説明

チェンジャー付き加工設備制御システム

【課題】工具ホルダの交換が事前の加工中でも行えて、機械の停止する工具ホルダの交換時間の短縮を図ることができ、かつ工具ホルダチェンジャーと加工機との動作のタイミングをとることが容易な制御システムを提供。
【解決手段】複数の工具ホルダ7を交換可能に装備するパンチプレス1と、機外工具ホルダマガジン6と、この機外工具ホルダマガジン6とパンチプレス1との間で工具ホルダ7を自動交換する工具ホルダチェンジャー3とを備えた加工設備を制御する制御システムで、スケジュール作成装置34とを備え、工具ホルダチェンジャー3に交換させる工具ホルダ7の情報であるチェンジャー動作情報44を、転送要求F3により作成しチェンジャー制御装置32へ送るチェンジャー動作情報作成し、送られたチェンジャー動作情報44に従って工具交換の制御を行う。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
この発明は、パンチプレス等の板材加工機や、その他の加工機に対して、工具ホルダチェンジャーを用いてタレット等の工具ホルダを交換するチェンジャー付き加工設備における制御システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、複数の工具を交換使用可能としたパンチプレスとして、タレット式のものが一般的である。しかし、タレットパンチプレスでは、タレット内に保持できるパンチ工具の種類が限られ、多彩な加工が行えない。
このような課題を解消するものとして、複数のパンチ工具を搭載したタレット形式の工具ホルダを、旋回可能な工具ホルダマガジンの円周方向複数箇所に着脱自在に保持するマルチタレット形式のものが提案されている(例えば、特許文献1)。これは、工具ホルダマガジンの旋回により、希望の工具ホルダを所定の加工位置に割出し、その割り出された工具ホルダを旋回させて工具ホルダ中の希望のパンチ工具をパンチ加工に用いるものである。
【0003】
この形式のパンチプレスは、複数のパンチ工具を搭載する工具ホルダが工具ホルダマガジンに対して交換自在であるため、工具ホルダマガジンの外部に工具ホルダを準備しておき、その工具ホルダを工具ホルダマガジンの工具ホルダと交換することで多数のパンチ工具の使用が可能になる。
また、加工位置に割り出された同じ工具ホルダに搭載されたパンチ工具を使用するときは、工具ホルダマガジン等に比べて小さくて軽量の工具ホルダを旋回させれば良いため、工具割出の時間が短縮でき、効率の良いパンチ加工が行える。
【特許文献1】特開2004−237331号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
上記マルチタレット形式のパンチプレスは、機内の工具ホルダマガジンに対する工具ホルダの交換装置を備えているが、交換装置までの工具ホルダの運搬は手作業で行う必要があり、効率的ではない。そのため、機内工具ホルダマガジンとは別に、機外工具ホルダマガジン設け、この機外工具ホルダマガジンと機内工具ホルダマガジンとの間で工具ホルダを自動交換する工具ホルダチェンジャーを備えた加工設備を考えた。
しかし、より一層の加工効率の向上のためには、機内工具ホルダマガジンに対する工具ホルダの搬入,搬出を効率的に行う必要があり、その制御形式に工夫が必要となる。
【0005】
例えば、従来の工具ホルダチェンジャーを備えた工作機械では、工作機械と工具ホルダチェンジャーとを単一の同じ加工プログラムで制御するものが一般的である。しかし、単一の加工プログラムで上記マルチタレット形式のパンチプレスおよび工具ホルダチェンジャーを制御しようとした場合、パンチプレスで機内に備えていない工具ホルダが必要となったときに、工具ホルダの交換動作を行うことになる。その場合、工具ホルダチェンジャーは、不要な工具ホルダを搬出し、機外工具ホルダマガジンから必要な工具ホルダを搬送してパンチプレスに搬入する一連の動作時間が、加工時間とは別に必要となり、全体の時間が長くかかる。そのため生産性が低下する。
【0006】
上記の課題は、加工機がマルチタレット形式のパンチプレスである場合につき説明したが、パンチプレス以外であっても、複数の個別工具を搭載した工具ホルダを交換可能に装備する加工機と工具ホルダチェンジャーとを備える加工設備一般において、上記の課題が生じる。
【0007】
この発明の目的は、複数の個別工具を搭載した工具ホルダを交換可能に装備する加工機と工具ホルダチェンジャーとを備える加工設備において、工具ホルダの交換が実際に必要となるときよりも事前に準備が加工中でも行えて、機械が停止する工具ホルダの交換時間の短縮を図ることができ、かつ工具ホルダチェンジャーと加工機との動作のタイミングをとることが容易なチェンジャー付き加工設備制御システムを提供することである。
この発明の他の目的は、その交換時間短縮の制御が簡易に実現できるものとすることである。
この発明のさらに他の目的は、加工プログラムを順次複数実行する場合にも、工具ホルダチェンジャーと加工機との動作のタイミングをとることが容易なものとすることである。
この発明のさらに他の目的は、ローダを備えるものである場合に、ローダ、工具ホルダチェンジャー、および加工機のスタートのタイミングを、無駄な待ち時間を必要とせずに、円滑に行えるものとすることである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
この発明の構成を実施形態に対応する図5と共に説明する。このチェンジャー付き加工設備制御システムは、複数の個別工具(8)を搭載した複数の工具ホルダ(7)を交換可能に装備する加工機(1)と、この加工機(1)外の工具ホルダ(7)を保管する機外工具ホルダマガジン(6)と、この機外工具ホルダマガジン(6)と前記加工機(1)との間で工具ホルダ(7)を自動交換する工具ホルダチェンジャー(3)とを備えた加工設備を制御するチェンジャー付き加工設備制御システムであって、前記加工機(1)を加工プログラム(36)に従って制御する加工機制御装置(31)と、前記工具ホルダチェンジャー(3)をプログラム制御するチェンジャー制御装置(32)と、加工プログラム(36)を記憶したスケジュール作成装置(34)とを備える。
前記スケジュール作成装置(34)は、チェンジャー制御装置(32)からの転送要求(F3)により加工プログラム(36)を加工機制御装置(31)に送る加工プログラム転送手段(60)、および前記工具ホルダチェンジャー(3)に交換させる工具ホルダ(7)の情報であるチェンジャー動作情報(44)を、前記転送要求(F3)により作成しチェンジャー制御装置(32)へ送るチェンジャー動作情報作成手段(58)を有するものとし、前記チェンジャー制御装置(32)は送られたチェンジャー動作情報(44)に従って工具交換の制御を行うものとする。
【0009】
