説明

ダンプトラックの荷台加熱機構

【課題】排気ガスの熱を利用しなくても荷台に積荷が付着することを抑制すると共に、荷台の重量が増加することを抑えることができるダンプトラックの荷台加熱機構の提供。
【解決手段】起伏可能に設けられた荷台1と、制動時に動作させる発電機11と、この発電機11に接続された抵抗器とを有し、発電機11の回生起電力を抵抗器によって消費することで制動力を得る電気駆動式のダンプトラック1Aに備えられ、荷台1を加熱する荷台加熱手段を有するダンプトラック1Aの荷台加熱機構において、荷台加熱手段は、荷台1に設けられた電熱線13を含み、この電熱線13は、抵抗器の一部から構成される。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、起伏可能に設けられた荷台を有し、土砂等を運搬するダンプトラックの荷台加熱機構に関する。
【背景技術】
【0002】
図1、図2、図5は従来のダンプトラックの荷台加熱機構の構成を示す図である。
【0003】
一般的に、建設機械用のダンプトラックは、図1に示すようにフレーム2と、このフレーム2の前部の左右両端に回転可能にそれぞれ一輪ずつ設けられた前輪21と、フレーム2の後部の左右両端に回転可能にそれぞれ二輪ずつ設けられた一対の後輪22と、フレーム2上に起伏可能に設けられ、土砂や砕石等の積荷を積載する荷台1とを備えている。
【0004】
具体的には、ダンプトラックは、フレーム2の後部に設けられたヒンジピン4と、フレーム2のうちヒンジピン4よりも前方に配置され、フレーム2と荷台1とを連結するホイストシリンダ3とを備え、ホイストシリンダ3が伸長することにより、荷台1を押し上げて起立させると共に、ホイストシリンダ3が収縮することにより、荷台1を支持しながら倒伏させるようになっている。
【0005】
従って、ダンプトラックは、倒伏状態において荷台1に積載された土砂や砕石等の積荷を運搬した後、荷台1を倒伏状態から起立状態へ移行させることにより、荷台1を傾斜させて積荷を降ろしている。なお、荷台1の下部には、図2に示すように荷台1が倒伏する際にフレーム2から受ける衝撃を和らげる緩衝部材、パッド5が設けられている。
【0006】
ここで、ダンプトラックの荷台1に積載された土砂や砕石等の積荷は水分を含んでいることが多く、特に寒冷地や冬場においてダンプトラックで運搬作業を行う場合には、積荷に含まれる水分が凍結することにより、積荷の一部が荷台1の内壁面に付着して作業効率が低下することが問題となっていた。
【0007】
そこで、ダンプトラックの荷台1に積荷が付着することを防止するために、荷台1を加熱する荷台加熱手段を有する荷台加熱機構を備えているダンプトラックが提案されている。例えば、この種のダンプトラックの荷台加熱機構の従来技術の1つとして、荷台加熱手段としてエンジンからの排気により荷台1を加熱する車輌用排気システムが知られている(例えば、特許文献1参照)。
【0008】
具体的には、特許文献1に開示された従来技術のダンプトラックの荷台加熱機構は、図5に示すように荷台1の下部に設けられ、エンジン9から排出される排気ガス30を流通させる排気ガス通路6と、この排気ガス通路6とエンジン9とを連結し、エンジン9から排出される排気ガス30を排気ガス通路6へ導くダクト8と、排気ガス通路6から排気ガス30を外部へ放出する排気ガス出口7とを備え、排気ガス30を排気ガス通路6に流通させることによって排気ガス30の熱で荷台1を加熱し、水分を含む積荷が氷着することを防止するようになっている。特に、荷台1の内側底部の角部に積荷が付着し易いので、排気ガス通路6は荷台1の下部の縁に沿って配設されている。
【0009】
しかし、エンジン9から排出される排気ガス30は高温なので、荷台1に設けられた排気ガス通路6に排気ガス30を流通させて荷台1を加熱した場合には、排気ガス30の熱によって荷台1の外壁の表面温度が高くなる。そのため、荷台1の表面の塗装が熱で変色することが問題となっていた。さらに、荷台1に設けられたパッド5が熱によって劣化するので、パッド5の緩衝性能及び耐久性の低下を引き起こすことが懸念されていた。
【0010】
