説明

チオ尿素含有水の処理方法および装置

【課題】チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量を低減しつつ、有価物であるチオ尿素をチオ尿素含有水から高純度で回収する。
【解決手段】チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水を濃縮し、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去すると共に、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を回収する。あるいは、蒸発濃縮装置によってチオ尿素含有水を濃縮し、蒸発濃縮装置によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去すると共に、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を回収する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チオ尿素含有水の処理方法および装置に関し、特には、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができるチオ尿素含有水の処理方法および装置に関する。
【0002】
詳細には、本発明は、例えば酸化チタン光触媒製造排水、低水素過電圧陰極製造排水、メッキ排水、化学洗浄排水などのようなチオ尿素含有排水からチオ尿素を回収することができるチオ尿素含有水の処理方法および装置に関する。
【背景技術】
【0003】
例えば非特許文献1(「国際化学物質簡潔評価文書(Concise International Chemical Assessment Document)、世界保健機関 国際化学物質安全性計画(IPCS UNEP//ILO//WHO)、2003年、第49巻、チオ尿素(Thiourea))の第5頁には、チオ尿素について、「水中での加水分解および水・空気中での直接光分解に抵抗性を示し、大気中でヒドロキシラジカルによる光化学的酸化作用を受ける(算出半減期は2.4時間)。本物質の生分解は、長い順化期間を経て始めて、順化したミクロフローラによって行われると考えられる。そのため、生物的または非生物的な除去に適さない条件下では、チオ尿素は長期にわたり地表水と底質に存在する可能性がある」旨、および「主として実験動物で行われた試験に基づくと、チオ尿素暴露に関連するおもな健康への有害影響は甲状腺機能の阻害であるが、肺、肝、造血系、腎への影響に関する記述もある。チオ尿素は肺の透過性変化に伴う肺水腫を引き起こす」旨が記載されている。また、非特許文献1の第6頁には、チオ尿素について、「種々の水生生物に対する毒性に関して入手できる確かな試験結果によれば、チオ尿素は水生環境において中程度から高度の毒性があると分類することができる。」旨が記載されている。
【0004】
また、非特許文献2(「化学物質等安全データシート」、インビトロジェン株式会社、2005年7月19日、化学物質等の名称 チオ尿素、項目3 危険有害性の要約)には、チオ尿素について、「分類の名称 その他の有害性物質」、「危険性 可燃性」、「有害性 皮膚、眼、粘膜などを刺激する。誤飲や暴露すると有害。長期間の暴露によって、健康への重篤な障害を生じる危険性がある」、および、「環境への影響 水生生物に対して毒性が強い。難分解性と判断される化学物質(化審法指定化学物質)、魚介類の体内において濃縮性が低いと判断される化学物質(通産省公示)」が記載されている。
【0005】
更に、特許文献1(特開2005−319423号公報)の段落〔0044〕には、チオ尿素等を含む混合物を形成し、その混合物を焼成し、得られた焼成物粉砕して洗浄し、乾燥することによって酸化チタン光触媒が得られる旨が記載されている。ところで、特許文献1には、酸化チタン光触媒の製造に用いられたチオ尿素を含む酸化チタン光触媒製造排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【0006】
また、特許文献2(特開昭60−29487号公報)の特許請求の範囲には、炭素質微粒子が分散され、且つメッキ金属としてニッケル主体の金属製分を含むメッキ浴を用いて陰極基材表面に電気メッキを施し、表面に生じた離脱容易なメッキ層を除去する低水素過電圧陰極の製法が記載されている。更に、特許文献2には、メッキ後の離脱容易なメッキ層を除去した後、その上にニッケル−硫黄メッキの補強メッキを施す旨が記載されており、更に、ニッケル−硫黄メッキとは、ニッケルメッキ浴にチオ尿素などを添加して電気メッキしたメッキである旨が記載されている。ところで、特許文献2には、低水素過電圧陰極の製造に用いられたチオ尿素を含む低水素過電圧陰極製造排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【0007】
更に、特許文献3(特開2006−104500号公報)には、イオウ系錯化剤を含有し、且つ、酸を含有しない中性乃至弱塩基性の前処理液に被メッキ物を浸漬した後、可溶性第一スズ塩、酸及びイオウ系錯化剤を含有する無電解スズメッキ液を用いて被メッキ物に無電解メッキを行う無電解スズメッキ方法が記載されている。また、特許文献3には、前処理液に含まれるイオウ系錯化剤の例として、チオ尿素類が記載されている。ところで、特許文献3には、無電解スズメッキに用いられたチオ尿素類を含むメッキ排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【0008】
更に、特許文献4(特開2005−290444号公報)には、バンプ電極の形状を大きく変形させることなくバンプ形成用下地層を除去することができる金電解剥離液が記載されている。また、特許文献4には、金電解剥離液にチオ尿素が含有されている旨が記載されている。ところで、特許文献4には、金電解剥離に用いられたチオ尿素を含む化学洗浄排水をどのように処理するかについて、記載されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【特許文献1】特開2005−319423号公報
【特許文献2】特開昭60−29487号公報
【特許文献3】特開2006−104500号公報
【特許文献4】特開2005−290444号公報
【非特許文献】
【0010】
【非特許文献1】「国際化学物質簡潔評価文書(Concise International Chemical Assessment Document)、世界保健機関 国際化学物質安全性計画(IPCS UNEP//ILO//WHO)、2003年、第49巻、チオ尿素(Thiourea)
【非特許文献2】「化学物質等安全データシート」、インビトロジェン株式会社、2005年7月19日、化学物質等の名称 チオ尿素、項目3 危険有害性の要約
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
非特許文献1および2に記載されているようにチオ尿素は水生生物のみならず陸上の動物に対しても毒性があるため、特許文献1〜4に記載されているようなチオ尿素含有水を排水としてそのまま排出することはできない。ところが、チオ尿素は窒素除去(硝化・脱窒)の妨害物質であって好気性生物処理しにくい物質であり、十分な訓養が必要で安定した処理が困難である。従って、従来においては、特許文献1〜4に記載されているようなチオ尿素含有水を処理する場合には、多大なコストをかけて濃縮して焼却し、廃棄処分せざるを得なかった。
【0012】
一方、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素は有価物であるため、多大なコストをかけてチオ尿素を含むチオ尿素含有水を廃棄処分するのではなく、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を回収することが社会的ニーズであると言える。
