説明

ダイヤフラムポンプ

【課題】 ダイヤフラムを筒状にして流路としたポンプにおいて、流量の安定性が高く、多様な使用条件に対応することができ、なおかつ、ダイヤフラムの耐久性が高いダイヤフラムポンプを提供する。





【解決手段】 筒状ダイヤフラムの材質を金属とし、かつ断面を楕円形等にすることで、ダイヤフラムの厚みの変化を避け、伸縮に方向性を持たせることより、力の集中を防ぎ、復元を完全なものにする。それにより、流量の安定、耐圧力、耐久性の向上が図れる。




【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、往復動ポンプのような、定流量や高圧の流体を生成するシステムにおいて、流体が触れる接液部とその他の箇所を隔離するダイヤフラムを使ったポンプに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ポンプは接液部とその他の箇所を隔離する為、Oリングなどのシ−ル材を用いてきた。しかしいかなるシ−ル材も、摺動部からの漏れは不可避であり、完全な無漏洩を実現するには、ダイヤフラムを使用する以外にない。ダイヤフラムを使用したポンプは多数あり、一般的に、流体が流れるポンプ室と、ブランジャなどが稼動する作動室をダイヤフラムで分け、作動室側の圧力が変動され、それが動作流体を通じてダイヤフラムに伝わり、ダイヤフラムが伸縮することで、ポンプとしての役割を果たす構造となっている。(特許文献1)また、ダイヤフラムを単純な膜として使用するのではなく、筒状に形成したダイヤフラム(以下チューブフラムと称する)で流路を形成するといった使われ方もしている。(特許文献2)
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】実開昭55−88088号広報
【特許文献2】特開2009−47090号広報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、従来のダイヤフラムは素材としてゴムなどの弾性体、または樹脂を素材として使用しているが、いずれも圧力に対して弱く、圧力下では圧縮されてしまう。
【0005】
そのため、特許文献2のように、チューブフラムを流路として使用すると、搬送流体の圧力と、ブランジャ等の圧力を伝達するための動作流体により、チューブフラムは内外から圧力を受け、チューブフラム自体が圧縮されて流路の内容積が変化する。結果として、圧力変動などにより容易に流量が変化するため、精密さを求められる定量ポンプには適さなかった。
【0006】
また、チューブフラムの形状が、一般的な断面が円形の円筒である場合、圧力により構造上弱い一点が変形することで、より圧力がかかりやすくなり、チューブフラムが破壊されやすくなるという問題があった。
【0007】
本発明においては、前述したような、従来のダイヤフラムポンプが持つ問題を解決し、より高い汎用性と安定した流量を持ち、なおかつ耐久性の高いダイヤフラムポンプを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
前記課題を解決するために、本発明は流路を形成するチューブフラムの素材として、金属材を用いることを特徴とする。金属材がゴム等の弾性体に比べ、圧力により圧縮されにくいことはよく知られた事実であり、そのため、高圧下における使用にも耐えることができ、なおかつ圧力変動の影響も受けにくい。
【0009】
この際用いられる金属材としては、ステンレスなど耐食性、耐薬品性に優れた材料が望ましく、特に金属ガラスなどのアモルファス金属であることが望ましい。
【0010】
アモルファス金属は、結晶構造を持たない金属であり、そのため、しなやかでありながら高い強度を持つ上、通常の金属材に比べて、高い耐食性や耐薬品性を有しているものもある。そのため、定量性ポンプのダイヤフラム素材として、非常に有用である。
【0011】
また、本発明において前記チューブフラムの形状は、単純な円筒ではなく、断面が楕円状の形状をしている、または厚みに変化をもっている、あるいはその両方を備えていることを特徴としている。
【0012】
前記のような構造をとることで、楕円形の長径部分や、厚みが薄い部分といった、変形しやすい部分を意図的に作ることができる。このような変形しやすい部分を広く取ることで、チューブフラムが受ける圧力が一極に集中することを防ぎ、破壊を回避できる。また、ブランジャと面した部分を厚く作るなどして、動作流体の運動エネルギーによる負荷に耐えられるように作ることができる。
【0013】
また、厚みに差をもたせたことにより、チューブフラムがあたかもバネのような性質を持ち、ブランジャなどにより直接圧迫されても、その弾性により容易に形状を復帰させることができる。そのため、圧力を媒介するための流体を用いることなく、ポンプを作動することが可能となる。

