説明

ダンパ装置

【課題】部品点数の増加がなく組付けが容易なダンパ装置を提供する。
【解決手段】内部にオイルの封止空間Sが形成された本体ケース2と、一端側の軸部33を封止空間S内に配置したロータ3と、本体ケース2の内周面211から軸部33の外周面33aに当接する位置まで突出する突出壁25と、軸部33の外周から径方向外側に延出形成され、ロータ3の回転で回転中心軸X周りの角度位置が変化する壁部34とを備えるダンパ装置1において、本体ケース2の内周面211で規定される封止空間Sの外径を回転中心軸X周りの周方向で変化させて、壁部34の角度位置が所定範囲にあるときに、壁部34が本体ケース2の内周面211を摺動してロータ3の回転に負荷が与えられるようにし、軸部33の外周面33aにおいて、壁部34の角度位置が所定範囲外であるときに突出壁25に対向する位置に、突出壁25との当接を避ける凹部39を設けた構成とした。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、腰掛便器の便座や便蓋の回転軸に取り付けられて、便座や便蓋の開閉速度を調整するダンパ装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
腰掛便器の便座や便蓋の回転軸に取り付けられて、便座や便蓋の開閉速度を調整するダンパ装置には、ロータが時計回り方向に回転するときにダンパ効果を発揮するダンパ装置(右回転用ダンパ)と、ロータが反時計周り方向に回転するときにダンパ効果を発揮するダンパ装置(左回転用ダンパ)とがある。
【0003】
特許文献1には、内部に流体が封止される封止空間が形成される有底筒形状のケースと、ケースに対して相対回転可能に設けられて、ケース内で封止空間に配置される小径の軸部を備えたロータと、ケースの一端側開口を塞ぐと共にロータを回転可能に支持するキャップとを備えるダンパ装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開平10−318319号公報
【0005】
この従来例にかかるダンパ装置では、ロータの軸部に外挿して取り付けられて封止空間内に配置される筒状部材を備え、筒状部材をロータの軸部に取り付ける向きを変えることで、ロータが時計回り方向に回転するときにダンパ効果を発揮させるのか、反時計回り方向に回転するときにダンパ効果を発揮させるのかを決めることができる。
そのため、右回転用ダンパ装置と左回転用のダンパ装置の何れにも、共通のロータを利用できるようになっている。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、特許文献1のダンパ装置の場合、筒状部材をロータとは別に設けているので、部品点数の増加により部品コストが高くなる。さらに、筒状部材をロータに組み付ける工程が必要となるため、ダンパ装置の組み立てが複雑化して作業コストが増大してしまう。
そのため、部品点数の増加がなく、部品同士の組付けが容易なダンパ装置が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、内部に流体の封止空間が形成された本体ケースと、本体ケースで回転可能に支持されると共に、一端側の軸部を前記封止空間内に配置させたロータと、前記軸部の外周面から前記本体ケースの内周面に向けて突出すると共に、前記ロータの回転により、前記ロータの回転中心軸周りの角度位置が変化するロータ側突出壁と、前記封止空間内で前記本体ケースの内周面から前記軸部に当接する位置まで突出して、前記ロータの前記回転中心軸回りの周方向の回転可能範囲を規定するケース側突出壁と、を備えるダンパ装置において、
前記ダンパ装置が右回転用ダンパ装置である場合には、
前記ロータの他端側から見て、前記ケース側突出壁の周方向における右側を前記ロータ側突出壁の初期位置とし、前記本体ケースの内周面により規定される前記封止空間の外径は、前記ケース側突出壁の近傍が大径で前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が形成され、前記初期位置から周方向右に向かうにつれて小径とされて、前記ロータ側突出壁が前記本体ケースの内周面に圧入状態となるようにされ、
前記ダンパ装置が左回転用ダンパ装置である場合には、
前記側突出壁の周方向における左側を前記ロータ側突出壁の初期位置とし、前記封止空間の前記外径は、前記ケース側突出壁の近傍が大径で前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が形成され、前記初期位置から周方向左に向かうにつれて小径とされて、前記ロータ側突出壁が前記本体ケースの内周面に圧入状態となるようにされ、
前記ロータの前記軸部の外周面において、前記ロータが前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が形成される角度位置にあるときに前記ケース側突出壁に対向する位置に、前記ケース側突出壁との当接を避ける逃げ部を設けると共に、
前記軸部の断面形状を、回転中心軸を通り、当該回転中心軸から見て隣接する前記ロータ側突出壁の角度範囲を二等分する直線を挟んで対称に形成して、
前記ダンパ装置が右回転用ダンパ装置と左回転用ダンパ装置の何れの場合でも、前記ロータを、前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が存在する角度位置で前記本体ケースに組み付けたときに、かかる角度位置で、前記ケース側突出壁と前記軸部との間に隙間が存在するようにしたことを特徴とするダンパ装置とした。
【0008】
ロータの軸部を線対称としたため、右回転用と左回転用の何れのダンパ装置であっても、すなわちダンパ効果が発生する方向がどちらであっても、ロータを共通に使用できる。
このように構成すると、ダンパ効果を発揮させるための部品を別途用意する必要がないので、部品点数の増加によるコストの上昇を防止できる。さらに、部品点数が増加しないので、組付けが複雑になることがない。
さらに、ロータ側突出壁と本体ケースの内周面、そしてケース側突出壁と軸部とが互いに接していない角度位置で、ロータを本体ケースに容易に組み付けることができる。
【0009】
前記ロータは、前記本体ケースの外部で制御部材と連結される連結部を備え、前記連結部は前記軸部と一体に構成されるものとした。
【0010】
このように構成すると、軸部に連結部を連結させるための凹部を設ける必要がない。従来例のように軸部の内部に凹部を設けると軸部は凹部より太くする必要があるが、本発明に係るダンパ装置では、連結部と軸部と一体に構成したため、軸部を細くすることができる。また、軸部を細くすることでダンパ装置のサイズ(外径)を小さくすることができる。
【0011】
前記本体ケースは底部を有する筒状であり、前記底部には、前記ロータ側突出壁が前記初期位置にあるときに、前記ロータ側突出壁の周方向両側に跨る凹溝を備える構成とした。
【0012】
このように構成すると、ロータ側突出壁が初期位置にある場合、封止空間内に充填された液体は、ロータ側突出壁と本体ケースの内周面との間に設ける隙間と凹溝を通って、ロータ側突出壁を挟んで両側に位置する封止空間を行き来することができる。