そこで、排気ガス通路6を流通する排気ガス30の熱の伝達を抑え、パッド5の熱劣化を防止するために、フレーム2と、このフレーム2上に起伏自在に設けられた荷台1と、荷台1に設けられ、エンジン9からの排気ガス30が流通する排気ガス通路6と、荷台1をフレーム2上にパッド5を介して支持させ、パッド5とこれに対応した位置の排気ガス通路6との間に設けられた空気室とを備えたダンプトラックが提案されている(例えば、特許文献2参照)。
【0011】
ここで、特に超大型のダンプトラックでは、効率と保守性を向上させるために、ディーゼルエンジン直接駆動方式からディーゼルエンジンを動力源とした交流電動機を用いる電気駆動方式の採用が進んでいる。例えば、制動時に電動機を発電機として動作させ、その電動機の回生起電力を抵抗器により消費する、すなわち熱エネルギーに変換して大気放出することによって制動力を得る、いわゆる発電ブレーキ(リターダブレーキ)が用いられた電気駆動式のダンプトラックが知られている(特許文献3参照)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【特許文献1】特開昭61−19810号公報
【特許文献2】特開2007−137108号公報
【特許文献3】特開2010−88289号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上述した特許文献1に開示された従来技術の車輌用排気システムでは、上述したように荷台加熱手段としてエンジン9からの排気ガス30を荷台1の下部に設けられた排気ガス通路6に流通させ、排気ガス30の熱を利用することによって荷台1に積荷が付着することを防止するようにしているので、排気ガス30が十分に浄化されなければ、排気ガス30によって荷台1の下部が腐食し、荷台1の耐久性が低下する。また、荷台1の下部には積荷を積載することによって大きな負荷がかかるので、荷台1の耐久性が低下することによって荷台1が破損し易くなることが懸念されている。また、排気ガス30中に含まれる煤が荷台1の排気ガス通路6内及び排気ガス出口7付近に付着することにより、荷台1の損傷検査の際に荷台1の損傷を把握することが困難になるので、修理等のメンテナンス作業において付着した煤を清掃する必要がある。そのため、メンテナンス作業を行う作業者に負担がかかることが問題となっている。
【0014】
また、上述した特許文献2に開示された従来技術のダンプトラックでは、荷台加熱手段として熱伝達媒体に排気ガス30、すなわち気体を用いるので、排気ガス30が流通する排気ガス通路6とパッド5との間に空気室を設けることにより、この空気室を断熱材として機能させて排気ガス30による熱がパッド5に伝達することを防止している。そのため、排気ガス層と空気層に分けるための仕切りが必要となるので、その分荷台1の重量が増加する。これにより、ダンプトラックの最大積載量が減少するので、運搬効率が低下することが問題となっている。
【0015】
なお、上述した特許文献3に開示された従来技術の電気駆動式のダンプトラックは、発電ブレーキ用の抵抗器を備えており、この発電ブレーキ用の抵抗器は、一般的に外形及び重量が大きい。具体的には、発電ブレーキ用の抵抗器はキャブと同程度の大きさのものがあり、重量は数百Kgにもなる。また、通電による抵抗器の発熱を冷却する必要があるので、発電ブレーキ用の抵抗器は冷却ファンを備えた大型の抵抗器ボックス内に収納され、フレーム上に設置されることが多い。そのため、ダンプトラックに発電ブレーキ用の抵抗器を搭載するための収納スペースを設ける必要があるので、ダンプトラックが大型化することが懸念されている。さらに、ダンプトラックに重量が大きい発電ブレーキ用の抵抗器を収納した抵抗器ボックスを搭載することによって運搬効率が低下するだけでなく、抵抗器ボックス内で動作する冷却ファンから発せられる音が大きく、騒音の原因になる可能性がある。
【0016】
本発明は、このような従来技術の実情からなされたもので、その目的は、排気ガスの熱を利用しなくても荷台に積荷が付着することを抑制すると共に、荷台の重量が増加することを抑えることができるダンプトラックの荷台加熱機構を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0017】
上記の目的を達成するために、本発明のダンプトラックの荷台加熱機構は、起伏可能に設けられた荷台を有するダンプトラックに備えられ、前記荷台を加熱する荷台加熱手段を有するダンプトラックの荷台加熱機構において、前記荷台加熱手段は、前記荷台に設けられた電熱線を含むことを特徴としている。