【0013】
この点に鑑み、本発明者は、鋭意研究を行った結果、チオ尿素含有水に対して脱塩処理あるいは疎水性吸着剤による吸着処理を行うとチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が素通りすること、および、蒸発だけでなく有機物排除率の高い逆浸透膜(詳細には、チオ尿素が透過しない逆浸透膜)によってもチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を濃縮できることを見い出したのである。
【0014】
詳細には、本発明者は、鋭意研究を行った結果、チオ尿素含有水の濃縮処理の前にチオ尿素含有水の脱塩処理を実行すると、脱塩処理の負荷が大きくなってしまい、脱塩処理設備の容量が不足する場合に、脱塩処理によって十分に除去されなかった不純物(塩類)がチオ尿素と共に回収されてしまうおそれがあることを見い出したのである。
【0015】
すなわち、本発明は、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができるチオ尿素含有水の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【0016】
詳細には、本発明は、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量を低減しつつ、有価物であるチオ尿素をチオ尿素含有水から高純度で回収することができるチオ尿素含有水の処理方法および装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0017】
請求項1に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水が濃縮される。更に、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去され、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が回収される。
【0018】
そのため、請求項1に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。また、チオ尿素が回収されることなくチオ尿素含有水が廃棄処分される場合よりも、廃棄物量を削減することができる。詳細には、請求項1に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合よりも、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量を低減することができる。更に、請求項1に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合に、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量が不足するのに伴って、回収されるチオ尿素に不純物が含まれてしまうおそれを低減することができる。すなわち、請求項1に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量を低減しつつ、有価物であるチオ尿素をチオ尿素含有水から高純度で回収することができる。
【0019】
請求項2に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、蒸発濃縮装置によってチオ尿素含有水が濃縮される。更に、蒸発濃縮装置によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去され、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素が回収される。
【0020】
そのため、請求項2に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。また、チオ尿素が回収されることなくチオ尿素含有水が廃棄処分される場合よりも、廃棄物量を削減することができる。詳細には、請求項2に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、蒸発濃縮装置によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合よりも、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量を低減することができる。更に、請求項2に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、蒸発濃縮装置によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合に、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量が不足するのに伴って、回収されるチオ尿素に不純物が含まれてしまうおそれを低減することができる。すなわち、請求項2に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量を低減しつつ、有価物であるチオ尿素をチオ尿素含有水から高純度で回収することができる。
【0021】
請求項3に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、例えば2B3T型、MIXBED型などのイオン交換樹脂、電気脱塩装置、チオ尿素が透過する逆浸透膜、または、それらの組み合わせによる脱塩処理によって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去される。
【0022】
請求項4に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水が濃縮される前に、沈殿、ろ過、疎水性吸着剤、または、それらの組み合わせによって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物が除去される。そのため、請求項4に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水が濃縮される前に沈殿、ろ過または疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物が除去されない場合よりも、回収されるチオ尿素に含まれるチオ尿素以外の不純物の含有率を低減することができる。
【0023】
請求項5に記載のチオ尿素含有水の処理方法では、蒸発濃縮装置によってチオ尿素含有水が濃縮される前に、沈殿、ろ過、疎水性吸着剤、または、それらの組み合わせによって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物が除去される。そのため、請求項5に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、蒸発濃縮装置によってチオ尿素含有水が濃縮される前に沈殿、ろ過または疎水性吸着剤によってチオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物が除去されない場合よりも、回収されるチオ尿素に含まれるチオ尿素以外の不純物の含有率を低減することができる。
【0024】
請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理装置では、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水を濃縮するチオ尿素濃縮部と、チオ尿素濃縮部によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去する脱塩処理部とが設けられている。
