説明

チェックポイントキナーゼの阻害剤

本発明は、CHK1活性を阻害する縮合ピラゾールを含む化合物を提供する。本発明はまた、このような阻害化合物を含む組成物及びがんの治療を必要とする患者に本化合物を投与することによってCHK1活性を阻害する方法を提供する。

【発明の詳細な説明】
【背景技術】
【0001】
細胞周期チェックポイントは、細胞周期移行の順序及びタイミングを制御する調節経路である。それらにより、DNA複製及び染色体分離などの重大な事象が高い忠実度で完了されることが確実となる。これらの細胞周期チェックポイントの調節は、腫瘍細胞が多数の化学療法及び放射線照射に応答する様式の重大な決定因子である。多数の効果的ながん療法は、DNA損傷を引き起こすことによって働くが、これらの薬剤に対する耐性が、依然としてがんの治療における重大な制限となっている。薬剤耐性のいくつかの機序のうち1つの重要なものは、チェックポイント経路の重要な意味を持つ活性化を制御することによる細胞周期進行の阻止による。これによって、細胞周期を停止して修復のための時間を提供し、修復を促進する遺伝子の転写を誘導し、それによって、即時の細胞死を避ける。例えば、G2チェックポイントでのチェックポイント停止を無効にすることによって、DNA損傷によって誘導される腫瘍細胞死を相乗的に増大させ、耐性を回避することが可能であり得る。
【0002】
ヒトCHK1は、ホスファターゼcdc25のセリン216でのリン酸化によって細胞周期停止の調節において役割を果たしており、これはcdc2/サイクリンBの活性化の防止及び有糸分裂の開始に関与している可能性がある。したがって、CHK1の阻害は、DNA修復が完了する前に有糸分裂を開始することによってDNA損傷剤を増強し、それによって腫瘍細胞死を引き起こすはずである。
【0003】
CHK1(Chek1とも呼ばれる)の阻害剤である新規化合物を提供することが本発明の目的である。
【0004】
CHK1の阻害剤である新規化合物を含む医薬組成物を提供することも本発明の目的である。
【0005】
CHK1活性の阻害剤などを投与することを含む、がんを治療する方法を提供することも本発明の目的である。
【発明の開示】
【0006】
発明の要旨
本発明は、CHK1活性を阻害する縮合ピラゾールを含む化合物を提供する。本発明はまた、このような阻害化合物を含む組成物及びがんの治療を必要とする患者に本化合物を投与することによってCHK1活性を阻害する方法を提供する。これらの縮合ピラゾールは、米国特許出願第60/691,694号に報告されるその他の縮合ピラゾールと比較した場合に、改良された血行動態特性を有する。
【0007】
発明の詳細な記載
本発明の化合物は、CHK1の活性の阻害において有用である。本発明の一実施態様では、CHK1活性の阻害剤は、式A:
【0008】
【化1】

【0009】
[式中:
は独立してH及びFから選択され、ここで、Rの少なくとも1個はFである]
又はその医薬的に許容され得る塩若しくは立体異性体によって示される。
【0010】
本発明の具体的な化合物として以下がある:
5−(3−アミノ−2−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−12a)、
5−(3−アミノ−2−(R)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−15)、
5−(3−アミノ−2−(S)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−16)及び
5−(3−アミノ−2,2−ジフルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−17)
又はその医薬的に許容され得る塩若しくは立体異性体。
【0011】
本発明のHCl塩として、以下がある:
5−(3−アミノ−2−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−12a)、
5−(3−アミノ−2−(R)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−15)及び
5−(3−アミノ−2−(S)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−16)
又はその立体異性体。
【0012】
本発明のTFA塩として以下がある:
5−(3−アミノ−2,2−ジフルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−17)
又はその立体異性体。
【0013】
本発明の化合物は、不斉中心、キラル軸及びキラル面を有する可能性があり(E.L.エリール(Eliel)及びS.H.ウィレン(Wilen)、ステレオケミストリー・オブ・カーボン・コンパウンズ(Stereochemistry of Carbon Compounds)、ジョンワイリーアンドサンズ(John Wiley & Sons)、New York、1994、1119〜1190頁に記載のとおり)、ラセミ体、ラセミ混合物として、また個々のジアステレオマーとして生じる可能性があり、そのすべての可能性ある異性体及び混合物、例えば、光学異性体が本発明に含まれる。更に、本明細書に開示される化合物は、互変異性体として存在する可能性があり、一方の互変異性体構造しか表されていなくとも、両互変異性体の形が本発明の範囲に包含されるものとする。
【0014】
当業者によって1個以上のシリコン(Si)原子を、1個以上の炭素原子の代わりに本発明の化合物に組み込み、化学的に安定であり、かつ容易に入手可能な出発物質から当該技術分野における技術上既知の方法によって容易に合成できる化合物を提供することができるということは理解される。炭素及びシリコンは、類似のC成分及びSi成分結合を比較すると、共有結合半径が異なり、これは結合距離及び立体配置の相違をもたらす。これらの相違は、炭素と比較した場合に、シリコン含有化合物の大きさ及び形にわずかな変化をもたらす。当業者ならば、大きさ及び形の相違は、効力、可溶性、標的外活性の欠如、パッケージング特性などにおいてわずかな又は劇的な変化をもたらし得るということは理解される(ディアス(Diass),J.O.ら、オルガノメタリクス(Organometallics)(2006)5、1188〜1198頁、ショーウェル(Showell),G.A.らバイオオーガニック・アンド・メディシナル・ケミストリー・レターズ(Bioorganic and Medicinal Chemistry Letters)(2006)16:2555〜2558頁)。
【0015】
式Aで示される化合物の遊離形、並びにその医薬的に許容され得る塩及び立体異性体も本発明に含まれる。本明細書に例示される単離された具体的な化合物の中には、アミン化合物のプロトン化塩がある。用語「遊離形」とは、非塩の形のアミン化合物を指す。包含される医薬的に許容され得る塩は、本明細書に記載される具体的な化合物の例示される単離された塩だけではなく、式Aの化合物の遊離形のすべての通常の医薬的に許容され得る塩も含む。記載される具体的な塩化合物の遊離形は、当該技術分野における技術上既知の方法を用いて単離できる。例えば、遊離形は、塩を適した希塩基水溶液、例えば、希NaOH、炭酸カリウム、アンモニア及び重炭酸ナトリウム水溶液で処理することによって再生してもよい。遊離形は、特定の物理的特性、例えば、極性溶媒における可溶性において、そのそれぞれの塩の形とはいくらか異なり得るが、酸性及び塩基性塩は、その他の点では、本発明の目的上、そのそれぞれの遊離形と医薬的に同等である。
【0016】
本化合物の医薬上許容され得る塩は、慣用的な化学法によって塩基性又は酸性部分を含む本発明の化合物から合成できる。通常、塩基性化合物の塩は、イオン交換クロマトグラフィーによってか、遊離塩基を、適した溶媒又は溶媒の種々の組合せ中で、化学量論量の、又は過剰の所望の塩を形成する無機又は有機酸と反応させることのいずれかによって調製する。同様に、酸性化合物の塩も、適当な無機又は有機塩基との反応によって形成される。
【0017】
したがって、本発明の化合物の医薬上許容され得る塩として、塩基性の本化合物を無機又は有機酸と反応させることによって形成されるような、本発明の化合物の慣用的な非毒性塩が挙げられる。例えば、慣用的な非毒性塩として、無機酸、例えば、塩酸、臭化水素酸、硫酸、スルファミン酸、リン酸、硝酸などから誘導されるもの並びに有機酸、例えば、酢酸、プロピオン酸、コハク酸、グリコール酸、ステアリン酸、乳酸、リンゴ酸、酒石酸、クエン酸、アスコルビン酸、パモン酸、マレイン酸、ヒドロキシマレイン酸、フェニル酢酸、グルタミン酸、安息香酸、サリチル酸、スルファニル酸、2−アセトキシ−安息香酸、フマル酸、トルエンスルホン酸、メタンスルホン酸、エタンジスルホン酸、シュウ酸、イセチオン酸、トリフルオロ酢酸(TFA)などから調製された塩が挙げられる。
【0018】
本発明の化合物が酸性である場合、適した「医薬上許容され得る塩」とは、医薬上許容され得る非毒性塩基、例えば、無機塩基及び有機塩基から調製され得る塩を指す。無機塩基から誘導される塩としては、アルミニウム、アンモニウム、カルシウム、銅、第二鉄、第一鉄、リチウム、マグネシウム、マンガン塩、マンガン、カリウム、ナトリウム、亜鉛などが挙げられる。アンモニウム、カルシウム、マグネシウム、カリウム及びナトリウム塩が特に好ましい。医薬上許容され得る有機非毒性塩基から誘導される塩としては、第一、第二及び第三アミン、置換アミン、例えば、天然に存在する置換アミン、環状アミン及び塩基性イオン交換樹脂、例えば、アルギニン、ベタインカフェイン、コリン、N,N−ジベンジルエチレンジアミン、ジエチルアミン、2−ジエチルアミノエタノール、2−ジメチルアミノエタノール、エタノールアミン、エチレンジアミン、N−エチルモルホリン、N−エチルピペリジン、グルカミン、グルコサミン、ヒスチジン、ヒドラバミン、イソプロピルアミン、リシン、メチルグルカミン、モルホリン、ピペラジン、ピペリジン、ポリアミン樹脂、プロカイン、プリン、テオブロミン、トリエチルアミン、トリメチルアミントリプロピルアミン、トロメタミンなどの塩が挙げられる。
【0019】
上記の医薬上許容され得る塩及びその他の通常の医薬上許容され得る塩の調製は、バーグ(Berg)ら、「ファーマシューティカル・サルツ(Pharmaceutical Salts)」ジャーナル・オブ・ファーマシューティカル・サイエンセズ(Journal of Pharmaceutical Sciences)、1977:66:1〜19頁によって、より十分に記載されている。
【0020】
生理学的条件下では、化合物中の脱プロトン化酸性部分、例えば、カルボキシル基が陰イオン性であり得、それによりこの電子電荷がプロトン化又はアルキル化された塩基性部分、例えば、第四窒素原子の陽イオン電荷に対して内部的にバランスが崩れている可能性があるので、本発明の化合物は、内部塩又は双性イオンの可能性があるということも留意される。
【0021】
有用性
本明細書に提供される化合物、組成物及び方法は、がんの治療にとって有用であると特に考えられる。本発明の化合物、組成物及び方法によって治療できるがんとして、それだけには限らないが以下が挙げられる:心臓:肉腫(血管肉腫、線維肉腫、横紋筋肉腫、脂肪肉腫)、粘液腫、横紋筋腫、線維腫、脂肪腫及び奇形腫;:気管支原性肺癌(扁平細胞、未分化小細胞、未分化大細胞、腺癌)、肺胞上皮癌(細気管支癌)、気管支腺腫、肉腫、リンパ腫、軟骨性過誤腫、中皮腫、非小細胞肺;胃腸:食道(扁平上皮癌、腺癌、平滑筋肉腫、リンパ腫)、胃(癌腫、リンパ腫、平滑筋肉腫)、膵臓(導管腺癌、インスリノーマ、グルカゴン産生腫瘍、ガストリン産生腫瘍、カルチノイド腫瘍、VIP産生腫瘍)、小腸(腺癌、リンパ腫、カルチノイド腫瘍、カポジ肉腫、平滑筋腫、血管腫、脂肪腫、神経線維腫、線維腫)、大腸(腺癌、管状腺腫、絨毛腺腫、過誤腫、平滑筋腫)結腸、結腸直腸、直腸;尿生殖路:腎臓(腺癌、ウィルムス腫瘍[腎芽細胞腫]、リンパ腫、白血病)、膀胱及び尿道(扁平上皮癌、移行上皮癌、腺癌)、前立腺(腺癌、肉腫)、精巣(セミノーマ、奇形腫、胎生期癌、奇形癌種、絨毛癌、肉腫、間質性細胞癌腫、線維腫、線維線腫、類腺腫瘍、脂肪腫);肝臓:肝細胞腫(肝細胞癌)、胆管癌、胆芽腫、血管肉腫、肝細胞腺腫、血管腫;:骨原性肉腫(骨肉腫)、線維肉腫、悪性線維性組織球腫、軟骨肉腫、ユーイング肉腫、悪性リンパ腫(細網肉腫)、多発性骨髄腫、悪性巨細胞腫脊索腫、骨軟骨腫(骨軟骨性外骨腫)、良性軟骨腫、軟骨芽細胞腫、軟骨粘液性線維腫、類骨骨腫及び巨細胞腫;神経系:頭蓋(骨腫、血管腫、肉芽腫、黄色腫、変形性骨炎)、髄膜(髄膜腫、髄膜肉腫、神経膠腫症)、脳(星状細胞腫、髄芽細胞腫、神経膠腫、上衣腫、肺細胞腫[松果体腫]、多形膠芽腫、乏突起膠腫、神経鞘腫、網膜芽細胞腫、先天性腫瘍)、脊髄神経線維腫、髄膜腫、神経膠腫、肉腫);婦人科:子宮(子宮内膜癌)、子宮頸部(子宮頸癌、前腫瘍性子宮頸部形成異常)、卵巣(卵巣癌[漿液性嚢胞腺癌、粘液性嚢胞腺癌、未分類癌腫]、顆粒膜−莢膜細胞腫瘍、セルトリ−ライディッヒ細胞腫瘍、未分化肺細胞腫、悪性奇形腫)、外陰部(扁平上皮癌、上皮内癌、腺癌、線維肉腫、黒色腫)、膣(明細胞癌、扁平上皮癌、ブドウ状肉腫(胎児性横紋筋肉腫)、卵管(癌腫)、胸部;血液学的:血液(骨髄性白血病[急性及び慢性]、急性リンパ芽球性白血病、慢性リンパ性白血病、骨髄増殖性疾患、多発性骨髄腫、骨髄異形成症候群)、ホジキン病、非ホジキンリンパ腫[悪性リンパ腫];皮膚:悪性黒色腫、基底細胞癌、扁平上皮癌、カポジ肉腫、ほくろ異形成母斑、脂肪腫、血管腫、皮膚線維腫、ケロイド、乾癬;及び副腎:神経芽腫。したがって、本明細書において提供される用語「がん性細胞」とは、上記で同定される状態のいずれか1種を起こしている細胞が挙げられる。
【0022】
本発明の化合物、組成物及び方法によって治療できるがんとして、それだけには限らないが以下が挙げられる:胸部、前立腺、結腸、結腸直腸、肺、非小細胞肺、脳、精巣、胃、膵臓、皮膚、小腸、大腸、咽頭、頭頸部、口腔、骨、肝臓、膀胱、腎臓、甲状腺及び血液。
【0023】
本発明の化合物、組成物及び方法によって治療できるがんとして、胸部、前立腺、結腸、卵巣、結腸直腸及び肺が挙げられる。
【0024】
本発明の化合物、組成物及び方法によって治療できるがんとして、胸部、結腸、(結腸直腸)及び肺が挙げられる。
【0025】
本発明の化合物、組成物及び方法によって治療できるがんとして、リンパ腫及び白血病が挙げられる。
【0026】
本発明の化合物はまた、がんを治療するのに有用である医薬を調製するのにも有用である。
【0027】
本発明の化合物は、標準的な薬学のプラクティスに従い、哺乳動物、例えば、ヒトに、単独又は医薬組成物中で医薬的に許容され得る担体、賦形剤又は希釈剤と組合せてのいずれかで投与してもよい。本化合物は、経口的に又は非経口的に投与でき、例えば、静脈内、筋肉内、腹腔内、皮下、直腸及び局所経路の投与ができる。
【0028】
有効成分を含む医薬組成物は、例えば、錠剤、トローチ剤、ロゼンジ剤、水性若しくは油性懸濁液、分散性散剤若しくは顆粒剤、エマルジョン、ハード若しくはソフトカプセル剤又はシロップ剤又はエリキシル剤のような経口使用に適した形としてよい。経口使用向きの組成物は、医薬組成物の製造のための当該技術分野で公知の任意の方法に従って調製でき、このような組成物は、医薬的に洗練された、味の良い製剤を提供するために、甘味剤、矯味剤、着色剤及び保存剤からなる群から選択される1種以上の薬剤を含み得る。錠剤は、錠剤の製造に適している、非毒性の医薬上許容され得る賦形剤との混合物中に有効成分を含む。これらの賦形剤は、例えば、不活性の希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、炭酸ナトリウム、ラクトース、リン酸カルシウム又はリン酸ナトリウム;造粒剤及び崩壊剤、例えば、マイクロクリスタリンセルロース、クロスカルメロースナトリウム、コーンスターチ又はアルギン酸;結合剤、例えば、デンプン、ゼラチン、ポリビニルピロリドン又はアラビアガム;及び滑沢剤、例えば、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸又はタルクであり得る。錠剤はコーティングされていなくてもよいし、薬物の嫌な味をマスクするため、若しくは消化管における崩壊及び吸収を遅延し、それによって長期間にわたる持続作用を提供するために既知技術によってコーティングされていてもよい。例えば、水溶性の味をマスクする物質、例えば、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース若しくはヒドロキシプロピルセルロース又は時間遅延物質、例えば、エチルセルロース、酢酸ブチルセルロースを使用してもよい。
【0029】
経口使用用製剤はまた、有効成分が不活性の固体希釈剤、例えば、炭酸カルシウム、リン酸カルシウム若しくはカオリンと混合されているハードゼラチンカプセル剤として、又は有効成分が水溶性担体、例えば、ポリエチレングリコール若しくはオイル媒体、例えば、ピーナッツオイル、流動パラフィン若しくはオリーブオイルと混合されているソフトゼラチンカプセル剤として存在し得る。
【0030】
水性懸濁液は、水性懸濁液の製造に適した賦形剤との混合物中に活性物質を含む。このような賦形剤として、懸濁剤、例えば、カルボキシメチルセルロースナトリウム、メチルセルロース、ヒドロキシプロピルメチル−セルロース、アルギン酸ナトリウム、ポリビニル−ピロリドン、トラガカントゴム及びアラビアガムがあり;分散剤又は湿潤剤は、天然に存在するリン脂質、例えば、レシチン、又はアルキレンオキシドの脂肪酸との縮合生成物、例えば、ステアリン酸ポリオキシエチレン、若しくはエチレンオキシドの長鎖脂肪族アルコールとの縮合生成物、例えば、ヘプタデカエチレン−オキシセタノール、若しくはエチレンオキシドの脂肪酸及びヘキシトールに由来する部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビトールモノオレエート、若しくはエチレンオキシドの、脂肪酸及び無水ヘキシトール由来の部分エステルとの縮合生成物、例えば、ポリエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。水性懸濁液はまた、1種以上の保存料、例えば、エチル又はn−プロピルp−ヒドロキシベンゾエートと、1種以上の着色剤と、1種以上の矯味剤と、1種以上の甘味剤、例えば、スクロース、サッカリン若しくはアスパルテームとを含み得る。
【0031】
