説明

チオール含有量を制限するためにオレフィンガソリンを脱硫するための新規な方法

【課題】ガソリン選択的脱硫法の性能を改善する。
【解決手段】本発明は、接触分解装置または他の転換装置に由来する0.1重量%未満の硫黄を含有するガソリンを水素化脱硫する方法であって、該方法は、二金属性触媒を用い、0.1〜20h−1のHSV、220〜350℃の温度、0.1〜5MPaの圧力で操作する少なくとも1つの水素化脱硫反応器を含み、脱硫ガソリンの一部を水素化脱硫反応器の入口に、脱硫されるべきガソリンの流量の0.1〜3倍の再循環比で再循環させる工程を包含する方法に関する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
新しい環境規制を満足する改質ガソリンの製造は、それらの硫黄含有量を相当大きな程度に低減させることを必要とする。環境規制は、2005年にガソリンプール中の硫黄含有量を、50ppm未満または多くともこれに等しい値に低減させることを改質業者に強い、硫黄含有量は、2009年1月1日には欧州共同体内において10ppmに低減させられるだろう。さらに、脱硫ガソリンは、腐食力に関する規制も満足しなければならない。ガソリンの腐食力は、必然的に、チオール等の酸性の硫黄含有化合物の存在に起因する。
【0002】
このため、腐食性を制限するために脱硫ガソリンはチオールをほぼ含んではならない。
【0003】
処理されるべき原料油は、一般的に、硫黄を含有するガソリン留分、例えば、コーキング装置、ビスブレーキング装置、スチームクラッキング装置または接触分解装置(FCC)からのガソリン留分である。前記原料油は、好ましくは、接触分解装置由来の、典型的には、70〜約250℃の蒸留範囲を有するガソリン留分によって構成される。
【0004】
本明細書の以降の部分は、ガソリンについての定義を、ガソリン(接触分解装置からのガソリンの主要部分に加えて、他の転換装置からのガソリンのフラクションを含み得る)に広げることによって、全般的な意味において接触分解されたガソリンを記述する。
【0005】
接触分解されたガソリンは、ガソリンプールの30〜50容積%を構成し、概して、高オレフィンおよび硫黄濃度を有し得る。しかしながら、改質ガソリンに存在する硫黄のほぼ90%は、接触分解からのガソリンに起因する。したがって、ガソリン、主にFCCガソリンの脱硫は、現行および将来の規制を満足させる際に非常に重大である。
【背景技術】
【0006】
接触分解されたガソリンの水素化処理または水素化脱硫は、従来の条件下に行われた場合、留分中の硫黄の量を低減させ得る。しかしながら、このような方法は、標準的な水素化処理条件下でのオレフィンの大部分さらには全部の水素化に起因して、留分のオクタン価に非常に大きな降下をもたらすという大きな不利益点を有する。
【0007】
方法は、オクタン価を許容レベルに維持しながらFCCを強く脱硫することにある。
【0008】
前記方法の大部分は、オレフィンのパラフィンへの水素化(この変換は、オクタン価の大きな降下を誘導する)を制限しながら硫黄含有化合物をHSに変換する選択的水素化脱硫の原理に基づいている。
【0009】
しかしながら、前記方法の効果は、反応器内で形成されたHSの残留オレフィンへの付加に由来する再結合チオールとして知られているチオールの形成によって制限される。前記再結合チオールの形成は、特に、特許文献1および2に記載されている。これら文献は、再結合チオールの形成を制限するための操作条件および触媒の種々の組み合わせを開示している。
【0010】
再結合チオール形成の問題に対する他の解決方法は、形成された前記再結合チオールを抽出するために、脱硫されたガソリンを部分的に処理することに基づいている。このような解決方法のうち所定のものは、特許文献3、4に記載されている。
【0011】
本発明に記載された方法は、補足的なガソリン処理工程の助けを借りることなく、脱硫工程中に、再結合チオールの形成を相当低減させ、オクタン価の損失を制限することができる。事実、本発明者らは、脱硫ガソリンの一部を再循環させることによってガソリンの選択的脱硫法の性能を改善することが可能であることを発見した。
【0012】
処理されるべき原料を脱硫ガソリンの一部と混合すれば、オクタン価を高く維持しながら脱硫流出物中にチオールの形態で存在する硫黄含有化合物の割合を大きく低減させることができることが観察された。
