説明

ダクト用管の製造方法、ダクト用管、ダクト用管連結構造

【課題】内部を通過するエアに有害物質が含まれることのない、ダクト用管の製造方法、ダクト管、及びダクト用管連結構造を提供する。
【解決手段】ダクト用管製造方法は、芯型の外周に内壁被覆フィルム4を巻きつけておき、その周囲に外型を配置し、その両型間に発泡材料を充填、発泡させて、内周面が内面被覆フィルム4で被覆された筒型に成型する方法である。また、ダクト用管製造方法において、成型後の筒の外周面を外面被覆フィルム6で被覆することもできる。ダクト用管1は、発泡材料で一体成型した筒2の内周面を内面被覆フィルム4で被覆し、外周面を外面被覆フィルム6で被覆した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、一戸建て住宅をはじめとする各種住宅(建物)の天井裏、屋根裏などに施工されるダクト用管の製造方法、その構造及びダクト用管同士の連結構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
一戸建て住宅をはじめとする各種住宅(建物)の天井裏、屋根裏などには、冷・暖房用気体、換気用気体等を流すダクトが配管施工されている。ダクトとして使用される従来のダクト用管は次のようにして製造されていた。図4(a)に示す発泡ウレタン製、他の発泡材料製のブロックAから、円筒ダクトを数個に区画した端面円弧状のダクト部品Bを切り出し、これらダクト部品Bを図4(b)に示すように周方向に連結して円筒状のダクト用管Fにしていた。この場合ダクト部品Bの幅方向一端の連結凸部Cと他端の連結凹部Dとを連結して筒状にし、連結部分Eを接着剤で接着している。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0003】
前記ダクト用管の製造方法と、その製造方法で製造されるダクト用管には次のような課題がある。
(1)ブロックAからダクト部品Bを一つ一つ削り出す必要があるため、ダクト部品Bの製作に多大な労力を要し、材料の無駄も多く、結果的にダクト用管Fがコスト高になる。
(2)完成したダクト用管Fの内周面は、削り出したままの発泡材料がむき出しになっており、内部をエアが通過する際、発泡材料の微細な粉末や、各種有害物質(例えば、フロン、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン、酢酸等)がエアに混ざって室内に排出されてしまい、それらが人体に悪影響を与える。この課題を防止するために内周面にアルミ箔を貼り付けると、その貼り付けに接着剤が使用されるため、内部を通過するエアと共に接着剤に含まれる有害物質も室内に排出されて人体に悪影響を与える。また、アルミ箔の貼り付け作業が面倒である。
(3)ダクト用管Fの内周面を材料を削り出したままの粗面にしておくと、内部を通過するエアの抵抗が大きくなり馬力の大きな送風機が必要になる。馬力の大きな送風機は大型、コスト高になる。
(4)ダクト部品B同士が連結されているため耐外圧強度が弱い。
(5)連結部分Eから暖気や冷気が漏れる虞があり断熱効率が十分ではない。
【課題を解決するための手段】
【0004】
本発明は円筒状で内周面にフィルムが貼り付けられたダクト用管を成型により製造できる製造方法と、ダクト用管の材料である発泡材料に含まれる有害物質が内部を通過するエアに混入せず、強度や断熱性も十分なダクト用管と、そのダクト用管同士を長手方向に連結したダクト用管連結構造を提供するものである。
【0005】
本件出願のダクト用管製造方法は、芯型の外周に内壁被覆フィルムを巻きつけておき、その周囲に外型を配置し、その両型間に発泡材料を充填、発泡させて、内周面が内面被覆フィルムで被覆された筒型に成型する方法である。また、前記ダクト用管製造方法において、成型後の筒の外周面を外面被覆フィルムで被覆することもできる。
【0006】
