説明

チェックバルブの貼着防止構造

【課題】本発明は、チェックバルブの貼着防止構造に関し、従来のチェックバルブの貼着防止構造において、シール面の貼着防止を低コストで実現することが課題であって、それを解決することである。
【解決手段】チェックバルブAにおける、弁体4の封止用当接面4aと該弁体の当接面が閉弁時に常時弾性体3で付勢されて当接されるニップル5のシール面5bとの貼着防止構造において、前記弁体の封止用当接面4aまたは前記ニップルのシール面5bのいずれかに、複数の凹部若しくは凸部6を設けることとしたチェックバルブAの貼着防止構造である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動車などの洗浄液を噴射するウォッシャーノズルに使用されるチェックバルブ(逆止弁)の貼着防止構造に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、ウォッシャーノズル等の流体若しくは気体の吐出を一方向に制限するチェックバルブにおける弁体の貼り付きを防止するものとして、下記の特許文献1、特許件文献2のようなものが知られている。逆止弁などは、ゴム、バルブをスプリングで押しつけて、逆流を防止する構造となっている。通常、この構造ではゴムバルブとニップルのシール面が常時当接しているため、流体の使用時に圧力がゴムバルブに掛かっても、シール用当接面で固着されて不通となることがある。そして、流体が高圧でないと吐出しない等、不都合が発生することがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−36694号公報
【特許文献2】特開2004−106642号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
そこで、上記特許文献などでは、チェックバルブにおける弁体の貼着防止構造として、吸入弁、吐出弁やバルブプレートに樹脂コーティングして、更に吸入孔と吐出孔とを非円形孔とする工夫が成されている。しかしながら、これらの対策はコストの面で費用が嵩むと言う課題がある。本発明に係るチェックバルブの貼着防止構造は、このような課題を解決するために提案されたものである。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明に係るチェックバルブの貼着防止構造の上記課題を解決して目的を達成するための要旨は、チェックバルブにおける、弁体の封止用当接面と該弁体の当接面が閉弁時に常時弾性体で付勢されて当接されるニップルのシール面との貼着防止構造において、前記弁体の封止用当接面または前記ニップルのシール面のいずれかに、複数の凹部若しくは凸部を設けることである。
【0006】
また、チェックバルブにおける、弁体の封止用当接面と該弁体の当接面が閉弁時に常時弾性体で付勢されて当接されるニップルのシール面との貼着防止構造において、前記ニップルのシール面に、当該シール面を形成する吐出口の端面周縁部に内側に切り込む切込み部を1以上設けたことである。更に、前記切込み部は、ニップルの供給路の中心位置とシール面の中心位置とをずらすようにして設けること、そして、前記切込み部は、内側に行くほど切り込み量が小さくなっていることを含むものである。
【発明の効果】
【0007】
本発明のチェックバルブの貼着防止構造によれば、チェックバルブにおける、弁体の封止用当接面または前記ニップルのシール面のいずれかに、複数の凹部若しくは凸部を設けるようにしたので、貼着面の面積が減少して、開弁時の貼着による抵抗を減少させ、流体によって剥がれやすくなり、低コストで流体の不通が防止される。
また、チェックバルブにおける、ニップルのシール面に、当該シール面を形成する吐出口の端面周縁部に内側に切り込む切込み部を1以上設けたので、この場合も、貼着面積が切込み部で著しく減少する事になって、貼着による抵抗が少なく剥がれやすくなる。また、この切込み部の設けかたにおいて、ニップルのシール面の中心位置と、ニップルの供給路の中心位置とをずらすことで、流体圧力の作用する中心位置が供給路の中心位置から偏心するので、貼着面が剥がれやすくなる。更に、前記切込み部は、内側に行くほど切り込み量が小さくなっているので、低コストで容易に成型しやすくなる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】本発明に係るチェックバルブの貼着防止構造を示す縦断面図(A)と、弁の開時の流体の流れを示す縦断面図(B)である。
【図2】同本発明のチェックバルブの貼着防止構造を示す分解斜視図(A),(B)と、ガイド2の拡大斜視図(C)、ニップル5の拡大斜視図(D)とである。
【図3】バルブ4とニップル5との当接面の貼着防止構造を示す一部拡大斜視図(A)と貼着防止構造の拡大断面図(B)とである。
【図4】同バルブ4とニップル5との当接面の貼着防止構造を示す一部拡大斜視図(A)と貼着防止構造の拡大断面図(B)とである。
【図5】バルブ4の当接面に微細な凹凸7を設ける構造の側面図(A)と一部断面図(B)とである。
【図6】同ニップル5のシール面に微細な凹凸7を設ける構造の側面図(A)と一部断面図(B)とである。
【図7】ニップル5のシール面に切込み部8を設けた様子を示す斜視図(A)、平面図(B)と、他の例の切込み部9を設けた場合の様子を示す斜視図(C)、平面図(D)である。
【図8】ニップル5のシール面に、他の例で長方形型bの切込み部10を設けた場合の様子を示す縦断面図(A)、斜視図(B)、平面図(C)、更に他の例に係る三日月型の切込み部11とした場合の斜視図(D)、平面図(E)である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本発明に係るチェックバルブAの構造は、図1(A)乃至図2(D)に示すように、洗浄液などの流体を吐出させる吐出流路1aを有する合成樹脂製ボディ1と、該ボディ1の内部空間に収納されるガイド2と、該ガイド2を一方向に付勢する弾性体(スプリング)3と、前記ガイド2の先端部を被覆するゴム製弁体であるバルブ4と、前記ボディ1に嵌合され止着されるとともに前記バルブ4で供給路5aを封止されるニップル5とから構成されている。