【0013】
脱硫ガソリンに対する適切な再循環の使用は、所定の文献に記載されているが、本発明の主題とは異なる条件下に行われており、異なる問題を有している。
【0014】
例えば、特許文献5には、脱硫流出物の一部を再循環させることにより原料油の硫黄含有量を0.1重量%未満に制限するガソリンの脱硫、水素化および脱水素化反応の改良法が記載されている。
【0015】
特許文献5は、ガソリンのフラクションを脱硫し、かつ、オレフィンの少なくとも一部を飽和させるための、0.1重量%超(すなわち、1000重量ppm超)の硫黄を含有するガソリンフラクションに関する。
【0016】
本発明が従来技術と異なっているのは、本発明がオレフィンの水素化の度合いおよびチオールの形成を精密に制限しながら0.1重量%未満の硫黄を含有するガソリンを強く脱硫すること意図している点にある。
【特許文献1】米国特許第6231754号明細書
【特許文献2】国際公開第01/40409号パンフレット
【特許文献3】国際公開第02/28988号パンフレット
【特許文献4】国際公開第01/79391号パンフレット
【特許文献5】米国特許第2431920号明細書
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0017】
本発明は、接触分解装置または他の転換装置由来の0.1重量%未満の硫黄を含有するガソリンを水素化脱硫する方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0018】
上記課題を解決するため、本発明は、接触分解装置または他の転換装置由来の0.1重量%未満の硫黄を含有するガソリンを水素化脱硫する方法であって、二金属性触媒を用い、0.1〜20h−1のHSV、220〜350℃の温度および0.1〜5MPaの圧力で操作する少なくとも1つの水素化脱硫反応器を含み、脱硫ガソリンの一部を水素化脱硫反応器の入口に、脱硫されるべきガソリンの流量の0.1〜3倍の再循環比で再循環させる工程を包含する、方法である。
【0019】
水素化脱硫反応器は、0.1〜10h−1、好ましくは2〜8h−1のHSV、1〜3MPaの圧力、50〜800リットル/リットル、好ましくは100〜400リットル/リットルの水素/原料油の容積比で機能することが好ましい。
【0020】
用いられる触媒は、多孔性の担体上に担持される、少なくとも1種の第VIII族元素および第VIb族からの1種の元素を含み、第VIII族元素は、好ましくは鉄、コバルトまたはニッケルであり、第VIb族元素は、好ましくは、モリブデンまたはタングステンであることが好ましい。
【0021】
第VIII族元素の量は、酸化物として表して、0.5〜15重量%、好ましくは0.7〜10重量%であり、第VIb族金属の量は、1.5〜60重量%、好ましくは2〜50重量%であることが好ましい。
【0022】
水素化脱硫触媒は、比表面積が200m/g未満、好ましくは150m/g、より好ましくは100m/gである多孔性の担体を含むことが好ましい。
【0023】
原料油に接触させる前に、触媒は、該触媒の2.8重量%以下、好ましくは0.5〜2.6重量%を示すような量に炭素を担持させる工程を経ることが好ましい。
【0024】
水素化脱硫反応器の下流に、水素化脱硫反応器において用いられるものと同一タイプの二金属性の触媒を用いる終結反応器が設けられることが好ましい。
【0025】
終結反応器において用いられる触媒は、第VIII族元素および第VIb族元素を有し、該第VIII族元素の量は、酸化物として表して、0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜5重量%であり、第VIb族元素の量は、1.5〜50重量%、好ましくは2〜20重量%であることが好ましい。
【0026】
終結反応器において用いられる触媒は、水素化脱硫反応器において用いられる触媒の触媒活性の1〜70%、好ましくは1〜50%の触媒活性を有することが好ましい。
【0027】
終結反応器において用いられる触媒は、第VIII族元素を含有する単金属性の触媒であり、該元素の量は、酸化物として表して、1〜60重量%、好ましくは2〜20重量%であることが好ましい。
【0028】
脱硫ガソリンの一部の再循環は、水素化脱硫反応器と終結反応器との間に位置する点になされることが好ましい。
