説明

ダイヤフラム式圧縮機

【課題】ダイヤフラム式の圧縮機において、ダイヤフラムが半径方向に引っ張られる際に生ずる応力に対する疲労強度を向上させる。
【解決手段】ダイヤフラム式圧縮機は、凹部を有する第1の部材と、凹部を有する第2の部材と、外縁から所定の距離だけ離れた位置に、水平方向の動きを吸収可能に形成された吸収部を備える金属製のダイヤフラムとを備える。第1の部材の凹部と、第2の部材の凹部とが、ダイヤフラムを挟んで対向した状態で結合され、第1の部材の凹部とダイヤフラムによりポンプ室が、第2の部材の凹部とダイヤフラムにより加圧室が、それぞれ形成されている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ダイヤフラム式圧縮機に関する。
【背景技術】
【0002】
ダイヤフラム式の圧縮機(コンプレッサー)は、油圧システムと、ガス圧縮システムの組合せで構成されている。油圧システムの加圧室と、ガス圧縮システムのポンプ室とは、ダイヤフラムにより区画されている。このダイヤフラムは、高圧ガスをシールする目的から、その円周外縁部を、加圧室とポンプ室との両側から金属部材により動かないように把持されている。このため、コンプレッサーの稼働に伴い、ダイヤフラムは軸方向に湾曲変形を繰り返し、その把持部には曲げと半径方向の引っ張りの合成応力が働くため、疲労による破損が発生することが知られている。
【0003】
これに対し、ダイヤフラム表面に対してショットピーニング加工を行うことによって、ダイヤフラムそのものの疲労強度を向上させる技術が知られている(例えば、特許文献1)。ショットピーニングは、ダイヤフラムの表面近傍の強度向上技術である。すなわち、ダイヤフラムの湾曲変形時には、ダイヤフラム表面が最大応力となり、ダイヤフラム肉厚内部になるに従って直線的に低くなる応力分布となる。このため、ショットピーニング加工を行ったダイヤフラムは、湾曲時の曲げ変形により掛かる応力に対する疲労強度を向上させることができる。しかし、湾曲時のダイヤフラム半径方向の引っ張りにより掛かる応力は、ダイヤフラム肉厚断面に均等に作用するため、ショットピーニング加工を行うのみでは対応できず、従来はこの点に関しては、十分な工夫がされていないのが実情であった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】実開平5−6344号公報
【特許文献2】特開2004−50362号公報
【特許文献3】特開2009−203848号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、ダイヤフラム式の圧縮機において、ダイヤフラムが半径方向に引っ張られる際に生ずる応力に対する疲労強度を向上させることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上述の課題の少なくとも一部を解決するためになされたものであり、以下の形態又は適用例として実現することが可能である。
【0007】
[適用例1]
ダイヤフラム式圧縮機であって、
凹部を有する第1の部材と、
凹部を有する第2の部材と、
外縁から所定の距離だけ離れた位置に、水平方向の動きを吸収可能に形成された吸収部を備える金属製のダイヤフラムと、
を備え、
前記第1の部材の凹部と、前記第2の部材の凹部とが、前記ダイヤフラムを挟んで対向した状態で結合され、前記第1の部材の凹部と前記ダイヤフラムによりポンプ室が、前記第2の部材の凹部と前記ダイヤフラムにより加圧室が、それぞれ形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。
【0008】
このような構成にすれば、加圧室とポンプ室とを仕切るダイヤフラムは、その外縁から所定の距離だけ離れた位置に水平方向の動きを吸収可能に形成された吸収部を備えるため、この吸収部によって、半径方向に引っ張られる際に生ずる曲げ変形を繰り返すことによる応力を吸収することができる。この結果、ダイヤフラム式の圧縮機において、ダイヤフラムが半径方向に引っ張られる際に生ずる応力に対する疲労強度を向上させることができる。
【0009】
[適用例2]
適用例1記載のダイヤフラム式圧縮機であって、
前記吸収部は、波形状に形成された波状部である、ダイヤフラム式圧縮機。
【0010】
