説明

ダンパー

【課題】部品構成が簡素であり、かつ、比較的大きな緩衝力を発揮することが可能なダンパーを提供する。
【解決手段】事務機器の本体に対して原稿圧着板が当接するときの衝撃を緩衝するダンパー100に、本体に固定されるケース110と、カム部123を備えケース110に対して正・逆方向に回動可能に連結されるアーム120と、アーム120に接近・離間する方向に移動可能にケース110に支持されるスライダ140と、スライダ140を接近方向に付勢してスライダ140をカム部123に当接させるバネ150と、を具備し、スライダ140にはスライダ140の接近・離間方向に垂直な面に対して傾斜するとともにカム部123に当接するスライド側当接面141を形成した。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば事務機器の本体に対して事務機器の原稿圧着板が閉じる速度を緩める(衝撃を緩衝する)ダンパーに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複写機、ファクシミリ、スキャナー等、オフィスで使用される事務機器の多くは、その本体の上面に設けられた原稿読み取り部(コンタクトガラス)、および当該原稿読み取り部を覆う原稿圧着板を具備する。
原稿圧着板は、原稿読み取り部に載置された原稿を原稿読み取り部に密着させるとともに当該原稿読み取り部に対する原稿の位置を保持するものであり、一般的には原稿圧着板の端部がヒンジにより事務機器の本体の上面の端部に回動可能に連結される。
【0003】
このような原稿圧着板は、原稿を原稿読み取り部に密着させるためにある程度の重量を要する。また、原稿圧着板に原稿自動送り装置(Auto Document Feeder;ADF)が設けられている場合、原稿圧着板の重量は更に増大する。
従って、従来の事務機器の本体と原稿圧着板とを連結するヒンジは、事務機器の本体に固定される取り付け部材と原稿圧着板に固定される支持部材との間にバネを介装し、当該バネの付勢力で原稿圧着板の重量を支えることにより、事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度(開閉角度)を任意の角度で保持し(フリーストップ機能)、ひいては作業者が原稿圧着板を回動(開閉)させて原稿読み取り部へ原稿を載置する作業を容易にしている。
【0004】
また、事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動角度(開閉角度)が完全に閉じる角度から数度開いた角度までの範囲ではバネの付勢力よりも原稿圧着板の重量に基づく回動力(トルク)がやや上回るように設定し、かつ、当該角度範囲において自重で閉じる方向に回動する原稿圧着板をダンパーが緩衝することにより、原稿圧着板が事務機器の本体に激しく衝突することを防止しつつ事務機器の本体に対して原稿圧着板を確実に閉じることが可能なヒンジも知られている。例えば、特許文献1に記載の如くである。
【0005】
特許文献1に記載のヒンジ(原稿圧着板開閉装置)が具備するダンパーはいわゆるオイルダンパーであり、オイルが充填されるシリンダ、当該シリンダ内に移動可能に設けられるピストン、当該ピストンに一端部が連結されるとともに他端部が当該シリンダから突出するピストンロッド、シリンダを閉塞する蓋体、Oリング等のシール材、等を具備する。
特許文献1に記載のヒンジの場合、ダンパーはヒンジのバネの内部に収容され、バネが所定の長さ以下まで収縮されたときにピストンロッドがスライダに当接し、当該スライダがピストンロッドがシリンダ内に押し込まれ、シリンダに充填されたオイルの粘性抵抗によりピストンの移動が阻害されることにより、ヒンジの回動、ひいては事務機器の本体に対する原稿圧着板の回動が緩衝される。
【0006】
近年は事務機器の小型化および低コスト化も進んでおり、それに伴ってヒンジも従来の機能を損なうことなく更なる小型化および低コスト化を図ることが要求される。
すなわち、所望の緩衝力(原稿圧着板が閉じるときの衝撃を緩衝する能力)を有し、部品構成が簡素であり、場合によってはフリーストップ機能を持たない小型かつシンプルな構成のヒンジ(回動可能に連結する二つの対象物にそれぞれ固定される部材およびこれらの部材を回動可能に連結する回動軸のみを具備するヒンジ)とは別体で(離れた位置に)事務機器に取り付けることが可能なダンパーが求められる。
【0007】
しかし、特許文献1に記載のヒンジが具備するダンパーは、部品点数が多く、各部品の形状が複雑であり、流体の粘性抵抗を精度良く制御するために各部品には高い寸法精度が要求されるので、製造コストが大きい。
また、特許文献1に記載のヒンジが具備するダンパーはフリーストップ機能を発揮するためのバネの内部に配置され、かつバネを受けるスライダがダンパーを押すことによりダンパーが緩衝力を発揮することが前提となっているので、上記フリーストップ機能を持たないヒンジとするためにバネを省略した場合であっても、ダンパーを作動させるためにスライダおよびスライダに当接するカムをヒンジに残す必要があり、結局は当該ヒンジの小型化が阻害されることとなる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】特開2006−133532号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は以上の如き状況に鑑みてなされたものである。
すなわち、本発明が解決しようとする課題は、部品構成が簡素であり、かつ、比較的大きな緩衝力を発揮することが可能なダンパーを提供すること、である。
【課題を解決するための手段】
【0010】
以下では、この課題を解決するための手段を説明する。
【0011】
即ち、請求項1においては、
第一対象物に対して第二対象物が当接するときの衝撃を緩衝するダンパーであって、
前記第一対象物に固定される固定部材と、
カム部を備え、前記固定部材に対して正方向および逆方向に回動可能に連結される回動部材と、前記回動部材に接近する方向である接近方向および前記回動部材から離間する方向である離間方向に移動可能に前記固定部材に支持されるスライド部材と、
一端部が前記固定部材に当接するとともに他端部が前記スライド部材に当接し、前記スライド部材を前記接近方向に付勢して前記スライド部材を前記カム部に当接させることにより、前記回動部材が前記固定部材に対して前記正方向に回動するように前記回動部材にトルクを付与する付勢部材と、
を具備し、
前記スライド部材には、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対して傾斜した面であって前記カム部に当接するスライド側当接面が形成されるものである。
【0012】
請求項2においては、
前記スライド側当接面のうち接近方向寄りの部分は主当接面を成し、
前記スライド側当接面のうち離間方向寄りの部分は前記主当接面に連なる導入当接面を成し、
前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記主当接面の傾斜角度は、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記導入当接面の傾斜角度よりも大きく、
前記第二対象物からの外力が前記回動部材に作用していないとき、前記カム部は前記スライド側当接面のうち前記導入当接面に当接し、
前記第二対象物からの外力が前記回動部材に作用することにより前記回動部材が前記逆方向に回動したとき、前記スライド側当接面において前記カム部に当接する部位は前記導入当接面から前記主当接面に移動し、前記スライド部材は前記離間方向に移動し、前記付勢部材が前記スライド部材を前記接近方向に付勢する力は大きくなるものである。
【0013】
請求項3においては、
前記固定部材には、底面および内周面を有するとともに外部と連通する開口部を有する空間であって前記スライド部材および前記付勢部材を収容する空間である収容室が形成され、
前記付勢部材の一端部は前記収容室の底面に当接し、
前記付勢部材の他端部は前記収容室に収容された前記スライド部材に当接し、
前記スライド部材は、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から外部に突出する方向に移動することにより前記接近方向に移動し、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から前記収容室の内部に没入する方向に移動することにより前記離間方向に移動するものである。
【0014】
請求項4においては、
前記収容室の内周面のうち、前記スライド部材の前記スライド側当接面に対向する部分の反対側となる部分には潤滑剤が塗布されるものである。
【0015】
請求項5においては、
第一対象物に対して第二対象物が当接するときの衝撃を緩衝するダンパーであって、
前記第一対象物に固定される固定部材と、
前記固定部材から突出する正方向および前記固定部材に没入する逆方向に移動可能、かつ一端部が前記固定部材から突出した状態を保持可能に前記固定部材に支持される移動部材と、
前記正方向および逆方向とは異なる方向であって前記移動部材の他端部に接近する方向である接近方向、ならびに前記正方向および逆方向とは異なる方向であって前記移動部材の他端部から離間する方向である離間方向に移動可能に前記固定部材に支持されるスライド部材と、
一端部が前記固定部材に当接するとともに他端部が前記スライド部材に当接し、前記スライド部材を前記接近方向に付勢して前記スライド部材を前記移動部材の他端部に当接させることにより、前記移動部材に前記正方向に移動する力を付与する付勢部材と、
を具備し、
前記スライド部材には、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対して傾斜した面であって前記移動部材の他端部に当接するスライド側当接面が形成されるものである。
