ダウンホール屈折計及び減衰反射法分光計のための方法及び装置
本発明は、極めて低い屈折率をもつ気体に基づいて気体と液体を区別するための装置及び方法を提供する。また、サンプルの浄化される様子をその場で観察できる。坑井中の流体の屈折率は、既知の屈折率を持った透明窓と流体との界面での反射光の分画Rから決定する。好ましくは、屈折率は流体を通る光の波長が大きく減衰するのではなく、適度に減衰するような波長で測定する。隣接する変換分光計は観察することにより、波長の減少から正確な屈折率を測定することができる。この反射を基にした屈折計の設計は大きく減衰する波長において減衰反射法分光器のように用いられている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑井環境における屈折率測定と分光測光とに関する。特に、本発明は、減衰反射スペクトルの測定において、逐次的ではなく連続体中を連続的に流通する流体の屈折率を測定するための耐久力の大きい装置及び方法、また地層内流体の様々なパラメータを決定するために本装置を用いてなされた測定結果についての解釈に関する。ここで開示される屈折計及び減衰反射法分光計は簡易化された設計となっており、掘削環境において非常に適している。
【背景技術】
【0002】
石油会社やガス会社は、炭化水素鉱床を見つけるために、多大な投資を行っている。それらの会社は、試掘井を掘って可能性を調査し、試掘井を使って炭化水素の存在だけでなく、存在している炭化水素の特性を決定している。
【0003】
炭化水素を少したりとも製造する前に、はるか沖合いで石油やガスを扱う設備を有する非常にコストのかかるプラットフォームの建設に数年もの年数をかける必要が先ずある。設計明細書や設備にかかる費用は、ガス/油比率や粘性率、沸点圧、アスファルテン沈殿圧等の炭化水素の性質に大きく依存している。試掘井は掘削した後すぐにふさがれ破棄される。しかしながら、探査により得られる情報は石油鉱床及びガス鉱床の寿命を予測するのに全て使われることができる。
【0004】
炭化水素の性質を決定するために、石油会社やガス会社はしばしば試掘井から炭化水素を採取する。この目的のために、ベイカー アトラス リザーバー キャッラクタライゼーション インスツルメント(Baker Atlas Reservoir Characterization Instrument(RCI))のようなワイヤライン フォーメーション テスターを、坑井に降下させる。
【0005】
まず、採取された流体は、掘削時に用いられた流体("泥")のろ過によって、極めて汚染されている。地層に関する有用な研究データを提供するであろうような非常にきれいなサンプル(通常、不純物が10%以下)を得るために、地層内流体が、通常、30-90分間かけて坑井より吸い上げられ、同時に浄化が時々刻々と観察される。それから、採取された流体は、地上の研究室で分析を行うために、坑井中でタンクに詰められる。
【0006】
また、いくつかの特性については、坑井中において経時的に分析される。本発明は、サンプル浄化を観察することと温度及び圧の油層サンプルの状態を坑井中において分析することとに関連している。
【0007】
坑井中というのは、感知装置を操作することにおいて難しい環境の一つである。坑井中の環境において、測定器具は、温度上昇、振動、及び衝撃を含む器具の加圧容器内といった極限の状態や限られたスペースという状況下で操作しなければならない。
【0008】
Mullinsらの米国特許5,167,149、Mullinsらの米国特許5,201,220は、両方とも、「坑井流体中のガスの存在を検知する方法及び装置」と題されている。前記発明のMullinsの装置は、坑井中の8つの臨界角(とブルースター角)からなる、油とガスを区別し流体中のガスの含有率を評価する屈折計である。
【0009】
(原油のような)黒い流体の屈折率を測定する伝統的な方法に、臨界角屈折計がある。発散光線が透明な固体(例えばガラス)を通り抜け、透明な固体と透明な固体に接している、測定されるべき流体との界面にあたる。反射した発散光線はこれらの角度で界面に対して垂直に近づくように二手に分かれる。ある角度では、光が流体の中に(屈折して)進入していくものもある。
【0010】
反射した発散光線は、視射角ではより明るくなる。ブルースター角から始めると、どのような投射したp偏光も反射損が起こらない。臨界角から始めると、全ての光が、いうまでも無く偏光も反射損は起こらないが、流体の中に進入する光が無く界面で100%反射される。
【0011】
臨界角は、光が屈折率n0である媒体から屈折率n1である媒体に通過するときの光の屈折に関するスネルの法則n0sinθ0=n1sinθ1により、算出される。(界面に対して垂直の部分から測定して)最大可能屈折角は、スネルの法則にθ1=90°を代入してから導かれるθc=arcsin(n1/n0)という式により求められる。
【0012】
臨界角では、反射強度に大きな変化(明暗の境界)があり、それは、移動可能なひとつの検出器、あるいは固定された光検出器列を配置すると存在する。ある一つの可動検出器を使用すると、坑井設計に重大な機械的複雑さが加わる。
【0013】
研究室の計器は、臨界角を検出するために、1024個以上もの固定された光検出器アレイを使用する。しかし、光検出器アレイに結合されたマルチプレクサは一般的に約95℃以上では作動しないので、研究室の設計を坑井で模倣するのは難しい。高温と隔離されたマルチプレキサでさえ、坑井中の高温度下で多重化した非常に多くの微弱な信号を混合するのは、ノイズを減少させるためにそれら微弱な信号を重畳しなければならないので、厄介である。それゆえ、坑井では数個(例えば8個)のみとりつけられた光検出器が、臨界角屈折計として使用されているくらいである。もちろん、前記米国特許5,167,149と5,201,220とに記載された8つの屈折計を用いれば、屈折率は連続的にではなく、たったの8段階しか測定できない。
【0014】
なぜなら、そのような装置は8つの粗雑な段階における屈折率を測定しているだけであるので、この装置の操作者がサンプルの浄化をモニターするのが困難となるであろうからである。サンプルの浄化は、坑井の中で指定した深さから流体をくみ上げるときに、ろ過水で汚染された流体からほぼ純粋な地層内流体へと推移していくことである。
【0015】
サンプルの清浄化を正確にモニターすることは、反射率を読み取ることだけでは実現できない。したがって、操作者が地層サンプルの反射率を正確にモニターすることができるように、連続的に屈折率を測定できる方法及び装置が必要である。
【発明の開示】
【0016】
本発明は連続的な屈折率測定法を提供する。連続的な屈折率測定法を使用して浄化の観察を行うことの利点は、反射率が砂やその他の微粒子の通過に対して不感となることである。前記砂やその他の微粒子が通過すると、坑井中の伝送分光計のスペクトル全体にわたる吸収において突然のスプリアス増加("ジャンプ")を引き起こす。サンプルにおける検査深さは、サファイア窓表面からサンプルに向けてたったの1-2ミクロンであり、したがってサンプルの光学的な測定は、窓表面から3ミクロン以上の気泡や微粒子によって影響を受けない。微小な厚さでの調査は、サンプル内で非常に薄い部分(1-2ミクロン)で調査が行われるため、界面技術といわれている。したがって、本発明によって提供される界面技術は、ほとんどの気泡や微粒子がサファイア窓表面から1-2ミクロン以内の領域を通らないので、気泡によって引き起こされる明るさの一時的な増加や、微粒子によって引き起こされる暗さの一時的な増加をなくす。面白いことに、米国特許5,166,747の第5欄17-23行には、「サファイア面と液体のサンプルとの界面でおこる反射からは有益な情報は得られない」との記載があり、これは本発明の教示からは程遠い。
【0017】
本発明の屈折計は窓を通過する光のわずかな波長の深さで流体を探査するから2mmの通過距離を有するセル(304)を通る微粒子をすべて検出することができないので、本発明の屈折計は微粒子に対して過敏ではない。少なくとも光の微小な波長程度の厚みをもつ微粒子と窓の周囲は流体で覆われているので、窓の光の微小な波長に入る微粒子はほとんどない。
【0018】
本発明は、臨界角を測定することを要しない。本発明は、減衰反射法分光計としても用いられるものである。
【0019】
本発明は、連続的な屈折率の測定を提供し、掘削環境において丈夫であり正確な操作を行うための簡略化された屈折計仕様の装置及び方法からなる。
本発明の一態様として、本発明は本発明の屈折計を用いた新しい測定を提供する。本発明の他の態様として、本発明は極めて低い屈折率をもつ気体に基づいて気体と液体とを区別するための装置及び方法を提供する。また本発明のもう一つの態様として、本発明は光が透明窓と坑井、あるいは地層内流体との界面で反射したときの光の分画Rから坑井、あるいは地層内流体の屈折率を決定するための方法を、提供する。また、本発明のさらなる他の態様として、本発明は、減圧下で地層内流体の沸点や露点の観察をし、また、地層の他の様々な特性を正確に決定するために、使用されることができる。もう一つの本発明の態様として、本発明は、流体の大きな減衰域にある吸収スペクトルを得るために用いられる。
【0020】
大きな減衰域というのは、可視領域と近赤外領域における(電子の遷移に依存している)アスファルテンピーク、及び中赤外領域(吸収が近赤外領域における吸収の100倍以上)又は近赤外領域における強い分子の振動ピークを含んでいる。そのようなスペクトルは、一般的に経路2mm以上の伝送分光計を使用して測定するには減衰しすぎている。
【0021】
赤外領域で分光器を使用したとき、ささいな化学的な違いでも非常にはっきりと現れるため、中赤外領域はよく"指紋領域"と呼ばれている。(原油で見られる)アルカンの赤外スペクトルは、(掘削泥水にのみに見られる)アルカンのスペクトル、又は(たいていの原油で見られ、環境保護に関して都合の良い掘削泥水には見られない)さまざまな芳香族化合物のスペクトルと異なっている。
【0022】
赤外スペクトルの違いは、色よりも分子の振動のスペクトルから推測される化学的な組成のささいな違いに基づいた、サンプル中における掘削泥水の不純物の量を推し量る改良された方法の、基礎とすることができる。これら、及びその他の本発明の目的及び利点は、引き続く好適な態様により証拠付けられ、その好適な態様は「発明の詳細な説明」にて開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、流体とサファイアとの界面で反射した光の、流体が測定されるべき測定媒体であるときの、界面に対して垂直から計った屈折率に対する割合を示す。
【図2】図2は、本発明の屈折計の好ましい実施態様を示す図である。
【図3】図3は、図2の屈折計の拡大図である。
【図4】図4は、本発明の分光計の値と従来の分光計の値とを比較したグラフである。
【図5】図5は、汚れた原油の屈折率"n"の変化とオイルベース泥水のろ過による浄化具合の百分率を示すグラフである。
【図6】図6は、クラウジウス−モソッティ比(n2-1)/(n2+2)の、多様な十種類の純粋な炭化水素(ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ドコサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレン)の密度(g/cc)に対するグラフである。これらのデータは公開文献(CRC Handbook of Chemistry and Physics,50th Edition,1969)からとった。