【0025】
そのため、請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理装置によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。また、チオ尿素が回収されることなくチオ尿素含有水が廃棄処分される場合よりも、廃棄物量を削減することができる。詳細には、請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理装置によれば、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合よりも、チオ尿素含有水の脱塩処理部の容量を低減することができる。更に、請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理装置によれば、チオ尿素が透過しない逆浸透膜によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合に、チオ尿素含有水の脱塩処理部の容量が不足するのに伴って、回収されるチオ尿素に不純物が含まれてしまうおそれを低減することができる。すなわち、請求項6に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素含有水の脱塩処理部の容量を低減しつつ、有価物であるチオ尿素をチオ尿素含有水から高純度で回収することができる。
【0026】
請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理装置では、チオ尿素含有水を濃縮する蒸発濃縮装置と、蒸発濃縮装置によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去する脱塩処理部とが設けられている。
【0027】
そのため、請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理装置によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。また、チオ尿素が回収されることなくチオ尿素含有水が廃棄処分される場合よりも、廃棄物量を削減することができる。詳細には、請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理装置によれば、蒸発濃縮装置によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合よりも、チオ尿素含有水の脱塩処理部の容量を低減することができる。更に、請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理装置によれば、蒸発濃縮装置によって濃縮される前にチオ尿素含有水が脱塩処理される場合に、チオ尿素含有水の脱塩処理部の容量が不足するのに伴って、回収されるチオ尿素に不純物が含まれてしまうおそれを低減することができる。すなわち、請求項7に記載のチオ尿素含有水の処理方法によれば、チオ尿素含有水の脱塩処理部の容量を低減しつつ、有価物であるチオ尿素をチオ尿素含有水から高純度で回収することができる。
【発明の効果】
【0028】
本発明によれば、チオ尿素含有水から有価物であるチオ尿素を回収することができる。
【0029】
詳細には、本発明によれば、チオ尿素含有水の脱塩処理設備の容量を低減しつつ、有価物であるチオ尿素をチオ尿素含有水から高純度で回収することができる。
【図面の簡単な説明】
【0030】
【図1】第1の実施形態および実施例1のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【図2】第2の実施形態および実施例2のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【図3】比較例のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0031】
図1は第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、図1に示すように、チオ尿素を含むチオ尿素含有水が供給されると、まず最初に、チオ尿素含有水が、蒸発濃縮装置としてのエバポレータ1によって濃縮され、次いで、脱塩装置2としての例えば2B3T型、MIXBED型などのイオン交換樹脂によって脱塩処理される。その結果、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去され、高純度のチオ尿素が回収される。
【0032】
第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、脱塩装置2として、イオン交換樹脂の代わりに、あるいは、イオン交換樹脂に加えて、電気脱塩装置、チオ尿素が透過(素通り)する浸透膜(有機物低排除型逆浸透膜)、それらの組み合わせ等を設けることも可能である。
【0033】
また、第1の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の他の変形例では、チオ尿素含有水がエバポレータ1によって濃縮される前に、沈殿処理、ろ過処理、例えば活性炭などの疎水性吸着剤、または、それらの組み合わせによって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物を除去することも可能である。
【0034】
図2は第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の概略構成図である。第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置では、図2に示すように、チオ尿素を含むチオ尿素含有水が供給されると、まず最初に、チオ尿素が透過しない逆浸透膜(有機物高排除型逆浸透膜)3によってチオ尿素含有水が濃縮され、次いで、脱塩装置2としての例えば2B3T型、MIXBED型などのイオン交換樹脂によって脱塩処理される。その結果、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質が除去され、高純度のチオ尿素が回収される。
【0035】
第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の変形例では、脱塩装置2として、イオン交換樹脂の代わりに、あるいは、イオン交換樹脂に加えて、電気脱塩装置、チオ尿素が透過(素通り)する浸透膜(有機物低排除型逆浸透膜)、それらの組み合わせ等を設けることも可能である。
【0036】
また、第2の実施形態のチオ尿素含有水の処理装置の他の変形例では、チオ尿素が透過しない逆浸透膜(有機物高排除型逆浸透膜)3によってチオ尿素含有水が濃縮される前に、沈殿処理、ろ過処理、例えば活性炭などの疎水性吸着剤、または、それらの組み合わせによって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物を除去することも可能である。
【実施例】
【0037】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこの実施例に限定されるものではない。
【0038】
〔実施例1〕
表1は実施例1に用いたチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)の組成を示している。実施例1に用いたチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)は、特許文献1の段落〔0044〕中の中和処理後のろ液およびその洗浄水を模擬したものであり、反応条件の10倍希釈液である。
【0039】
【表1】