【0016】
請求項6においては、
前記スライド側当接面のうち接近方向寄りの部分は主当接面を成し、
前記スライド側当接面のうち離間方向寄りの部分は前記主当接面に連なる導入当接面を成し、
前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記主当接面の傾斜角度は、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記導入当接面の傾斜角度よりも大きく、
前記第二対象物からの外力が前記回動部材に作用していないとき、前記移動部材の他端部は前記スライド側当接面のうち前記導入当接面に当接し、
前記第二対象物からの外力が前記移動部材に作用することにより前記移動部材が前記逆方向に移動したとき、前記スライド側当接面において前記移動部材の他端部に当接する部位は前記導入当接面から前記主当接面に移動し、前記スライド部材は前記離間方向に移動し、前記付勢部材が前記スライド部材を前記接近方向に付勢する力は大きくなるものである。
【0017】
請求項7においては、
前記固定部材には、底面および内周面を有するとともに外部と連通する開口部を有する空間であって前記スライド部材および前記付勢部材を収容する空間である収容室が形成され、
前記固定部材は、前記移動部材の一端部が前記固定部材から突出するとともに前記移動部材の他端部が前記収容室の開口部に対向した状態を保持しつつ前記移動部材を前記正方向および逆方向に移動可能に支持する支持部を備え、
前記付勢部材の一端部は前記収容室の底面に当接し、
前記付勢部材の他端部は前記収容室に収容された前記スライド部材に当接し、
前記スライド部材は、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から外部に突出する方向に移動することにより前記接近方向に移動し、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から前記収容室の内部に没入する方向に移動することにより前記離間方向に移動するものである。
【0018】
請求項8においては、
前記収容室の内周面のうち、前記スライド部材の前記スライド側当接面に対向する部分の反対側となる部分には潤滑剤が塗布されるものである。
【発明の効果】
【0019】
本発明は、部品構成が簡素であり、かつ、比較的大きな緩衝力を発揮することが可能である、という効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】(a)原稿圧着板が開いた状態における本発明に係るダンパーの第一実施形態を具備するスキャナーを示す左側面一部断面図、(b)原稿圧着板がダンパーに当接した状態における本発明に係るダンパーの第一実施形態を具備するスキャナーを示す左側面一部断面図、(c)原稿圧着板が閉じた状態における本発明に係るダンパーの第一実施形態を具備するスキャナーを示す左側面一部断面図。
【図2】(a)本発明に係るダンパーの第一実施形態を示す左後上方からの斜視図、(b)本発明に係るダンパーの第一実施形態を示す左側面図。
【図3】(a)本発明に係るダンパーの第一実施形態を示す平面図、(b)本発明に係るダンパーの第一実施形態を示す底面図。
【図4】(a)外力が作用していないときの本発明に係るダンパーの第一実施形態を示す左側面断面図(図3の(a)におけるA−A矢視断面図)、(b)外力が作用しているときの本発明に係るダンパーの第一実施形態を示す左側面断面図。
【図5】(a)本発明に係るダンパーの第一実施形態のケースを示す左後上方からの斜視図、(b)本発明に係るダンパーの第一実施形態のケースを示す右前下方からの斜視図。
【図6】(a)本発明に係るダンパーの第一実施形態のアームを示す左後上方からの斜視図、(b)本発明に係るダンパーの第一実施形態のアームを示す右前下方からの斜視図。
【図7】(a)本発明に係るダンパーの第一実施形態および第二実施形態のスライダを示す左後上方からの斜視図、(b)本発明に係るダンパーの第一実施形態および第二実施形態のスライダを示す右前下方からの斜視図。
【図8】本発明に係るダンパーの第一実施形態および第二実施形態のスライダを示す左側面図。
【図9】(a)原稿圧着板が開いた状態における本発明に係るダンパーの第二実施形態を具備するスキャナーを示す左側面一部断面図、(b)原稿圧着板がダンパーに当接した状態における本発明に係るダンパーの第二実施形態を具備するスキャナーを示す左側面一部断面図、(c)原稿圧着板が閉じた状態における本発明に係るダンパーの第二実施形態を具備するスキャナーを示す左側面一部断面図。
【図10】(a)外力が作用していないときの本発明に係るダンパーの第二実施形態を示す左側面断面図、(b)外力が作用しているときの本発明に係るダンパーの第二実施形態を示す左側面断面図。
【図11】(a)本発明に係るダンパーの第二実施形態のケースを示す左後上方からの斜視図、(b)本発明に係るダンパーの第二実施形態のケースを示す右前下方からの斜視図。
【図12】(a)本発明に係るダンパーの第一実施形態に規制ピンを具備したものを示す左後上方からの斜視図、(b)本発明に係るダンパーの第一実施形態に規制ピンを具備したものを示す左側面図。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下では図1から図8を用いて、本発明に係るダンパーの第一実施形態であるダンパー100について説明する。
【0022】
以下では、図1を用いてダンパー100が適用されるスキャナー1について説明する。
スキャナー1は事務機器の実施の一形態であり、本体2、原稿圧着板3、ヒンジ4およびダンパー100を具備する。
【0023】
本体2は本発明に係る第一対象物の実施の一形態である。
本実施形態の本体2は原稿読み取り装置、制御装置、表示装置および入力装置を具備する。本体2の原稿読み取り装置は本体2の上面に配置される。本体2の原稿読み取り装置は本体2の上面に載置された原稿を読み取る(原稿の画像情報を生成する)。本体2の制御装置はスキャナー1の各部の動作、より詳細には本体2の原稿読み取り装置の動作を制御する。本体2の制御装置は本体2の原稿読み取り装置が生成した画像情報を記憶すること、および当該画像情報を本体2に接続された回線(例えば、インターネット回線等)を通じて他の機器(パーソナルコンピュータ等)に送信することが可能である。本体2の表示装置は例えば液晶パネルからなり、スキャナー1の動作状況等に係る情報を表示する。
本体2の入力装置は例えばボタン、スイッチ等からなり、作業者がスキャナー1に対する指示等を入力する際に操作するものである。本体2の表示装置および入力装置は本体2の上面前端部に配置される。
【0024】
原稿圧着板3は本発明に係る第二対象物の実施の一形態である。
原稿圧着板3は板状の部材であり、本体2の原稿読み取り装置の上に載置された原稿を本体2の原稿読み取り装置に向かって押さえつける(圧着する)ことにより、本体2の原稿読み取り装置が原稿を読み取る際に原稿が動く(本体2の原稿読み取り装置との相対的な位置が変化する)ことを防止する。
【0025】
ヒンジ4は本体2と原稿圧着板3とを回動可能に連結するものである。本実施形態のヒンジ4は二つのウイング部材およびこれら二つのウイング部材を回動可能に連結する回動軸を備える。ヒンジ4を構成する二つのウイング部材のうち、一方の部材は本体2の後上端部に固定され、他方の部材は原稿圧着板3の後下端部に固定される。
【0026】
「事務機器」は、少なくとも原稿を読み取る(原稿の画像情報を取得する)機能を具備する装置を指す。
「原稿」は、シート状物(紙、樹脂製のシート等)のシート面(広い面)に文章、書画、写真等が記されたものを指す。
事務機器の具体例としては以下の(a)〜(d)等が挙げられる。
(a)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報を他の機器(例えば、パーソナルコンピュータ)に送信する機能を具備するスキャナー。
(b)原稿を読み取る機能、読み取った原稿に係る画像情報を通信回線を介して他の機器に送信する機能および他の機器から取得した画像情報をプリントアウトする機能を具備するファクス。
(c)原稿を読み取る機能および読み取った原稿に係る画像情報をプリントアウトする機能を具備するコピー機。
(d)上記スキャナー、ファクス、およびコピー機としての機能を兼ねる複合機。
【0027】
ダンパー100は本体2に対して原稿圧着板3が閉じる(当接する)ときの衝撃を緩衝するものである。
図1に示す如く、ダンパー100は本体2に形成されたダンパー収容穴2aに収容される。ダンパー収容穴2aは本体2の上面において前後中途部かつ左端部となる位置に開口している。
【0028】
図2、図3および図4に示す如く、ダンパー100はケース110、アーム120、回動ピン130、スライダ140およびバネ150を具備する。
以下では、ダンパー100を構成する各部材の詳細について説明する。
なお、以下では便宜上、図1の(a)に示すスキャナー1の上下方向、前後方向および左右方向を基準として(図1の(a)に示すスキャナー1の上下方向、前後方向および左右方向と、図1の(a)に示すダンパー100の上下方向、前後方向および左右方向と、を対応させて)説明を行う。
【0029】
以下では、主に図5を用いてケース110の詳細について説明する。
ケース110は本発明に係る固定部材の実施の一形態である。
図5に示す如く、ケース110は概ね前後方向にやや長い直方体形状の部材であり、樹脂材料を一体成形することにより製造される。
ケース110は下板111、側板112L・112R、上板114および前板115を備える。
【0030】
下板111はケース110の下部を成す部材である。本実施形態の下板111は上下一対の板面(上面および下面)を有する板状の部材であり、下板111の平面視形状は前後方向に長い長方形である。