この構成によると、工具ホルダチェンジャー(3)に交換させる工具ホルダ(7)の情報であるチェンジャー動作情報(44)を、スケジュール作成装置(34)に設けられたチェンジャー動作情報作成手段(58)により作成し、チェンジャー制御装置(32)に送るものとしたため、工具ホルダ(7)の交換が実際に必要となるときよりも事前に準備を加工中に行う制御が可能で、加工機(1)が停止する工具ホルダ(7)の交換時間の短縮を図ることができる。チェンジャー動作情報作成手段(58)は、チェンジャー制御装置(32)からの転送要求(F3)によりチェンジャー動作情報(44)を作成するものとしたため、上記転送要求(F3)のなされた時の各種状況に応じてチェンジャー動作情報(44)を作成することができ、適切なチェンジャー動作情報(44)を作成できる。 また、スケジュール作成装置(34)に設けられた加工プログラム転送手段(60)は、チェンジャー制御装置(34)からの転送要求(F3)の都度、加工プログラム(36)を加工機制御装置(31)に送るものとしたため、工具ホルダチェンジャー(3)と加工機(1)とのタイミングが取り易い。
【0010】
前記加工機(1)を制御する加工プログラム(36)を作成するプログラミング装置(35)を設け、前記スケジュール作成装置(34)は、前記プログラミング装置(35)により作成された加工プログラム(36A)に、前記チェンジャー動作情報(44)と照会しかつ必要な工具ホルダ(7)の確認を行わせる命令である必要工具ホルダ確認命令(51)を付加する命令付加手段(59)を有し、前記加工プログラム転送手段(60)は、前記必要工具ホルダ確認命令(51)の付加された加工プログラム(36)を送るものとしても良い。
この構成の場合、必要工具ホルダ確認命令(51)を加工プログラム(36)に設けるため、この命令(51)を機会として、チェンジャー動作情報(44)と照会し、必要な工具ホルダ(7)の確認を行わせる制御が行える。
また、元となる加工プログラム(36A)はプログラミング装置(35)で作成し、スケジュール作成装置(34)に設けられた命令付加手段(59)により前記必要工具ホルダ確認命令(51)を加工プログラム(36)に付加するものとしたため、加工のスケジュール等に応じた適切なチェンジャー動作情報(44)を作成することができる。
【0011】
この発明において、前記スケジュール作成装置(34)は、前記加工プログラム(36A)を複数記憶し、これら複数の加工プログラム(36A)の実行順を定めた実行順情報を記憶するものであり、前記チェンジャー動作情報作成手段(58)は、チェンジャー制御装置(32)からの加工プログラムの要求(F3)の都度、前記チェンジャー動作情報(44)を作成してチェンジャー制御装置(32)へ送るものとしても良い。前記実行順情報は、加工プログラム(36A)の並び順であっても、また加工プログラム(36A)に対して付した順序の情報であっても良い。
この構成の場合、チェンジャー制御装置(32)からの加工プログラムの要求(F3)の都度、前記チェンジャー動作情報(44)を作成してチェンジャー制御装置(32)へ送るものとしたため、複数の加工プログラム(36)を順次実行するにつき、工具ホルダチェンジャー(3)と加工機(1)との動作のタイミングが取り易い。
【0012】
この発明において、前記加工設備は、前記加工機(1)へ素材を搬入するローダ(4)を備えたものであり、このローダ(4)を制御するローダ制御装置(33)を設け、このローダ制御装置(33)は、スタートスイッチ(61)が操作されることで、前記スケジュール作成装置(34)にデータ要求(F1)し、その返答信号(F2)に応答して前記チェンジャー制御装置(32)をスタートさせる手段(62,63)を有し、前記チェンジャー制御装置(32)は、スタート時に前記スケジュール作成装置(34)にデータ要求(F3)し、その返答信号(F4)に応答して前記加工機制御装置(31)をスタートさせる手段(65,66)を有するものとしても良い。
この構成の場合、ローダ制御装置(33)およびチェンジャー制御装置(32)がスケジュール作成装置(34)に順次データ要求(F1,F3)し、その返答信号(F2,F4)に応答して、ローダ制御装置(33)はチェンジャー制御装置(32)をスタートさせ、チェンジャー制御装置(32)は加工機制御装置(31)をスタートさせる。すなわち、数珠繋ぎ式にスタートさせる。そのため、ローダ(4)、工具ホルダチェンジャー(3)、および加工機(1)を、順次、準備の整った状態でスタートさせることができて、確実な動作を可能としながら、これらローダ(4)、工具ホルダチェンジャー(3)、および加工機(1)のスタートが、無駄な待ち時間を必要とせずに、円滑に行える。
【発明の効果】
【0013】
この発明のチェンジャー付き加工設備制御システムは、複数の個別工具を搭載した複数の工具ホルダを交換可能に装備する加工機と、この加工機外の工具ホルダを保管する機外工具ホルダマガジンと、この機外工具ホルダマガジンと前記加工機との間で工具ホルダを自動交換する工具ホルダチェンジャーとを備えた加工設備を制御するチェンジャー付き加工設備制御システムであって、前記加工機を加工プログラムに従って制御する加工機制御装置と、前記工具ホルダチェンジャーをプログラム制御するチェンジャー制御装置と、加工プログラムを記憶したスケジュール作成装置とを備え、前記スケジュール作成装置は、チェンジャー制御装置からの転送要求により加工プログラムを加工機制御装置に送る加工プログラム転送手段、および前記工具ホルダチェンジャーに交換させる工具ホルダの情報であるチェンジャー動作情報を、前記転送要求により作成しチェンジャー制御装置へ送るチェンジャー動作情報作成手段を有するものとし、前記チェンジャー制御装置は送られたチェンジャー動作情報に従って工具交換の制御を行うものとしたため、工具ホルダの交換が実際に必要となるときよりも事前に準備を加工中に行う制御が可能で、加工機が停止する工具ホルダの交換時間の短縮を図ることができ、かつ工具ホルダチェンジャーと加工機との動作のタイミングを取ることが容易なものとできる。
【0014】
前記加工機を制御する加工プログラムを作成するプログラミング装置を設け、前記スケジュール作成装置は、前記プログラミング装置により作成された加工プログラムに、前記チェンジャー動作情報と照会しかつ必要な工具ホルダの確認を行わせる命令である必要工具ホルダ確認命令を付加する命令付加手段を有し、前記加工プログラム転送手段は、前記必要工具ホルダ確認命令の付加された加工プログラムを送るものとした場合は、必要工具ホルダ確認命令を機会として、必要な工具ホルダの確認を行わせる制御が行える。
【0015】
前記スケジュール作成装置は、前記加工プログラムを複数記憶し、これら複数の加工プログラムの実行順を定めた実行順情報を記憶するものであり、前記チェンジャー動作情報作成手段は、チェンジャー制御装置からの加工プログラムの要求の都度、前記チェンジャー動作情報を作成して工具ホルダチェンジャーへ送るものとした場合は、複数の加工プログラムを順次実行する場合にも、工具ホルダチェンジャーと加工機との動作のタイミングをとることが容易なものなる。
【0016】