このため、ロータ側突出壁と本体ケースの内周面との間に設ける隙間を小さくすることで本体ケースの厚みを薄くすることなく、初期位置でのダンパ効果を小さくすることができる。
【0013】
前記本体ケースおよび前記ロータは、樹脂材料から構成される構成とした。
【0014】
このように構成すると、本体ケースおよびロータの部品生産が容易になる。
本発明に係るダンパ装置では、ロータの角度位置が所定範囲であるときに、ケース側突出壁とロータの軸部、そしてロータ側突出壁と本体ケースの内周面とが互いに、所定の圧入しろを持って組み付けられた状態となる。
そのため、ダンパ装置の作動により封止空間内の圧力が高くなって本体ケースやロータに変形が生じた場合でも、圧しろの分だけ余裕があるので、ロータが、ケース側突出壁と軸部、そしてロータ側突出壁と本体ケースの内周面が互いに接する所定範囲にあるときに、これらの部品の間に大きな隙間が形成されることを防止できる。
よって、本体ケースとロータを樹脂材料で構成したことで、これらに多少の変形が生じたとしても、ダンパ効果が損なわれることがない。
【0015】
前記ロータ側突出壁は、前記回転中心軸の軸方向から見て、前記回転中心軸を通る直線上で、当該直線を挟んで対象となる形状で形成されており、
前記ロータ側突出壁には、前記回転中心軸周りの周方向で前記ロータ側突出壁を挟んで一方側の封止空間と、他方側の封止空間とを連通させる開口が設けられており、
前記ロータ側突出壁には、当該ロータ側突出壁の前記周方向における一方側の面に当接して前記開口を塞ぐ弁体が、前記周方向に移動可能に取り付けられている構成とした。
【0016】
このように構成すると、ロータ側突出壁は、回転中心軸周りの周方向における一方側と他方側とで同じ形状であるので、弁体をロータ側突出壁に取り付ける向きを変更するだけで、弁体が、回転中心軸周りの周方向における一方側と他方側の何れから開口を塞ぐのかを決めることができる。
これにより、弁体をロータ側突出壁に取り付ける向きで、ロータが回転中心軸周りの時計回り方向(右回り方向)に回転するときに開口が塞がれるようにすることも、反時計回り方向(左回り方向)に回転させるときに開口が塞がれるようにすることもできる。よって、ロータが時計回り方向に回転するときにダンパ効果を発揮するダンパ装置と、反時計回り方向に回転するときにダンパ効果を発揮するダンパ装置の何れにも、共通して利用できるロータおよび弁体となる。
【0017】
前記ロータの前記回転中心軸周りの回転可能範囲は、前記ロータに接続される制御部材の前記回転中心軸周りの回転可能範囲よりも広く設定されており、
前記逃げ部は、前記軸部の外周面において、前記ロータの角度位置が前記制御部材の回転可能範囲外にあるときに前記ケース側突出壁に対向する位置に設けられている構成とした。
【0018】
このように構成すると、突壁部と軸部の外周との間に隙間が生ずる位置が、制御部材の回転可能範囲外であるので、逃げ部を設けても、制御部材が回転するときにダンパ装置により付与されるダンパ効果が影響されない。
そのため、ダンパ効果により制御部材の回転に必要となるトルクの大きさの設計の自由度が高くなる。
【0019】
前記封止空間の前記外径は、前記ロータの回転可能範囲における一方側で狭くなるように設定されており、
前記逃げ部は、前記軸部の外周面において、前記ロータの角度位置が前記回転可能範囲の他方から前記一方側の前記ケース側突出壁が前記内周面を摺動する手前に達するまでに、前記ケース側突出壁が対向する範囲内に設けられている構成とした。
【0020】
このように構成すると、制御部材の回転可能範囲をロータの回転可能範囲まで大きくすることができる。
【発明の効果】
【0021】
本発明によれば、ロータを、右回転用のダンパ装置と左回転用のダンパ装置の何れにも共通して使用できる使用できるようにするために、別部材を必要としない。
よって、部品点数を増加させることなく、組付けが複雑になることがない。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】実施の形態にかかるダンパ装置の分解斜視図である。
【図2】実施の形態にかかるダンパ装置の断面図である。
【図3】実施の形態にかかるダンパ装置を説明する図である。
【図4】実施の形態にかかるダンパ装置の断面図である。
【図5】実施の形態にかかるダンパ装置の主要部を説明する図である。
【図6】実施の形態にかかるダンパ装置の動作範囲と、トルクとの関係を説明する図である。
【図7】実施の形態にかかるダンパ装置の動作説明図である。
【図8】実施の形態にかかるダンパ装置におけるロータの組込位置を説明する図である。
【図9】実施の形態にかかるダンパ装置におけるロータの組込位置を説明する図である。
【図10】第2の実施形態にかかるダンパ装置の断面図である。
【図11】第2の実施形態にかかるダンパ装置の動作範囲と、トルクとの関係を説明する図である。
【図12】第2の実施形態にかかるダンパ装置の動作説明図である。
【図13】第2の実施形態にかかるダンパ装置の変形例を説明する断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
本発明にかかるダンパ装置の第1の実施形態を説明する。
図1に示すダンパ装置1は、キャップ4側から見て、ロータ3が図中時計回り方向に回転する際にダンパ効果を発揮するようにされたダンパ装置であり、右回転用の本体ケース2を備える。
ダンパ装置1は、チェックバルブ6、6が取り付けられたロータ3を、本体ケース2に組み付けたのち、ワッシャ5を介在させて、キャップ4を本体ケース2に組み付けて形成される。
【0024】
図2に示すように、本体ケース2の本体部21は、有底円筒形状を有している。
本体部21の内側は、本体ケース2とロータ3とキャップ4とを組み付けた際に、内部にオイル(流体)が封止される封止空間Sとされる。
【0025】
底部22の中央部には、凹形状の軸受部23が形成されている。軸受部23は、底部22において封止空間Sから離れる方向に突出しており、後記するロータ3の突出部331が、この軸受部23で回転可能に支持される。
【0026】
底部22よりもキャップ4側に位置する本体部21の内周面211は、回転中心軸Xに沿って平行に延びており、封止空間Sの外周(外径)を規定している。
内周面211のキャップ4側に隣接する拡径部212は、内周面211よりも大きい径で形成されており、後記するロータ3のフランジ部32が内嵌している。
【0027】
図1から図3に示すように、本体部21の外周面21aには、回転中心軸Xに沿って延びるリブ24が、回転中心軸X周りの周方向で、3つ設けられている。
リブ24は、本体部21の外周面21aを、その長手方向(回転中心軸Xの軸方向)に沿って設けられている。この3つのリブ24のうちの2つが、回転中心軸Xからみて一方側(図3では下側)に位置しており、ダンパ装置1を取り付けるときの上下方向の向きが、リブ24の位置関係で判るようになっている。
【0028】
