説明

チェーン式無段変速伝動機構

【課題】無終端チェーンの剛性低下により、ダウンシフト時の入力トルク変動に伴う車室内「こもり音」を軽減して、チェーン式無段変速伝動機構の高品質化を図る。
【解決手段】チェーン式無段変速伝動機構の無終端チェーンを構成するリンク板14を、(a)〜(c)に示すように、無終端チェーンの走行方向に延在するリンク板14の平行側部14bを、リンクピン挿通孔14aの開口方向に見て、外側縁14c、または内側縁14d、或いはこれら双方における円弧状切り欠きにより幅がW1〜W3のように小さくなったくびれ形状にする。これによりリンク板14は、平行側部14bが部分的に断面積を小さくされ、低剛性なリンク板となり、無終端チェーンの捩り剛性をロックアップトルクダンパの捩り剛性よりも小さくして、ダウンシフト時の入力トルク変動に伴う車室内「こもり音」を軽減することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無終端チェーンと、この無終端チェーンを無段変速可能に巻き掛けしたV溝プーリとから成るチェーン式無段変速伝動機構に関するもので、特にその騒音対策技術に係わる。
【背景技術】
【0002】
チェーン式無段変速伝動機構の騒音対策技術としては従来、例えば特許文献1に記載のごときものが提案されている。
この提案技術は、多数のリンクを順次相互にピンで数珠つなぎに連結して上記の無終端チェーンを構成した場合において、リンクの質量を増加させることなく、リンクの長手方向の剛性を上げることにより、無終端チェーンおよび各部品の振動を抑制して騒音を低減することを主旨とするものである。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−047288号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし上記した先の提案技術は、無終端チェーンおよび各部品の振動そのものをリンクの剛性増大により抑制する騒音対策であり、
チェーン式無段変速伝動機構のダウンシフト時などにおける入力トルク変動に伴って生ずる騒音に対しては有効でなく、なお改善の余地がある。
【0005】
つまり、ダウンシフト時などの入力トルク変動に伴う騒音は、無終端チェーンおよび各部品そのものの振動に伴う騒音と違って、無終端チェーンの剛性を高めると逆に大きくなる傾向にあり、特許文献1所載の先の提案技術では、ダウンシフト時などの入力トルク変動に伴う騒音を軽減することが困難である。
【0006】
本発明は、ダウンシフト時などの入力トルク変動に伴う騒音の場合、無終端チェーンの剛性を低下させるのが、当該騒音に対する対策として有効であるとの事実認識に基づき、
この着想を具体化して所望通りの騒音対策を行い得るようにしたチェーン式無段変速伝動機構を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
この目的のため、本発明によるチェーン式無段変速伝動機構は、以下のごとくにこれを構成する。
先ず、本発明の要旨構成の基礎前提となるチェーン式無段変速伝動機構を説明するに、これは、
無終端チェーンと、この無終端チェーンを無段変速可能に巻き掛けしたV溝プーリとから成るものである。
【0008】
本発明は、かかるチェーン式無段変速伝動機構において、
上記無終端チェーンの剛性を、入力トルク変動に伴って生ずる騒音が設計上の所定値未満となるよう低下させた構成に特徴づけられる。
【発明の効果】
【0009】
上記した本発明のチェーン式無段変速伝動機構にあっては、無終端チェーンの剛性を上記のように低下させたため、
チェーン式無段変速伝動機構のダウンシフト時などにおける入力トルク変動に伴って生ずる騒音を設計上の所定値未満となるよう軽減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【図1】本発明の着想を適用可能なチェーン式無段変速伝動機構を展開して模式的に示す概略平面図である。
【図2】図1に示したチェーン式無段変速伝動機構のセカンダリプーリ側における巻き掛け伝動部を示す詳細側面図である。
【図3】図2に示したセカンダリプーリ側チェーン巻き掛け伝動部の詳細を示す縦断面図である。
【図4】本発明の実施例になるチェーン式無段変速伝動機構の無終端チェーンを構成するリンク板を示し、 (a)は、該リンク板の一例になる形状を示す正面図、 (b)は、該リンク板の他の例になる形状を示す正面図、 (c)は、該リンク板の更に他の例になる形状を示す正面図である。
