説明

ダイヤフラムポンプ

【課題】ダイヤフラムの追従性をよくして、搬送流体の定量搬送性を向上できるようにする。
【解決手段】内部に配置されたダイヤフラム1によって、該ダイヤフラム1を往復動変形させるための作動流体が供給される作動流体室2aと、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室2bとに区画されるポンプ室2を備えたダイヤフラムポンプにおいて、ポンプ室2における作動流体室2a側の壁部を、これと対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポンプ室に配置されたダイヤフラムを作動流体の圧力変動によって往復動変形させることにより流体を搬送するダイヤフラムポンプに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、流体を搬送するポンプとして、図9に示すように、容器200内にダイヤフラム100を組み込んで該容器200内を2室に分割し、一方の室を負圧にしてダイヤフラム100を引き込み、これにより、他方の室に搬送流体を吸入させる一方、負圧にした一方の室に作動流体を加圧して供給し、供給された作動流体の圧力でダイヤフラム100を押し出し、これにより、他方の室の搬送流体を外部へ吐出させ、そして、これら搬送流体の吸入動作と吐出動作とを交互に繰り返すことで、搬送流体を定量搬送するように構成されたダイヤフラムポンプが公知になっている(特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2001−193658号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、上記従来のダイヤフラムポンプは、作動流体の圧縮性が問題となる。すなわち、一方の室に作動流体を加圧して供給することによりダイヤフラムを他方の室側に変形させ、該ダイヤフラムの変形によって他方の室の搬送流体を外部へ吐出させる吐出動作を鑑みた場合、作動流体に圧縮性がなければ、ダイヤフラムをリニアに変形させることができるが、作動流体には圧縮性があるため、加圧されると、その圧縮性によって容積が僅かに減少し、この減少分がダイヤフラムを変形させる上での損失となり、ダイヤフラムをリニアに変形させることができなくなるという問題である。そして、かかる問題は、搬送流体を吸入・吐出するダイヤフラムの追従性を低下させ、これにより、搬送流体の定量搬送性を低下させるという問題を引き起こす。
【0005】
そこで、本発明は、上記の問題に鑑み、ダイヤフラムの追従性をよくして、搬送流体の定量搬送性を向上することができるダイヤフラムポンプを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記の課題を解決するために、本発明に係るダイヤフラムポンプは、内部に配置されたダイヤフラム1によって、該ダイヤフラム1を往復動変形させるための作動流体が供給される作動流体室2aと、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室2bとに区画されるポンプ室2を備えたダイヤフラムポンプにおいて、ポンプ室2における作動流体室2a側の壁部がこれと対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成されることを特徴とする。
【0007】
この場合、ポンプ室2における作動流体室2a側の壁部がこれと対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成されるので、作動流体室2aの容積が小さくなり、作動流体室2aにおける作動流体の量が少なくなる。そして、作動流体の量が少なくなることで、その圧縮性の影響が少なくなる。したがって、作動流体に圧縮性があるとしても、ダイヤフラム1の作動性(追従性)がよくなる。即ち、搬送流体の定量搬送性を向上することができる。
【0008】
また、別の本発明に係るダイヤフラムポンプは、内部に配置されたダイヤフラム1によって、該ダイヤフラム1を往復動変形させるための作動流体が供給される作動流体室2aと、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室2bとに区画されるポンプ室2を備えたダイヤフラムポンプにおいて、ポンプ室2における搬送流体室2b側の壁部がこれと対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成されることを特徴とする。