【図7】図7は、個々の成分におけるクラウジウス−モソッティ比の容積測定の重みづけ総和(volumetrically weighted sum)の、十種類の純粋な炭化水素の任意の混合合成物の密度(g/cc)に対するグラフである。近似した傾きと切片とは、混合物におけるそれらと純粋な成分におけるそれらとが基本的には同じであることに注意すべきである。
【図8】図8は、クラウジウス−モソッティ比(n2-1)/(n2+2)に対するAPI度が19°から41°までの十種類の原油の密度(g/cc)を示すグラフである。これら非常に多くの構成成分からなる混合物(原油)における近似した傾きと切片の特徴は、純粋な炭化水素やそれら混合物に見られる値にとても近く、一般的なクラウジウス−モソッティ比と密度との関係に近い。これらのデータは一つのアウトライアー(the Oklahoma crude)を除いては公開文献(Table I of Buckley, et. al, Paper 61f of 2nd International Symposium on Thermodynamics of Heavy Oils and Asphaltenes, Houston, March 9-13,1997)からとった。
【図9】図9は、液体の薄膜や液滴が形成され光の強度が低下したときに露点を決定するための工程を示す説明図である。
【図10】図10は、屈折率が最小となる圧における沸点を決定するための工程を示す説明図である。
【図11】図11は、サンプルの溶解度や表面張力、組成などを評価するための工程を示す説明図である。
【図12】図12は、算出された屈折率の誤差において迷光の効果を示している。
【図13】図13は、ダウンホール環境下での本発明の一つの例である。
【発明の詳細な説明】
【0024】
本発明は、屈折計測定により種々の地層内流体の特性を決定するための方法及び装置を提供する。本発明はまた、非常に低い屈折率を持ったガスに基づいて、より正確にガスと液体とを区別する方法及び装置を提供する。坑井や地層内流体の屈折率は、既知の屈折率を有する好適な透明窓と分析済みの地層内流体との界面での反射光の画分"R"により決定されることができる。
【0025】
図1は、光が透明窓と界面の垂直面に投射したときの流体とサファイアとの界面で反射した光の百分率であるプロット101を示している。この図では、窓は一定の屈折率1.75に定められているが、屈折率はこの値に限られずに様々である。反射は、流体の屈折率が窓の屈折率、たとえばサファイアに対する屈折率1.75と同じであるときに、最小になる。
【0026】
図2は、地層や坑井の流体を現場で分析できるような(例としてa Baker Atlas Sample ViewSM toolがある)ダウンホールの流体を分析する器具内の限られた空間内に適合する本発明の好ましい屈折計の仕様を示す。
【0027】
好ましい実施態様において、光源201(例えばタングステンの電球)は、地層又は坑井の流体サンプルに向けて光を発している。放射された光は、光源と流体サンプルの間に置かれたコリメートレンズ装置203によって、平行光線となる。障害がなければ、平行光線である光は、第1のサファイア窓303の外面に垂直に投射される。サファイア窓303と302とは、平行光線化された光に対して垂直に置かれ、それらの間を分析中に流体が流れることができるようにするギャップ又は溝304で分けられてている。好ましい実施態様において、屈折計アッセンブリ205は、310から投射された平行光線の一部の進行方向を変え、第1のサファイア窓303と空隙304中の流体との界面307に焦点を合わせる。反射した光線は317で屈折計(316、318、320)と減衰反射法分光計(321)とに分けられる。屈折計又は減衰反射法分光計に使用するために取り出されていない平行光線の一部は、伝送吸収分光計209のような他の実験に続けて使用される。
【0028】
図3は、屈折計アッセンブリ205の拡大図であり、左ロッド300、及び右ロッド301のように表す2個の光学伝送ロッド(リレーレンズであってもよく、また、単なるガラス又はサファイアのロッド)300、301を示す。二つの光学伝送ロッドの縦軸は、第1のサファイア窓303と第2のサファイア窓302と流路304とから成る加圧封止板303、302の両方の平面に対して垂直な平面内にある。加えて二つの光学伝送ロッド300、301は、好適には隣接し(それらが303に臨む位置で相互に接触している。)、第1のサファイア板303にも接触している。光信号を最大にするために、伝送ロッド300、301と第1のサファイア板303との空隙を埋めるための高温屈折率整合ゲルが加えられる。未知のサンプル及び参照サンプルは両方とも光の強度が同じ要因によって減衰するので、空隙が空気で満たされているときを除きその空隙が満たされていないときは、屈折率測定に変化を生じさせない。屈折率を算出するために使われる(16)式Ir_air/Ir_unkは比率にのみ依存し、分子と分母の共通因子で約分する。伝送ロッド300と301とは、好ましくは垂直から同じ角度(約4°)で垂直に引かれた中心線306をまたいでいる。この好ましい角度は、機器設計の制限がでる最小の効果的な角度である。我々の方式で想定されることであるが、反射強度から屈折率を算出するため理想の角度は0°である。しかし、理論上の計算では、反射強度は0°から4°と無視可能な範囲(空気では-0.0062%までと油では-0.0079%まで)で変化する。この反射強度の誤差を我々の方式を通してみると、4°という角度は空気と比較した油の屈折率を測定するときに誤差の原因となるが、無視できる程度の2〜3ppm以下となる。サンプルにおける検査深さ範囲は、サンプルの内部に向かってサファイア窓表面からわずか1-2ミクロンであり、したがってサンプルの光学測定は、窓表面から3ミクロン以上ある気泡又は微粒子による影響を受けない。この浅い深さでの調査は、サンプル中の非常に小さな深さ範囲(1-2ミクロン)内で調査されるので、界面技術として参照される。したがって、界面技術に基づく本発明によると、ほとんどの気泡や微粒子はサファイア窓表面の1-2ミクロンの部分を通ることができないため、ガスによる一時的な明るさの増加、及び微粒子による一時的な暗さの増加をおおむねなくすことができる。
【0029】
好ましい屈折計は、空隙304内に既知の屈折率(例えば空気又は水の屈折率)をもった物質を導入することにより調整される。左ロッド303を通って第1のサファイア窓に達し、サファイア/空気(あるいはサファイア/水)の界面で反射されて右ロッド301を通って伝送される反射光の強度は記録され、また相対反射強度から他の流体の屈折率を算出するために検定標準値として使用される。空隙304に既知の屈折率を持った流体を導入して光源310を点けると、左ロッド300に入射し、流体とサファイア界面で反射して右ロッド301を通る。この反射光は光学連結部314を通過し、光フィルター316を通って電気光学変換器318に達し、最終的には電気分析/ディスプレイシステム320に達する。
【0030】
透明な既知の標準流体を使用するとき、ブラックテスト対象312は、第2のサファイア窓302の内側の表面であって空隙304内に存在している。ブラックテスト対象312>は、第1のサファイア窓を通り抜けて第2のサファイア窓にあたるどのような光も吸収してしまうので、第2のサファイア窓302から反射して返ってくるのを防ぐ。このテスト対象312により正確な値を得ることができるようになる。なぜなら、対象312を取り去ると第2のサファイア窓302で反射が起こり、重要なことであるが値が追加され、それにより数値が変わってしまうためである。しかし、この二回目の反射は一般的に較正についてのみの問題である。その理由は地層内流体は通常、較正に使用される標準流体(空気)よりも高い吸収を持っており二回目の反射は流体自体によって消失してしまうためである。もう一つの理由は、窓と流体との界面で反射された光の屈折は、ある界面の表層厚や表層厚よりも大きな空隙304に入るほどの流体の屈折率にしか依存しないためである。
【0031】
好ましい実施態様として、地層内流体、あるいはガスはサファイア窓302と303との間にある空隙304を通り、反射光の強度が測定される。反射光の強度は基本的に、空隙304と上側の板303が接触している界面において地層内流体の薄層の屈折率に依存している。
【0032】
光学連結部314は電気光学変換器318と伝送吸収分光計209に使用される中央の光線の外側に配置された装置とを結び付けている。アッセンブリの配置は、伝送吸収分光計209のような他の測定にも使用できるサファイア窓の一部に影が投射されるのを防止する。
【0033】
反射の基本式はよく知られており、例えばHandbook of Optics, Volume I, Second Edition,Michael Bass.ed.に記載されている。吸収のない窓や流体において、界面に対して垂直な光線の反射率は次の通りに与えられる。
R=Iγ/I0=(n0-n1)2/(n0+n1)2 (1)
ここでn0は窓の屈折率、n1は流体の屈折率である。(1)式をn1について解くと、
n1<n0のとき、n1=n0(1-Sqrt(R))/(1+Sqrt(R)) (2)
n1>n0のとき、n1=n0(1+Sqrt(R))/(1-Sqrt(R)) (3)
【0034】
本発明では、伝送窓の物質にサファイア(n0=1.746)が好適に使用される。ほとんどの原油の屈折率は約1.43〜1.55である。高圧下での天然ガスの屈折率は非常に小さい。それゆえ、本発明を実施するときは、n1<n0((2)式)の条件下での式が採用される。光が伝送されてサファイア窓を通り、流体と窓との界面にあたるとき、界面からの反射光はますます明るくなり、流体の屈折率はますます下がっていく。流体の最も低い屈折率は真空についての値(n0=1.0)であり、これは1気圧、0℃条件下の空気の屈折率(n0=1.0002926)に非常に近い。
【0035】
本発明は、流体と窓との界面の表層厚内で生じるところの、流体による光吸収(減衰反射効果)を計数することによる屈折率の式((1)式)による評価を修正することから成っている。屈折計に使用された光の波長が大きく減衰するときのみ、簡潔な(2)式の代わりに(11)式を使うことによって吸収の調整の必要がある表層厚の微小な距離において流体が十分な光を吸収する。
本発明の屈折計はサファイアと流体の界面における反射光の強度に基づいている。
迷光の防止は、この屈折計の操作の成功において不可欠である。その目的のために本発明は、屈折計セッセンブリを配置する部分においてチューブのような器具の内部など様々な場所に、例えばつや消し黒クロームのようなつや消しの黒色塗装を提供する。つや消しの黒色塗装を施すに先立ち、この管の内部に、チューブ内部で反射光から迷光を減らすために(平坦ではなく)頂点のある細線が、形成される。
本発明は、第2のサファイア窓での反射を十分に防ぐことができる。その目的のために、二つの窓の間に黒クロームでコーティングした黒テフロン対象物が挿入される。このようにして黒クロームが坑井中の流体に晒されても、黒クロームが適度に持ちこたえるようになる。しかし、坑井中の流体におけるもっとも臨界的な現象に対して、炭素充填粗面化黒色テフロンが使用される。粗面化処理は特に制限がなく、粗面化処理をすることにより黒色テフロンが現れる。黒色クロームは器具内部の迷光が減少するような部位に使用され、坑井中の流体にはさらされない。
第2のサファイア窓以外の器具から迷光を除去するためには、(多量にではなく)いくぶんかの水と油との両方の吸収すなわち"最適な吸収"をもつ波長(1740 nm)を用いるのが、好ましい。屈折計において、原油に大きな吸収がある波長(アスファルテンピークである400-1100 nm)は、使用されるべきではない。なぜなら、容易に較正できない屈折率測定の機器的誤作動の原因となる大きな減衰反射が起こるからである。
【0036】