【図5】本発明の実施例になるチェーン式無段変速伝動機構の無終端チェーンを構成するリンク板を示し、 (a)は、該リンク板の一例になる形状を、一方端から見て示す側面図、 (b)は、該リンク板の他の例になる形状を、一方端から見て示す側面図、 (c)は、該リンク板の更に他の例になる形状を、一方端から見て示す側面図である。
【図6】エンジントルクと、ロックアップクラッチ内におけるトルクダンパの捩り剛性との関係を示す特性線図である。
【図7】無終端チェーンのリンク板断面積と、無段変速伝動機構の入出力軸間距離との関係を示す特性線図である。
【図8】車両の駆動系捩り音振システムを示す模式図で、 (a)は、従来のチェーン式無段変速伝動機構を用いた場合における駆動系捩り音振システムを示す模式図、 (b)は、図4,5のリンク板により組み立てたチェーンを具えるチェーン式無段変速伝動機構を用いた場合における駆動系捩り音振システムを示す模式図である。
【図9】エンジン回転数と、出力/入力トルク感度との関係を示す特性線図で、 (a)は、従来のチェーン式無段変速伝動機構を用いた場合における、エンジン回転数と、出力/入力トルク感度との関係を示す特性線図、 (b)は、図4,5のリンク板により組み立てたチェーンを具えるチェーン式無段変速伝動機構を用いた場合における、エンジン回転数と、出力/入力トルク感度との関係を示す特性線図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の実施の形態を、図面に示す実施例に基づき詳細に説明する。
<第1実施例の構成>
図1〜3は、本発明の着想を適用可能なチェーン式無段変速伝動機構を示し、
図1は、該チェーン式無段変速伝動機構10を展開して模式的に示す概略平面図、図2,3はそれぞれ、そのセカンダリプーリ側における巻き掛け伝動部の詳細側面図および縦断面図である。
【0012】
図1において、11は、チェーン式無段変速伝動機構10の駆動側プーリであるプライマリプーリ、12は、従動側プーリであるセカンダリプーリをそれぞれ示す。
これらプライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12間に無終端チェーン13を掛け渡して設け、
チェーン式無段変速伝動機構10は、この無終端チェーン13を介しプライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12間で動力伝達を行い得るものとする。
【0013】
プライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12はそれぞれ、回転軸線方向に正対する対向シーブ11a,11bおよび12a,12bを具え、これら対向シーブ11a,11b間および対向シーブ12a,12b間にプーリV溝を画成したV溝プーリとする(対向シーブ12a,12b間に画成されたプーリV溝を図3に示す)。
【0014】
無終端チェーン13は、図2,3に明示するごとく、多数のリンク板14を順次、その両端におけるリンクピン挿通孔14a内のリンクピン15で数珠繋ぎに連結して連続円環状に構成すると共に、リンク板14を図3のごとく、リンクピン15に植設したリテーナピン16でリンクピン15に対して抜け止めする。
【0015】
リンクピン15はそれぞれ、図2に示すように湾曲背面15aを有し、この湾曲背面15aが背中合わせになるよう一対一組となして、リンク板14の両端におけるリンクピン挿通孔14a内に挿通する。
そしてリンクピン15の両端面15bはそれぞれ図3に示すごとく、プライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12のプーリV溝側壁を提供する軸線方向対向シーブ11a,11bおよび12a,12bに摩擦接触するよう傾斜させる。
【0016】
かくて無終端チェーン13は、プーリ巻き付き領域においてリンクピン15を、プライマリプーリ11の対向シーブ11a,11b間およびセカンダリプーリ12の対向シーブ12a,12b間に挟圧され、プライマリプーリ11およびセカンダリプーリ12間での動力伝達を行うことができる。
【0017】
なお、プライマリプーリ11の対向シーブ11a,11bは、その一方11aを固定シーブとし、他方11bを軸線方向にストローク制御可能な可動シーブとする。
また、セカンダリプーリ12の対向シーブ12a,12bは、プライマリプーリ11の可動シーブ11bと同じ側におけるシーブ12aを固定シーブとし、プライマリプーリ11の固定シーブ11aと同じ側におけるシーブ12bを軸線方向にストローク制御可能な可動シーブとする。