図3に示すように、本体部21の内周面211(211a、211b)には、径方向内側(回転中心軸X側)に突出する突出壁25が設けられている。突出壁25は、回転中心軸Xの軸方向に沿って、内周面211の全長に亘って設けられている。
突出壁25、25は、回転中心軸周りの周方向で、180°間隔(等間隔)で2つ設けられている。突出壁25は、径方向内側(回転中心軸X側)に向かうにつれて回転中心軸X周りの周方向の厚みが薄くなるように、回転中心軸Xを通る直線Lmに沿って設けられている。
この突出壁25、25は、回転中心軸Xの径方向から見ると、直線Lmを挟んで対象となる形状(周方向厚み)を有している。
【0029】
図4の(a)に示すように、突出壁25の先端25aは、後記するロータ3の軸部33の外周面33aが描く仮想円Im1よりも僅かに径方向内側(回転中心軸X側)に位置している。
そのため、ダンパ装置1が組み付けられた状態において、後記するロータ3の軸部33が突出壁25、25の間に軽圧入された状態となる。よって、ロータ3が回転する際には、突出壁25の先端25aが軸部33の外周面33aを摺動する。
【0030】
図2に示すように、ロータ3では、制御部材としての便座や便蓋の回転軸(図示せず)に連結される連結部31と、本体ケース2の拡径部212の内周面に全周に亘って当接するフランジ部32と、本体ケース2内の封止空間S内に配置される軸部33と、が軸方向に沿って設けられている。なお、連結部31は軸部33よりも大きな径となっている。
【0031】
ロータ3の連結部31は、本体ケース2に組み付けられたキャップ4の貫通穴41を貫通しており、先端側の二面幅部31aが、本体ケース2の外部に位置している。
連結部31の二面幅部31aは、連結部31の先端側において、ロータ3の回転中心軸Xを挟んで対称となる位置に、互いに平行となるように形成されている。
連結部31は、この二面幅部31aにより、便座や便蓋の回転軸(図示せず)に回り止め嵌合される。
【0032】
連結部31のフランジ部32側は、キャップ4の貫通穴41で回転可能に支持された被支持部31bとなっている。
この被支持部31bの外周面であって、キャップ4の径方向内側に位置する部分には、凹溝38が設けられている。凹溝38は、回転中心軸X周りの周方向で、被支持部31bの全周に亘って設けられている。
この凹溝38には、Oリング7が外嵌して取り付けられており、本体ケース2内に充填されるオイルが、キャップ4と連結部31との隙間から外部に漏出することを防止している。
【0033】
フランジ部32は、連結部31と軸部33との間に位置しており、回転中心軸X周りの周方向の全周に亘って径方向外側に延出している。このフランジ部32は、その外周面32aを、本体ケース2の開口側の拡径部212に全周に亘って嵌合させている。
【0034】
実施の形態では、ロータ3のフランジ部32を本体ケース2に内嵌させたのち、ステンレス製のワッシャ5をフランジ部32との間に介在させて、キャップ4を本体ケース2の一端側開口213に嵌合させると、本体ケース2内にオイルが充填される封止空間Sを備えるダンパ装置が形成される。
この際、キャップ4は、超音波溶着されながら本体ケース2に押し込まれるようになっている。これにより、封止空間S内のオイルが、本体ケース2とキャップ4との隙間から、ダンパ装置1の外部に漏出することを防止している。
この状態においてロータ3の軸部33は、封止空間S内に位置すると共に、その突出部331が、本体ケース2の断面凹形状の軸受部23で回転可能に支持されている。
【0035】
図2および図3に示すように、軸部33の外周面には、径方向外側に突出する壁部34が設けられている。壁部34は、回転中心軸Xに沿って軸部33の長手方向の全長に亘って設けられている。
壁部34は、回転中心軸X周りの周方向で、180°間隔(等間隔)で2つ設けられている。壁部34は、先端側(本体部21の内周面211側)に向かうにつれて、回転中心軸X周りの周方向の幅が狭くなるように、回転中心軸Xを通る直線Lnに沿って形成されている。この壁部34は、回転中心軸X周りの周方向で直線Lnを挟んで対象となる形状を有している。
【0036】
図4に示すように、壁部34は、本体ケース2の内周面211bに軽圧入される高さhを有している。
実施の形態のダンパ装置1では、本体部21内に形成される封止空間Sは、突出壁25、25により、2つの封止空間S1、S2に区画され、これらの封止空間S1、S2は、それぞれ壁部34によりさらに2つの空間S1a、S1b、S2a、S2bに区画されている。
そして、ロータ3(軸部)の回転により突出壁25の回転中心軸X周りの角度位置が変化すると、空間S1aおよびS1bと、空間S2aおよびS2bの容積が変化するようになっている。
この際、突出壁25の回転中心軸X回りの角度位置は変化しないので、ロータ3が回転しても、封止空間S1、S2の容積は変化しない。一方、ロータ3の壁部34の回転中心軸X回りの角度位置は変化するので、空間S1a、S2aの容積が大きくなると、これに伴って空間S1b、S2bの容積が小さくなり、空間S1a、S2aの容積が小さくなると、これに伴って空間S1b、S2bの容積が大きくなる。
【0037】
図2および図5に示すように、回転中心軸Xに沿って設けられた壁部34では、長手方向の略中間となる位置に、凹形状のオリフィス35が形成されている。
このオリフィス35の両側は、後記するチェックバルブ6の腕部62が係合して取り付けられる係合部36、36となっている。
【0038】
係合部36、36の本体ケース2側の端部36a、36aには、オリフィス35から離れる方向に突出して突部37が設けられている。
突部37、37は、図5の(b)に示すように、回転中心軸X周りの周方向で、係合部36、36の全長に亘って設けられており、後記するチェックバルブ6が係合部36、36から外れることを防止するために設けられている。
【0039】
チェックバルブ6は、オリフィス35を通って隣接する2つの空間S1aおよびS1b、S2aおよびS2bの間を移動するオイルの移動速度を調整する(図4の(b)参照)。
【0040】
図5に示すように、チェックバルブ6は、回転中心軸X周りの周方向から壁部34に当接してオリフィス35を閉鎖可能な板状の弁部61と、回転中心軸Xの軸方向で、弁部61の両端部から弁部61に対して直交する方向に突出する腕部62と、腕部62の先端から互いに対向する方向に延出形成された延出部62aと、腕部62、62から延びる板状の係止部63と、を備える。
【0041】
弁部61と延出部62aとは所定距離D1離間しており、チェックバルブ6は、平面視において略C字形状を有している。この離間距離D1は、壁部34の係合部36の回転中心軸X周りの周方向の幅D(図5の(b)参照)よりも大きくなっている。
そのため、チェックバルブ6は、係合部36に取り付けられた状態で、回転中心軸X周りの周方向に移動可能となっている。
【0042】
図5の(c)から(e)に示すように、腕部62の壁部34に載置される側の面(回転中心軸X側の下面)には、係止部63が設けられている。
係止部63は、延出部62aの延出方向と同じ方向に腕部62から延びており、弁部61と腕部62と延出部62aとに跨るように形成されている。