【0029】
脱硫ガソリンの一部の再循環は、同一の水素化脱硫反応器内にある2つの触媒床の間になされることが好ましい。
【発明の効果】
【0030】
本発明の方法は、二金属性触媒を用い、0.1〜20h−1のHSV、220〜350℃の温度および0.1〜5MPaの圧力で操作する少なくとも1つの水素化脱硫反応器を用いて、脱硫ガソリンの一部を水素化脱硫反応器の入口に、脱硫されるべきガソリンの流量の0.1〜3倍の再循環比で再循環させる工程を包含するので、補足的なガソリン処理工程の助けを借りることなく、脱硫工程中に、再結合チオールの形成を相当低減させ、オクタン価の損失を制限することができ、ガソリンの選択的脱硫法の性能を改善することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0031】
本発明は、接触分解装置に由来する0.1重量%未満の硫黄を含有するガソリンまたは他の転換装置に由来し、好ましくは接触分解されたガソリンを少なくとも一部に含有するガソリンを水素化脱硫する方法であって、二金属性の触媒を用い、0.1〜20h−1のHSV(hourly space velocity:毎時空間速度)、220〜350℃の温度、0.1〜5MPaの圧力(1MPa=10パスカル=10バール)で操作する少なくとも1つの水素化脱硫反応器を含み、脱硫ガソリンの一部を水素化脱硫反応器への入口に、脱硫されるべきガソリンの流量の0.1〜3倍の再循環比で再循環させることを特徴とする方法として記載され得る。
【0032】
本発明の方法において用いられる水素化脱硫反応器は、一般的には、固定床反応器であり、触媒の粒子径は、数ミリメートル程度、好ましくは、1〜4mmである。
【0033】
本方法において用いられる触媒は、第VIII族からの少なくとも1種の元素および第VIb族からの1種の元素を含み、これらは、多孔性担体上に担持され、第VIII族元素は、好ましくは、鉄、コバルトまたはニッケルであり、好ましくはコバルトであり、第VIb族元素は、好ましくは、モリブデンまたはタングステン、好ましくはモリブデンである。
【0034】
水素化脱硫触媒は、比表面積が200m/g未満である多孔性担体によって構成される。
【0035】
本発明の方法は、ある場合には、水素化脱硫反応器の下流に位置する終結反応器を採用してもよく、該終結反応器は、単金属性触媒または水素化脱硫反応器において用いられるものと同じタイプの二金属性触媒のいずれかを用いる。
【0036】
本方法が終結反応器を含む場合、脱硫ガソリンの少なくとも一部を、水素化脱硫反応器と終結反応器との間に位置する点に再循環させることが特に有利である。
【0037】
水素化脱硫反応器(直列または並列で複数機能する場合には水素化脱硫反応器のうちの一つ)の2つの触媒床の間に脱硫ガソリンの少なくとも一部を再循環させることも特に有利である。
【0038】
本発明は、0.1重量%(1000重量ppm)未満の硫黄、好ましくは950重量ppm未満の硫黄、より好ましくは900重量ppm未満の硫黄、非常に好ましくは850重量ppm未満の硫黄をあらゆるタイプの硫黄含有化合物の形態で含有し、あらゆるタイプの化学化合物、特にはオレフィンを含むガソリンを脱硫する方法に関する。本発明の方法は、転化ガソリン、特に、接触分解、流動接触分解(FCC)、コーキング法、ビスブレーキング法または高温分解法からのガソリンを変換することに特に適用される。
【0039】
本発明の方法により、硫黄含有量が非常に低くオクタン価が改善されたガソリンを製造することができる。本発明の方法を用いて得られたガソリンの硫黄含有量は、一般的には30重量ppm未満、好ましくは28重量ppm未満、非常に好ましくは25重量ppm未満である。前記ガソリンのチオールの含有量は、好ましくは25重量ppm未満、より好ましくは22重量ppm以下、より一層好ましくは20重量ppm以下である。
【0040】
本発明の方法は、処理されるべきガソリンを脱硫する少なくとも1回の工程と、場合によっては、水素化脱硫終結工程とを包含する。
【0041】
水素化脱硫は、少なくとも1つの固定床反応器において行われる。該固定床反応器は、反応器に沿った温度上昇を制御するための、冷流体を注入する、低温帯域と呼ばれる帯域によって分離された複数の触媒床を含んでもよい。
【0042】
終結工程も、複数の触媒床を含んでもよい少なくとも1つの固定床反応器において行われる。