【0031】
下板111には貫通孔111a・111b・111c・111dが形成される。貫通孔111a・111b・111c・111dはいずれも下板111の上面から下面まで上下に貫通する。貫通孔111aは下板111の左後端部に配置され、貫通孔111bは下板111の後端部かつ左右中央部となる位置に配置され、貫通孔111cは下板111の前端部かつ左右中央部となる位置に配置され、貫通孔111dは下板111の右前端部に配置される。
【0032】
下板111には嵌合溝111e・111fが形成される。嵌合溝111e・111fはいずれも前後方向に延びた形状を有し、かつ下板111の上面から下面まで上下に貫通する。嵌合溝111e・111fは下板111の前後中途部に配置される。また、嵌合溝111fは嵌合溝111eに対して所定の間隔を空けて右側方となる位置に配置される。
【0033】
側板112Lはケース110の左側部を成す部材である。本実施形態の側板112Lは左右一対の板面(左面および右面)を有する板状の部材であり、下板111は側面視で概ね前後方向に長い長方形の後上部を斜めに切除し、かつ、当該長方形の上辺の後半部(切除した部分の前端部に対応する部分)に上方に突出する突起を設けた形状である。
側板112Lには貫通孔113Lが形成される。貫通孔113Lは側板112Lの左面から右面まで左右に貫通する。貫通孔113Lは側板112Lにおける「上辺の後半部の突起」に対応する部分に配置される。
側板112Lの下端部は下板111の左端部かつ前後中央部となる位置に連なる。
本実施形態の側板112Lは下板111よりも前後方向において短く、下板111の前端部(貫通孔111c・111dが形成される部分)は側板112Lの前端部よりも前方に突出し、下板111の後端部(貫通孔111a・111bが形成される部分)は側板112Lの後端部よりも後方に突出する。
【0034】
側板112Rはケース110の右側部を成す部材である。側板112Rには貫通孔113Rが形成される。側板112Rの下端部は下板111の右端部かつ前後中央部となる位置に連なる。
本実施形態の側板112Rは側板112Lに対して左右対称な形状を有するので、側板112Rの形状についての詳細な説明を省略する。
【0035】
上板114はケース110の上部を成す部材である。本実施形態の上板114は上下一対の板面(上面および下面)を有する板状の部材であり、上板114の平面視形状は前後方向にやや長い長方形である。上板114の左端部は側板112Lの前半部(側板112Lの「上辺の後半部の突起」よりも前側の部分)に連なる。上板114の右端部は側板112Rの前半部に連なる。
【0036】
前板115はケース110の前部を成す部材である。本実施形態の前板115は前後一対の板面(前面および後面)を有する板状の部材であり、前板115の正面視形状は左右方向にやや長い長方形である。前板115の左右端部はそれぞれ側板112Lの前端部および側板112Rの前端部に連なり、前板115の上下端部はそれぞれ上板114の前端部および下板111の前半部(下板111において貫通孔111c・111dが形成される部分よりもやや後方となる部分)に連なる。
【0037】
ケース110には収容室116が形成される。収容室116は本発明に係る収容室の実施の一形態である。本実施形態の収容室116は下板111、側板112L・112R、上板114および前板115で囲まれる空間である。
収容室116は「収容室116の内周面」および「収容室116の底面」を有する。
より詳細には、下板111の上面のうち側板112L・112Rで挟まれる部分、側板112Lの右面、側板112Rの左面および上板114の下面を合わせたものは「収容室116の内周面」を成し、前板115の後面は「収容室116の底面」を成す。
また、収容室116はケース110の外部と連通する「収容室116の開口部」を有する。より詳細には、側板112L・112Rの後端部、側板112L・112Rの上端部のうち「上辺の後半部の突起」よりも後方となる部分、上板114の後端部、および下板111の上面において貫通孔111a・111bが形成される部分よりも後方となる部分、を合わせたものが「収容室116の開口部」の周縁部を成す。
【0038】
図1に示す如く、ダンパー100をダンパー収容穴2aに収容し、貫通孔111a・111b・111c・111dにそれぞれネジ(不図示)を貫装し、これらのネジをダンパー収容穴2aの底面に形成されたネジ穴(不図示)に螺装することにより、ケース110(ひいては、ダンパー100)が本体2に固定される。
【0039】
以下では、主に図6を用いてアーム120の詳細について説明する。
アーム120は本発明に係る回動部材の実施の一形態である。
アーム120は、図1に示す姿勢において上下方向に延びた棒状の部材であり、樹脂材料を一体成形することにより製造される。
図6に示す如く、アーム120は胴体部121、頭部122およびカム部123を備える。
胴体部121はアーム120の主たる構造体を成す部分である。胴体部121は図1に示す姿勢において前後方向に薄く上下方向に延びた板状の部分である。
頭部122はアーム120の一端部(図1に示す姿勢における上端部)に連なる概ね円柱形状の部分である。頭部122には当接面122aが形成される。当接面122aは概ね円柱形状の頭部122の外周面に相当する面である。
カム部123はアーム120の他端部(図1に示す姿勢における下端部)に連なる部分である。カム部123にはカム面123aが形成される。カム面123aはカム部123の外表面のうち、カム部123の前方から前下方を経て下方に至る部分に対応する曲面である。
カム部123には貫通孔123bが形成される。貫通孔123bはカム部123の左右の側面を左右方向に貫通する。
【0040】
以下では、主に図3の(a)を用いて回動ピン130の詳細について説明する。
回動ピン130はケース110に対するアーム120の回動軸を成す部材である。
回動ピン130は胴体部131および頭部132を有する。本実施形態の回動ピン130は金属材料からなる。
【0041】
胴体部131は回動ピン130の胴体を成す略円柱形状の部分である。図3の(a)において点線で示す如く、胴体部131の一端部(右端部)にはカシメ穴131aが形成される。
カシメ穴131aは胴体部131の一端部(右端部)の端面に形成された穴である。カシメ穴131aが形成されることにより、胴体部131の一端部(右端部)には薄肉の部分(略円筒形状の部分)が形成される。
【0042】
頭部132は胴体部131の他端部(左端部)に連なる略円盤形状の部分である。頭部132の外径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりも大きい。
【0043】
図3の(a)に示す如く、回動ピン130の胴体部131は、左方向から右方向に向かってケース110の側板112Lに形成された貫通孔113L、アーム120のカム部123に形成された貫通孔123b、およびケース110の側板112Rに形成された貫通孔113Rに貫装される。
本実施形態では貫通孔123bの内径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりも僅かに小さく、かつ貫通孔113L・113Rの内径(直径)は胴体部131の外径(直径)よりも僅かに大きいので、回動ピン130はケース110に回動可能に軸支されるとともに、アーム120に対しては回動ピン130の軸線方向(本実施形態では、左右方向)に移動不能かつ回転不能に固定され、ひいてはケース110およびアーム120に対して脱落不能に支持される。
このように、回動ピン130はケース110とアーム120とを回動可能に連結する。
なお、以下の説明では、「アーム120がケース110に対して正方向に回動する」とは「アーム120がケース110に対して左側面視で時計回りに回動する」ことを指し、「アーム120がケース110に対して逆方向に回動する」とは「アーム120がケース110に対して左側面視で反時計回りに回動する」ことを指すものとする。
【0044】
また、図3の(a)に示す状態から胴体部131の一端部(右端部)に形成された薄肉の部分を回動ピン130の半径方向(軸線方向に垂直な方向)に押し広げるようにカシメる(塑性変形させる)ことにより、回動ピン130の一端部、すなわちカシメられた部分の外径(直径)は貫通孔113Rの内径(直径)よりも大きくなる。なお、頭部132の外径(直径)は貫通孔113Lよりも大きい。
このように、胴体部131の一端部(右端部)をカシメることによっても回動ピン130をケース110に対して脱落不能に支持することが可能である。
【0045】
本実施形態では回動ピン130はケース110およびアーム120に対して別体であるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、十分な強度を確保することが可能であり、かつ本発明に係る回動部材を本発明に係る固定部材に回動可能に連結することが可能であれば、「固定部材に対する回動部材の回動軸に相当する部分」を本発明に係る固定部材または回動部材のいずれかと一体的に成形しても良い。
【0046】
以下では、主に図7および図8を用いてスライダ140の詳細について説明する。
スライダ140は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。
本実施形態のスライダ140は概ね直方体の後上部を斜めに切除した形状の部材であり、上面、上後面(直方体の斜めに切除された部分に対応する面)、下面、前面、後面、左面および右面を有する。スライダ140は樹脂材料を一体成形することにより製造される。
【0047】
スライダ140にはスライド側当接面141が形成される。本実施形態の場合、スライダ140の上後面がスライド側当接面141に相当する。