このような構成にすれば、吸収部として、波形状に形成された波状部を用いることができる。
【0011】
[適用例3]
適用例2記載のダイヤフラム式圧縮機であって、さらに、
前記ダイヤフラムの前記波状部よりも外縁側にあって、前記ダイヤフラムの前記波状部よりも外縁側をシールすることで前記ダイヤフラムを前記第1の部材と前記第2の部材の間に保持する第1の保持部材と、
前記ダイヤフラムの前記波状部よりも内側にあって、前記ダイヤフラムの前記波状部よりも内側をシールすることで前記ダイヤフラムを前記第1の部材と前記第2の部材の間に摺動可能な状態で保持する第2の保持部材と、
を備える、ダイヤフラム式圧縮機。
【0012】
このような構成にすれば、ダイヤフラムの波状部よりも外縁側にあってダイヤフラムの波状部よりも外縁側をシールする第1の保持部材と、ダイヤフラムの波状部よりも内側にあってダイヤフラムの波状部よりも内側をダイヤフラムが摺動可能な状態でシールする第2の保持部材とを備えるため、ダイヤフラムの波状部による水平方向の動き吸収機能を保持しつつ、ポンプ室からのガスや、加圧室からの液体が侵入することを抑制することができる。
【0013】
[適用例4]
適用例3記載のダイヤフラム式圧縮機であって、
前記第2の保持部材は、前記ダイヤフラムを形成する金属よりも弾性率の低い材料を用いて形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。
【0014】
このような構成にすれば、第2の保持部材は、ダイヤフラムを形成する金属よりも弾性率の低い材料を用いて形成されているため、ダイヤフラムを摺動可能な状態で保持することができる。
【0015】
[適用例5]
適用例3または4記載のダイヤフラム式圧縮機であって、さらに、
前記第1の部材の凹部が形成されている面であって、前記第1の保持部材と、前記第2の保持部材との間に位置する部分には、前記ポンプ室から漏れる気体を集める第1のドレインが形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。
【0016】
このような構成にすれば、第1の保持部材と、第2の保持部材との間に位置する部分には、第1のドレインが形成されているため、ダイヤフラムの波状部に対して漏れでたガスを回収することができる。
【0017】
[適用例6]
適用例3ないし5のいずれか一項記載のダイヤフラム式圧縮機であって、さらに、
前記第2の部材の凹部が形成されている面であって、前記第1の保持部材と、前記第2の保持部材との間に位置する部分には、前記加圧室から漏れる液体を集める第2のドレインが形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。
【0018】
このような構成にすれば、第1の保持部材と、第2の保持部材との間に位置する部分には、第2のドレインが形成されているため、ダイヤフラムの波状部に対して漏れでた液体を回収することができる。
【0019】
なお、本発明は、種々の形態で実現することが可能である。例えば、ダイヤフラム式圧縮機、ダイヤフラム式圧縮機を用いた燃料電池自動車の高圧ガス系部品の評価方法および装置等の形態で実現することができる。また、本発明は、上述した種々の特徴を必ずしも全て備えている必要はなく、その一部を省略して構成することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】本発明の一実施例としてのダイヤフラム式圧縮機の全体構成を概略的に示す説明図である。
【図2】ダイヤフラムの構成を示す説明図である。
【図3】ダイヤフラム式圧縮機の油圧システムとガス圧縮システムとの境界部分(図1の破線部CN)の拡大図である。
【図4】ダイヤフラム式圧縮機の作動時におけるダイヤフラムの様子を示す説明図である。
【図5】比較例におけるダイヤフラム式圧縮機の作動時にけるダイヤフラムの様子を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
次に、本発明の実施の形態を実施例に基づいて以下の順序で説明する。
【0022】
A.実施例:
