説明

ダイバータ

【課題】ローラコンベア装置用のダイバータにおいて、搬送物品と従動ローラの接触面積を極大化することにより接触部の圧力を減らし、搬送物品を傷つける可能性をより低減する。
【解決手段】物品70を第1搬送方向に搬送する第1搬送ローラ1と、第2搬送方向に搬送する第2搬送ローラ2を、ほぼ同じ構成を有し、その外径が異なる単位多重ローラ部材で構成し、第1搬送ローラ1の外径部の最上部と第2搬送ローラ2の外径部の最上部とが同じ高さになるように設ける。単位多重ローラ部材は、駆動ホイール12,22と、駆動ホイールの外周部に所定のピッチで設置された複数の従動ローラ11,21を有する複数のホイール部材10,20を、従動ローラ11,21のピッチの位相が1/2ピッチずれるように結合されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、板ガラスのような底面が平らな物品を搬送するローラコンベア装置に関し、さらに詳しくは、コンベアラインを構成するにあたって搬送中の物品の搬送方向を変更させるダイバータの構造を単純化し、搬送作業時間を短縮して生産性を向上し、搬送物品への衝撃を最小化しうる多重ローラを用いたダイバータに関する。
【背景技術】
【0002】
物流搬送装置のうちローラコンベアは、その搬送面に複数のローラが配列され、搬送面上に載置された物品を搬送する装置であり、ダイバータは、このようなローラコンベア装置を構成する附属装置であって、搬送物品の搬送方向を変更させる装置である。
【0003】
図4は、従来の一般的なローラ型ダイバータの一例を示す側面図である。従来のダイバータは、回転軸が第1搬送方向に平行に配列設置された複数の第1搬送ローラ1と、回転軸が第1搬送方向に直交する第2搬送方向に平行に配列設置された複数の第2搬送ローラ2を有しており、第1搬送ローラ1と第2搬送ローラ2が、それぞれ互いにローラの外周面の最上部が高低差を有するように配列設置されている。また、搬送方向を切り換えるために、第2搬送ローラ2を上昇又は下降させるための昇降シリンダ3が設けられている。
【0004】
上記従来のローラ型ダイバータの第1搬送ローラ1と第2搬送ローラ2は、いずれも一般的に用いられているものであって、円盤状ホイールとそのホイールの中心に挿入される軸とで構成されたものであり、第1搬送ローラ1及び第2搬送ローラ2は、それぞれホイールが一方向のみ回動するように制限されている。
【0005】
このような従来のローラ型ダイバータは、複数の第1搬送ローラ1と複数の第2搬送ローラ2をそれぞれ別途に配列設置し、第2搬送ローラ2を第1搬送ローラ1に対して昇降させることによって方向転換機能を行うための昇降シリンダ3を別途に設置する必要があるために、装置の構成が非常に複雑であり、且つ、施設コストが増加するという問題点を有していた。
【0006】
特に、搬送方向を切り換える場合、第1搬送ローラ1により第1搬送方向に搬送された物品をダイバータ上で一旦停止させ、その状態で昇降シリンダ3を起動させて、第2搬送ローラ2のローラの外周面の最上部が第1搬送ローラ1のローラの外周面の最上部よりも高くなるように第2搬送ローラ2を上昇させる必要がある。逆の場合も同様である。そのため、従来のダイバータでは、物品の搬送方向を切り換えるために、第2搬送ローラ2を昇降させるための時間が必要であり、コンベアライン全体のタクトタイムが長くなり、生産性が低下するという問題点を有していた。
【0007】
また、従来のローラ型ダイバータにより板ガラスなどの搬送方向を変更させる場合、第2搬送ローラ2の昇降工程を伴うため、搬送作業時に搬送される板ガラスの表面が損傷する虞があり、コンベアライン上でのエラー発生率が高くなり、生産性が低下するという問題点を有していた。
【0008】
このような従来例の問題点を解決するために、参考例として、本出願人はダイバータを提案している(大韓民国特許出願番号第10−2007−70515号)。このダイバータは、図5及び図6に示すように、フレーム100と、フレーム100上に回転可能にマトリックス状に配置された複数の第1搬送ローラ201と待ちルックス状に配置された複数の第2搬送ローラ202で構成されている。1つの回転軸110及び140には、それぞれ複数の第1搬送ローラ201及び第2搬送ローラ202が所定間隔で固定され、さらに複数の回転軸110及び140が互いに直交するように配置されている。