【0009】
この場合、ポンプ室2における搬送流体室2b側の壁部がこれと対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成されるので、搬送流体室2bの容積が小さくなり、搬送流体室2bにおける搬送流体の量が少なくなる。そして、搬送流体の量が少なくなることで、その圧縮性の影響が少なくなる。したがって、搬送流体に圧縮性があるとしても、搬送流体の吸入・吐出性(追従性)がよくなる。即ち、搬送流体の定量搬送性を向上することができる。
【0010】
また、別の本発明に係るダイヤフラムポンプは、内部に配置されたダイヤフラム1によって、該ダイヤフラム1を往復動変形させるための作動流体が供給される作動流体室2aと、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室2bとに区画されるポンプ室2を備えたダイヤフラムポンプにおいて、ポンプ室2の作動流体室2a側および搬送流体室2b側の壁部がそれぞれ対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成されることを特徴とする。
【0011】
この場合、ポンプ室2における作動流体室2a側および搬送流体室2b側の壁部がそれぞれ対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成されるので、作動流体室2aおよび搬送流体室2bの容積が小さくなり、作動流体室2aにおける作動流体の量と、搬送流体室2bにおける搬送流体の量とが少なくなる。このため、搬送流体の定量搬送性をより一層向上することができる。
【0012】
また、本発明によれば、ポンプ室2の作動流体室2a側および搬送流体室2b側の少なくともいずれか一方の前記壁部を、中心から同心状に形成される波形状とするような構成を採用することもできる。
【0013】
この場合、ポンプ室2の作動流体室2a側および搬送流体室2b側の少なくともいずれか一方の壁部が、ダイヤフラム1の表面形状である波形状に沿うように形成されることから、作動流体および搬送流体の少なくとも一方の流体の量が少なくなり、その圧縮性の影響が少なくなる。さらに、ダイヤフラムの表面形状が波形状であることから、ダイヤフラムに剛性が付与されるようになり、ダイヤフラム1をリニアに変形させることができ、流体の圧縮性によって生じる、ダイヤフラム1の変形による損失を大きく低減させることができる。すなわち、搬送流体の定量搬送性もより一層向上するようになる。
【発明の効果】
【0014】
本発明によれば、ダイヤフラムによって区画されるポンプ室の作動流体室側および搬送流体室側の少なくともいずれか一方の壁部を、これと対向するダイヤフラムの表面形状に沿うように形成するので、作動流体および搬送流体の少なくともいずれか一方の量が少なくなり、その結果、搬送流体の定量搬送性を向上することができる効果がある。
【図面の簡単な説明】
【0015】
【図1】本発明の一実施形態に係るダイヤフラムポンプの正面図。
【図2】作動流体室側の壁部が波形状に形成されたポンプ室の拡大図。
【図3】(a),(b)は吐出側及び吸入側の逆止弁を示す図。
【図4】図1の駆動力供給部の拡大図。
【図5】作動流体室側の壁部が波形状に形成されたポンプ室の拡大図。
【図6】作動流体室側および搬送流体室側の壁部がそれぞれ波形状に形成されたポンプ室の拡大図。
【図7】作動流体室側の壁部が断面三角形の波形状(三角波形状)に形成されたポンプ室の拡大図。
【図8】作動流体室側の壁部が断面四角形(方形、台形を含む)の波形状(矩形波形状)に形成されたポンプ室の拡大図。
【図9】従来のダイヤフラムポンプにおいて、加圧された作動流体の供給によって、ダイヤフラムが変形する状態を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0016】
以下、本発明の一実施形態に係るダイヤフラムポンプについて図1〜図8を参照しつつ説明する。
【0017】
ダイヤフラムポンプ(往復動ポンプの一形態)は、図1に示すように、2つのダイヤフラム1,1を周期的に弾性変形(往復動変形)させることにより、流体を搬送するものである。このダイヤフラムは、各ダイヤフラム1,1を内部に有する左右2つの流体搬送部10,10と、前記ダイヤフラム1,1を駆動させるべく適切なタイミングで作動流体(本実施形態においては、作動油)を流体搬送部10,10に供給する駆動力供給部40と、回転運動を生ずる電動モータとこの電動モータの回転力を駆動力供給部40に伝達するためのギヤ等を有する駆動部50とを備えている。