前記加工設備は、前記加工機へ素材を搬入するローダを備えたものであり、このローダを制御するローダ制御装置を設け、このローダ制御装置は、スタートスイッチが操作されることで、前記スケジュール作成装置にデータ要求し、その返答信号に応答して前記チェンジャー制御装置をスタートさせる手段を有し、前記チェンジャー制御装置は、スタート時に前記スケジュール作成装置にデータ要求し、その返答信号に応答して前記加工機制御装置をスタートさせる手段を有するものとした場合は、ローダ、工具ホルダチェンジャー、および加工機のスタートのタイミングを、無駄な待ち時間を必要とせずに、円滑に行えるものとできる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0017】
この発明の一実施形態を図1ないし図5と共に説明する。図1は、制御対象となるチェンジャー付き加工設備の平面図である。この加工設備は、加工機であるパンチプレス1と、プリセッター2と、工具ホルダチェンジャー3と、ローダ4とを備える。パンチプレス1は、機内工具ホルダマガジン5を備え、個別工具8を搭載した複数の工具ホルダ7を、機内工具ホルダマガジン5に交換可能に装備するものである。工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1およびプリセッター2にそれぞれ設けられた機内工具ホルダマガジン5および機外工具ホルダマガジン6の間で工具ホルダ7を自動交換する装置である。
【0018】
工具ホルダ7は、図3に示すように、平面形状が円形のタレットであり、一つまたは複数の個別工具8が搭載される。個別工具8は、工具ホルダ7に設けられた貫通孔等からなる工具支持部7a内に、交換自在に搭載される。個別工具8は、パンチ工具またはダイ工具である。パンチ工具およびダイ工具は、上下に対として用いられるものであり、工具ホルダ7は、パンチ工具用のものとダイ工具用のものとが、上下に対として設けられる。図では、パンチ工具用の工具ホルダ7のみを示し、ダイ工具用の工具ホルダは、図示を省略している。
【0019】
個別工具8は、パンチ加工する孔形状や寸法が種々異なるものがあり、工具ホルダ7に設けられた複数の工具支持部7aには、それぞれ異なる孔形状,寸法の加工用のものが搭載される。
また、工具ホルダ7は、図2のように工具支持部7aの個数,配置,寸法等の種々異なる複数種類のものが準備される。同じ工具支持部7aに、外径寸法の合う複数種類の個別工具8の搭載が可能であり、各種類の工具ホルダ7の工具支持部7aに、適合可能な任意の個別工具8を搭載して工具ホルダ7の工具編成が行われる。
【0020】
機内工具ホルダマガジン5は、水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部5aが設けられている。各工具ホルダ保持部5aは、制御上でアドレスM1〜M8が付される。機内工具ホルダマガジン5は、上下に一対のものが同心に設けられ、それぞれパンチ側およびダイ側の工具ホルダ7を保持して同期して旋回するが、図では上側の機内工具ホルダマガジン5のみを示している。
【0021】
図1において、パンチプレス1は、工具割出機構として、マガジン割出部と工具ホルダ割出部(いずれも図示せず)とを有する。マガジン割出部は、機内工具ホルダマガジン5の任意の工具ホルダ保持部5aが所定のプレスヘッド位置Qに来るように機内工具ホルダマガジン5を旋回させる機構である。工具ホルダ割出部は、プレスヘッド位置Qにある工具ホルダ7を保持してその工具ホルダ中心回りに旋回させ、工具ホルダ7の任意の個別工具8を所定のパンチ位置Pに割出す機構である。
パンチ位置Pに割り出された個別工具8は、サーボモータ等のパンチ駆動原により、昇降自在なラムを介してパンチ加工のための昇降動作が与えられる。
【0022】
パンチプレス1は、テーブル9上の板材Wを直交2軸(X軸,Y軸)方向に移動させる板材送り機構10を有しており、その移動により、板材Wの加工すべき箇所がパンチ位置Pへ移動させられる。板材送り機構10は、Y軸方向に進退するキャリッジ11に、X軸方向に進退可能にクロススライド12を搭載し、板材Wの端部を把持する複数のワークホルダ13を、クロススライド12に取付けたものである。
【0023】
ローダ4は、所定の板材載置部14に積載された板材Wを、一枚ずつ吸着等により把持してパンチプレス1のテーブル9上に供給する装置である。ローダ4は、架設レール15上を走行する走行体16に、板材Wを把持する吸着パッド(図示せず)を備えている。
【0024】
プリセッタ2は、機外工具ホルダマガジン6を旋回割出可能に設置したものであり、パンチプレス1の背後に設置されている。プリセッタ2には、機外工具ホルダマガジン6に対して作業者が工具ホルダ7の交換を行うための段取り用交換部17が設けられている。 機外工具ホルダマガジン6は、機内工具ホルダマガジン5と同様に水平旋回自在に設けられ、外周部の円周方向複数箇所に、工具ホルダ7を着脱自在に保持する工具ホルダ保持部6aが設けられている。機外工具ホルダマガジン6も、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に同心に設置され、旋回割出の駆動がマガジン割出手段(図示せず)で行われる。
【0025】
工具ホルダチェンジャー3は、パンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5と、機外工具ホルダマガジン6との間で工具ホルダ7を交換する装置であり、これらマガジン工具5,6の所定の交換用割出位置R,Sで交換を行う。
工具ホルダチェンジャー3は、これら機内工具ホルダマガジン5と機外工具ホルダマガジン6の交換用割出位置R,Sに渡って設けられたガイドレール21と、このガイドレール21に沿って走行する走行体22とを備える。走行体22は、それぞれ工具ホルダ7を保持する2つのチャック23,24が走行方向に並んで設けられている。これら2つのチャック23,24は、いずれか片方のチャック23,24で交換用の工具ホルダ7を保持しておき、空の方のチャック23,24で工具ホルダマガジン5,6から工具ホルダ7を受け取り、上記片方のチャック23,24で保持していた交換用の工具ホルダ7を工具ホルダマガジン5,6に渡す動作を行う。これにより、走行体22の両工具ホルダマガジン5,6間の一度の走行で工具ホルダ7の交換が行える。
【0026】
なお、走行体22は、チャック23,24を1個のみとし、交換用割出位置R,Sの付近に設けた仮置き台(図示せず)に、交換用の工具ホルダ7を仮置きすることによっても、一度の走行で工具ホルダ7の交換が行える。
また走行体22に設けられる上記チャック23,24は、いずれも各工具ホルダマガジン5,6と同じく、パンチ工具搭載の工具ホルダ7用のものと、ダイ工具搭載の工具ホルダ7用のものとが、上下に並んで設けられている。
【0027】