本件出願のダクト用管は、発泡材料で一体成型した筒の内周面又は内周面及び外周面をフィルムで被覆したものである。
【0007】
本件出願のダクト用管連結構造は、外周に鍔が形成された筒状のソケットで、前記ダクト用管を二本長手方向に連結させる構造であって、一方又は他方のダクト用管の軸方向端部内面に前記鍔を嵌入させる凹部を形成し、両ダクト用管内にソケットの一端側を嵌入し、且つ、鍔を凹部に嵌入して、両ダクト用管の軸方向端面同士を突き合わせて両ダクト用管を連結したものである。
【発明の効果】
【0008】
本発明のダクト用管製造方法は次のような効果がある。
(1)芯型の外周に内壁被覆フィルムを巻きつけておき、その周囲に外型を配置し、その両型間に発泡材料を充填、発泡させて、内周面が内面被覆フィルムで被覆された筒型に成型するため、ダクト用管の内周面に発泡材料が露出せず、内部を通過するエアに有害物質が混ざらないダクト用管を製造することができる。また、筒内部をエアが通過する際の抵抗も小さくなり、エアをスムースに通過させることができるようになる。
(2)内壁被覆フィルムによるダクト用管内周面の被覆に接着剤が必要ないため、接着剤に由来する有害物質の発生もない。また、予め芯型の外周に内壁被覆フィルムを巻きつけて成型するため、成型後は、離型剤なしで芯型を容易に引き抜くことができ、離型剤に由来する有害物質も付着しない。
(3)発泡材料を外型と芯型の間に入れて一体成型するため、従来のような材料削り出し作業や材料連結作業が一切不要となり、容易にダクト用管を製造できるようになる。発泡材料の無駄もなく、ダクト用管のコスト減に資する。
(4)継ぎ目のないダクト用管を製造できるため、耐外圧強度や断熱性を十分に備えるダクト用管を製造できる。
(5)成型後の筒の外周面を外面被覆フィルムで被覆すれば、更に耐外圧強度が補強されたダクト用管を製造することができる。
【0009】
本発明のダクト用管は次のような効果がある。
(1)発泡材料製の筒の内周面が内面被覆フィルムで被覆されているので、エアの通路に発泡材料が露出せず、有害物質がエアに混ざることがなくなる。また、筒内部をエアが通過する際の抵抗も小さくなり、エアをスムースに通過させることができるようになる。
(2)筒が発泡材料で一体成型されており接着剤を使用していないため、接着剤に由来する有害物質も発生しない。また、継ぎ目がないため、耐外圧強度や断熱性も十分確保できる。
(3)筒の外周面も外面被覆フィルムで被覆されているので、ダクト用管の耐外圧強度が更に向上する。
【0010】
本発明のダクト用管連結構造は、一方又は他方のダクト用管の軸方向端部内面に前記鍔を嵌入させる凹部を形成し、両ダクト用管内にソケットの一端側を嵌入し、且つ、鍔を凹部に嵌入して、両ダクト用管の軸方向端面同士を突き合わせて両ダクト用管を連結したので、二本のダクト用管を長手方向に密に連結することができ、エア漏れなく連通させることができる。また、ソケットが外部から見えないように連結されるため、連結部の外観も良い。
【発明を実施するための最良の形態】
【0011】
(ダクト用管製造方法の実施形態1)
本発明のダクト用管製造方法の実施形態の一例を図1、図2に基づいて説明する。このダクト用管製造方法は、図1に示すような、発泡材料で一体成型された筒2の内周面3が内面被覆フィルム4で、外周面5が外面被覆フィルム6で夫々被覆されたダクト用管1を製造する方法であって、以下の手順でダクト用管1を製造する。
(1)図2(a)に示すように、芯型7の外周に内面被覆フィルム4を予め巻いておく。内面被覆フィルム4としては、例えば例えばグラスウールメッシュやポリプロピレンシート等の各種芯材(図示しない)の上にアルミ箔を貼り付けたアルミシート等を使用する。この場合、芯型7に離型剤を塗布する必要はない。
(2)図2(b)に示すように、内面被覆フィルム4を巻いた芯型7の外側に外型8を配置する。