図8に示す如く、スライド側当接面141は前後方向に対して垂直な平面5に対して傾斜している(平面5に対して平行ではない)。
本実施形態のスライド側当接面141は主当接面141aおよび導入当接面141bを合わせたものである。
主当接面141aはスライド側当接面141のうち後方寄りの部分を成す。本実施形態の主当接面141aは平面である。
導入当接面141bはスライド側当接面141のうち前方寄りの部分を成す。本実施形態の導入当接面141bは下に凸の曲面であり、導入当接面141bの後端部は主当接面141aの前端部に連なる。
【0048】
図8に示す如く、前後方向(後述する「スライダ140の接近方向」および「スライダ140の離間方向」)に垂直な平面5に対する主当接面141aの傾斜角度θ1は、平面5に対する導入当接面141bの傾斜角度θ2よりも大きい(θ1>θ2が成立する)。
【0049】
本実施形態の主当接面141aは平面であるため、平面5に対する主当接面141aの傾斜角度θ1、より厳密には平面5と主当接面141aに一致する平面6との成す角度θ1は主当接面141a上の位置に応じて変化することはない。
これに対して、導入当接面141bは下に凸の曲面であるため、平面5に対する導入当接面141bの傾斜角度θ2、より厳密には平面5と「導入当接面141b上のある点(図8中の黒丸参照)」に当接する平面7との成す角度θ2は、導入当接面141bの前端部から後端部に向かうに従って徐々に大きくなる。
【0050】
また、本実施形態では、導入当接面141bの後端部は主当接面141aの前端部と滑らかに連なる。
言い換えれば、平面5に対する導入当接面141bの傾斜角度θ2は、導入当接面141bの後端部においては平面5に対する主当接面141aの傾斜角度θ1とほとんど同じである(傾斜角度θ1よりも僅かに小さい)。
【0051】
図7の(b)に示す如く、スライダ140の前面にはバネ受け穴142が形成される。
バネ受け穴142は内周面および底面を有し、スライダ140の前面に開口する穴である。
【0052】
図7に示す如く、スライダ140の後下部には嵌合突起143・144が形成される。
嵌合突起143・144はそれぞれスライダ140の後下部において左寄りとなる位置および右寄りとなる位置に左右方向に所定の間隔を空けて配置され、嵌合突起143・144の先端部はスライダ140の下面よりも下方に突出する。
また、嵌合突起143・144は、嵌合突起143・144の基部(スライダ140の本体部分と連なる部分)において屈曲するように弾性変形することにより、嵌合突起143・144の先端部をスライダ140の下面と面一となる(上下方向において同じ高さになる)位置まで退避させることが可能である。
【0053】
図4に示す如く、スライダ140はケース110の収容室116に収容される。
スライダ140が収容室116に収容されたとき、スライダ140の外周面は収容室116の内周面に当接する。より詳細には、スライダ140の上面、下面、左面および右面はそれぞれ上板114の下面、下板111の上面、側板112Lの右面および側板112Rの左面に当接する。
その結果、スライダ140は前後方向に移動可能にケース110に支持される。
より詳細には、収容室116に収容されたスライダ140がケース110に対して前後方向に移動することは可能であるが、収容室116に収容されたスライダ140がケース110に対して上下方向および左右方向に移動すること、ならびにケース110に対して回転することはできない。
【0054】
本実施形態では、収容室116に収容されたスライダ140がケース110に回動可能に連結されたアーム120に接近する方向(本実施形態では、後方)を「スライダ140の接近方向」と定義するとともに、収容室116に収容されたスライダ140がケース110に回動可能に連結されたアーム120から離間する方向(本実施形態では、前方)を「スライダ140の離間方向」と定義し、収容室116に収容されたスライダ140の移動についてはこれらの方向を用いて説明する。
すなわち、スライダ140は、収容室116の内周面に当接しつつ収容室116の開口部からケース110の外部に突出する方向に移動することにより「スライダ140の接近方向」に移動し、収容室116の内周面に当接しつつ収容室116の開口部から収容室116の内部に没入する方向に移動することにより「スライダ140の離間方向」に移動する。
【0055】
収容室116の内周面のうち、少なくともスライダ140のスライド側当接面141に対向する部分の反対側となる部分(本実施形態では、下板111の上面)には潤滑剤(例えば、グリス)が塗布される。
従って、スライダ140が収容室116に収容されたとき、スライダ140の下面と下板111の上面との当接部分(後で詳述するが、原稿圧着板3からの外力がアーム120に作用したとき、スライダ140において大きな力が作用する部分)における摩擦が潤滑剤により低減される。
【0056】
図2の(a)および図3の(b)に示す如く、スライダ140が収容室116に収容されたとき、嵌合突起143・144はそれぞれ嵌合溝111e・111fに嵌合する。
従って、収容室116に収容されたスライダ140が「スライダ140の接近方向」および「スライダ140の離間方向」に移動するとき(前後方向に移動するとき)、嵌合突起143・144はそれぞれ嵌合溝111e・111fに嵌合した状態を保持しつつ、嵌合溝111e・111fに沿って移動する。
【0057】
以下では、図4を用いてバネ150の詳細について説明する。
バネ150は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
本実施形態のバネ150は金属材料からなる巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。
図4に示す如く、バネ150はケース110の収容室116に収容される。
【0058】
ケース110の収容室116に収容されたバネ150の一端部(前端部)は収容室116の底面(前板115の後面)に当接し、バネ150の他端部(後端部)はケース110の収容室116に収容されたスライダ140に当接する(より詳細には、スライダ140のバネ受け穴142に挿入されるとともにバネ受け穴142の底面に当接する)。
バネ150はスライダ140を収容室116の開口部からケース110の外部に突出する方向、すなわち「スライダ140の接近方向(後方)」に付勢し、スライダ140のスライド側当接面141をアーム120のカム部123のカム面123aに当接させる。
その結果、バネ150の付勢力(圧縮される方向に弾性変形したバネ150が元の形状に戻ろうとする力)はスライダ140を経てアーム120に伝達され、アーム120はケース110に対して左側面視で時計回りに回動する方向に付勢される。
このように、バネ150はアーム120がケース110に対して正方向に回動するように(左側面視で時計回りに回動するように)アーム120にトルクを付与する。
【0059】
以下では主に図1および図4を用いて本体2に対して原稿圧着板3が閉じる(当接する)ときのダンパー100の挙動について説明する。
【0060】
図1の(a)に示す如く、本体2に対して原稿圧着板3が十分に開いており、本体2の上面の前端部から原稿圧着板3の下面の前端部までの距離が所定の距離(本実施形態の場合、図1の(b)における距離L1参照)よりも大きいとき、原稿圧着板3はアーム120に当接しない(アーム120から離間している)。
従って、本体2に対して原稿圧着板3が十分に開いているとき、原稿圧着板3からの外力(本実施形態の場合、原稿圧着板3の重量に基づいて原稿圧着板3がアーム120を下方に押す力)はアーム120に作用しない。
【0061】
図4の(a)に示す如く、原稿圧着板3がアーム120に当接しておらず、原稿圧着板3からの外力がアーム120に作用していないとき、スライダ140はバネ150の付勢力により「スライダ140の接近方向(後方)」に移動し、嵌合突起143・144が嵌合溝111e・111fの端面の後端部に当接する位置(図2の(a)および図3の(b)参照)に配置される。
また、アーム120のカム部123のカム面123aはスライダ140のスライド側当接面141のうち導入当接面141bに当接し、アーム120は「頭部122が上方に配置され、かつカム部123が下方に配置される姿勢」で保持される。
なお、原稿圧着板3がアーム120に当接しないとき、アーム120の上端部(頭部122)は本体2の上面よりも上方となる位置に配置される。
【0062】
図1の(b)に示す如く、本体2に対して原稿圧着板3が十分に開いている状態(図1の(a)に示す状態)から本体2に対して原稿圧着板3が閉じる方向に(左側面視で反時計回りに)自重で回動し、本体2の上面の前端部から原稿圧着板3の下面の前端部までの距離が減少して距離L1となったとき、原稿圧着板3の下面はアーム120の頭部122の当接面122aに当接する。
【0063】
図1の(b)に示す状態から本体2に対して原稿圧着板3が更に閉じる方向に回動し、本体2の上面の前端部から原稿圧着板3の下面の前端部までの距離が距離L1よりも小さくなったとき、原稿圧着板3からの外力がアーム120に作用し、原稿圧着板3の下面が頭部122の当接面122aに当接した状態を保持しつつ原稿圧着板3がアーム120を下方に押す。
その結果、アーム120はケース110に対して逆方向に(左側面視で反時計回りに)回動する。
【0064】
原稿圧着板3からの外力がアーム120に作用することによりアーム120がケース110に対して逆方向に回動したとき、スライダ140のスライド側当接面141においてカム部123のカム面123aに当接する部位8は導入当接面141bから主当接面141aに移動し(図4の(a)および(b)参照)、スライダ140はアーム120のカム部123に押されて「スライダ140の離間方向(前方)」に移動する。