つぎに制御系につき説明する。図5に示すように、加工機であるパンチプレス1は加工機制御装置31により、工具ホルダチェンジャー3はチェンジャー制御装置32により、またローダ4はローダ制御装置33によりそれぞれ制御される。加工機制御装置31は、加工プログラム36に従って制御するものであり、チェンジャー制御装置32およびローダ制御装置33は、それぞれ加工プログラム36とは別のプログラムによって制御されるものとしてしている。
加工機制御装置31、チェンジャー制御装置32、およびローダ制御装置33は、物理的には同じコンピュータ等に構成されたものであっても良く、また別のコンピュータ等で構成されたものであっても良い。これら加工機制御装置31、チェンジャー制御装置32、およびローダ制御装置33は、共通の操作盤46によって操作される。
【0028】
また、パンチプレス1の近傍には、スケジュール作成装置34が設けられ、上記操作盤46で操作が可能とされている。スケジュール作成装置34は、パンチプレス1から離れた場所に設置された自動プログラミング装置35に、ネットワークを介して接続されている。
【0029】
図4と共に、加工機制御装置31およびチェンジャー制御装置32につき説明する。加工機制御装置34は、加工プログラム36を演算制御部37で解読して実行することで、パンチプレス1を制御するものである。加工プログラム36は、プログラムメモリ41に記憶される。
【0030】
加工プログラム36は、基本的には、一つの孔を加工する加工命令50を順次並べて記述したものとされる。加工命令50は、板材Wを移動させる移動命令50aと、工具割出命令50bとを1行に記述したものである。演算制御部37は、加工命令50を読み出すと、その移動命令50aで指定された各軸方向の位置へ板材Wを移動させ、工具割出命令50bで指定された個別工具8をパンチ位置Pに割出し、その割り出された個別工具8をパンチ動作させる一連の制御を行う。個別工具8のパンチ位置Pへの割出しは、機内工具ホルダマガジン5の旋回割出し過程と、工具ホルダ7の旋回割出し過程とを含む。同じ工具ホルダ7を続けて使用する場合は、工具ホルダマガジン5の旋回割出は不要であり、その動作は生じない。移動命令50aは、移動の軸方向X,Yを示す文字と移動量または座標値を示す文字、例えば「X−Y−」として示される。
加工プログラム36は、加工命令50の他に、この実施形態の特徴として、後述の必要工具ホルダ確認命令51が記述されている。
【0031】
工具割出命令50bは、例えば「T0101」等のように、工具ホルダ7の識別番号「T01」に続いて、その工具ホルダ7におけるどの工具支持部7aであるかを指定する番号「01」を記述したものである。
【0032】
加工機制御装置31は、保有工具ホルダ記憶手段40を有していて、これに機内工具ホルダマガジン5の各工具ホルダ保持部5aのアドレス「M1,M2,…」と、そのアドレスの工具ホルダ保持部5aに保持されている工具ホルダ7の識別番号とを対応させた情報が記憶されている。保有工具ホルダ記憶手段40の記憶情報は、機内工具ホルダマガジン5の保持する工具ホルダ7が出入りする毎に、その出入りした工具ホルダ7の識別番号に対応した内容に適宜の手段で更新される。
また、加工機制御装置31は、工具ホルダ情報記憶手段39を有していて、工具ホルダ7の工具支持部7aの原点位置からの位相角度θの情報を、全ての工具ホルダ7につき、その識別番号「T01,T02,…」に対応させて記憶している。
【0033】
この工具割出命令50bに対して、演算制御部37は、保有工具ホルダ記憶手段40から機内工具ホルダマガジン5の工具ホルダ保持部5aのアドレス「M1,M2,…」を認識し、そのアドレスの工具ホルダ保持部5aをプレスヘッド位置Qに旋回割出する指令を出力する。また、演算制御部37は、工具ホルダ情報記憶手段39から工具ホルダ7の工具支持部7aの位相角度θを認識し、プレスヘッド位置Qの工具ホルダ7をその位相角度θに旋回割出する指令を出力する。
【0034】
チェンジャー制御装置32は、例えばプログラマブルコントローラからなり、チェンジャー制御プログラム43と、このプログラム43を解読して実行する制御部42とを有する。チェンジャー制御装置32は、チェンジャー動作情報44を所定の記憶手段(図示せず)に記憶している。
チェンジャー制御プログラム43は、工具ホルダチェンジャー3の動作のうち、どの工具ホルダ7であるかを問わない共通の動作のプログラムを記述したものである。例えば工具ホルダチェンジャー3の走行体22を機内工具ホルダマガジン5および機外工具ホルダマガジン6の交換位置R,S間で走行させる命令や、各交換位置R,Sで、片方のチャック23,24で工具ホルダマガジン5,6の工具ホルダ7を取り出し、もう片方のチャック23,24に保持している工具ホルダ7を工具ホルダマガジン5,6に入れる一連の動作の命令等が記述される。
なお、チェンジャー制御装置32は、機外工具ホルダマガジン6の旋回割出やその他の動作の制御機能を有するものであっても良い。
【0035】
チェンジャー動作情報44は、工具ホルダチェンジャー3からパンチプレス1に対して搬入,搬出する工具ホルダ7の識別番号を必要順に設定した情報である。チェンジャー動作情報44は、加工プログラム36で使用する工具ホルダ7の種類と、機内工具ホルダマガジン5に実際に保持されている工具ホルダ7や、機外工具ホルダマガジン6に保持されている工具ホルダ7等に応じて、所定の基準等で設定した情報とされる。
【0036】
チェンジャー動作情報44における前記必要順は、同図では行方向の並びの順としている。すなわち、同図では、識別番号「T09」の工具ホルダ7を搬出し、識別番号「T03」の工具ホルダ7を搬入する動作の次に、識別番号「T10」の工具ホルダ7を搬出し、識別番号「T05」の工具ホルダ7を搬入する動作を行うものとして設定されている。同図では、説明の簡明のために、1行には搬入する工具ホルダ7を一つ、搬出する工具ホルダ7を一つしているが、搬入,搬出とも、1行に複数の工具ホルダ7の識別番号を記述しても良い。その場合、同じ行に記述された複数の工具ホルダ7を同順位で搬出または搬入することを意味する。また、チェンジャー動作情報44において、搬出だけを行い、搬入を行わない場合は、搬入欄の空欄とされる。搬入だけを行い、搬出を行わない場合は、搬出の欄は空欄とされる。
なお、チェンジャー動作情報44は、チェンジャー制御装置32の所定の記憶領域にテーブル等で記憶される。
【0037】
このチェンジャー動作情報44を用いる制御の手段として、加工プログラム36に、前記の必要工具ホルダ確認命令51が記述され、この必要工具ホルダ確認命令51を解読して所定の処理を行う手段として、必要工具ホルダ確認手段38が演算制御部37に設けられている。必要工具ホルダ確認命令51は、NCコードにおける補助コード(Mコード)で記述され、所定の補助コードを示す文字列「M○△」に続いて、確認を行うべき工具ホルダ7の識別番号が記述される。この場合の識別番号は、「T」の頭文字は省略したものとされ、例えば「M○△01」のように記述される。