図1は、本発明の一実施例としてのダイヤフラム式圧縮機の全体構成を概略的に示す説明図である。図1は、ダイヤフラム式圧縮機(ダイヤフラム式コンプレッサーとも呼ぶ。)1の断面を示している。このダイヤフラム式圧縮機1は、油圧システム20と、ガス圧縮システム30とを備えている。ダイヤフラム式圧縮機1の各部は、制御装置70により駆動制御される。
【0023】
油圧システム20は、圧縮機本体10と、作動液圧送機60とを組み合わせることにより構成されている。圧縮機本体10のうち、油圧システム20として機能する部分は、加圧本体部材21と、加圧凹部22と、加圧室23と、作動液ポート24と、加圧リブ収納部25と、作動液用ドレイン26とを備えている。油圧システム20は、作動液圧送機60から圧送される作動液(作動オイル)によりダイヤフラム100を繰返し湾曲させることによって、ガス圧縮を行う。
【0024】
第2の部材としての加圧本体部材21は、圧縮機本体を構成する金属製の部材であり、一方の面にレンズ状に窪んだ加圧凹部22を有している。作動液ポート24は、加圧凹部22の略中央部であって、加圧本体部材21を厚み方向に貫通するように設けられた貫通孔である。この作動液ポート24を介して、加圧室23への作動液の供給・排出が行われる。加圧リブ収納部25は、ダイヤフラム100の波状部を収納するための空間であり、加圧本体部材21の加圧凹部22の外周に窪み状に形成されている。第2のドレインとしての作動液用ドレイン26は、加圧リブ収納部25の一部をさらに窪ませるようにして形成された空間である。
【0025】
作動液圧送機60は、作動液を貯留するシリンダ62と、ピストン63と、ピストン駆動機64とを備えている。作動液圧送機60は、シリンダ62にガス圧縮規定圧力(95MPa)を超える高圧で作動液を貯留した上で、ピストン駆動機64によりピストン63を往復動させることにより、加圧室23への作動液の高圧圧送と、加圧室23からの作動液の強制排出を行う。これにより、ダイヤフラム100は、加圧室23とポンプ室33(詳細は後述)の間において湾曲を繰り返し、ポンプ室33内の流体(本実施例ではヘリウムガス)を規定の圧力(95MPa)まで圧縮する。
【0026】
ガス圧縮システム30は、圧縮機本体10と、ヘリウム源40と、ヘリウムタンク50とを組み合わせることにより構成されている。圧縮機本体10のうち、ガス圧縮システム30として機能する部分は、ポンプ本体部材31と、ポンプ凹部32と、ポンプ室33と、ガス流入出ポート34と、リブ収納部35と、ガス用ドレイン36とを備えている。
【0027】
第1の部材としてのポンプ本体部材31は、ポンプ本体を構成する金属製の部材であり、一方の面にレンズ上に窪んだポンプ凹部32を有している。ガス流入出ポート34は、ポンプ凹部32の略中央部であって、ポンプ本体部材31を厚み方向に貫通するように設けられた2本の貫通孔である。ガス流入出ポート34の一方の貫通孔(He IN)は、ヘリウム源40からポンプ室33へ流入する圧縮前のヘリウムガスの流路である。他方の貫通孔(He OUT)は、ポンプ室33からヘリウムタンク50へ流出する圧縮後のヘリウムガスの流路である。リブ収納部35は、ダイヤフラム100の波状部を収納するための空間であり、ポンプ本体部材31のポンプ凹部32の外周に窪み状に形成されている。第1のドレインとしてのガス用ドレイン36は、リブ収納部35の一部をさらに窪ませるようにして形成された空間である。
【0028】
ヘリウム源40は、流出するヘリウムガスの流路を開閉するための流入側開閉バルブ41と、ヘリウムガスの逆流を抑制するための流入側逆止弁42とを含んでいる。ヘリウムタンク50は、流入するヘリウムガスの流路を開閉するための流出側開閉バルブ51と、ヘリウムガスの逆流を抑制するための流出側逆止弁52とを含んでいる。ヘリウムタンク50には、圧縮され、ガス流入出ポート34から流出するヘリウムガスを高圧下で貯留するためのタンクである。
【0029】
図2は、ダイヤフラム100の構成を示す説明図である。図2(A)は、ダイヤフラム100の上面図である。図2(B)は、ダイヤフラム100の側面図である。ダイヤフラム100は、円板状に形成された金属の部材であり、その外縁から所定の距離だけ離れた位置に、水平方向HPの動きを吸収可能なように、波形状に形成された波状部101(吸収部)を備えている。所定の距離は、任意に定めることができる。なお、ダイヤフラム100の外縁から波状部101の外側の端部までの間の部分を外縁部103と呼ぶ。また、波状部101の内側の端部から、ダイヤフラム100の中央部に掛けての一部分を内縁部105と呼ぶ。
