説明

ダイヤモンド状炭素被膜及びその製造方法

【課題】表面の親水性に優れ、摺動抵抗が小さいダイヤモンド状炭素被膜及びその製造方法を提供する。
【解決手段】ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜であって、表面エネルギーが35mJ/m以上であることを特徴としており、ダイヤモンド状炭素被膜中におけるケイ素含有量は、3原子%以上であることが好ましく、スパッタリング法により形成することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜及びその製造方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
ダイヤモンド状炭素(DLC)被膜を、摺動部材などにコーティングし、摺動特性を向上させる方法が知られている。
【0003】
このようなダイヤモンド状炭素被膜においては、ケイ素を含有させることにより、硬度が高く、摩擦係数の小さいダイヤモンド状炭素被膜を形成することが検討されている。ダイヤモンド状炭素被膜にケイ素を含有させることにより、4配位の結合状態をとるケイ素原子に引かれて、炭素原子も4配位のダイヤモンド結合状態になり易くなるものと考えられる。
【0004】
特許文献1においては、ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜を、ケイ素及び炭素を同時に真空蒸着させることにより形成する方法が提案されている。
【0005】
ケイ素をダイヤモンド状炭素被膜に含有させることにより、ケイ素に結合する酸素原子を増加させ、表面の親水性を高め、摺動抵抗を小さくできることが期待されるが、上記従来の方法によっても、表面の親水性を十分に高め、摺動抵抗を十分に小さくできるダイヤモンド状炭素被膜を製造することができなかった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【特許文献1】特開2005−1972号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明の目的は、表面の親水性に優れ、摺動抵抗が小さいダイヤモンド状炭素被膜及びその製造方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明のダイヤモンド状炭素被膜は、ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜であって、表面エネルギーが35mJ/m以上であることを特徴としている。
【0009】
本発明のダイヤモンド状炭素被膜においては、被膜中におけるケイ素の含有量が、3原子%以上であることが好ましい。
【0010】
また、本発明のダイヤモンド状炭素被膜は、スパッタリング法により形成されたものであることが好ましい。
【0011】
本発明のダイヤモンド状炭素被膜の製造方法は、ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜を基板上に形成するダイヤモンド状炭素被膜の製造方法であって、ケイ素と炭素を含むターゲットを準備する工程と、前記ターゲットを用い、スパッタリング法により基板上に前記ダイヤモンド状炭素被膜を形成する工程とを備えることを特徴としている。
【0012】
本発明の製造方法において用いるターゲットとしては、ケイ素と炭素を含んでいる事が特徴であり、炭素材料中にケイ素や炭化ケイ素等の粒子状のケイ素成分を分散化させた複合材料、及び炭素材料又は黒鉛化した炭素材料の気孔部分にケイ素あるいは炭化ケイ素等のケイ素成分を充填させた複合材料などが挙げられる。
【発明の効果】
【0013】
本発明によれば、表面の親水性に優れ、摺動抵抗が小さいダイヤモンド状炭素被膜とすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【図1】本発明に従う実施例において用いたスパッタリング装置を示す模式図。
【図2】本発明に従う実施例において基板上に作製したダイヤモンド状炭素被膜を示す断面図。
【図3】本発明に従う実施例において作製したダイヤモンド状炭素被膜のXPS(C1s)スペクトルを示す図。
【図4】本発明に従う実施例において作製したダイヤモンド状炭素被膜のXPS(Si2p)スペクトルを示す図。