【0018】
このように構成した本発明は、荷台を加熱する荷台加熱手段として電熱線をダンプトラックの荷台に設け、電熱線の熱を利用して荷台を暖めることにより、例えば寒冷地や冬場においてダンプトラックで運搬作業が行われても、水分を含む積荷が凍結して荷台に付着することを抑制することができる。従って、荷台に設けられた排気ガス通路を流通する排気ガスの熱を利用しないので、排気ガスによって荷台が腐食することを防止することができる。また、排気ガス中に含まれる煤が荷台に付着することも抑制できるので、荷台の損傷検査の際に荷台の損傷を容易に把握することができる。
【0019】
また、電熱線は局所的に熱が伝わることから電熱線の熱の伝達範囲は排気ガス通路を流通する排気ガスの熱の伝達範囲よりも狭いので、例えば荷台が倒伏する際の衝撃を和らげる緩衝部材を避けて電熱線を荷台に配設することにより、荷台のうち電熱線が配設された部分を暖めることができると共に、緩衝部材に電熱線の熱が伝わることを抑えることができる。特に、電熱線を荷台のうち積荷が付着し易い部分に設けることにより、効果的に荷台を暖めて積荷の付着を抑えることができる。従って、排気ガス通路を流通する排気ガスの熱が緩衝部材に伝わらないように空気を断熱材として機能させる必要もないので、排気ガス層と空気層に分ける仕切りを設けなくて済み、仕切りによって荷台の重量が増加することを抑えることができる。このように、排気ガスの熱を利用しなくても荷台に積荷が付着することを抑制すると共に、荷台の重量が増加することを抑えることができる。
【0020】
また、本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構は、前記発明において、前記ダンプトラックは、リターダブレーキ操作によって発生する電力を熱エネルギーに変換する抵抗器を有する電気駆動式のダンプトラックから成り、前記電熱線は、前記抵抗器の一部から構成されることを特徴としている。このように構成すると、リターダブレーキ操作によって発生する電力、すなわち発電ブレーキ時に発生する電動機の回生起電力を抵抗器ボックス内において熱エネルギーに変換し、大気放出せずに熱エネルギーの一部を荷台加熱手段の電熱線に使用するので、抵抗器ボックス内に収納された抵抗器や冷却ファン等の要求性能を減らすことができる。
【0021】
また、本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構は、前記発明において、電力を蓄えるバッテリと、電力供給のタイミングと電力量を調整する制御ユニットと、この制御ユニットによって前記バッテリから電力を前記電熱線に供給する電力供給手段とを備えたことを特徴としている。このように構成すると、電力供給手段によって制御ユニットがバッテリに蓄えられた電力を電熱線に供給することにより、必要なときに電熱線を発熱させて荷台を加熱することができる。
【0022】
また、本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構は、前記発明において、前記ダンプトラックは、走行路上に配設された架線と、この架線から電力を得る集電装置とを有するトロリー式のダンプトラックから成り、前記集電装置によって前記架線から得た電力を前記電熱線に供給する架線電力供給手段を備えたことを特徴としている。このように構成すると、架線電力供給手段によって集電装置が架線から得た電力を電熱線に供給することにより、エンジンの駆動力を用いなくても電熱線を発熱させて荷台を加熱することができる。これにより、エンジンの消費燃料を低減することができ、エネルギー効率を高めることができる。
【発明の効果】
【0023】
