説明

チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体

【課題】 内部を通過する排ガスの流れを均一化することができ、局部的なセルの劣化を抑制することが可能なハニカム構造体を提供すること。
【解決手段】 二つの端面F1,F2の間を連通する複数のセル12が形成されるように配置された多孔質の隔壁14と、複数のセル12のそれぞれの両端開口部のうち一方を目封止する複数の目封止部16と、隔壁14の気孔15を形成する表面に層状に担持された、触媒を含有する触媒層18と、を備えるチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体であって、ハニカム構造体の中央部のセル12に形成された目封止部16の、セル12の連通方向に垂直なセル内部側の面位置Lが、ハニカム構造体の周縁部のセル12に形成された目封止部16の面位置Lよりも、セル内部側に位置している、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体に関する。
【背景技術】
【0002】
ディーゼルエンジンなどの内燃機関から排出される排ガスを浄化するために、その内部に排ガスを通過させることによって、排ガスに含まれる微細なカーボン粒子等の粒子状物質を捕集するセラミックハニカムフィルタが用いられている。従来、セラミックハニカムフィルタとしては、例えば、コージェライト等のセラミック材料からなるハニカム構造体の表面に、活性アルミナ等の高比表面積材料と白金等の触媒金属とを担持したものが提案されている。
【0003】
また、ハニカム構造体を構成するセラミック材料として、近年、チタン酸アルミニウムの使用が検討されており、その産業上の利用価値が高まりつつある。
【0004】
チタン酸アルミニウムの製造方法としては、少なくともアルミニウム源粉末及びチタン源粉末を含み、必要に応じてケイ素源粉末やマグネシウム源粉末などを含む原料混合物を成形し、焼成する方法が知られている(例えば、特許文献1参照)。また、原料混合物として、更に、有機バインダ、造孔材などの有機添加物を含むものを用い、この原料混合物のグリーン成形体を酸素含有雰囲気下にて150〜900℃で加熱することにより有機添加物を除去した後、1300℃以上で焼成する方法も知られている(特許文献1の段落0031〜0032)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【特許文献1】国際公開第05/105704号パンフレット
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
近年、セラミックハニカムフィルタの排ガス浄化性能の向上のために、複数のセルを隔てる隔壁の気孔率を増加させて通気性を確保した上で、セルの入口と出口を交互に目封じして排ガスが隔壁を通過する構造とした、ウォールフロー型のハニカム構造体が多く検討されている。
【0007】
図5は、従来のウォールフロー型のハニカム構造体の一例を示す部分断面図である。図5では、ハニカム構造体の中心部付近の断面構造を示している。図4に示すように、ハニカム構造体20は、複数のセル22(22a及び22b)が多孔質の隔壁24を隔てて並設された構造を有している。また、セル22は、その両端の開口部のうちの一方が目封止されており、セル22aでは排ガス(図中の矢印)の入口側(端面F1側)に目封止部26が設けられ、セル22bでは排ガスの出口側(端面F2側)に目封止部26が設けられている。そして、ハニカム構造体20では、セル22aとセル22bとが交互に配置されているため、ハニカム構造体20を通り抜ける排ガスは、多孔質の隔壁24を通過してから排気されることとなる。
【0008】
このような構造のハニカム構造体20において、入口側に供給された排ガスは、ハニカム構造体20の中央部付近を流れやすく、図中に矢印で流れを示したように、中央部に近いセル22aほど、内部に流入して隔壁24を通過する排ガスの量が多くなる。そのため、中央部に近いセル22aほど排ガスに含まれる微細なカーボン粒子等の粒子状物質を捕集する頻度が高くなり、粒子状物質の堆積により隔壁24の目詰まりが生じたり、熱劣化が生じやすいという問題がある。
【0009】
本発明は、上記従来技術の有する課題に鑑みてなされたものであり、内部を通過する排ガスの流れを均一化することができ、局部的なセルの劣化を抑制することが可能なハニカム構造体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