【0018】
かくて前記の動力伝達中、プライマリプーリ11の可動シーブ11bを固定シーブ11aに対し接近させてプーリV溝幅を狭くすると同時に、セカンダリプーリ12の可動シーブ12bを固定シーブ12aから遠ざけてプーリV溝幅を広くするにつれ、
無終端チェーン13は、プライマリプーリ11に対する巻き掛け径を増大されると共に、セカンダリプーリ12に対する巻き掛け径を小さくされ、チェーン式無段変速伝動機構10は図2,3に示す最ハイ変速比選択状態に向け無段変速下にアップシフト可能である。
【0019】
逆に、プライマリプーリ11の可動シーブ11bを固定シーブ11aから遠ざけてプーリV溝幅を広くすると同時に、セカンダリプーリ12の可動シーブ12bを固定シーブ12aに対し接近させてプーリV溝幅を狭くするにつれ、
無終端チェーン13は、プライマリプーリ11に対する巻き掛け径を小さくされると共に、セカンダリプーリ12に対する巻き掛け径を増大され、チェーン式無段変速伝動機構10は図1に示す最ロー変速比選択状態に向け無段変速下にダウンシフト可能である。
【0020】
プライマリプーリ11は図1に示すごとく、前後進切り替え機構21を介して入力軸22に結合し、入力軸22には、流体継手としてのトルクコンバータ23を介しエンジン24を結合する。
【0021】
トルクコンバータ23は、入力軸22にスライド可能に回転係合させたロックアップクラッチ23Lを具え、
このロックアップクラッチ23Lが図1に示す位置にあって釈放状態である場合、エンジン24の回転を入力軸22に流体伝動し、
ロックアップクラッチ23Lが図1において右行して締結状態になとき、エンジン24の回転をそのまま入力軸22に機械的に伝動する(ロックアップ状態)。
このロックアップ状態では、ロックアップクラッチ23Lがトルクダンパ23Dによる緩衝下に上記の機械的な動力伝達を行う。
【0022】
前後進切り替え機構21は、ダブルピニオン遊星歯車組21Gと、前進クラッチ21Fと、後退ブレーキ21Rとからなり、
前進クラッチ21Fの締結時に、入力軸22へのエンジン回転をそのままプライマリプーリ11へ伝達し、
後退ブレーキ21Rの締結時に、入力軸22へのエンジン回転を逆転下にプライマリプーリ11へ伝達する。
【0023】
セカンダリプーリ12は出力軸25に結合し、この出力軸25は、図示せざるディファレンシャルギヤ装置を介して左右駆動車輪に結合し、これら車輪の駆動により車両を走行させ得る。
【0024】
<チェーン式無段変速伝動機構の騒音対策>
上記したチェーン式無段変速伝動機構10は、ロー側プーリ比へのダウンシフト時などにおける入力トルク変動に伴って車室内に、乗員の耳が圧迫されるような騒音「こもり音」を生じさせ、この「こもり音」が設計上の所定値未満となるよう、本実施例においては、前記したごとくに無終端チェーン13を構成するリンク板14を、図4(a)〜(c)および/または図5(a)〜(c)に示すようなものとなす。
【0025】
図4(a)は、無終端チェーン13の走行方向に延在するリンク板14の平行側部14bを、リンクピン挿通孔14aの開口方向に見て、外側縁14cの円弧状切り欠きにより幅がW1のように小さくなったくびれ形状にしたものである。
これによりリンク板14は、平行側部14bが部分的に断面積を小さくされ、低剛性なリンク板となる。
そして当該リンク板14を前記したごとくに組み立てて成る無終端チェーン13も、その捩り剛性を低下される。
【0026】
図4(b)は、リンク板14の平行側部14bを、リンクピン挿通孔14aの開口方向に見て、内側縁14dの円弧状切り欠きにより幅がW2のように小さくなったくびれ形状にしたものである。
この場合もリンク板14は、平行側部14bが部分的に断面積を小さくされ、低剛性なリンク板となり、無終端チェーン13の捩り剛性を低下させることができる。
【0027】
図4(c)は、リンク板14の平行側部14bを、リンクピン挿通孔14aの開口方向に見て、外側縁14cの円弧状切り欠きおよび内側縁14dの円弧状切り欠きにより、幅がW3のように小さくなったくびれ形状にしたものである。
この場合リンク板14は、平行側部14bが図4(a)および図4(b)よりも更に断面積を小さくされ、更に低剛性なリンク板となり、無終端チェーン13の捩り剛性を更に低下させ得る。
【0028】
図5(a)は、無終端チェーン13の走行方向両端におけるリンク板14の両端部14eを、無終端チェーン13の走行方向に見たとき、全長に亘ってリンク板14の残部に対し板厚がD1のように薄い形状にしたものである。