係止部63、63は、壁部34に取り付けられたチェックバルブ6が径方向外側に移動した際に、係合部36、36の突部37、37に当接して、チェックバルブ6の壁部34からの脱落が防止されるようになっている(図2参照)。
【0043】
本体ケース2の説明に戻って、図3に示すように、本体ケース2において、底部22の封止空間S側の面には、回転中心軸Xの軸方向から見て、長穴形状の凹溝22aが形成されている。
凹溝22aは、回転中心軸Xを通る仮想線L0を挟んで対称となる位置に設けられており、この仮想線L0に対して平行であって、仮想線L0からの距離が同じ位置にある仮想線L1、L2に沿って同じ長さWで形成されている。つまり、回転中心軸Xの軸方向から見て回転中心軸Xを回転中心とする点対称となっている。
凹溝22aは、突出壁25の近傍であって、ダンパ装置1のロータ3が、便座や便蓋を全開にする位置まで回転した際に、後記するロータ3の壁部34が位置する側に設けられている。
凹溝22aは、便座や便蓋を全開にする位置側において、空間S1aと空間S1bおよび空間S2aとS2bを連通させることで、ロータ3(便座や便蓋)を回転させるのに必要なトルクを小さくするために設けられている。
【0044】
図6は、ダンパ装置1におけるロータ3の角度位置と、ロータ3を回転させるのに必要なトルクと、本体ケース2の内周面211とロータ3の壁部34との間の隙間Aと、ロータ3の軸部33と本体ケース2の突出壁25との間の隙間Bとの関係を説明する図である。
なお、この図6において、隙間Aがゼロよりも小さい範囲では、ロータ3の壁部34が本体ケース2の内周面211に圧入された状態であり、隙間Bがゼロよりも小さい範囲では、本体ケース2の突出壁25がロータ3の軸部33に圧入された状態であることを示している。
図7は、ダンパ装置1の動作説明図である。
【0045】
実施の形態のダンパ装置1は、腰掛便器の便座や便蓋の回転軸に取り付けられて使用される。
その際にロータ3が回転可能な範囲(取付時のロータ回転可能範囲)は、図6に示すように、便座や便蓋が自立した状態となる角度位置(110°、図7の(a)の開位置参照)から、便座や便蓋で便器の開口部を閉じる角度位置(0°、図7の(d)の閉位置参照)までの範囲である。
【0046】
図4の(a)に示すように、本体部21の内周面211のうち、回転中心軸Xから、凹溝22aが設けられている側の内周面211aまでの距離r1は、凹部が設けられていない側の内周面211bまでの距離r2よりも、長くなっている。
ここで、内周面211aは、回転中心軸Xを中心とした仮想円Im4上に位置し、内周面211bは、仮想円Im4よりも径が小さい仮想円Im3上に位置している。そのため、封止空間Sが形成される内周面211の内径が、回転中心軸X周りの一方側と他方側とで異なっている。
【0047】
よって、実施の形態では、本体部21の内周面211のうち、便座や便蓋が開位置になるときにロータ3の壁部34が位置する側の所定範囲(内周面211aの範囲)において、壁部34の先端34aと内周面211aとの間に隙間が形成され、便座や便蓋が閉位置になるときにロータ3の壁部34が位置する側の所定範囲(内周面211b)において、壁部34の先端34aと内周面211bとの間に隙間が形成されないようになっている。
【0048】
そして、便座や便蓋が自立位置となる角度位置(θ=90°)よりも閉位置側(θ<90°)において、内周面211aと内周面211bとを接続するように、内径(回転中心軸Xからの距離)が周方向に沿って変化しており、この内径が変化している範囲では、壁部34の先端34aと内周面211aとの間の隙間も変化するようになっている。
【0049】
そのため、ロータ3が図7の(a)に示す開位置から時計回り方向に回転すると、壁部34の先端34aと内周面211bとの間の隙間は、自立位置(θ=90°、図7の(b)参照)を超えたのち、おおよそ80°から60°になるまでの範囲で徐々に狭くなる(図6参照)。また、壁部34が空間S1b、S2bの容積を小さくする方向に移動するため、空間S1b、S2bの圧力がS1a、S2aより高くなり、チェックバルブ6の弁部61が壁部34に当接してオリフィス35を閉鎖する。
そして、角度位置が開度θ=60°(図7の(c)参照)よりも小さくなると、隙間がゼロよりも小さくなって、ロータ3の壁部34が本体ケース2の内周面211に圧入された状態になる。つまり、壁部34の先端34aと内周面211bとの間をオイルが連通できなくなる。
これにより、便座や便蓋が閉状態となる角度(θ=0°)からおおよそ60°までの範囲で、ロータ3が回転する際に、壁部34(チェックバルブ6)の外周が本体部21の内周面211bを摺動することになり、かかる範囲において、空間S1bおよびS2bから空間S1a、S2aを連通可能なオイルの流路は、壁部34と底部22および壁部34とフランジ部32の間などに構成される微小な隙間のみとなる。このため、オイルが大きな流体抵抗を受けながらこの微小の隙間を流れることでダンパ効果が発揮される。また、摺動に起因するダンパ効果も発揮される。
なお、ロータ3が反時計回り方向に回転すると、壁部34が空間S1a、S2aの容積を小さくする方向に移動するため、空間S1a、S2aの圧力がS1b、Sbaより高くなり、チェックバルブ6の弁部61が壁部34から離間してオリフィス35を開放する。このため、オイルはこのオリフィス35を通って空間S1aおよびS2aから空間S1bおよびSba流れることができ、ダンパ効果が小さくなる。
【0050】
ここで、図6に示すように、ダンパ装置1が便座や便蓋の回転軸に取り付けられていないときのロータ3の回転可能範囲は、−10°から120°となっており、便座や便蓋の回転軸の回転可能範囲(取付時のロータ回転可能範囲)よりも広くなっている。
【0051】
そのため、ロータ3(軸部33)は、開位置側では、開位置よりもさらに反時計回り方向に回転して、閉位置からの回転角度が120°になるまで回転でき、閉位置側では、閉位置よりもさらに時計回り方向に回転して、閉位置からの回転角度が−10°になるまで回転できるようになっている。
【0052】
実施の形態のダンパ装置1の軸部33では、ロータ3の角度位置が、腰掛便器に用いられているときの開位置側の回転可能範囲外にあるときに突出壁25と接することになる範囲に、突出壁25との接触を避けるための凹部39bが設けられている(図8参照)。
ここで、本体部21において突出壁25は、回転中心軸X回りの周方向で180°間隔で設けられている。そのため、軸部33においても、回転中心軸X回りの周方向で180°間隔で、回転中心軸Xを挟んで対称となる位置に凹部39bが設けられている。
そして、凹部39bの回転中心軸X周りの周方向の幅は、突出壁25の先端25aの周方向の幅よりも狭くなっている。
【0053】
さらに軸部33において突出壁25を挟んで対称となる位置にも、凹部39bと同一形状の凹部39aが設けられている。