必要工具ホルダ確認命令51は、加工プログラム36の一連の加工命令50のうち、工具割出命令50bにおける工具ホルダ7の識別番号が変わる命令50bが現れる都度、その直前の位置に記述される。
【0038】
必要工具ホルダ確認手段38は、必要工具ホルダ確認命令51に応答して、チェンジャー制御装置32にその必要工具ホルダ確認命令51中の工具ホルダ識別番号を含む交換伺い情報D1を送信すると共に、前記工具ホルダ識別番号に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内にあることを確認し、ある場合に次の命令に進む処理を行う。工具ホルダ識別番号に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内にあるか否かの確認は、保有工具ホルダ記憶手段40の記憶情報によって行われる。
【0039】
チェンジャー制御装置32に設けた確認交換手段45は、加工機制御装置31から出力される前記交換伺い情報D1に応答して、工具ホルダ識別番号に対応する工具ホルダ7が、チェンジャー動作情報44における現在搬入順位に該当することの確認を行い、該当する場合に工具ホルダチェンジャー3に工具ホルダ7の交換動作を行わせる手段である。なお、チェンジャー動作情報44は、現在搬入順位に該当する行であることを示すフラグ等のマークが付され、工具ホルダチェンジャー3による搬入,搬出が行われると、次の行にマークが移動する。このマークと照合することで、現在搬入順位に該当することの確認が行える。確認交換手段45は、例えばチェンジャー制御プログラム43の中の一つの命令として設けられる。
【0040】
この確認交換手段45は、この実施形態では、現在搬入順位に該当することの他に、工具ホルダ識別番号に対応する工具ホルダ7が所定の交換可能状態にあるか否かの確認を行い、交換可能な場合に前記交換動作を行わせるものとしている。また、確認交換手段45は、交換可否の返答D2を加工機制御装置31に返すものとしている。所定の交換可能状態の定義は適宜設定される。例えば、搬入すべき工具ホルダ7が機内工具ホルダマガジン5の交換用割出位置Rの近傍まで工具ホルダチェンジャー3によって持って来ている状態の場合に、交換可能であると設定される。
【0041】
加工機制御装置31の前記必要工具ホルダ確認手段38は、前記交換可否の返答D2が交換可能の内容である場合は、工具ホルダチェンジャー3の工具ホルダ7の交換動作の後に、次の命令に進ませるものとしている。交換可否の返答D2が交換不能の内容である場合は、交換動作を行わずに、次の命令に進ませる。
【0042】
チェンジャー動作情報44を用いる加工機制御装置31およびチェンジャー制御装置32の動作を具体例と共に説明する。いま、図4に示すように、パンチプレス1の機内工具ホルダマガジン5には、その保有する全て(8つ)の工具ホルダ保持部5aに工具ホルダ7が保持されていて、各々の識別番号がT01,T10,T09,T06,T08,T07,T04,T02であるとする。図示の例では「T」の頭文字は省略されている。機外工具ホルダマガジン6には、8つのうち2つの工具ホルダ保持部6aに、それぞれ識別番号がT03,T05の工具ホルダ7が保持されているとする。
【0043】
ファイル名「001」の加工プログラム36は、同図の例では工具ホルダ7として、「T01」のもの、「T03」のもの、「T05」のものが順に用いられる内容となっている。この加工プログラム36には、使用する工具ホルダ7が変わる各加工命令50の直前に、それぞれ必要工具ホルダ確認命令51が記述され、この確認命令中に、その変わり後の工具ホルダ7の識別番号が記述されている。例えば、「X−Y−T0101」とある加工命令50の直前の必要工具ホルダ確認命令51は、その加工命令50中の工具ホルダ識別番号「T01」を含む「M○△01」として示されている。なお、「T」の頭文字は、識別に必要がないため、省略されている。
【0044】
チェンジャー動作情報44は、同図の例では、最初にT09の工具ホルダ7を搬出して、T03の工具ホルダ7を搬入するものとされ、次にT10の工具ホルダ7を搬出して、T05の工具ホルダ7を搬入するものとされている。
【0045】
いま、ファイル名「001」の加工プログラム36が実行され、最初の必要工具ホルダ確認命令51(M○△01)が演算制御部37で読みだされたとする。このとき、演算制御部37の必要工具ホルダ確認手段38は、チェンジャー制御装置32にその必要工具ホルダ確認命令51中の工具ホルダ識別番号(T01)を含む交換伺い情報D1を送信する。
チェンジャー制御装置32の確認交換手段45は、交換伺い情報D1に応答して工具ホルダ識別番号(T01)に対応する工具ホルダ7が、チェンジャー動作情報44における現在搬入順位に該当することの確認を行い、かつ該当する場合にはその工具ホルダ7が交換可能状態にあるか否かの確認を行う。
この例では、識別番号(T01)の工具ホルダ7は現在搬入順位に該当しないため、交換不可の返答D2を加工機制御装置31に返す。
【0046】
この返答D2があると、交換可能,交換不可にかかわらず、必要工具ホルダ確認手段38は、その工具ホルダ識別番号(T01)に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内にあることを確認する。同図の例では、識別番号(T01)に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内にある。そのため、必要工具ホルダ確認手段38は、次の命令に進む処理を行う。工具ホルダ識別番号(T01)に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内にあるか否かの確認は、保有工具ホルダ記憶手段40の記憶情報によって行われる。
【0047】
このように、必要工具ホルダ確認命令51により必要な工具ホルダ7が機内にあることを確認した後、その工具ホルダ7(T01)を用いた次の加工命令50(X−Y−T0101)が実行される。
【0048】
加工プログラム36の実行が進み、他の工具ホルダ7(T03)を用いる加工命令50の直前に来ると、必要工具ホルダ確認命令51(M○△03)が読み出される。
このとき、必要工具ホルダ確認手段38は、チェンジャー制御装置32にその必要工具ホルダ確認命令51中の工具ホルダ識別番号(T03)を含む交換伺い情報D1を送信する。
チェンジャー制御装置32の確認交換手段45は、交換伺い情報D1に応答して工具ホルダ識別番号(T03)に対応する工具ホルダ7が、チェンジャー動作情報44における現在搬入順位に該当することの確認を行い、かつ該当する場合にはその工具ホルダ7が交換可能状態にあるか否かの確認を行う。
【0049】
同図の例では、T03の工具ホルダ7は現在搬入順位に該当しているので、続いて、その工具ホルダ7が交換可能状態にあるか否かの確認を行う。交換可能状態にあるか否かは、適宜の基準を定めておき、判定を行う。例えば、前記のように搬入する工具ホルダ7が機内工具ホルダマガジン5の交換用割出位置Rの近傍まで、工具ホルダチェンジャー3によって準備されている場合に、交換可能状態であるとする基準を定めておく。