油性懸濁液は、有効成分を植物油、例えば、ラッカセイ油、オリーブ油、ゴマ油若しくはココナッツオイル、又は鉱油、例えば、流動パラフィンに懸濁することによって製剤してもよい。油性懸濁液は、増粘剤、例えば、蜜蝋、ハードパラフィン又はセチルアルコールを含み得る。味の良い経口製剤を提供するために、上記のものなどの甘味剤及び矯味剤を加えてもよい。これらの組成物は、抗酸化物質、例えば、ブチル化ヒドロキシアニソール又はα−トコフェロールの添加によって保存できる。
【0032】
水の添加による水性懸濁液の調製に適した分散性散剤及び顆粒剤は、分散剤又は湿潤剤、懸濁剤及び1種以上の保存料との混合物中の有効成分を提供する。適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤は上記にすでに記載されているものによって示されている。更なる賦形剤として、例えば、甘味剤、矯味剤及び着色剤も存在し得る。これらの組成物は、抗酸化物質、例えば、アスコルビン酸の添加によって保存できる。
【0033】
本発明の医薬組成物はまた、水中油型エマルジョンの形であり得る。油相は、植物油、例えば、オリーブ油若しくはラッカセイ油、又は鉱油、例えば、流動パラフィン又はこれらの混合物であり得る。適した乳化剤は、天然に存在するリン脂質、例えば、ダイズレシチン、並びに脂肪酸と無水ヘキシトールに由来するエステル若しくは部分エステル、例えば、ソルビタンモノオレエート、並びに前記部分エステルのエチレンオキシドとの縮合生成物、例えば、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレエートであり得る。エマルジョンはまた、甘味料、矯味剤、保存料及び抗酸化物質も含み得る。
【0034】
シロップ剤及びエリキシル剤は、甘味剤、例えば、グリセロール、プロピレングリコール、ソルビトール又はスクロースを用いて製剤してよい。このような製剤はまた、鎮痛薬、防腐剤、矯味剤及び着色剤及び抗酸化薬も含み得る。
【0035】
本医薬組成物は、滅菌注射用水溶液の形であり得る。使用できる許容可能なビヒクル及び溶媒の中には、水、リンガー溶液及び等張性塩化ナトリウム溶液がある。
【0036】
滅菌注射用製剤はまた、有効成分が油相に溶解している滅菌注射用水中油型マイクロエマルジョンであり得る。例えば、有効成分をまず、ダイズオイルとレシチンの混合物に溶解してよい。次いで、このオイル溶液を、水とグリセロールの混合物に入れ、マイクロエマルジョンを形成するよう処理する。
【0037】
注射用溶液又はマイクロエマルジョンは、局所ボーラス注射によって患者の血流中に入れることができる。或いは、本化合物の一定循環濃度を維持するような方法で溶液又はマイクロエマルジョンを投与することが有利であり得る。このような一定濃度を維持するために、連続的静脈内送達装置を利用してもよい。このような装置の一例として、Deltec CADD−PLUS(商標)モデル5400静脈内ポンプがある。
【0038】
本医薬組成物は、筋肉内投与及び皮下投与用の滅菌注射用水性又は油性懸濁液の形であり得る。この懸濁液は、上記に記載されている適した分散剤又は湿潤剤及び懸濁剤を用い、既知技術に従って製剤できる。滅菌注射用製剤はまた、例えば、1,3−ブタンジオール中の溶液のような、非毒性の非経口的に許容され得る希釈剤又は溶媒中の滅菌注射用溶液又は懸濁液であり得る。更に、滅菌硬化油も、溶媒又は懸濁媒体として従来用いられている。この目的には、合成モノ又はジグリセリドをはじめ、任意の無刺激性硬化油を使用してよい。更に、脂肪酸、例えば、オレイン酸は注射用物質の調製において用途がある。
【0039】
本発明の化合物はまた、薬物の直腸投与のための坐剤の形で投与してもよい。これらの組成物は、薬物を、常温では固体であるが直腸温度では液体であり、したがって、直腸で融解して薬物を放出する適した非刺激性賦形剤と混合することによって調製できる。このような物質として、ココアバター、グリセリン化ゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルの混合物が挙げられる。
【0040】
局所使用用には、式Aの化合物を含む、クリーム、軟膏、ゼリー、溶液又は懸濁液などが用いられる。(この適用目的上、局所適用はマウスウォッシュ及び口腔洗浄薬を含むものとする。)
【0041】
本発明の化合物は、適した経鼻ビヒクル及び送達装置の局所使用によって経鼻形態で、又は当業者に周知の経皮皮膚パッチの形のものを用いて経皮経路によって投与できる。経皮送達系の形で投与されるには、投与量の投与は、当然、投薬レジメンを通じて間欠的ではなく連続となる。本発明の化合物はまた、ココアバター、グリセリン化ゼラチン、硬化植物油、種々の分子量のポリエチレングリコール及びポリエチレングリコールの脂肪酸エステルの混合物などの基剤を用いて坐剤として送達してもよい。
【0042】
本発明の組成物をヒト被験体に投与する場合には、一日用量は、通常、処方医師によって決定され、投与量は、通常、個々の患者の年齢、体重及び応答並びに患者の症状の重篤度に応じて変わる。
【0043】
一実施態様では、CHK1の阻害剤の適した量を、がんの治療を受けている哺乳動物に投与する。投与は、約0.1mg/体重1kg/日〜約60mg/体重1kg/日の間、又は0.5mg/体重1kg/日〜約40mg/体重1kg/日の間の阻害剤量で行う。本組成物を含むもう1つの治療投与量は、約0.01mg〜約1000mgのCHK1の阻害剤を含む。もう1つの実施態様では、投与量は、約1mg〜約1000mgのCHK1の阻害剤を含む。
【0044】
本化合物はまた、治療薬、化学療法薬及び抗がん剤との組合せにおいて有用である。目下開示される化合物の、治療薬、化学療法薬及び抗がん剤との組合せは本発明の範囲内にある。このような薬剤の例は、V.T.デビタ(Devita)及びS.ヘルマン(Hellman)(編)によるキャンサー・プリンシプルズ・アンド・プラクティス・オブ・オンコロジー(Cancer:Principles and Practice of Oncology)、第6版(2001年2月15日)、リッピンコット・ウィリアムズ・アンド・ウィルキンス(Lippincott Williams and Wilkins)出版社に見い出すことができる。当業者ならば、薬物及び関与するがんの個々の特徴に基づいて、どの組合せの薬剤が有用であるかを見極めることができる。このような薬剤として、以下が挙げられる:エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤及びその他の血管新生抑制剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤及び細胞周期チェックポイントを干渉する物質。本化合物は、放射線療法と同時投与された場合に特に有用である。
【0045】
「エストロゲン受容体モジュレーター」とは、機序にかかわらず、エストロゲンの受容体との結合を干渉又は阻害する化合物を指す。エストロゲン受容体モジュレーターの例として、それだけには限らないが、タモキシフェン、ラロキシフェン、イドキシフェン、LY353381、LY117081、トレミフェン、フルベストラント、4−[7−(2,2−ジメチル−1−オキソプロポキシ−4−メチル−2−[4−[2−(1−ピペリジニル)エトキシ]フェニル]−2H−1−ベンゾピラン−3−イル]−フェニル−2,2−ジメチルプロパノエート、4,4’−ジヒドロキシベンゾフェノン−2,4−ジニトロフェニル−ヒドラゾン及びSH646が挙げられる。
【0046】
「アンドロゲン受容体モジュレーター」とは、機序にかかわらず、アンドロゲンの受容体との結合を干渉又は阻害する化合物を指す。アンドロゲン受容体モジュレーターの例として、フィナステリド及びその他の5α−レダクターゼ阻害剤、ニルタミド、フルタミド、ビカルタミド、リアロゾール及び酢酸アビラテロンが挙げられる。
【0047】
「レチノイド受容体モジュレーター」とは、機序にかかわらず、レチノイドの受容体との結合を干渉又は阻害する化合物を指す。このようなレチノイド受容体モジュレーターの例として、ベキサロテン、トレチノイン、13−シス−レチノイン酸、9−シス−レチノイン酸、α−ジフルオロメチルオルニチン、ILX23−7553、トランス−N−(4’−ヒドロキシフェニル)レチナミド及びN−4−カルボキシフェニルレチナミドが挙げられる。
【0048】
「細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤」とは、主に、細胞の機能を直接干渉するか、細胞有糸分裂を阻害又は干渉することによって、細胞死を引き起こすか、又は細胞増殖を阻害する化合物、例えば、アルキル化剤、腫瘍壊死因子、インターカレータ、低酸素活性化可能化合物、微小管阻害剤/微小管安定化剤、有糸分裂キネシンの阻害剤、ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤、有糸分裂進行に関与しているキナーゼの阻害剤、増殖因子及びサイトカインシグナル伝達経路に関与しているキナーゼの阻害剤、代謝拮抗剤、生物反応修飾物質、ホルモン/抗ホルモン治療薬、造血性増殖因子、モノクローナル抗体標的化治療薬、トポイソメラーゼ阻害剤、プロテアソーム阻害剤及びユビキチンリガーゼ阻害剤及びオーロラキナーゼ阻害剤を指す。
【0049】
細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤の例として、それだけには限らないが、セルテネフ(sertenef)、カケクチン、イフォスファミド、タソネルミン、ロニダミン(lonidamine)、カルボプラチン、アルトレタミン、プレドニムスチン、ジブロモダルシトール(dibromodulcitol)、ラニムスチン、ホテムスチン、ネダプラチン、オキサリプラチン、テモゾロミド、ヘプタプラチン(heptaplatin)、エストラムスチン、トシル酸インプロスルファン、トロフォスファミド、ニムスチン、塩化ジブロスピジウム、プミテパ、ロバプラチン、サトラプラチン、プロフィロマイシン(profiromycin)、シスプラチン、イロフルベン(irofulven)、デキシホスファミド(dexifosfamide)、シス−アミンジクロロ(2−メチル−ピリジン)白金、ベンジルグアニン、グルフォスファミド(glufosfamide)、GPX100、(トランス,トランス,トランス)−ビス−mu−(ヘキサン−1,6−ジアミン)−mu−[ジアミン−白金(II)]ビス[ジアミン(クロロ)白金(II)]テトラクロリド、ジアリジジニルスペルミン(diarizidinylspermine)、三酸化ヒ素、1−(11−ドデシルアミノ−10−ヒドロキシウンデシル)−3,7−ジメチルキサンチン、ゾルビシン、イダルビシン、ダウノルビシン、ビサントレン、ミトキサントロン、ピラルビシン、ピナフィド(pinafide)、バルルビシン、アムルビシン、アンチネオプラストン、3’−デアミノ−3’−モルホリノ−13−デオキソ−10−ヒドロキシカルミノマイシン、アンナマイシン(annamycin)、ガラルビシン(galarubicin)、エリナフィド(elinafide)、MEN10755、4−デメトキシ−3−デアミノ−3−アジリジニル−4−メチルスルホニル−ダウノルビシン(WO00/50032参照のこと)、Rafキナーゼ阻害剤(例えば、Bay43−9006)及びmTOR阻害剤(例えば、ワイス(Wyeth)のCCI−779)が挙げられる。
【0050】
低酸素活性化可能化合物の一例として、チラパザミンがある。
【0051】
プロテアソーム阻害剤の例として、それだけには限らないが、ラクタシスチン及びMLN−341(Velcade)がある。
【0052】
微小管阻害剤/微小管安定化剤の例として、パクリタキセル、硫酸ビンデシン、3’,4’−ジデヒドロ−4’−デオキシ−8’−ノルビンカロイコブラスチン、ドセタキセル、リゾキシン、ドラスタチン、イセチオン酸ミボブリン、オーリスタチン、セマドチン、RPR109881、BMS184476、ビンフルニン、クリプトフィシン、2,3,4,5,6−ペンタフルオロ−N−(3−フルオロ−4−メトキシフェニル)ベンゼンスルホンアミド、アンヒドロビンブラスチン、N,N−ジメチル−L−バリル−L−バリル−N−メチル−L−バリル−L−プロリル−L−プロリン−t−ブチルアミド、TDX258、エポチロン(例えば、米国特許第6,284,781号及び同6,288,237号参照のこと)及びBMS188797が挙げられる。一実施態様では、エポチロンは微小管阻害剤/微小管安定化剤に含まれない。
【0053】
トポイソメラーゼ阻害剤のいくつかの例として、トポテカン、ハイカプタミン(hycaptamine)、イリノテカン、ルビテカン、6−エトキシプロピオニル−3’,4’−O−エキソ−ベンジリデン−チャートリューシン(chartreusin)、9−メトキシ−N,N−ジメチル−5−ニトロピラゾロ[3,4,5−kl]アクリジン−2−(6H)プロパンアミン、1−アミノ−9−エチル−5−フルオロ−2,3−ジヒドロ−9−ヒドロキシ−4−メチル−1H,12H−ベンゾ[de]ピラノ[3’,4’:b,7]−インドリジノ[1,2b]キノリン−10,13(9H,15H)ジオン、ルルトテカン、7−[2−(N−イソプロピルアミノ)エチル]−(20S)カンプトテシン、BNP1350、BNPI1100、BN80915、BN80942、リン酸エトポシド、テニポシド、ソブゾキサン、2’−ジメチルアミノ−2’−デオキシ−エトポシド、GL331、N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−9−ヒドロキシ−5,6−ジメチル−6H−ピリド[4,3−b]カルバゾール−1−カルボキサミド、アスラクリン(asulacrine)、(5a、5aB、8aa,9b)−9−[2−[N−[2−(ジメチルアミノ)エチル]−N−メチルアミノ]エチル]−5−[4−ヒドロオキシ−3,5−ジメトキシフェニル]−5,5a,6,8,8a,9−ヘキソヒドロフロ(3’,4’:6,7)ナフト(2,3−d)−1,3−ジオキソール−6−オン、2,3−(メチレンジオキシ)−5−メチル−7−ヒドロキシ−8−メトキシベンゾ[c]−フェナントリジニウム、6,9−ビス[(2−アミノエチル)アミノ]ベンゾ[g]イソギノリン(isoguinoline)−5,10−ジオン、5−(3−アミノプロピルアミノ)−7,10−ジヒドロキシ−2−(2−ヒドロキシエチルアミノメチル)−6H−ピラゾロ[4,5,1−de]アクリジン−6−オン、N−[1−[2(ジエチルアミノ)エチルアミノ]−7−メトキシ−9−オキソ−9H−チオキサンテン−4−イルメチル]ホルムアミド、N−(2−(ジメチルアミノ)エチル)アクリジン−4−カルボキサミド、6−[[2−(ジメチルアミノ)エチル]アミノ]−3−ヒドロキシ−7H−インデノ[2,1−c]キノリン−7−オン及びジメスナがある。
【0054】
有糸分裂キネシン、特に、ヒト有糸分裂キネシンKSPの阻害剤の例は、刊行物WO03/039460、WO03/050064、WO03/050122、WO03/049527、WO03/049679、WO03/049678、WO04/039774、WO03/079973、WO03/099211、WO03/105855、WO03/106417、WO04/037171、WO04/058148、WO04/058700、WO04/126699、WO05/018638、WO05/019206、WO05/019205、WO05/018547、WO05/017190、US2005/0176776に記載されている。一実施態様では、有糸分裂キネシンの阻害剤として、それだけには限らないが、KSPの阻害剤、MKLP1の阻害剤、CENP−Eの阻害剤、MCAKの阻害剤及びRab6−KIFLの阻害剤が挙げられる。
【0055】
「ヒストン脱アセチル化酵素阻害剤」の例として、それだけには限らないが、SAHA、TSA、オキサムフラチン、PXD101、MG98及びスクリプタイドが挙げられる。その他のヒストン脱アセチル化酵素阻害剤の更なる参照は、以下の原稿中に見い出すことができる;ミラー(Miller),T.A.らジャーナル・オブ・メディシナル・ケミストリー(Journal of Medicinal Chemistry)46(24):5097〜5116頁(2003)。
【0056】
「有糸分裂進行に関与しているキナーゼの阻害剤」として、それだけには限らないが、オーロラキナーゼの阻害剤、Polo様キナーゼの阻害剤(PLK;特に、PLK−1の阻害剤)、bub−1の阻害剤及びbub−R1の阻害剤が挙げられる。「オーロラキナーゼ阻害剤」の例として、VX−680がある。
【0057】
「抗増殖剤」としては、アンチセンスRNA及びDNAオリゴヌクレオチド、例えば、G3139、ODN698、RVASKRAS、GEM231及びINX3001、並びに代謝拮抗剤、例えば、エノシタビン、カルモフール、テガフール、ペントスタチン、ドキシフルリジン、トリメトレキサート、フルダラビン、カペシタビン、ガロシタビン、シタラビンオクホスファート、フォステアビン(fosteabine)ナトリウム水和物、ラルチトレキセド、パルチトレキシド(paltitrexid)、エミテフール、チアゾフリン、デシタビン、ノラトレキセド、ペメトレキセド、ネルザラビン、2’−デオキシ−2’−メチリデンシチジン、2’−フルオロメチレン−2’−デオキシシチジン、N−[5−(2,3−ジヒドロ−ベンゾフリル)スルホニル]−N’−(3,4−ジクロロフェニル)尿素、N6−[4−デオキシ−4−[N2−[2(E),4(E)−テトラデカジエノイル]グリシルアミノ]−L−グリセロ−B−L−マンノ−ヘプトピラノシル]アデニン、アプリジン、エクテイナシジン(ecteinascidin)、トロキサシタビン、4−[2−アミノ−4−オキソ−4,6,7,8−テトラヒドロ−3H−ピリミジノ[5,4−b][1,4]チアジン−6−イル−(S)−エチル]−2,5−チエノイル−L−グルタミン酸、アミノプテリン、5−フルオロウラシル、アラノシン、11−アセチル−8−(カルバモイルオキシメチル)−4−ホルミル−6−メトキシ−14−オキサ−1,11−ジアザテトラシクロ(7.4.1.0.0)−テトラデカ−2,4,6−トリエン−9−イル酢酸エステル、スワインソニン、ロメトレキソール、デクスラゾキサン、メチオニナーゼ、2’−シアノ−2’−デオキシ−N4−パルミトイル−1−B−D−アラビノフラノシルシトシン、3−アミノピリジン−2−カルボキシアルデヒドチオセミカルバゾン及びトラスツズマブが挙げられる。
【0058】
モノクローナル抗体標的化治療薬の例として、がん細胞特異的又は標的細胞特異的モノクローナル抗体と結合している、細胞傷害剤又は放射性同位元素を有する治療薬が挙げられる。例として、ベキサールが挙げられる。
【0059】