【0030】
図1に示すように、油圧システム20と、ガス圧縮システム30とは、加圧本体部材21(第2の部材)の加圧凹部22と、ポンプ本体部材31(第1の部材)のポンプ凹部32とが、ダイヤフラム100を挟んで対向した状態で結合されている。加圧本体部材21とポンプ本体部材31の結合には、図示しないボルトとナットを用いている。加圧凹部22とダイヤフラム100の一方の面とによって加圧室23が形成されている。また、ポンプ凹部32とダイヤフラム100の他方の面とによってポンプ室33が形成されている。
【0031】
図3は、ダイヤフラム式圧縮機1の油圧システム20と、ガス圧縮システム30との境界部分(図1の破線部CN)の拡大図である。加圧室23と、ポンプ室33の機密性を確保するために、ダイヤフラム式圧縮機1は、加圧本体部材21とポンプ本体部材31との間に、第1の保持部材102と、第2の保持部材104を備えている。第1の保持部材102は、ダイヤフラム100の波状部101よりも外縁側にあって、ダイヤフラム100の波状部101よりも外縁側にある外縁部103(図2)を、加圧本体部材21とポンプ本体部材31の両方向からシールすることによって、ダイヤフラム100を加圧本体部材21とポンプ本体部材31の間に保持する。例えば、第1の保持部材としてOリングを用いるものとした場合、加圧本体部材21の加圧リブ収納部25の外周に第1の収容部27を、ポンプ本体部材31の対応する位置(すなわちリブ収納部35の外周)に第1の収容部37をそれぞれ設け、この第1の収容部27と、第1の収容部37とにOリングを固定して収容することができる。
【0032】
第2の保持部材104は、ダイヤフラム100の波状部101よりも内側にあって、ダイヤフラムの波状部101よりも内側にある内縁部105(図2)を、加圧本体部材21とポンプ本体部材31の両方向からシールすることによって、ダイヤフラム100を加圧本体部材21とポンプ本体部材31の間に、水平方向HPに摺動可能な状態で保持する。例えば、第2の保持部材として硬質ゴムより形成される保持片を用いるものとした場合、加圧本体部材21の加圧リブ収容部25の内周に第2の収容部28を、ポンプ本体部材31の対応する位置(すなわちリブ収容部35の内周)に第2の収容部38をそれぞれ設け、この第2の収容部28と、第2の収容部38とに保持片を固定して収容することができる。なお、第2の保持部材104には、ダイヤフラム100に用いられる金属よりも弾性率の低い材料(例えば、樹脂や硬質ゴム等)を用いることが好ましい。
【0033】
図4は、ダイヤフラム式圧縮機1の作動時におけるダイヤフラム100の様子を示す説明図である。図4(A)は、ダイヤフラム100が湾曲していない場合の図を示している。図4(B)は、ダイヤフラム100が加圧室側に湾曲する様子を示している。図4(C)は、ダイヤフラム100がポンプ室側に湾曲する様子を示している。なお、図4(B)、(C)においては、各部材の符号の表記を省略している。
【0034】
図4に示すように、本実施例におけるダイヤフラム式圧縮機1は、加圧室とポンプ室とを仕切るダイヤフラム100が、その外縁から所定の距離だけ離れた位置に水平方向の動きを吸収可能な波形状に形成された波状部101を備えている。図4(B)、(C)に示すように、本実施例におけるダイヤフラム100は、ダイヤフラム100が湾曲することで半径方向PPに引っ張られた際に、波状部101が伸張するとともに、内縁部105(図2)が水平方向HPに摺動する。このため、ダイヤフラム100は、湾曲して半径方向PPに引っ張られる際に生ずる曲げ変形CPを繰り返すことによる応力を吸収することができる。この結果、ダイヤフラム式の圧縮機において、ダイヤフラムが半径方向に引っ張られる際に生ずる応力に対する疲労強度を向上させることができる。
【0035】
さらに、本実施例におけるダイヤフラム式圧縮機1では、ダイヤフラム100の波状部101よりも外縁側にあって、ダイヤフラム100の波状部101よりも外縁側(外縁部103)をシールする第1の保持部材102と、ダイヤフラム100の波状部101よりも内側にあって、ダイヤフラム100の波状部101よりも内側(内縁部105)をダイヤフラム100が水平方向に摺動可能な状態でシールする第2の保持部材104とを備える。このため、波状部101による水平方向の動き吸収機能を保持しつつ、ポンプ室からのガスや、加圧室からの液体が侵入することを抑制することができる。さらには、ガスや作動液が侵入することに起因する波状部101の変形を抑制することができる。