【0043】
脱硫ガソリンは、水素化脱硫反応器への入口、または2つの連続する触媒床の間の低温帯域、または水素化脱硫反応器と終結反応器との間に再循環させられてもよい。
【0044】
選択された再循環点に関係なく、再循環ガソリンの全流量は、脱硫されるべきガソリンの流量の0.1〜3倍、好ましくは脱硫されるべきガソリンの流量の0.2〜2倍、非常に好ましくは脱硫されるべきガソリンの流量の0.2〜1倍の流量に相当する。
【0045】
再循環させられるガソリンは、脱硫されるべきガソリンの硫黄含有量より低い硫黄含有量、好ましくは、脱硫されるべきガソリンの硫黄含有量の多くとも半分の硫黄含有量を有することを特徴とする。
【0046】
水素化脱硫反応器の操作条件は、オレフィンガソリンの選択的脱硫のために典型的に用いられる条件である。例えば、220〜350℃の温度が用いられ、その際の圧力は一般的には0.1〜5MPa、好ましくは1〜3MPaである。
【0047】
毎時空間速度は、一般的には約0.1〜20h−1(触媒の容積当たりかつ1時間当たりの脱硫されるべき液状ガソリンの容積として表現される)、好ましくは0.1〜10h−1、より好ましくは0.5〜8h−1である。
【0048】
脱硫されるべきガソリンの流量に対する水素の流量の比は、一般的には50〜800リットル/リットル、好ましくは100〜400リットル/リットルである。
【0049】
水素化脱硫反応器は、多孔性担体上に担持された、少なくとも1種の第VIII族元素および1種の第VIb族元素を含む水素化脱硫触媒の少なくとも1つの床を含む。
【0050】
第VIII族元素は、好ましくは、鉄、コバルトまたはニッケルである。
【0051】
第VIb族元素は、好ましくは、モリブデンまたはタングステンである。
【0052】
第VIII族元素の量は、酸化物として表して、一般的に0.5〜15重量%、好ましくは0.7〜10重量%である。
【0053】
第VIb族金属の量は、一般的には1.5〜60重量%、好ましくは2〜50重量%である。
【0054】
水素化脱硫触媒の多孔性の担体は、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素によって構成される群から選択されるか、または、前記群内の元素の任意の混合物である。
【0055】
オレフィンの水素化を最少にするために、比表面積が200m/g未満、好ましくは150m/g未満、より好ましくは100m/g未満であるアルミナをベースとする担体を用いることが有利である。
【0056】
水素化脱硫触媒の多孔度は、平均細孔直径が一般的には20nm超、好ましくは20〜100nmであるようにする(1nm=1ナノメートル=10−9メートル)。
【0057】
第VIb族金属の表面密度は、好ましくは2×10−4〜40×10−4g/m(担体1m当たりの前記金属の酸化物のグラム)、好ましくは、4×10−4〜16×10−4グラム/mである。
【0058】
第VIb族および第VIII族元素は、硫化された形態で水素化脱硫に活性であるので、触媒は、一般的には、処理されるべき原料油と接触させられる前に硫化工程を経る。
【0059】
一般的に、前記硫化は、硫化水素を生じさせる分解可能な硫黄含有化合物と接触させて固体を熱処理することによって行われる。触媒はまた、硫化水素を含むガス流と直接的に接触させられてもよい。
【0060】
この硫化工程は、現場または現場外、すなわち、水素化脱硫反応器の内側または外側で行われてもよい。
【0061】
場合によっては、原料油と接触させる前に、硫化された触媒は、所定量、好ましくは2.8重量%以下の炭素を担持させる炭素担持工程を経てもよい。前記炭素担持工程は、触媒の水素化活性を優先的に低減させることによって触媒の選択性を向上させることを目的とする。
【0062】
好ましくは、担持される炭素の量は、0.5〜2.6重量%である。前記炭素担持は、接触脱硫工程の前、後または最中に行われてもよい。
【0063】
本方法は、第VIII族元素から選択される少なくとも1種の元素を含み、該元素を多孔性担体、例えばアルミナ、シリカ等上に担持した触媒を用いる水素化脱硫終結工程を採用してよい。
【0064】
第VIII族元素の量は、1〜60重量%、好ましくは2〜20重量%である。前記第VIII族元素は金属酸化物の形態で導入され、次いで、使用前に硫化される。