【図5】ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量と、表面エネルギーとの関係を示す図。
【図6】ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量と、摺動抵抗との関係を示す図。
【図7】ターゲット中のケイ素含有量と、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量との関係を示す図。
【発明を実施するための形態】
【0015】
以下、本発明をさらに詳細に説明する。
【0016】
<ダイヤモンド状炭素被膜>
本発明のダイヤモンド状炭素被膜は、ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜であって、表面エネルギーが35mJ/m以上であることを特徴としている。
【0017】
表面エネルギーが35mJ/m未満であると、ダイヤモンド状炭素被膜の表面において優れた親水性を得ることができない。また、ダイヤモンド状炭素被膜表面の摺動抵抗を小さくすることができない。
【0018】
表面エネルギーは、ダイヤモンド状炭素被膜表面の水に対する接触角及びヘキサデカンに対する接触角を測定することにより、算出することができる。
【0019】
表面エネルギーの上限値は特に限定されるものではないが、一般には、100mJ/m以下である。
【0020】
本発明においては、被膜中におけるケイ素含有量が、3原子%以上であることが好ましい。被膜中におけるケイ素含有量が3原子%未満であると、良好な親水性、小さい摺動抵抗が得られない場合がある。ケイ素含有量の上限値は、特に限定されるものではないが、一般には、50原子%以下である。
【0021】
本発明のダイヤモンド状炭素被膜は、スパッタリング法により形成したものであることが好ましい。スパッタリング法により形成することにより、真空蒸着法や、CVD法により形成する場合に比べ、ダイヤモンド状炭素被膜中におけるケイ素の膜厚方向の分布を均一にすることができる。このため、ダイヤモンド状炭素被膜の表面におけるケイ素の含有量を高くすることができ、良好な親水性及び小さい摺動性を付与することができる。これは、表面におけるケイ素原子の含有量を多くすることができるので、ケイ素原子に結合する酸素原子が増加し、これによって良好な親水性及び小さい摺動抵抗が付与されるものと思われる。
【0022】
スパッタリング法としては、特に限定されるものではなく、マグネトロンスパッタリング、二極スパッタリング、DCスパッタリング、RFスパッタリング、反応性スパッタリングなどが挙げられる。
【0023】
<ダイヤモンド状炭素被膜の製造方法>
本発明の製造方法は、ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜を基板上に形成するダイヤモンド状炭素被膜の製造方法であって、ケイ素と炭素を含むターゲットを準備する工程と、ターゲットを用い、スパッタリング法により基板上に前記ダイヤモンド状炭素被膜を形成する工程とを備えることを特徴としている。
【0024】
本発明の製造方法においては、ケイ素と炭素の両方を含むターゲットを用いて、スパッタリング法により基板上にダイヤモンド状炭素被膜を形成している。このため、上述のように、ダイヤモンド状炭素被膜の厚み方向において、ケイ素が均一に含有されたダイヤモンド状炭素被膜を形成することができる。ダイヤモンド状炭素被膜の表面におけるケイ素の含有量が、真空蒸着法等により形成したダイヤモンド状炭素被膜に比べ多いため、良好な親水性、小さい摺動抵抗を有するダイヤモンド状炭素被膜とすることができる。
【0025】
<ターゲット>
本発明においては、ケイ素と炭素を含むターゲットを用いている。ターゲットにおけるケイ素の含有量は、1原子%〜50原子%の範囲であることが好ましく、さらに好ましくは、3原子%〜20原子%の範囲である。
【0026】
ケイ素と炭素を含むターゲットは、これらの元素が含まれるターゲットであれば、特に限定されるものではないが、例えば、以下のようなものが挙げられる。
【0027】
i)炭素材料中にケイ素や炭化ケイ素等の粒子状のケイ素成分を分散化させたターゲット
ケイ素粒子と炭素粒子に結着材を加えて混合し、この混合物を成形後に焼成することによりターゲットを作製することができる。ケイ素粒子の粒子径としては、0.1μmから200μm、好ましくは0.4μmから100μmの粒子径を用いる。炭素粒子の粒子径とてしは、0.1μmから200μm、好ましくは0.4μmから100μmの粒子径を用いる。結着材としては、焼成により炭素化する任意の有機物を用いる。