「HMG−CoAレダクターゼ阻害剤」とは、3−ヒドロキシ−3−メチルグルタリル−CoAレダクターゼの阻害剤を指す。使用できるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の例として、それだけには限らないが、ロバスタチン(メバコール(登録商標);米国特許第4,231,938号、同4,294,926号及び同4,319,039号参照のこと)、シンバスタチン(ゾコール(登録商標);米国特許第4,444,784号、同4,820,850号及び同4,916,239号参照のこと)、プラバスタチン(プラバコール(登録商標);米国特許第4,346,227号、同4,537,859号、同4,410,629号、同5,030,447号及び同5,180,589号参照のこと)、フルバスタチン(レスコール(登録商標);米国特許第5,354,772号、同4,911,165号、同4,929,437号、同5,189,164号、同5,118,853号、同5,290,946号及び同5,356,896号参照のこと)、アトルバスタチン(リピトール(登録商標);米国特許第5,273,995号、同4,681,893号、同5,489,691号及び同5,342,952号参照のこと)及びセリバスタチン(リバスタチン及びバイコール(BAYCHOL)(登録商標)としても知られている;米国特許第5,177,080号参照のこと)。本方法において使用できるこれらの及び更なるHMG−CoAレダクターゼ阻害剤の構造式は、M.ヤルパニ(Yalpani)、「コレステロール・ロワーリング・ドラッグス(Cholesterol Lowering Drugs)」、ケミストリー・アンド・インダストリー(Chemistry & Industry)、85〜89頁(1996年2月5日)の87頁及び米国特許第4,782,084号及び同4,885,314号に記載されている。本明細書において、用語HMG−CoAレダクターゼ阻害剤は、医薬上許容され得るラクトン及びオープンアシッド形(すなわち、ラクトン環が開環されて遊離酸を形成している)並びにHMG−CoAレダクターゼ阻害活性を有する化合物の塩及びエステルの形のすべてを含み、したがって、このような塩、エステル、オープンアシッド及びラクトンの形の使用は本発明の範囲内に含まれる。
【0060】
「プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤」とは、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ酵素のうち任意の1種又は任意の組合せを阻害する化合物、例えば、ファルネシル−タンパク質トランスフェラーゼ(FPTアーゼ)、ゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼI型(GGPTアーゼ−I)及びゲラニルゲラニル−タンパク質トランスフェラーゼII型(GGPTアーゼ−II、Rab GGPTアーゼとも呼ばれる)を指す。
【0061】
プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の例は、以下の刊行物及び特許に見ることができる:WO96/30343、WO97/18813、WO97/21701、WO97/23478、WO97/38665、WO98/28980、WO98/29119、WO95/32987、米国特許第5,420,245号、同5,523,430号、同5,532,359号、同5,510,510号、同5,589,485号、同5,602,098号、欧州特許公報0618221号、同0675112号、同0604181号、同0696593号、WO94/19357、WO95/08542、WO95/11917、WO95/12612、WO95/12572、WO95/10514、米国特許第5,661,152号、WO95/10515、WO95/10516、WO95/24612、WO95/34535、WO95/25086、WO96/05529、WO96/06138、WO96/06193、WO96/16443、WO96/21701、WO96/21456、WO96/22278、WO96/24611、WO96/24612、WO96/05168、WO96/05169、WO96/00736、米国特許第5,571,792号、WO96/17861、WO96/33159、WO96/34850、WO96/34851、WO96/30017、WO96/30018、WO96/30362、WO96/30363、WO96/31111、WO96/31477、WO96/31478、WO96/31501、WO97/00252、WO97/03047、WO97/03050、WO97/04785、WO97/02920、WO97/17070、WO97/23478、WO97/26246、WO97/30053、WO97/44350、WO98/02436及び米国特許第5,532,359号。血管新生に対するプレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤の役割の一例については、ヨーロピアン・ジャーナル・オブ・キャンサー(European Journal of Cancer)第35巻、第9号、1394〜1401頁(1999)参照のこと。
【0062】
「血管新生抑制剤」とは、機序にかかわらず、新しい血管の形成を阻害する化合物を指す。血管新生抑制剤の例としては、それだけには限らないが、チロシンキナーゼ阻害剤、例えば、チロシンキナーゼ受容体Flt−1(VEGFR1)及びFlk−1/KDR(VEGFR2)の阻害剤、上皮由来、繊維芽細胞由来又は血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、例えば、非ステロイド性抗炎症薬(NSAID)様アスピリン及びイブプロフェン並びに選択的シクロオキシゲナーゼ−2阻害剤様セレコキシブ及びロフェコキシブ(PNAS、第89巻、7384頁(1992);JNCI、第69巻、475頁(1982);アーカイブ・オブ・オフタルモロジー(Archive of Opthalmology)第108巻、573頁(1990);アナトミカル・レコード(Anatomical Record)、第238巻、68頁(1994);FEBSレターズ(FEBS Letters)、第372巻、83頁(1995);クリニカル・オルソパイディクス(Clinical Orthopaedics)第313巻、76頁(1995);ジャーナル・オブ・モレキュラー・エンドクリノロジー(Journal of Molecular Endocrinology)、第16巻、107頁(1996);ジャパニーズ・ジャーナル・オブ・ファルマコロジー(Japanese Journal of Pharmacology)、第75巻、105頁(1997);キャンサー・リサーチ(Cancer Research)、第57巻、1625頁(1997);セル(Cell)、第93巻、705頁(1998);インターナショナル・ジャーナル・オブ・モレキュラー・メディシン(International Journal of Molecular Medicine)、第2巻、715頁(1998);ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)、第274巻、9116頁(1999))、ステロイド性抗炎症薬(例えば、副腎皮質ステロイド、ミネラルコルチコイド、デキサミタゾン、プレドニゾン、プレドニゾロン、メチルプレド、ベタメタゾン)、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1、アンジオテンシンIIアンタゴニスト(フェルナンデス(Fernandez)ら、ジャーナル・オブ・ラボラトリー・アンド・クリニカル・メディシン(Journal of Laboratory and Clinical Medicine)、105:141〜145頁(1985)参照のこと)及びVEGFに対する抗体(ネイチャー・バイオテクノロジー(Nature Biotechnology)、第17巻、963〜968頁(1999年10月);キム(Kim)ら、ネイチャー(Nature)、362、841〜844頁(1993);WO00/44777及びWO00/61186参照のこと)が挙げられる。
【0063】
血管新生を調節又は阻害し、また、本発明の化合物と併用できるその他の治療薬として、血液凝固及び繊維素溶解システムを調節又は阻害する薬剤が挙げられる(クリニカル・ケミストリー・アンド・ラボラトリー・メディシン(Clinical Chemistry and Laboratory Medicine)38:679〜692頁(2000)における総説を参照のこと)。血液凝固及び繊維素溶解経路を調節又は阻害するような薬剤の例として、それだけには限らないが、ヘパリン(スロンボシス・アンド・ヘモスタシス(Thrombosis and Haemostasis)80:10〜23頁(1998)参照)、低分子量ヘパリン及びカルボキシペプチダーゼU阻害剤(活性トロンビン活性化可能繊維素溶解阻害剤[TAFIa]の阻害剤としても知られる)(スロンボシス・リサーチ(Thrombosis Research)101:329〜354頁(2001)参照のこと)が挙げられる。TAFIa阻害剤は、米国特許出願番号60/310,927号(2001年8月8日に出願された)及び同60/349,925号(2002年1月18日に出願された)に記載されている。
【0064】
「細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤」とは、細胞周期チェックポイントシグナルを伝達するプロテインキナーゼを阻害し、それによってがん細胞をDNA損傷剤に対して増感させる化合物を指す。このような薬剤として、ATR、ATM及びCHK11及びCHK12キナーゼの阻害剤並びにcdk及びcdcキナーゼ阻害剤が挙げられ、7−ヒドロキシスタウロスポリン、フラボピリドール、CYC202(Cyclacel)及びBMS−387032によって具体的に示される。
【0065】
「受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤」とは、RTK、ひいては、発がん及び腫瘍進行に関与している機序を阻害する化合物を指す。このような薬剤として、c−Kit、Eph、PDGF、Flt3及びc−Metの阻害剤が挙げられる。更なる薬剤として、ブメ−ジェンセン(Bume−Jensen)及びハンター(Hunter)、ネイチャー(Nature)、411:355〜365頁、2001によって記載されるRTKの阻害剤が挙げられる。
【0066】
「細胞増殖及び生存シグナル伝達経路の阻害剤」とは、細胞表面受容体のシグナル変換カスケード下流を阻害する医薬品を指す。このような薬剤として、セリン/トレオニンキナーゼ(例えば、それだけには限らないが、例えば、WO02/083064、WO02/083139、WO02/083140、US2004−0116432、WO02/083138、US2004−0102360、WO03/086404、WO03/086279、WO03/086394、WO03/084473、WO03/086403、WO2004/041162、WO2004/096131、WO2004/096129、WO2004/096135、WO2004/096130、WO2005/100356、WO2005/100344、US2005/029941、US2005/44294、US2005/43361、60/734188、60/652737、60/670469に記載されるようなAktの阻害剤)、Rafキナーゼの阻害剤(例えば、BAY−43−9006)、MEKの阻害剤(例えば、CI−1040及びPD−098059)及びmTORの阻害剤(例えば、ワイス(Wyeth)CCI−779)及びPI3Kの阻害剤(例えば、LY294002)が挙げられる。
【0067】
上記のように、NSAIDとの組合せは、強力なCOX−2阻害剤であるNSAIDの使用を対象とする。本明細書では、NSAIDは、COX−2の阻害について、細胞又はミクロソームアッセイによって測定される1μM以下のIC50を有する場合、有効である。
【0068】
本発明はまた、選択的COX−2阻害剤であるNSAIDとの組合せを包含する。本明細書では、COX−2の選択的阻害剤であるNSAIDは、細胞又はミクロソームアッセイによって評価される、COX−1のIC50を上回るCOX−2のIC50の比によって測定される、少なくとも100倍の、COX−1を上回るCOX−2の阻害に対する特異性を有するものとして定義される。このような化合物として、それだけには限らないが、すべて参照により本明細書に組み込まれる、米国特許第5,474,995号、同5,861,419号、同6,001,843号、同6,020,343号、同5,409,944号、同5,436,265号、同5,536,752号、同5,550,142号、同5,604,260号、同5,698,584号、同5,710,140号、WO94/15932、米国特許第5,344,991号、同5,134,142号、同5,380,738号、同5,393,790号、同5,466,823号、同5,633,272号及び同5,932,598号に開示されるものが挙げられる。
【0069】
本治療方法において特に有用であるCOX−2の阻害剤として、3−フェニル−4−(4−(メチルスルホニル)フェニル)−2−(5H)−フラノン及び5−クロロ−3−(4−メチルスルホニル)フェニル−2−(2−メチル−5−ピリジニル)ピリジン又はその医薬上許容され得る塩がある。
【0070】
COX−2の特異的阻害剤として記載されており、ひいては、本発明において有用である化合物として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:パレコキシブ、ベクストラ(登録商標)及びセレブレックス(登録商標)又はその医薬上許容され得る塩。
【0071】
血管新生抑制剤のその他の例として、それだけには限らないが、エンドスタチン、ウクライン、ランピルナーゼ、IM862、5−メトキシ−4−[2−メチル−3−(3−メチル−2−ブテニル)オキシラニル]−1−オキサスピロ[2,5]オクタ−6−イル(クロロアセチル)カルバメート、アセチルジナナリン、5−アミノ−1−[[3,5−ジクロロ−4−(4−クロロベンゾイル)フェニル]メチル]−1H−1,2,3−トリアゾール−4−カルボキサミド、CM101、スクアラミン、コンブレタスタチン、RPI4610、NX31838、硫酸化マンノペンタオースホスフェート、7,7−(カルボニル−ビス[イミノ−N−メチル−4,2−ピロロカルボニルイミノ[N−メチル−4,2−ピロール]−カルボニルイミノ]−ビス−(1,3−ナフタレンジスルホネート)及び3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチレン]−2−インドリノン(SU5416)が挙げられる。
【0072】
上記で用いた「インテグリン遮断薬」とは、生理学的リガンドの、αβインテグリンとの結合を選択的にアンタゴナイズ、阻害、又は無効にする化合物、生理学的リガンドの、αβインテグリンとの結合を選択的にアンタゴナイズ、阻害、又は無効にする化合物、生理学的リガンドの、αβインテグリン及びαβインテグリンの両方との結合をアンタゴナイズ、阻害、又は無効にする化合物及び毛細血管内皮細胞上に発現される特定のインテグリン(類)の活性をアンタゴナイズ、阻害、又は無効にする化合物を指す。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンのアンタゴニストも指す。この用語はまた、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ、αβ及びαβインテグリンの任意の組合せのアンタゴニストも指す。
【0073】
チロシンキナーゼ阻害剤のいくつかの具体的な例として、N−(トリフルオロメチルフェニル)−5−メチルイソオキサゾール−4−カルボキサミド、3−[(2,4−ジメチルピロール−5−イル)メチリデニル)インドリン−2−オン、17−(アリルアミノ)−17−デメトキシゲルダナマイシン、4−(3−クロロ−4−フルオロフェニルアミノ)−7−メトキシ−6−[3−(4−モルホリニル)プロポキシル]キナゾリン、N−(3−エチニルフェニル)−6,7−ビス(2−メトキシエトキシ)−4−キナゾリンアミン、BIBX1382、2,3,9,10,11,12−ヘキサヒドロ−10−(ヒドロキシメチル)−10−ヒドロキシ−9−メチル−9,12−エポキシ−1H−ジインドロ[1,2,3−fg:3’,2’,1’−kl]ピロロ[3,4−i][1,6]ベンゾジアゾシン−1−オン、SH268、ゲニステイン、STI571、CEP2563、4−(3−クロロフェニルアミノ)−5,6−ジメチル−7H−ピロロ[2,3−d]ピリミジンメタンスルホネート、4−(3−ブロモ−4−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、4−(4’−ヒドロキシフェニル)アミノ−6,7−ジメトキシキナゾリン、SU6668、STI571A、N−4−クロロフェニル−4−(4−ピリジルメチル)−1−フタラジンアミン及びEMD121974が挙げられる。
【0074】
抗がん化合物以外の化合物との組合せも、本方法に包含される。例えば、この特許請求される化合物の、PPAR−γ(すなわち、PPAR−ガンマ)アゴニスト及びPPAR−δ(すなわち、PPAR−デルタ)アゴニストとの組合せは、特定の悪性腫瘍の治療において有用である。PPAR−γ及びPPAR−δとは、核ペルオキシソーム増殖因子活性化受容体γ及びδである。内皮細胞上でのPPAR−γの発現及び血管新生におけるその関与は、文献に報告されている(ジャーナル・オブ・カルディオバスキュラー・ファルマコロジー(Journal of Cardiovascular Pharmacology)1998;31:909〜913頁;ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)1999;274:9116〜9121頁;インベスティゲーション・オフタルモロジー・アンド・ビジュアル・サイエンス(Investigation Ophthalmology and Visual Science)2000;41:2309〜2317頁参照のこと)。より最近、PPAR−γアゴニストは、in vitroでVEGFに対する血管新生反応を阻害することがわかり、トログリタゾン及びマレイン酸ロシグリタゾンは両方とも、マウスにおいて網膜の新血管新生の発生を阻害する(アーカイブ・オブ・オフタルモロジー(Archive of Ophthalmology)2001;119:709〜717頁)。PPAR−γアゴニスト及びPPAR−γ/αアゴニストの例として、それだけには限らないが、チアゾリジンジオン(例えば、DRF2725、CS−011、トログリタゾン、ロシグリタゾン及びピオグリタゾン)、フェノフィブラート、ゲムフィブロジル、クロフィブラート、GW2570、SB219994、AR−H039242、JTT−501、MCC−555、GW2331、GW409544、NN2344、KRP297、NP0110、DRF4158、NN622、GI262570、PNU182716、DRF552926、2−[(5,7−ジプロピル−3−トリフルオロメチル−1,2−ベンゾイソオキサゾール−6−イル)オキシ]−2−メチルプロピオン酸(USSN09/782,856に開示される)及び2(R)−7−(3−(2−クロロ−4−(4−フルオロフェノキシ)フェノキシ)プロポキシ)−2−エチルクロマン−2−カルボン酸(USSN60/235,708及び60/244,697に開示される)が挙げられる。
