説明

チザニジンの頬及び舌下デリバリーのための医薬組成物及び投与形態並びにチザニジンを舌下又は頬に投与する方法

筋肉痙攣抑制剤チザニジンを舌下及び頬投与することは、それの肝臓におけるファーストパス代謝を回避することによってその生体利用効率を高め、そして患者内での生体利用効率変動を低下させる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願の相互参照
本願は、米国仮出願60/425,326号(2002年11月12日に提出された)の優先権を主張し、その全体は本明細書中、参照によって組み込まれている。
【0002】
本発明は、抗痙攣剤に関連し、そして詳細には、チザニジンの改善された投与及び薬物投与形態に関連する。
【背景技術】
【0003】
発明の背景
5−クロロ−N−(4,5−ジヒドロ−1H−イミダゾール−2−イル)−2,1,3−ベンゾチアゾール−4−アミン(非系統的化学名はチザニジンであり、その化学式は
【化1】

である)
は、中枢作用性のα2−アドレナリンレセプターアゴニストである。それは、様々な病因論:一般に痙縮(参考文献2〜5);多発性硬化症により生じた筋痙攣(参考文献6〜8);脊髄損傷(参考文献9、10);及び脳損傷(参考文献11、12)により生ずる筋痙攣の抑制が示されている。チザニジンは慢性の頭痛の治療についても、好ましい結果を伴い、定評がある。
【0004】
塩酸チザニジンは、Zenaflex(登録商標)のブランド名で、即時放出経口錠剤製剤で市販されており入手可能である。Zenaflex(登録商標)は、活性成分が胃又は小腸の粘膜裏層を通じて血流に入る典型的な経口投与形態である。この投与経路を本明細書中で腸溶性デリバリーとよんでいる。代わりに、口を介して摂取される医薬組成物及び投与形態は活性成分が放出されている間、そこに維持されていて良い。活性成分に依存して、それは口の粘膜裏層を通じて吸収されて良い。
【0005】
チザニジンの生体利用効率は患者ごとに非常に異なり、個人ベースによる投与量の滴定が必要になる。チザニジンより肝臓毒を生うるが、それはチザニジンの投与量及び血しょうレベルは慎重に調節されるべきであるという、他の理由である(参考文献1、18)。Zanaflex(登録商標)において投与されるチザニジンは、本質的に、小腸粘膜により完全に吸収されるが、チザニジンの生体利用効率は、肝臓の代謝物にするファーストパス代謝が原因で、40%に過ぎず、一見してその全てが薬理学的に不活性であるように見られる。胃での吸収を伴わない代替的な投与経路は、肝臓におけるバイパスファーストパス吸収であろう。かかる代替的な経路は沢山あり、それは即ち、眼科調製物における投与、静脈内、筋内又は皮下注射、吸入、経皮及び局所投与、並びに頬及び舌下投与がある。舌下投与は、患者が医薬組成物又は投与形態を、この薬物が口内に分散し、口の粘膜裏層を通じて、そしてそこから血流に入る間、舌下で維持する患者と関係する。頬投与において、医薬組成物又は投与形態を頬と、舌の代わりに歯ぐきの間で維持する。他の、胃デリバリーに代わる投与と同様に、頬及び舌下投与は、チザニジンの生体利用効率を、ファーストパス代謝を避けることによっておそらく高めるだろう。しかしながら、この経路によって首尾良く与えられる薬物は殆どない。Remington’s Pharmaceutical Science vol.670(Mack Publishing:Easton, Pa.1980)を参照のこと。薬物は口の粘膜によって迅速に吸収されるかあるいは唾液がそれを口腔から迅速に流し去るようでなければならない。さらに、チザニジンは水及びメタノール中での溶解性がほんの僅かであり、pHを高めることでより溶解性が下がる(参考文献1)。唾液は、おそよ中性のpHであるかあるいは僅かに塩基性である。そのpHは、飲み込まれたチザニジン錠剤が溶けることが知られている胃腸流体よりもかなり高い。口のpH範囲でのチザニジン溶解度が低いことが原因の生体利用効率の低下により、薬物を口を通じて吸収することによって本来実現されるだろう全ての生体利用効率の増加が低下するかあるいは圧倒されうる。
【0006】
先の観点から、薬物の生体利用効率を高めるためにチザニジンを投与する方法を改善することが重宝されるだろうし、そして投与量の変動を減らすことは非常に望ましい。
【0007】
【表1】

【表2】

【発明の開示】
【0008】
発明の概要
本発明の先の目的は達成されており、そして筋痙攣抑制剤チザニジンを投与するための従来技術に関連する欠点は、チザニジンを頬又は舌下に有効に投与することによって、本発明により解消されている。
【0009】
本発明の1つの観点によれば、チザニジンの生体利用効率は、典型的な腸溶投与形態と比較して、同程度のチザニジンの投与において、頬又は舌下投与をすることによって高まっている。生体利用効率の増加は、無限大のチザニジン血流濃度に対して外挿した曲線下の面積によって測定した場合、10%以上高まっていて良い。