その結果、バネ150は圧縮され(弾性変形し)、バネ150の付勢力、すなわちバネ150がスライダ140をスライダ140の接近方向(後方)に付勢する力は大きくなる。
このように、アーム120に作用した原稿圧着板3からの外力に係るエネルギー(原稿圧着板3の位置エネルギーおよび運動エネルギー)の一部がバネ150の弾性エネルギーに変換され、バネ150に蓄えられることにより、本体2に対して原稿圧着板3が自重で閉じる方向に回動する速度(角速度)は(仮にダンパー100をスキャナー1から取り除いた場合に比べて)緩められる。
【0065】
図1の(c)および図4の(b)に示す如く、本体2に対して原稿圧着板3が更に閉じる方向に回動し、原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接したとき、原稿圧着板3はそれ以上閉じる方向に回動することができずに停止し、本体2に対して原稿圧着板3が閉じた状態となる。
なお、原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接するときの本体2に対して原稿圧着板3が自重で閉じる方向に回動する速度(角速度)はダンパー100によって緩められているので、原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接するときの衝撃は(仮にダンパー100をスキャナー1から取り除いた場合に比べて)弱められる。
【0066】
以上の如くダンパー100を構成することにより、ダンパー100の部品構成を従来のオイルダンパーの部品構成に比べて簡素にすることが可能である。
より詳細には、(i)従来のオイルダンパーの場合、ダンパーを構成する部材にオイルの流通経路を形成するためには複雑な加工を施す必要があること、(ii)このような経路を形成するためには複数の部材を組み合わせて一つの部材を構成する場合もあること、(c)オイルの漏洩を防止するための諸機構(Oリング等のシール材、およびシール材を嵌合するための溝、シール材と当接する面等)を必要とすること、といった理由から、従来のオイルダンパーは全体として部品点数も多く、各部材の形状も複雑である。
また、従来のオイルダンパーの場合、オイルの流量(流速)を精度良く制御するためのオイルの流通経路における絞り部分およびオイルの漏洩を防止するための機構に関する部分に要求される寸法精度は非常に高い。
これに対して、ダンパー100は衝撃を粘性抵抗で緩衝するための流体(オイル等)を必要としないので、従来のオイルダンパーに比べて部品点数を削減し、かつ各部品の加工も簡略化することが可能であり、全体としては製造コストを抑えることが可能である。
【0067】
また、図8に示す如く、「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」はスライド側当接面141に垂直な方向に作用する。より詳細には、カム部123のカム面123aが主当接面141aに当接するときには主当接面141aに垂直な方向にF1の力が作用し、カム部123のカム面123aが導入当接面141bに当接するときには導入当接面141bに垂直な方向にF2の力が作用する。
ここで、スライド側当接面141(主当接面141aおよび導入当接面141bを合わせたもの)は前後方向に対して垂直な平面5に対して傾斜しているので、「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」は「スライダ140の接近方向および離間方向に垂直な方向(スライダ140の下面に垂直な方向)の成分」と「スライダ140の離間方向の成分」とに分解される。
これら二つの成分のうち「スライダ140の接近方向および離間方向に垂直な方向の成分」は、ケース110からの反力(反作用)により相殺される。
従って、「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」が作用するとき、スライダ140は、バネ150の付勢力および「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」における「スライダ140の離間方向の成分」が釣り合う位置で停止する。
【0068】
「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」における「スライダ140の離間方向の成分」は、「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」と「スライダ140の接近方向および離間方向に垂直な平面5とスライド側当接面141とが成す角度の余弦」との積で表される。
より詳細には、カム部123のカム面123aが主当接面141aに当接して主当接面141aに垂直な方向にF1の力が作用するとき、スライダ140はバネ150の付勢力がF1×cos(θ1)となる位置で停止する。また、カム部123のカム面123aが導入当接面141bに当接して導入当接面141bに垂直な方向にF2の力が作用するとき、スライダ140はバネ150の付勢力がF2×cos(θ2)となる位置で停止する。
「cos(θ1)」および「cos(θ2)」はいずれも「1」よりも小さい値をとるので、スライダ140が停止しているとき、バネ150は「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」よりも小さい力でスライダ140を支持し、スライダ140を静止した状態で保持することが可能である。
【0069】
従って、ダンパー100は、従来のバネを用いたショックアブソーバのうち「外力が作用する方向とバネの伸長収縮方向が平行となる(一致する)もの」に比べてバネ定数が小さいバネを用いて同等の効果(緩衝効果)を得ることが可能である。
このことは、バネの低コスト化、ひいてはダンパーの低コスト化に寄与する。
【0070】
スライダ140を支持するバネ150の付勢力をより小さくする観点からは、「スライダ140の接近方向および離間方向に垂直な平面5とスライド側当接面141とが成す角度」を極力90°に近づけることが望ましい。
例えば、cos(60°)=0.50、cos(70.5°)≒0.33、cos(75.5°)≒0.25、cos(78.5°)≒0.20、cos(80°)≒0.17、cos(84°)≒0.10であることから、「スライダ140の接近方向および離間方向に垂直な平面5とスライド側当接面141とが成す角度」を60°、70.5°、75.5°、78.5°、80°、84°とした場合には、バネ150はスライダ140を「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」のそれぞれ半分、三分の一、四分の一、五分の一、六分の一、十分の一の力で支持することが可能である。
【0071】
ただし、「スライダ140の接近方向および離間方向に垂直な平面5とスライド側当接面141とが成す角度」が90°に過度に近づいた場合、スライダ140がバネ150の付勢力および「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」における「スライダ140の離間方向の成分」が釣り合う位置まで移動するための距離が過度に長くなり、ひいてはダンパー100が全体としてスライダ140の接近方向および離間方向において長大化する場合がある。
従って、極力バネ定数が小さいバネ(付勢部材)を用いつつダンパー100がスライダ140の接近方向および離間方向において長大化することを防止する観点からは、バネ150がスライダ140を「アーム120のカム部123がスライダ140を押す力」のそれぞれ十分の一以上の力で支持することが好ましく、ひいては「スライダ140の接近方向および離間方向に垂直な平面5とスライド側当接面141とが成す角度」を84°以下に設定することが好ましい。
【0072】
また、ダンパー100は、主当接面141aの傾斜角度θ1を導入当接面141bの傾斜角度θ2よりも大きくすることにより、原稿圧着板3の下面がアーム120に当接するときの衝撃を弱め、ひいては原稿圧着板3の下面がアーム120に当接したときに原稿圧着板3がダンパー100に対してバウンドする(跳ね返る)ことを防止し、ダンパー100が原稿圧着板3を滑らかに受け止めることを可能としている。
【0073】
より詳細には、導入当接面141bの傾斜角度θ2は主当接面141aの傾斜角度θ1よりも小さいので、導入当接面141bに作用する力の「スライダ140の離間方向の成分(=F2×cos(θ2))」は主当接面141aに作用する力の「スライダ140の離間方向の成分(=F1×cos(θ1))」よりも大きくなる。
よって、仮に主当接面141aに作用する力F1と導入当接面141bに作用する力F2とが同じ大きさであり、かつスライダ140の位置が同じである(バネ150の付勢力Fsが同じである)場合には、アーム120のカム部123のカム面123aが導入当接面141bに当接するときのバネ150の付勢力に対する「スライダ140の離間方向の成分」の比率(=F2×cos(θ2)/Fs)は、アーム120のカム部123のカム面123aが主当接面141aに当接するときのバネ150の付勢力に対する「スライダ140の離間方向の成分」の比率(=F1×cos(θ1)/Fs)よりも大きくなる。
従って、本実施形態のバンパー100では、仮にカム部123のカム面123aが初めから(アーム120が逆方向に回動を開始する時点から)主当接面141aに当接している場合に比べて、カム面123aが主当接面141aに当接するときにアーム120が原稿圧着板3に及ぼす反力を相対的に小さくし、原稿圧着板3がダンパー100に対してバウンドすることを防止することが可能である。
【0074】
なお、アーム120の逆方向への回動が進むにつれて、スライダ140のスライド側当接面141においてカム部123のカム面123aに当接する部位8は導入当接面141bから主当接面141aに移動するので、スライダ140は本来要求されるバネ150の付勢力を発生する位置まで移動することとなる。