吸収のない窓と吸収のある流体とにおいて、流体の複合屈折率は実際の部分(n1')と仮定の部分(k1)とから定義される。
n1'+ik1 (4)
ここで
k1=(αλ)/(4π) (5)
ここでk1は流体の複合屈折率の仮定部分であり、波長λでの吸収を表し、αは光の強度が初記値の1/eまで低下する距離(よく"表層厚"や"浸入度"といわれる)の逆数である。吸収の定義により、A=log10[I0/I]となる。この式の両辺にαをかけて、Iに(I0/e)を代入すると、波長λにおける流体の単位長の吸収が得られる。すなわち、
Aα=αlog10[I0/(I0/e)]=αlog10(e) (6)
【0037】
固定された流路長Lにおける流体の吸収Aは、機器の他の手順によって得られる。この長さLは、2 mmを用いるのが好ましい。単位長吸収は、密度に類似した、流体の(形状や体積とは独立した)固有の特性である。したがって、測定された単位長吸収(A/L)を(6)式の右辺に代入してαについて解くと次式が得られる:
α=A/[Llog10(e)] (7)
(7)式のαを(5)式に代入して波長λにおける単位長吸収に換算したk1を算出すると
k1=(Aλ)/(4πLlog10(e)) (8)
数字を代入して、L=2 mm、λはnmであるとすると
k1=A2 mmλ[nm]/(10915011) (9)
となり、1300 nmのときk1=A2 mm/8396となる。また、1600 nmのときはk1=A2 mm/6821となり、A2 mmは、取り付けられる屈折計の隣に配置するダウンホール伝送分光器によって測定される吸収である。
【0038】
吸収のある流体以外の吸収のない窓において、光の反射は界面に対して垂直かほぼ垂直であり、その反射率は次の式が与えられる。
R=[(n0-n1)2+k12]/[(n0+n1)2+k12] (10)
これをn1について解くと、
n1=(n0/a){1±Sqrt[1-a2(1+(k1/n0)2)]} (11)
【0039】
ここでa=(1-R)/(1+R)である。吸光度補正の必要性を最小限にするために、反射率の測定が、1300 nmや1600 nmのような流体による最小の吸収がある波長において行われる。これら二つの波長は、分子の吸光度帯の間にある。好ましくは、測定は、1740 nmにおいて行うのがよい。なぜなら、この波長は適度(かつ最適)な油と水との両方の吸収があり、第2のサファイア窓で反射した迷光を減らすためである。
【0040】
もちろん、原油もまた、アスファルテンによって波長が増加するのを防ぐ電子吸収帯をもっている。軽質原油においては、アスファルテンピークはよく1300 nmにおける最小の吸収まで低下する。中質原油においては、アスファルテンピークはより長波長の1600 nmまで最小の吸収は低下しない。重質原油では、1600 nmのような長波長の最小の吸収を用いているにもかかわらず、較正式((9)式と(11)式)でn1を算出する必要がある。アスファルテンの吸収の望ましくない影響は、1740 nmで少なくなる。
【0041】
流体が大きな吸収を示さない波長において通常の投射では、次の式で、未知の流体の屈折率nunkを算出することができる。nunkは1)サファイアの屈折率、2)空気の屈折率、3)サファイアと空気との界面における反射強度に対するサファイアと未知の物質との界面における反射強度の比によって求められる。
nunk=nsap(a-b)/(a+b) (14)
ここで
a=(nsap+nair)/(nsap-nair) (15)
b=Sqrt(Ir_unk/Ir_air) (16)
Ir_airはセル内が空気で満たされているときの反射強度、
Ir_unkはセル内が未知の流体で満たされているときの反射強度、
nunkは未知の流体の屈折率、
nairは空気の屈折率(約1.0029)、
nsapはサファイアの屈折率(約1.746)である。
【0042】
【0043】
(14)式は、未知の物質とサファイアとの界面での反射率に対する空気とサファイアとの界面での反射率の比の平方根をとり、aとbの定義を用いて最後にnunkについて解くと、(1)式から得られる。
【0044】
図4は、水、ペンタン、トリクロロエタン(それぞれ低、中、高屈折率)についての、可視領域で測定された屈折率に対する本発明の(式14を使用し、1600nmでの)屈折率測定と従来の屈折計とを比較するプロット401である。さらなる改良点は、空気とサファイアとの屈折率における温度によるわずかな変化を較正し、(可視領域、特に589 nmで測定した)従来の屈折率に対して(本発明において1600 nmで測定した)屈折率を較正すること、である。
【0045】
可視波長領域及び赤外に近い短波長におけるアスファルテンピークの大きな減衰が見られていた原油のスペクトルを、本発明では得ることができる。波長に対する反射強度の標準スペクトルは、光ファイバーの光学連結部314に直接、小型の携帯用管型光学分光器Ocean Optics S2000を取り付けることにより、また400-1100 nmの範囲のときには第1のサファイア窓303の下にある空隙304が空気のときは前記空隙を流体で満たすことによって、得られていた。空隙304を原油で満たしたとき、本発明では、波長に対する反射強度のもう一つのスペクトルを得ることができる。これら二つのスペクトルの比の常用対数から、アスファルテン領域における原油の吸収スペクトルが、得られる。この測定法は、短波長ほどアスファルテン特有の吸収の増加が見られる。
【0046】
本発明の屈折計と減衰反射法分光計とを使用するために、光ファイバー光学連結部314に光スプリッタ317が取り付けられる。スプリッタ317は、平行光線の一部を屈折計の特製光フィルタ316と電気光学変換器318とに送る。このスプリッタは、残りの光線を、一つもしくはそれ以上の光フィルタと格子、又は波長分別装置と光検出器とから成る減衰反射法分光計321の方へ、振り向ける。
【0047】
本発明は、(粗雑ではなく)連続的な屈折率の値を提供する。それゆえ、連続的な屈折率の値により、サンプルが浄化されていることに関連するような屈折率のわずかな変化も観察することができる。サンプルを浄化するということは、坑井中の任意の深さから流体をくみ上げるときに、濾過物で汚染された地層内流体から純粋に近い地層内流体に変えることを意味する。図5は不純物を含んだ屈折率がどのように濾過物で汚染されたオイルマッドの割合に関連しているかのプロット501を描いている。
【0048】
クラウジウス−モソッティ式((17)式)はクラウジウス−モソッティ比に関連しており、
r=(n2-1)/(n2+2)、密度ρ、分子の分極率P、グラム分子量M、であるとき
(n2-1)/(n2+2)=ρPm/M (17)
【0049】
理想の混合状態において、クラウジウス−モッソッティ比の各成分の(容積測定の重みづけ総和)は混合状態のクラウジウス−モッソッティ比と等しくなる。この方法では、一般的に混合物の屈折率と構成成分の屈折率とを関連付けることができる。理想の混合状態において、クラウジウス−モッソッティ比の各成分の容積測定の重みづけ総和は混合状態のクラウジウス−モッソッティ比と等しくなる。この方法では、混合物の屈折率と構成成分の屈折率とが関連付けらる。すなわち、混合物の屈折率をn、i番目の混合物の占める体積分画をfi、その屈折率をniとするとき、
(n2-1)/(n2+2)=Σi fi (ni2-1)/(ni2+2) (18)
【0050】
本発明は流路における流体の露点の決定を可能にし、純粋な地層内流体であるならば周りの地層の流体の存在を示している。空隙304において地層内流体のサンプルを採取し、弁340を閉じて容積を変化させ、またピストン341を上下に動かして空隙304中のサンプルの容積や圧をそれぞれ増減させることによって、本発明では、使用者は流体サンプル340の露点や沸点を決定することができる。本発明では、サンプル厚みや流路の界面、流路とサンプルとの界面からの光のわずかな波長において、流体の屈折率が測定される。露点においては、ガスは優先的に固相表面における核形成サイトで液体に凝縮する。すなわち露点においては、窓に液体の膜が形成し、ガスが液体となるときの屈折率の変化を用いている本発明によって検出される。
【0051】
液層は窓に対して接しており、反射光の強度が低下するため、ガス状態から液層に流体が遷移する間に、屈折率の測定値が上昇する。しかしながら、薄い液膜はわずかにくさび形ではなく完全に平らであるという不足の出来事において、流体とガスとの界面から検出器へ反射することもあるが、結果として露点を越えたとき反射光の劇的な変化はあまりなくなる。
【0052】
図6は、クラウジウス−モソッティ比(n2-1)/(n2+2)に対する十種類の純粋な炭化水素(ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)のそれぞれ異なった密度(g/cc)を示すグラフ601である。これらのデータは公開文献(CRC Handbook of Chemistry and Physics,50th Edition,1969)を参考にした。
【0053】
図7は、個々の成分におけるクラウジウス−モソッティ比の容積測定の重みづけ総和と十種類の純粋な炭化水素の任意の混合合成物の密度(g/cc)を示すグラフ701である。近似した傾きと切片との特徴は、混合物と純粋な成分のものが基本的には同じであるということである。
【0054】
本発明は、ダウンホールの連続した屈折率の測定を可能にするものである。それは、この測定法とモル質量や比重、あるいは屈折率や物理学特有の見地や眼識における経験から推測される領域での伝統的なデータベースに由来する沸点、あるいは完全に独立した方法での測定を結びつけることができる。例えば、ダウンホールの比重は、坑井中の異なる深さにおいてRCI圧測定法のグラジエント(圧対深さの勾配)から得ることができる。あるいは、図8のプロット801に描いたように、屈折率それ自体から比重を推測できる。
【0055】
既知のダウンホール屈折計測定は8段階から成り、作業員はこれら8段階の屈折率を告知するだけだった。すなわち、8段階の装置を用いたときは屈折率自体よりも流体の屈折率の範囲(8段階のうちのひとつの上限や下限)を報告するのみであった。
【0056】
本発明の好ましいダウンホール屈折計は、逐次的ではなく連続的な屈折率を測定するものである。それゆえ、測定した屈折率は、沸点圧や表面張力、溶解性パラメータのような有益なダウンホール特性を得ることができる。
【0057】
流体の圧力に対する屈折率のプロットは、流体の沸点圧において最小となる。例えば、(流体が沸点よりも上か下にあるとき)1.47から(沸点のとき)1.43まで変化する。それゆえ、本発明は屈折率を測定して、本発明の屈折計を用いて沸点圧を決定している間、ダウンホールの圧力を減らすために空隙304と弁340とピストン341とから成る拡張サンプル空間を提供する(Buckley, et. al, Paper 61f of 2nd International Symposium on Thermodynamics of Heavy Oils and Asphaltenes, Houston, March 9-13, 1997)。圧力を沸点以下に下げるためのサンプル拡張空間は米国特許No. 6,218,662で発表されたように当業者にはよく知られている。
【0058】