【0075】
本発明のもう1つの実施態様は、ここで開示される化合物の、がんの治療のための遺伝子療法との併用である。がんを治療するための遺伝子戦略の概観については、ホール(Hall)ら(アメリカン・ジャーナル・オブ・ヒューマン・ジェネティクス(American Journal of Human Genetics)61:785〜789頁、1997)及びクフェ(Kufe)ら(キャンサー・メディシン(Cancer Medicine)、第5版、876〜889頁、BCデッカー(Decker)、ハミルトン(Hamilton)2000)参照のこと。遺伝子療法は、任意の腫瘍抑制遺伝子を送達するために使用できる。このような遺伝子の例として、それだけには限らないが、組換えウイルス媒介性遺伝子導入によって送達され得るp53(例えば、米国特許第6,069,134号参照のこと)、uPA/uPARアンタゴニスト(ジーン・セラピー(Gene Therapy)、1998年8月;5(8):1105〜13頁中、「アデノウイルス・メディエイテッド・デリバリー・オブ・ア・ユーピーエー/ユーピーエーピー・アンタゴニスト・サプレセズ・アンギオジェネシス−ディペンデント・チューモア・グロース・アンド・ディセミネーション・イン・マウス(Adenovirus−Mediated Delivery of a uPA/uPAR Antagonist Suppresses Angiogenesis−Dependent Tumor Growth and Dissemination in Mice)」、及びインターフェロンγ(ジャーナル・オブ・イムノロジー(Journal of Immunology)2000;164:217〜222頁)が挙げられる。
【0076】
本発明の化合物はまた、生来多剤耐性(MDR)、特に、輸送体タンパク質の高レベルの発現と関連しているMDRの阻害剤と併用投与してもよい。このようなMDR阻害剤として、p−糖タンパク質(P−gp)の阻害剤、例えば、LY335979、XR9576、OC144−093、R101922、VX853及びPSC833(valspodar)が挙げられる。
【0077】
本発明の化合物は、本発明の化合物の、単独又は放射線療法を伴う使用に起因し得る、悪心又は嘔吐、例えば、急性、遅発性、晩期及び先行嘔吐を治療するための制吐剤と併用してもよい。嘔吐の予防又は治療には、本発明の化合物をその他の制吐剤、特に、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト、例えば、オンダンセトロン、グラニセトロン、トロピセトロン及びザチセトロン(zatisetron)、GABAB受容体アゴニスト、例えば、バクロフェン、コルチコステロイド、例えば、デカドロン(デキサメタゾン)、ケナログ、アリストコート、ナサリド(Nasalide)、プレフェリド(Preferid)、ベネコルテン(Benecorten)又は米国特許第2,789,118号、同2,990,401号、同3,048,581号、同3,126,375号、同3,929,768号、同3,996,359号、同3,928,326号及び同3,749,712号に開示されるものなどのその他のもの;抗ドーパミン、例えば、フェノチアジン(例えば、プロクロルペラジン、フルフェナジン、チオリダジン及びメソリダジン)、メトクロプラミド又はドロナビノールと併用してもよい。別の実施態様では、本化合物の投与に起因し得る嘔吐の治療又は予防のための、ニューロキニン−1受容体アンタゴニスト、5HT3受容体アンタゴニスト及びコルチコステロイドから選択される制吐剤を用いる併用療法が開示されている。
【0078】
本発明の化合物と組合せたニューロキニン−1受容体アンタゴニストの使用は、例えば、米国特許第5,162,339号、同5,232,929号、同5,242,930号、同5,373,003号、同5,387,595号、同5,459,270号、同5,494,926号、同5,496,833号、同5,637,699号、同5,719,147号;欧州特許公報EP0360390、同0394989、同0428434、同0429366、同0430771、同0436334、同0443132、同0482539、同0498069、同0499313、同0512901、同0512902、同0514273、同0514274、同0514275、同0514276、同0515681、同0517589、同0520555、同0522808、同0528495、同0532456、同0533280、同0536817、同0545478、同0558156、同0577394、同0585913、同0590152、同0599538、同0610793、同0634402、同0686629、同0693489、同0694535、同0699655、同0699674、同0707006、同0708101、同0709375、同0709376、同0714891、同0723959、同0733632及び同0776893;PCT国際特許公報WO90/05525、同90/05729、同91/09844、同91/18899、同92/01688、同92/06079、同92/12151、同92/15585、同92/17449、同92/20661、同92/20676、同92/21677、同92/22569、同93/00330、同93/00331、同93/01159、同93/01165、同93/01169、同93/01170、同93/06099、同93/09116、同93/10073、同93/14084、同93/14113、同93/18023、同93/19064、同93/21155、同93/21181、同93/23380、同93/24465、同94/00440、同94/01402、同94/02461、同94/02595、同94/03429、同94/03445、同94/04494、同94/04496、同94/05625、同94/07843、同94/08997、同94/10165、同94/10167、同94/10168、同94/10170、同94/11368、同94/13639、同94/13663、同94/14767、同94/15903、同94/19320、同94/19323、同94/20500、同94/26735、同94/26740、同94/29309、同95/02595、同95/04040、同95/04042、同95/06645、同95/07886、同95/07908、同95/08549、同95/11880、同95/14017、同95/15311、同95/16679、同95/17382、同95/18124、同95/18129、同95/19344、同95/20575、同95/21819、同95/22525、同95/23798、同95/26338、同95/28418、同95/30674、同95/30687、同95/33744、同96/05181、同96/05193、同96/05203、同96/06094、同96/07649、同96/10562、同96/16939、同96/18643、同96/20197、同96/21661、同96/29304、同96/29317、同96/29326、同96/29328、同96/31214、同96/32385、同96/37489、同97/01553、同97/01554、同97/03066、同97/08144、同97/14671、同97/17362、同97/18206、同97/19084、同97/19942及び同97/21702;及び英国特許公報第2266529号、同2268931号、同2269170号、同2269590号、同2271774号、同2292144号、同2293168号、同2293169号及び同2302689号に十分に記載されている。このような化合物の調製は、参照により本明細書に組み込まれる前記の特許及び刊行物に十分に記載されている。
【0079】
一実施態様では、本発明の化合物と併用するためのニューロキニン−1受容体アンタゴニストは、米国特許第5,719,147に記載される、2−(R)−(1−(R)−(3,5−ビス(トリフルオロメチル)フェニル)エトキシ)−3−(S)−(4−フルオロフェニル)−4−(3−(5−オキソ−1H,4H−1,2,4−トリアゾロ)メチル)モルホリン又はその医薬上許容され得る塩から選択される。
【0080】
本発明の化合物はまた、貧血の治療において有用な薬剤とともに投与してもよい。このような貧血治療薬として、例えば、持続性の(eythropoiesis)受容体アクチベーター(例えば、エポエチンアルファ)がある。
【0081】
本発明の化合物はまた、好中球減少症の治療において有用である薬剤とともに投与してもよい。このような好中球減少症治療薬として、例えば、好中球の産生及び機能を調節する造血増殖因子、例えば、ヒト顆粒球コロニー刺激因子、(G−CSF)がある。G−CSFの例として、フィルグラスチムが挙げられる。
【0082】
本発明の化合物はまた、免疫増強薬、例えば、レバミソール、イソプリノシン及びザダキシンとともに投与してもよい。
【0083】
本発明の化合物はまた、ビスホスホネート(ビスホスホネート、ジホスホネート、ビスホスホン酸及びジホスホン酸を含むと理解される)と組合せて、がん、例えば、骨がんを治療又は予防するのに有用であり得る。ビスホスホネートの例として、それだけには限らないが、以下が挙げられる:エチドロネート(ダイドロネル)、パミドロネート(アレディア)、アレンドロネート(フォサマックス)、リセドロネート(アクトネル)、ゾレドロネート(ゾメタ)、イバンドロネート(ボニバ)、インカドロネート又はシマドロネート、クロドロネート、EB−1053、ミノドロネート、ネリドロネート、ピリドロネート及びチルドロネート並びにありとあらゆるその医薬上許容され得る塩、誘導体、水和物及び混合物。
【0084】
本発明の化合物はまた、アロマターゼ阻害剤と組合せて、乳がんを治療又は予防するのに有用であり得る。アロマターゼ阻害剤の例として、それだけには限らないが、アナストロゾール、レトロゾール及びエキセメスタンが挙げられる。
【0085】
本発明の化合物はまた、siRNA治療薬と組合せて、がんを治療又は予防するのに有用であり得る。
【0086】
本発明の化合物はまた、γ−セクレターゼ阻害剤及び/又はNOTCHシグナル伝達の阻害剤と組合せて投与してもよい。このような阻害剤として、WO01/90084、WO02/30912、WO01/70677、WO03/013506、WO02/36555、WO03/093252、WO03/093264、WO03/093251、WO03/093253、WO2004/039800、WO2004/039370、WO2005/030731、WO2005/014553、USSN10/957,251、WO2004/089911、WO02/081435、WO02/081433、WO03/018543、WO2004/031137、WO2004/031139、WO2004/031138、WO2004/101538、WO2004/101539及びWO02/47671に記載される化合物(例えば、LY−450139)が挙げられる。
【0087】
本発明の化合物はまた、PARP阻害剤と組合せて、がんを治療又は予防するのに有用であり得る。
【0088】
本発明の化合物はまた、以下の治療薬と組合せて、がんを治療するのに有用であり得る:アバレリックス(プレナキシス・デポー(Plenaxis depot)(登録商標));アルデスロイキン(プロキン(Prokine)(登録商標));アルデスロイキン(プロロイキン(Proleukin)(登録商標));アレムツヅマブ(カンパス(登録商標));アリトレチノイン(パンレチン(登録商標));アロプリノール(ジロプリム(Zyloprim)(登録商標));アルトレタミン(ヘキサレン(登録商標));アミホスチン(エチオール(Ethyol)(登録商標));アナストロゾール(アリミデックス(登録商標));三酸化ヒ素(トリセノックス(登録商標));アスパラギナーゼ(エルスパール(Elspar)(登録商標));アザシチジン(ビダザ(Vidaza)(登録商標));ベバクジマブ(bevacuzimab)(アバスチン(登録商標));ベキサロテンカプセル(タルグレチン(登録商標));ベキサロテンゲル(タルグレチン(登録商標));ブレオマイシン(ブレノキサン(Blenoxane)(登録商標));ボルテゾミブ(ベルケード(登録商標));ブスルファン静脈内(ブスルフェクス(登録商標));ブスルファン経口(ミレラン(登録商標));カルステロン(メトサルブ(Methosarb)(登録商標));カペシタビン(ゼローダ(登録商標));カルボプラチン(パラプラチン(登録商標));カルムスチン(BCNU(登録商標)、BiCNU(登録商標));カルムスチン(グリアデル(登録商標));ポリフェプロサン(Polifeprosan)20インプラントを伴うカルムスチン(グリアデル ウエハー(登録商標));セレコキシブ(セレブレックス(登録商標));セツキシマブ(アービタックス(登録商標));クロラムブシル(ロイケラン(登録商標));シスプラチン(プラチノール(登録商標));クラドリビン(ロイスタチン(登録商標)、2−CdA(登録商標));クロファラビン(クロラー(Clolar)(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン(登録商標)、ネオサール(Neosar)(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン注射(登録商標));シクロホスファミド(シトキサン錠剤(登録商標));シタラビン(シトサール(Cytosar)−U(登録商標));シタラビンリポソーム(デポシト(DepoCyt)(登録商標));ダカルバジン(DTIC−ドム(Dome)(登録商標));ダクチノマイシン、アクチノマイシンD(コスメゲン(登録商標));ダルベポエチンアルファ(アラネスプ(登録商標));ダウノルビシンリポソーム(ダムオキソーム(DanuoXome)(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(ダウノルビシン(登録商標));ダウノルビシン、ダウノマイシン(セルビジン(登録商標));デニロイキンジフチトクス(オンタック(Ontak)(登録商標));デクスラゾキサン(ジネカード(Zinecard)(登録商標));ドセタキセル(タキソテール(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシンPFS(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシン(登録商標)、ルベックス(Rubex)(登録商標));ドキソルビシン(アドリアマイシンPFS注射(登録商標));ドキソルビシンリポソーム(ドキシル(Doxil)(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(ドロモスタノロン(登録商標));プロピオン酸ドロモスタノロン(マステロン注射(登録商標));エリオットB溶液(Elliott’s B Solution)(エリオットB溶液(Elliott’s B Solution)(登録商標));エピルビシン(エレンス(Ellence)(登録商標));エポエチンアルファ(エポゲン(登録商標));エルロチニブ(タルセバ(登録商標));エストラムスチン(エムシト(Emcyt)(登録商標));リン酸エトポシド(エトポフォス(Etopophos)(登録商標));エトポシド、VP−16(ベプシド(登録商標));エキセメスタン(アロマシン(登録商標));フィルグラスチム(ニューポジェン(登録商標));フロクスウリジン(動脈内)(FUDR(登録商標));フルダラビン(フルダラ(登録商標));フルオロウラシル、5−FU(アドルシル(Adrucil)(登録商標));フルベストラント(ファスロデックス(登録商標));ゲフィチニブ(イレッサ(登録商標));ゲムシタビン(ジェムザール(登録商標));ゲムツズマブオゾガマイシン(マイロターグ(登録商標));酢酸ゴセレリン(ゾラデックスインプラント(登録商標));酢酸ゴセレリン(ゾラデックス(登録商標));酢酸ヒストレリン(ヒストレリンインプラント(登録商標));ヒドロキシ尿素(ハイドレア(登録商標));イブリツモマブ・ティウキセタン(ゼバリン(登録商標));イダルビシン(イダマイシン(登録商標));イフォスファミド(IFEX(登録商標));メシル酸イマチニブ(グリーベック(登録商標));インターフェロンアルファ2a(ロフェロンA(登録商標));インターフェロンアルファ−2b(イントロンA(登録商標));イリノテカン(カンプトサール(登録商標));レナリドマイド(レブリミド(登録商標));レトロゾール(フェマーラ(登録商標));ロイコボリン(ウェルコボリン(Wellcovorin)(登録商標)、ロイコボリン(登録商標));酢酸ロイプロリド(エリガード(登録商標));レバミソール(エルガミソル(Ergamisol)(登録商標));ロムスチン、CCNU(CeeBU(登録商標));メクロレタミン、ナイトロジェンマスタード(マスタージェン(登録商標));酢酸メゲストロール(メゲース(登録商標));メルファラン、L−PAM(アルケラン(登録商標));メルカプトプリン、6−MP(プリネトール(登録商標));メスナ(メスネックス(登録商標));メスナ(メスネックスタブ(登録商標));メトトレキサート(メトトレキサート(登録商標));メトキサレン(ウバデックス(Uvadex)(登録商標));マイトマイシンC(ムタマイシン(登録商標));ミトタン(リソドレン(登録商標));ミトキサントロン(ノバントロン(登録商標));フェンプロピオン酸ナンドロロン(デュラボリン−50(登録商標));ネララビン(アラノン(Arranon)(登録商標));ノフェツモマブ(Nofetumomab)(ベルルマ(Verluma)(登録商標));オプレルベキン(ニューメガ(Neumega)(登録商標));オキサリプラチン(エロキサチン(登録商標));パクリタキセル(パキセン(Paxene)(登録商標));パクリタキセル(タキソール(登録商標));パクリタキセルタンパク質結合粒子(アブラキサン(登録商標));パリフェルミン(ケピバンス(Kepivance)(登録商標));パミドロネート(アレディア(登録商標));ペガデマーゼ(アダジェン(ペガデマーゼウシ)(登録商標));ペガスパルガーゼ(オンカスパール(Oncaspar)(登録商標));ベグフィルグラスチム(Pegfilgrastim)(ニューラスタ(登録商標));ペメトレキセド二ナトリウム(アリムタ(登録商標));ペントスタチン(ニペント(Nipent)(登録商標));ピポブロマン(ベルサイト(Vercyte)(登録商標));プリカマイシン、ミトラマイシン(ミトラシン(Mithracin)(登録商標));ポルフィマーナトリウム(フォトフリン(登録商標));プロカルバジン(マツラン(登録商標));キナクリン(アタブリン(登録商標));ラスブリカーゼ(エリテック(Elitek)(登録商標));リツキシマブ(リツキサン(登録商標));サルグラモスチム(ロイキン(登録商標));サルグラモスチム(プロキン(Prokine)(登録商標));ソラフェニブ(ネクサバール(登録商標));ストレプトゾシン(ザノサール(登録商標));マレイン酸スニチニブ(ステント(Sutent)(登録商標));タルク(スクレロソール(登録商標));タモキシフェン(ノルバデックス(登録商標));テモゾロミド(テモダール(登録商標));テニポシド、VM−26(ブモン(Vumon)(登録商標));テストラクトン(テスラック(Teslac)(登録商標));チオグアニン、6−TG(チオグアニン(登録商標));チオテパ(チオプレックス(Thioplex)(登録商標));トポテカン(ハイカムチン(登録商標));トレミフェン(フェアストン(登録商標));トシツモマブ(ベキサール(登録商標));トシツモマブ/I−131トシツモマブ(ベキサール(登録商標));トラスツズマブ(ヘルセプチン(登録商標));トレチノイン、ATRA(ベサノイド(登録商標));ウラシルマスタード(ウラシルマスタードカプセル(登録商標));バルルビシン(バルスター(Valstar)(登録商標));ビンブラスチン(ベルバン(Velban)(登録商標));ビンクリスチン(オンコビン(登録商標));ビノレルビン(ナベルビン(登録商標))及びゾレドロネート(ゾメタ(登録商標))。