【0018】
各ダイヤフラム1は、平面視略円形状を呈しており、同心状に複数の環状凹部が形成され、側断面が円弧状、即ち図2に示す正弦波のような波形状になっている。そうすることで、作動流体の高圧力によって弾性変形するのに十分に耐え得る強度が確保されている。また、ダイヤフラム1は、例えば、低ヤング率で高弾性変形能を有する金属(例えばチタン合金)によって構成されており、耐久性、耐食性がよく、しかも、製造コストが低減されている。
【0019】
各流体搬送部10,10は、駆動力供給部40からの作動流体をダイヤフラム1,1に供給するための左右の作動流体供給部31,31と、これら作動流体供給部31,31の間に設けられたポンプヘッド32と、作動流体供給部31,31内の作動流体に混入したガスを外部に排出するとともに、後述する作動流体制限室5,5の圧力を適正な状態に維持する圧力調整機構20を備える。各流体搬送部10,10は、ポンプヘッド32と左右の作動流体供給部31,31とを用いて各ダイヤフラム1,1を挟持することにより構成されている。
【0020】
そして、この作動流体供給部31とポンプヘッド32とを用いてポンプ室2が構成され、ポンプ室2の内部に、上述したダイヤフラム1が設けられている。
【0021】
そして、ポンプ室2の内部は、図2に示すように、ダイヤフラム1によって、作動流体が供給される作動流体室2aと、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室2bとに区画されている。そして、ダイヤフラム1は、作動流体および搬送流体の供給によって弾性変形することになるが、作動流体室2aと搬送流体室2bとの容積の変化は、図9の場合に比して小さくなる。この理由としては、作動流体室2a側の壁部が、これに対向するダイヤフラム1の表面形状(波形状)に沿うように波形状に形成されているためである。そうすることによって、作動流体室2a側の壁部と、これに対向するダイヤフラム1の表面形状とで区画される作動流体室2aの容積は小さくなり、作動流体室2aにおける作動流体の量は少なくなる。そして、作動流体の量が少なくなることで、その圧縮性の影響は少なくなる。したがって、作動流体に圧縮性があるとしても、ダイヤフラム1の作動性(追従性)が向上する。即ち、搬送流体の定量搬送性を向上するのである。これは、作動流体に加える圧力が高くなるほど効果的であり、この点、高圧ポンプに適している。
【0022】
各作動流体供給部31,31内には、ダイヤフラム1,1に連接された弁体3,3およびこれに対応した弁座4,4を備えた作動流体制限室5が設けられている。
【0023】
さらに、ポンプヘッド32には、搬送流体を吸入させるために機能する吸入側逆止弁33および搬送流体を吐出させるために機能する吐出側逆止弁34が設けられており、搬送流体は、その吸入経路33aおよび吸入側逆止弁33を通じてポンプ室2の搬送流体室2bに流入し、吐出側逆止弁34およびその吐出経路34aを通じて所定の搬送経路に吐出されるようになっている。
【0024】
ここで、吸入側逆止弁33および吐出側逆止弁34が、ポンプ室2の近くに配置されている理由と、配置する場合の創意工夫について、図3(a),(b)を参照して説明する(以下、単に逆止弁という場合もある)。ポンプ室2の近くに配置する理由は、両逆止弁33,34の間における搬送流体の量を少なくするためである。そして、逆止弁33,34をポンプ室2にできるだけ近づけるには、ポンプヘッド32において、ポンプ室2の近傍に挿入孔を形成して、逆止弁33,34を挿入孔の最深部に挿入して配置することが考えられるが、メンテナンス時に、逆止弁33,34を挿入孔から取り出すことが困難になってしまう。即ち、吐出側逆止弁34は、その構造(弁体が自重により下降して弁閉となる構造)上、ポンプヘッド32に対して、上から下に向かって挿入されるので、挿入孔から取り出すのが困難になる。一方、吸入側逆止弁33は、挿入孔の最深部に固着状態となって、前記と同様に、挿入孔からの取り出しが困難になる。
【0025】