本発明のダンプトラックの荷台加熱機構は、起伏可能に設けられた荷台を有するダンプトラックに備えられ、荷台を加熱する荷台加熱手段を有しており、この荷台加熱手段は、荷台に設けられた電熱線を含むことにより、電熱線の熱によって荷台を加熱して積荷が荷台に付着することを抑えることができる。これにより、排気ガスの熱を利用しないので、排気ガスによって荷台が腐食することを防止することができると共に、排気ガス中に含まれる煤が荷台に付着することも抑制でき、荷台の損傷検査の際に荷台の損傷を容易に把握することができる。また、電熱線は局所的に熱が伝わるので、例えば荷台が倒伏する際の衝撃を和らげる緩衝部材を避けて電熱線を配設することにより、緩衝部材に電熱線の熱が伝わることを抑えることができる。これにより、排気ガスの熱を利用して荷台を加熱したときに排気ガスの熱が緩衝部材に伝わらないように設けられた仕切りが必要なくなるので、従来に比べて荷台を軽量化することができる。このように、排気ガスの熱を利用しなくても荷台に積荷が付着することを抑制すると共に、荷台の重量が増加することを抑えることができる。従って、従来よりも修理等のメンテナンス作業における効率を向上させることができると共に、運搬効率を高めることができる。
【図面の簡単な説明】
【0024】
【図1】従来のダンプトラックを示す側面図である。
【図2】図1に示すダンプトラックの要部を説明する図であり、荷台の起立状態を示す図である。
【図3】本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構の第1実施形態の構成を示す図である。
【図4】本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構の第2実施形態の構成を示す図である。
【図5】従来のダンプトラックの荷台加熱機構の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
以下、本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構を実施するための形態を図に基づいて説明する。
【0026】
[第1実施形態]
本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構の第1実施形態の基本構成は、前述した図5に示すダンプトラックの荷台加熱機構の構成と同じである。従って、図5に示すダンプトラックの荷台加熱機構と重複する部分には同一符号を付す。
【0027】
本発明に係る荷台加熱機構の第1実施形態は、ダンプトラック、例えば図1に示すようにリターダブレーキ操作によって発生する電力を熱エネルギーに変換する後述の抵抗器を有する電気駆動式のダンプトラック1Aに設けられる。このダンプトラック1Aは、フレーム2と、このフレーム2の前部の左右両端に回転可能にそれぞれ一輪ずつ設けられた前輪21と、フレーム2の後部の左右両端に回転可能にそれぞれ二輪ずつ設けられた後輪22とを備えている。従って、ダンプトラック1Aは、前後の車輪合わせて6輪駆動となっている。また、ダンプトラック1Aは、フレーム2上に起伏可能に設けられ、土砂や砕石等の積荷を積載する荷台1とを備えている。
【0028】
具体的には、ダンプトラック1Aは、フレーム2の後部に設けられたヒンジピン4と、フレーム2のうちヒンジピン4よりも前方、すなわち前輪21と後輪22との間に配置され、フレーム2と荷台1とを連結するホイストシリンダ3とを備え、図2に示すようにホイストシリンダ3が伸長することにより、荷台1を押し上げて起立させると共に、図1に示すようにホイストシリンダ3が収縮することにより、荷台1を支持しながら倒伏させるようになっている。
【0029】
従って、ダンプトラック1Aは、倒伏状態において荷台1に積載された土砂や砕石等の積荷を運搬した後、荷台1を図1に示す倒伏状態から図2に示す起立状態へ移行させることにより、荷台1を傾斜させて積荷を降ろしている。なお、図2に示すように荷台1の下部には、荷台1が倒伏する際にフレーム2から受ける衝撃を和らげる緩衝部材、例えばパッド5が設けられている。また、ダンプトラック1Aは、ホイストシリンダ3へ圧油を供給する図示しない油圧ポンプと、この油圧ポンプに供給する作動油を貯蔵する図示しない作動油タンクとを備えており、油圧ポンプから供給される圧油によってホイストシリンダ3が伸縮するようになっている。
【0030】
さらに、ダンプトラック1Aは、図1に示すように荷台1の前方に配置され、フレーム2のうち前輪21側に設けられたキャブ25を備えており、前輪21の大きさはキャブ25の大きさよりも大きくなっている。
【0031】