【0089】
したがって、本発明の範囲は、この特許請求される化合物の、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、生来多剤耐性の阻害剤、制吐剤、貧血の治療において有用な薬剤、好中球減少症の治療において有用な薬剤、免疫増強薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤、細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤及び上記で列挙される治療薬のいずれかから選択される第2の化合物と組合せた使用を包含する。
【0090】
本発明の化合物に関連して、用語「投与」及びその変形(例えば、化合物を「投与すること」)とは、化合物又は化合物のプロドラッグを、治療を必要とする動物の系に導入することを意味する。本発明の化合物又はそのプロドラッグが、1種以上のその他の活性物質(例えば、細胞傷害剤など)と組合せて提供される場合には、「投与」及びその変形は、本化合物又はそのプロドラッグとその他の物質の同時及び逐次導入を含むと各々理解される。
【0091】
本明細書において、用語「組成物」とは、指定量の指定成分を含む生成物並びに指定量の指定成分の組合せに直接的又は間接的に起因する任意の生成物を包含するものとする。
【0092】
本明細書において用語「治療上有効な量」とは、研究者、獣医、医師又はその他の臨床医によって求められている、組織、系、動物又はヒトにおける生物学的反応又は医学的反応を誘発する活性化合物又は医薬品の量を意味する。
【0093】
用語「がんを治療すること」又は「がんの治療」とは、がん性状態に冒された哺乳動物への投与を指し、またがん性細胞を死滅させることによってがん性状態を軽減する効果だけでなく、がんの増殖及び/又は転移の阻害をもたらす効果も指す。
【0094】
一実施態様では、第2の化合物として用いられる血管新生阻害剤は、チロシンキナーゼ阻害剤、上皮由来増殖因子の阻害剤、繊維芽細胞由来増殖因子の阻害剤、血小板由来増殖因子の阻害剤、MMP(マトリックスメタロプロテアーゼ)阻害剤、インテグリン遮断薬、インターフェロン−α、インターロイキン−12、ペントサンポリサルフェート、シクロオキシゲナーゼ阻害剤、カルボキシアミドトリアゾール、コンブレタスタチンA−4、スクアラミン、6−O−クロロアセチル−カルボニル)−フマギロール、サリドマイド、アンギオスタチン、トロポニン−1又はVEGFに対する抗体から選択される。一実施態様では、エストロゲン受容体モジュレーターは、タモキシフェン又はラロキシフェンである。
【0095】
治療上有効な量の本発明の化合物を、放射線療法と組合せて、及び/又はエストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、生来多剤耐性の阻害剤、制吐剤、貧血の治療において有用な薬剤、好中球減少症の治療において有用な薬剤、免疫増強薬、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤、細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤及び上記で列挙される治療薬のいずれかから選択される第2の化合物と組合せて投与することを含むがんを治療する方法も、特許請求の範囲に含まれる。
【0096】
本発明の更にもう1つの実施態様は、治療上有効な量の本発明の化合物を、パクリタキセル又はトラスツズマブと組合せて投与することを含む、がんを治療する方法である。
【0097】
本発明は、治療上有効な量の本発明の化合物を、COX−2阻害剤と組合せて投与することを含む、がんを治療又は予防する方法を更に包含する。
【0098】
本発明はまた、治療上有効な量の本発明の化合物と、エストロゲン受容体モジュレーター、アンドロゲン受容体モジュレーター、レチノイド受容体モジュレーター、細胞傷害剤/細胞増殖抑制剤、抗増殖剤、プレニル−タンパク質トランスフェラーゼ阻害剤、HMG−CoAレダクターゼ阻害剤、HIVプロテアーゼ阻害剤、逆転写酵素阻害剤、血管新生阻害剤、PPAR−γアゴニスト、PPAR−δアゴニスト、細胞増殖及び生存シグナル伝達の阻害剤、ビスホスホネート、アロマターゼ阻害剤、siRNA治療薬、γ−セクレターゼ阻害剤、受容体チロシンキナーゼ(RTK)を干渉する薬剤、細胞周期チェックポイントを干渉する薬剤及び上記で列挙される治療薬のいずれかから選択される第2の化合物とを含む、がんを治療又は予防するのに有用な医薬組成物を含む。
【0099】
特定される、すべての特許、刊行物及び係属特許出願は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0100】
化学の説明において、及び以下の実施例において用いられる略語は以下の通りである:AEBSF(p−アミノエチルベンゼンスルホニルフルオリド);BocO(ジ−tert−ブチルジカーボネート);BSA(ウシ血清アルブミン);BuLi(n−ブチルリチウム);CDCl(クロロホルム−d);CuI(ヨウ化銅);CuSO(硫酸銅);DCE(ジクロロエタン);DCM(ジクロロメタン);DEAD(ジエチルアゾジカルボキシレート);DMAP(4−アミノピリジン);DMF(N,N−ジメチルホルムアミド);DMSO(ジメチルスルホキシド);DTT(ジチオトレイトール);EDTA(エチレン−ジアミン四酢酸);EGTA(エチレン−グリコール四酢酸);EtOAc(酢酸エチル);EtOH(エタノール);HOAc(酢酸);HPLC(高速液体クロマトグラフィー);HRMS(高分解能質量スペクトル);LCMS(液体クロマトグラフ−質量分析計);LHMDS(リチウムビス(トリメチルシリル)アミド);LRMS(低分解能質量スペクトル);MeOH(メタノール);MP−B(CN)H(マクロ多孔性シアノボロヒドリド);NaHCO(炭酸水素ナトリウム);NaSO(硫酸ナトリウム);Na(OAc)BH(ナトリウムトリアセトキシボロヒドリド);NHOAc(酢酸アンモニウム);NBS(N−ブロモスクシンアミド);NMP(1−メチル−2−ピロリジノン);NMR(核磁気共鳴);PBS(リン酸緩衝生理食塩水);PCR(ポリメラーゼ連鎖反応);Pd(dppf)([1,1’−ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム);Pd(Ph(パラジウム(0)テトラキス−トリフェニルホスフィン);POCl(オキシ塩化リン);PS−DIEA(ポリスチレンジイソプロピルエチルアミン);PS−PPh(ポリスチレン−トリフェニルホスフィン);PTSA(パラ−トルエンスルホン酸);RaNi(ラネー−ニッケル);Selectfluor(1−クロロメチル−4−フルオロ−1,4−ジアゾニアビシクロ[2.2.2]オクタンビス(テトラフルオロボレート);TBAF(テトラブチルアンモニウムフルオリド);THF(テトラヒドロフラン);TFA(トリフルオロ酢酸);及びTMSCH(トリメチルシリルジアゾメタン)。
【0101】
本発明の化合物は、以下の反応スキームに示される反応、更に、文献において公知であるか、又は実験手順に示されるその他の標準的な操作を用いることによって調製できる。したがって、以下の例示的反応スキームは、列挙される化合物に、又は例示目的のために用いられた任意の特定の置換基に限定されない。反応スキームにおいて示される置換基番号付けは、特許請求の範囲において用いられるものと必ずしも関連しておらず、本明細書において上記の式Aの定義下で複数の置換基が場合により認められる場合には、わかりやすくするために、しばしば化合物と結合される単一の置換基が示される。
【0102】
本発明の化合物を製造するために用いられる反応は、反応スキームIに示される反応を用いることによって調製される。
【0103】
反応スキームの概要
反応スキームIに示されるように、アミノ安息香酸を、エチルクロロアセテートを用いて環化し、ベンゾオキサジノン(A−1)を提供できる。この潜在性求電子物質を、アセト酢酸メチルのナトリウム陰イオンと反応させ、アクリレートA−2を提供できる。A−2は、ナトリウムメトキシドの処理の際、内部環化し、カルボキシル基が除去され、4−ヒドロキシキノリノンA−3を提供できる。マイクロ波加熱下で、ピラゾロキノリノン(A−4)が、ヒドラジン及び酸触媒から形成され得る。選択的ベンジル保護は、ピラゾール窒素で起こり、N−ベンジル化ピラゾロキノリノン(A−5)が得られ、これを炭酸セシウムの存在下、種々のブロミドによってアルキル化させて、N−アルキル化化合物(A−6)を得ることができる。次いで、炭素上パラジウムを用いる水素化によってベンジル基を除去し、A−7を提供できる。HClでのアルキルアミンのBOC基脱保護によって、十分に合成されたピラゾロキノリノン(A−8)が得られる。
【0104】
【化2】

【0105】
実施例
提供される実施例は、本発明の更なる理解に役立つよう意図される。用いられる個々の物質、種及び条件は、本発明の更なる例示であり、その合理的範囲を制限するものではないものとする。表された化合物の合成において利用される試薬は、市販されているか、当業者によって容易に調製される。
【0106】
【化3】

【0107】
3−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−カルボン酸(1−2)
90℃の、1:1イソプロパノール:水(400mL)中、活性化ラネーニッケル(アルミニウム上の水中50%スラリー、200g;700mmol、13当量)及び3−アミノ−2−ナフトエ酸(1−1)(10g、53mmol、1当量)の混合物に、1%NaOH水溶液(200mL)を1時間かけて加えた。反応混合物を90℃で16時間撹拌し、更にラネーニッケル(50g、180mmol、3.4当量)を加え、得られた混合物を90℃で24時間加熱した。この混合物を濾過し、濾液を200mLの水に濃縮し、1Nの塩酸水溶液の添加でpH=3にし、生成物を沈殿させた。灰白色の沈殿を濾過し、逆相液体クロマトグラフィー(HO/CHCN勾配w/0.1%TFA存在)によって精製すると、3−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−カルボン酸(1−2)が白色固体として得られた。LRMSm/z(M+H)実測値192.2,要求値192.1。
【0108】
2−エトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ナフト[2,3−d][1,3]オキサジン−4−オン(1−3)
窒素下、−10℃のピリジン(50mL)中、3−アミノ−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−カルボン酸(1−2)(5.0g、26mmol、1当量)の溶液に、クロロギ酸エチル(10mL、11g、100mmol、4.0当量)を1時間かけて滴下した。得られた溶液を、20時間かけて−10℃〜23℃で撹拌した。この溶媒を減圧下で蒸発させ、固体残渣を1時間撹拌しながら、水(100mL)に懸濁した。沈殿物を濾過し、水で洗浄し、乾燥させると、2−エトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ナフト[2,3−d][1,3]オキサジン−4−オン(1−3)が黄色の固体として得られた。LRMS m/z(M+H)実測値246.4,要求値246.1。
【0109】
メチル (2Z)−2−アセチル−3−{3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}−3−ヒドロキシプロパ−2−エノエート(1−4)
窒素下、無水ベンゼン(100mL)中、水素化ナトリウム(95%)(0.80g、33mmol、2.1当量)の分散物に、アセト酢酸メチル(5.0mL、5.4g、46mmol、2.9当量)を滴下し、得られた混合物を、23℃で1時間撹拌した。2−エトキシ−6,7,8,9−テトラヒドロ−4H−ナフト[2,3−d][1,3]オキサジン−4−オン(1−3)(3.8g、16mmol、1当量)を加え、反応混合物を20時間撹拌した。水を用いて過剰の水素化ナトリウムをクエンチし、有機層を分離し、水で3回抽出し、濃塩酸溶液を用いて合わせた水層を酸性にした。得られた沈殿を濾過し、乾燥させると、メチル (2Z)−2−アセチル−3−{3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}−3−ヒドロキシプロパ−2−エノエート(1−4)が黄色のオイルとして得られた。LRMS m/z(M+H)実測値362.5,要求値362.2。
【0110】
3−アセチル−4−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾ[g]キノリン−2(1H)−オン(1−5)
窒素下、23℃のベンゼン(100mL)中、水素化ナトリウム(95%)(0.70g、29mmol、2.6当量)の混合物に、メタノール(2.5mL、2.0g、62mmol、5.4当量)を10分間かけて滴下した。更に5分間撹拌した後、メチル (2Z)−2−アセチル−3−{3−[(エトキシカルボニル)アミノ]−5,6,7,8−テトラヒドロナフタレン−2−イル}−3−ヒドロキシプロパ−2−エノエート(1−4)(4.1g、11mmol、1当量)を加え、得られた混合物を72℃で20時間加熱した。溶媒を減圧下で蒸発させ、固体残渣を、撹拌しながら、水(50mL)に30分間、続いて1Nの塩酸水溶液(100mL)に更に30分間懸濁させた。固体を濾過し、水(100mL)及びヘキサン(100mL)で洗浄し、乾燥させると、3−アセチル−4−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾ[g]キノリン−2(1H)−オン(1−5)が灰白色固体として得られた。LRMS m/z(M+H)実測値258.4,要求値258.1。
【0111】
3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−6)
DMA(30mL)中、3−アセチル−4−ヒドロキシ−6,7,8,9−テトラヒドロベンゾ[g]キノリン−2(1H)−オン(1−5)(2.0g、7.8mmol、1当量)、ヒドラジン(0.40mL、0.41g、13mmol、1.6当量)及び触媒濃塩酸溶液(2滴)の混合物を、窒素下、140℃で16時間加熱した。この溶液を冷却し、水(30mL)で希釈した。沈殿を濾過し、ヘキサン(3×100mL)で洗浄し、乾燥させると、3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−6)が灰白色固体として得られた。H NMR(500MHz,DMSO−d)δ13.51(s,1H),10.99(s,1H),7.70(s,1H)7.04(s,1H),2.78(m,4H),2.59(s,3H),1.76(m,4H).LRMS m/z(M+H)実測値254.4,要求値254.1。
【0112】
2−ベンジル−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−7)
窒素下、DMF(100mL)中、3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−6)(10.2g、40.3mmol、1当量)及び炭酸カリウム(30.0g、217mmol、5.38当量)の混合物に、臭化ベンジル(35.0g、205mmol、5.09当量)を加え、得られた混合物を23℃で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾過された固体をエーテル(3×200mL)、続いて、水(3×250mL)で洗浄し、乾燥させると、2−ベンジル−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−7)が、白色固体として得られた。LRMS m/z(M+H)実測値344.2,要求値344.2。
【0113】
tert−ブチル 3−ブロモ−2−フルオロプロピルカルバメート(1−9)