パラメータRm=(n2-1)/[(n2+2)ρ]は分子の占める体積の分画の総和を表しており、多くの物理的、熱力学的な特性を予測するとき非常に有用なパラメータである(Riazi M.R., Daubert T.E., "Characterization Parameters for Petroleum Fractions", Industrial and Engineering Chemistry Research, U.S.A., Vol.26, Pages 755-759, 1987)。この式において(n2-1)/(n2+2)はモルあたりの分子の占める体積であり、ρは単位体積あたりのモル数(グラムではない)を表している。パラメータRmは他のパラメータと共に表面張力や沸点を求めるときに用いられ、閃光計算(flash calculation)にも用いられる。(Escobedo, J. and Mansoori, G. A., Surface Tension Prediction for Liquid Mixtures, AIChE Journal, Vol.44, No.10, pp. 2324-2332, 1998)。
【0059】
(n2-1)/(n2+2)3/4は溶解度と比例しており、混合物の偏光、及び脂肪族に対する芳香族の相対分画を推測するために用いられる(Buckley, et. al, "Asphaltene Precipitation and Solvent Properties of Crude Oils, Pet. Sci. Tech., Vol.16, No.3-4, p. 251, 1998)。
【0060】
石油の製造、処理、輸送において装置の適正な設計及び操作を行うとき、石油の留分と製造の熱力学的、物理的な特性は重要である。地層内流体の特性を調査することは次のMohammad R. RiaziとYousef A. Roomiによる"流体の特性を測定するためのMinimum Lab.データ"と題された論文の要約より抜粋したなかで示されたように、モル質量や比重、屈折率からほとんど全ての地層内流体の特性の調査が議論されており、また50th Canadian Chemical Engineering Conference(CSChE 2000), Montreal, Canada, October 15-18, 2000で発表された(Industial & Engineering Chemistry Rsearch (Issue 8, 2001). Riazi, M.R. and Y. Roomi, "屈折率を用いた炭化水素混合物の熱力学的特性の調査", Accepted for publication in Industrial & Engineering Chemistry Research, American Chemical Socioety, January 2001でも見ることができる)。
石油の留分の熱容量、熱伝導性、粘度、密度は精製装置において熱交換ユニットの設計や操作に必要である。石油生成のときにベンゼンや芳香族、硫黄の含量を知ることはガソリンや軽油のような石油燃料の質を決定するのに重要である。異なる条件下で全ての石油混合物のこれらの特性を決定するには、コストと時間が非常にかかる。三つの基本的な特性を測定するだけで、その他全ての特性が正確に調べることができる。これらの三つの基本的な特性とは、20Cにおけるモル質量、比重、そして屈折率である。モル質量が分らない場合には、比重や屈折率に加えて沸点(蒸留データより)が様々な熱力学的、物理的な特性を調べるために用いられる。石油の留分や製品は、種々の炭化水素化合物の混合物である。これらの化合物は非極性であり、主な分子間力は分極率により決まるファンデルワールス力であり、屈折率によって定義される。屈折率は実験室で容易に測定できる特性である。屈折率や密度、モル質量がわかると、石油の留分においてパラフィンやモノ芳香族、ポリ芳香族の量を正確に決定することができる。これらのパラメータを用いて臨界性質や状態方程式、粘度、熱伝導性、拡散係数、熱容量、気化熱のような物理的特性を実験データから誤差1-2%の正確さで求めることができる。石油混合物の多くの物理的、熱力学的な特性は、測定できるほんのわずかなパラメータから決定することができる。
【0061】
したがって、地層内流体サンプルの屈折率を決定するために本発明を利用し、モル質量や比重を提供することによって、パラフィンの量、ナフタレンの量、モノ芳香族の量、ポリ芳香族の量、及び石油の留分に含まれる硫黄の量を正確に決定することができる。これらのパラメータを通じて、例えば臨界性質、状態方程式、粘度、熱伝導性、拡散係数、熱容量、及び気化熱のような多くの物理的な特性を得ることができる。
【0062】
図9は、液体の薄膜又は液滴が形成されて光の強度が低下したときに露点を決定するための工程を示す説明図である。本発明を用いた工程の一例は、
地層内流体を採取する(901)、
流体の圧力を増減させるために流体の容積を変えること(902)、
流体の圧力を増減させるために流体の容積を変えること(903)、
圧力が変化している間中、流体の屈折率を観察すること(904)、
減圧している間中に、反射光の強度の減少を決定すること(905)、
減圧している間中に、反射光の強度の減少を決定すること(906)、
液体の薄膜又は液滴が形成されて光の強度が減少したときに流体の露点を決定すること(907)、
というように構成されている。
【0063】
図10は屈折率が最小となる圧における沸点を決定するための工程を示す説明図である。本発明を用いた工程の一例は、
流体サンプルを採取すること(1001)、
流体を減圧すること(1003)、
減圧している間中、屈折率を観察すること(1005)、
屈折率が最小となる圧における沸点を決定すること(1007)
というように構成されている。
【0064】
図11はサンプルの溶解度や表面張力、組成などを評価するための工程を示す説明図である。本発明を用いた工程の一例は、
流体を採取し、減圧すること(1101)、
連続的に流体の屈折率を観察すること(1103)、
流体の溶解度、表面張力、組成を評価すること(1105)
というように構成されている。
【0065】
図12は屈折率測定における迷光の誤差が1%(1201)、2%(1202)、5%(1203)のときの効果を示している。図13はダウンホール環境下での本発明の典型的な実施態様の図である。本発明は、金属線か滑らかな線の一方において配置を行ったり、掘削時に観察するのに適している。図13は掘削時の観察における本発明の典型的な実施態様の図である。ここで図13を見ると、図13は本発明を用いた掘削装置の一つの実施態様である。坑井204を掘り進める典型的な掘削装置202は、当業者の間では通常の技術によってよく理解されるように、描画されている。掘削装置202にはストリング206があり、この例示ではドリルストリングを示している。ドリルストリング206には坑井204を掘削するためにドリル208が取り付けられている。本発明は他の種類のストリングについても有用であり、接合チューブや環状チューブやその他スナッビングパイプのような径の小さなストリングに対しても有用である。掘削装置202は掘削船222から海底220まで伸びたライザー224と掘削船222の上に位置している。しかしながら、接地型掘削装置のようなあらゆる掘削装置の形状は本発明の器具と適合する。
【0066】
前記の好ましい実施態様例は実験目的で用いられ、次の請求項で定義される発明の範囲を限定しないものである。
【技術分野】
【0001】
本発明は、坑井環境における屈折率測定と分光測光とに関する。特に、本発明は、減衰反射スペクトルの測定において、逐次的ではなく連続体中を連続的に流通する流体の屈折率を測定するための耐久力の大きい装置及び方法、また地層内流体の様々なパラメータを決定するために本装置を用いてなされた測定結果についての解釈に関する。ここで開示される屈折計及び減衰反射法分光計は簡易化された設計となっており、掘削環境において非常に適している。
【背景技術】
【0002】
石油会社やガス会社は、炭化水素鉱床を見つけるために、多大な投資を行っている。それらの会社は、試掘井を掘って可能性を調査し、試掘井を使って炭化水素の存在だけでなく、存在している炭化水素の特性を決定している。
【0003】
炭化水素を少したりとも製造する前に、はるか沖合いで石油やガスを扱う設備を有する非常にコストのかかるプラットフォームの建設に数年もの年数をかける必要が先ずある。設計明細書や設備にかかる費用は、ガス/油比率や粘性率、沸点圧、アスファルテン沈殿圧等の炭化水素の性質に大きく依存している。試掘井は掘削した後すぐにふさがれ破棄される。しかしながら、探査により得られる情報は石油鉱床及びガス鉱床の寿命を予測するのに全て使われることができる。
【0004】
炭化水素の性質を決定するために、石油会社やガス会社はしばしば試掘井から炭化水素を採取する。この目的のために、ベイカー アトラス リザーバー キャッラクタライゼーション インスツルメント(Baker Atlas Reservoir Characterization Instrument(RCI))のようなワイヤライン フォーメーション テスターを、坑井に降下させる。
【0005】
まず、採取された流体は、掘削時に用いられた流体("泥")のろ過によって、極めて汚染されている。地層に関する有用な研究データを提供するであろうような非常にきれいなサンプル(通常、不純物が10%以下)を得るために、地層内流体が、通常、30-90分間かけて坑井より吸い上げられ、同時に浄化が時々刻々と観察される。それから、採取された流体は、地上の研究室で分析を行うために、坑井中でタンクに詰められる。
【0006】
また、いくつかの特性については、坑井中において経時的に分析される。本発明は、サンプル浄化を観察することと温度及び圧の油層サンプルの状態を坑井中において分析することとに関連している。
【0007】
坑井中というのは、感知装置を操作することにおいて難しい環境の一つである。坑井中の環境において、測定器具は、温度上昇、振動、及び衝撃を含む器具の加圧容器内といった極限の状態や限られたスペースという状況下で操作しなければならない。
【0008】
Mullinsらの米国特許5,167,149、Mullinsらの米国特許5,201,220は、両方とも、「坑井流体中のガスの存在を検知する方法及び装置」と題されている。前記発明のMullinsの装置は、坑井中の8つの臨界角(とブルースター角)からなる、油とガスを区別し流体中のガスの含有率を評価する屈折計である。
【0009】
(原油のような)黒い流体の屈折率を測定する伝統的な方法に、臨界角屈折計がある。発散光線が透明な固体(例えばガラス)を通り抜け、透明な固体と透明な固体に接している、測定されるべき流体との界面にあたる。反射した発散光線はこれらの角度で界面に対して垂直に近づくように二手に分かれる。ある角度では、光が流体の中に(屈折して)進入していくものもある。
【0010】
反射した発散光線は、視射角ではより明るくなる。ブルースター角から始めると、どのような投射したp偏光も反射損が起こらない。臨界角から始めると、全ての光が、いうまでも無く偏光も反射損は起こらないが、流体の中に進入する光が無く界面で100%反射される。
【0011】
臨界角は、光が屈折率n0である媒体から屈折率n1である媒体に通過するときの光の屈折に関するスネルの法則n0sinθ0=n1sinθ1により、算出される。(界面に対して垂直の部分から測定して)最大可能屈折角は、スネルの法則にθ1=90°を代入してから導かれるθc=arcsin(n1/n0)という式により求められる。
【0012】
臨界角では、反射強度に大きな変化(明暗の境界)があり、それは、移動可能なひとつの検出器、あるいは固定された光検出器列を配置すると存在する。ある一つの可動検出器を使用すると、坑井設計に重大な機械的複雑さが加わる。
【0013】