【0009】
また、第1搬送ローラ201と第2搬送ローラ202は、図6に示すようにほぼ同じ構成を有しているが、図5に示すようにその外径が異なる。そして、第1搬送ローラ201の外径部の最上部と第2搬送ローラ202の外径部の最上部とが同じ高さに位置するように設置されている。第1搬送ローラ201と第2搬送ローラ202の外径を異ならせることによって、第1搬送ローラ201の第1回転軸110と第2搬送ローラ202の第2回転軸140とが、空間的に干渉することを防止しつつ、第1搬送ローラ201の外径部の最上部と第2搬送ローラ202の外径部の最上部とを同じ高さに位置させることができる。
【0010】
フレーム100には、複数の第1回転軸110と、その複数の第1回転軸110を同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動させる第1回転軸駆動機構120と、第1回転軸駆動機構120に回転動力を伝達する第1駆動モータ130と、複数の第2回転軸140と、その複数の第2回転軸140を同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動させる第2回転軸駆動機構150と、第2回転軸駆動機構150に回転動力を伝達する第2駆動モータ160が設けられている。
【0011】
図6に示すように、第1搬送ローラ201または第2搬送ローラ202を構成する単位二重ローラ部材200は、物品の搬送方向に対して直交する方向に設置された回転軸110又は140を中心として回転される駆動ホイール210と、駆動ホイール210の外周部に一定の間隔で設置され、その回転軸方向が駆動ホイール210の回転軸110又は140に直交する複数の従動ローラ220を有している。円盤状の駆動ホイール210の外周部には、所定のピッチで形成された複数の溝212が形成されており、各従動ローラ220の回転軸は、各溝212において、駆動ホイール210の外周部の接線方向に平行となるように設けられている。従動ローラ220は略球状であり、その外周面の最外部221が駆動ホイール210の最外周面211よりも外側に突出している。また、隣接する2つの従動ローラ220の最外部221を結ぶ接線が駆動ホイール210の最外周面211よりも外側を通るように、従動ローラの外径が設定されている。それによって、搬送物品の底面は、いずれかの従動ローラ220の最外部221と点接触し、駆動ホイール210の最外周面211とは接触しない。なお、単位二重ローラ部材200は、駆動ホイール210と従動ローラ220で構成されているため「二重」ローラ部材と呼ぶ。
【0012】
このように構成された本出願人による先のダイバータの動作について説明する。図7に示すように、ダイバータ上に底面が平らな物品300が載置されている場合、第1搬送ローラ201と第2搬送ローラ202の全てのアイドルホイール220の外周面221に接触した状態で、第1搬送ローラ201又は第2搬送ローラ202のいずれかが駆動されることによって搬送方向が決定される。なお、第1搬送ローラ201と第2搬送ローラ202は同時に駆動されることはない。
【0013】
例えば、図7に示すように、第1駆動モータ130が駆動され、全ての第1搬送ローラ201が矢印で示すように時計方向に回転駆動されるものとする。このとき、第1搬送ローラ201の従動ローラ220の回転軸は第1搬送ローラ201の回転方向と平行であるため、第1搬送ローラ201の従動ローラ220は回転せず、物品300と接触したまま第1搬送ローラ201の回転方向に移動し、物品300を図中右方向(第1搬送方向)に搬送する。一方、第2搬送ローラ202は回転しないが、第2搬送ローラ202の従動ローラ220の回転軸は第1搬送ローラ201の回転方向と直交しているため、第2搬送ローラ202の従動ローラ220は第1搬送ローラ201と同じ方向に回転し、物品300の移動を妨げることはない。その結果、物品300は、図中右方向にスムーズに搬送される。
【0014】
物品300の搬送方向を切り換える場合は、第1駆動モータ130の駆動を停止し、第2駆動モータ160を回転駆動させればよい。そうすると、第2搬送ローラ202が所定の方向に回転し、第1搬送ローラ201が回転しないので、上記と同様に原理により、物品300が紙面に垂直な方向のいずれか(第2搬送方向)に搬送される。
【0015】