実施の形態のダンパ装置1では、右回転用の本体ケース2とは別に、左回転用の本体ケース2Aが用意されており、本体ケースを交換するだけで、他の部品(ロータ3、チェックバルブ6、キャップ4など)をそのまま使用して、ロータ3が反時計回り方向に回転する際にダンパ効果を発揮するダンパ装置に変更できるようになっている。
【0054】
そのため、凹部39aは、後記する回転用の本体ケース2Aにロータ3を挿入する際に、ロータ3の角度位置が本体ケース2Aにおける開位置側の回転可能範囲外にあるときに、突出壁25と接することになる範囲に設けられている。
【0055】
このように、凹部39(39a、39b)は、回転中心軸X周りに合計4つ設けられており、これらは、回転中心軸Xを挟んで対称(39aと39aおよび39bと39bが周方向で等間隔)となる位置に設けられている。
そのため、ロータ3の軸部33の軸方向から見た断面形状は、回転中心軸と壁部34の幅方向の中央を通る直線Lnに直交すると共に回転中心軸Xを通る仮想線L0(図3参照)を挟んで線対称の形状を有している。
【0056】
右回転用の本体ケース2の場合の説明に戻って、図8に示すように、ロータ3(軸部33)の角度位置が、便座や便蓋の開位置側の回転可能範囲外になると、突出壁25と軸部33の凹部39bとの回転中心軸X周りの角度位置が一致するので、突出壁25の先端25aと、軸部33の外周面33aとの間に、凹部39bに起因する隙間が確保される。
さらに、この状態において、壁部34(チェックバルブ6)の外周と、本体部21の内周面221aとの間に隙間が確保される。
【0057】
よって、ロータ3を本体ケース2に組み付ける場合には、図8に示すように、本体ケース2の突出壁25とロータ3の凹部39bとが、回転中心軸Xの軸方向から見て、開位置側で同じ角度位置となるようにして、ロータ3を本体ケース2に組み付けることで、ロータ3を本体ケース2に簡単に組み付けることができる。かかる角度位置が、図6におけるロータ組込位置となる。
【0058】
そして、この凹部39bの位置は、便座や便蓋の回転可能範囲外であるので、軸部33に凹部39bを設けて、突出壁25の先端25aと軸部33の外周面33aとの間に隙間が形成されるようにしても、ダンパ装置1が発揮するダンパ効果に影響が及ぶことがないようにされている。
【0059】
図9は、本体ケースが、左回転用の本体ケース2Aである場合のダンパ装置の断面図であり、ロータ3(軸部33)の角度位置が、便座や便蓋の回転可能範囲外(ロータ組込位置)である場合を説明する図である。
【0060】
前記したように、ロータ3の壁部34は、ロータ3の壁部34を回転中心軸Xの径方向から見ると、回転中心軸Xを通る直線Ln挟んで対称となる形状で形成されている。
よって、ロータ3は、チェックバルブ6を取り付ける向きを変えるだけで、ロータ3が右回転するときにチェックバルブ6によってオリフィス35を閉鎖してダンパ効果が発揮されるようにすることも、左回転するときにチェックバルブ6によってオリフィス35を閉鎖してダンパ効果が発揮されるようにすることもできる。
【0061】
前記したように、実施の形態のダンパ装置1では、右回転用の本体ケース2とは別に、左回転用の本体ケース2Aが用意されており、本体ケースを交換するだけで、他の部品(ロータ3、チェックバルブ6、キャップ4など)をそのまま使用して、ロータ3が反時計回り方向に回転する際にダンパ効果を発揮するダンパ装置に変更できるようになっている。
【0062】
図9に示すように、左回転用の本体ケース2Aの外周面には、回転中心軸に沿って延びるリブ24Aが、回転中心軸X周りの周方向で4つ設けられている。
この左回転用の本体ケース2Aは、リブ24Aの数が、前記した右回転用の本体ケース2と異なっており、本体ケースの外観で右回転用と左回転用の何れの本体ケースであるのかが判るようにされている。
また、リブ24が一体に設けられた本体ケース2を、右回転用と左回転用で別形状としたため、便座や便蓋が一定角度(開位置、閉位置など)における少なくとも1つのリブ24の位置を右回転用と左回転用で同じ位置に設けることができる。例えば、右回転用と左回転用の何れでも開位置で下方向に位置するリブ24を設けると、このリブ24を下向きにすることで閉状態の便座および便蓋にダンパ装置1を容易に取付けることができる。
【0063】
この本体ケース2Aでは、キャップ4側から見て、回転中心軸Xから内周面211(211a、211b)までの距離r3が、径方向内側に突出する突出壁25から反時計回り方向に離れるにつれて、短くなるように設定されている。すなわち、キャップ4側から見た場合、本体ケース2Aの内周面211(211a、211b)により規定される封止空間Sの外径が、突出壁25から回転中心軸X周りに反時計回り方向に離れるにつれて、小さくなるように形成されている。
【0064】
これに対して、前記した本体ケース2の場合、キャップ4側から見た場合の本体部21の内周面211(211a、211b)は、突出壁25から回転中心軸X周りに時計回り方向に離れるにつれて、本体ケース2の内周面221(211a、211b)により規定される封止空間Sの外径が小さくなるように形成されている(図8参照)。
そのため、この本体ケース2Aを使用したダンパ装置(図9)の場合には、ロータ3が反時計回り方向に回転する際にダンパ効果を発揮されることになる。
【0065】
ここで、ロータ3の軸部33では、壁部34を挟む両側に凹部39(39a、39b)が設けられている。そのため、チェックバルブ6を取り付ける向きを逆にしても、ロータ3が、閉位置側では、便座や便蓋で便器の開口部を閉じる角度位置(閉位置:0°)を基準として、さらに反時計周り方向に回転して、閉位置からの回転角度が−10°まで回転でき、開位置側では、開位置よりもさらに時計回り方向に回転して、閉位置からの回転角度が120°になるまで回転できるようになっている。
【0066】
実施の形態のダンパ装置1の軸部33では、左回転用の本体ケース2Aの場合に、ロータ3の角度位置が、腰掛便器に用いられているときの開位置側の回転可能範囲外にあるときに突出壁25と接することになる範囲に、突出壁25との接触を避けるための凹部39aが設けられている(図8参照)。
【0067】
よって、ロータ3を本体ケース2Aに組み付ける場合には、図9に示すように、本体ケース2Aの突出壁25とロータ3の凹部39aとが、回転中心軸Xの軸方向から見て、開位置側で同じ角度位置となるようにして、ロータ3を本体ケース2Aに組み付けることで、ロータ3を本体ケース2Aに簡単に組み付けることができる。かかる角度位置が、図6におけるロータ組込位置となる。
そして、この凹部39aの位置は、便座や便蓋の回転可能範囲外であるので、軸部33に凹部39aを設けて、突出壁25の先端25aと軸部33の外周面33aとの間に隙間が形成されるようにしても、ダンパ装置1が発揮するダンパ効果に影響が及ぶことがないようにされている。
【0068】
以上の通り、第1の実施形態では、腰掛便器の便座や便蓋の回転軸(制御部材)に取り付けられて、便座や便蓋の開閉速度を調整するダンパ装置であって、
内部にオイルの封止空間Sが形成された本体ケース2と、本体ケース2で回転可能に支持されると共に、一端側の軸部33を封止空間S内に配置させたロータ3と、