【0028】
このような製造方法によれば、所望のケイ素含有量の、ケイ素と炭素を含むターゲットを調整する事ができる。用いるケイ素は、金属ケイ素のみならず炭化ケイ素あるいは酸化ケイ素など、ケイ素を含有する化合物から選択することもできる。また、ケイ素以外の成分、例えば、チタン、クロム、タングステンなどから選択した元素を用いることで所望の成分を含んだ炭素複合材料とすることもできる。その場合は、選択した元素を含んだダイヤモンド状炭素被膜の製造に用いることができる。
【0029】
ii)炭素材料又は黒鉛化した炭素材料の気孔部分にケイ素あるいは炭化ケイ素等のケイ素成分を充填させたターゲット
炭素材料又は黒鉛化した炭素材料の気孔部分にケイ素あるいは炭素ケイ素等のケイ素成分を充填させてターゲットを作製することができる。炭素材料としては、少なくとも開気孔を有するものを用いる。
【0030】
炭素材料の気孔部分にケイ素あるいは炭化ケイ素等のケイ素成分を充填させる方法としては、溶融した金属ケイ素中に炭素材料を浸漬させる方法や炭素材料表面に金属ケイ素を塗布した後に加熱して金属ケイ素を炭素材料に浸透させる方法などを用いることができる。金属ケイ素と炭素材料が反応すれば、炭素材料の気孔部分を炭化ケイ素で充填させた炭素複合材料とする事もできる。
【0031】
このような製造方法によれば、炭素材料の気孔率を調整しておけば、炭素材料の気孔容積に応じて所望のケイ素濃度を含んだ炭素複合材料を調整する事ができる。
【0032】
<スパッタリング条件>
前述の、二極スパッタリング、DCスパッタリング、RFスパッタリング、反応性スパッタリング等のスパッタリング法を用いて適宜の成膜条件により成膜することができるが、例えば後述するアンバランスドマグネトロンスパッタリング(UBMS)法によるスパッタリング法としては、図1に示す反応容器1内の圧力を1〜10−2Pa程度の真空に保った状態で、アルゴン等の希ガスを50〜1000ml/minで導入し、図1に示されるヒーター5または6の前面に配置されているタングステン・フィラメントを点灯してフィラメントの赤熱による熱電子の発生を用いた原料ガスの励起を行いArイオンを発生させる。その後、図1に示す炭素基材3上に対して1〜10kWのスパッタ電圧を印加した基材表面にプラズマを発生させ、対向した基板に向けて10〜100Vのバイアス電圧を印加した状態でスパッタリングを行った。ターゲットと基板との距離は100〜500mm程度である。スパッタリングは2〜8時間程度行う。
【実施例】
【0033】
以下、本発明を具体的な実施例により説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0034】
〔ターゲットの作製〕
(実施例1)
かさ密度1.77g/cmの炭素材料表面に金属ケイ素を塗布した後に1800℃に加熱して、溶融した金属ケイ素を炭素材料に浸透させると共に金属ケイ素と炭素材料を反応させて、炭素材料の気孔部分を炭化ケイ素で充填させたターゲットを作製した。ターゲットにおけるケイ素の含有量は6.5原子%であった。
【0035】
(実施例2)
炭化ケイ素粒子と炭素粒子に結着材としてフェノール樹脂を加えて、ターゲットにおけるケイ素含有量が14.1原子%になるように混合し、この混合物を成形後に還元雰囲気下900℃で焼成した後、1600℃で高温処理することによりターゲットを作製した。ターゲットにおけるケイ素含有量は14.1原子%である。
【0036】
(実施例3)
炭化ケイ素粒子と炭素粒子との割合を、ターゲットにおけるケイ素含有量が5原子%となる様に調整した以外は、実施例2と同様にしてターゲットを作製した。ターゲットにおけるケイ素含有量は、5原子%である。
【0037】
〔ダイヤモンド状炭素被膜の形成〕
上記で作製した実施例1〜3のターゲットを用いて、ダイヤモンド状炭素被膜を形成した。
【0038】
図1は、ダイヤモンド状炭素被膜の形成に用いたスパッタリング装置を示す模式図である。
【0039】