【0040】
表1に示す模擬排水(チオ尿素含有水)1Lをナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレータ1(図1参照)N−1100V−W型(東京理化器械株式会社製)を用いて約5倍程度(約200mL)に濃縮した。
【0041】
表2はロータリーエバポレータ1(図1参照)に供給されたチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)の組成を示している。
【0042】
【表2】

【0043】
その後、ロータリーエバポレータ1(図1参照)によって濃縮されたチオ尿素濃縮液を、2本のアクリルカラムにカチオン交換樹脂(DOW社製 DOWEX650C)1Lと、アニオン交換樹脂(DOW社製 DOWEX550A)1Lとをそれぞれ充填した脱塩装置2(図1参照)に対して5L/hで直列に通水し、透過水約200mLを得た。
【0044】
表3は脱塩装置2(図1参照)に供給されたチオ尿素濃縮液の組成および脱塩装置2(図1参照)におけるカチオン負荷を示している。
【0045】
【表3】

【0046】
表4は脱塩装置2(図1参照)の透過水(チオ尿素濃縮液)の組成を示している。
【0047】
【表4】

【0048】
実施例1では、脱塩装置2(図1参照)におけるカチオン負荷が低い値になり、脱塩装置2(図1参照)のカチオン交換樹脂塔が破過しなかった。また、最終的に回収されたチオ尿素濃縮液に含まれる不純物としてのアンモニアの値が低い値(0.04mg/L)になった。
【0049】
〔実施例2〕
実施例2では、実施例1と同様に表1に示すチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)を用いた。
【0050】
表1に示す模擬排水(チオ尿素含有水)1Lを、直径38mm平膜型有機物高排除型逆浸透膜(チオ尿素が透過しない逆浸透膜)3(図2参照)(日東電工製TC−10)を用いて、回収率80%で約5倍程度(約200mL)に濃縮した。
【0051】
表5は有機物高排除型逆浸透膜(チオ尿素が透過しない逆浸透膜)3(図2参照)に供給されたチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)の組成を示している。
【0052】
【表5】

【0053】
その後、有機物高排除型逆浸透膜(チオ尿素が透過しない逆浸透膜)3(図2参照)によって濃縮されたチオ尿素濃縮液を、2本のアクリルカラムにカチオン交換樹脂(DOW社製 DOWEX650C)1Lと、アニオン交換樹脂(DOW社製 DOWEX550A)1Lとをそれぞれ充填した脱塩装置2(図2参照)に対して5L/hで直列に通水し、透過水約200mLを得た。
【0054】
表6は脱塩装置2(図2参照)に供給されたチオ尿素濃縮液の組成および脱塩装置2(図2参照)におけるカチオン負荷を示している。
【0055】
【表6】