また、ダンプトラック1Aは、図3に示すようにフレーム2上に搭載されたエンジン9と、このエンジン9にダクト8を介して接続され、エンジン9の駆動音や振動音等を消音するマフラ10と、このマフラ10にダクト8を介して接続され、エンジン9から排出される排気ガス30を外部へ放出する排気ガス出口27とを備えており、マフラ10は、排気ガス30を処理する図示しない後処理装置と一体型になっている。そして、エンジン9から排出された排気ガス30は、ダクト8を通ってマフラ10に送出され、マフラ10内の後処理装置によって排気ガス30中に含まれる有害な物質を除去した後に、処理した排気ガス30をダクト8に流通させて排気ガス出口27から外部へ放出される。
【0032】
ここで、ダンプトラック1Aは、電気駆動方式を採用していることから、例えば制動時に動作させる発電機11と、この発電機11に接続された前述の抵抗器とを備えており、発電機11の回生起電力を抵抗器によって消費することで制動力を得る発電ブレーキ、すなわちリターダブレーキを用いるようになっている。なお、抵抗器は、図示しない大型の抵抗器ボックス内に収納された状態でフレーム2上に設置され、図1に示すキャブ25の右側方に配置されている。また、抵抗器ボックス内には、通電による抵抗器の発熱を冷却する図示しない冷却ファンが抵抗器と共に収納されている。
【0033】
本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構の第1実施形態は、荷台1を加熱する荷台加熱手段を有し、この荷台加熱手段は、図3に示すように荷台1に設けられた電熱線13を含んでいる。そして、この電熱線13は、例えば上述の抵抗器の一部から構成されている。本発明の第1実施形態では、電熱線13は、前述した図5に示すダンプトラックの荷台加熱機構における荷台1の下部の縁に設けられた排気ガス通路6内に入口6aから導入されており、電熱線13のうち発電機11に接続された抵抗器から入口6aまでの部分は、図3に示すように例えばフレーム2上に沿って配設され、剥き出しにならないようにケーブル12で覆われている。従って、電熱線13は、荷台1の下部の縁に沿って配設されている。なお、図2に示すように荷台1の下部に設けられたパッド5は、排気ガス通路6から所定の距離だけ離れた位置、例えば中央部分に配置されている。
【0034】
このように構成した本発明の第1実施形態によれば、荷台1を加熱する荷台加熱手段として電熱線13をダンプトラック1Aの荷台1の下部の縁に沿って配設しているので、ダンプトラック1Aが荷台1に積荷を積載して運搬しているときに制動することによって発電機11が動作し、発生した発電機11の回生起電力を抵抗器、すなわち電熱線13及び抵抗器のうち電熱線13以外の部分によって消費することにより、電熱線13が発熱する。これにより、積荷の運搬中に電熱線13の熱によって荷台1が暖められるので、例えば寒冷地や冬場においてダンプトラック1Aで運搬作業が行われても、水分を含む積荷が凍結して荷台1に付着することを抑制することができ、積荷の排出場所に到着した後にホイストシリンダ3を伸長して荷台1を起立させることによって荷台1に積載された積荷を迅速に排出することができる。
【0035】
一方、エンジン9から排出される排気ガス30は、マフラ10に送出され、マフラ10内の後処理装置によって処理された後にダクト8を通って排気ガス出口27から外部へ放出され、荷台1の下部の縁に設けられた排気ガス通路6に導かれないので、排気ガス30によって荷台1が腐食することを防止することができる。また、排気ガス30中に含まれる煤が荷台1に付着することも抑制できるので、荷台1の損傷検査の際に荷台1の損傷を容易に把握することができる。
【0036】
また、電熱線13は局所的に熱が伝わるので、電熱線13が導入される排気ガス通路6を荷台1の下部の縁に設けると共に、荷台1が倒伏した際に衝撃を和らげるパッド5を荷台1の下部の中央部分に排気ガス通路6から離して配設することにより、荷台1のうち電熱線13が配設された部分を暖めることができると共に、パッド5に電熱線13の熱が伝わることを抑えることができる。さらに、上述したように排気ガス通路6を荷台1の下部の縁に沿って設けることにより、荷台1のうち積荷が付着し易い部分、すなわち荷台1の内側底部の角部の近傍に電熱線13を配置できるので、効果的に荷台1を暖めて積荷の付着を抑えることができる。従って、排気ガス通路6に導入された電熱線13の熱を利用して荷台1を暖めることにより、例えば電熱線13とパッド5との間に断熱材として機能させる空気層を確保する仕切りを設けなくて済むので、仕切りによって荷台1の重量が増加することを抑えることができる。