【0065】
この終結工程は、原則として、水素化脱硫流出物に含まれる飽和した硫黄含有化合物、例えばチオール、スルフィド等を分解するように行われる。
【0066】
存在する場合、この終結工程は、水素化脱硫工程より高い温度で行われる。
【0067】
本発明のさらに特定の態様では、終結工程は、少なくとも1種の第VIII族元素および1種の第VIb族元素を含み、これら元素が多孔質担体上に担持された水素化脱硫触媒を用いて行われる。
【0068】
第VIII族元素は、好ましくは、鉄、コバルトまたはニッケルである。
【0069】
第VIb族元素は、好ましくは、モリブデンまたはタングステンである。
【0070】
第VIII族元素の量は、酸化物として表して、0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜5重量%である。
【0071】
第VIb族金属の量は、1.5〜50重量%、好ましくは2〜20重量%である。
【0072】
多孔質担体は、シリカ、アルミナ、炭化ケイ素によって構成される群から選択されるか、または、該構成元素の任意の混合物である。
【0073】
オレフィンの水素化を最少にするために、比表面積が200m/g未満、好ましくは150m/g未満、より好ましくは100m/g未満であるアルミナをベースとする担体を用いることが有利である。
【0074】
終結工程において用いられる触媒の多孔度は、平均細孔直径が20nm超、好ましくは20〜100nmであるようにされる。
【0075】
第VIb族金属の表面密度は、好ましくは2×10−4〜40×10−4g/m(担体1m当たりの前記金属酸化物のグラム)、好ましくは4×10−4〜16×10−4である。
【0076】
終結工程のための触媒は、触媒活性が、第一の水素化脱硫触媒の触媒活性の一般的には1〜90%、好ましくは1〜70%、より好ましくは1〜50%であることによって特徴付けられる。
【0077】
以下の本方法の記載は、添付の図1からより良く理解されることになるが、これは、本発明の方法が想定し得る種々の構成を制限するものでは全くない。
【0078】
図1は、2つの触媒床に分割された水素化脱硫反応器と、2つの触媒床に分割された終結反応器を示す。
【0079】
並列または直列で機能する複数の水素化脱硫反応器および並列または直列で機能する複数の終結反応器は、完全に可能であり、本発明の範囲に包含される。
【0080】
同様に、各反応器を2より多い数の触媒床に分割することも、本発明の範囲に完全に包含される。終結反応器を囲む点線は、終結工程が任意であることを示す。
【0081】
処理されるべきガソリンがライン(1)を介して導入され、次いで、ライン(2)を介して導入される水素と混合され、熱交換装置および/または炉(11)において加熱される。ライン(2)からの水素は、ライン(10)を介して再循環させられた水素とライン(23)を介して導入された補給水素の混合物によって構成される。
【0082】
加熱されることにより所望の脱硫の程度を達成するのに必要な温度および圧力にされた混合物は、一般的には、ライン(3)において気相である。
【0083】
それは、少なくとも1つの水素化脱硫触媒床を固定床として含む反応器(12)に送られる。
【0084】
反応器(12)からの流出物は、炭化水素および未反応の硫黄含有化合物、オレフィンの水素化からのパラフィン、硫黄含有化合物の分解からのHS、およびHSのオレフィンへの付加からの再結合チオールを含む。
【0085】
反応器(12)からの流出物は、ライン(4)を介して熱交換装置(13)に送られ、炭化水素フラクションを凝縮させる(図1の点線の長方形内の部分は、この変形例では本方法のフローチャートに存在しないことになる)。
【0086】
次いで、液状の炭化水素および水素の混合物は、分離ドラム(14)において分離される。分離ドラム(14)により、主として脱硫ガソリンによって構成される液体部分は、ライン(6)を介して回収され得、主として水素およびHSによって構成される気体部分は、頂部からライン(5)を介して回収され得る。
【0087】
ガス状の流出物は、HSと水素とを分離するために、ライン(5)を介して洗浄部(15)に送られる。
【0088】
ライン(6)を介して供給される液体流出物の圧力が開放され、該液体流出物は、ストリッピング塔(17)に注入され、炭化水素中に溶解した残留するHSが頂部からライン(9)を介して抽出される。