研究室の計器は、臨界角を検出するために、1024個以上もの固定された光検出器アレイを使用する。しかし、光検出器アレイに結合されたマルチプレクサは一般的に約95℃以上では作動しないので、研究室の設計を坑井で模倣するのは難しい。高温と隔離されたマルチプレキサでさえ、坑井中の高温度下で多重化した非常に多くの微弱な信号を混合するのは、ノイズを減少させるためにそれら微弱な信号を重畳しなければならないので、厄介である。それゆえ、坑井では数個(例えば8個)のみとりつけられた光検出器が、臨界角屈折計として使用されているくらいである。もちろん、前記米国特許5,167,149と5,201,220とに記載された8つの屈折計を用いれば、屈折率は連続的にではなく、たったの8段階しか測定できない。
【0014】
なぜなら、そのような装置は8つの粗雑な段階における屈折率を測定しているだけであるので、この装置の操作者がサンプルの浄化をモニターするのが困難となるであろうからである。サンプルの浄化は、坑井の中で指定した深さから流体をくみ上げるときに、ろ過水で汚染された流体からほぼ純粋な地層内流体へと推移していくことである。
【0015】
サンプルの清浄化を正確にモニターすることは、反射率を読み取ることだけでは実現できない。したがって、操作者が地層サンプルの反射率を正確にモニターすることができるように、連続的に屈折率を測定できる方法及び装置が必要である。
【発明の開示】
【0016】
本発明は連続的な屈折率測定法を提供する。連続的な屈折率測定法を使用して浄化の観察を行うことの利点は、反射率が砂やその他の微粒子の通過に対して不感となることである。前記砂やその他の微粒子が通過すると、坑井中の伝送分光計のスペクトル全体にわたる吸収において突然のスプリアス増加("ジャンプ")を引き起こす。サンプルにおける検査深さは、サファイア窓表面からサンプルに向けてたったの1-2ミクロンであり、したがってサンプルの光学的な測定は、窓表面から3ミクロン以上の気泡や微粒子によって影響を受けない。微小な厚さでの調査は、サンプル内で非常に薄い部分(1-2ミクロン)で調査が行われるため、界面技術といわれている。したがって、本発明によって提供される界面技術は、ほとんどの気泡や微粒子がサファイア窓表面から1-2ミクロン以内の領域を通らないので、気泡によって引き起こされる明るさの一時的な増加や、微粒子によって引き起こされる暗さの一時的な増加をなくす。面白いことに、米国特許5,166,747の第5欄17-23行には、「サファイア面と液体のサンプルとの界面でおこる反射からは有益な情報は得られない」との記載があり、これは本発明の教示からは程遠い。
【0017】
本発明の屈折計は窓を通過する光のわずかな波長の深さで流体を探査するから2mmの通過距離を有するセル(304)を通る微粒子をすべて検出することができないので、本発明の屈折計は微粒子に対して過敏ではない。少なくとも光の微小な波長程度の厚みをもつ微粒子と窓の周囲は流体で覆われているので、窓の光の微小な波長に入る微粒子はほとんどない。
【0018】
本発明は、臨界角を測定することを要しない。本発明は、減衰反射法分光計としても用いられるものである。
【0019】
本発明は、連続的な屈折率の測定を提供し、掘削環境において丈夫であり正確な操作を行うための簡略化された屈折計仕様の装置及び方法からなる。
本発明の一態様として、本発明は本発明の屈折計を用いた新しい測定を提供する。本発明の他の態様として、本発明は極めて低い屈折率をもつ気体に基づいて気体と液体とを区別するための装置及び方法を提供する。また本発明のもう一つの態様として、本発明は光が透明窓と坑井、あるいは地層内流体との界面で反射したときの光の分画Rから坑井、あるいは地層内流体の屈折率を決定するための方法を、提供する。また、本発明のさらなる他の態様として、本発明は、減圧下で地層内流体の沸点や露点の観察をし、また、地層の他の様々な特性を正確に決定するために、使用されることができる。もう一つの本発明の態様として、本発明は、流体の大きな減衰域にある吸収スペクトルを得るために用いられる。
【0020】
大きな減衰域というのは、可視領域と近赤外領域における(電子の遷移に依存している)アスファルテンピーク、及び中赤外領域(吸収が近赤外領域における吸収の100倍以上)又は近赤外領域における強い分子の振動ピークを含んでいる。そのようなスペクトルは、一般的に経路2mm以上の伝送分光計を使用して測定するには減衰しすぎている。
【0021】
赤外領域で分光器を使用したとき、ささいな化学的な違いでも非常にはっきりと現れるため、中赤外領域はよく"指紋領域"と呼ばれている。(原油で見られる)アルカンの赤外スペクトルは、(掘削泥水にのみに見られる)アルカンのスペクトル、又は(たいていの原油で見られ、環境保護に関して都合の良い掘削泥水には見られない)さまざまな芳香族化合物のスペクトルと異なっている。
【0022】
赤外スペクトルの違いは、色よりも分子の振動のスペクトルから推測される化学的な組成のささいな違いに基づいた、サンプル中における掘削泥水の不純物の量を推し量る改良された方法の、基礎とすることができる。これら、及びその他の本発明の目的及び利点は、引き続く好適な態様により証拠付けられ、その好適な態様は「発明の詳細な説明」にて開示される。
【図面の簡単な説明】
【0023】
【図1】図1は、流体とサファイアとの界面で反射した光の、流体が測定されるべき測定媒体であるときの、界面に対して垂直から計った屈折率に対する割合を示す。
【図2】図2は、本発明の屈折計の好ましい実施態様を示す図である。
【図3】図3は、図2の屈折計の拡大図である。
【図4】図4は、本発明の分光計の値と従来の分光計の値とを比較したグラフである。
【図5】図5は、汚れた原油の屈折率"n"の変化とオイルベース泥水のろ過による浄化具合の百分率を示すグラフである。
【図6】図6は、クラウジウス−モソッティ比(n2-1)/(n2+2)の、多様な十種類の純粋な炭化水素(ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ドコサン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、及びp-キシレン)の密度(g/cc)に対するグラフである。これらのデータは公開文献(CRC Handbook of Chemistry and Physics,50th Edition,1969)からとった。
【図7】図7は、個々の成分におけるクラウジウス−モソッティ比の容積測定の重みづけ総和(volumetrically weighted sum)の、十種類の純粋な炭化水素の任意の混合合成物の密度(g/cc)に対するグラフである。近似した傾きと切片とは、混合物におけるそれらと純粋な成分におけるそれらとが基本的には同じであることに注意すべきである。
【図8】図8は、クラウジウス−モソッティ比(n2-1)/(n2+2)に対するAPI度が19°から41°までの十種類の原油の密度(g/cc)を示すグラフである。これら非常に多くの構成成分からなる混合物(原油)における近似した傾きと切片の特徴は、純粋な炭化水素やそれら混合物に見られる値にとても近く、一般的なクラウジウス−モソッティ比と密度との関係に近い。これらのデータは一つのアウトライアー(the Oklahoma crude)を除いては公開文献(Table I of Buckley, et. al, Paper 61f of 2nd International Symposium on Thermodynamics of Heavy Oils and Asphaltenes, Houston, March 9-13,1997)からとった。
【図9】図9は、液体の薄膜や液滴が形成され光の強度が低下したときに露点を決定するための工程を示す説明図である。
【図10】図10は、屈折率が最小となる圧における沸点を決定するための工程を示す説明図である。
【図11】図11は、サンプルの溶解度や表面張力、組成などを評価するための工程を示す説明図である。
【図12】図12は、算出された屈折率の誤差において迷光の効果を示している。
【図13】図13は、ダウンホール環境下での本発明の一つの例である。
【発明の詳細な説明】
【0024】
本発明は、屈折計測定により種々の地層内流体の特性を決定するための方法及び装置を提供する。本発明はまた、非常に低い屈折率を持ったガスに基づいて、より正確にガスと液体とを区別する方法及び装置を提供する。坑井や地層内流体の屈折率は、既知の屈折率を有する好適な透明窓と分析済みの地層内流体との界面での反射光の画分"R"により決定されることができる。
【0025】
図1は、光が透明窓と界面の垂直面に投射したときの流体とサファイアとの界面で反射した光の百分率であるプロット101を示している。この図では、窓は一定の屈折率1.75に定められているが、屈折率はこの値に限られずに様々である。反射は、流体の屈折率が窓の屈折率、たとえばサファイアに対する屈折率1.75と同じであるときに、最小になる。
【0026】
図2は、地層や坑井の流体を現場で分析できるような(例としてa Baker Atlas Sample ViewSM toolがある)ダウンホールの流体を分析する器具内の限られた空間内に適合する本発明の好ましい屈折計の仕様を示す。
【0027】
好ましい実施態様において、光源201(例えばタングステンの電球)は、地層又は坑井の流体サンプルに向けて光を発している。放射された光は、光源と流体サンプルの間に置かれたコリメートレンズ装置203によって、平行光線となる。障害がなければ、平行光線である光は、第1のサファイア窓303の外面に垂直に投射される。サファイア窓303と302とは、平行光線化された光に対して垂直に置かれ、それらの間を分析中に流体が流れることができるようにするギャップ又は溝304で分けられてている。好ましい実施態様において、屈折計アッセンブリ205は、310から投射された平行光線の一部の進行方向を変え、第1のサファイア窓303と空隙304中の流体との界面307に焦点を合わせる。反射した光線は317で屈折計(316、318、320)と減衰反射法分光計(321)とに分けられる。屈折計又は減衰反射法分光計に使用するために取り出されていない平行光線の一部は、伝送吸収分光計209のような他の実験に続けて使用される。
【0028】
図3は、屈折計アッセンブリ205の拡大図であり、左ロッド300、及び右ロッド301のように表す2個の光学伝送ロッド(リレーレンズであってもよく、また、単なるガラス又はサファイアのロッド)300、301を示す。二つの光学伝送ロッドの縦軸は、第1のサファイア窓303と第2のサファイア窓302と流路304とから成る加圧封止板303、302の両方の平面に対して垂直な平面内にある。加えて二つの光学伝送ロッド300、301は、好適には隣接し(それらが303に臨む位置で相互に接触している。)、第1のサファイア板303にも接触している。光信号を最大にするために、伝送ロッド300、301と第1のサファイア板303との空隙を埋めるための高温屈折率整合ゲルが加えられる。未知のサンプル及び参照サンプルは両方とも光の強度が同じ要因によって減衰するので、空隙が空気で満たされているときを除きその空隙が満たされていないときは、屈折率測定に変化を生じさせない。屈折率を算出するために使われる(16)式Ir_air/Ir_unkは比率にのみ依存し、分子と分母の共通因子で約分する。伝送ロッド300と301とは、好ましくは垂直から同じ角度(約4°)で垂直に引かれた中心線306をまたいでいる。この好ましい角度は、機器設計の制限がでる最小の効果的な角度である。我々の方式で想定されることであるが、反射強度から屈折率を算出するため理想の角度は0°である。しかし、理論上の計算では、反射強度は0°から4°と無視可能な範囲(空気では-0.0062%までと油では-0.0079%まで)で変化する。この反射強度の誤差を我々の方式を通してみると、4°という角度は空気と比較した油の屈折率を測定するときに誤差の原因となるが、無視できる程度の2〜3ppm以下となる。サンプルにおける検査深さ範囲は、サンプルの内部に向かってサファイア窓表面からわずか1-2ミクロンであり、したがってサンプルの光学測定は、窓表面から3ミクロン以上ある気泡又は微粒子による影響を受けない。この浅い深さでの調査は、サンプル中の非常に小さな深さ範囲(1-2ミクロン)内で調査されるので、界面技術として参照される。したがって、界面技術に基づく本発明によると、ほとんどの気泡や微粒子はサファイア窓表面の1-2ミクロンの部分を通ることができないため、ガスによる一時的な明るさの増加、及び微粒子による一時的な暗さの増加をおおむねなくすことができる。