このように、本出願人による先のダイバータによれば、図4に示す従来のダイバータに比べて、搬送ローラを昇降させるための時間が不要であり、コンベアライン全体のタクトタイムを短くして、生産性を向上させることができるという有利点を有している。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0016】
ところで、本出願人による先のダイバータにおいても、搬送される物品と従動ローラとの間の接触部位の面積が小さいために、接触部分に圧力が集中する。そのため、例えば、搬送物品が板ガラスなど破損しやすい物品であり、かつ従動ローラ220がステンレス鋼などの硬質材料で形成されているような場合に、搬送物品の表面に傷を付けずに搬送することは不可能である。
【0017】
本発明の目的は、上記本出願人による先のダイバータをさらに改善し、搬送物品と従動ローラの接触面積を極大化することにより接触部の圧力を減らし、搬送物品を傷つける可能性をより低減したダイバータを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記目的を達成するために、請求項1の発明は、ローラコンベア装置において使用され、搬送物品の搬送方向を切り換えるためのダイバータであって、
第1搬送方向に直交する第2搬送方向に一定の間隔で平行に配列された複数の第1回転軸にそれぞれ前記第1搬送方向に一定の間隔で固定され、同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動され、前記搬送物品を前記第1搬送方向に搬送させるための一群の第1搬送ローラと、前記第1搬送方向に一定の間隔で平行に配列された複数の第2回転軸にそれぞれ前記第2搬送方向に一定の間隔で固定され、同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動され、前記搬送物品を前記第2搬送方向に搬送させるための一群の第2搬送ローラを備え、
前記第1搬送ローラ及び前記第2搬送ローラは、ほぼ同じ構成を有しているがその外径が異なる単位多重ローラ部材で構成され、前記第1搬送ローラの外径部の最上部と前記第2搬送ローラの外径部の最上部とが同じ高さになるように設けられ、
前記単位多重ローラ部材は、前記第1回転軸又は前記第2回転軸に固定される駆動ホイールと、前記駆動ホイールの外周部に所定のピッチで設置され、その回転軸方向が前記第1回転軸又は前記第2回転軸に直交する複数の従動ローラを有する複数のホイール部材を、前記従動ローラの前記所定のピッチの位相が互いにずれるように結合して構成されていることを特徴とする。
【0019】
請求項2の発明は、請求項1に記載のダイバータにおいて、前記単位多重ローラ部材は、2つの前記ホイール部材を、一方の前記ホイール部材の前記従動ローラのその軸方向における中央部と、他方の前記ホイール部材の前記従動ローラを軸支する軸受け部とが対向するように結合されていることを特徴とする。
【0020】
請求項3の発明は、請求項1又は請求項2に記載のダイバータにおいて、前記受動ローラは、前記軸方向における中央部の直径が、前記軸方向の両端部の直径よりも大きく、且つ、前記中央部の直径よりも全長が長い、略バレル(樽)状に形成されていることを特徴とする。
【0021】
請求項4の発明は、請求項3に記載のダイバータにおいて、前記従動ローラの略バレル状は、複数の前記従動ローラの略バレル状部分を繋いだ仮想線が前記ホイール部材の回転中心を中心とする単一の円を構成するように設定され、それによって一つの完全な円筒ローラとほぼ同じ作用をすることを特徴とする。
【発明の効果】
【0022】
本発明によれば、載置される搬送物品の表面と搬送ローラの最外周部とが点接触でなく線接触した状態で搬送ローラが回転するので、接触部位の圧力が分散され、衝撃が減少される。その結果、搬送物品の表面(底面)に傷が入る可能性をより低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイバータに適用される単位多重ローラ部材の構成を示す斜視図。
【図2】図1の単位多重ローラ部材の分解状態を示す斜視図。
【図3】上記本発明の一実施形態に係るダイバータの動作状態を示す正面図。
【図4】従来のダイバータの構成を示す側面図。
【図5】参考例として、本出願人による二重ローラ部材を用いた先のダイバータの構成を示す斜視図。