【0010】
チザニジンの生体利用効率は、常用の腸溶投与形態によって投与された場合、患者ごとに非常に変動する。本発明の他の観点によれば、チザニジンの舌下又は頬投与をすることにより、チザニジンの患者内生体利用効率変動が減る。本発明に従い、チザニジンを患者の集団に対して舌下又は頬に投与すれば、患者集団のチザニジン血流濃度の相対標準偏差を10%以上下げることができる。
【0011】
チザニジンの舌下及び頬投与に適合させられた投与形態も本発明によって提供されている。チザニジンは、pHの違いにより、胃流体よりも唾液における溶解度が低い。投与形態の1つの実施態様は、チザニジンの血流中への放出を加速させるために、頬又は舌下の局所的環境のpHを酸性化する酸味料を含む。本発明の更なる投与形態の実施態様は、チザニジンの持続放出(timed-release)を可能にし、それはチザニジンが口の内で蓄積するのを避けるために十分遅いが、チザニジンが放出される間投与形態を口の内で維持する患者に許容されるためには十分迅速である。これらの投与形態はとりわけて、口の中で凝固しそして舌下の、又は頬と歯ぐきの間の空間に形を従え、巨大な表面積及び快適な感覚を供する液体である。
【発明を実施するための最良の形態】
【0012】
発明の詳細な説明
我々は、チザニジン(又は「薬物」)を頬及び舌下投与することは、薬物の生体利用効率を向上させ且つ患者間での吸収の変動を非常に小さくすることを発見した。
【0013】
従って、本発明の1つの観点は、チザニジンを頬もしくは舌下投与することによって筋痙攣を治療する方法である。チザニジンは、長期間に渡り口の中で維持され且つ口腔(ここで口の粘膜裏層を通じて薬物が吸収される)への薬物の分散又は浸透を可能にする全ての医薬組成物もしくは投与形態において投与されて良い。かかる投与形態としては、錠剤、ロゼンジ、トローチ、芳香錠、ピル、粘性の液体、ペースト、スプレー、ドロップ、ゲル、パッチなどが挙げられる。
【0014】
薬物を頬及び舌下に投与することに対し独特の課題があり、それは製剤科学者が取り扱うことができ、そして公知の技術を使用することで解消できる。製剤科学者がこれらの課題を解消可能にするために、本発明は、以下に記載のように、チザニジンの頬及び舌下投与のために特に適合させた医薬組成物及び投与形態を提供する。
【0015】
舌下及び頬薬物投与の1つの課題には、薬物の放出速度を調節することが含まれる。もし、薬物が口を通じて吸収できるよりも迅速に放出されれば、その濃度は唾液中で上昇するだろうし、そしてそれが飲み込まれ、あたかもそれが常用の経口投与形態において与えられたようにして腸で吸収されるだろう。従って、放出の速度を調節することは、薬物の生体利用効率及び患者間での吸収の変動に影響すると評価されるだろう。
【0016】
好適に、本発明の治療方法において、チザニジンは、薬物の投与後に20分以内で80%以上放出されるが、その理由は患者の大部分は錠剤又はロゼンジをより長い時間に渡り舌下で維持することを好まないからだ。一層好ましくは、組成物又は投与形態は5分以内で80%以上のチザニジンを放出する。
【0017】
本発明の他の観点は、チザニジンの生体利用効率を、頬又は舌下投与によって高める方法である。生体利用効率とは、薬物が治療効果を発揮する薬理学的部位に到達する投与された薬物の割合であり、それは一般に多くの薬物について血流とされ、そして本明細書中ではチザニジンの発見とされている。薬物の生体利用効率は、経過時間で積分した血しょう中の薬物の(又はある場合は活性代謝物の)濃度として容易に表される。この量は通常、「曲線下の面積」又は「AUC」と呼ばれる。様々な製剤において、そして様々な経路によって投与された薬物の生体利用効率は、様々な時間において両方の製剤を摂取した患者からのAUCを比較することによって比較されて良い。様々な製剤の、ヒトによる比較研究のための良好な実験によれば、試験対象集団は、同数の2つの集団に分けられている。コントロール条件下で、1つの集団は薬物を1つの製剤で投与され、一方で他の集団は他の製剤を投与されている。彼らの薬物血しょう濃度は長期に渡りモニタリングされてそのデータは回収されて分析されている。次いで、「ウォシュアウト期間」では、その間に対象者の体から薬物が取り除かれ、それにより研究の第2段階が、薬物血しょう濃度ゼロで始まるだろう。第2段階では、薬物の第一の製剤を受けた集団は第二の製剤中の薬物が投与され、第二の製剤を受けた集団は第一の製剤を投与され、そしてモニタリングされ、データが回収され、そして分析が繰り返される。両方の製剤を同じ集団に対して投与することは、年齢、性別及び個々の生理学的因子による、生体利用効率の比較におけるエラーを最小化するためである。