軸部33の外周面から本体ケース2の内周面に向けて突出すると共に、ロータ3の回転により、ロータの回転中心軸X回りの角度位置が変化する壁部34(ロータ側突出壁)と、
封止空間S内で本体ケース2の内周面211から軸部33の外周面33aに当接する位置まで突出して、ロータ3の回転中心軸回りの周方向の回転可能範囲を規定する突出壁25(ケース側突出壁)と、を備え、
本体ケース2の本体部21において、本体ケース2の内周面211により規定される封止空間Sの外径を、回転中心軸X周りの周方向における一方側(内周面211a)と他方側(内周面211b側)とで異ならせて、壁部34の回転中心軸X周りの角度位置が内周面211b側の所定範囲(0°〜60°)にあるときに、壁部34が内周面211bを摺動してロータ3の回転に負荷が与えられるようにし、ロータ3の軸部33の外周面33aに突出壁25との当接を避ける逃げ部(凹部39(39a、39b)を設けると共に、外周面33aにおける凹部39の位置を、ロータ3が壁部34と本体ケース2の内周面との間に隙間が形成される角度位置にあるときに、本体ケース2の突出壁25に対向する位置とし、軸部33の断面形状を、回転中心軸Xを通り、隣接する壁部34の突出方向を二分する直線を挟んで対称(回転中心軸から見て、回転中心軸X周りの周方向で隣接する壁部34、34の角度範囲を二等分する直線を挟んで対称)に形成して、ダンパ装置が右回転用ダンパ装置と左回転用のダンパ装置の何れの場合でも、ロータ3を、壁部34と本体ケース2の内周面との間に隙間が存在する角度位置で本体ケース2に組み付けたときに、かかる角度位置で、突出壁25と軸部33との間に隙間が存在するようにした構成のダンパ装置とした。
【0069】
このように構成すると、ダンパ効果を発揮させるための部品を別途用意する必要がないので、部品点数の増加によるコストの上昇を防止できる。さらに、部品点数が増加しないので、組付けが複雑になることがない。
さらに、回転中心軸の軸方向から見て、ロータ3の凹部39と本体ケース2の突出壁25とが一致する角度位置(ロータ組込位置)で、ロータ3を本体ケース2に組み付けると、かかる角度位置では、少なくとも突出壁25と軸部33とが互いに接していないので、ロータを本体ケースに容易に組み付けることができる。
また、回転中心軸回りの周方向で隣り合う壁部34(ロータ側突出壁)の間の軸部33の外周面33aの断面形状が、回転中心軸Xから見て壁部34と壁部34が成す角度の二等分線(図3における仮想線L0)を対称軸として線対称となっている、すなわち、ロータの軸部の断面形状を線対称としたため、右回転用と左回転用の何れのダンパ装置であっても、すなわちダンパ効果が発生する方向がどちらであっても、ロータを共通に使用できる。
【0070】
実施の形態では、壁部34が回転中心軸X周りの周方向で180度間隔で設けられている場合を例示したが、壁部34がひとつのみ設けられているロータの場合には、回転中心軸Xを通り壁部34の周方向における中央部を径方向外側に向けて延びる直線(図3における仮想線Ln)を対称軸として線対称であることが好ましい。
【0071】
ロータ3は、本体ケース2の外部で制御部材(便座や便蓋の回動軸)と連結される連結部31を備え、この連結部31は軸部33と一体に構成される構成とした。
【0072】
従来のダンパ装置のロータでは、ロータを反転させて使用する必要があるために、軸部と連結部とを別体に構成すると共に、例えば軸部の端部に有底筒形状の凹部を設けて、この凹部に、連結部の一端側を軸方向から嵌合させて、ロータを構成していた。
このように、軸部の内部に凹部を設ける場合には、軸部の径が連結部の径よりも必然的に大きくなる(軸部が太くなってしまう)。本発明にかかるダンパ装置1の場合、軸部と連結部とが一体に構成されているので、従来のものに比べて、軸部33の径を小さくする(軸部を細くする)ことができる。よって、軸部33が細くなった分だけ、ダンパ装置1のサイズ(外径)も小さくすることができる。
【0073】
さらに、本体ケース2は底部22を有する筒状であり、底部22には、壁部34(ロータ側突出壁)が初期位置(図6、ロータ組込位置)にあるときに、壁部34の周方向両側に跨る凹溝22aが設けられており、壁部34を挟んで回転中心軸X回りの周方向における一方側の空間S1aと他方側の空間S1bとが、凹溝22aを介して連通するように構成した。
【0074】
このように構成すると、壁部34が初期位置側にある場合、封止空間S内に充填された液体は、壁部34(ロータ側突出壁)と本体ケース2の内周面221との間に設ける隙間と凹溝22aを通って、壁部34を挟んで両側に位置する空間S1a、S1bの間を行き来することができる。そのため、初期位置近傍でのダンパ効果を小さくするために、壁部34(ロータ側突出壁)と本体ケース2の内周面221との間に設ける隙間を広くする必要がない。よって、本体ケース2の厚みを薄くすることなく、初期位置近傍でのダンパ効果を小さくすることができるので、本体ケース2の厚みが薄くなることによる本体ケース2の強度低下が生ずる虞もない。
【0075】
また、本体ケース2およびロータ3は、樹脂材料から構成される構成としたので、本体ケース2およびロータ3の部品生産が容易になる。
【0076】
壁部34は、回転中心軸Xの軸方向から見て、回転中心軸Xを通る直線Ln上で、当該直線Lnを挟んで対象となる形状で形成されており、
壁部34には、回転中心軸X周りの周方向で壁部34を挟んで一方側の封止空間S1a、S2aと、他方側の封止空間S1b、S2bとを連通させるオリフィス35(開口)が設けられており、壁部34には、壁部34の前記周方向における一方側の面に当接して開口を塞ぐチェックバルブ6が、前記周方向に移動可能に取り付けられている構成とした。
【0077】
このように構成すると、壁部34は、回転中心軸X周りの周方向における一方側と他方側とで同じ形状であるので、チェックバルブ6を壁部34に取り付ける向きを変更するだけで、弁体が、回転中心軸周りの周方向における一方側と他方側の何れからオリフィス35を塞ぐのかを決めることができる。
これにより、チェックバルブ6を壁部34に取り付ける向きで、ロータ3が回転中心軸X周りの時計回り方向に回転するときにオリフィス35が塞がれるようにすることも、反時計回り方向に回転させるときにオリフィス35が塞がれるようにすることもできる。よって、ロータ3が時計回り方向に回転するときにダンパ効果を発揮するダンパ装置と、反時計回り方向に回転するときにダンパ効果を発揮するダンパ装置の何れにも、共通して利用できるロータおよび弁体となる。
【0078】
さらに、ロータ3の回転中心軸X周りの回転可能範囲は、ロータ3に接続される制御部材(腰掛便器の便座や便蓋の回転軸)の回転中心軸X周りの回転可能範囲よりも広く設定されており、凹部39は、軸部33の外周面において、ロータ3の角度位置が制御部材の回転可能範囲外にあるときに突出壁25に対向する位置に設けられている構成とした。
【0079】
このように構成すると、突出壁25と軸部33の外周面33aとの間に隙間が生ずる位置が、制御部材の回転可能範囲外であるので、凹部39を設けても、制御部材が回転するときにダンパ装置により付与されるダンパ効果が影響されない。