ジクロロメタン(250mL)中のNBS(20g、110mmol、3.0当量)の懸濁液に、ジクロロメタン(100mL)中のトリフェニルホスフィン(28g、110mmol、3.0当量)を滴下した。添加が完了した後、反応混合物を10分間撹拌し、ジクロロメタン(100mL)中のtert−ブチル 2−フルオロ−3−ヒドロキシプロピルカルバメート(1−8)(7.0g、36mmol、1当量)の溶液、続いて、ピリジン(3.5g、44mmol、1.2当量)を加えた。得られた混合物を、窒素下、23℃で16時間撹拌した。反応溶液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(1時間かけて100%ヘキサンから100%酢酸エチル、ニンヒドリン染色による分析)によって精製すると、tert−ブチル 3−ブロモ−2−フルオロプロピルカルバメート(1−9)が、透明なオイルとして得られた。H NMR(500MHz,CDCl)δ4.89−4.68(m,2H),3.55−3.40(m,2H),1.45(s,9H)。
【0114】
tert−ブチル 3−(2−ベンジル−3−メチル−4−オキソ−2,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−5H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−5−イル)−2−フルオロプロピルカルバメート(1−10)
DMF(100mL)中、2−ベンジル−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−7)(8.0g、23mmol、1当量)及び炭酸セシウム(37g、110mmol、4.9当量)の混合物に、tert−ブチル 3−ブロモ−2−フルオロプロピルカルバメート(1−9)(7.1g、27.7mmol、1.2当量)を加え、得られた混合物を40℃で16時間撹拌した。反応混合物を濾過し、濾液を濃縮し、シリカゲルクロマトグラフィー(1時間かけて100%ヘキサンから100%酢酸エチル)によって精製すると、tert−ブチル 3−(2−ベンジル−3−メチル−4−オキソ−2,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−5H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−5−イル)−2−フルオロプロピルカルバメート(1−10)が白色固体として得られた。LRMS m/z(M+H)実測値519.2,要求値519.3。
【0115】
tert−ブチル 2−フルオロ−3−(3−メチル−4−オキソ−2,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−5H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−5−イル)プロピルカルバメート(1−11)
DMF(10mL)及びメタノール(10mL)中、tert−ブチル 3−(2−ベンジル−3−メチル−4−オキソ−2,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−5H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−5−イル)−2−フルオロプロピルカルバメート(1−10)(0.10g、0.19mmol、1当量)及び10%炭素上パラジウム(300mg)の混合物を、水素バルーン下、23℃で72時間撹拌した。得られた懸濁液を濾過し、濾液を濃縮すると、tert−ブチル 2−フルオロ−3−(3−メチル−4−オキソ−2,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−5H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−5−イル)プロピルカルバメート(1−11)が得られた。LRMS m/z(M+H)実測値429.2,要求値429.2。
【0116】
tert−ブチル 5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−12)
DMF(10mL)中、tert−ブチル 2−フルオロ−3−(3−メチル−4−オキソ−2,4,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−5H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−5−イル)プロピルカルバメート(1−11)(0.083g、0.19mmol、1当量)及びBocO(0.05g、0.23mmol、1.2当量)の溶液に、DMAP(0.005g、0.04mmol、0.2当量)を加え、得られた溶液を23℃で3時間撹拌した。溶液を濃縮し、残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(1時間かけて100%ヘキサンから100%酢酸エチル)によって精製すると、tert−ブチル5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−12)が白色固体として得られた。LRMS m/z(M+H)実測値529.3,要求値529.3。
【0117】
メタノール(10mL)中のtert−ブチル 5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−12、130mg、0.246mmol)のラセミ混合物の溶液に、ジオキサン中の4NのHCl溶液(10mL)を加え、得られた溶液を23℃で16時間撹拌した。透明なゲル沈殿物を濾過し、濾過された固体を酢酸エチルで洗浄し、水に溶解し、濃縮すると、5−(3−アミノ−2−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オンのラセミ混合物の塩酸塩が、白色固体として得られた(1−12a)。H NMR(500MHz,CDOD)δ7.76(s,1H),7.39(s,1H),5.20(m,1H),4.66(m,2H),3.46(m,2H),2.94(m,4H),2.71(s,3H),1.87(m,4H)。LRMS m/z(M+H)実測値329.2,要求値329.2。
【0118】
tert−ブチル 5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(R)−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−13)及び(2−S)−tert−ブチル 5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(S)−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−14)
tert−ブチル 5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−12)のラセミ混合物を、Chiralcel OD(5cm×50cm、20μ)プレップカラムを用い、90mL/分で80%ヘキサン/20%イソプロパノール勾配を用いてその成分エナンチオマーに分割すると、tert−ブチル 5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(R)−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−13)及び(2−S)−tert−ブチル 5−{3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2−(S)−フルオロプロピル}−3−メチル−4−オキソ−4,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−2H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−2−カルボキシレート(1−14)が、白色固体として得られた。LRMS m/z(M+H)実測値529.3,要求値529.3。
【0119】
5−(3−アミノ−2−(R)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−15)及び5−(3−アミノ−2−(S)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−16)
分離した、メタノール(20mL)中、5−(3−アミノ−2−(R)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−13)(0.60g、1.1mmol、1当量)及び5−(3−アミノ−2−(S)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−14)(0.70g、1.3mmol、1当量)の溶液に、ジオキサン中の4NのHCl溶液(30mL)を加え、得られた溶液を40℃で16時間撹拌した。透明なゲル沈殿物を濾過し、濾過された固体を酢酸エチルで洗浄し、水に溶解し、濃縮すると、5−(3−アミノ−2−(R)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−15)及び5−(3−アミノ−2−(S)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−16)の塩酸塩が、白色固体として得られた。H NMR(500MHz,CDOD)δ7.76(s,1H),7.39(s,1H),5.20(m,1H),4.66(m,2H),3.46(m,2H),2.94(m,4H),2.71(s,3H),1.87(m,4H)。LRMS m/z(M+H)実測値329.2,要求値329.2。
【0120】
5−(3−アミノ−2,2−ジフルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン(1−17)は、3−[(tert−ブトキシカルボニル)アミノ]−2,2−ジフルオロプロピル・トリフルオロメタンスルホネートをアルキル化剤として用い、上記の方法によって調製した。
【0121】
【表1】

【0122】
実施例1〜9
本発明の種々の特徴及び利点を更に説明するために実施例を以下に提供する。これらの実施例はまた、本発明を実施するための有用な方法論を示す。これらの実施例は特許請求される発明を制限するものではない。
実施例1:リアルタイムPCRを用いるCHK1sv1の同定
化合物の阻害特性の測定を容易にするには、CHK1をコードするエキソン領域の「正常な」スプライシングの変異体を同定することが望ましい。特に、CHK1のC末端調節ドメインの喪失をもたらす天然に存在するスプライシング変異が求められた。C末端の欠失は、CHK1に対しより大きなキナーゼ活性を付与する(チェン(Chen)ら、2000、セル(Cell)100:681〜692頁;カツラギ(Katsuragi)及びサガタ(Sagata)、2004、モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・セル(Molecular Biology of the cell)15:1680〜1689頁)。エキソン2〜8は、触媒キナーゼドメインをコードし、エキソン9はリンカー領域をコードしている。SQ及びC末端調節ドメインは、エキソン10〜13内に位置している(サンチェス(Sanchez)ら、1997、277:1497〜1501頁;カツラギ(Katsuragi)及びサガタ(Sagata)、2004、モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・セル(Molecular Biology of the cell)15:1680〜1689頁)。リアルタイムPCR実験及びRT−PCRを用いて、ヒトCHK1 mRNAの新規スプライス変異体の存在を同定し、確認した。CHK1阻害ドメインのC末端切断をコードする天然に存在するスプライス変異体を、化合物の阻害特性を調べるために有用なCHK1キナーゼアッセイにおける使用のために、同定し、クローニングし、発現させ、精製した。
【0123】
RT−PCR
エキソン8〜11に相当する領域中のCHK1 mRNAの構造を、RT−PCRに基づくアッセイを用いて、ヒト精巣から抽出したRNAについて調べた。ヒト精巣から単離した全RNAはBD Biosciences Clontech(Palo Alto、CA)から入手した。CHK1中の参照エキソンコード配列(NM_001274)のエキソン8及びエキソン11中の配列に対して相補的であるRT−PCRプライマーを選択した。CHK1 mRNAのヌクレオチド配列に基づいて、CHK1エキソン8及びエキソン11プライマーセット(本明細書において以下、CHK18−11プライマーセット)は、「参照」CHK1 mRNA領域に相当する478塩基対アンプリコンを増幅すると予想された。CHK18−11プライマーセットは、エキソン9からエキソン11への選択的スプライシングを有する転写物中の300塩基対アンプリコンを増幅すると予想された。CHK1エキソン8フォワードプライマーは以下の配列を有する:
5’ATCAGCAAGAATTACCATTCCAGACATC3’(配列番号1);またCHK1エキソン11リバースプライマーは以下の配列を有する:
5’CATACAACTTTTCTTCCATTGATAGCCC3’(配列番号2)。
【0124】
ヒト精巣由来の全RNAを、Qiagen,Inc.(Valencia、CA)、One−Step RT−PCRキットを用い、以下のサイクリング条件を用いて一段階逆転写−PCR増幅プロトコールに付した:
1)50℃で30分間、
2)95℃で15分間、
3)94℃で30秒間、
63.5℃で40秒間、
72℃で50秒間、次いで、
72℃で10分間の35サイクル。
【0125】
RT−PCR増幅産物(アンプリコン)は、2%アガロースゲルでサイズ分画した。250〜350塩基対アンプリコンに相当する選択した断片を、ゲルから手作業で抽出し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製したアンプリコン断片を、CHK18−11プライマーセットを用いて再増幅し、これらのアンプリコンをアガロースゲルでサイズ分画した。250〜350塩基対アンプリコンに相当する断片を、ゲルから手作業で抽出し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製したアンプリコン断片を、CHK18−11プライマーセットを用いてもう一度再増幅した。アガロースゲルでサイズ分画した後、250〜350塩基対アンプリコンを手作業で抽出し、精製したアンプリコン断片(Qiagen Gel Extraction Kit)を、TOPO TA クローニングキット(Invitrogen、Carlsbad、CA)とともに提供される試薬及び使用説明書を用いてInvitrogen pCR2.1ベクターにクローニングした。次いで、クローンを、全部で6600個のクローンについて、プレートあたり440コロニーのプールで、15枚のプレートにプレーティングした。各プレートから、プールした440個のコロニーからDNAを抽出し、リアルタイムPCRの鋳型として用いた。
【0126】
リアルタイムPCR/TAQman
CHK1参照タンパク質(NP_001265)の選択的スプライシングアイソフォームの存在を調べるために、リアルタイムPCRアッセイを用いた。
【0127】
CHK1sv1アイソフォームを検出するために用いたTAQmanプライマー及びプローブは、プレセット混合物として設計し、合成されていた(Applied Biosystems、Foster City、CA)。CHK1参照型(配列番号3、4及び5)及びCHK1sv1アイソフォーム(配列番号6、7及び8)を検出するために用いたTAQmanプライマー及びプローブの配列を、表1に示す。スプライスジャンクション特異的プローブは、5’末端で6−FAMフルオロフォアを用いて(FAM)、また3’末端で非蛍光クエンチャーを用いて(NFQ)標識した。リアルタイムPCRは、TaqMan Universal PCR Master Mix(Applied Biosystems、Foster City、CA)を用いてヒト精巣cDNAで実施した。TAQman反応は以下を含んでいた:
【0128】
【表2】

【0129】
TAQman反応は、ABI Prism 7900HT Sequence Detection System(Applied Biosystems、Foster City、CA)で実施した。サーモサイクリング条件は50℃で2分間、95℃で10分間及び95℃を15秒間と60℃を1分間の40サイクルとした。蛍光発光のデータ解析は、Sequence Detector Software(SDS)(Applied Biosystems、Foster City、CA)によって実施した。
【0130】
TAQmanアッセイの結果は、15プレートのうち13プレートに由来するプールされたDNAは、選択的エキソン9からエキソン11へのスプライスジャンクションに相当するクローンを有すると思われるということを示した。440コロニーに相当する、これらの陽性プールのうちの1つに由来するDNAを用いて細菌宿主細胞を形質転換した。クローンを、プレートあたり55コロニーのプールで、全部で12枚のプレートにプレーティングした。12枚のプレート各々上のコロニーを再度プールし、TAQmanアッセイに用いた。12枚のプレートのうち1枚に由来するプールされたDNAは、選択的エキソン9からエキソン11へのスプライスジャンクションに相当するクローンを有すると思われた。この陽性プレート上の55コロニーを、TAQmanアッセイを用いて個々にスクリーニングし、1つのクローンを、選択的エキソン9からエキソン11へのスプライスジャンクションを有すると同定した。次いで、この陽性クローンを、CHK1エキソン8フォワードプライマー(配列番号1)及び配列5’TGCATCCAATTTGGTAAAGAATCG3’(配列番号9)を有する異なるエキソン11リバースプライマーを用いて各末端から配列決定した。
【0131】
クローンの配列分析により、CHK1へテロ核RNAのエキソン9からエキソン11への選択的スプライシングの予想配列とマッチするということ、すなわち、エキソン10のコード配列が完全に存在しないということが示された。
【0132】
実施例2:CHK1sv1のクローニング
リアルタイムPCR、RT−PCR及び配列決定データは、精巣組織及びMOLT−4及びダウジ(Daudi)細胞株では、CHK1タンパク質、NP_001265をコードする正常なCHK1参照mRNA配列、NM_001274の他に、CHK1 mRNAの新規のスプライス変異体型も存在するということを示す。