【0029】
好ましい屈折計は、空隙304内に既知の屈折率(例えば空気又は水の屈折率)をもった物質を導入することにより調整される。左ロッド303を通って第1のサファイア窓に達し、サファイア/空気(あるいはサファイア/水)の界面で反射されて右ロッド301を通って伝送される反射光の強度は記録され、また相対反射強度から他の流体の屈折率を算出するために検定標準値として使用される。空隙304に既知の屈折率を持った流体を導入して光源310を点けると、左ロッド300に入射し、流体とサファイア界面で反射して右ロッド301を通る。この反射光は光学連結部314を通過し、光フィルター316を通って電気光学変換器318に達し、最終的には電気分析/ディスプレイシステム320に達する。
【0030】
透明な既知の標準流体を使用するとき、ブラックテスト対象312は、第2のサファイア窓302の内側の表面であって空隙304内に存在している。ブラックテスト対象312>は、第1のサファイア窓を通り抜けて第2のサファイア窓にあたるどのような光も吸収してしまうので、第2のサファイア窓302から反射して返ってくるのを防ぐ。このテスト対象312により正確な値を得ることができるようになる。なぜなら、対象312を取り去ると第2のサファイア窓302で反射が起こり、重要なことであるが値が追加され、それにより数値が変わってしまうためである。しかし、この二回目の反射は一般的に較正についてのみの問題である。その理由は地層内流体は通常、較正に使用される標準流体(空気)よりも高い吸収を持っており二回目の反射は流体自体によって消失してしまうためである。もう一つの理由は、窓と流体との界面で反射された光の屈折は、ある界面の表層厚や表層厚よりも大きな空隙304に入るほどの流体の屈折率にしか依存しないためである。
【0031】
好ましい実施態様として、地層内流体、あるいはガスはサファイア窓302と303との間にある空隙304を通り、反射光の強度が測定される。反射光の強度は基本的に、空隙304と上側の板303が接触している界面において地層内流体の薄層の屈折率に依存している。
【0032】
光学連結部314は電気光学変換器318と伝送吸収分光計209に使用される中央の光線の外側に配置された装置とを結び付けている。アッセンブリの配置は、伝送吸収分光計209のような他の測定にも使用できるサファイア窓の一部に影が投射されるのを防止する。
【0033】
反射の基本式はよく知られており、例えばHandbook of Optics, Volume I, Second Edition,Michael Bass.ed.に記載されている。吸収のない窓や流体において、界面に対して垂直な光線の反射率は次の通りに与えられる。
R=Iγ/I0=(n0-n1)2/(n0+n1)2 (1)
ここでn0は窓の屈折率、n1は流体の屈折率である。(1)式をn1について解くと、
n1<n0のとき、n1=n0(1-Sqrt(R))/(1+Sqrt(R)) (2)
n1>n0のとき、n1=n0(1+Sqrt(R))/(1-Sqrt(R)) (3)
【0034】
本発明では、伝送窓の物質にサファイア(n0=1.746)が好適に使用される。ほとんどの原油の屈折率は約1.43〜1.55である。高圧下での天然ガスの屈折率は非常に小さい。それゆえ、本発明を実施するときは、n1<n0((2)式)の条件下での式が採用される。光が伝送されてサファイア窓を通り、流体と窓との界面にあたるとき、界面からの反射光はますます明るくなり、流体の屈折率はますます下がっていく。流体の最も低い屈折率は真空についての値(n0=1.0)であり、これは1気圧、0℃条件下の空気の屈折率(n0=1.0002926)に非常に近い。
【0035】
本発明は、流体と窓との界面の表層厚内で生じるところの、流体による光吸収(減衰反射効果)を計数することによる屈折率の式((1)式)による評価を修正することから成っている。屈折計に使用された光の波長が大きく減衰するときのみ、簡潔な(2)式の代わりに(11)式を使うことによって吸収の調整の必要がある表層厚の微小な距離において流体が十分な光を吸収する。
本発明の屈折計はサファイアと流体の界面における反射光の強度に基づいている。
迷光の防止は、この屈折計の操作の成功において不可欠である。その目的のために本発明は、屈折計セッセンブリを配置する部分においてチューブのような器具の内部など様々な場所に、例えばつや消し黒クロームのようなつや消しの黒色塗装を提供する。つや消しの黒色塗装を施すに先立ち、この管の内部に、チューブ内部で反射光から迷光を減らすために(平坦ではなく)頂点のある細線が、形成される。
本発明は、第2のサファイア窓での反射を十分に防ぐことができる。その目的のために、二つの窓の間に黒クロームでコーティングした黒テフロン対象物が挿入される。このようにして黒クロームが坑井中の流体に晒されても、黒クロームが適度に持ちこたえるようになる。しかし、坑井中の流体におけるもっとも臨界的な現象に対して、炭素充填粗面化黒色テフロンが使用される。粗面化処理は特に制限がなく、粗面化処理をすることにより黒色テフロンが現れる。黒色クロームは器具内部の迷光が減少するような部位に使用され、坑井中の流体にはさらされない。
第2のサファイア窓以外の器具から迷光を除去するためには、(多量にではなく)いくぶんかの水と油との両方の吸収すなわち"最適な吸収"をもつ波長(1740 nm)を用いるのが、好ましい。屈折計において、原油に大きな吸収がある波長(アスファルテンピークである400-1100 nm)は、使用されるべきではない。なぜなら、容易に較正できない屈折率測定の機器的誤作動の原因となる大きな減衰反射が起こるからである。
【0036】
吸収のない窓と吸収のある流体とにおいて、流体の複合屈折率は実際の部分(n1')と仮定の部分(k1)とから定義される。
n1'+ik1 (4)
ここで
k1=(αλ)/(4π) (5)
ここでk1は流体の複合屈折率の仮定部分であり、波長λでの吸収を表し、αは光の強度が初記値の1/eまで低下する距離(よく"表層厚"や"浸入度"といわれる)の逆数である。吸収の定義により、A=log10[I0/I]となる。この式の両辺にαをかけて、Iに(I0/e)を代入すると、波長λにおける流体の単位長の吸収が得られる。すなわち、
Aα=αlog10[I0/(I0/e)]=αlog10(e) (6)
【0037】
固定された流路長Lにおける流体の吸収Aは、機器の他の手順によって得られる。この長さLは、2 mmを用いるのが好ましい。単位長吸収は、密度に類似した、流体の(形状や体積とは独立した)固有の特性である。したがって、測定された単位長吸収(A/L)を(6)式の右辺に代入してαについて解くと次式が得られる:
α=A/[Llog10(e)] (7)
(7)式のαを(5)式に代入して波長λにおける単位長吸収に換算したk1を算出すると
k1=(Aλ)/(4πLlog10(e)) (8)
数字を代入して、L=2 mm、λはnmであるとすると
k1=A2 mmλ[nm]/(10915011) (9)
となり、1300 nmのときk1=A2 mm/8396となる。また、1600 nmのときはk1=A2 mm/6821となり、A2 mmは、取り付けられる屈折計の隣に配置するダウンホール伝送分光器によって測定される吸収である。
【0038】
吸収のある流体以外の吸収のない窓において、光の反射は界面に対して垂直かほぼ垂直であり、その反射率は次の式が与えられる。
R=[(n0-n1)2+k12]/[(n0+n1)2+k12] (10)
これをn1について解くと、
n1=(n0/a){1±Sqrt[1-a2(1+(k1/n0)2)]} (11)
【0039】
ここでa=(1-R)/(1+R)である。吸光度補正の必要性を最小限にするために、反射率の測定が、1300 nmや1600 nmのような流体による最小の吸収がある波長において行われる。これら二つの波長は、分子の吸光度帯の間にある。好ましくは、測定は、1740 nmにおいて行うのがよい。なぜなら、この波長は適度(かつ最適)な油と水との両方の吸収があり、第2のサファイア窓で反射した迷光を減らすためである。
【0040】
もちろん、原油もまた、アスファルテンによって波長が増加するのを防ぐ電子吸収帯をもっている。軽質原油においては、アスファルテンピークはよく1300 nmにおける最小の吸収まで低下する。中質原油においては、アスファルテンピークはより長波長の1600 nmまで最小の吸収は低下しない。重質原油では、1600 nmのような長波長の最小の吸収を用いているにもかかわらず、較正式((9)式と(11)式)でn1を算出する必要がある。アスファルテンの吸収の望ましくない影響は、1740 nmで少なくなる。
【0041】
流体が大きな吸収を示さない波長において通常の投射では、次の式で、未知の流体の屈折率nunkを算出することができる。nunkは1)サファイアの屈折率、2)空気の屈折率、3)サファイアと空気との界面における反射強度に対するサファイアと未知の物質との界面における反射強度の比によって求められる。
nunk=nsap(a-b)/(a+b) (14)
ここで
a=(nsap+nair)/(nsap-nair) (15)
b=Sqrt(Ir_unk/Ir_air) (16)
Ir_airはセル内が空気で満たされているときの反射強度、
Ir_unkはセル内が未知の流体で満たされているときの反射強度、
nunkは未知の流体の屈折率、
nairは空気の屈折率(約1.0029)、
nsapはサファイアの屈折率(約1.746)である。
【0042】
【0043】
(14)式は、未知の物質とサファイアとの界面での反射率に対する空気とサファイアとの界面での反射率の比の平方根をとり、aとbの定義を用いて最後にnunkについて解くと、(1)式から得られる。
【0044】
図4は、水、ペンタン、トリクロロエタン(それぞれ低、中、高屈折率)についての、可視領域で測定された屈折率に対する本発明の(式14を使用し、1600nmでの)屈折率測定と従来の屈折計とを比較するプロット401である。さらなる改良点は、空気とサファイアとの屈折率における温度によるわずかな変化を較正し、(可視領域、特に589 nmで測定した)従来の屈折率に対して(本発明において1600 nmで測定した)屈折率を較正すること、である。
【0045】
可視波長領域及び赤外に近い短波長におけるアスファルテンピークの大きな減衰が見られていた原油のスペクトルを、本発明では得ることができる。波長に対する反射強度の標準スペクトルは、光ファイバーの光学連結部314に直接、小型の携帯用管型光学分光器Ocean Optics S2000を取り付けることにより、また400-1100 nmの範囲のときには第1のサファイア窓303の下にある空隙304が空気のときは前記空隙を流体で満たすことによって、得られていた。空隙304を原油で満たしたとき、本発明では、波長に対する反射強度のもう一つのスペクトルを得ることができる。これら二つのスペクトルの比の常用対数から、アスファルテン領域における原油の吸収スペクトルが、得られる。この測定法は、短波長ほどアスファルテン特有の吸収の増加が見られる。
【0046】