【0089】
脱硫ガソリンは、ストリッピング塔の底部からライン(7)を介して回収される。この脱硫ガソリンの一部はライン(8)を介して取り出され、ライン(1)を介して導入された原料油と混合される。
【0090】
本方法のさらなる実施形態では、水素化脱硫が反応器(12)内で行われた後、水素化脱硫終結工程が終結反応器(19)において行われる。この場合、ライン(4)内の回収された反応混合物は、熱交換装置または炉(18)において再加熱され、次いで、終結反応器(19)に送られてもよい(図1の点線で示した長方形内の部分を参照)。
【0091】
脱硫ガソリンの一部は、水素化脱硫反応器の入口へのライン(1)または水素化脱硫反応器(12)の2つの触媒床の間へのライン(20)、または、終結反応器(19)の2つの触媒床の間へのライン(22)または水素化脱硫反応器(12)と終結反応器(19)の間へのライン(21)のいずれかを介して再循環させられてもよい。
【0092】
これらの再循環の全ての組み合わせも可能であり、本発明の範囲に含まれる。用語「再循環の組み合わせ」は、脱硫ガソリンの一部が、上記の種々の再循環点のそれぞれに再循環させられ得ることを意味する。この場合、再循環は、種々の再循環点の間であらゆる可能な比率で分配され得る。
【0093】
(実施例1:従来技術による)
連続式に機能する水素化脱硫反応器に、100mL(ミリリットル)のHR806触媒(Axensにより販売)が装填された。当該触媒は、コバルトおよびモリブデンの酸化物をベースとしており、HおよびDMDSの混合物により、従来の硫化条件下に硫化されて、金属性のモリブデンおよびコバルト酸化物の少なくとも80%がスルフィドに転換されたものである。
【0094】
接触分解装置由来のガソリンAの特徴が表1に要約されている。
【0095】
【表1】

【0096】
このガソリンは、下記条件下、HR806触媒により処理された:
温度:285℃
圧力:2.5MPa
原料油の流量:400mL/h
水素の流量:144L/h
水素化脱留反応器からの出口において、反応混合物は冷却され、ガソリンは、気/液分離器において水素から分離された。
【0097】
回収されたガソリンは、残留するHSを除去するために窒素流によりストリッピングされ、その後分析された。
【0098】
製造されたガソリンは、32重量ppmの硫黄を含んでおり、そのうちの22重量ppmは、チオールの形態であり、30mg/100mLの臭素価(bromine index)を有していた。
【0099】
(実施例2:本発明による)
実施例1と同様の条件下でガソリンAについての試験が行われた。
【0100】
ストリッピング装置からの液状混合物の一部が、ポンプを用いて原料油ポットに送られた。再循環比は、再循環流量を新しい原料油の流量で除算するようにして計算された。
【0101】
以下の試験条件が用いられた:
圧力:2.5MPa
脱硫されるべき原料油の流量:400mL/h
水素の流量:144L/h
温度は、混合物中に約30重量ppmの硫黄を得るように1℃の上昇に調整された。
【0102】
再循環流量は、0.2〜3の再循環比を得るように調整された。各循環比毎に、脱硫ガソリンのサンプルが回収され、分析された。表2は、種々のサンプルについて行われた分析の結果を示す。
【0103】
【表2】

【0104】
混合物の一部を再循環させて反応器を操作すると、混合物中の同一量の硫黄について、チオール含有量が低減させられ、かつ、オレフィン含有量がより高いガソリンを製造することが可能である。
【0105】
再循環比が高くなった場合、流出物中のチオール含有量は低くなり、臭素価(IBr)によって測定される流出物中のオレフィン含有量は、同一のままであり、オクタン価は保持される。
【図面の簡単な説明】
【0106】
【図1】本発明の方法のフローチャートを示し、本方法の最適な要素が点線で示されている。
【符号の説明】
【0107】
1 ライン
2 ライン
3 ライン
4 ライン
5 ライン
6 ライン
7 ライン
8 ライン
9 ライン
10 ライン
11 熱交換装置
12 反応器
13 熱交換装置
14 分離ドラム
15 洗浄部
17 ストリッピング塔
18 熱交換装置
19 終結反応器
20 ライン
21 ライン
22 ライン

【特許請求の範囲】
【請求項1】