【0018】
実際問題として、試験対象者の血しょう濃度は、試験対象者に対して不快感を最小限にするために、限られた時間量及び限られた頻度において測定されている。限定時間で薬物の血しょう濃度を積分することで個体のAUCを算出できる。個体において薬物血しょう濃度は、モニタリング期間の最後で必ずしもゼロに落ちてはいないだろう。従って、AUCは、個体についての、薬物の相対生体利用効率を低く見積もるだろう。臨床研究の結果を分析するために適合せしめられたデータ分析ソフトウェアは市販され入手可能である。かかるソフトウェアは、モニタリング期間の間の曲線の形状に基づき、モニタリング時間を越えて、血しょう濃度曲線を外挿できる。曲線の外挿部分下の面積は、積分によって決定されて良く、そしてモニタリング期間内に測定されたこの面積に対して面積を加えることによって無限大又は「AUCinf」へと外挿された曲線下の面積に到達する。AUCinfは、薬物が実質上完全に除去される前にモニタリングが中断された場合に、AUCよりも一層正確な相対生体利用効率の測定を供する。
【0019】
本発明によるチザニジンの舌下又は頬投与では、好適に、生体利用効率が、使用した特定の組成物もしくは投与形態のAUCinfと、等しい用量のチザニジンを含有する常用の経口投与形態を飲み込む1もしくは複数の患者のAUCinfを比較することよって測定した場合、10%以上増加する。代わりに、生体利用効率の増加は、様々な強度の投与形態に対して、その違いを考慮して、決定されて良い。一層好適に、本発明の舌下又は頬投与は、薬物の生体利用効率を20%以上高める。
【0020】
同等の投与量とは、おおよそ同数ミリモルのチザニジンを、遊離塩基形態でのチザニジンの使用、様々な塩陰イオン又は様々な状態の溶媒和物の使用を補うために製剤に対して様々な重量で活性成分が加えられているかどうかにかかわらず、含むものである。生体利用効率の増加は、即時放出経口投与された投与形態及び特に上記参考文献1に記載のZanaflex(登録商標)に対して参考とされており、何故ならZanaflex(登録商標)は本質的に完全に吸収されることが知られているからである。従って、Zanaflex(登録商標)は、最も高い基準であり、我々は、それを参照にして、本発明に対する従来技術に関する知見と矛盾のなく、生体利用効率における向上に気付く。チザニジンに加えて、市販されて入手可能なZanaflex(登録商標)はコロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、微結晶性セルロース及び無水セルロースを含む。
【0021】
本発明の方法において、チザニジンは好適に、遊離塩基の重量に基づいて、それが遊離塩基として投与されるかあるいは塩形態において投与されるにかかわらず、約2mg〜約8mg、一層好適には約2mg〜約4mgのチザニジンを含む個々の投与量において投与されている。個々の投与量は、好適に1日の間6〜8時間間隔で投与され、最大で一日の蓄積量は、約4mg〜約36mg、一層好適には約8mg〜約24mgである。
【0022】
更なる他の観点において、本発明は、チザニジンを頬又は舌下投与することによって、ある患者集団における個体間でのチザニジンの血しょうレベルの変動を減らす方法を供する。患者集団には、筋痙攣を患い、そして彼らはある共通の関係を有するのである集団として同定可能である人々の全ての集団が含まれる。筋痙攣が共通の病因を有するという関係を持つ患者の集団に加えて、集団としては、同じヘルスケア機関で同じ医者又はヘルスケア供給者に筋痙攣のためのケアを受けているかあるいは治療を受けている患者の集団を意味する。
【0023】
一般に、集団における変動を統計学的に分析するための多くの方法がある。最も簡単な状況(circumstance)は、集団上での1つのパラメータの変動の解析である。パラメータの変動は、集団のパラメータの標準偏差(s.d.)又は分散(s.d.2)を計算することによって定量されて良い。相対標準偏差(r.s.d.)は、集団に関するパラメータの平均値で割った、パラメータの標準偏差である。このr.s.d.により、集団間でのパラメータの変動の程度の有意な比較が可能になる。本発明によれば、チザニジンを頬又は舌下に投与することによって達成した吸収の一貫性の向上は、チザニジンを頬又は舌下に投与されてきた集団に関するAUCinfの相対標準偏差が、飲み込むという常用の経口投与形態でチザニジンを投与されてきた集団より低いことで反映されている。好適に、チザニジンを頬又は舌下に投与された集団のr.s.d.は約10%未満、一層好適には約20%未満であり、そして最も好適には約30%未満である。比較される2つの集団は、好適に、チザニジンをこれらの経路を介して様々な時間に、投与を分断するウォシュアウト期間を伴い、受ける同じ個体を含んで成る。