そのため、ダンパ効果により制御部材の回転に必要となるトルクの大きさの設計の自由度が高くなる。
【0080】
第2の実施形態にかかるダンパ装置を説明する
図10は、第2の実施形態にかかるダンパ装置の断面図である。
図11は、ダンパ装置100におけるロータ3の角度位置と、ロータ3を回転させるのに必要なトルクと、本体ケース2の内周面211とロータ3の壁部34との間の隙間Aと、ロータ3の軸部33Aと本体ケース2の突出壁25との間の隙間Bとの関係を説明する図である。
なお、この図11において、隙間Aがゼロよりも小さい範囲では、ロータ3の壁部34が本体ケース2の内周面211に圧入された状態であり、隙間Bがゼロよりも小さい範囲では、本体ケース2の突出壁25がロータ3の軸部33Aに圧入された状態であることを示している。
図12は、ダンパ装置100の動作説明図である。
【0081】
図10に示すように、第2の実施形態にかかるダンパ装置100では、ロータ3の軸部33Aの断面形状が、前記した第1の実施形態のロータ3の軸部33と異なっている。
【0082】
軸部33Aの外周面には、径方向外側に突出する壁部34が設けられている。壁部34は、回転中心軸X周りの周方向で、180°間隔で2つ設けられており、各々回転中心軸Xを通る直線Lnに沿って形成されている。
この軸部33Aでは、壁部34と壁部34との略中間部分における外周面に、本体部21から径方向内側に突出する突出壁25との接触を避けるための平面部332が設けられている。
平面部332は、回転中心軸Xを通る直線Lnに対して平行であって、仮想線L0からの距離が同じ位置にある直線Ln1、Ln2に沿って同じ長さW2で形成されている。
【0083】
図11に示すように、このダンパ装置100では、便座や便蓋に取り付けたときの回転可能範囲(取付時の回転可能範囲)が0°から110°となっており、この回転可能範囲の中間となる角度55°を挟んで、おおよそ45°から65°までの範囲で、本体部21の突出壁25と、ロータ3の軸部33の外周面との間に隙間が形成されるようになっている。
【0084】
具体的には、ロータ3が、図12の(a)に示す角度位置(開位置θ=110°)から便座や便蓋を開く方向(時計回り方向)に回転すると、便座や便蓋の角度位置が、閉位置(θ=0°、図12(d)参照)を基準としておおよそ65°から45°となる範囲で、で突出壁25の先端25aと軸部33Aの外周との間に平面部332に起因する隙間が形成される。
【0085】
そして、45°よりも小さくなった後は、隙間がなくなって、突出壁25の先端25aが軸部33Aの外周を摺動することになり、かかる範囲において、摺動に起因するダンパ効果が発揮される。
【0086】
よって、ロータ3を本体ケース2に組み付ける場合には、図10に示すように、本体ケース2の突出壁25とロータ3の平面部332とが、回転中心軸Xの軸方向から見て同じ角度位置となるようにして、ロータ3を本体ケース2に組み付けることで、ロータ3を本体ケース2に簡単に組み付けることができる。
【0087】
そして、この平面部332の位置は、ダンパ効果が必要とされる範囲外であるので、軸部33に平面部332を設けて、突出壁25の先端25aと軸部33Aとの間に隙間が形成されるようにしても、ダンパ装置1が発揮するダンパ効果に影響が及ぶことがないようにされている。ここで、図10の角度位置が、図11におけるロータ組込位置となる。
【0088】
以上の通り、第2の実施形態では、腰掛便器の便座や便蓋の回転軸に取り付けられて、便座や便蓋の開閉速度を調整するダンパ装置100であって、
内部にオイルの封止空間Sが形成された本体ケース2と、本体ケース2で回転可能に支持されると共に、一端側の軸部33Aを封止空間S内に配置させたロータ3と、
封止空間S内で本体ケース2の内周面211から軸部33Aの外周面33aに当接する位置まで突出する突出壁25と、軸部33の外周面から径方向外側に延出形成されると共に、ロータ3の回転により、ロータ3の回転中心軸X周りの角度位置が変化する壁部34と、を備え、本体ケース2の本体部21において、本体ケース2の内周面211により規定される封止空間Sの外径を、回転中心軸X周りの周方向における一方側(内周面211a)と他方側(内周面211b側)とで異ならせて、壁部34の回転中心軸X周りの角度位置が内周面211b側の所定範囲にあるときに、壁部34が内周面211bを摺動してロータ3の回転に負荷が与えられるようにし、ロータ3の軸部33の外周面33aに突出壁25との当接を避ける平面部332(逃げ部)を設けると共に、外周面33aにおける平面部332の位置を、ロータ3の角度位置が回転可能範囲の一方側(内周面211a)から、壁部34が他方側の内周面211bを摺動する手前に達するまでに、突出壁25が対向する範囲内とした構成のダンパ装置とした。
【0089】
このように構成すると、ダンパ効果を発揮させるための部品を別途用意する必要がないので、部品点数の増加によるコストの上昇を防止できる。さらに、部品点数が増加しないので、組付けが複雑になることがない。
さらに、回転中心軸Xの軸方向から見て、ロータ3の平面部332と本体ケース2の突出壁25とが一致する角度位置(ロータ組込位置)で、ロータ3を本体ケース2に組み付けると、かかる角度位置では、少なくとも突出壁25と軸部33Aとが互いに接していないので、ロータ3を本体ケース2に容易に組み付けることができる。
さらに、便座や便蓋の回転軸(制御部材)の回転可能範囲をロータ3の回転可能範囲まで大きくすることができる。
【0090】
図13は、変形例にかかるロータ3の軸部33Bの断面形状を説明する図である。
前記した第2の実施形態では、ロータ3の軸部33Aの外周面に、突出壁25との接触を避けるための平面部332が設けられている場合を例示した。
しかし、突出壁25との接触を避けることができる形状であれば、種々の形状が採用可能である。
【0091】
例えば、図13の(a)、(b)に示すように、平面部332(図10参照)の代わりに湾曲凹部333が形成された軸部33Bとしても良い。
この湾曲凹部333は、軸部33Bの外周面から回転中心軸X側に窪むように形成されている。この湾曲凹部333の回転中心軸X周りの周方向の幅(角度範囲θx)は、突出壁25の先端25aよりも僅かに広い幅で形成されている。そのため、ロータ3の角度位置が、湾曲凹部333と突出壁25とを対向させる角度位置(ロータ組込位置)(図13の(b)参照)を外れるとすぐに、軸部33Bの外周面33aに突出壁25が当接するようになっている。
【0092】
かかる場合、ロータ3の回転可能範囲内(図11における取付時のロータ回転可能範囲)において、ロータ3の軸部33Bと突出壁25との間に隙間が形成される角度範囲を、図10の平面部332の場合の角度範囲θyよりも狭くすることができる。
そうすると、ダンパ効果の発揮において、かかる隙間が影響することをより好適に防止できると共に、ダンパ効果を発揮させる範囲を、図10の平面部332の場合よりもより広く取ることが可能になる。すなわち、ダンパ装置の設計の自由度が向上する。
【0093】