【0133】
実施例1において同定されたCHK1sv1スプライス変異体を含むヌクレオチド配列を有するクローンを、酵母において組換え媒介性プラスミド構築物を用いて単離した。2種のプライマー対のセットを用いて、CHK1sv1の全mRNAコード配列を増幅し、クローニングした。CHK1sv1の場合には、リアルタイム定量的PCR分析により、このスプライス変異体型の転写物は極めて低いレベルで存在するということが示された。CHK1sv1をクローニングするために、参照CHK1(NM_001274)のコード配列を含むクローンを、所望のエキソン9からエキソン11へのスプライスジャンクションを生じるよう設計された80塩基対リンカーを用いて、酵母における更なる組換えステップによって変更した。
【0134】
CHK1sv1に対応する全長クローンを単離するために、5’「フォワード」プライマー及び3’「リバース」プライマーを設計した。5’「フォワード」CHK1sv1プライマーを、5’TTACTGGCTTATCGAAATTAATACGACTCACTATAGGGAGGAGTCATGGCAGTGCCCTTTGT3’(配列番号10)というヌクレオチド配列を有するよう、またCHK1 mRNA(NM_001274)のエキソン2と相補的である配列を有するよう設計した。3’「リバース」CHK1sv1プライマーは、5’TAGAAGGCACAGTCGAGGCTGATCAGCGGGTTTAAACTCATGCATCCAATTTGGTAAAGAATCG3’(配列番号11)というヌクレオチド配列を有するよう、またCHK1 mRNA(NM_001274)のエキソン11と相補的である配列を有するよう設計した。イタリック体で示したプライマー配列の5’末端の40ヌクレオチドは、PCRアンプリコンに組み込まれ、その後の酵母におけるプラスミド組換え事象を容易にする「テール」である。これらのCHK1sv1「フォワード」及び「リバース」プライマーは、参照CHK1 mRNA(NM_001274)のコード配列を増幅すると予測され、次いで、これをその後の組換えクローニングステップにおいて用い、CHK1sv1特異的配列を作製した。
【0135】
RT−PCR
CHK1sv1 cDNA配列を、逆転写(RT)及びポリメラーゼ連鎖反応(PCR)の組合せを用いてクローニングした。より詳しくは、約25ngのMOLT−4細胞株mRNA(BD Biosciences Clontech、Palo Alto、CA)を、スーパースクリプトII(Gibco/Invitrogen、Carlsbad、CA)及びオリゴd(T)プライマー(RESGEN/Invitrogen、Huntsville、AL)を用い、スーパースクリプトII製造業者の使用説明書に従って逆転写した。PCRのために、40μlの水、5μlの10×バッファー、1μlのdNTP及び1μlのClontech(Palo Alto、CA)Advantage2PCRキットから得た酵素に、1μlの完了したRT反応物を加えた。PCRは、CHK1sv1のCHK1sv1「フォワード」及び「リバース」プライマー(配列番号10、11)を用いて、Gene Amp PCR System 9700(Applied Biosystems、Foster City、CA)で実施した。最初の94℃、1分間の変性の後、94℃で30秒間の変性と、それに続く、63.5℃で40秒間のアニーリング及び72℃で50秒間の合成を用いて、35サイクルの増幅を実施した。35サイクルのPCRに、72℃で10分間の伸長を続けた。次いで、50μlの反応物を4℃に冷却した。得られた反応生成物の10μlを1%アガロース(Invitrogen、Ultra pure)ゲルに流し、0.3μg/mlの臭化エチジウム(Fisher Biotech、Fair Lawn、NJ)で染色した。ゲル中の核酸バンドを可視化し、UV光ボックス上で撮影し、予想される大きさの生成物、CHK1 mRNAの場合には、約1243塩基対の生成物がPCRによって生じたかどうかを調べた。MOLT−4細胞由来の50μlのPCR反応物の残部を、QIAquikゲル抽出キット(Qiagen、Valencia、CA)を用い、キットとともに提供されるQIAquik PCR精製プロトコールに従って精製した。精製プロトコールから得られた約50μlの生成物を、Universal Vacuum System400(同様にSavant製)に取り付けたSpeed Vac Plus(SC110A、Savant、Holbrook、NY製)中で、中程度に加熱し、約30分間乾燥することによって約6μlに濃縮した。
【0136】
CHK1sv1全長クローンのクローニング及び組み立て並びに酵母形質転換
酵母における相同組換えクローニングによる全長CHK1sv1クローンの組み立てを、レイモンド(Raymond)ら(2002、ゲノム・リサーチ(Genome Research)12:190〜197頁)によって先に記載されたものと類似のシクロヘキシミドベースの対抗選択スキームを用いて実施した。
【0137】
上記に記載されるCHK1sv1フォワード及びリバース「テイルド」プライマーを用いて製造した、1243塩基対のCHK1アンプリコンと、発現ベクターの間の相同組換えによる、全長CHK1sv1全長クローンの組み立てを、これらの部分の酵母細胞への同時形質転換によって実施した。80塩基対オリゴヌクレオチドリンカーを用いるその後の組換えステップによって、CHK1sv1エキソン9からエキソン11へのスプライスジャンクションを作製した。以下の段落において記載されるすべての酵母形質転換ステップは、エレクトロポレーションによって実施した(レイモンド(Raymond)ら、2002年ゲノム・リサーチ(Genome Research)12:190〜197頁)。
【0138】
1μgの1243塩基対のCHK1精製アンプリコンを、100μlの酵母株CMY1−5(Matα、URA3Δ、CYH2)の同時形質転換によって、100ngのSrfI消化したpCMR11に直接クローニングした。1μg/mlのシクロヘキシミド(Sigma、St.Louis、MO)を含有するUra欠乏培地プレートで、Ura、シクロヘキシミド耐性コロニーを選択した。標準酵母培地を用いた(Sherman、1991、メソッヅ・イン・エンジモロジー(Methods in Enzymology)194:3〜21頁)。CHK1クローンを含む酵母細胞培養物から得た全DNAを用いて、ホフマン(Hoffman)及びウィンストン(Winston)(1987年ジーン(Gene)57:267〜72頁)に記載の通り、大腸菌(E.coli)をクロラムフェニコール(Sigma、St.Louis、MO)耐性に形質転換し、大量の組換えプラスミドを調製した。プレートからコロニーを選び取って、2mlの2×LB培地に入れた。これらの液体培養物を、37℃で一晩インキュベートした。Qiagen(Valencia、CA)Qiaquik Spin Miniprepキットを用いて、これらの培養物からプラスミドDNAを抽出した。
【0139】
【表3】

【0140】
CHK1sv1クローンを構築するために、1μgの、エキソン9からエキソン11への選択的スプライシングの領域にまたがる表3に示される80塩基対リンカー(配列番号12、13)と、100ngのBamHI消化したCHK1/pCMR11クローンを用いて、100μlのシクロヘキシミド感受性酵母株を同時形質転換した。リンカーとCHK1/pCMR11クローン間で重複するDNAのために、ほとんどの酵母形質転換体が正しく組み立てられた構築物を有することとなる。その後の調製及び大腸菌の形質転換のために、Ura、シクロヘキシミド耐性コロニーを選択した。大腸菌から抽出したプラスミドDNAを、制限消化によって分析し、CHK1sv1クローンにおいてエキソン9からエキソン11への選択的スプライシングの存在を確認した。8個のCHK1sv1クローンを配列決定して、同一性を確認し、適当な配列を有するクローンを、複数の系におけるタンパク質発現に用いた。
【0141】
【表4】

【0142】
CHK1sv1ポリヌクレオチドの概要
CHK1sv1 mRNAのポリヌクレオチドコード配列(配列番号14)は、参照CHK1タンパク質(NP_001265)と類似するが、参照CHK1 mRNA(NM_001274)の全長コード配列のエキソン10に相当する178塩基対領域によってコードされるアミノ酸を欠く、CHK1sv1タンパク質(配列番号15)をコードするオープンリーディングフレームを含む。178塩基対領域の欠失は、参照CHK1タンパク質リーディングフレームと比較して、タンパク質翻訳リーディングフレームのシフトをもたらし、CHK1sv1に特有のカルボキシ末端ペプチド領域が生じる(配列番号15中、イタリック体で示される)。また、フレームシフトによって、エキソン9/エキソン11スプライスジャンクションの29ヌクレオチド下流に未熟な終結コドンも生じる。したがって、CHK1sv1タンパク質は、参照CHK1(NP_001265)と比較して、エキソン10によってコードされるアミノ酸領域に相当する内部の59アミノ酸領域を失っており、また、未熟な停止コドンの下流のヌクレオチドによってコードされるアミノ酸も欠いている。エキソン10は、CHK1のSQ/TQドメインをコードしており、エキソン11〜13は自己抑制的領域をコードしている(サンチェス(Sanchez)ら、1997、サイエンス(Science)277:1497〜1501頁;カツラギ(Katsuragi)及びサガタ(Sagata)、2004年、モレキュラー・バイオロジー・オブ・ザ・セル(Molecular Biology of the cell)15:1680〜1689頁)。自己抑制的領域の欠失は、CHK1キナーゼドメインに構成的な活性を付与するが、SQ/TQドメインも除去される場合には、CHK1酵素活性は低下する(ング(Ng)ら、2004、ジャーナル・オブ・バイオロジカル・ケミストリー(Journal of Biological Chemistry)279:8808〜8819頁)。
【0143】
【表5】

【0144】
実施例3:CHK1sv1タンパク質の発現
バキュロウイルス遺伝子発現ベクター系では、安価であり、維持するのが容易である、タンパク質発現昆虫細胞を使用できる。産生されるタンパク質は、哺乳類細胞におけるものと類似の質のものである(ミラー(Miller)、1988、バイオテクノロジー(Biotechnology)10:457〜465頁;ミラー(Miller)、1989、バイオエッセイズ(Bioessays)11:91〜95頁)。昆虫細胞におけるバキュロウイルス発現ベクターを用いるタンパク質法発現は、当該技術分野で公知であり、オーライリ(O’Reilly)ら、バキュロウイルス・エクスプレッション・ベクターズ−ア・ラボラトリー・マニュアル(Baculovirus Expresison Vectors− A Laboratory Manual)、W.H.Freeman and Co.、New York、1992年及びバキュロウイルス・エクスプレッション・ベクター・システム・インストラクション・マニュアル(Baculovirus Expresison Vector System Instruction Manual)、第6版、Pharmingen、San Diego、1999に論じられている。
【0145】
昆虫細胞発現のためのCHK1sv1のクローニング
CHK1sv1/バキュロウイルストランスファーベクター構築物を作製するために、CHK1sv1/pCMR11クローン(実施例2参照のこと)をPCRの鋳型として用い、表5に列挙されるプライマー(配列番号16、17)を用いてCHK1sv1のコード配列(配列番号14)を増幅した。配列番号16によって表されるプライマーは、ATG開始コドンのすぐ上流に最適翻訳開始配列と、アンプリコンに組み込まれるようになる上流EcoRI制限部位とを含む。配列番号17によって表されるプライマーは、CHK1sv1コード配列のC末端に6個のヒスチジン残基をコードする配列並びにCHK1sv1アンプリコンに組み込まれるようになるEagI制限部位とを含む。CHK1sv1アンプリコンを、1%アガロースゲルに流した。予想した大きさの選択したアンプリコン断片、CHK1sv1の場合には、約994塩基対の産物を、ゲルから手作業で抽出し、Qiagen Gel Extraction Kitを用いて精製した。精製したアンプリコン断片をEcoRI及びEagIで消化した。EcoRI/EagI消化したアンプリコンを、EcoRI及びEagIで消化し、アルカリホスファターゼを用いて脱リン酸化しておいたバキュロウイルストランスファーベクターpVL1393(Pharmingen、San Diego、CA)にライゲーションした。次いで、CHK1sv1/pVL1393構築物を、大腸菌株DH5αに形質転換した。アンピシリン耐性コロニーから抽出し、選択したプラスミドDNAを配列決定して同一性を確認し、適当な配列を有するクローンを、昆虫細胞におけるタンパク質発現に用いた。
【0146】
【表6】

【0147】
CHK1sv1の昆虫細胞発現
CHK1sv1/pVL1393構築物を、直線化されたAcNPV BaculoGold DNA(Pharmingen、San Diego、CA)とともに、SF9昆虫細胞(Invitrogen、Carlsbad、CA)に同時トランスフェクトした。個々の組換えウイルスをエンドポイント希釈によって選択した。ウイルスクローンを増幅し、高力価原液を得た。これらのウイルス保存液を、小規模SF9培養におけるタンパク質発現試験に用いて、CHK1sv1組換えタンパク質の産生を確認した。トランスフェクトされたSF9細胞溶解物を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動によって、CHK1sv1タンパク質発現について分析した。CHK1sv1タンパク質を、クマシー染色によってか、抗CHK1抗体(G4抗体;Santa Cruz Biotechnology、Inc)を用いるウエスタンブロッティングによって可視化した。発現に基づいて、個々のウイルスを、大規模CHK1sv1発現のために選択した。リットル規模での組換えタンパク質発現には、SF9懸濁培養物を、Ex−cell401血清不含培地(JRH Scientific、Lenexa、KS)において27℃で増殖させ、組換えウイルス保存液を用い、0.3ウイルス/細胞という多重感染度を用いて感染させた。ウイルストランスフェクションの72時間後、感染したSF9培養物を回収し、遠心分離によってペレットにした。ペレットは−70℃で保存した。
【0148】
CHK1sv1組換えタンパク質の精製
昆虫細胞ペレットを、1μMのミクロシスチン(Sigma、St.Louis、MO)、10μMのシペルメトリン(EMD Biosciences、San Diego、CA)及びEDTA不含プロテアーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany)(1個の錠剤/50mlの溶解バッファー)を含有するB−PERタンパク質抽出試薬(Pierce、Rockford、IL)を用いて溶解した。タンパク質精製の際のすべての操作は、4℃で実施した。細胞は溶解バッファーに再懸濁し、45分間撹拌した。次いで、DNAseI(Roche)を、200U/mlという最終濃度に加え、細胞懸濁液を更に30分間撹拌した。溶解した細胞懸濁液を、30,000gで30分間遠心分離した。溶解上清をデカントし、30,000gで30分間遠心分離した。清澄化された上清各10mlにつき、1mlの総容積のTalon金属親和性樹脂(Clontech、Palo Alto、CA)を加え、細胞懸濁液を45分間撹拌した。親和性樹脂/溶解物懸濁液を、5000gで3分間遠心分離し、次いで、上清を廃棄した。親和性樹脂を、5×容積の樹脂を用いて、4×バッファーA(50μM Tris、pH8.0;250mM NaCl)で洗浄した。洗浄した樹脂を、バッファーA中に2×スラリーとして再懸濁し、クロマトグラフィーカラムに充填した。樹脂を充填したカラムを、6×総容積のバッファーAで洗浄した。CHK1sv1−Hisタグを付けたタンパク質を、バッファーA中イミダゾールの段階的な勾配を用いてカラムから溶出する。2×総容積画分中のイミダゾール濃度は、5、10、20、30、40、50及び60mMとした。溶出画分を、Amicon Ultra15 Centrifugal Filter Device、30,000 Nominal Molecular Limit(Millipore、Billerica、MA)を用いて濃縮した。濃縮した酵素画分を、グリセロールで50%希釈し、−20℃で保存した。画分を、ポリアクリルアミドゲル電気泳動と、それに続くクマシー染色及び抗CHK1抗体(G4抗体; Santa Cruz Biotechnology、Inc)を用いるウエスタンブロッティングを用いて、CHK1sv1−His−タグを付けたタンパク質の存在について分析した。カラム画分のCHK1sv1キナーゼ活性は、以下の項に記載されるキナーゼアッセイを用いて調べた。
【0149】
実施例4:CHK1sv1キナーゼアッセイ
CHK1sv1活性を、合成ペプチド基質を用いてin vitroでアッセイした。ホスホペプチド産物を、均一時間分解蛍光(HTRF)アッセイ系を用いて定量した(Parkら、1999年、アナリティカル・バイオケミストリー(Analytical Biochemistry)269:94〜104頁)。反応混合物は、40μlという最終容量中、40mM HEPES、pH7.3;100mM NaCl;10mM MgCl;2mM ジチオトレイトール;0.1% BSA;0.1mM ATP;0.5μM ペプチド基質及び0.1nM CHK1sv1酵素を含んでいた。ペプチド基質はアミノ酸配列アミノ末端−GGRARTSSFAEPG−カルボキシ末端(SynPep、Dublin CA)(配列番号18)を有し、N末端でビオチン化されている。キナーゼ反応物を、22℃で30分間インキュベートし、次いで、60μlの停止/検出バッファー(40mM HEPES、pH7.3;10mM EDTA;0.125% TritonX−100;1.25% BSA;250nM PhycoLinkストレプトアビジン−アロフィコシアニン(APC)コンジュゲート(Prozyme、San Leandro、CA)及び0.75nMの、ユウロピウム−キレート(Perkin Elmer、Boston、MA)で標識したGSK3α抗ホスホセリン抗体(Cell Signaling Technologies、Beverly、MA;カタログ番号9338))を用いて終結させた。反応物を22℃で2時間平衡にさせ、Discoveryプレートリーダー(Packard Biosciences)で相対蛍光単位を読み取った。上記の反応物において阻害化合物をアッセイし、化合物IC50を調べた。1μLの、DMSOに溶解した化合物を、各40μLの反応物に、1nM〜100μMの範囲に及ぶ1/2log希釈系列で加えた。HTRF蛍光単位として読み取られる、相対リン酸基質(phospho substrate)形成を、化合物濃度範囲にかけて測定し、4パラメータシグモイドフィットを用いて滴定曲線を作製した。