【0024】
我々の研究(例において報じられている)を修了した10人の対象者のうち1人以外は、チザニジンの生体利用効率が舌下投与によって高まったことを示した。もし、経口投与されたチザニジンに対して十分な反応をせず、そして舌下又は頬治療に変えた対象者の10%以上が反応の向上を示せば、それは即ち、かかる患者を含んで成る集団の変動及び典型的な経口治療に良く反応する患者(代えていない)が減ったことの現れである。従って、本発明によれば、経口から舌下もしくは頬投与形態に変えた患者の10%超が筋痙攣抑制の向上を示した医療記録もしくは観察も、医者もしくはヘルスケア機関の患者間での反応の変動が減少したことを示す。
【0025】
本発明の方法は、舌下投与又は頬投与に適しているチザニジンを含有する全ての医薬組成物又は投与形態を使用することで行われて良い。個々の投与形態としては、錠剤、カプセルなどが挙げられ、好適に約2mg〜約8mg、一層好適には約2mg〜約4mg、のチザニジンを遊離塩基の重量に基づいて含む。
【0026】
適切な組成物及び投与形態は、無毒性の医薬的に許容できる賦形剤により調製されて良い。これらの賦形剤は頬及び舌下投与形態の当業者に周知である。成分及び例となる製剤は、Remington’s Pharmaceutical Science. 第16版(Mack Publishing 1980)に記載されている。特許刊行物も多くの頬及び舌下製剤を開示しており、それは、米国特許第4,020,558号;4,229,447号:3,972,995号;3,870,790号;3,444,858号;2,698,822号;3,632,743号であり、それらは本明細書中その全体を参照によって組み込まれている。
【0027】
頬及び舌下投与形態へと通常処方される賦形剤としては、マルトデキストリン、コロイド状に酸化ケイ素、デンプン、デンプンシロップ、糖及びαラクトースである。活性成分及び賦形剤を、頬及び舌下投与のための医薬組成物及び投与形態へと処方するための常用の方法は、製剤専門家に周知である。
【0028】
好適な医薬組成物及び投与形態は約80%以上のチザニジンを投与の20分以内に、一層好適には投与の約5分以内に放出する。
【0029】
本発明の更なる観点は、チザニジンの頬及び舌下投与のために特に適合せしめられた組成物及び投与形態を提供する。チザニジンは口の中性環境でよりも胃の酸性環境でより良く吸収される。唾液を酸性化する、好適には2〜7のpHにすることで、チザニジンの吸収が向上する。
【0030】
従って、本発明の好適な実施態様の組成物及び投与形態は、舌下空洞又は頬面窩洞の局所環境を、所望の薬物放出期間の間に酸性化することができる。かかる投与形態は有効な酸性化量の酸味料を含む。酸味料とは、投与形態又は組成物の周辺の局所環境をそれが患者の口に置かれた後に酸性化する賦形剤である。舌下又は頬面窩洞の全領域における唾液が有効に酸性化される必要はなく、チザニジンが放出される投与形態の表層とそれに隣接する口腔粘膜間での直接流体連絡を供する唾液のみが酸性化されていれば良い。酸味料は一般に、経口薬物投与において使用するための安全な(GRAS)賦形剤として認証又は認識されている。全ての認証された又は安全な有機酸が適しており、例えば、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、マレイン酸、ソルビン酸及び酒石酸である。好適な酸味料はクエン酸である。
【0031】
全ての特定の組成物又は投与形態で有効である酸味料の量は、多くの因子に依存しているだろうし、その因子とは例えば目的とする薬物の放出速度、選定の酸味料、口の中に放出され且つ患者の唾液分泌が深くとも放出する速度である。一つの方法は、投与形態又は医薬組成物を覆う患者の唾液を採取し、そしてそれが2〜7のpH範囲にあるかあるいは更に好適に2〜5のpH範囲にあるかを確かめることである。かかる通常の実験は不適当であるとは考えられない。
【0032】
チザニジンの医薬組成物の1つの好適な実施態様は、舌下又は頬と歯ぐきの間に配置された場合に凝固する液体である。凝固した液体は、時間を掛けて緩やかにチザニジンを放出する粘膜接着性固体又は半固体である。この実施態様は、ゲル化した組成物が口の表層に対して順応し、それがより一層心快適な感じを与える利点を有する。液体組成物は、タンパク質、多糖類、セルロースポリマー及びポリアクリル酸エステルからなる群から選択された親水性ポリマーを含んで成る。タンパク質としては、ゼラチン、加水分解されたゼラチン、アルブミン及びコラーゲンが挙げられる。多糖類としては、ペクチン、カラーギナン及びアルギン酸及びそれらの塩、グアールガム、及びトラガカントガムが挙げられる。