(3)両型7、8間に発泡材料を充填し、発泡させて筒2を完成させる。このとき、芯型7に巻きつけた内面被覆フィルム4は筒2の内周面3に密着し、筒2の内周面3を被覆する。発泡材料の発泡倍率は例えば原液対比30倍とする等、任意とすることができる。また、発泡後の発泡材料の密度も任意とすることができる。
(4)外型8を外し、芯型7を抜いて、筒2を取り出す。なお、前記芯型7を抜く際に離型剤は必要ない。
(5)筒2の外周面5に外面被覆フィルム6を接着剤等によって密着させて貼り付け、図1に示すようなダクト用管1を完成させる。外面被覆フィルム6としては、例えばアルミ箔等を使用する。
【0012】
(ダクト用管製造方法の実施形態2)
本発明のダクト用管製造方法では、外型8の内面に予め外面被覆フィルム6を備えておき、両型7、8間に発泡材料を充填し、発泡させることによって、筒2の外周面5に外面被覆フィルム6を密着させることもできる。この場合、外面被覆フィルム6の貼り付けには接着剤が不要である。
【0013】
(ダクト用管製造方法のその他の実施形態)
筒2の外周面5の外面被覆フィルム6を省略してダクト用管1を完成させることもできる。
【0014】
(ダクト用管の実施形態1)
本発明のダクト用管の実施形態の一例を図1に基づいて説明する。本発明のダクト用管1は、前記製造方法によって製造されるダクト用管であって、図1に示すように、発泡材料で一体成型された筒2の内周面3が内面被覆フィルム4で、外周面5が外面被覆フィルム6で夫々被覆されてなるものである。
【0015】
図1の筒2は、発泡材料で一体成型された筒状部材である。筒2の成型に用いられる発泡材料としては、例えばウレタンや発泡スチロール等、任意の発泡材料を用いることができるが、断熱性のある素材を使用することが望ましい。筒2の発泡材料の発泡倍率は例えば原液対比30倍とする等、任意とすることができる。また、発泡後の発泡材料の密度も任意とすることができる。また、この筒2は、蛇腹状に成型して可撓性を備えるものとすることもできる。
【0016】
図1の内面被覆フィルム4は、筒2の成型時に内周面3に密着させて備えられ、内周面3を被覆する表面が平滑なフィルム状部材である。この内面被覆フィルム4の筒2の内周面3への密着は、接着剤を用いずに行われている。この内面被覆フィルム4には、例えばグラスウールメッシュやポリプロピレンシート等の各種芯材(図示しない)の上にアルミ箔を貼り付けたアルミシート等を使用することができる。もっとも、内面被覆フィルム4は前記アルミシートには限られず、樹脂膜等、有害物質を発散せず、表面が平滑あれば任意のフィルムや膜やシート状部材等を用いることができる。この内面被覆フィルム4を備えることにより、筒2の内部空間13を通過するエアに、発泡材料の微粉末や、各種有害物質(例えば、フロン、ジクロロメタン、ヘキサン、ベンゼン、トルエン、アセトン、酢酸等)が混入するおそれが殆どなくなり、ダクトを通過したエアが人体に悪影響を与えることがなくなる。また、内面被覆フィルム4の表面が平滑であるため、通過するエアの抵抗が少なくなり、スムースにエアを通過させることができるようになる。
【0017】
図1の外面被覆フィルム6は、筒2の外周面5に密着させて備えられ、外周面5を被覆するフィルム状部材である。この外面被覆フィルム6は、筒2の成型後に接着剤を用いて外周面5に貼り付けることも、筒2の成型時に外型8内に備えておき、接着剤を用いずに密着させることもできる。外面被覆フィルム6としては前記内面被覆フィルム4と同様に、アルミ箔や樹脂膜等、有害物質を発散しないものであれば任意のフィルムや膜やシート状部材等を用いることができる。この外面被覆フィルム6を備えることにより、ダクト用管1の強度や耐水性を向上させることができる。
【0018】
(ダクト用管の実施形態2)
本発明のダクト用管では、筒2の外周面5の外面被覆フィルム6を省略することもできる。
【0019】
(ダクト用管の連結構造の実施形態1)