そこで、図1に示すように、ポンプヘッド32の左右の両側端部に、逆止弁33,34の挿入孔320を形成し、両逆止弁33,34の流路33a,34aに連通する連通流路331が形成された略筒状の挿入体330を、ポンプヘッド32の挿入孔320に挿入する。この挿入体330は、その開口端部に、連通流路331よりも大径の逆止弁33,34が挿脱される凹部332が形成され、凹部332の開口部側の壁部に環状の溝333が形成されている。この溝333は、最深部に向かうにしたがって大きく開口するように、且つ最深部に、逆止弁33,34の外周面に密着する環状の係止体335が嵌入できるように形成されている。
【0026】
そして、係止体335が嵌入された挿入体330を、ポンプヘッド32の挿入孔320に挿入する。この際、挿入体330は、その長さが挿入孔320の深さよりも短くなっているので、図3(a)に示すように、挿入孔320に埋没するように挿入される。即ち、挿入孔320の底部に挿入体330の基端部が当接した状態で、挿入孔320の開口端部よりも挿入体330の先端部が低位置にある。この状態で、挿入体330に逆止弁33,34を挿入すると、係止体335の内径を少し押し広げるように逆止弁33,34が挿入され、逆止弁33,34と挿入体330とが係止体335の密着によって一体化される。そして、凹部332の深さが、逆止弁33,34の長さよりも小さくなっているので、逆止弁33,34の端部が若干突出するようになる。そうすることで、逆止弁33,34がポンプ室2に近づけるように設定される一方、メンテナンス時に、逆止弁33,34を挿入孔320から取り出す場合、図3(a)に示すように、挿入体330から突出した逆止弁33,34の端部を摘んで、逆止弁33,34および挿入体330を引き出すことになる。この際、上述したように、係止体335が逆止弁33,34の外周面に密着しているので、図3(b)示すように、逆止弁33,34の引き出しによって、係止体335が逆止弁33,34の移動に伴って上方へ移動しようとするが、溝333の形状が開口端部に向かうにしたがって狭くなっているので、係止体335が逆止弁33,34の外周面と挿入体330の溝333の内壁とで圧接されて三角形状に変形して、係止体335が楔のような役割を担うようになり、逆止弁33,34と挿入体330とが挿入孔320から一体的に取り出せるようになる。このように、逆止弁33,34を、ポンプ室2の近くに配置して、両逆止弁33,34の間における搬送流体の量を少なくすると共に、メンテナンス時の着脱を容易にすることができる。
【0027】
図1に戻って、ポンプ室2においては、駆動部50からの駆動力を、駆動力供給部40を介してダイヤフラム1,1が受け、この駆動力に基づいてダイヤフラム1,1が往復動すべく構成されている。具体的には、駆動力供給部40と作動流体供給部31,31とが作動流体配管部35,35を介して連通され、作動流体配管部35,35および作動流体供給部31,31内は作動流体で満たされており、後述する駆動力供給部40のピストン部43,44の往復動が、作動流体配管部35,35および作動流体供給部31,31内の作動流体を介して、ダイヤフラム1,1に伝達されることとなる。
【0028】
各作動流体制限室5,5内の弁体3,3は、弁体支持部6,6にコイルスプリング等の付勢手段7,7を介して取り付けられるとともに、作動流体制限室5,5とポンプ室2,2との間を連絡するシャフト8,8に固着されている。
【0029】
各シャフト8,8の一方端部は、ダイヤフラム1,1の作動流体制限室5,5側の面に接するとともに、付勢手段7,7および弁体3,3を介してダイヤフラム1,1側に付勢されるようになっている。
【0030】
作動流体制限室5,5とポンプ室2,2との間には、シャフト8,8を支持するシャフト支持部9,9が設けられており、各シャフト支持部9,9には、作動流体制限室5,5からポンプ室2,2に作動流体を流通させるための貫通孔(図示せず)が形成されている。
【0031】
上記構成の作動流体制限室5,5によって、作動流体配管部35,35を介して作動流体供給部31,31に流入した作動流体によってダイヤフラム1,1が弾性変形して所定の往復動をしたときに、このダイヤフラム1,1とともに弁体3も往復動することとなる。作動流体制限室5,5に必要以上の圧力が作用した場合には、この弁体3が移動して、弁座4に当接するようになっている。
【0032】
これによって、作動流体制限室5,5は、ダイヤフラム1,1に過大な圧力が加わらないようにして、ダイヤフラム1,1の破損を防止できるようになっている。なお、作動流体制限室5,5と駆動力供給部40との間には、圧力調整機構20が設けられており、作動流体制限室5,5に必要以上の圧力が作用した場合には、この圧力調整機構20によって所定量の作動流体を排出して圧力を適正な状態で維持できるようになっている。