セルロースポリマーとしては、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。好適な親水性ポリマーとしては、25000〜2500000Daの範囲の分子量を有するヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースが挙げられる。かかる親水性ポリマーは、商用名Klucel(登録商標)の下でHercules Corporationから、そしてMethocel(登録商標)の下でDow Chemical Companyから入手できる。この医薬組成物の、代わりの実施態様は、逆熱ゲル化(reverse thermal gellation)を有するポリマーの溶液を含んで成る。かかるポリマーの例としては、メチルセルロース、米国特許第6,004,573;6,117,949及び6,201,072号に記載のトリブロック(ラクチド-コ-グリコライド)ポリエチレングリコールコポリマー、及び米国特許第5,702,717号に記載のポリ(エーテル-エステル)ブロックコポリマーに基づく熱感受性生分解性ポリマーが挙げられる。
【0033】
液体が凝固する場合、ポリマー鎖は、組成物中にも存在するタンニン酸による水素結合により架橋するかあるいは代替的に、同等に、有効に、ポリプロトン性架橋剤によって架橋される。好適な架橋剤は、USPタンニン酸である。ポリマー及びタンニン酸を含有する薬物の口内投与のための液状医薬組成物は、我々が発明者である国際刊行物WO99/04764に記載されているが、この刊行物はかかる成分の、チザニジンを舌下又は頬デリバリーするために適合せしめられた医薬組成物中での使用を開示又は示唆していない。
【0034】
口の内で凝固する好適な液体製剤は、約0.1重量%〜約0.5重量%のチザニジン、約0.1重量%〜約5重量%の親水性ポリマー及び約0.1重量%〜約0.5重量%のタンニン酸からなりそして組成物の残りは、溶媒(好適には水、エタノール及びそれらの混合物)及び他の賦形剤の例えば、着色剤、香料、等張変更剤、粘性変更剤、防腐剤などからなる。好適な量以内でタンニン酸を含有する凝固性液体組成物は個別の酸味料を必要としないことに留意されたく、その理由は、タンニン酸が水素結合性架橋剤及び酸味料として働くからである。
【0035】
本発明の特に好適な投与形態は、多重圧縮段階によって、環状体によって囲まれたチザニジンを含有する内部錠剤コアへと成型された錠剤である。このような錠剤形状の利点とは、錠剤の、チザニジンを含有している部分が、取り扱いによる分解、使用に際しては咀嚼による分解から守られていることである。
【0036】
図1を参考にすれば、保護された投与形態は、圧縮された粉末又は顆粒状物質からなる環状体に収納されたチザニジンを含有するコア錠剤を含んで成る。このコア錠剤は第一及び第二の向かい合う表層及び周囲表層を有する。「収納」とは、環状体がコア錠剤を取り囲み、そして環状体がコア錠剤と周囲表層で接触しているが、コア錠剤の向かいにある表層が実質上あらわになっていることを意味する。チザニジンを含有するコア錠剤1は、環状体2よりも後退している。コア錠剤1は向かい合う第1及び第2表層(3及び4)を有しそして向かい合う表層の間で広がる外側の周囲表層5を有する。コア錠剤1は好適に、製造の容易さのために円筒又は円盤の形状であるが、そうである必要はない。向かい合う表層3又は4のいずれかに渡る最大の距離は、約2mm〜約12mm、一層好適には約4mm〜約7mm、最も好適には約5mmである。向かい合う表層3及び4は平坦、凸又は凹であって良いが、好適には平坦である。
【0037】
外輪郭において、環状体2は好適に円筒状の形状であるが、それは任意の断面、例えば、卵形(oval)、楕円(elliptical)又は長楕円(oblong)の形状を有して良い。外経は好適に、約5mm〜約15mm、一層好適には約7mm〜約12mm、最も好適には約9mmである。内径は外形より最大で約2mm少ない任意サイズであって良い。好適に、内径は3mm以上である。
【0038】
賦形剤の圧縮された環状体中に収納された薬物含有コア錠剤を伴う固体投与形態は、米国特許整理番号10/419536(2003年4月21日に提出した)及びPCT出願番号PCT/US02/36081(2003年12月12日に提出して2003年7月17日に国際特許刊行物WO03/057136として刊行された)(それらの全体は本明細書中参照によって組み込まれている)に記載の新規道具一式を使用することで、又は他の当業者に公知の多重圧縮技術によって生産されて良い。
【0039】