【図6】図5に適用された単位二重ローラ部材の構成を示す斜視図。
【図7】図5に示すダイバータの動作状態を示す正面図。
【発明を実施するための形態】
【0024】
図1は、本発明の一実施形態に係るダイバータに用いられる単位多重ローラ部材の結合状態における構成を示す斜視図である。図2は、図1の単位多重ローラ部材の分解状態を示す斜視図である。図3は、本実施形態に係るダイバータの動作状態を示す正面図である。図3において、直径の大きな搬送ローラを第1搬送ローラ1、直径の小さな搬送ローラを第2搬送ローラ2とする。
【0025】
上記のように、本発明に係るダイバータは図5乃至7に示す本出願人による先のダイバータを改良するものであり、その基本構成は図5に示すものと同様である。すなわち、搬送物品を第1搬送方向に搬送させるための一群の第1搬送ローラ1(図5の第1搬送ローラ201に相当)は、第1搬送方向に直交する方向(第2搬送方向)に一定の間隔で平行に配列された複数の第1回転軸110にそれぞれ第1搬送方向に一定の間隔で固定され、第1回転軸駆動機構120及び第1駆動モータ130により、同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動される。同様に、搬送物品を第2搬送方向に搬送させるための一群の第2搬送ローラ2(図5の第2搬送ローラ202に相当)は、第1搬送方向に一定の間隔で平行に配列された複数の第2回転軸140にそれぞれ第2搬送方向に一定の間隔で固定され、第2回転軸駆動機構150及び第2駆動モータ160により、同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動される。
【0026】
また、第1搬送ローラ1と第2搬送ローラ2は、図1及び図2に示すようにほぼ同じ構成を有しているが、図5に示すようにその外径が異なる。そして、図3に示すように、第1搬送ローラ1の外径部の最上部と第2搬送ローラ2の外径部の最上部とが同じ高さに位置するように設置されている。第1搬送ローラ1と第2搬送ローラ2の外径を異ならせることによって、第1搬送ローラ1の第1回転軸110と第2搬送ローラ2の第2回転軸140とが、空間的に干渉することを防止しつつ、第1搬送ローラ1の外径部の最上部と第2搬送ローラ2の外径部の最上部とを同じ高さに位置させている。また、一群の第1搬送ローラ1と一群の第2搬送ローラ2が同時に回転駆動されることはない。
【0027】
図1及び図2に示すように、本実施形態に係るダイバータにおいて、第1搬送ローラ1及び第2搬送ローラ2として用いられる単位多重ローラ部材3は、ほぼ同一の構成及び寸法を有する2つのホイール部材10及び20を結合して構成されている。ホイール部材10,20は、それぞれ物品の搬送方向に対して直交する方向に設置された回転軸30(110又は140に相当)を中心として回転される駆動ホイール12,22と、駆動ホイール12,22の外周部に一定の間隔で設置され、その回転軸方向が駆動ホイール12,22の回転軸30に直交する複数の従動ローラ11,21を有している。
【0028】
円盤状の駆動ホイール12,22の外周部には、所定のピッチで形成された複数の略Y状軸受け部15が形成されており、各従動ローラ11,21の両端から外向きに突出する回転軸11a,21aは、駆動ホイール12,22の外周部の接線方向に平行となるように、隣接する2つの軸受け部15に軸支されている。各従動ローラ11,21は、同じ規格を有しており、その軸方向の中央部の直径が両端部の直径よりも大きく、且つ、中央部の直径よりも全長(軸受け部を除く)が長い、略バレル(樽)状に形成されている。また、図3に示すように、各従動ローラ11,21の略バレル状部分11b、21bは、直径の小さい両端部においてもその最外部が駆動ホイール12,22の最外周面(軸受け部15の最外周部)よりも外側に突出し、且つ、複数(図では8個)の従動ローラ11,21の略バレル状部分を繋いだ仮想線31がホイール部材10,20の回転中心を中心とする単一の円を構成するように設定されている。さらに、一方のホイール部材10と他方のホイール部材20は、駆動ホイール12の軸受け部15と駆動ホイール22の軸受け部15が1/2ピッチずれる(ピッチの位相が半周期ずれる)ように結合されている。すなわち、回転軸30に平行な方向において、一方ホイール部材10の従動ローラ11の中央部と他方のホイール部材20の軸受け部15が対向し、その逆も同様である。このような構成により、図3に示すように、2つのホイール部材10及び20を結合して構成された単位多重ローラ部材3が、一つの完全な円筒ローラとほぼ同じ作用をするため、その動作過程において振動現象がほとんど発生しなくなる。それによって、搬送物品の底面は、いずれか1つ又は2つの従動ローラ11,21の外周面とのみ接触し、駆動ホイール12,22の最外周面とは接触しない。なお、単位多重ローラ部材3は、駆動ホイール12,22と従動ローラ11,21で構成されたホイール部材10,20を結合して構成されているため「多重」ローラ部材と呼ぶ。