接触分解装置または他の転換装置由来の0.1重量%未満の硫黄を含有するガソリンを水素化脱硫する方法であって、
二金属性触媒を用い、0.1〜20h−1のHSV、220〜350℃の温度および0.1〜5MPaの圧力で操作する少なくとも1つの水素化脱硫反応器を含み、
脱硫ガソリンの一部を水素化脱硫反応器の入口に、脱硫されるべきガソリンの流量の0.1〜3倍の再循環比で再循環させる工程を包含する、方法。
【請求項2】
水素化脱硫反応器は、0.1〜10h−1、好ましくは2〜8h−1のHSV、1〜3MPaの圧力、50〜800リットル/リットル、好ましくは100〜400リットル/リットルの水素/原料油の容積比で機能する、請求項1に記載の水素化脱硫法。
【請求項3】
用いられる触媒は、多孔性の担体上に担持される、少なくとも1種の第VIII族元素および第VIb族からの1種の元素を含み、第VIII族元素は、好ましくは鉄、コバルトまたはニッケルであり、第VIb族元素は、好ましくは、モリブデンまたはタングステンである、請求項1または2に記載の水素化脱硫法。
【請求項4】
第VIII族元素の量は、酸化物として表して、0.5〜15重量%、好ましくは0.7〜10重量%であり、第VIb族金属の量は、1.5〜60重量%、好ましくは2〜50重量%である、請求項1〜3のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項5】
水素化脱硫触媒は、比表面積が200m/g未満、好ましくは150m/g、より好ましくは100m/gである多孔性の担体を含む、請求項1〜4のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項6】
原料油に接触させる前に、触媒は、該触媒の2.8重量%以下、好ましくは0.5〜2.6重量%を示すような量に炭素を担持させる工程を経る、請求項1〜5のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項7】
水素化脱硫反応器の下流に、水素化脱硫反応器において用いられるものと同一タイプの二金属性の触媒を用いる終結反応器が設けられる、請求項1〜6のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項8】
終結反応器において用いられる触媒は、第VIII族元素および第VIb族元素を有し、該第VIII族元素の量は、酸化物として表して、0.5〜10重量%、好ましくは0.7〜5重量%であり、第VIb族元素の量は、1.5〜50重量%、好ましくは2〜20重量%である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項9】
終結反応器において用いられる触媒は、水素化脱硫反応器において用いられる触媒の触媒活性の1〜70%、好ましくは1〜50%の触媒活性を有する、請求項1〜8のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項10】
終結反応器において用いられる触媒は、第VIII族元素を含有する単金属性の触媒であり、該元素の量は、酸化物として表して、1〜60重量%、好ましくは2〜20重量%である、請求項1〜7のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項11】
脱硫ガソリンの一部の再循環は、水素化脱硫反応器と終結反応器との間に位置する点になされる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。
【請求項12】
脱硫ガソリンの一部の再循環は、同一の水素化脱硫反応器内にある2つの触媒床の間になされる、請求項1〜10のいずれか1つに記載の水素化脱硫法。


【図1】
image rotate


【公開番号】特開2007−23285(P2007−23285A)
【公開日】平成19年2月1日(2007.2.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−195032(P2006−195032)
【出願日】平成18年7月18日(2006.7.18)
【出願人】(591007826)アンスティテュ フランセ デュ ペトロール (261)
【氏名又は名称原語表記】INSTITUT FRANCAIS DU PETROL
【Fターム(参考)】