【0036】
さらに、図3に示すように、加圧本体部材21側の第1の保持部材102と、第2の保持部材104との間に位置する部分には、ガス用ドレイン36(第1のドレイン)が形成されている。このため、第2の保持部材104内部をダイヤフラム100(内縁部105)が摺動することに伴って漏れでたガスを回収することができる。同様に、ポンプ本体部材31側の第1の保持部材102と、第2の保持部材104との間に位置する部分には、作動液用ドレイン26(第2のドレイン)が形成されている。このため、第2の保持部材104内部をダイヤフラム100(内縁部105)が摺動することに伴って漏れでた液体を回収することができる。
【0037】
B.比較例:
図5は、比較例におけるダイヤフラム式圧縮機1aの作動時にけるダイヤフラム100aの様子を示す説明図である。図5(A)は、ダイヤフラム100aが湾曲していない場合の図を示している。図5(B)は、ダイヤフラム100aが加圧室側に湾曲する様子を示している。図5(C)は、ダイヤフラム100aがポンプ室側に湾曲する様子を示している。なお、図5(B)、(C)においては、各部材の符号の表記を省略している。上記実施例におけるダイヤフラム式圧縮機1との違いは、ダイヤフラム100aが波状部を備えないこと、第2の保持部材104を備えないこと、ガス用ドレインと作動液用ドレインを備えないことであり、他の構成等は上記実施例と同様である。
【0038】
図5に示すように、比較例におけるダイヤフラム式圧縮機1aは、第1の保持部材102により固定されているのみであるため、ダイヤフラム100aが湾曲して半径方向PPに引っ張られた際に生ずる曲げ変形CPが、第1の保持部材102の内側に位置する特定部位PSに集中する。このため、特定部位PS近傍におけるダイヤフラム100aの疲労による破損(例えば、亀裂や割れ、変形等)が発生しやすい構造となっている。この破損は、ダイヤフラム式圧縮機1aを高圧で使用する場合や、ダイヤフラム100aの大きさが大きい場合に特に顕著である。
【0039】
C.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
【0040】
C1.変形例1:
上記実施例ではダイヤフラム式圧縮機の構成について例示した。しかし、上記実施例で示した態様は、あくまで一例に過ぎず、本発明の要旨を逸脱しない範囲において種々の変形が可能である。例えば、ダイヤフラム式圧縮機の構成要素の一部の削除・追加・変更等を行うことができる。
【0041】
例えば、ダイヤフラム式圧縮機に、さらに、ダイヤフラムに発生した亀裂や割れを検知するための検知室および圧力センサを備える構成としてもよい。
【0042】
他の例としては、加圧室への作動液の供給・排出動作によって、ダイヤフラムを湾曲させる構成以外の方法によってダイヤフラムを湾曲させることとしてもよい。例えば、ダイヤフラムにピストンを直接固定し、このピストンにて、ダイヤフラムを湾曲させてもよい。
【0043】
C2.変形例2:
上記実施例におけるダイヤフラムは、円板状に形成された金属の部材であるものとしたが、その他の形状や材料等を採用することも可能である。例えば、ダイヤフラムを金属以外の材料で形成することも可能であるし、円板状以外の形状とすることもできる。さらに、ダイヤフラムの面方向(図2(A))に対して、種々の加工(例えば、疲労強度を高めるためのショットピーニング加工)を施してもよい。また、ダイヤフラムの枚数は、1枚に限らず、複数、例えば3枚備えるものとしてもよい。
【0044】
また、上記実施例におけるダイヤフラムは、水平方向の動きを吸収可能な吸収部として、波形状に形成された波状部を備えるものとした。しかし吸収部は水平方向の動きを吸収できる構成であれば足り、波形状に限られない。例えば、吸収部として、特に弾性の高い材料を用いることとしてもよいし、吸収部を薄板に形成することもできる。
【0045】
C3.変形例3:
上記実施例におけるダイヤフラム式圧縮機は、第1の保持部材としてOリングを、第2の保持部材として硬質ゴムより形成される保持片を用いるものとして記載した。しかし、上記記載はあくまで例示であり、任意の保持部材を採用することができる。さらに、ダイヤフラム式圧縮機は、保持部材を備えない構成とすることも可能である。例えば、第1の保持部材に代えて、加圧本体部材とポンプ本体部材に保持部を形成した上で、当該保持部によってダイヤフラムを保持することとしてもよい。
【符号の説明】
【0046】
1…ダイヤフラム式圧縮機
10…圧縮機本体
20…油圧システム
21…加圧本体部材
22…加圧凹部
23…加圧室
24…作動液ポート
25…加圧リブ収納部
26…作動液用ドレイン
27…第1の収容部
28…第2の収容部
30…ガス圧縮システム
31…ポンプ本体部材
32…ポンプ凹部
33…ポンプ室
34…ガス流入出ポート
35…リブ収納部
36…ガス用ドレイン
37…第1の収容部
38…第2の収容部
40…ヘリウム源
41…流入側開閉バルブ
42…流入側逆止弁
50…ヘリウムタンク
51…流出側開閉バルブ
52…流出側逆止弁
60…作動液圧送機
62…シリンダ
63…ピストン
64…ピストン駆動機
70…制御装置
100…ダイヤフラム
101…波状部
102…第1の保持部材
103…外縁部
104…第2の保持部材
105…内縁部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ダイヤフラム式圧縮機であって、
凹部を有する第1の部材と、
凹部を有する第2の部材と、
外縁から所定の距離だけ離れた位置に、水平方向の動きを吸収可能に形成された吸収部を備える金属製のダイヤフラムと、
を備え、
前記第1の部材の凹部と、前記第2の部材の凹部とが、前記ダイヤフラムを挟んで対向した状態で結合され、前記第1の部材の凹部と前記ダイヤフラムによりポンプ室が、前記第2の部材の凹部と前記ダイヤフラムにより加圧室が、それぞれ形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。
【請求項2】
請求項1記載のダイヤフラム式圧縮機であって、
前記吸収部は、波形状に形成された波状部である、ダイヤフラム式圧縮機。
【請求項3】
請求項2記載のダイヤフラム式圧縮機であって、さらに、
前記ダイヤフラムの前記波状部よりも外縁側にあって、前記ダイヤフラムの前記波状部よりも外縁側をシールすることで前記ダイヤフラムを前記第1の部材と前記第2の部材の間に保持する第1の保持部材と、
前記ダイヤフラムの前記波状部よりも内側にあって、前記ダイヤフラムの前記波状部よりも内側をシールすることで前記ダイヤフラムを前記第1の部材と前記第2の部材の間に摺動可能な状態で保持する第2の保持部材と、
を備える、ダイヤフラム式圧縮機。
【請求項4】
請求項3記載のダイヤフラム式圧縮機であって、
前記第2の保持部材は、前記ダイヤフラムを形成する金属よりも弾性率の低い材料を用いて形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。
【請求項5】
請求項3または4記載のダイヤフラム式圧縮機であって、さらに、
前記第1の部材の凹部が形成されている面であって、前記第1の保持部材と、前記第2の保持部材との間に位置する部分には、前記ポンプ室から漏れる気体を集める第1のドレインが形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。
【請求項6】
請求項3ないし5のいずれか一項記載のダイヤフラム式圧縮機であって、さらに、
前記第2の部材の凹部が形成されている面であって、前記第1の保持部材と、前記第2の保持部材との間に位置する部分には、前記加圧室から漏れる液体を集める第2のドレインが形成されている、ダイヤフラム式圧縮機。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2011−247117(P2011−247117A)
【公開日】平成23年12月8日(2011.12.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−118941(P2010−118941)
【出願日】平成22年5月25日(2010.5.25)
【出願人】(000003207)トヨタ自動車株式会社 (59,920)
【Fターム(参考)】