本発明のダクト用管の連結構造の実施形態の一例を図3に基づいて説明する。この連結構造は、図3に示すように、外周に鍔11が形成された筒状のソケット10を用いて、前記ダクト用管1を二本長手方向に連結させる構造である。この連結構造によって二本のダクト用管1を連結させるには、図3に示すように、一方のダクト用管1(図中右側)の軸方向端部内面に前記鍔11を嵌入させる凹部12を形成し、その一方のダクト用管1の内部空間13にソケット10の一端側を嵌入し、且つ、鍔11を凹部12に嵌入し、他方のダクト用管1(図中左側)の内部空間13にソケット10の他端側を嵌入させて、両ダクト用管1の軸方向端面同士を突き合わせて両ダクト用管1を連結する。連結された二本のダクト用管1の内部空間13同士は筒状のソケット10によって連通され、エアを漏らさず通過させられる。また、ソケット10の鍔11が凹部12内に嵌入されるため、ソケット10と鍔11のいずれも外周面5に露出せず、外観も良い。
【0020】
(ダクト用管の連結構造のその他の実施形態)
本発明のダクト用管の連結構造では、連結する二本のダクト用管1の双方の軸方向端部内側に凹部12を備え、ソケット10の鍔11を双方の凹部12内に半分ずつ嵌入させて、両ダクト用管1の軸方向端面同士を突き合わせて両ダクト用管1同士を連結させることもできる。この他にも、外周に鍔11が形成された筒状のソケット10を用いて、前記ダクト用管1を二本長手方向に連結させられれば任意の構造とすることもできる。
【産業上の利用可能性】
【0021】
本発明のダクト用管製造方法、その製造方法で製造したダクト用管、ダクト用管の連結構造は、エアダクト用のダクト用管に限らず、任意の管状部材に応用することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明のダクト用管の実施形態の一例を示す斜視図。
【図2】(a)(b)は本発明のダクト用管製造方法の実施形態の一例を示す斜視説明図。
【図3】本発明のダクト用管の連結構造の実施形態の一例を示す断面説明図。
【図4】(a)は、塊状の発泡材料からダクト用管の部品を切り出す様子を示す斜視説明図。(b)は、従来のダクト用管を示す斜視説明図。
【符号の説明】
【0023】
1 ダクト用管
2 筒
3 内周面
4 内面被覆フィルム
5 外周面
6 外面被覆フィルム
7 芯型
8 外型
10 ソケット
11 鍔
12 凹部
13 内部空間

【特許請求の範囲】
【請求項1】
芯型の外周に内壁被覆フィルムを巻きつけておき、その周囲に外型を配置し、その両型間に発泡材料を充填、発泡させて、内周面が内面被覆フィルムで被覆された筒型に成型することを特徴とするダクト用管製造方法。
【請求項2】
請求項1記載のダクト用管製造方法において、成型後の筒の外周面を外面被覆フィルムで被覆することを特徴とするダクト用管製造方法。
【請求項3】
発泡材料で一体成型された筒の内周面又は内周面及び外周面がフィルムで被覆されたことを特徴とするダクト用管。
【請求項4】
外周に鍔が形成された筒状のソケットで、請求項3記載のダクト用管を二本長手方向に連結させる構造であって、一方又は他方のダクト用管の軸方向端部内面に前記鍔を嵌入させる凹部を形成し、両ダクト用管内にソケットの一端側を嵌入し、且つ、鍔を凹部に嵌入して、両ダクト用管の軸方向端面同士を突き合わせて両ダクト用管を連結したことを特徴とするダクト用管連結構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2009−103396(P2009−103396A)
【公開日】平成21年5月14日(2009.5.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−277427(P2007−277427)
【出願日】平成19年10月25日(2007.10.25)
【出願人】(398040631)株式会社ダックス (1)
【Fターム(参考)】