なお、図13の(c)に示すように、回転中心軸X側に平面部334aを有する湾曲凹部334としても良い。
かかる場合、ロータ3の角度位置が、湾曲凹部333と突出壁25とを対向させる角度位置(ロータ組込位置)になったときに、ロータ3の軸部33Bと突出壁25との間に形成される隙間を、より狭くすることができる。
そうすると、ダンパ効果の発揮において、かかる隙間が影響することをいっそう好適に防止できることになる。
【符号の説明】
【0094】
1 ダンパ装置
2 本体ケース
2A 本体ケース
3 ロータ
4 キャップ
5 ワッシャ
6 チェックバルブ
7 Oリング
21 本体部
21a 外周面
22 底部
22a 凹溝
23 軸受部
24 リブ
24A リブ
25 突出壁
25a 先端
31 連結部
31a 二面幅部
31b 被支持部
32 フランジ部
32a 外周面
33 軸部
33A 軸部
33B 軸部
33a 外周面
331 突出部
34 壁部
34a 先端
35 オリフィス
36 係合部
36a 端部
37 突部
38 凹溝
39 凹部
41 貫通穴
61 弁部
62 腕部
62a 延出部
63 係止部
100 ダンパ装置
211 内周面
211a 内周面
211b 内周面
212 拡径部
332 平面部
333、334 湾曲凹部
333a 平面部
S 封止空間
X 回転中心軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
内部に流体の封止空間が形成された本体ケースと、
本体ケースで回転可能に支持されると共に、一端側の軸部を前記封止空間内に配置させたロータと、
前記軸部の外周面から前記本体ケースの内周面に向けて突出すると共に、前記ロータの回転により、前記ロータの回転中心軸周りの角度位置が変化するロータ側突出壁と、
前記封止空間内で前記本体ケースの内周面から前記軸部に当接する位置まで突出して、前記ロータの前記回転中心軸回りの周方向の回転可能範囲を規定するケース側突出壁と、を備えるダンパ装置において、
前記ダンパ装置が右回転用ダンパ装置である場合には、
前記ロータの他端側から見て、前記ケース側突出壁の周方向における右側を前記ロータ側突出壁の初期位置とし、前記本体ケースの内周面により規定される前記封止空間の外径は、前記ケース側突出壁の近傍が大径で前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が形成され、前記初期位置から周方向右に向かうにつれて小径とされて、前記ロータ側突出壁が前記本体ケースの内周面に圧入状態となるようにされ、
前記ダンパ装置が左回転用ダンパ装置である場合には、
前記ケース側突出壁の周方向における左側を前記ロータ側突出壁の初期位置とし、前記封止空間の前記外径は、前記ケース側突出壁の近傍が大径で前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が形成され、前記初期位置から周方向左に向かうにつれて小径とされて、前記ロータ側突出壁が前記本体ケースの内周面に圧入状態となるようにされ、
前記ロータの前記軸部の外周面において、前記ロータが前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が形成される角度位置にあるときに前記ケース側突出壁に対向する位置に、前記ケース側突出壁との当接を避ける逃げ部を設けると共に、
前記軸部の断面形状を、回転中心軸を通り、当該回転中心軸から見て隣接する前記ロータ側突出壁の角度範囲を二等分する直線を挟んで対称に形成して、
前記ダンパ装置が右回転用ダンパ装置と左回転用ダンパ装置の何れの場合でも、前記ロータを、前記ロータ側突出壁と前記本体ケースの内周面との間に隙間が存在する角度位置で前記本体ケースに組み付けたときに、かかる角度位置で、前記ケース側突出壁と前記軸部との間に隙間が存在するようにしたことを特徴とするダンパ装置。
【請求項2】
前記ロータは、前記本体ケースの外部で制御部材と連結される連結部を備え、該連結部は前記軸部と一体に構成されることを特徴とする請求項1に記載のダンパ装置。
【請求項3】
前記本体ケースは底部を有する筒状であり、前記底部には、前記ロータ側突出壁が前記初期位置にあるときに、前記ロータ側突出壁の周方向両側に跨る凹溝を備えることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のダンパ装置。
【請求項4】
前記本体ケースおよび前記ロータは、樹脂材料から構成されることを特徴とする請求項1から請求項3の何れか一項に記載のダンパ装置。
【請求項5】
前記ロータ側突出壁は、前記回転中心軸の軸方向から見て、前記回転中心軸を通る直線上で、当該直線を挟んで対象となる形状で形成されており、
前記ロータ側突出壁には、前記回転中心軸周りの周方向で前記ロータ側突出壁を挟んで一方側の封止空間と、他方側の封止空間とを連通させる開口が設けられており、
前記ロータ側突出壁には、当該ロータ側突出壁の前記周方向における一方側の面に当接して前記開口を塞ぐ弁体が、前記周方向に移動可能に取り付けられていることを特徴とする請求項1から請求項4の何れか一項に記載のダンパ装置。
【請求項6】
前記ロータの前記回転中心軸周りの回転可能範囲は、前記ロータに接続される制御部材の前記回転中心軸周りの回転可能範囲よりも広く設定されており、
前記逃げ部は、前記軸部の外周面において、前記ロータの角度位置が前記制御部材の回転可能範囲外にあるときに前記ケース側突出壁に対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項1から請求項5の何れか一項に記載のダンパ装置。
【請求項7】
前記封止空間の前記外径は、前記ロータの回転可能範囲における一方側で狭くなるように設定されており、
前記逃げ部は、前記軸部の外周面において、前記ロータの角度位置が前記回転可能範囲の他方から前記一方側の前記ケース側突出壁が前記内周面を摺動する手前に達するまでに、前記ケース側突出壁が対向する範囲内に設けられていることを特徴とする請求項1から5の何れか一項に記載のダンパ装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11】
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【図12】
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【図13】
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【公開番号】特開2012−211628(P2012−211628A)
【公開日】平成24年11月1日(2012.11.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−77053(P2011−77053)
【出願日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(000002233)日本電産サンキョー株式会社 (1,337)
【Fターム(参考)】