【0010】
前記弾性体3で付勢されバルブ4がニップル5の円筒状のシール面5bに当接して、洗浄液などの流体が吐出しないようにされている状態が、図1(A)に示す閉弁時の状態であり、流体が供給されて吐出する状態が、図1(B)に示す状態である。よって、通常の状態は、図1(A)に示す閉弁状態であって、前記バルブ4の当接面4aとニップル5のシール面5bとが押圧されて当接しており、逆止弁となっている。しかし、時にはこれらの当接面4aとシール面5bとが貼り付いてしまい、流体をニップル5の供給路5aに供給してバルブ4を押圧しても、シール面5bから当接面4aが離間せず、流体が吐出しないことがある。そこで、この発明では、以下のような構造にするものである。
【0011】
このチェックバルブAにおける貼着防止構造は、図3(A),(B)乃至図4(A),(B)に示すように、弁体である前記バルブ4の封止用当接面4aと、該弁体の当接面4aが閉弁時に常時弾性体3で付勢されて当接されるニップル5のシール面5bとの貼着部分において、前記バルブ4の封止用当接面4aまたは前記ニップル5のシール面5bのいずれかに、複数の凹部若しくは凸部6を設けるものである。なお、凹部若しくは凸部6を設けない方の面は平坦面とする。
【実施例1】
【0012】
前記凹部若しくは凸部6によって、前記当接面4aとシール面5bとの密着面積が最小に抑えられるからである。例えば、シール面5bの厚さaが1mmであれば、凸部若しくは凹部6の径を0.2〜0.25mm程度にして多数配設する。また、前記凸部若しくは凹部6は、単独で存在するように形成する。更に、前記当接面4a若しくはシール面5bの面積の1/3〜1/2程度の面積となるように、前記凹部若しくは凸部6を設けるものである。こうして、密着する面積が少なくなるので、流体を供給させた時に前記当接面4aがシール面5bから剥がれやすくなるものである。
【実施例2】
【0013】
また、図5(A),(B)乃至図6(A),(B)に示すように、前記バルブの当接面4aまたはニップル5のシール面5bのいずれかに、微細な凹凸7を設けるようにする。この凹凸7は、ブラスト粗さが♯100〜♯120程度のものである。これによっても、洗浄液などの流体の吐出時に、当接面4aとシール面5bとが剥がれやすくなるものである。
【実施例3】
【0014】
チェックバルブAにおける、弁体の封止用当接面4aと該弁体の当接面4aが閉弁時に常時弾性体で付勢されて当接されるニップルのシール面5bとの貼着防止構造において、
図7(A),(B)に示すように、前記ニップル5のシール面5bに、当該シール面5bを形成する吐出口の端面周縁部に内側に切り込む切込み部8を1以上設けた貼着防止構造とするものである。前記切込み部8は、内側に行くほど切り込み量が小さくなっている。
【0015】
前記切込み部8は、前記端面周縁部の周方向に、均等配置で4個所に設けられている。また、同7図(C),(D)に示すように、シール面5bに三角形型に切り込んだ切込み部9としても設けても良い。このようにすれば、流体の圧力がこの切込み部8,9に集約され、前記当接面4aをシール面5bから剥がし易くなるものである。
【実施例4】
【0016】
前記切込み部8,9は、吐出口の端面周縁部に均等に配置したが、図8(A)〜(E)に示すように、例えば、切込み部10,11を端面周縁部に1個所だけに設けるようにする。切込み部10は長方形型で内側にクサビ状に切り込んだものであり、切込み部11は、三日月状に切り込んだものである。これは、ニップル5の供給路5aの中心位置cとシール面5bの中心位置dとをeだけずらすことで、流体吐出時において、流体の圧力が供給路5aの中心位置cから中心位置dへとずれるので、前記バルブ4の当接面4aがシール面5bから剥がれやすくなるものである。
【産業上の利用可能性】
【0017】
チェックバルブの貼着防止構造は、気体・流体などの流体の逆止弁構造として広く適用できるものである。
【符号の説明】
【0018】
1 ボディ、 1a 吐出路、
2 ガイド、
3 弾性体(スプリング)、
4 バルブ、 4a 当接面、
5 ニップル、 5a 供給路、
5b シール面、
6 凸部若しくは凹部、
7 微細な凹凸、
8 切込み部、
9 切込み部、
10 切込み部、
11 切込み部。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チェックバルブにおける、弁体の封止用当接面と該弁体の当接面が閉弁時に常時弾性体で付勢されて当接されるニップルのシール面との貼着防止構造において、
前記弁体の封止用当接面または前記ニップルのシール面のいずれかに、複数の凹部若しくは凸部を設けること、
を特徴とするチェックバルブの貼着防止構造。
【請求項2】
チェックバルブにおける、弁体の封止用当接面と該弁体の当接面が閉弁時に常時弾性体で付勢されて当接されるニップルのシール面との貼着防止構造において、
前記ニップルのシール面に、当該シール面を形成する吐出口の端面周縁部に内側に切り込む切込み部を1以上設けたこと、
を特徴とするチェックバルブの貼着防止構造。
【請求項3】
切込み部は、ニップルの供給路の中心位置とシール面の中心位置とをずらすようにして設けること、
を特徴とする請求項2に記載のチェックバルブの貼着防止構造。
【請求項4】
切込み部は、内側に行くほど切り込み量が小さくなっていること、
を特徴とする請求項2または3に記載のチェックバルブの貼着防止構造。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【公開番号】特開2011−102613(P2011−102613A)
【公開日】平成23年5月26日(2011.5.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−257887(P2009−257887)
【出願日】平成21年11月11日(2009.11.11)
【出願人】(000229704)日本ビニロン株式会社 (12)
【Fターム(参考)】