【発明の効果】
【0014】
本発明のダイヤフラムポンプによれば、従来のダイヤフラムポンプでは不可能であった、圧力や流体の性質など、幅広い条件で使用でき、なおかつ高い定量性をもちながら、流体の漏洩が起こらないポンプを提供することができる。そのため、流量の精度が求められる多種類の液体のライン混合や、精密塗工に、利用が期待できる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0015】
以下添付図面を元に本発明を実施する形態を説明するが、あくまでも一例であり、本発明の範囲をなんら限定するものではない。
【0016】
図1は、本発明におけるダイヤフラムポンプのポンプヘッド部分、チューブフラム周辺の概略構成を表す内部図である。ポンプ筺体1には、ブランジャ2、チューブフラム固定部3、流体導出部4、流体導入部5、作動空間6、チューブフラム7、逆止弁8、その他図示しない動作流体導入部及び動作流体導出部が設けられている。
【0017】
作動空間6には、動作流体を充填し、ブランジャ2の往復運動により、動作流体、及びそれを介して、チューブフラム7内部の圧力が変動する。それにより、搬送流体は圧力の低下に伴い、流体導入部5よりチューブフラム内に引き込まれ、圧力の上昇と共に流体導出部4より吐出される構造となっている。
【0018】
また、図1においては、ブランジャと動作流体が直接触れる構造となっているが、ブランジャと作動空間の間に、ダイヤフラムを設けてもよい。さらに、作動空間に動作流体を充填せず、直接ブランジャがチューブフラムを圧迫する構造としても良い。
【0019】
チューブフラム7は、その両端をチューブフラム固定部3により、固定されている。チューブフラム7の素材の一例として、ステンレス合金などが挙げられるが、可能な限り柔軟性があり、それでいて圧縮に対して強く、なおかつ耐食性、耐薬品性に優れた素材であることが望ましい。
【0020】
図2は、図1のA−A線における断面図である。図示したとおりに、チューブフラム壁面には、比較的厚い面9と、比較的薄い面10が存在する。このような構造をとることで、ポンプ動作時に圧力がかかれば、広く取られた薄い面10が変形し、チューブフラム7に働く圧力が、一極集中するのを防ぐ。なお、図2においては断面を楕円状の形状としているが、そのほかにも涙適形など、さまざまな形状が考えられる。

【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明におけるダイヤフラムポンプの、ポンプヘッド部分内部構造を示した図である。
【図2】本発明の第一の実施形態における、図1のA−A線断面図である。
【図3】本発明の第二の実施形態における、図1のA−A線断面図である。
【符号の説明】
【0022】
1 ポンプ筺体
2 ブランジャ
3 チューブフラム固定部
4 流体導出部
5 流体導入部
6 作動空間
7 チューブフラム
8 逆止弁
9 チューブフラム肉厚部
10 チューブフラム肉薄部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
流体が触れる接液部とその他の箇所を隔離するダイヤフラムを使ったポンプにおいて、ダイヤフラムを筒状に形成し、前記筒状ダイヤフラムの厚みに、断面円周上で差をつけたものを流路として用いることを特徴とするダイヤフラムポンプ。

【請求項2】
流体が触れる接液部とその他の箇所を隔離するダイヤフラムを使ったポンプにおいて、ダイヤフラムを筒状に形成し、断面が楕円状になるよう形成したものを流路として用いることを特徴とするダイヤフラムポンプ。

【請求項3】
前記流路として用いる筒状のダイヤフラムの素材として、金属材を用いたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダイヤフラムポンプ。

【請求項4】
金属材が、アモルファス金属であることを特徴とする請求項3に記載のダイヤフラムポンプ。

【図2】
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【図3】
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【図1】
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