上記目的を達成するために、本発明は、二つの端面の間を連通する複数のセルが形成されるように配置された多孔質の隔壁と、上記複数のセルのそれぞれの両端開口部のうち一方を目封止する複数の目封止部と、上記隔壁の気孔を形成する表面に層状に担持された、触媒を含有する触媒層と、を備えるチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体であって、ハニカム構造体の中央部の上記セルに形成された上記目封止部の、上記セルの連通方向に垂直なセル内部側の面位置が、ハニカム構造体の周縁部の上記セルに形成された上記目封止部の面位置よりも、セル内部側に位置している、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体を提供する。
【0011】
かかるチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体によれば、中央部のセルに形成された目封止部の面位置を、周縁部のセルに形成された目封止部の面位置よりもセル内部側とすることにより、周縁部のセルと比較して中央部のセルにおける排ガスの通過抵抗を高くすることができる。このように通過抵抗に勾配を設けることにより、中央部のセルに流入する排ガスの量を抑制することができ、ハニカム構造体の全体での排ガスの流れを均一化することができる。また、これによって、中央部のセルのみが集中的に劣化することを抑制することができ、ハニカム構造体の排ガス浄化性能を長期的に維持することができる。
【0012】
なお、本発明において、セルの連通方向に垂直なセル内部側の面位置とは、複数のセルのそれぞれを目封止する複数の目封止部の、隔壁に接しない2つの面のうち、セル内部側の方の面の位置を意味する。セル内部側とは、端面から遠い側であって、セルの連通方向の中心側を意味する。なお、目封止部の隔壁に接しない2つの面のうちの他方の面、すなわちセル外部側の面は、その面位置がハニカム構造体の端面と揃った状態であってもよいし、端面よりもセル内部側に位置していてもよい。
【0013】
本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体においては、ハニカム構造体の中央部の上記セルに形成された上記目封止部の配置位置が、ハニカム構造体の周縁部の上記セルに形成された上記目封止部の配置位置よりも、セル内部側に位置していてもよい。
【0014】
また、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体においては、ハニカム構造体の中央部の上記セルに形成された上記目封止部の長さが、ハニカム構造体の周縁部の上記セルに形成された上記目封止部の長さよりも長くてもよい。このとき、上記複数の目封止部の長さの最大値と最小値との差は、1mm以上10mm以下であることが好ましい。ここで、目封止部の長さとは、セルの連通方向の目封止部の長さである。
【0015】
このように、目封止部の配置位置及び長さの一方又は両方を調節することにより、目封止部のセル内部側の面位置を調節することができる。
【0016】
更に、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体において、上記触媒が、活性アルミナからなる担体コートと、上記担体コートの内部に分散担持される、Pt、Rh、及びPdからなる群より選択される一以上の貴金属と、上記担体コートに含有される、酸化セリウム、酸化ジルコニア、及びシリカからなる群より選択される一以上の化合物と、を含むことが好ましい。
【発明の効果】
【0017】
本発明によれば、内部を通過する排ガスの流れを均一化することができ、局部的なセルの劣化を抑制することが可能なハニカム構造体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
【図1】図1の(a)は、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の一実施形態を示す斜視図であり、図1の(b)は、図1の(a)の部分拡大図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の中心部付近の断面構造を示す部分断面図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の中心部付近の断面構造を示す部分断面図である。
【図4】本発明の一実施形態に係るチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の隔壁の断面構造を示す部分拡大図である。
【図5】従来のハニカム構造体の中心部付近の断面構造を示す部分断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。なお、図面中、同一又は相当部分には同一符号を付し、重複する説明は省略する。また、図面の寸法比率は図示の比率に限られるものではない。
【0020】