【0029】
次に、上記のように構成された本実施形態に係るダイバータの動作状態について、図3を参照しつつ詳細に説明する。図3は、本実施形態に係るダイバータの動作状態を示す正面図であって、ダイバータ上に底面が平らな物品70が載置されている場合、物品70の底面が第1搬送ローラ及び第2搬送ローラを構成する各単位多重ローラ部材3のいずれかの1つ又は2つ従動ローラ11,21の外周面に接触した状態で、一群の第1搬送ローラ又は一群の第2搬送ローラのいずれかが駆動されることにより、物品70が第1搬送方向又は第2搬送方向に搬送される。
【0030】
ここで、図5に示す例に従って、直径の大きい方を第1搬送ローラ、直径の小さい方を第2搬送ローラとする。図3において、例えば直径の小さい方の一群の第2搬送ローラが、回転軸30の周りに回転駆動されたと仮定する。このとき、第2搬送ローラの各従動ローラ11,21の回転軸は、第2搬送ローラの回転方向と平行であるため、第2搬送ローラの各従動ローラ11,21は回転せず、物品70の底面と接触したまま第2搬送ローラの回転方向に移動し、物品70を図中右方向に搬送する。一方、直径の大きな第1搬送ローラは回転しないが、第1搬送ローラの各従動ローラ11,21の回転軸は第2搬送ローラの回転方向と直交しているため、第1搬送ローラの従動ローラ11,12は第2搬送ローラと同じ方向に回転し、物品70の移動を妨げることはない。その結果、物品70は、図中右方向(第2搬送方向)にスムーズに搬送される。
【0031】
物品70の搬送方向を切り換える場合は、第2搬送ローラを駆動させるための第2駆動モータ160の駆動を停止し、第1搬送ローラを駆動させるための第1駆動モータ130を回転駆動させればよい。そうすると、直径の大きい方の第1搬送ローラが所定の方向に回転し、直径の小さい方の第2搬送ローラが回転しないので、上記と同様に原理により、物品70が紙面に垂直な方向のいずれか(第1搬送方向)に搬送される。
【0032】
このように、本実施形態によれば、第1搬送ローラ及び第2搬送ローラとして、ほぼ同一の構成及び寸法を有し、外周部に所定のピッチで複数の従動ローラが配置された2つのホイール部材10,20を、従動ローラのピッチを1/2ピッチずらすようにして結合すると共に、各従動ローラ11,21を、その軸方向の中央部の直径が両端部の直径よりも大きく、且つ、中央部の直径よりも全長が長い、略バレル(樽)状に形成したので、搬送物品の底面には、1つ又は2つの従動ローラが接触する。従動ローラが剛体であって弾性変形しないものと仮定しても、1つの従動ローラでのみ接触する(すなわち点接触する)時間は非常に短く、ほとんどの時間2つの従動ローラと接触している。実際には、従動ローラがステンレス鋼などの硬い材料で形成されていたとしても、搬送物品の加重によって多少は弾性変形するので、搬送物品の底面と従動ローラの最外周部とが点接触ではなく線接触する。その結果、接触部位の圧力が分散され、搬送物品に加えられる衝撃力が減少され、搬送物品の表面に傷が入る可能性をより低減することができる。
【0033】
また、上記第1搬送ローラ及び第2搬送ローラは、ほぼ同一の構成及び寸法を有する2つのホイール部材を、従動ローラのピッチが1/2ピッチだけずれるように結合して構成され、複数の従動ローラの略バレル状部分を繋いだ仮想線がホイール部材の回転中心を中心とする単一の円を構成するように設定されているので、一つの完全な円筒ローラとほぼ同じ作用をするため、その動作過程において振動現象がほとんど発生しなくなる。その結果、板ガラスのような破損しやすい物品であっても、搬送物品の表面(底面)に傷を付けること無く、スムーズに搬送し及び搬送方向の切り換えを行うことが可能となる。
【0034】