本発明の屈折計と減衰反射法分光計とを使用するために、光ファイバー光学連結部314に光スプリッタ317が取り付けられる。スプリッタ317は、平行光線の一部を屈折計の特製光フィルタ316と電気光学変換器318とに送る。このスプリッタは、残りの光線を、一つもしくはそれ以上の光フィルタと格子、又は波長分別装置と光検出器とから成る減衰反射法分光計321の方へ、振り向ける。
【0047】
本発明は、(粗雑ではなく)連続的な屈折率の値を提供する。それゆえ、連続的な屈折率の値により、サンプルが浄化されていることに関連するような屈折率のわずかな変化も観察することができる。サンプルを浄化するということは、坑井中の任意の深さから流体をくみ上げるときに、濾過物で汚染された地層内流体から純粋に近い地層内流体に変えることを意味する。図5は不純物を含んだ屈折率がどのように濾過物で汚染されたオイルマッドの割合に関連しているかのプロット501を描いている。
【0048】
クラウジウス−モソッティ式((17)式)はクラウジウス−モソッティ比に関連しており、
r=(n2-1)/(n2+2)、密度ρ、分子の分極率P、グラム分子量M、であるとき
(n2-1)/(n2+2)=ρPm/M (17)
【0049】
理想の混合状態において、クラウジウス−モッソッティ比の各成分の(容積測定の重みづけ総和)は混合状態のクラウジウス−モッソッティ比と等しくなる。この方法では、一般的に混合物の屈折率と構成成分の屈折率とを関連付けることができる。理想の混合状態において、クラウジウス−モッソッティ比の各成分の容積測定の重みづけ総和は混合状態のクラウジウス−モッソッティ比と等しくなる。この方法では、混合物の屈折率と構成成分の屈折率とが関連付けらる。すなわち、混合物の屈折率をn、i番目の混合物の占める体積分画をfi、その屈折率をniとするとき、
(n2-1)/(n2+2)=Σi fi (ni2-1)/(ni2+2) (18)
【0050】
本発明は流路における流体の露点の決定を可能にし、純粋な地層内流体であるならば周りの地層の流体の存在を示している。空隙304において地層内流体のサンプルを採取し、弁340を閉じて容積を変化させ、またピストン341を上下に動かして空隙304中のサンプルの容積や圧をそれぞれ増減させることによって、本発明では、使用者は流体サンプル340の露点や沸点を決定することができる。本発明では、サンプル厚みや流路の界面、流路とサンプルとの界面からの光のわずかな波長において、流体の屈折率が測定される。露点においては、ガスは優先的に固相表面における核形成サイトで液体に凝縮する。すなわち露点においては、窓に液体の膜が形成し、ガスが液体となるときの屈折率の変化を用いている本発明によって検出される。
【0051】
液層は窓に対して接しており、反射光の強度が低下するため、ガス状態から液層に流体が遷移する間に、屈折率の測定値が上昇する。しかしながら、薄い液膜はわずかにくさび形ではなく完全に平らであるという不足の出来事において、流体とガスとの界面から検出器へ反射することもあるが、結果として露点を越えたとき反射光の劇的な変化はあまりなくなる。
【0052】
図6は、クラウジウス−モソッティ比(n2-1)/(n2+2)に対する十種類の純粋な炭化水素(ヘキサン、オクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、トルエン、o-キシレン、m-キシレン、p-キシレン)のそれぞれ異なった密度(g/cc)を示すグラフ601である。これらのデータは公開文献(CRC Handbook of Chemistry and Physics,50th Edition,1969)を参考にした。
【0053】
図7は、個々の成分におけるクラウジウス−モソッティ比の容積測定の重みづけ総和と十種類の純粋な炭化水素の任意の混合合成物の密度(g/cc)を示すグラフ701である。近似した傾きと切片との特徴は、混合物と純粋な成分のものが基本的には同じであるということである。
【0054】
本発明は、ダウンホールの連続した屈折率の測定を可能にするものである。それは、この測定法とモル質量や比重、あるいは屈折率や物理学特有の見地や眼識における経験から推測される領域での伝統的なデータベースに由来する沸点、あるいは完全に独立した方法での測定を結びつけることができる。例えば、ダウンホールの比重は、坑井中の異なる深さにおいてRCI圧測定法のグラジエント(圧対深さの勾配)から得ることができる。あるいは、図8のプロット801に描いたように、屈折率それ自体から比重を推測できる。
【0055】
既知のダウンホール屈折計測定は8段階から成り、作業員はこれら8段階の屈折率を告知するだけだった。すなわち、8段階の装置を用いたときは屈折率自体よりも流体の屈折率の範囲(8段階のうちのひとつの上限や下限)を報告するのみであった。
【0056】
本発明の好ましいダウンホール屈折計は、逐次的ではなく連続的な屈折率を測定するものである。それゆえ、測定した屈折率は、沸点圧や表面張力、溶解性パラメータのような有益なダウンホール特性を得ることができる。
【0057】
流体の圧力に対する屈折率のプロットは、流体の沸点圧において最小となる。例えば、(流体が沸点よりも上か下にあるとき)1.47から(沸点のとき)1.43まで変化する。それゆえ、本発明は屈折率を測定して、本発明の屈折計を用いて沸点圧を決定している間、ダウンホールの圧力を減らすために空隙304と弁340とピストン341とから成る拡張サンプル空間を提供する(Buckley, et. al, Paper 61f of 2nd International Symposium on Thermodynamics of Heavy Oils and Asphaltenes, Houston, March 9-13, 1997)。圧力を沸点以下に下げるためのサンプル拡張空間は米国特許No. 6,218,662で発表されたように当業者にはよく知られている。
【0058】
パラメータRm=(n2-1)/[(n2+2)ρ]は分子の占める体積の分画の総和を表しており、多くの物理的、熱力学的な特性を予測するとき非常に有用なパラメータである(Riazi M.R., Daubert T.E., "Characterization Parameters for Petroleum Fractions", Industrial and Engineering Chemistry Research, U.S.A., Vol.26, Pages 755-759, 1987)。この式において(n2-1)/(n2+2)はモルあたりの分子の占める体積であり、ρは単位体積あたりのモル数(グラムではない)を表している。パラメータRmは他のパラメータと共に表面張力や沸点を求めるときに用いられ、閃光計算(flash calculation)にも用いられる。(Escobedo, J. and Mansoori, G. A., Surface Tension Prediction for Liquid Mixtures, AIChE Journal, Vol.44, No.10, pp. 2324-2332, 1998)。
【0059】
(n2-1)/(n2+2)3/4は溶解度と比例しており、混合物の偏光、及び脂肪族に対する芳香族の相対分画を推測するために用いられる(Buckley, et. al, "Asphaltene Precipitation and Solvent Properties of Crude Oils, Pet. Sci. Tech., Vol.16, No.3-4, p. 251, 1998)。
【0060】
石油の製造、処理、輸送において装置の適正な設計及び操作を行うとき、石油の留分と製造の熱力学的、物理的な特性は重要である。地層内流体の特性を調査することは次のMohammad R. RiaziとYousef A. Roomiによる"流体の特性を測定するためのMinimum Lab.データ"と題された論文の要約より抜粋したなかで示されたように、モル質量や比重、屈折率からほとんど全ての地層内流体の特性の調査が議論されており、また50th Canadian Chemical Engineering Conference(CSChE 2000), Montreal, Canada, October 15-18, 2000で発表された(Industial & Engineering Chemistry Rsearch (Issue 8, 2001). Riazi, M.R. and Y. Roomi, "屈折率を用いた炭化水素混合物の熱力学的特性の調査", Accepted for publication in Industrial & Engineering Chemistry Research, American Chemical Socioety, January 2001でも見ることができる)。
石油の留分の熱容量、熱伝導性、粘度、密度は精製装置において熱交換ユニットの設計や操作に必要である。石油生成のときにベンゼンや芳香族、硫黄の含量を知ることはガソリンや軽油のような石油燃料の質を決定するのに重要である。異なる条件下で全ての石油混合物のこれらの特性を決定するには、コストと時間が非常にかかる。三つの基本的な特性を測定するだけで、その他全ての特性が正確に調べることができる。これらの三つの基本的な特性とは、20Cにおけるモル質量、比重、そして屈折率である。モル質量が分らない場合には、比重や屈折率に加えて沸点(蒸留データより)が様々な熱力学的、物理的な特性を調べるために用いられる。石油の留分や製品は、種々の炭化水素化合物の混合物である。これらの化合物は非極性であり、主な分子間力は分極率により決まるファンデルワールス力であり、屈折率によって定義される。屈折率は実験室で容易に測定できる特性である。屈折率や密度、モル質量がわかると、石油の留分においてパラフィンやモノ芳香族、ポリ芳香族の量を正確に決定することができる。これらのパラメータを用いて臨界性質や状態方程式、粘度、熱伝導性、拡散係数、熱容量、気化熱のような物理的特性を実験データから誤差1-2%の正確さで求めることができる。石油混合物の多くの物理的、熱力学的な特性は、測定できるほんのわずかなパラメータから決定することができる。
【0061】
したがって、地層内流体サンプルの屈折率を決定するために本発明を利用し、モル質量や比重を提供することによって、パラフィンの量、ナフタレンの量、モノ芳香族の量、ポリ芳香族の量、及び石油の留分に含まれる硫黄の量を正確に決定することができる。これらのパラメータを通じて、例えば臨界性質、状態方程式、粘度、熱伝導性、拡散係数、熱容量、及び気化熱のような多くの物理的な特性を得ることができる。
【0062】
図9は、液体の薄膜又は液滴が形成されて光の強度が低下したときに露点を決定するための工程を示す説明図である。本発明を用いた工程の一例は、
地層内流体を採取する(901)、
流体の圧力を増減させるために流体の容積を変えること(902)、
流体の圧力を増減させるために流体の容積を変えること(903)、
圧力が変化している間中、流体の屈折率を観察すること(904)、
減圧している間中に、反射光の強度の減少を決定すること(905)、
減圧している間中に、反射光の強度の減少を決定すること(906)、
液体の薄膜又は液滴が形成されて光の強度が減少したときに流体の露点を決定すること(907)、
というように構成されている。
【0063】
図10は屈折率が最小となる圧における沸点を決定するための工程を示す説明図である。本発明を用いた工程の一例は、
流体サンプルを採取すること(1001)、
流体を減圧すること(1003)、
減圧している間中、屈折率を観察すること(1005)、
屈折率が最小となる圧における沸点を決定すること(1007)
というように構成されている。
【0064】
図11はサンプルの溶解度や表面張力、組成などを評価するための工程を示す説明図である。本発明を用いた工程の一例は、