これによりリンク板14は、両端部14eが全体的に断面積を小さくされ、低剛性なリンク板となる。
そして当該リンク板14を前記したごとくに組み立てて成る無終端チェーン13も、その捩り剛性を低下される。
【0029】
図5(b)は、リンク板14の両端部14eを、無終端チェーン13の走行方向に見たとき、中程において円弧状切り欠き14fにより、リンク板14の残部に対し板厚がD2のように薄くなる形状にしたものである。
この場合リンク板14は、両端部14eが中程において断面積を小さくされ、低剛性なリンク板となり、無終端チェーン13の捩り剛性を低下させることができる。
【0030】
図5(c)は、リンク板14の両端部14eを、無終端チェーン13の走行方向に見たとき、中程の両側において円弧状切り欠き14gにより、リンク板14の残部に対し板厚がD3のように薄くなる形状にしたものである。
この場合リンク板14は、両端部14eが中程の両側において断面積を小さくされ、低剛性なリンク板となり、無終端チェーン13の捩り剛性を低下させることができる。
【0031】
なお、図4(a)〜(c)によるリンク板14の低剛性化技術と、図5(a)〜(c)によるリンク板14の低剛性化技術とは、任意に組み合わせて用いることもできる。
しかし何れにしても上記したリンク板14の低剛性化は、これにより得られる無終端チェーン13の捩り剛性低下が、無終端チェーン13の捩り剛性kchainを図1におけるトルクダンパ23Dの捩り剛性kL/uよりも小さくするようなものとする。
【0032】
ここで無終端チェーン13の捩り剛性kchainは、バネ部分長さをL、プライマリプーリ11の捩り剛性半径をr1、セカンダリプーリ12の捩り剛性半径をr2、緩み側チェーン剛性をK1、引っ張り側チェーン剛性をKとすると、
【数1】

で表される。
【0033】
またトルクダンパ23Dの捩り剛性kL/uは、入力トルクをT、係数をa,bとすると、次式で表され、図6に例示するようなものである。
L/u=a×T+b
そして、チェーン剛性Kは、形状修正係数をα、チェーン幅方向リンク板枚数をn、横弾性係数をE、リンク板1枚の断面積をAとすると、
K=α・n・E・A/L
で表される。
【0034】
また、プライマリプーリ11の捩り剛性半径r1と、ピッチ半径rpriとの関係、更にセカンダリプーリ12の捩り剛性半径をr2と、ピッチ半径rsecとの関係、無終端チェーン13のバネ部分長Lと、無段変速伝動機構10の入出力軸間距離lとの関係はそれぞれ、次式で表される。
【数2】

【0035】
前記した要件(kchain <kchain)を満足するリンク板14の断面積Aは、このリンク板断面積Aと、無段変速伝動機構10の入出力軸間距離lと、チェーン剛性とを表す図2において、(kchain <kchain)の境界線に対しチェーン剛性が低くなるような断面積に設定する。
これにより要求とおり、無終端チェーン13の捩り剛性kchainをトルクダンパ23Dの捩り剛性kL/uよりも小さくすることができる。
【0036】
かように構成することで、車両の駆動系捩り音振システムが従来は図8(a)に示すようなものであったのを、本実施例では同図(b)に示すようなものとなし得る。
【0037】
つまり従来は、無終端チェーン13が高剛性であったため、図8(a)に示すごとく、当該高剛性チェーンバネの前後に無段変速伝動機構10によるCVTイナーシャが存在し、エンジン24によるENGイナーシャおよびCVTイナーシャ間にトルクダンパ23Dが不可欠であった。
そのため、ダウンシフトバネと、高剛性チェーンバネと、トルクダンパ(23D)バネとの3個のバネが不可避であった。
【0038】
これに対し本実施例においては、無終端チェーン13の捩り剛性kchainをトルクダンパ23Dの捩り剛性kL/uよりも小さくするため、トルクダンパ23Dが不要となってこれによるトルクダンパバネが存在せず、ダウンシフトバネと、低剛性の無終端チェーン13による低剛性チェーンバネとの2個のバネのみでよくなり、トルクダンパ23Dが不要な分だけ低廉化を図ることができる。
【0039】
また従来は、無終端チェーン13の剛性が高かったため、チェーン剛性によるチェーン捩れモード共振点Zが図9(a)に示すごとくに発生し、入力トルク変動減衰領域を超えた大きな出力/入力トルク感度となって入力トルク変動を減衰させ得ないチェーン捩れモード共振点Zが、ロックアップクラッチ23Lの締結領域であるロックアップ(L/U)領域に存在することとなる。
このため従来は、チェーン式無段変速伝動機構10のダウンシフト時などにおける入力トルク変動に伴って車室内に「こもり音」のような騒音を生じさせる。