【0037】
このように、排気ガス30の熱を利用しなくても荷台1に積荷が付着することを抑制すると共に、荷台1の重量が増加することを抑えることができる。従って、荷台1の下部を清潔な状態に保つことができ、修理等のメンテナンス作業における効率を向上させることができると共に、運搬効率を高めることができる。なお、本発明の第1実施形態では、電熱線13のうち発電機11に接続された抵抗器から入口6aまでの部分を図3に示すように剥き出しにならないようにケーブル12で覆っているので、電熱線13によってフレーム2の温度が上昇することを抑制すると共に、安全性を確保することができる。
【0038】
また、本発明の第1実施形態は、電気駆動式のダンプトラックに備えられており、リターダブレーキ操作によって発生する電力を熱エネルギーに変換する抵抗器を有し、電熱線13は、抵抗器の一部から構成されていることにより、ダンプトラック1Aが荷台1に積荷を積載して運搬しているときに制動することによって発電機11が動作し、発生した発電機11の回生起電力を電熱線13に消費しているので、熱エネルギーの全てを大気放出して捨てずに熱エネルギーの一部を荷台加熱手段の電熱線13に使用することができる。そのため、抵抗器ボックス内に収納された抵抗器や冷却ファン等の要求性能を減らすことができ、例えば抵抗器の大きさを小さくしたり、あるいは冷却ファンの回転数を減少できるので、機械のコンパクト化、軽量化、及び静音化を実現することができる。
【0039】
[第2実施形態]
図4は本発明に係るダンプトラックの荷台加熱機構の第2実施形態の構成を示す図である。
【0040】
本発明の第2実施形態が前述した第1実施形態と異なるのは、第1実施形態のダンプトラックが、図1に示すようにリターダブレーキ操作によって発生する電力を熱エネルギーに変換する抵抗器を有する電気駆動式のダンプトラック1Aから成るのに対して、第2実施形態のダンプトラックは、図示されないが例えば走行路上に配設された架線と、この架線から電力を得る集電装置とを有するトロリー式のダンプトラックから成り、集電装置によって架線から得た電力を電熱線13に供給する架線電力供給手段を備えていることである。
【0041】
ここで、ダンプトラックは、土砂や砕石等の積荷が堆積又は採掘された場所から排出場所まで積荷を複数回に分けて運搬する場合には、同じ走行路を走行することになるので、本発明の第2実施形態では、例えば走行路においてダンプトラックの上方に架線が配設されている。また、集電装置は、例えばキャブ25の上部に回動可能に設けられ、絶縁体で被覆された金属製のトロリーポールから成り、このトロリーポールがキャブ25から上方の架線に伸びて接触するようになっている。
【0042】
そして、ダンプトラックが、走行路上を走行することによってトロリーポールの先端が架線に摺動し、トロリーポールが架線から得た電力をトロリー式のダンプトラックに供給するようにしている。なお、本発明の第2実施形態では、ダンプトラックは、エンジン9の駆動力とトロリーポールによって架線から得た電力の双方を併用して走行するようにしており、特に坂を登るときにトロリーポールによって架線から得た電力で補助し、エンジン9の負荷を減らして燃費を低減するようにしている。
【0043】
さらに、本発明の第2実施形態は、図4に示すように電力を蓄えるバッテリ14と、電力供給のタイミングと電力量を調整する制御ユニット15と、この制御ユニット15によってバッテリ14から電力を電熱線13に供給する図示しない電力供給手段とを備えている。また、本発明の第2実施形態では、上述した第1実施形態における電熱線13のうち発電機11に接続された抵抗器から入口6aまでの部分にバッテリ14と電力供給ユニット15が直列に配設されている。さらに、バッテリ14は、トロリーポールによって架線から得た電力で充電されるようになっている。その他の構成は第1実施形態と同じである。
【0044】