【0033】
このダイヤフラムポンプは、ポンプ室2,2および作動流体制限室5,5が形成されているため、作動流体中に空気等のガスが混入した場合には、各室2,5の最上部にガスが溜まる場合がある。その場合、ポンプ室2,2および作動流体制限室5,5内のガスを適切に排出させるために、前記圧力調整機構20がダイヤフラムポンプに設けられている。圧力調整機構20は、作動流体制限室5に設けられた第1流体排出経路21と、ポンプ室2に設けられた第2流体排出経路22と、これらの流体排出経路21、22を通じて排出されるガスおよび作動流体の圧力を調整する圧力調整部25を備える。
【0034】
第1流体排出経路21は、その一方端部が作動流体制限室5内における弁座4よりも作動流体配管部35側の上方位置に設けられ、第1流体排出経路22は、その一方端部が、ポンプ室2内におけるダイヤフラム1と弁座4との間の上方位置に設けられている。
【0035】
そして、それぞれの流体排出経路21,22の他方端部は、圧力調整機構20と作動流体供給部31との間に形成された連通部24に連通すべく近接して設けられている。さらに、第1流体排出経路21と、第2流体排出経路22上には、それぞれ逆流防止のためのボール体23,23(逆流防止体)が設けられている。
【0036】
圧力調整部25は、上端開口部が六角形状の筒体25aと、軸部が六角形状を有し、該筒体25aの上端開口部に挿通されて筒体25aの内部に上下動自在に設けられたシャフト26と、該シャフト26に外挿されたバネ27を、シャフト26を下方に付勢するように設けられた一対のバネ受け(図示せず)と、シャフト26の下端部に圧入されて、シャフト26と一体化されたボール体28と、筒体25aおよびシャフト26の上端部に螺着される保護カバー29とを有している。また、圧力調整部25,25は、流体排出配管部36を介して、図示しない作動流体回収タンクに接続されている。
【0037】
ここで、圧力調整機構20の動作について簡単に説明する。該圧力調整機構20は、ガスの排出弁とリリーフ弁との機能を有している。まず、圧力調整機構20におけるガス排出弁としての動作から説明する。ポンプ室2および作動流体制限室5にガスが混入した場合、第1流体排出経路21、第2流体排出経路22を通じて、各ボール体23、23、を押し上げることになる。この際、保護カバー29を締め付ける方向に回転すると、シャフト26がバネの付勢力に抗して上動することになり、シャフト26に一体化されたボール体28が弁座から離間して、ガスが筒体25aの内部を通って外部に排出されるようになる。また、このガスの排出とともに溢流した作動流体は、流体排出配管部36を通じて、図示しない作動流体回収タンクに回収されるようになっている。
【0038】
つぎに、圧力調整機構20におけるリリーフ弁としての動作について説明する。作動流体制限室5,5に必要以上の圧力が作用した場合、この圧力によってボール体28がバネ27の付勢力に抗して押し上げられて、所定量の作動流体が排出されて作動流体制限室5,5の圧力が適正な状態に維持される。
【0039】
駆動力供給部40は、図1および図4に示すように、駆動部の歯車機構部から駆動力を受ける駆動力伝達軸41と、この駆動力伝達軸41に取り付けられた偏心カム42と、この偏心カム42の動きに応じて往復動するピストン部(第1ピストン部43および第2ピストン部44)と、第1ピストン部43内のベアリング47の内輪で支持された第1回動軸45と、第2ピストン部44内のベアリング48の内輪で支持された第2回動軸46と、第2ピストン部44内にて第1ピストン部43と第2ピストン部44とを適切に付勢して、各ピストン部43,44内に設けられている各回動軸45,46を偏心カム42に接触させるべく機能する調整手段たる位置規制付勢手段49と、これらの各要素を内包しているケーシング55等とを用いて構成されている。そして、以上のような要素を有する駆動力供給部40においては、ケーシング55内壁とピストン部43,44との間の密閉空間に、作動流体が充填されている。
【0040】
駆動力供給部40は、第2ピストン部44が中空状に形成されている。すなわち、第2ピストン部44は、その内部に、駆動力伝達軸41、偏心カム42、第1ピストン部43、ベアリング48、および位置規制付勢手段49等が包含可能であるべく形成されている。
【0041】