この交換可能状態にあるか否かの判定を行うことにより、搬入すべき工具ホルダ7が機内工具ホルダマガジン5の交換用割出位置Rの遠くにあって、工具ホルダチェンジャー3による動作に時間がかかる場合は、搬入しない処置が取れる。
【0050】
ここでは、交換可能状態であるとする。この場合、確認交換手段45は、工具ホルダチェンジャー3にT09の工具ホルダ7を搬出し、T03の工具ホルダ7を搬入する動作を行わせ、かつ交換可能の返答D2を加工機制御装置31へ返す。
加工機制御装置31の必要工具ホルダ確認手段38は、上記返答D2に応答し、工具ホルダチェンジャー3による交換の完了を待って、その工具ホルダ識別番号(T03)に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内にあることを確認する。同図の例では、最初は識別番号(T03)に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内にないが、上記工具ホルダチェンジャー3による交換動作によって、識別番号(T03)に該当する工具ホルダ7がパンチプレス1内に存在することになるので、該当する工具ホルダ7(T03)がパンチプレス1内にあると判定する。
【0051】
そのため、必要工具ホルダ確認手段38は、次の命令に進む処理を行う。このように、必要工具ホルダ確認命令51により必要な工具ホルダ7が機内にあることを確認した後、その工具ホルダ7(T03)を用いた次の加工命令50(X−Y−T0301)が実行される。
【0052】
上記の確認交換手段45による確認時に交換可能状態でないとすれば、確認交換手段45より加工機制御装置31に送られる返答D2が交換不可の内容となる。この場合、加工機制御装置31の必要工具ホルダ確認手段38は、工具ホルダ7(T03)が機内にあるか否かの確認を行ったときに、機内にないという判定を行うことになり、加工プログラム36の次の命令に進まずに待機する。なお、このような待機時は、必要工具ホルダ確認手段38に上記交換伺い情報D1を再度出力させるようにしても良く、またアラーム信号を発生せるようにしても良い。
【0053】
チェンジャー制御装置32は、加工機制御装置31の加工プログラム41とは別のチェンジャー制御プログラム43によって動作するものであり、またチェンジャー動作情報44が設定してあるため、加工プログラム36の実行によるパンチ加工の続行中に、工具ホルダチェンジャー3の動作を進めておくことができる。
そのため、上記の例で、通常は、加工プログラム36の実行が進んでT03の工具ホルダ7が必要となる頃までには、上記の確認交換手段45による確認時に交換可能状態になっている。なお、同図の加工プログラム36は、説明の簡明のために命令数を少なくして示しており、また加工の初期に工具ホルダ7の交換が必要となる内容としてあるが、一般的には孔明け個数も多く、加工プログラム36の実行開始時の機内工具ホルダマガジン5の工具ホルダ編成状態で、多くの加工が行えるものとできる。
【0054】
このチェンジャー付き加工設備制御システムは、このように、チェンジャー制御装置32に、前記工具ホルダチェンジャー3からパンチプレス1に対して搬入,搬出する工具ホルダ7の識別番号を必要順に設定したチェンジャー動作情報44を設けたため、パンチプレス1で機外工具ホルダマガジン6の工具ホルダ7が実際に必要となる前に、チェンジャー動作情報44に従って、事前に工具ホルダチェンジャー3を動作させることができる。例えば、次にパンチプレス1で必要とされる工具ホルダ7を、パンチプレス1の交換用割出位置Rの近くまで移動させておくなどの処置が図れる。したがって工具ホルダ7の交換時間の短縮を図ることができる。
また、独立したチェンジャー動作情報44を設定するので、例えば、従来の加工プログラム中に工具ホルダチェンジャーの制御命令まで含めて記載する制御方式と異なり、複数の加工プログラム36の実行順を現場で自由に変更する場合にも、チェンジャー動作情報44を作成することで対処できて、加工プログラム36中のチェンジャー制御命令を書き直すような複雑な処置が不要となる。
【0055】
チェンジャー動作情報44の作成、および加工プログラム36における必要工具ホルダ確認命令51の付加等につき、図5と共に説明する。
自動プログラミング装置35は、上記加工プログラム36に対して、必要工具ホルダ確認命令51を付加する前の元となる加工プログラム36Aを作成する手段である。作成した加工プログラム36Aには、ファイル名(図では「001」等と表示)が付される。自動プログラミング装置35は、素材となる板材Wの寸法情報と、その板材Wのパンチ加工後の形状を示す図形データとが入力されることで、設定基準(図示せず)に従って加工プログラム36Aを作成する。
【0056】
このとき、自動プログラミング装置35は、自動プログラミング過程とは別に、スケジュール作成装置34の段取情報作成手段54等で作成しておいた使用工具ホルダ情報55を用いて自動プログラミングを行う。
使用工具ホルダ情報55は、各加工プログラム36Aでどの識別番号の工具ホルダ7を使用するかを定めた情報であり、例えば加工プログラム36Aのファイル名毎に、使用する工具ホルダ7の識別番号(T10,T02,…等)を設定した情報である。
自動プログラミング装置35で作成した元の加工プログラム36Aは、スケジュール作成装置34へ、ネットワークや記憶媒体を介して伝えらえる。
【0057】
スケジュール作成装置34は、自動プログラミング装置35から送られた複数の加工プログラム36Aを記憶可能とされる。スケジュール作成装置34は、オペレータの入力によって各加工プログラム36Aを実行する順および加工枚数を定める加工スケジュール作成手段57を有していて、プログラム記憶手段56に、その定められた加工プログラム36Aの実行順および加工枚数の情報が、加工プログラム36Aのファイル名と共に記憶される。実行順の情報は、加工プログラム36Aの並び順であっても良く、また加工プログラム36Aのファイル名またはその記憶領域のアドレス等に対して付された順位情報であっても良い。
【0058】
上記使用工具ホルダ情報55は、スケジュール作成装置34において所定の記憶領域に記憶される。
【0059】
スケジュール作成装置34は、チェンジャー動作情報作成手段58、命令付加手段59、および加工プログラム転送手段60を有する。
【0060】
チェンジャー動作情報作成手段58は、図4と共に前述したチェンジャー動作情報44を、前記転送要求F3により作成し、チェンジャー制御装置32へ送る手段である。チェンジャー動作情報作成手段58によるチェンジャー動作情報44の作成は、設定基準に従い、使用工具ホルダ情報55を用いて行われる。