【0056】
表7は脱塩装置2(図2参照)の透過水(チオ尿素濃縮液)の組成を示している。
【0057】
【表7】

【0058】
実施例2では、脱塩装置2(図2参照)におけるカチオン負荷が低い値になり、脱塩装置2(図2参照)のカチオン交換樹脂塔が破過しなかった。また、最終的に回収されたチオ尿素濃縮液に含まれる不純物としてのアンモニアの値が低い値(0.5mg/L)になった。
【0059】
〔比較例〕
比較例では、実施例1と同様に表1に示すチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)を用いた。
【0060】
表1に示す模擬排水(チオ尿素含有水)1Lを、2本のアクリルカラムにカチオン交換樹脂(DOW社製 DOWEX650C)1Lと、アニオン交換樹脂(DOW社製 DOWEX550A)1Lとをそれぞれ充填した脱塩装置2(図3参照)に対して5L/hで直列に通水し、透過水約1Lを得た。
【0061】
表8は脱塩装置2(図3参照)に供給されたチオ尿素含有水(酸化チタン光触媒製造排水)の組成および脱塩装置2(図3参照)におけるカチオン負荷を示している。
【0062】
【表8】

【0063】
その後、脱塩装置2(図3参照)の透過水(チオ尿素含有水)約1Lをナスフラスコに入れ、ロータリーエバポレータ1(図3参照)N−1100V−W型(東京理化器械株式会社製)を用いて約5倍程度(約200mL)に濃縮した。
【0064】
表9はロータリーエバポレータ1(図3参照)に供給された脱塩装置2(図3参照)の透過水(チオ尿素含有水)の組成を示している。
【0065】
【表9】

【0066】
表10はロータリーエバポレータ1(図3参照)によって濃縮されたチオ尿素濃縮液の組成を示している。
【0067】
【表10】

【0068】
比較例では、脱塩装置2(図3参照)におけるカチオン負荷が高い値になったため、脱塩装置2(図3参照)のカチオン交換樹脂塔が破過してしまい、最終的に回収されたチオ尿素濃縮液に不純物としてのアンモニアが35mg/L残留してしまった。
【0069】
つまり、実施例1,2によれば、比較例に対し、脱塩装置2(図1、図2および図3参照)の容量(詳細には、カチオン交換樹脂塔(樹脂容量))を小さくすることができ、チオ尿素濃縮液に含まれる不純物を低減できることがわかった。
【符号の説明】
【0070】
1 エバポレータ
2 脱塩装置
3 有機物高排除型逆浸透膜(チオ尿素が透過しない逆浸透膜)

【特許請求の範囲】
【請求項1】
チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水を濃縮し、
チオ尿素が透過しない逆浸透膜によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去すると共に、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を回収することを特徴とするチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項2】
蒸発濃縮装置によってチオ尿素含有水を濃縮し、
蒸発濃縮装置によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去すると共に、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素を回収することを特徴とするチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項3】
イオン交換樹脂、電気脱塩装置、チオ尿素が透過する逆浸透膜、または、それらの組み合わせによって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去することを特徴とする請求項1又は2に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項4】
チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水が濃縮される前に、沈殿、ろ過、疎水性吸着剤、または、それらの組み合わせによって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物を除去することを特徴とする請求項1又は3に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項5】
蒸発濃縮装置によってチオ尿素含有水が濃縮される前に、沈殿、ろ過、疎水性吸着剤、または、それらの組み合わせによって、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外の不純物を除去することを特徴とする請求項2又は3に記載のチオ尿素含有水の処理方法。
【請求項6】
チオ尿素が透過しない逆浸透膜によってチオ尿素含有水を濃縮するチオ尿素濃縮部と、
前記チオ尿素濃縮部によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去する脱塩処理部とを具備することを特徴とするチオ尿素含有水の処理装置。
【請求項7】
チオ尿素含有水を濃縮する蒸発濃縮装置と、
前記蒸発濃縮装置によって濃縮された後のチオ尿素含有水を脱塩処理することにより、チオ尿素含有水に含まれるチオ尿素以外のイオン性物質を除去する脱塩処理部とを具備することを特徴とするチオ尿素含有水の処理装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2011−173032(P2011−173032A)
【公開日】平成23年9月8日(2011.9.8)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−36866(P2010−36866)
【出願日】平成22年2月23日(2010.2.23)
【出願人】(000001063)栗田工業株式会社 (1,536)
【Fターム(参考)】