図1(a)は、本発明のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の好適な一実施形態を示す斜視図であり、図1(b)は、図1(a)の部分拡大図である。また、図2及び図3は、それぞれ本発明の一実施形態に係るチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の中心部付近の断面構造を示す部分断面図である。また、図4は、本発明の一実施形態に係るチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体の隔壁の断面構造を示す部分拡大図である。
【0021】
図1(a)に示すように、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体10は、外壁で表される外形が円柱状であり、内部の構造がハニカム構造をなしている。図1〜4に示すように、ハニカム構造体10は、二つの端面F1,F2の間を連通する複数のセル12(12a及び12b)が形成されるように配置された、多数の気孔を有する多孔質の隔壁14と、上記複数のセル12のそれぞれの両端開口部のうち一方を目封止する複数の目封止部16と、隔壁14の気孔15を形成する表面に層状に担持された、触媒を含有する触媒層18と、を備えるものである。そして、図2及び図3に示すように、ハニカム構造体10においては、その中央部のセル12に形成された目封止部16の、セル12の連通方向に垂直なセル内部側の面位置L(例えば、面位置L1)が、周縁部のセル12に形成された目封止部16の面位置L(例えば、面位置L3)よりも、セル内部側に位置している。
【0022】
図2及び図3に示すように、中央部のセル12における目封止部16の面位置をL1、その周囲のセル12における目封止部16の面位置を中央部に近い側からL2,L3とした場合、L1,L2,L3の順にセル12内部側に位置している。図2に示したハニカム構造体10においては、目封止部16の長さによって面位置Lが調整されており、図3に示したハニカム構造体10においては、目封止部16の配置位置によって面位置Lが調整されている。複数の目封止部16の面位置Lを上記のように調節することにより、中央部のセル12における排ガスの通過抵抗を、周縁部のセル12よりも高くすることができ、中央部のセル12に流入する排ガスの量を抑制することができる。これにより、図2及び図3中に矢印で示したように、ハニカム構造体10の全体での排ガスの流れを均一化することができる。
【0023】
また、複数の目封止部16の面位置の中で、最もセル12内部側の面位置をL1とし、最もセル12外部側の面位置をL3とした場合、面位置L1と面位置L3との距離dは、1mm以上10mm以下であることが好ましく、1.5mm以上5mm以下であることがより好ましい。なお、図2に示したハニカム構造体10においては、上記距離dの値が、複数の目封止部16の長さの最大値と最小値との差に相当する。この距離dの値が1mm未満では、排ガスの流れを均一化する効果が低下する傾向があり、10mmを超えると、中央部のセル12における排ガスの通過抵抗が高くなり過ぎ、排ガスの流れが不均一となる傾向がある。
【0024】
本発明において、中央部のセル12に形成された目封止部16の面位置Lを、周縁部のセル12に形成された目封止部16の面位置Lよりもセル内部側になるようにする、複数の目封止部16の面位置Lの調節は、排ガスの入口側(端面F1側)、及び出口側(端面F2側)の少なくとも一方の側で行われていることが必要である。なお、排ガスの流れを均一化する効果がより得られやすいことから、少なくとも出口側(端面F2側)で上記の調節が行われていることが好ましく、入口側(端面F1側)及び出口側(端面F2側)の両方で上記の調節が行われていることがより好ましい。また、上記の面位置Lの調節の状態は、入口側(端面F1側)と出口側(端面F2側)とで同様であってもよく、異なっていてもよい。
【0025】
また、図2及び図3では、中央部から周縁部にかけて、セル12の目封止部16の面位置Lが徐々にセル内部側から遠ざかるように、面位置L1,L2,L3の3段階で位置を変化させた場合を示したが、これに限定されるものではない。例えば、面位置L2の位置を面位置L1又はL3と同位置とし、面位置L1,L3の2段階で位置を変化させるようにする等、多数の目封止部16の面位置Lを同じ位置にしてもよい。
【0026】
なお、図2及び図3に示した断面図は、ハニカム構造体10の中心部付近の部分断面図であり、一般的には図1に示すように更に多数のセル12が形成されているが、上記の説明では便宜上、面位置L1の目封止部16が形成されているセル12を中央部のセルとし、面位置L3の目封止部16が形成されているセル12を周縁部のセルとして説明した。したがって、現実的には、図2及び図3に示したセル12の目封止部16の面位置Lは、端面F1,F2のそれぞれで全て同じ位置とし、これらのセルよりも更に周縁部に配置されたセル12の目封止部16の面位置Lを、よりセル外部側に位置するように調節することも好ましい。