【0075】
本実施形態では、平面5に対する導入当接面141bの傾斜角度θ2が導入当接面141bの前端部から後端部に向かうに従って徐々に大きくなり、導入当接面141bの後端部と主当接面141aの前端部とが滑らかに連なる。
このように構成することにより、スライダ140のスライド側当接面141においてカム部123のカム面123aに当接する部位8の導入当接面141bから主当接面141aへの移動が滑らかに行われるので、原稿圧着板3の下面がアーム120に当接したときに原稿圧着板3がダンパー100に対してバウンドする(跳ね返る)ことを防止し、ダンパー100が原稿圧着板3を滑らかに受け止める効果を高めることが可能である。
【0076】
なお、本実施形態では、導入当接面141bを下に凸の曲面とすることにより、平面5に対する導入当接面141bの傾斜角度θ2が導入当接面141bの前端部から後端部に向かうに従って徐々に大きくなり、導入当接面141bの後端部と主当接面141aの前端部とが滑らかに連なることを可能としているが、本発明はこれに限定されない。
例えば導入当接面を階段状あるいはノコギリ状としたり、スライド部材の接近方向および離間方向に垂直な面に対する傾斜角度がそれぞれ異なる複数の平面を当該傾斜角度が小さいものから大きいものに向かって順に連ねた形状としたりしても良い。
【0077】
本発明に係る二つの対象物(第一対象物および第二対象物)は、本実施形態の如く互いに回動可能に連結されているものに限定されない。
本発明に係る二つの対象物の別実施形態としては、例えばガイドレール等により姿勢を保持しつつ相対的に接近および離間可能な二つの物品等が挙げられる。
【0078】
本実施形態のケース110、アーム120およびスライダ140はいずれも樹脂材料を一体成形することにより製造されるが、本発明はこれに限定されない。
例えば、固定部材、回動部材およびスライド部材のうち少なくとも一つを金属材料で製造しても良い。これらの部材を金属材料で製造する方法としては、ダイキャストにより一体成形する、ブロック状の金属材料に切削加工を施す、金属板に適宜折り曲げ加工を施す、等の方法が挙げられる。
【0079】
本実施形態ではダンパー100のケース110を本体2に固定し、原稿圧着板3がアーム120に当接することにより本体2に対して原稿圧着板3が閉じる(当接する)ときの衝撃を緩衝するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、ダンパー100のケース110を原稿圧着板3に固定し、本体2がアーム120に当接することにより本体2に対して原稿圧着板3が閉じる(当接する)ときの衝撃を緩衝しても良い。
【0080】
本実施形態ではスライダ140の嵌合突起143・144が嵌合溝111e・111fの端面の後端部に当接することにより、原稿圧着板3からの外力がアーム120に作用していないときのスライダ140の「スライダ140の接近方向(後方)」における位置およびアーム120の姿勢を決定するとともにスライダ140が収容室116の外部に脱落することを防止するが、本発明はこれに限定されない。
例えば、図12に示す如く、側板112Lにおいて貫通孔113Lの後上方となる位置に左右方向に貫通する貫通孔117Lを形成し、側板112Rにおいて貫通孔113Rの後上方となる位置に左右方向に貫通する貫通孔117Lを形成し、左右方向に延びた円柱形状の規制ピン160を貫通孔117Lおよび貫通孔117Lに脱落不能に貫装することによっても同様の効果が得られる。
より詳細には、アーム120が規制ピン160に当接することによりアーム120がそれ以上正方向へ回動することが規制されるとともに、アーム120のカム部123に当接するスライダ140がそれ以上「スライダ140の接近方向」に移動することが規制される。
このように構成することにより、図2の嵌合溝111e・111fおよび嵌合突起143・144を省略することが可能である。
【0081】
以下では図7から図11を用いて、本発明に係るダンパーの第二実施形態であるダンパー200について説明する。
【0082】
ダンパー200は図9に示すスキャナー1に適用される。
スキャナー1は事務機器の実施の一形態であり、本体2、原稿圧着板3、ヒンジ4およびダンパー200を具備する。
本実施形態では、図9に示すスキャナー1はダンパー100がダンパー200に置換されていることを除けば図1に示すスキャナー1と基本的に同じ構成であることから、図9に示すスキャナー1についての詳細な説明を省略する。
【0083】
ダンパー200は本体2に対して原稿圧着板3が閉じる(当接する)ときの衝撃を緩衝するものである。
図9に示す如く、ダンパー200は本体2に形成されたダンパー収容穴2aに収容される。ダンパー収容穴2aは本体2の上面において前後中途部かつ左端部となる位置に開口している。
【0084】
図10に示す如く、ダンパー200はケース210、作動ピン220、スライダ240およびバネ250を具備する。
【0085】
以下では、図10および図11を用いてケース210の詳細について説明する。
ケース210は本発明に係る固定部材の実施の一形態である。
図11に示す如く、ケース210は概ね前後方向にやや長い直方体形状の部材であり、樹脂材料を一体成形することにより製造される。
ケース210は下板211、側板212L・212R、上板214、前板215および支持板217を備える。
【0086】
下板211はケース210の下部を成す部材である。下板211には貫通孔211a・211b・211c・211dが形成される。下板211には嵌合溝211e・211fが形成される。
下板211の形状は図5に示す下板111の形状と基本的には同じであることから、下板211の形状についての詳細な説明を省略する。
【0087】
側板212Lはケース210の左側部を成す部材である。本実施形態の側板212Lは左右一対の板面(左面および右面)を有する板状の部材であり、下板211は側面視で概ね前後方向に長い長方形の後上部を斜めに切除し、かつ、当該長方形の上辺の後半部(切除した部分の前端部に対応する部分)に上方に突出する突起を設けた形状である。
側板212Lの下端部は下板211の左端部かつ前後中央部となる位置に連なる。
本実施形態の側板212Lは下板211よりも前後方向において短く、下板211の前端部(貫通孔211c・211dが形成される部分)は側板212Lの前端部よりも前方に突出し、下板211の後端部(貫通孔211a・211bが形成される部分)は側板212Lの後端部よりも後方に突出する。
【0088】
側板212Rはケース210の右側部を成す部材である。側板212Rの下端部は下板211の右端部かつ前後中央部となる位置に連なる。
本実施形態の側板212Rは側板212Lに対して左右対称な形状を有するので、側板212Rの形状の詳細な説明については省略する。
【0089】
上板214はケース210の上部を成す部材である。本実施形態の上板214は上下一対の板面(上面および下面)を有する板状の部材であり、上板214の平面視形状は前後方向にやや長い長方形である。上板214の左端部は側板212Lの前半部(側板212Lの「上辺の後半部の突起」よりも前側の部分)に連なる。上板214の右端部は側板212Rの前半部に連なる。
【0090】
前板215はケース210の前部を成す部材である。本実施形態の前板215は前後一対の板面(前面および後面)を有する板状の部材であり、前板215の正面視形状は左右方向にやや長い長方形である。前板215の左右端部はそれぞれ側板212Lの前端部および側板212Rの前端部に連なり、前板215の上下端部はそれぞれ上板214の前端部および下板211の前半部(下板211において貫通孔211c・211dが形成される部分よりもやや後方となる部分)に連なる。
【0091】
支持板217は本発明に係る支持部の実施の一形態である。支持板217は上下一対の板面を有する板状の部分であり、支持板217の左右端部はそれぞれ側板212L・212Rにおいて「上方に突出する突起」に対応する部分に連なり、支持板217の前端部は上板214の後端部に連なる。
支持板217には貫通孔217aが形成される。貫通孔217aは支持板217の前後方向および左右方向における中央部に配置され、支持板217の上面から下面まで上下に貫通する。
【0092】
ケース210には収容室216が形成される。
収容室216は本発明に係る収容室の実施の一形態である。本実施形態の収容室216は下板211、側板212L・212R、上板214、前板215および支持板217で囲まれる空間である。
収容室216は「収容室216の内周面」および「収容室216の底面」を有する。
より詳細には、下板211の上面のうち側板212L・212Rで挟まれる部分、側板212Lの右面、側板212Rの左面、上板214の下面および支持板217の下面を合わせたものは「収容室216の内周面」を成し、前板215の後面は「収容室216の底面」を成す。
また、収容室216はケース210の外部と連通する「収容室216の開口部」を有する。より詳細には、側板212L・212Rの後端部、支持板217の後端部、および下板211の上面において貫通孔211a・211bが形成される部分よりも後方となる部分、を合わせたものが「収容室216の開口部」の周縁部を成す。
【0093】
以下では、図10を用いて作動ピン220の詳細について説明する。
作動ピン220は本発明に係る移動部材の実施の一形態である。
本実施形態の作動ピン220は概ね上下方向に延びた棒状の部材であり、胴体棒221、第一当接ボール222および第二当接ボール223を備える。
【0094】
胴体棒221は作動ピン220の主たる構造体を成す部材である。本実施形態の胴体棒221は例えばステンレス鋼等の金属材料からなる丸棒(円柱形状の部材)であり、胴体棒221の一端部(上端部)および他端部(下端部)には雄ネジ(不図示)が形成される。