【0150】
本発明の特定の化合物を、上記のアッセイにおいて試験し、基質に対して≦50μMのIC50を有することがわかった。
【0151】
実施例5:細胞におけるCHK1自己リン酸化の阻害
阻害化合物を、そのCHK1を細胞において阻害する能力について、DNA損傷に応じたCHK1自己リン酸化をモニターすることによってアッセイする。H1299細胞(ATCC、Manassas、VA)を培養培地:10%ウシ胎児血清、10mM HEPES、2mM L−グルタミン、1×非必須アミノ酸及びペニシリン−ストレプトマイシンを補給したRPMI1640で増殖させる。T−75フラスコから得られた細胞をプールし、計数し、2ml培地中、200,000個/ウェルで6ウェルディッシュに播種し、インキュベートする。各ウェルにDMSO中の化合物の段階希釈系列及びDMSO対照を、DMSO中の1000×作業ストックから加え、37℃で2時間インキュベートする。2時間のインキュベート期間の後、100nMカンプトテシン(EMD Biosciences、San Diego、CA)を、PBS中の200×作業ストックからすべての薬物処理細胞(高用量ウェルの1つを除く)及び1つのDMSO対照ウェルに加える。カンプトテシンとともに4時間インキュベートした後、各ウェルを、氷冷PBSで1回洗浄し、各ウェルに300μLの溶解バッファー(50mM Tris(pH8.0)、150mM NaCl、50mM NaF、1%NP−40、0.5%デオキシコール酸、0.1%SDS、0.5μM NaVO及び1×プロテアーゼ阻害剤カクテルコンプリート−EDTA不含(Roche Diagnostics、Mannheim、Germany))を加えた。プレートを4℃で10〜15分間振盪し、次いで、溶解物を1.5mlの微量遠心管に移し、−80℃で凍結する。溶解物を氷上で解凍し、15,000×gで20分間の遠心分離によって清澄化し、上清をきれいな管に移す。
【0152】
サンプル(20μL)を、5μLの5×サンプルローディングバッファーを加えることと、100℃で5分間加熱変性させることとによってゲル電気泳動用に調製する。サンプルをTris/グリシンSDS−ポリアクリルアミドゲル(10%)中で電気泳動し、タンパク質をPVDF上にトランスファーする。次いで、ブロットを、TBS中3%BSA中で1時間ブロッキングし、ホスホ−Ser−296CHK1(Cell Signaling Technologies−カタログ番号2346)に対する抗体を用いて探索する。西洋ワサビペルオキシダーゼ結合二次抗体(ヤギ抗ウサギJackson Labs−カタログ番号111−035−046)を用いて結合している抗体を可視化し、化学発光を増強する(ECL−plus、Amersham、Piscataway、NJ)。62.5mM Tris HCl pH6.7、2%SDS及び100μMの2−メルカプトエタノール中、55℃で30分間インキュベートすることによって一次抗体セットを取り除いた後、ブロットを、CHK1モノクローナル抗体(Santa Cruz Biotechnology Inc.、カタログ番号SC−8408)を用いて全CHK1について再探索する。CHK1モノクローナルは、西洋ワサビペルオキシダーゼと結合しているヒツジ抗マウスIgG(Amersham Biosciences、Piscataway、NJ、カタログ番号NA931)を用いて検出し、化学発光を増強する(ECL−plus、Amersham)。ECLに曝されたフィルムをスキャンし、ImageQuantソフトウェアを用いて特定のバンドの強度を定量化する。滴定は、全CHK1に対して標準化されたホスホ−CHK1(Ser296)シグナルのレベルについて評価し、IC50値を算出する。
【0153】
実施例6:チェックポイント回避アッセイにおける阻害剤の機能活性
DNA損傷停止
細胞におけるCHK1阻害剤の機能活性を測定するために、化合物を、DNA損傷誘導性細胞周期停止を抑止するその能力についてアッセイする。このアッセイでは、DNA損傷剤カンプトテシンによって引き起こされた細胞周期停止後にM相に入っている細胞の量の指標として細胞ホスホ−ヌクレオリンレベルを調べる。
【0154】
H1299細胞(ATCC、Manassas VA)を、5000個細胞/ウェルという密度で、10%ウシ胎児血清を補給したRPMI640培地に播種する。5%CO下、37℃で24時間インキュベートした後、カンプトテシンを200nMという最終濃度に加え、16時間インキュベートする。等容積の、増殖培地及び200nMカンプトテシン及び332nMノコドゾール(nocodozole)(最終濃度:50ng/ml)中の試験化合物段階希釈系列を加え、37℃でのインキュベーションを8時間続ける。培地をウェルから除去し、50μLの溶解バッファー(20mM HEPES、pH7.5、150mM NaCl、50mM NaF、1%TritonX−100、10%グリセロール、1×プロテナーゼ阻害剤カクテル(Roche Diagnostics、Mannheim Germany)、1μl/ml DNaseI(Roche Diagnostics)、300μMバナジン酸ナトリウム、1μMミクロシスチン(Sigma、St.Louis、MO)を加える。溶解バッファーを含むプレートを4℃で30分間振盪し、20分間凍結する(−70℃)。IGEN Origen technology(BioVeris Corp.、Gaithersburg、MD)を用いて、細胞溶解物中のホスホヌクレオリンのレベルを測定する。
【0155】
細胞溶解物中のホスホヌクレオリンの検出
4E2抗ヌクレオリン抗体(Research Diagnostics Inc.、Flanders、NJ)を、Origen Biotin−LC−NHS−Ester(BioVeris Corp.)を用い、製造業者によって記載されたプロトコールを用いてビオチン化した。ヤギ抗マウス抗体(Jackson Immuno Research、West Grove、PA)を、ルテニウム化(ruthenylation)キット(BioVeris Corp.;カタログ番号110034)を用い、製造業者によって記載されたプロトコールに従ってルテニウム化した(ruthenylated)。96ウェルプレートの各ウェルに、25μLの細胞溶解物(上記)とともに、25μLの、2μg/mlのビオチン化4E2抗ヌクレオリン抗体及び0.4mg/mlストレプトアビジンコートした常磁性ダイナビーズ(BioVeris Corp.)を含有する抗体バッファー(リン酸緩衝生理食塩水pH7.2、1%ウシ血清アルブミン、0.5% Tween−20)を加える。抗体及び溶解物を、振盪しながら室温で1時間インキュベートする。次いで、溶解物ミックスの各ウェルに、50μLという容積の抗体バッファー(上記)中の50ngの抗ホスホヌクレオリンTG3抗体(Applied NeuroSolutions Inc.、Vernon Hills、IL)を加え、インキュベーションを室温で30分間続ける。最後に、各ウェルに、25μlの、抗体バッファー中のルテニウム化(ruthenylated)ヤギ抗マウス抗体の240ng/ml溶液を加え、インキュベーションを室温で3時間続ける。溶解物抗体混合物を、BioVeris M−シリーズM8アナライザーで読み取り、ホスホル−ヌクレオリン(phosphor−nucleolin)の増大に依存性の化合物のEC50を調べる。
【0156】
実施例7:その他の生物学的アッセイ
CHK1発現及び精製:組換えヒトCHK1は、標準バキュロウイルスベクター及びGIBCO(商標)Invitrogenから購入する(Bac−to−Bac(登録商標))昆虫細胞発現系を用いて、アミノ末端にグルタチオンS−トランスフェラーゼを含む融合タンパク質(GST−CHK1)として発現させることができる。昆虫細胞において発現された組換えタンパク質は、グルタチオンセファロース(Amersham Biotech)を用い、製造業者によって記載された標準手順を用いて精製できる。
【0157】
CHK1蛍光偏光アッセイ:CHK1キナーゼ阻害剤は、キナーゼ活性をモニターするための蛍光偏光を用いて同定できる。このアッセイでは、10nM GST−CHK1を用い、5mM 2−(N−モルホリノ)エタンスルホン酸(MES、pH6.5)、5mM 塩化マグネシウム(MgCl)、0.05% Tween(登録商標)−20、1μM アデノシン5’三リン酸(ATP)、2mM 1,4−ジチオ−DL−トレイトール(DTT)、1μMペプチド基質(ビオチン−ILSRRPSYRKILND−遊離酸)(配列番号19)、10nMペプチド基質トレーサー(蛍光−GSRRP−pS−YRKI−遊離酸)(pS=リン酸化−セリン)(配列番号20)、60ngの、Cell Signalling Technologies(Beverly、MA)から購入した粗マウス腹水からプロテインGセファロースで精製された抗ホスホCREB(S133)マウスモノクローナルIgG、4%ジメチルスルホキシド(DMSO)及び30μM阻害化合物を含む。反応物を室温で140分間インキュベートし、25mM EDTA(pH8.0)の添加によって終結させる。停止した反応物を室温で120分間インキュベートし、Molecular Devices/LJL Biosystems Analyst(商標)AD(Sunnyvale、CA)を標準蛍光設定で用いて蛍光偏光値を調べる。
【0158】
CHK1 SPA濾過アッセイ:アッセイ(25μ.)は、10nM GST−CHK1、10mM MES、2mM DTT、10mM MgCl、0.025% Tween(登録商標)−20、1μMペプチド基質(ビオチン−ILSRRPSYRKILND−遊離酸)(配列番号19)、1μM ATP、0.1μCi33P−γ−ATP(New England Nuclear、NEN)を含み、室温で90分間反応させる。55μlの、50mM EDTA、6.9mM ATP、0.5mgシンチレーション近接アッセイ(SPA)ビーズ(Amersham Biosciences)を含有するリン酸緩衝生理食塩水の添加によって反応を終結させる。ペプチド基質をビーズと室温で10分間結合させ、続いて、Packard GF/B Unifilterプレート上で濾過し、リン酸緩衝生理食塩水を用いて洗浄する。乾燥させたプレートを、Topseal(商標)(NEN)で密閉し、Packard Topcount(登録商標)シンチレーションカウンターを用い、33Pについての標準設定で、ペプチド基質に組み込まれた33P。
【0159】
CHK1 FlashPlate(登録商標)キナーゼアッセイ:アッセイ(25μl)は、8.7GST−CHK1、10mM MES、0.1mM エチレングリコール−ビス(β−アミノエチルエーテル)−N,N,N’,N’−四酢酸(EGTA、pH8.0)、2mM DTT、0.05% Tween20、3μMペプチド基質(ビオチン−ILSRRPSYRKILND−遊離酸)(配列番号19)、1μM ATP、0.4μCi 33P−γ−ATP(NEN)及び4%DMSOを含む。反応物を室温で30分間インキュベートし、50μlの50mM EDTAを用いて終結させる。90μlの反応物をストレプトアビジンコートされたFlashPlates(登録商標)(NEN)に移し、室温で1時間インキュベートする。プレートを0.01% Tween−20及び10mMピロリン酸ナトリウムを含有するリン酸緩衝生理食塩水で洗浄する。プレートを乾燥させ、Topseal(商標)(NEN)で密閉し、Packard Topcount(登録商標)NXT(商標)シンチレーションカウンターを用い、標準設定で、ペプチド基質中に組み込まれた33Pの量を測定する。
【0160】
CHK1 DELFIA(登録商標)キナーゼアッセイ:アッセイ(25μl)は、25mM Tris、pH8.5、20%グリセロール、50mM 塩化ナトリウム(NaCl)、0.1Surfact−Amps(登録商標)20、1μMペプチド基質(ビオチン−GLYRSPSMPEN−アミド)(配列番号21)、2mM DTT、4%DMSO、12.5μM ATP、5mM MgClを含有する6.4mM GST−CHK1を用い、室温で30分間反応させる。1%BSA、10mM Tris、pH8.0、150mM NaCl及び100mM EDTAを含有する100μl停止バッファーを用いて反応を終結させる。停止された反応物(100μl)を、96ウェルニュートラビジン(neutravidin)プレート(Pierce)に移し、30分間の室温インキュベーションの間にビオチンペプチド基質を捕獲する。ウェルを洗浄し、21.5ng/mlの、Cell Signalling Technology(Beverly、MA)製の抗ホスホ−Ser216−Cdc25cウサギポリクローナル抗体及び292ng/mlのユウロピウム標識抗ウサギ−IgGを含有するPerkinElmer Wallac Assayバッファー100μlと室温で1時間反応させる。ウェルを洗浄し、ユウロピウムがEnhancement溶液(100μl)(PerkinElmer Wallac)の添加によって結合している抗体から放出され、Wallac Victor2(商標)を用い、標準の製造業者の設定を用いて検出する。
【0161】
本発明の化合物は、上記のCHK1 FlashPlate(登録商標)キナーゼアッセイで試験できる。
【0162】
WSTアッセイ:HT29、HCT116(5000個細胞/ウェル)又はその他の細胞を、96ウェル透明底プレートに直線的増殖曲線を提供する密度で72時間かけて播種する。細胞を、適当な培地で滅菌条件下で培養するが、HT29及びHCT116については、この培地は、10%ウシ胎児血清(FBS)を含有するマッコイ5Aである。細胞の最初の播種後、細胞を37℃、5%CO下で17〜24時間インキュベートし、その時点で、適当なDNA損傷剤(カンプトテシン、5−フルオロウラシル及びエトポシド)を、48時間以内に少なくとも80%の細胞死を引き起こすことができる点まで漸増濃度で加える。すべてのDNA損傷剤及び化合物添加物の最終容積は、25μlとする。アッセイは、<1%のDMSO最終を含む。DNA損傷剤の添加と同時に、CHK1阻害化合物を、各DNA損傷剤滴定に対して固定濃度で加え、細胞死の増強を観察する。上記の条件下での細胞生存力/細胞死を、DNA損傷及びCHK1阻害化合物添加の47時間後に、WST試薬(Roche)の添加によって、製造業者に従って調べ、37℃、5%COで3.5時間又は2.5時間インキュベーションした後にOD450を測定する。
【0163】
本発明の化合物は、上記のアッセイで試験できる。
【0164】
実施例8:その他の生物学的アッセイ
本化合物の生物活性を調べるために利用できるその他のアッセイとして、以下の刊行物に見られるアッセイが挙げられる:WO04/080973、WO02/070494及びWO03/101444。
【0165】
実施例9:血圧アッセイ
このアッセイは、覚醒ラットにおける化合物のi.v.注入の間の血圧(BP)及び心拍数(HR)の急性変化を評価するために設計されている。ビヒクルに続いて、3種の化合物濃度を、用量上昇プロトコールにおいて25μl/分という速度で20分間各々注入する。薬物レベル測定のために各注入(20分間)の最後に血液サンプルを得、各注入の少なくとも3分の間(17〜20分間)BP及びHRを分析する。
【0166】
本発明の特定の化合物を上記のアッセイにおいて試験した。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式A:
【化1】

[式中、
は独立してH及びFから選択され、ここで、Rの少なくとも1個はFである]
で示される化合物又はその医薬的に許容され得る塩若しくは立体異性体。
【請求項2】
5−(3−アミノ−2−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン、
5−(3−アミノ−2−(R)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン、
5−(3−アミノ−2−(S)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン若しくは
5−(3−アミノ−2,2−ジフルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン
である、請求項1に記載の化合物又はその医薬的に許容され得る塩若しくは立体異性体。
【請求項3】
5−(3−アミノ−2−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン、
5−(3−アミノ−2−(R)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン若しくは
5−(3−アミノ−2−(S)−フルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン
である、請求項1に記載の化合物のHCl塩又はその立体異性体。
【請求項4】
5−(3−アミノ−2,2−ジフルオロプロピル)−3−メチル−2,5,7,8,9,10−ヘキサヒドロ−4H−ベンゾ[g]ピラゾロ[4,3−c]キノリン−4−オン
である、請求項1に記載の化合物のTFA塩又はその立体異性体。
【請求項5】
医薬担体と、担体に分散されている治療上有効な量の請求項1に記載の化合物とを含む医薬組成物。
【請求項6】
がんの治療を必要とする哺乳動物におけるがんの治療又は予防において有用な医薬の調製のための請求項1に記載の化合物の使用。

【公表番号】特表2009−522359(P2009−522359A)
【公表日】平成21年6月11日(2009.6.11)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−549510(P2008−549510)
【出願日】平成18年12月29日(2006.12.29)
【国際出願番号】PCT/US2006/049506
【国際公開番号】WO2007/081572
【国際公開日】平成19年7月19日(2007.7.19)
【出願人】(390023526)メルク エンド カムパニー インコーポレーテッド (924)
【氏名又は名称原語表記】MERCK & COMPANY INCOPORATED
【Fターム(参考)】