そして、第2ピストン部44の壁部(内面部)と第1ピストン部43の外壁部(外面部)との間には、位置規制付勢手段49が挟持されている。すなわち、この位置規制付勢手段49によって、第1ピストン部43および第2ピストン部44が偏心カム42の位置する方向に付勢されることとなる。換言すれば、この位置規制付勢手段49によって、第1ピストン部43内の第1回動軸45と、第2ピストン部44内の第2回動軸45とが、常に偏心カム42の外周面に接すべく、適切に付勢されることとなる。
【0042】
なお、第1ピストン部43、第2ピストン部44の動きに応じて、駆動力供給部40及びガス排出機構20に設けられた流体排出配管部36を通して、図示しない作動流体回収タンクに作動流体が回収されるが、これによる駆動力の低下を防止するために、駆動力供給部40は、補助プランジャ機構60,60、作動流体供給弁70,70を備えている。
【0043】
駆動部50は、図示していないモータと、駆動力伝達軸41にモータの駆動軸の回転力を伝達するウォームギヤ53などを有する歯車機構部52とを備えている。
【0044】
補助プランジャ機構60,60は、ベローズ61が外挿されており、ベローズ61によって仕切られた内側の容積の小さい室62には、圧縮性が低い作動流体(作動油)が充填され、外側の容積の大きい室63には、通常(圧縮性がやや高い)の作動流体(作動油)が充填されるようになっている。そして、内側の室62は、作動流体配管部35に連通しており、低圧縮性の作動流体が作動流体配管部35を介してダイヤフラム1に供給されるようになっている。即ち、圧縮性が低いがゆえに高価な作動流体(作動油)を最小限度に抑えてダイヤフラム1に供給している。つまり、ダイヤフラム1は、短いストロークではあるが搬送流体を確実に押圧できて、しかも、吸入・吐出動作に対して適確に追従するようになる。さらに、ダイヤフラム1は、このような動作が繰り返されても、その形状および材質から十分に耐えうる長寿命化の図れたものとなっている。
【0045】
つぎに本実施形態にかかるダイヤフラムポンプの動作について説明する。通常運転時においては、次のように機能する。このダイヤフラムポンプは、まず、駆動部の電動モータを回転させて、この回転力を、ギヤを介して駆動力伝達軸41に伝える。
【0046】
つぎに、この駆動力伝達軸41によって偏心カム42を回転させ、この偏心カム42の回転によって、第1および第2ピストン部43,44を往復動させる。ここでは、上述した構成に基づいて、第1ピストン部43と第2ピストン部44とが一体的に、一つの偏心カム42によって往復動する。そして、このピストン部43,44の往復動によって作動流体に対して所定の力および方向の圧力が作用し、その作動流体が、配管部35,35に送排出されることとなる。
【0047】
次に、配管部35,35を介して流通する作動流体の圧力に基づいて、ダイヤフラム1,1が適切なタイミングで往復動し、このダイヤフラム1,1の動きによって、吸入側逆止弁33および吐出側逆止弁34が作動して、所望の液体が搬送されることとなる。この際、ダイヤフラム1,1の表面形状が波形状であること、ポンプ室2の作動流体室2a側の壁部を、これに対向するダイヤフラムの表面形状に沿うように形成していることによって、作動流体室2aの壁部と、これに対向するダイヤフラムの表面形状部とで区画される作動流体室2aの容積は、図9の場合に比して小さいものとなっている。したがって、作動流体室2aにおける作動流体の量が少なくなり、その圧縮性の影響が少なくなるため、確実な搬送流体の定量供給が実現される。
【0048】
通常運転時において、本実施形態にかかるダイヤフラムポンプは、各構成要素が以上のように機能して、ダイヤフラム1,1の往復動を繰り返し行わせることによって、所望流体を定量的に搬送させることが可能となる。なお、このダイヤフラムポンプは、2つのダイヤフラム1,1の往復動を異ならせることにより、流体を無脈動で搬送できるようになっている。
【0049】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されず、種々の変更・変形が可能である。
【0050】
前記実施形態の場合、ポンプ室2における作動流体室2a側の壁部を、これに対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように波形状にしたが、図5に示すように、搬送流体室2b側の壁部を、これに対向するダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成してもよい。この場合、吸入側逆止弁33と吐出側逆止弁34との間における搬送流体の量が少なくなるため、搬送流体の圧縮量を抑えて、搬送流体の定量搬送性を向上することができる。