また、胴体棒221の外径はケース210の支持板217に形成される貫通孔217aよりも僅かに小さい。
【0095】
第一当接ボール222および第二当接ボール223はいずれもステンレス鋼等の金属材料からなる球状の部材である。第一当接ボール222および第二当接ボール223の直径は胴体棒221の外径よりも大きい。第一当接ボール222および第二当接ボール223にはそれぞれネジ穴(不図示)が形成される。
胴体棒221の一端部(上端部)が第一当接ボール222に形成されたネジ穴に螺装されることにより、第一当接ボール222は胴体棒221の一端部(上端部)に固定される。
胴体棒221の他端部(下端部)が第二当接ボール223に形成されたネジ穴に螺装されることにより、第二当接ボール223は胴体棒221の他端部(下端部)に固定される。
【0096】
作動ピン220は貫通孔217aに貫装される。その結果、作動ピン220は胴体棒221の外周面が貫通孔217aの内周面に当接した状態を保持しつつ、上下方向(作動ピン220がケース210から突出する方向およびケース210に没入する方向)に移動可能、かつケース210から脱落不能にケース210に支持される。
【0097】
作動ピン220がケース210に支持されているとき、第一当接ボール222は支持板217の上方に配置され、第二当接ボール223は支持板217の下方に配置される。
言い換えれば、作動ピン220がケース210に支持されているとき、第一当接ボール222、すなわち作動ピン220の一端部(上端部)はケース210からケース210の上方に突出している。また、第二当接ボール223、すなわち作動ピン220の他端部(下端部)は収容室216の開口部に配置された状態で保持される。
【0098】
なお、以下の説明では、「作動ピン220がケース210に対して正方向に移動する」とは「作動ピン220がケース210に対して上方に移動する」ことを指し、「作動ピン220がケース210に対して逆方向に移動する」とは「作動ピン220がケース210に対して下方に移動する」ことを指すものとする。
【0099】
以下では、主に図7、図8および図10を用いてスライダ240の詳細について説明する。
図7および図8に示すスライダ240は本発明に係るスライド部材の実施の一形態である。スライダ240は樹脂材料を一体成形することにより製造される。
スライダ240にはスライド側当接面241が形成される。スライド側当接面241は主当接面241aおよび導入当接面241bを合わせたものである。スライダ240の前面にはバネ受け穴242が形成される。スライダ240の後下部には嵌合突起243・244が形成される。
本実施形態のスライダ240の形状は図4に示すダンパー100におけるスライダ140と同じ形状であるため、スライダ240の形状については詳細な説明を省略する。
【0100】
図10に示す如く、スライダ240はケース210の収容室216に収容される。
スライダ240が収容室216に収容されたとき、スライダ240の外周面は収容室216の内周面に当接する。より詳細には、スライダ240の上面、下面、左面および右面はそれぞれ上板214の下面、下板211の上面、側板212Lの右面および側板212Rの左面に当接する。
その結果、スライダ240は前後方向に移動可能にケース210に支持される。より詳細には、収容室216に収容されたスライダ240がケース210に対して前後方向に移動することは可能であるが、収容室216に収容されたスライダ240がケース210に対して上下方向および左右方向に移動すること、ならびにケース210に対して回転することはできない。
【0101】
ここで、本実施形態では、収容室216に収容されたスライダ240がケース210に上下方向に移動可能に支持された作動ピン220に接近する方向(本実施形態では、後方)を「スライダ240の接近方向」と定義するとともに、収容室216に収容されたスライダ240がケース210に上下方向に移動可能に支持された作動ピン220から離間する方向(本実施形態では、前方)を「スライダ240の離間方向」と定義し、収容室216に収容されたスライダ240の移動についてはこれらの方向を用いて説明する。
すなわち、スライダ240は、収容室216の内周面に当接しつつ収容室216の開口部からケース210の外部に突出する方向に移動することにより「スライダ240の接近方向」に移動し、収容室216の内周面に当接しつつ収容室216の開口部から収容室216の内部に没入する方向に移動することにより「スライダ240の離間方向」に移動する。
【0102】
収容室216の内周面のうち、少なくともスライダ240のスライド側当接面241に対向する部分の反対側となる部分(本実施形態では、下板211の上面)には潤滑剤(例えば、グリス)が塗布される。
従って、スライダ240が収容室216に収容されたとき、スライダ240の下面と下板211の上面との当接部分(後で詳述するが、原稿圧着板3からの外力が作動ピン220に作用したとき、スライダ240において大きな力が作用する部分)における摩擦が潤滑剤により低減される。
【0103】
以下では、図10を用いてバネ250の詳細について説明する。
バネ250は本発明に係る付勢部材の実施の一形態である。
本実施形態のバネ250は金属材料からなる巻きバネであり、圧縮バネ(圧縮された状態で使用されるバネ)である。
図10に示す如く、バネ250はケース210の収容室216に収容される。
【0104】
収容室216に収容されたバネ250の一端部(前端部)は収容室216の底面(前板215の後面)に当接し、バネ250の他端部(後端部)はケース210の収容室216に収容されたスライダ240に当接する(より詳細には、スライダ240のバネ受け穴242に挿入されるとともにバネ受け穴242の底面に当接する)。
バネ250はスライダ240を収容室216の開口部からケース210の外部に突出する方向、すなわち「スライダ240の接近方向(後方)」に付勢し、スライダ240のスライド側当接面241を作動ピン220の第二当接ボール223の外周面(球面)に当接させる。
その結果、バネ250の付勢力(圧縮される方向に弾性変形したバネ250が元の形状に戻ろうとする力)はスライダ240を経て作動ピン220に伝達され、作動ピン220はケース210から上方に突出する方向に付勢される。
このように、バネ250は作動ピン220に正方向に移動する力を付与する。
【0105】
以下では主に図9および図10を用いて本体2に対して原稿圧着板3が閉じる(当接する)ときのダンパー200の挙動について説明する。
【0106】
図9の(a)に示す如く、本体2に対して原稿圧着板3が十分に開いており、本体2の上面の前端部から原稿圧着板3の下面の前端部までの距離が所定の距離(本実施形態の場合、図9の(b)における距離L2参照)よりも大きいとき、原稿圧着板3はアーム120に当接しない(作動ピン220から離間している)。
従って、本体2に対して原稿圧着板3が十分に開いているとき、原稿圧着板3からの外力(本実施形態の場合、原稿圧着板3の重量に基づいて原稿圧着板3が作動ピン220を下方に押す力)は作動ピン220に作用しない。
【0107】
図10の(a)に示す如く、原稿圧着板3が作動ピン220に当接しておらず、原稿圧着板3からの外力が作動ピン220に作用していないとき、スライダ240はバネ250の付勢力により「スライダ240の接近方向(後方)」に移動し、嵌合突起243・244が嵌合溝211e・211fの端面の後端部に当接する位置に配置される。
また、作動ピン220は第二当接ボール223の外周面がスライダ240のスライド側当接面241のうち導入当接面241bに当接する位置で保持される。
なお、原稿圧着板3が作動ピン220に当接しないとき、作動ピン220の一端部(第一当接ボール222)は本体2の上面よりも上方となる位置に配置される。
【0108】
図9の(b)に示す如く、本体2に対して原稿圧着板3が十分に開いている状態(図9の(a)に示す状態)から本体2に対して原稿圧着板3が閉じる方向に(左側面視で反時計回りに)自重で回動し、本体2の上面の前端部から原稿圧着板3の下面の前端部までの距離が減少して距離L2となったとき、原稿圧着板3の下面は作動ピン220の第一当接ボール222の外周面に当接する。
【0109】
図9の(b)に示す状態から本体2に対して原稿圧着板3が更に閉じる方向に回動し、本体2の上面の前端部から原稿圧着板3の下面の前端部までの距離が距離L2よりも小さくなったとき、原稿圧着板3からの外力が作動ピン220に作用し、原稿圧着板3の下面が第一当接ボール222の外周面に当接した状態を保持しつつ原稿圧着板3が作動ピン220を下方に押す。
その結果、作動ピン220はケース210に対して逆方向に(下方向に)移動する。
【0110】
原稿圧着板3からの外力が作動ピン220に作用することにより作動ピン220がケース210に対して逆方向に(下方向に)移動したとき、スライダ240のスライド側当接面241において第二当接ボール223の外周面に当接する部位9は導入当接面241bから主当接面241aに移動し(図10の(a)および(b)参照)、スライダ240は作動ピン220の第二当接ボール223に押されて「スライダ240の離間方向(前方)」に移動する。
その結果、バネ250は圧縮され(弾性変形し)、バネ250の付勢力、すなわちバネ250がスライダ240をスライダ240の接近方向(後方)に付勢する力は大きくなる。
このように、作動ピン220に作用した原稿圧着板3からの外力に係るエネルギー(原稿圧着板3の位置エネルギーおよび運動エネルギー)の一部がバネ250の弾性エネルギーに変換され、バネ250に蓄えられることにより、本体2に対して原稿圧着板3が自重で閉じる方向に回動する速度(角速度)は(仮にダンパー200をスキャナー1から取り除いた場合に比べて)緩められる。