チェンジャー動作情報作成手段58は、チェンジャー制御装置32からの加工プログラムの要求の都度、前記チェンジャー動作情報44を作成してチェンジャー制御装置32へ送るものとされる。上記のように、チェンジャー制御装置32は、送られたチェンジャー動作情報44に従って工具交換の制御を行う。
【0061】
命令付加手段59は、自動プログラミング装置35により作成された元の加工プログラム36Aに、前記チェンジャー動作情報44と照会しかつ必要な工具ホルダ7の確認を行わせる命令である前記必要工具ホルダ確認命令51を付加する手段である。命令付加手段59は、設定基準に従って必要工具ホルダ確認命令51の付加を行う。前記設定基準は、例えば、元の加工プログラム36Aにおいて、加工命令50が、一つ前の加工命令50とは異なる識別番号(T01等)の工具ホルダ7を用いる命令である場合に、その1行前に必要工具ホルダ確認命令51の付加を行うものとされる。
【0062】
加工プログラム転送手段60は、チェンジャー制御装置32からの転送要求F3により、加工プログラムを加工機制御装置31に送る手段であり、命令付加手段59によって必要工具ホルダ確認命令51が付加された加工プログラム36を送る。
【0063】
ローダ制御装置33、チェンジャー制御装置32、および加工機制御装置31は、その制御の関係が、ローダ制御装置33が上位、チェンジャー制御装置32が中位、加工機制御装置31が下位となるものとされ、電源のスタート時はこの上位のものから順にスタートさせるものとしてある。
ローダ制御装置33は、手動操作されるスタートスイッチ61、データ要求手段63、および準備完了通知手段62を有し、スタートスイッチ61が操作されることで、データ要求手段63がスケジュール作成装置34にデータ要求信号F1を送る。その返答信号F2に応答し、準備完了通知手段62は、ローダ4が所定の準備完了状態になると、チェンジャー制御装置32をスタートさせる。
【0064】
チェンジャー制御装置32は、スタートスイッチ64、データ要求手段66、および準備完了通知手段65を有していて、スタートスイッチ64は、ローダ制御装置33の準備完了通知手段62から送信される準備完了信号によってオン動作させられる。なおローダ制御装置33を設けない場合は、チェンジャー制御装置32のスタートスイッチ64は、手動操作用のものとされる。
チェンジャー制御装置32のデータ要求手段66は、スタート時にスケジュール作成装置34にデータ要求信号F3を送り、その返答信号F4に応答し、準備完了通知手段62は、工具ホルダチェンジャー3が所定の準備完了状態になると、加工機制御装置31をスタートさせる。
加工機制御装置31のスタートスイッチ67は、チェンジャー制御装置32の準備完了通知手段65から送信される準備完了信号によってオン動作させられる。
【0065】
この制御システムの電源スタートから、チェンジャー動作情報44の作成、および加工プログラム36における必要工具ホルダ確認命令51の作成につき、具体的に説明する。 この加工設備を起動させるときは、ローダ制御装置33のスタートスイッチ61をオペレータがオン操作する。このオン操作により、データ要求手段63は、スケジュール作成手段34に所定のデータ要求信号F1を送信する。スケジュール作成手段34は、データ要求信号F1に応答し、その返答信号F2として、プログラム記憶手段56に記憶されている該当する実行順位の加工プログラム36のフィイル名(例えば「001」)をローダ制御装置33に送る。ファイル名と共に、加工プログラム36の内容を送るようにしても良い。返答信号F2には、この他に、素材となる板材Wの材質,寸法の情報や、保管場所の棚番号等を含ませる。これら材質,寸法,保管場所の情報は、加工プログラム36Aの作成時に属性情報等として記述されたものである。
【0066】
ローダ制御装置33は、返答信号F2に応答し、ローダ4を動作させて素材板材Wをパンチプレス1に搬入する。この搬入が完了すると、準備完了通知手段62が、チェンジャー制御装置32のスタートスイッチ64をオンさせる。
【0067】
チェンジャー制御装置32は、スタートスイッチ64がオンになると、データ要求手段66がスケジュール作成手段34に所定のデータ要求信号F3を送る。
スケジュール作成手段34は、このデータ要求信号F3に応答して、命令付加手段59による加工プログラム36Aへの必要工具ホルダ確認命令51の付加と、チェンジャー動作情報作成手段58によるチェンジャー動作情報44の作成とを行う。スケジュール作成手段34は、上記データ要求信号F3に対する返答信号F4として、実行順位に該当する加工プログラム36のフィイル名と、作成したチェンジャー動作情報44をチェンジャー制御装置32へ送る。
また、スケジュール作成手段34は、データ要求信号F3に応答して命令付加手段59が元の加工プログラム36Aに対して必要工具ホルダ確認命令51を付加し、その付加された加工プログラム36を加工機制御装置31へ送る。
【0068】
チェンジャー制御装置32は、返答信号F4を受信すると、所定の準備動作を行い、準備完了通知手段65は、その準備の完了を待って、加工機制御装置31のスタートスイッチ67をオンにする。このオン動作により、加工機制御装置31が起動し、パンチプレス1によるパンチ加工が開始される。以後、加工機制御装置31およびチェンジャー制御装置32が各種信号を送受してパンチプレス1と工具ホルダチェンジャー3が連携した動作を行う。
【0069】
このように、ローダ制御装置33およびチェンジャー制御装置32がスケジュール作成装置34に順次データ要求し(F1,F3)、その返答信号(F2,F4)に応答して、ローダ制御装置33はチェンジャー制御装置32をスタートさせ、チェンジャー制御装置32は加工機制御装置31をスタートさせる。そのため、ローダ4、工具ホルダチェンジャー3、およびパンチプレス1を、順次、準備の整った状態で数珠繋ぎ式にスタートさせることができて、確実な動作を可能としながら、これらローダ4、工具ホルダチェンジャー3、およびパンチプレス1のスタートが、無駄な待ち時間を必要とせずに、円滑に行える。
【0070】
図5の構成の制御システムによると、工具ホルダチェンジャー3に交換させる工具ホルダ7の情報であるチェンジャー動作情報44を、スケジュール作成装置34に設けられたチェンジャー動作情報作成手段58により作成し、チェンジャー制御装置32に送るものとしたため、工具ホルダ7の交換が実際に必要となるときよりも事前に交換を行う制御が可能で、工具ホルダ7の交換時間の短縮を図ることができる。チェンジャー動作情報作成手段44は、チェンジャー制御装置32からの転送要求F3によりチェンジャー動作情報44を作成するものとしたため、上記転送要求F3のなされた時の各種状況に応じてチェンジャー動作情報44を作成することができる。例えば、転送要求F3になされたときの機内工具ホルダマガジン5の保有する工具ホルダ7の種類や、機外工具ホルダマガジン6の保有する工具ホルダ7の種類、およびそれらの工具ホルダ7の工具編成(工具ホルダ7に搭載された個別工具8の種類)等の状況に応じてチェンジャー動作情報44を作成することができる。そのため、適切なチェンジャー動作情報44を作成できる。
