。
【図4】従来例に係るダイナミックダンパの平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
以下、本発明の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0014】
本実施形態のダイナミックダンパ10は、自動車のバックドアの内部に組み込まれてバックドアの振動に起因する異音を防止するものであり、図1に示すように、振動源であるバックドアの内部の取付面Fに固定される一対の支持部材12と、一対の支持部材12の間に設けられた質量部材14と、一対の支持部材12と質量部材14とを連結するゴム弾性体16とを備えてなる。なお、以下の説明において、ダイナミックダンパ10の各部の並進方向及び左右方向については、ダイナミックダンパ10がバックドアに取り付けられた状態を示す図1及び図2において矢符Xで示す方向を並進方向、矢符Yで示す方向を左右方向、矢符Zで示す方向を上下方向とする。
【0015】
一対の支持部材12は、いずれも同一形状の金属製金具であり、バックドアの内部の取付面Fに沿って配されボルト等の固定手段(不図示)によって該取付面Fに対して固定される固定板18と、固定板18の一端部から並進方向Xへ垂直に立ち上がる支持板20とを備える。
【0016】
質量部材14は、左右方向Yに長い直方体状の金属製部材であり、一対の支持部材12に設けられた支持板20との間で左右方向Yに所定間隔をあけて対向配置されている。
【0017】
ゴム弾性体16は、一対の支持部材12の固定板18と、これに対向する質量部材14の左右両側面との間にそれぞれ介設されている。これにより、一対の支持部材12は、固定板18において一対のゴム弾性体16を介して質量部材14を弾性支持するように構成されている。
【0018】
ゴム弾性体16は、図3に示すように、上下方向Zに沿って延びる壁状の主連結部22と、主連結部22の上下方向両端部から垂直、つまり、並進方向Xに延びる補助連結部24とを備える。補助連結部24は主連結部22の両側から並進方向Xに延設され、これによりゴム弾性体16の断面形状がH字状をなしている。このような断面H字状のゴム弾性体16は、左右方向Yに延びて形成されており、両端部が質量部材14と支持部材12の固定板18に加硫接着されている。
【0019】
質量部材14の左右方向Yの両端部には、その周面を全周にわたって取り囲むストッパゴム部26が設けられている。ストッパゴム部26は、質量部材14が過大変位した際に周囲の部材と直接衝突するのを防止するものであり、ゴム弾性体16から連なるゴム材により一体に加硫成形されている。
【0020】
以上のような本実施形態のダイナミックダンパ10では、質量部材14を支持部材12に連結するゴム弾性体16が、壁状の主連結部22とその両端部から垂直に延びる補助連結部24とを備えるため、ゴム弾性体16の断面二次モーメントを大きくすることができ、一対のゴム弾性体16を結ぶ直線を中心とする回転方向への振動が抑制され、安定した制振性能を発揮することができる。
【0021】
また、ゴム弾性体16とストッパゴム部26は不図示の成形型内に質量部材14と支持部材12をセットしてゴム材料を加硫成形することにより成形されるが、ゴム弾性体16を上記のような断面形状としたことで、脱型時にゴム弾性体16が引っ掛かりにくく破断しにくい。
【0022】
なお、上記した本実施形態のダイナミックダンパ10では、主連結部22の両側から補助連結部24を並進方向Xに延設してゴム弾性体16を断面H字状に設けたが、本発明はこれに限定されず、例えば、主連結部22の片側から補助連結部24を並進方向Xに延設してゴム弾性体16を断面コ字状に設けてもよい。
【符号の説明】
【0023】
10…ダイナミックダンパ
12…支持部材
14…質量部材
16…ゴム弾性体
18…固定板
20…支持板
22…主連結部
24…補助連結部
26…ストッパゴム部
F…取付面

【特許請求の範囲】
【請求項1】
振動源側に固定される一対の支持部材と、前記一対の支持部材の間に設けられた質量部材と、前記一対の支持部材と前記質量部材とを連結するゴム弾性体とを備え、前記ゴム弾性体は、壁状の主連結部と、前記主連結部の両端部から垂直に延びる補助連結部とを備えることを特徴とするダイナミックダンパ。
【請求項2】
前記補助連結部が、前記主連結部の両側から垂直に延びることを特徴とする請求項1に記載のダイナミックダンパ。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate


【公開番号】特開2012−207695(P2012−207695A)
【公開日】平成24年10月25日(2012.10.25)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−72190(P2011−72190)
【出願日】平成23年3月29日(2011.3.29)
【出願人】(000003148)東洋ゴム工業株式会社 (2,711)
【Fターム(参考)】