【0040】
これに対し本実施例においては、無終端チェーン13の捩り剛性kchainをトルクダンパ23Dの捩り剛性kL/uよりも小さくするため、チェーン剛性によるチェーン捩れモード共振点Zが図9(b)に示すごとくに発生するようになり、入力トルク変動減衰領域を超えた大きな出力/入力トルク感度となって入力トルク変動を減衰させ得ないチェーン捩れモード共振点Zがロックアップ(L/U)領域よりも低回転領域に存在することとなる。
このため本実施例では、チェーン式無段変速伝動機構10のダウンシフト時などに入力トルク変動が発生しても、車室内に「こもり音」のような騒音を生じさせることがない。
【0041】
<実施例の効果>
上記した実施例のチェーン式無段変速伝動機構10によれば、無終端チェーン13の捩り剛性kchainをトルクダンパ23Dの捩り剛性kL/uよりも小さくするため、ロックアップクラッチ23Lのトルクダンパ23Dを省略可能であり、コスト的に大いに有利であるほか、
チェーン式無段変速伝動機構10のダウンシフト時などにおいて入力トルク変動が発生しても、これに伴って問題となるほど大きな騒音が発生するのをことがなく、チェーン式無段変速伝動機構10の商品価値も高めることができる。
【0042】
また図9(b)に示すごとく、入力トルク変動減衰領域を超えた大きな出力/入力トルク感度となって入力トルク変動を減衰させ得ないチェーン捩れモード共振点Zがロックアップ(L/U)領域よりも低回転領域に存在するようにしたため、上記騒音の問題が顕著になるロックアップ領域において確実に当該問題の解決を実現することができる。
【符号の説明】
【0043】
10 チェーン式無段変速伝動機構
11 プライマリプーリ
12 セカンダリプーリ
13 無終端チェーン
14 リンク板
14a リンクピン挿通孔
14b リンク板平行側部
14c 平行側部外側縁
14d 平行側部内側縁
14e リンク板両端部
14f,14g 円弧状切り欠き
15 リンクピン
15a 湾曲背面
15b 端面
21 前後進切り替え機構
22 入力軸
23 トルクコンバータ(流体継手)
23L ロックアップクラッチ
23D トルクダンパ
24 エンジン
25 出力軸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
無終端チェーンと、この無終端チェーンを無段変速可能に巻き掛けしたV溝プーリとから成るチェーン式無段変速伝動機構において、
前記無終端チェーンの剛性を、入力トルク変動に伴って生ずる騒音が設計上の所定値未満となるよう低下させたことを特徴とするチェーン式無段変速伝動機構。
【請求項2】
ロックアップクラッチの締結により入出力要素間を直結可能なロックアップ式流体継手を介して回転を入力される、請求項1に記載されたチェーン式無段変速伝動機構において、
前記ロックアップクラッチのトルクダンパを省略可能なほどに前記騒音が小さくなるよう前記無終端チェーンの剛性を低下させたことを特徴とするチェーン式無段変速伝動機構。
【請求項3】
請求項2に記載されたチェーン式無段変速伝動機構において、
前記無終端チェーンの捩り剛性が前記トルクダンパの捩り剛性未満になるよう前記無終端チェーンの剛性を低下させたことを特徴とするチェーン式無段変速伝動機構。
【請求項4】
請求項2または3に記載されたチェーン式無段変速伝動機構において、
前記入力トルク変動の減衰を生起させない無終端チェーンの共振点が、前記ロックアップクラッチを締結すべきロックアップ領域以外の低回転領域に出現するよう前記無終端チェーンの剛性を低下させたことを特徴とするチェーン式無段変速伝動機構。
【請求項5】
前記無終端チェーンが、多数のリンク板を順次相互にピンで数珠つなぎに連結したものである、請求項1〜4のいずれか1項に記載されたチェーン式無段変速伝動機構において、
前記無終端チェーンの剛性低下は、前記リンク板の断面積を少なくとも部分的に減じて実現させたものであることを特徴とするチェーン式無段変速伝動機構。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate


【公開番号】特開2012−247022(P2012−247022A)
【公開日】平成24年12月13日(2012.12.13)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−120177(P2011−120177)
【出願日】平成23年5月30日(2011.5.30)
【出願人】(000003997)日産自動車株式会社 (16,386)
【Fターム(参考)】