このように構成した本発明の第2実施形態によれば、例えばエンジン9が始動していない場合であっても、電力供給手段によって制御ユニット15がバッテリ14に蓄えられた電力を電熱線13に供給することにより、必要なときに電熱線13を発熱させて荷台1を加熱して積荷の付着を抑えることができ、高い利便性を確保することができる。特に、寒冷地や冬場においてダンプトラックで運搬作業を行う場合には、荷台1が冷やされ易いので、エンジン9を始動させる前にバッテリ14の電力で電熱線13を発熱させて荷台1を暖めておくことにより、エンジン9の始動直後の運搬作業や走行距離が短い運搬作業等のように荷台1の温度が上がり難い状況における作業であっても、荷台1に積載された積荷の付着を効果的に抑制することができ、運搬効率をより高めることができる。
【0045】
また、本発明の第2実施形態は、トロリー式のダンプトラックに備えられており、例えばキャブ25の上部に設けられたトロリーポールが走行路上に配設された架線に摺接することにより、架線から電力を得ることができる。そして、架線電力供給手段によってトロリーポールが架線から得た電力を電熱線13に供給することにより、エンジン9の駆動力を用いなくても電熱線13を発熱させて荷台1を加熱することができる。これにより、エンジン9の消費燃料を低減することができ、エネルギー効率を高めることができる。さらに、本発明の第2実施形態は、バッテリ14をトロリーポールによって架線から得た電力で充電することができるので、バッテリ14の残量が少なくなっても電熱線13に使用される電力を迅速に補充して確保することができる。
【0046】
なお、上述した本発明の第1、第2実施形態では、電熱線13が荷台1の下部の縁に設けられた場合について説明したが、この場合に限らず、電熱線13を荷台1の側部や前部に設けても良い。例えば、電熱線13を荷台1の周囲に張り巡らせることにより、電熱線13によって荷台1全体を加熱することができるので、荷台1を迅速に暖めて荷台1に積荷が付着することをより抑えることができる。
【0047】
また、本発明の第1、第2実施形態では、電熱線13を図5に示す荷台1の下部に設けられた排気ガス通路6内に配設した場合について説明したが、この場合に限らず、排気ガス通路6が設けられていない荷台に電熱線を配設しても良い。
【符号の説明】
【0048】
1 荷台
1A ダンプトラック
2 フレーム
3 ホイストシリンダ
4 ヒンジピン
5 パッド(緩衝部材)
6 排気ガス通路
6a 入口
9 エンジン
11 発電機
12 ケーブル
13 電熱線(抵抗器)
14 バッテリ
15 電力供給ユニット
25 キャブ
30 排気ガス

【特許請求の範囲】
【請求項1】
起伏可能に設けられた荷台を有するダンプトラックに備えられ、前記荷台を加熱する荷台加熱手段を有するダンプトラックの荷台加熱機構において、
前記荷台加熱手段は、前記荷台に設けられた電熱線を含むことを特徴とするダンプトラックの荷台加熱機構。
【請求項2】
請求項1に記載のダンプトラックの荷台加熱機構において、
前記ダンプトラックは、
リターダブレーキ操作によって発生する電力を熱エネルギーに変換する抵抗器を有する電気駆動式のダンプトラックから成り、
前記電熱線は、
前記抵抗器の一部から構成されることを特徴とするダンプトラックの荷台加熱機構。
【請求項3】
請求項1に記載のダンプトラックの荷台加熱機構おいて、
電力を蓄えるバッテリと、
電力供給のタイミングと電力量を調整する制御ユニットと、
この制御ユニットによって前記バッテリから電力を前記電熱線に供給する電力供給手段とを備えたことを特徴とするダンプトラックの荷台加熱機構。
【請求項4】
請求項1ないし3のいずれか1項に記載のダンプトラックの荷台加熱機構において、
前記ダンプトラックは、走行路上に配設された架線と、この架線から電力を得る集電装置とを有するトロリー式のダンプトラックから成り、
前記集電装置によって前記架線から得た電力を前記電熱線に供給する架線電力供給手段を備えたことを特徴とするダンプトラックの荷台加熱機構。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−183900(P2012−183900A)
【公開日】平成24年9月27日(2012.9.27)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−47847(P2011−47847)
【出願日】平成23年3月4日(2011.3.4)
【出願人】(000005522)日立建機株式会社 (2,611)
【Fターム(参考)】