コア錠剤は、任意の所望の放出プロファイルの例えば、即時放出、遅延放出、破裂又はパルス放出、持続又は0次放出のために処方されて良いが、最も好適には即時放出である。即時放出のために、コアは好適に、放出を加速させるために、クロスポビドンなどの錠剤分解促進物質を含む。即時放出コア錠剤のための他の好適な賦形剤は、αラクトース一水和物、微結晶性セルロース、ナトリウムサッカリン、及びステアリン酸マグネシウムである。コア錠剤のための好適な組成物は、約1〜10部の塩酸チザニジン、50〜70部のαラクトース、10〜20部の微結晶性セルロース、約0.1〜1部のナトリウムサッカリン及び15〜25部のクロスポビドンを、存在しうる他の賦形剤の他に含む。コア錠剤は酸味料をも含んで良い。
【0040】
環状体は、風味作成など、任意の所望の目的を伴い処方されて良い。それは酸味料をも含んで良い。環状体は任意に医薬的に許容できる賦形剤から形成されていて良い。特に、それは希釈剤、結合剤、錠剤分解促進物質、流動促進剤、潤滑剤、香料、着色剤などが挙げられ、環状体中に含まれて良い。常用の賦形剤との混合及び顆粒化は、錠剤作成の当業者に周知である。
【0041】
前記環状体を成型するために好適な賦形剤としては、ヒドロキシプロピルセルロース(例えば、Klucel(登録商標))、ヒドロキシプロピルメチルセルロース(例えば、Methocel(登録商標))、微結晶性セルロース(例えば、Avicel(登録商標))、デンプン、ラクトース、糖、圧縮可能糖(compressible sugar)、クロスポビドン(例えば、Kollidon(登録商標)、ポリビニルピロリドン(例えば、Plasdone(登録商標))及びリン酸カルシウムが挙げられる。環状体を成型するために一層好適な賦形剤は、α−ラクトース一水和物、微結晶性セルロース及び圧縮可能糖である。特に好適な環賦形剤は、約75%のα−ラクトース一水和物と25%の微結晶性セルロースの平均粒度分布d(15)<32μm及びd(90)<250μmのスプレー乾燥混合物である。かかる混合物はMeggle AG, Wasserburg, Germanyから商用名Microcellac(登録商標)の下で入手可能である。圧縮可能糖は、商用名Nu-Tab(登録商標)の下でCHR. Hansen, Horsholm, Denmarkから入手可能である。
【0042】
環状体の好適な組成物は約45〜50部の圧縮可能糖、約30〜40部のα−ラクトース一水和物、1〜10部の微結晶性セルロース、及び1〜10部のクロスポビドンである。
【0043】
本発明は特定の好適な実施態様を参照に記載されており、本発明はここで更に、本発明を説明するためであり限定することはない以下の例によって更に説明されるだろう。
【実施例】
【0044】
実施例1
舌下錠剤の調製
この研究で使用した舌下錠を、2mgのチザニジンを含有する第一分解促進製剤の内部コア内及び保護賦形剤の外部環状体へと成型している。
【0045】
内部コアを、4.5部の塩酸チザニジン及び20部のクロスポビドンを2分に渡り混合することによって調製した。1.5部のナトリウムサッカリン、73.6部のMicrocellac100(登録商標)、及び0.4部のメタノールを加え、そしてこの混合を3分以上に渡り続けた。1部のステアリン酸マグネシウムを加え、そしてこの混合を30秒に渡り続けた。この混合物を、5mmフラットべべルパンチを伴うManesty f3錠剤成型装置により圧縮した。成型された錠剤は5mmの直径であり、重さがそれぞれ45mgであり、厚さ約2mmであり、そして1〜3.5Kpの硬度を有した。
【0046】
外部環状体を48.5部のNu-Tab(登録商標)、45部のMicrocellac(登録商標)、0.5部のナトリウムサッカリン及び5部のクロスポビドンを5分に渡り混合し、1部のステアリン酸マグネシウムを加え、更に30秒に渡り混合し、そして、Manesty f3錠剤成型装置(2003年4月21日に提出された米国特許整理番号10/419536及び国際特許刊行物WO03/057136に記載の道具一式を伴う)により圧縮することによって調製した。錠剤全体の重量は290mgであった。外経は9mmであった。錠剤の高さは約4.5mmでありそして硬度は5〜9Kpであった。
【0047】
薬物動態トライアル
ボランティアの対象者12人に、チザニジンの市販の経口調製物(Zanaflex(登録商標))4mg及び本明細書中で開示した2mgの舌下錠剤をクロスオーバー研究において投与した。2つの集団をランダム化し、そして投与の間に1週間のウォシュアウト期間があった。ボランティアは、薬物が与えられる場合には空腹状態であった。舌下錠剤を舌下に5分に渡り置かれ、そして錠剤の残留物は、もしあれば、飲み込まれた。経口製剤をコップ一杯の水と共に投与した。投与後、血液試料を0、0.5、1.0、1.5、2.0、2.5、3.0、4.0、5.0、6.0及び7.0時間で採取した。血しょうを全血から分離し、チザニジン濃度を有効なHPLCアッセイにより測定した。試料を検体から見えないようにした。ボランティアの12人全てが舌下治療群に加わった一方で、1人のボランティアは経口デリバリー治療群には参加しなかった。