【0027】
また、ハニカム構造体10において、セル12a,12bは排ガス等の流体の流路となるが、図1〜3に示すように、その両端の開口部のうちの一方が目封止されている。図1〜3の端面F1側では、セル12aが開口し、セル12bが目封止されており、これとは反対側の端部F2では、セル12aが目封止され、セル12bが開口している。ハニカム構造体10においては、このようなセル12aとセル12bとが交互に配置されているため、その内部を通り抜ける排ガスは、その排出前に多孔質の隔壁14を通過することで粒子状物質が除去される。更に、図4に示すように、隔壁14の気孔15を形成する表面には触媒層18が存在するため、隔壁14を通過する排ガスに含まれる被浄化成分は触媒層18に接触して分解され、これによって排ガスは浄化される。
【0028】
セル12a,12bの間の壁である隔壁14の厚さは、特に限定されるものではないが、望ましい下限は0.05mmであり、より望ましい下限は0.10mmであり、特に望ましい下限は0.15mmである。一方、望ましい上限は0.35mmであり、より望ましい上限は0.30mmであり、特に望ましい上限は0.25mmである。隔壁14の厚さが0.05mm未満ではハニカム構造体10の強度が低下する傾向があり、一方、隔壁14の厚さが0.35mmを超えると、ガス透過率が低下し、排ガス処理効率が低下する傾向がある。
【0029】
隔壁14の気孔率は、30体積%以上であることが好ましく、35体積%以上であることがより好ましく、40体積%以上であることが特に好ましい。隔壁14の気孔率が30体積%未満であると、隔壁14をガスが流通しにくくなって圧力損失が大きくなり、浄化効率が低下する傾向がある。隔壁14の気孔率は、50体積%以下であることが好ましく、46体積%以下であることがより好ましい。隔壁14の気孔率が50体積%を超えると、排ガス浄化時のスス漏れが激しくなってスス堆積量が減少するため、スス燃焼時の発熱量が低下してハニカム構造体10の熱膨張は抑制されるが、浄化効率は低下する傾向がある。隔壁14の気孔率は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能であり、水銀圧入法により測定することができる。
【0030】
隔壁14の平均細孔径は、10μm以上であることが好ましく、12μm以上であることがより好ましい。隔壁14の平均細孔径が10μm未満であると、微細粒子の堆積により細孔が容易に閉塞して圧力損失が急激に大きくなり、浄化効率が低下する傾向がある。一方、隔壁14の平均細孔径は、捕集されずに隔壁14を通過してしまう微細粒子を低減する観点から、30μm以下が好ましく、20μm以下がより好ましく、16μm以下が更に好ましい。隔壁14の平均細孔径は、原料の粒子径、造孔剤の添加量、焼成条件により調整可能であり、例えば水銀圧入法により測定することができる。
【0031】
また、上記ハニカム構造体10のセル密度は、望ましい下限が15.5個/cm(100cpsi)であり、より望ましい下限が46.5個/cm(300cpsi)であり、さらに望ましい下限が62個/cm(400cpsi)である。一方、セル密度の望ましい上限は186個/cm(1200cpsi)であり、より望ましい上限は170.5個/cm(1100cpsi)であり、さらに望ましい上限は155個/cm(1000cpsi)である。セル密度が15.5個/cm未満では、ハニカム構造体10内部の排ガスと接触する壁の面積が小さくなり、186個/cmを超えると、圧力損失が高くなるとともに、ハニカム構造体10の作製が困難になるためである。
【0032】
ハニカム構造体10は、BET比表面積が1〜20m/gであることが好ましい。ハニカム構造体10のBET比表面積が1m/g未満であると、浄化効率が低下する傾向がある。BET比表面積は、例えば市販のガス吸着装置を用いて測定することができる。
【0033】
また、ハニカム構造体10に形成されるセル12a,12bの断面形状は特に限定されず、図1〜3に示したような正方形以外に、例えば、三角形、長方形、六角形、八角形、円形などでもよく、また複数の形状の組み合わせでもよい。
【0034】
ハニカム構造体10において、多孔質の隔壁14は、少なくともチタン酸アルミニウムを含む材料により形成されている。チタン酸アルミニウム以外の構成材料は特に限定されないが、例えば、無機繊維、ウィスカ、無機粒子等が挙げられる。
【0035】