流体を採取し、減圧すること(1101)、
連続的に流体の屈折率を観察すること(1103)、
流体の溶解度、表面張力、組成を評価すること(1105)
というように構成されている。
【0065】
図12は屈折率測定における迷光の誤差が1%(1201)、2%(1202)、5%(1203)のときの効果を示している。図13はダウンホール環境下での本発明の典型的な実施態様の図である。本発明は、金属線か滑らかな線の一方において配置を行ったり、掘削時に観察するのに適している。図13は掘削時の観察における本発明の典型的な実施態様の図である。ここで図13を見ると、図13は本発明を用いた掘削装置の一つの実施態様である。坑井204を掘り進める典型的な掘削装置202は、当業者の間では通常の技術によってよく理解されるように、描画されている。掘削装置202にはストリング206があり、この例示ではドリルストリングを示している。ドリルストリング206には坑井204を掘削するためにドリル208が取り付けられている。本発明は他の種類のストリングについても有用であり、接合チューブや環状チューブやその他スナッビングパイプのような径の小さなストリングに対しても有用である。掘削装置202は掘削船222から海底220まで伸びたライザー224と掘削船222の上に位置している。しかしながら、接地型掘削装置のようなあらゆる掘削装置の形状は本発明の器具と適合する。
【0066】
前記の好ましい実施態様例は実験目的で用いられ、次の請求項で定義される発明の範囲を限定しないものである。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
地層内流体の屈折率を測定する屈折率測定装置であって、地層から流体を採取するための、地層と連絡している流路と、
第1の流路の壁を通じて流路の間にある界面に向けて、かつ、流路内に含まれる流体の測定領域内に向けて光を投射する光源と、
流体の圧を変化させるための容積可変流路と、
界面でのサンプルからの反射光の、圧力に依存した信号を測定するための電子分析装置とを有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の測定装置において、前記流路が迷光減少装置を備え、
前記迷光減少装置は、測定領域以外でサンプルに光が入射するのを防ぐ非反射材を有して成る電子分析装置に入る迷光を減らすように形成されてなることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
前記請求項1の測定装置において、流体の露点を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項4】
前記請求項1の測定装置において、流体の沸点を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項5】
前記請求項1の測定装置において、物理的なパラメータを調べる機能を備えて成る測定装置。
【請求項6】
前記請求項1の測定装置において、流体の物理的な特性を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項7】
前記請求項1の測定装置において、流体の組成を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項8】
前記請求項1の測定装置において、最適な光の吸収波長1740 nmを選択的に通す光学フィルタを備えて成る測定装置。
【請求項9】
流路に地層からの流体を流通させ、
第1の流路間の界面に向けて、かつ流路内にある流体中の測定範囲内に入射するように、光を投射し、
流路中に存在する流体の圧力を変化させ、
圧力の関数として界面で反射された最適な光の吸収波長で光量を測定するという工程を有してなる地層内流体の屈折率を測定する方法。
【請求項10】
前記請求項9の方法において、サンプルにおける測定領域外に光が入射することを阻止することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記請求項9の方法において、流体の露点を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記請求項9の方法において、流体の沸点を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記請求項9の方法において、物理的パラメータを調べることを含む前記請求項9に方法。
【請求項14】
前記請求項9の方法において、流体の組成を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記請求項9の方法において、物理的特性を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記請求項15の方法において、最適な光の吸収波長1740 nm以外を遮光することを含む前記請求項15に記載の方法。
【請求項17】
地層内流体の屈折率を測定する方法をコンピュータで実行するにあたり、
流路において地層から流体を採取し、
第1の流路間の界面に向けて、かつ流路内にある流体中の測定範囲内に入射するように、光を投射し、
流路において流体の圧力を変化させ、
圧力の関数として、界面で反射された最適な光の吸収波長で光量を測定するという命令から成るコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項18】
前記請求項17に記載の媒体であって、測定を行う前にサンプルに光が入射するのを防ぐ媒体。
【請求項19】
前記請求項17に記載媒体であって、流体の露点を決定する媒体。
【請求項20】
前記請求項17の媒体において、流体の沸点を決定する媒体。
【請求項21】
前記請求項17の媒体において、物理的パラメータを調べる媒体。
【請求項22】
前記請求項17の方法において、流体の組成を決定する媒体。
【請求項23】
前記請求項17の方法において、物理的特性を決定する媒体。
【請求項24】
前記請求項23の方法において、最適な光の吸収波長1740 nmを検出する方法。
【請求項1】
地層内流体の屈折率を測定する屈折率測定装置であって、地層から流体を採取するための、地層と連絡している流路と、
第1の流路の壁を通じて流路の間にある界面に向けて、かつ、流路内に含まれる流体の測定領域内に向けて光を投射する光源と、
流体の圧を変化させるための容積可変流路と、
界面でのサンプルからの反射光の、圧力に依存した信号を測定するための電子分析装置とを有することを特徴とする測定装置。
【請求項2】
前記請求項1に記載の測定装置において、前記流路が迷光減少装置を備え、
前記迷光減少装置は、測定領域以外でサンプルに光が入射するのを防ぐ非反射材を有して成る電子分析装置に入る迷光を減らすように形成されてなることを特徴とする測定装置。
【請求項3】
前記請求項1の測定装置において、流体の露点を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項4】
前記請求項1の測定装置において、流体の沸点を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項5】
前記請求項1の測定装置において、物理的なパラメータを調べる機能を備えて成る測定装置。
【請求項6】
前記請求項1の測定装置において、流体の物理的な特性を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項7】
前記請求項1の測定装置において、流体の組成を決定する機能を備えて成る測定装置。
【請求項8】
前記請求項1の測定装置において、最適な光の吸収波長1740 nmを選択的に通す光学フィルタを備えて成る測定装置。
【請求項9】
流路に地層からの流体を流通させ、
第1の流路間の界面に向けて、かつ流路内にある流体中の測定範囲内に入射するように、光を投射し、
流路中に存在する流体の圧力を変化させ、
圧力の関数として界面で反射された最適な光の吸収波長で光量を測定するという工程を有してなる地層内流体の屈折率を測定する方法。
【請求項10】
前記請求項9の方法において、サンプルにおける測定領域外に光が入射することを阻止することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項11】
前記請求項9の方法において、流体の露点を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項12】
前記請求項9の方法において、流体の沸点を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項13】
前記請求項9の方法において、物理的パラメータを調べることを含む前記請求項9に方法。
【請求項14】
前記請求項9の方法において、流体の組成を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項15】
前記請求項9の方法において、物理的特性を決定することを含む前記請求項9に記載の方法。
【請求項16】
前記請求項15の方法において、最適な光の吸収波長1740 nm以外を遮光することを含む前記請求項15に記載の方法。
【請求項17】
地層内流体の屈折率を測定する方法をコンピュータで実行するにあたり、
流路において地層から流体を採取し、
第1の流路間の界面に向けて、かつ流路内にある流体中の測定範囲内に入射するように、光を投射し、
流路において流体の圧力を変化させ、
圧力の関数として、界面で反射された最適な光の吸収波長で光量を測定するという命令から成るコンピュータ読取可能な媒体。
【請求項18】
前記請求項17に記載の媒体であって、測定を行う前にサンプルに光が入射するのを防ぐ媒体。
【請求項19】
前記請求項17に記載媒体であって、流体の露点を決定する媒体。
【請求項20】
前記請求項17の媒体において、流体の沸点を決定する媒体。
【請求項21】
前記請求項17の媒体において、物理的パラメータを調べる媒体。
【請求項22】
前記請求項17の方法において、流体の組成を決定する媒体。
【請求項23】
前記請求項17の方法において、物理的特性を決定する媒体。
【請求項24】
前記請求項23の方法において、最適な光の吸収波長1740 nmを検出する方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公表番号】特表2007−502422(P2007−502422A)
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−523351(P2006−523351)
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026101
【国際公開番号】WO2005/017503
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301008534)ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
【公表日】平成19年2月8日(2007.2.8)
【国際特許分類】
【出願日】平成16年8月12日(2004.8.12)
【国際出願番号】PCT/US2004/026101
【国際公開番号】WO2005/017503
【国際公開日】平成17年2月24日(2005.2.24)
【公序良俗違反の表示】
(特許庁注:以下のものは登録商標)
1.テフロン
【出願人】(301008534)ベイカー ヒューズ インコーポレイテッド (21)
【Fターム(参考)】
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