【0048】
結果
表1には、チザニジンを2mg、舌下製剤において投与された12人の試験対象者に関する血しょう中のチザニジンを分析した結果を集めている。
【0049】
【表3】

【0050】
表2には、チザニジンを4mg、標準的な市販の経口製剤において投与された同じ12人の試験対象者のうち11人に関するデータを集めている。
【0051】
【表4】

【0052】
表3には両方の群に関する計算した薬物動態パラメータを集めている。
【0053】
【表5】

【0054】
吸収された平均合計量(無限大に外挿した時間曲線に対する血しょう濃度下の面積、(AUCinf))は4mgの経口錠剤について6560であり、一方で2mgの舌下錠剤については3960であった。用量を正規化することにより経口デリバリーについて1640/mg及び舌下デリバリーについて1980/mg(生体利用効率の20%上昇を反映する)が得られた。2mgの舌下デリバリーに関する平均Cmaxは1462(731/mg)であり、一方で4mgの経口投与については2519(630/mg)であるかあるいは約16%より高かった。経口製剤に関するAUCの標準偏差は、4353(相対標準偏差66%)であり、一方で2mgの舌下製剤に関する標準偏差のデータは1871(相対標準偏差47%)であり、変動が28.8%減少したことを反映している。従って、我々はこの研究によって、舌下及び口内デリバリーは、薬物が腸で吸収される典型的な経口デリバリーと比較して、変動が低くなり且つ生体利用効率が向上したことを発見した。
【0055】
本発明は、所定の特異的実施態様により記載されているが、当業者は、様々な変更が、特許請求の範囲に記載したような本発明の精神と範囲から逸脱することなく行われて良いことを理解するだろう。
【図面の簡単な説明】
【0056】
【図1】本発明の好適な投与形態の実施態様による、環状体によって囲まれたコアを有するマルチコンプレッション錠剤の透視図である。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
筋痙攣を治療するための方法であって、抗痙攣有効量のチザニジンを、頬投与及び舌下投与からなる群から選択された投与経路によって投与することを含んで成る方法。
【請求項2】
前記チザニジンを、当該チザニジンの80%以上を20分以内で放出する医薬組成物又は投与形態において投与している請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記医薬組成物又は投与形態が5分以内で前記チザニジンの80%以上を放出する、請求項2に記載の方法。
【請求項4】
チザニジンの生体利用効率を増加させるための方法であって、抗痙攣有効量のチザニジンを、頬投与及び舌下投与からなる群から選択された投与経路によって投与することによる方法。
【請求項5】
前記生体利用効率の増加とは、チザニジンを舌下もしくは頬投与されている第一患者集団の経時チザニジン血しょう濃度の、無限大に対し外挿された曲線下の平均面積が、即時放出錠剤を飲み込むことにより等しい用量のチザニジンを投与されている第二患者集団に比べて、10%以上増加していることである、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
前記第一集団及び前記第二集団は同じであり、そして即時放出錠剤を飲み込むことによってチザニジンを投与する時間を、ウォシュアウト期間を挟むことによって、チザニジンを舌下又は口内投与する時間とは別にしている、請求項5に記載の方法。
【請求項7】
生体利用効率の増加が20%以上である、請求項5に記載の方法。
【請求項8】
前記即時放出錠剤が、賦形剤の、コロイド状二酸化ケイ素、ステアリン酸、微結晶性セルロース及び無水ラクトースを含んで成る、請求項5に記載の方法。
【請求項9】
前記即時放出製剤がZANAFLEX(登録商標)である、請求項8に記載の方法。
【請求項10】
頬投与及び舌下投与なる群から選択された経路によるチザニジンの投与によってチザニジン治療を受ける患者集団の個体間でのチザニジンの生体利用効率の変動を減らす方法。
【請求項11】
前記患者集団が1つのヘルスケア機関において治療を受ける患者である、請求項10に記載の方法。
【請求項12】
前記集団が、チザニジンを経口的に投与されているが十分に反応しておらず、そしてその後にチザニジンを頬又は舌下に投与されている集団を含み、そしてここで集団の中での変動の減少とは、ヘルスケアに関わる人材又は臨床記録によって明らかなように、経口的に投与されたチザニジンに対して十分な反応をしない所定の規模の集団の筋痙攣の抑制における向上である、請求項11に記載の方法。
【請求項13】