図1に示すように、チャンバー1内には、基板を保持するため基板ホルダー2が設けられている。基板ホルダー2は、矢印Aで示す方向に回転可能なように設けられている。チャンバー1は、図1に示すように、4つのコーナ部を有しており、1つのコーナ部には、ケイ素含有炭素ターゲット3が設けられている。また、他のコーナ部には、タングステン(W)ターゲットが設けられている。また、チャンバー1内には、フィラメント5及び6が設けられている。
【0040】
ターゲット3として、上記実施例1〜3のターゲットを用いて、ダイヤモンド状炭素被膜を形成した。
【0041】
また、基板としては、コバルト(Co)を6.0質量%含有したタングステンカーバイト(WC)基板を用いた。
【0042】
ターゲット4は、基板の上に緩衝層としてのタングステン層を形成するために設けられている。
【0043】
基板の上に、タングステン層を形成した後、ダイヤモンド状炭素被膜を形成した。タングステン層の厚みは、約1.0μmとなるように形成した。また、ダイヤモンド状炭素被膜は、約3μmの厚みとなるように形成した。
【0044】
図1に示すスパッタリング装置は、アンバランスドマグネトロンスパッタリング(UBMS)法によるスパッタリング装置である。スパッタリング条件としては、図1に示す反応容器1内の圧力を10−1Pa程度の真空に保った状態で、アルゴンガス500ml/minで導入し、図1に示されるヒーター5または6の前面に配置されているタングステン・フィラメントを点灯し、フィラメントが赤熱して熱電子が放出できる状況としてAr+イオンを発生させた。その後、図1に示す炭素基材3上に対して6kWのスパッタ電圧を印加した基材表面にプラズマを発生させ、対向した基板に向けて50Vのバイアス電圧を印加した状態でターゲットからスパッタリングを行った。ターゲットと基板との間の距離は300mm、スパッタリングは4時間行った。
【0045】
図2は、以上のようにして形成した基板上のタングステン層及びダイヤモンド状炭素被膜を示す断面図である。
【0046】
図2に示すように、基板10の上にタングステン層11が形成されており、タングステン層11の上に、ダイヤモンド状炭素被膜12が形成されている。
【0047】
形成した被膜が、ダイヤモンド状炭素被膜であることについては、XPS(X線光電子分光法)による元素定性分析、及び硬さ測定等の分析により確認した。
【0048】
〔XPSスペクトルの測定〕
実施例1〜3のターゲットを用いて作製したダイヤモンド状炭素被膜について、XPSスペクトルを測定した。炭素及びケイ素に該当するエネルギー帯でピークが認められたことから、膜内にこれらの元素が含まれていることが確認された。
【0049】
C1sのピークは、284.5eV付近にピークトップを有する鋭いピークとして確認された。Si2pのピークは、100.65eV付近にピークトップを有するブロードなピークとして認められた。
【0050】
図3は、実施例2のダイヤモンド状炭素被膜のC1sピークのXPSスペクトルである。図4は、実施例2のダイヤモンド状炭素被膜のSi2pピークのXPSスペクトルである。
【0051】
各元素のピーク面積から、元素の濃度を算出し、ダイヤモンド状炭素被膜内のケイ素含有量(原子%)を求めた。結果を表1に示す。また、表1には、ターゲットにおけるケイ素含有量(原子%)を併せて示す。
【0052】
【表1】

【0053】
表1に示すように、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量は、ターゲット中のケイ素含有量と相関関係を有することがわかる。従って、ターゲット中のケイ素含有量を調整することにより、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量を制御できることがわかる。
【0054】
〔接触角の測定〕
実施例1〜3のターゲットを用いて作製したダイヤモンド状炭素被膜について、水及びヘキサデカンの接触角を測定した。接触角の測定は、自動記録型接触角計を用いた。測定用の液体を装填したシリンジを測定試料直上に設置し、試料上に液滴形成後、1000ミリ秒後の液滴像を撮影し、液体の試料界面との接触像から接触角を測定した。
【0055】
また、測定した接触角の結果から、Kaelble−Uyの方法により表面エネルギーを算出した。
【0056】
実施例1〜3の接触角測定結果及び表面エネルギーを表2に示す。
【0057】
【表2】

【0058】
表2に示すように、実施例1、2及び3のダイヤモンド状炭素被膜は、35mJ/m以上の表面エネルギーを有することがわかる。また、表1及び表2に示す結果から、表面エネルギーが35mJ/m以上である実施例1、2及び3は、被膜中におけるケイ素含有量が3原子%以上であることがわかる。