【0051】
また、図6に示すように、作動流体室2a側および搬送流体室2b側の壁部を、ダイヤフラム1の表面形状に沿うように形成するようにしてもよい。この場合、作動流体室2aにおける作動流体の量と、吸入側逆止弁33と吐出側逆止弁34との間における搬送流体の量とが少なくなるため、搬送流体の定量搬送性をより一層向上することができる。
【0052】
また、前記実施形態の場合、作動流体室2a側の壁部とダイヤフラム1の表面形状とを、断面が円弧形の波形状に形成したが、作動流体室2a側の壁部とダイヤフラム1の表面形状とを、図7に示すように、断面が三角形の波形状にしてもよく、図8に示すように、断面が四角形(方形、台形を含む)の波形状にしてもよい。
【符号の説明】
【0053】
1…ダイヤフラム、1a…表面形状部、2…ポンプ室、2a…作動流体室、2b…搬送流体室、3…弁体、4…弁座、5…作動流体制限室、6…弁体支持部、7…付勢手段、8…シャフト、9…シャフト支持部、10…流体搬送部、20…圧力調整機構、21…第1流体排出経路、22…第2流体排出経路、23…ボール体、24…連通部、25…圧力調整部、25a…筒体、26…シャフト、27…バネ、28…ボール体、29…保護カバー、31…作動流体供給部、32…ポンプヘッド、33…吸入側逆止弁、34…吐出側逆止弁、35…作動流体配管部、36…流体排出配管部、37…リリーフ機構、40…駆動力供給部、41…駆動力伝達軸、42…偏心カム、43…第1ピストン部、44…第2ピストン部、45…第1回動軸、46…第2回動軸、47…ベアリング、48…ベアリング、49…位置規制付勢手段、50…駆動部、51…モータ、52…歯車機構部、53…ウォームギヤ、55…ケーシング、60…補助プランジャ機構、70…作動流体供給弁

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に配置されたダイヤフラム(1)によって、該ダイヤフラム(1)を往復動変形させるための作動流体が供給される作動流体室(2a)と、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室(2b)とに区画されるポンプ室(2)を備えたダイヤフラムポンプにおいて、
ポンプ室(2)における作動流体室(2a)側の壁部が、これと対向するダイヤフラム(1)の表面形状に沿うように形成されることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項2】
内部に配置されたダイヤフラム(1)によって、該ダイヤフラム(1)を往復動変形させるための作動流体が供給される作動流体室(2a)と、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室(2b)とに区画されるポンプ室(2)を備えたダイヤフラムポンプにおいて、
ポンプ室(2)における搬送流体室(2b)側の壁部が、これと対向するダイヤフラム(1)の表面形状に沿うように形成されることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項3】
内部に配置されたダイヤフラム(1)によって、該ダイヤフラム(1)を往復動変形させるための作動流体が供給される作動流体室(2a)と、搬送流体が吸入・吐出される搬送流体室(2b)とに区画されるポンプ室(2)を備えたダイヤフラムポンプにおいて、
ポンプ室(2)の作動流体室(2a)側および搬送流体室(2b)側の壁部が、それぞれ対向するダイヤフラム(1)の表面形状に沿うように形成されることを特徴とするダイヤフラムポンプ。
【請求項4】
ポンプ室(2)の作動流体室(2a)側および搬送流体室(2b)側の少なくともいずれか一方の前記壁部は、中心から同心状に形成される波形状であることを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のダイヤフラムポンプ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2012−36737(P2012−36737A)
【公開日】平成24年2月23日(2012.2.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−174468(P2010−174468)
【出願日】平成22年8月3日(2010.8.3)
【出願人】(000229760)株式会社タクミナ (25)
【Fターム(参考)】