前記患集団が1人の医者からチザニジン治療を受けている患者である、請求項11に記載の方法。
【請求項14】
前記集団が、チザニジンを経口的に投与されているが十分に反応しておらず、そしてその後にチザニジンを頬又は舌下に投与されている集団を含み、そしてここで集団の中での変動の減少とは、ヘルスケアに関わる人材又は臨床記録によって明らかなように、経口的に投与されたチザニジンに対して十分な反応をしない所定の規模の集団の筋痙攣の抑制における向上である、請求項13に記載の方法。
【請求項15】
前記生体利用効率を、無限大に外挿した経時血しょう濃度の曲線下の面積(AUCinf)によって測定しており、そして生体利用効率の変動の減少をAUCinfの相対標準偏差を使用することで測定している、請求項10に記載の方法。
【請求項16】
前記減少が約10%以上である、請求項15に記載の方法。
【請求項17】
前記減少が約20%以上である、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記減少が約30%以上である、請求項17に記載の方法。
【請求項19】
チザニジン及び医薬的に許容できる担体を含んで成る、チザニジンを特に口の中で放出するように適合せしめられたチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。
【請求項20】
更に酸味料を含んで成る、請求項19に記載のチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。
【請求項21】
前記酸味料が、アスコルビン酸、安息香酸、クエン酸、フマル酸、乳酸、マレイン酸、ソルビン酸及び酒石酸からなる群から選択されている、請求項20に記載のチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。
【請求項22】
前記酸味料がクエン酸である、請求項21に記載のチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。
【請求項23】
口の中に取り込まれた後20分以内にチザニジンの80%を放出する、請求項19に記載のチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。
【請求項24】
口の中に取り込まれた後5分以内にチザニジンの80%を放出する、請求項23に記載のチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。
【請求項25】
親水性ポリマー及びポリプロトン性水素結合架橋剤を含んで成る凝固性液状医薬組成物である、請求項19に記載のチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。
【請求項26】
前記架橋剤がタンニン酸である、請求項25に記載のチザニジン医薬組成物。
【請求項27】
前記親水性ポリマーが、タンパク質、多糖類、セルロース性ポリマー及びポリアクリル酸塩からなる群から選択されている、請求項25に記載のチザニジン医薬組成物。
【請求項28】
前記タンパク質が、ゼラチン、水素化ゼラチン、アルブミン及びコラーゲンからなる群から選択されている、請求項27に記載のチザニジン医薬組成物。
【請求項29】
前記セルロース性ポリマーが、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース及びヒドロキシプロピルメチルセルロースからなる群から選択されている、請求項
27に記載のチザニジン医薬組成物。
【請求項30】
前記多糖類が、ペクチン、カラーギナン、アルギン酸及びそれらの塩、グアールガム及びトラカントガムからなる群から選択されている、請求項27に記載のチザニジン医薬組成物。
【請求項31】
医薬賦形剤の環状体中に収納されたチザニジンを含むコア錠剤を含んで成る、請求項19に記載のチザニジン医薬組成物又は経口投与形態。

【図1】
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【公表番号】特表2006−508122(P2006−508122A)
【公表日】平成18年3月9日(2006.3.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2004−551688(P2004−551688)
【出願日】平成15年11月3日(2003.11.3)
【国際出願番号】PCT/US2003/035002
【国際公開番号】WO2004/043431
【国際公開日】平成16年5月27日(2004.5.27)
【出願人】(501079705)テバ ファーマシューティカル インダストリーズ リミティド (283)
【Fターム(参考)】