【0071】
また、スケジュール作成装置34に設けられた加工プログラム転送手段60は、チェンジャー制御装置32からの転送要求F3の都度、加工プログラム36を加工機制御装置31に送るものとしたため、工具ホルダチェンジャー3とパンチプレス1とのタイミングが取り易い。特に、複数の加工プログラム36を順次実行するにつき、工具ホルダチェンジャー3とパンチプレス1との動作のタイミングが取り易い。
【0072】
必要工具ホルダ確認命令51を加工プログラム36に設けるため、この命令51を機会として、チェンジャー動作情報44と照会し、必要な工具ホルダ7の確認を行わせる制御が行え、交換時間短縮の制御が簡易に実現できる。
また、元となる加工プログラム36Aは自動プログラミング装置35で作成し、スケジュール作成装置34に設けられた命令付加手段59により前記必要工具ホルダ確認命令51を加工プログラム36Aに付加するものとしたため、加工のスケジュール等に応じた適切なチェンジャー動作情報44を作成することができる。
【0073】
なお、上記実施形態において、チェンジャー動作情報44には、搬入,搬出する工具ホルダの識別番号を必要順に設定した情報の他に、各工具ホルダ7の識別番号に対して、その工具ホルダの搬入,搬出動作を開始しても良くなる最初の時期を示す始期情報等を付加しておき、加工プログラム36に、その始期情報を確認する命令を付加するようにしても良い。これにより、制御の確実が図れる。
【0074】
また、前記実施形態では、加工機1がパンチプレスである場合につき説明したが、この発明における制御対象となる加工機は、パンチプレスに限らず、複数の個別工具を搭載した工具ホルダを交換可能に装備するものであれば良い。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】この発明の一実施形態にかかる制御システムを適用するチェンジャー付き加工設備の一例を示す平面図である。
【図2】その機内工具ホルダマガジン、機外工具ホルダマガジン、および工具ホルダチェンジャーを示す拡大平面図である。
【図3】その工具ホルダ斜視図である。
【図4】同実施形態の制御システムの一部を示す概念構成のブロック図である。
【図5】同制御システムの全体を示す概念構成のブロック図である。
【符号の説明】
【0076】
1…パンチプレス(加工機)
2…プリセッター
3…工具ホルダチェンジャー
4…ローダ
5…機内工具ホルダマガジン
6…機外工具ホルダマガジン
7…工具ホルダ
8…個別工具
9…テーブル
10…板材送り機構
17…段取り用交換部
23,24…チャック
31…加工機制御装置
32…チェンジャー制御装置
33…ローダ制御装置
34…スケジュール作成装置
35…自動プログラミング装置
36…加工プログラム
36A…元の加工プログラム
38…必要工具ホルダ確認手段
39…工具ホルダ情報記憶手段
40…保有工具ホルダ記憶手段
43…チェンジャー制御プログラム
40…保有工具ホルダ記憶手段
44…チェンジャー動作情報
45…確認交換手段
50…加工命令
51…工具ホルダ確認命令
54…段取情報作成手段
55…使用工具ホルダ情報
58…チェンジャー動作情報作成手段
59…命令付加手段
60…加工プログラム転送手段
61…スタートスイッチ
62…準備完了通知手段
63…データ要求手段
64…スタートスイッチ
65…準備完了通知手段
66…データ要求手段
67…スタートスイッチ
D1…交換伺い情報
D2…返答
F1,F3…データ要求信号
F2,F4…返答信号
R,S…交換用割出位置
T01,T02,……識別番号
W…板材

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の個別工具を搭載した複数の工具ホルダを交換可能に装備する加工機と、この加工機外の工具ホルダを保管する機外工具ホルダマガジンと、この機外工具ホルダマガジンと前記加工機との間で工具ホルダを自動交換する工具ホルダチェンジャーとを備えた加工設備を制御するチェンジャー付き加工設備制御システムであって、
前記加工機を加工プログラムに従って制御する加工機制御装置と、前記工具ホルダチェンジャーをプログラム制御するチェンジャー制御装置と、加工プログラムを記憶したスケジュール作成装置とを備え、
前記スケジュール作成装置は、チェンジャー制御装置からの転送要求により加工プログラムを加工機制御装置に送る加工プログラム転送手段、および前記工具ホルダチェンジャーに交換させる工具ホルダの情報であるチェンジャー動作情報を、前記転送要求により作成しチェンジャー制御装置へ送るチェンジャー動作情報作成手段を有するものとし、前記チェンジャー制御装置は送られたチェンジャー動作情報に従って工具交換の制御を行うものとしたチェンジャー付き加工設備制御システム。
【請求項2】
前記加工機を制御する加工プログラムを作成するプログラミング装置を設け、前記スケジュール作成装置は、前記プログラミング装置により作成された加工プログラムに、前記チェンジャー動作情報と照会しかつ必要な工具ホルダの確認を行わせる命令である必要工具ホルダ確認命令を付加する命令付加手段を有し、前記加工プログラム転送手段は、前記必要工具ホルダ確認命令の付加された加工プログラムを送るものとした請求項1記載のチェンジャー付き加工設備制御システム。
【請求項3】
前記スケジュール作成装置は、前記加工プログラムを複数記憶し、これら複数の加工プログラムの実行順を定めた実行順情報を記憶するものであり、前記チェンジャー動作情報作成手段は、チェンジャー制御装置からの加工プログラムの要求の都度、前記チェンジャー動作情報を作成してチェンジャー制御装置へ送るものとした請求項1または請求項2記載のチェンジャー付き加工設備制御システム。
【請求項4】
前記加工設備は、前記加工機へ素材を搬入するローダを備えたものであり、このローダを制御するローダ制御装置を設け、このローダ制御装置は、スタートスイッチが操作されることで、前記スケジュール作成装置にデータ要求し、その返答信号に応答して前記チェンジャー制御装置をスタートさせる手段を有し、前記チェンジャー制御装置は、スタート時に前記スケジュール作成装置にデータ要求し、その返答信号に応答して前記加工機制御装置をスタートさせる手段を有するものとした請求項1記載のチェンジャー付き加工設備制御システム。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2006−281326(P2006−281326A)
【公開日】平成18年10月19日(2006.10.19)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−100870(P2005−100870)
【出願日】平成17年3月31日(2005.3.31)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】