無機繊維やウィスカとしては、アルミナ、シリカ、炭化珪素、シリカ−アルミナ、ガラス、チタン酸カリウム又はホウ酸アルミニウム等からなる無機繊維やウィスカが挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、ホウ酸アルミニウムウィスカがより望ましい。なお、本明細書中において、無機繊維やウィスカとは、平均アスペクト比(長さ/径)が5を超えるものをいう。また、上記無機繊維やウィスカの望ましい平均アスペクト比は、10〜1000である。
【0036】
無機粒子としては、例えば、アルミナ、シリカ、ジルコニア、チタニア、セリア、ムライト、ゼオライト等からなる粒子が挙げられる。これらの粒子は、単独で用いてもよく、2種以上併用してもよい。また、これらの中では、アルミナ粒子、セリア粒子が好ましい。
【0037】
ハニカム構造体10中のチタン酸アルミニウムにおけるアルミニウムの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化アルミニウム換算で40〜60モル%である。チタン酸アルミニウムにおけるチタンの含有率は、特に限定されないが、例えば、酸化チタン換算で35〜55モル%である。チタン酸アルミニウムにおけるマグネシウムの含有率は酸化マグネシウム換算で1〜5質量%であることが好ましい。なお、チタン酸アルミニウムの組成は、原料混合物の組成により適宜調整すればよい。チタン酸アルミニウムは、上記の成分以外に、原料に由来する成分又は製造工程において不可避的に仕掛品に混入する微量の成分を含有し得る。
【0038】
また、ハニカム構造体10において、目封止部16の構成材料は特に限定されないが、通常、ハニカム構造体10の構成材料と同様の材料が用いられる。
【0039】
触媒層18は、活性アルミナからなる担体コートと、上記担体コートの内部に分散担持される、Pt、Rh、及びPdからなる群より選択される一以上の貴金属と、上記担体コートに含有される、酸化セリウム、酸化ジルコニア、及びシリカからなる群より選択される一以上の化合物と、を含むことが好ましい。なお、上記貴金属としては、Pt、Rh、Pd、Ru、Ni及びこれらの合金を用いることができ、Pt又はPdの少なくとも一方を用いることが好ましい。
【0040】
貴金属の合計量は、ハニカム構造体10の体積1リットルあたり、0.17g以上7.07g以下とすることが好ましい。なお、上記触媒は、ガソリンエンジン排ガス浄化三元触媒に相当するものであるが、本発明に係るハニカム構造体は、触媒として、ガソリンエンジン又はディーゼルエンジン排ガス浄化用の酸化触媒や、NO選択還元用SCR触媒、NO吸蔵触媒等も採用出来る。
【0041】
次に、本発明のハニカム構造体の製造方法について説明する。
【0042】
まず、上記チタン酸アルミニウムの原料となる、アルミニウム源、チタン源、及び必要に応じて添加されるマグネシウム源やケイ素源を含む無機化合物、必要に応じて用いられる無機繊維、ウィスカ及び無機粒子、並びに、バインダ成分等を混合して原料混合物を得る。また、原料混合物には上記の他に、必要に応じて造孔材、潤滑剤、可塑剤、分散剤、溶媒等を添加することもできる。
【0043】
ここで、上記無機化合物は、チタン酸アルミニウムの原料であるが、この無機化合物にマグネシウム源を添加すると、焼成によりチタン酸アルミニウムマグネシウム結晶が形成され、耐熱性がより向上されたハニカム構造体を得ることができる。なお、チタン酸アルミニウムの原料である上記無機化合物の一部又は全部に代えて、予め結晶化されたチタン酸アルミニウムやチタン酸アルミニウムマグネシウムを用いてもよい。
【0044】
また、上記バインダ成分としては、無機バインダ及び有機バインダが挙げられる。上記無機バインダとしては、無機ゾルや粘土系バインダ等を用いることができる。上記無機ゾルの具体例としては、例えば、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス等が挙げられる。また、粘土系バインダとしては、例えば、白土、カオリン、モンモリロナイト、セピオライト、アタパルジャイト等の複鎖構造型粘土等が挙げられる。これらは単独で用いても良く、2種以上を併用してもよい。これらの中では、アルミナゾル、シリカゾル、チタニアゾル、水ガラス、セピオライト及びアタパルジャイトからなる群から選択された少なくとも1種が好ましい。
【0045】
上記有機バインダとしては、例えば、ポリビニルアルコール、メチルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロース等が挙げられる。これらは、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。これらの中では、カルボキシメチルセルロースが好ましい。
【0046】
上記原料混合物に含まれる上記バインダ成分の量は、原料混合物の固形分全量を基準として、望ましい下限は5質量%であり、より望ましい下限は10質量%であり、さらに望ましい下限は15質量%である。一方、望ましい上限は50質量%であり、より望ましい上限は40質量%であり、さらに望ましい上限は35質量%である。