【0059】
図5は、ダイヤモンド状炭素被膜中におけるケイ素含有量と表面エネルギーとの関係を示す図である。図5から明らかなように、ダイヤモンド状炭素被膜におけるケイ素含有量と、表面エネルギーとが相関関係を有しており、ダイヤモンド状炭素被膜中におけるケイ素含有量が増加すると、ダイヤモンド状炭素被膜の表面エネルギーが増加する傾向が認められる。
【0060】
〔摺動抵抗の測定〕
実施例1及び2におけるダイヤモンド状炭素被膜について、以下のようにして摺動抵抗を測定した。
【0061】
測定条件は、以下の通りである。
【0062】
測定形式:ボール・オン・ディスク型
使用ボール:1/4SUS
試験荷重:5N
測定条件:300rpmで4000回転
【0063】
摺動抵抗の測定結果を表3に示す。
【0064】
【表3】

【0065】
アルミニウム材の摺動抵抗は約0.2であるが、表3に示すように、実施例1及び2のダイヤモンド状炭素被膜は、アルミニウム材などと較べ、極めて摺動抵抗が小さいものが得られていることがわかる。
【0066】
図6は、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量と、摺動抵抗との関係を示す図である。
【0067】
図6に示すように、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量が高くなるにつれて、摺動抵抗が小さくなる傾向が認められる。
【0068】
図7は、ターゲット中のケイ素含有量と、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量との関係を示す図である。
【0069】
図7に示すように、ターゲット中のケイ素含有量と、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量は相関関係を有している。従って、ターゲット中のケイ素含有量を調整することにより、ダイヤモンド状炭素被膜中のケイ素含有量を調整することができ、所望のケイ素含有量のダイヤモンド状炭素被膜を製造することができる。
【符号の説明】
【0070】
1…チャンバー
2…基板ホルダー
3…ケイ素含有炭素ターゲット
4…タングステンターゲット
5,6…フィラメント
10…基板
11…タングステン層
12…ダイヤモンド状炭素被膜

【特許請求の範囲】
【請求項1】
ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜であって、表面エネルギーが35mJ/m以上であることを特徴とするダイヤモンド状炭素被膜。
【請求項2】
被膜中におけるケイ素含有量が3原子%以上であることを特徴とする請求項1に記載のダイヤモンド状炭素被膜。
【請求項3】
スパッタリング法により形成されたことを特徴とする請求項1または2に記載のダイヤモンド状炭素被膜。
【請求項4】
ケイ素を含むダイヤモンド状炭素被膜を基板上に形成するダイヤモンド状炭素被膜の製造方法であって、
ケイ素と炭素を含むターゲットを準備する工程と、
前記ターゲットを用い、スパッタリング法により基板上に前記ダイヤモンド状炭素被膜を形成する工程とを備えることを特徴とするダイヤモンド状炭素被膜の製造方法。
【請求項5】
前記ターゲットが、炭素材料中に粒子状のケイ素成分を分散させて焼結することにより形成されたものであることを特徴とする請求項4に記載のダイヤモンド状炭素被膜の製造方法。
【請求項6】
前記粒子状のケイ素成分が、ケイ素粒子または炭化ケイ素粒子であることを特徴とする請求項5に記載のダイヤモンド状炭素被膜の製造方法。
【請求項7】
前記ターゲットが、炭素材料又は黒鉛化した炭素材料の気孔にケイ素を充填させたものであることを特徴とする請求項4に記載のダイヤモンド状炭素被膜の製造方法。
【請求項8】
前記ターゲット中のケイ素と炭素との割合を調整することにより、ダイヤモンド状炭素被膜の中のケイ素含有量を調整することを特徴とする請求項4〜7のいずれか1項に記載のダイヤモンド状炭素被膜の製造方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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