なお、上記実施形態においては、第1搬送ローラ及び第2搬送ローラとして、ほぼ同一の構成及び寸法を有する2つのホイール部材を、従動ローラのピッチが1/2ピッチだけずれるように結合して構成したが、本発明はこれに限定されるものではなく、ほぼ同一の構成及び寸法を有する3つ以上のホイール部材を、従動ローラのピッチが所定ピッチだけずれるように結合して構成してもよい。所定ピッチとしては、上記1/2ピッチでもよいし、1/(ホイール部材の数)ピッチであってもよい。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、板ガラスのような底面が平らな物品を搬送するためのローラコンベア装置において使用される搬送方向切り換え用のダイバータであって、物品に加えられる衝撃力を最小化しながら物品を搬送することができ、且つ、物品の表面(側面)を傷つけることがないので、平面ディスプレイパネルの加工工場などにおいて直ちに適用することができる産業上の利用可能性が非常に高い技術である。
【符号の説明】
【0036】
1 第1搬送ローラ
2 第2搬送ローラ
3 単位多重ローラ部材
10,20 ホイール部材
11,21 従動ローラ
11b、21b 略バレル状部分
12,22 駆動ホイール
15 軸受け部
30 回転軸
31 略バレル状部分を繋いだ仮想線
70 搬送物品
110 第1回転軸
140 第2回転軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ローラコンベア装置において使用され、搬送物品の搬送方向を切り換えるためのダイバータであって、
第1搬送方向に直交する第2搬送方向に一定の間隔で平行に配列された複数の第1回転軸にそれぞれ前記第1搬送方向に一定の間隔で固定され、同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動され、前記搬送物品を前記第1搬送方向に搬送させるための一群の第1搬送ローラと、前記第1搬送方向に一定の間隔で平行に配列された複数の第2回転軸にそれぞれ前記第2搬送方向に一定の間隔で固定され、同時に同じ方向及び同じ回転速度で回動され、前記搬送物品を前記第2搬送方向に搬送させるための一群の第2搬送ローラを備え、
前記第1搬送ローラ及び前記第2搬送ローラは、ほぼ同じ構成を有しているがその外径が異なる単位多重ローラ部材で構成され、前記第1搬送ローラの外径部の最上部と前記第2搬送ローラの外径部の最上部とが同じ高さになるように設けられ、
前記単位多重ローラ部材は、前記第1回転軸又は前記第2回転軸に固定される駆動ホイールと、前記駆動ホイールの外周部に所定のピッチで設置され、その回転軸方向が前記第1回転軸又は前記第2回転軸に直交する複数の従動ローラを有する複数のホイール部材を、前記従動ローラの前記所定のピッチの位相が互いにずれるように結合して構成されていることを特徴とするダイバータ。
【請求項2】
前記単位多重ローラ部材は、2つの前記ホイール部材を、一方の前記ホイール部材の前記従動ローラのその軸方向における中央部と、他方の前記ホイール部材の前記従動ローラを軸支する軸受け部とが対向するように結合されていることを特徴とする請求項1に記載のダイバータ。
【請求項3】
前記受動ローラは、前記軸方向における中央部の直径が、前記軸方向の両端部の直径よりも大きく、且つ、前記中央部の直径よりも全長が長い、略バレル(樽)状に形成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のダイバータ。
【請求項4】
前記従動ローラの略バレル状は、複数の前記従動ローラの略バレル状部分を繋いだ仮想線が前記ホイール部材の回転中心を中心とする単一の円を構成するように設定され、それによって一つの完全な円筒ローラとほぼ同じ作用をすることを特徴とする請求項3に記載のダイバータ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【公開番号】特開2010−275058(P2010−275058A)
【公開日】平成22年12月9日(2010.12.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−128239(P2009−128239)
【出願日】平成21年5月27日(2009.5.27)
【出願人】(505272412)株式会社 太星技研 (9)
【Fターム(参考)】