【0111】
図9の(c)および図10の(b)に示す如く、本体2に対して原稿圧着板3が更に閉じる方向に回動し、原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接したとき、原稿圧着板3はそれ以上閉じる方向に回動することができずに停止し、本体2に対して原稿圧着板3が閉じた状態となる。
なお、原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接するときの本体2に対して原稿圧着板3が自重で閉じる方向に回動する速度(角速度)はダンパー200によって緩められているので、原稿圧着板3の下面が本体2の上面に当接するときの衝撃は(仮にダンパー200をスキャナー1から取り除いた場合に比べて)弱められる。
【0112】
以上の如くダンパー200を構成することにより、ダンパー200はダンパー100と同様の効果を奏する。
すなわち、ダンパー200の部品構成を従来のオイルダンパーの部品構成に比べて簡素にすることが可能である。
また、ダンパー200は、従来のバネを用いたショックアブソーバのうち「外力が作用する方向とバネの伸長収縮方向が平行となる(一致する)もの」に比べてバネ定数が小さいバネを用いて同等の効果(緩衝効果)を得ることが可能であり、バネの低コスト化、ひいてはダンパーの低コスト化に寄与する。
また、原稿圧着板3の下面が作動ピン220に当接するときの衝撃を弱め、ひいては原稿圧着板3の下面が作動ピン220に当接したときに原稿圧着板3がダンパー200に対してバウンドする(跳ね返る)ことを防止し、ダンパー200が原稿圧着板3を滑らかに受け止めることを可能としている。
【0113】
本実施形態では、作動ピン220が移動する方向である正方向および逆方向(上方向および下方向)はスライダ140が移動する方向である接近方向および離間方向(後方および前方)とは互いに垂直であるが、本発明はこれに限定されない。
すなわち、移動部材が移動する方向(正方向および逆方向)とスライド部材が移動する方向(接近方向および離間方向)とが異なっていれば(平行でなければ)良い。
ただし、付勢部材の付勢力を移動部材を逆方向に移動させる力(第二対象物からの外力)よりも小さくする観点からは、移動部材が移動する方向(正方向および逆方向)とスライド部材が移動する方向(接近方向および離間方向)との成す角度は概ね90°である(好ましくは、70°以上110°以下の範囲内である)ことが好ましい。
【符号の説明】
【0114】
1 スキャナー
2 本体(第一対象物)
3 原稿圧着板(第二対象物)
4 ヒンジ
100 ダンパー(第一実施形態)
110 ケース(固定部材)
120 アーム(回動部材)
123 カム部
130 回動ピン
140 スライダ(スライド部材)
141 スライド側当接面
141a 主当接面
141b 導入当接面
150 バネ(付勢部材)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一対象物に対して第二対象物が当接するときの衝撃を緩衝するダンパーであって、
前記第一対象物に固定される固定部材と、
カム部を備え、前記固定部材に対して正方向および逆方向に回動可能に連結される回動部材と、
前記回動部材に接近する方向である接近方向および前記回動部材から離間する方向である離間方向に移動可能に前記固定部材に支持されるスライド部材と、
一端部が前記固定部材に当接するとともに他端部が前記スライド部材に当接し、前記スライド部材を前記接近方向に付勢して前記スライド部材を前記カム部に当接させることにより、前記回動部材が前記固定部材に対して前記正方向に回動するように前記回動部材にトルクを付与する付勢部材と、
を具備し、
前記スライド部材には、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対して傾斜した面であって前記カム部に当接するスライド側当接面が形成される、
ダンパー。
【請求項2】
前記スライド側当接面のうち接近方向寄りの部分は主当接面を成し、
前記スライド側当接面のうち離間方向寄りの部分は前記主当接面に連なる導入当接面を成し、
前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記主当接面の傾斜角度は、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記導入当接面の傾斜角度よりも大きく、
前記第二対象物からの外力が前記回動部材に作用していないとき、前記カム部は前記スライド側当接面のうち前記導入当接面に当接し、
前記第二対象物からの外力が前記回動部材に作用することにより前記回動部材が前記逆方向に回動したとき、前記スライド側当接面において前記カム部に当接する部位は前記導入当接面から前記主当接面に移動し、前記スライド部材は前記離間方向に移動し、前記付勢部材が前記スライド部材を前記接近方向に付勢する力は大きくなる、
請求項1に記載のダンパー。
【請求項3】
前記固定部材には、底面および内周面を有するとともに外部と連通する開口部を有する空間であって前記スライド部材および前記付勢部材を収容する空間である収容室が形成され、
前記付勢部材の一端部は前記収容室の底面に当接し、
前記付勢部材の他端部は前記収容室に収容された前記スライド部材に当接し、
前記スライド部材は、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から外部に突出する方向に移動することにより前記接近方向に移動し、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から前記収容室の内部に没入する方向に移動することにより前記離間方向に移動する、
請求項1または請求項2に記載のダンパー。
【請求項4】
前記収容室の内周面のうち、前記スライド部材の前記スライド側当接面に対向する部分の反対側となる部分には潤滑剤が塗布される、
請求項3に記載の記載のダンパー。
【請求項5】
第一対象物に対して第二対象物が当接するときの衝撃を緩衝するダンパーであって、
前記第一対象物に固定される固定部材と、
前記固定部材から突出する正方向および前記固定部材に没入する逆方向に移動可能、かつ一端部が前記固定部材から突出した状態を保持可能に前記固定部材に支持される移動部材と、
前記正方向および逆方向とは異なる方向であって前記移動部材の他端部に接近する方向である接近方向、ならびに前記正方向および逆方向とは異なる方向であって前記移動部材の他端部から離間する方向である離間方向に移動可能に前記固定部材に支持されるスライド部材と、
一端部が前記固定部材に当接するとともに他端部が前記スライド部材に当接し、前記スライド部材を前記接近方向に付勢して前記スライド部材を前記移動部材の他端部に当接させることにより、前記移動部材に前記正方向に移動する力を付与する付勢部材と、
を具備し、
前記スライド部材には、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対して傾斜した面であって前記移動部材の他端部に当接するスライド側当接面が形成される、
ダンパー。
【請求項6】
前記スライド側当接面のうち接近方向寄りの部分は主当接面を成し、
前記スライド側当接面のうち離間方向寄りの部分は前記主当接面に連なる導入当接面を成し、
前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記主当接面の傾斜角度は、前記接近方向および前記離間方向に垂直な面に対する前記導入当接面の傾斜角度よりも大きく、
前記第二対象物からの外力が前記回動部材に作用していないとき、前記移動部材の他端部は前記スライド側当接面のうち前記導入当接面に当接し、
前記第二対象物からの外力が前記移動部材に作用することにより前記移動部材が前記逆方向に移動したとき、前記スライド側当接面において前記移動部材の他端部に当接する部位は前記導入当接面から前記主当接面に移動し、前記スライド部材は前記離間方向に移動し、前記付勢部材が前記スライド部材を前記接近方向に付勢する力は大きくなる、
請求項5に記載のダンパー。
【請求項7】
前記固定部材には、底面および内周面を有するとともに外部と連通する開口部を有する空間であって前記スライド部材および前記付勢部材を収容する空間である収容室が形成され、
前記固定部材は、前記移動部材の一端部が前記固定部材から突出するとともに前記移動部材の他端部が前記収容室の開口部に対向した状態を保持しつつ前記移動部材を前記正方向および逆方向に移動可能に支持する支持部を備え、
前記付勢部材の一端部は前記収容室の底面に当接し、
前記付勢部材の他端部は前記収容室に収容された前記スライド部材に当接し、
前記スライド部材は、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から外部に突出する方向に移動することにより前記接近方向に移動し、前記収容室の内周面に当接しつつ前記収容室の開口部から前記収容室の内部に没入する方向に移動することにより前記離間方向に移動する、
請求項5または請求項6に記載のダンパー。
【請求項8】
前記収容室の内周面のうち、前記スライド部材の前記スライド側当接面に対向する部分の反対側となる部分には潤滑剤が塗布される、
請求項7に記載の記載のダンパー。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【公開番号】特開2012−184806(P2012−184806A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−48241(P2011−48241)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(592264101)下西技研工業株式会社 (108)
【Fターム(参考)】