【0047】
造孔剤としては、例えば、グラファイト等の炭素材;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリメタクリル酸メチル等の樹脂類;でんぷん、ナッツ殻、クルミ殻、コーンなどの植物材料;氷;およびドライアイスが挙げられる。
【0048】
潤滑剤および可塑剤としては、例えば、グリセリンなどのアルコール類;カプリル酸、ラウリン酸、パルミチン酸、アラギン酸、オレイン酸、ステアリン酸などの高級脂肪酸;ステアリン酸Alなどのステアリン酸金属塩が挙げられる。
【0049】
分散剤としては、例えば、硝酸、塩酸、硫酸などの無機酸;シュウ酸、クエン酸、酢酸、リンゴ酸、乳酸などの有機酸;水;メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類;ポリカルボン酸アンモニウム、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルなどの界面活性剤が挙げられる。
【0050】
溶媒としては、例えば、水;メタノール、エタノール、ブタノール、プロパノールなどのアルコール類;プロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、エチレングリコールなどのグリコール類が挙げられる。
【0051】
上記原料混合物の調製は、特に限定されるものではないが、混合及び/又は混練することで行うことが好ましい。混合は、例えば、ミキサーやアトライタなどを用いて行うことができる。混練は、例えば、ニーダーなどを用いて行うことができる。
【0052】
次に、上記で得られた原料混合物を成型することにより、ハニカム形状の成形体(グリーン成形体)を得る。上記原料混合物を成型する方法は、特に限定されるものではないが、押出成形などによってセルを有する形状に成形することが好ましい。
【0053】
次に、得られた成形体に、必要に応じて、乾燥機を用いて乾燥処理を施す。上記乾燥機としては、例えば、マイクロ波乾燥機、熱風乾燥機、誘電乾燥機、減圧乾燥機、真空乾燥機及び凍結乾燥機等が挙げられる。
【0054】
成形体に対する目封止は、成形後又は乾燥後に施してもよい。目封止は、例えば、図1〜3に示したように、セル12a,12bの一端の開口部の所定の位置に封止材を充填することにより行われる。この場合、目封止は、例えば、複数の貫通孔が所望の位置に設けられたマスクを成形体の一端面に密着させ、そこへ封止材を供給することにより、セル12aの端部にのみ封止材を充填し、成形体の他端面に対しても同様にして12bの端部にのみ封止材を充填することにより行うことができる。このとき、封止材の充填量や充填位置等を適宜調節することにより、最終的に得られるハニカム構造体10における目封止部16の面位置Lを調節することができる。これにより、図1〜3に示したように、一端の開口部が目封止されたセル12aと、セル12aとは反対側の開口部が目封止されたセル12bとが交互に配置された成形体を得ることができる。
【0055】
封止材としては、通常、上記成形体と同様の材料を用いることができる。また、封止材として、上記成形体とは異なる材料を用いることもできる。
【0056】
なお、目封止は、後述の焼成後に行ってもよい。その場合、目封止後に再度焼成が行われる。焼成前の成形体に対して目封止を行っておいた場合には、焼成工程が1回で済むため好ましい。
【0057】
次に、必要に応じて乾燥処理を施したハニカム成形体を仮焼(脱脂)および焼成する。仮焼(脱脂)は、ハニカム成形体中の有機バインダや、必要に応じて配合される有機添加物を、焼失、分解等により除去するための工程であり、典型的には、焼成温度に至るまでの昇温段階(たとえば、150〜900℃の温度範囲)になされる。仮焼(脱脂)工程おいては、昇温速度を極力おさえることが好ましい。
【0058】
焼成は、例えば、焼成炉にグリーン成形体を置き、加熱する方法により行うことができる。焼成温度は、通常1300℃以上、好ましくは1400℃以上である。一方、得られるハニカム焼成体を加工し易いものにする観点から、焼成温度は、通常1650℃以下であり、好ましくは1600℃以下であり、より好ましくは1550℃以下である。焼成温度までの昇温速度は特に限定されるものではないが、通常、1℃/時間〜500℃/時間である。ハニカム成形体がケイ素源粉末を含む場合には、焼成工程の前に、1100〜1300℃の温度範囲で3時間以上保持する工程を設けることが好ましい。これにより、ケイ素源粉末の融解、拡散を促進させることができる。
【0059】
焼成は通常、大気中で行われるが、原料混合物の成分や成分量比によっては、窒素ガス、アルゴンガスなどの不活性ガス中で焼成してもよいし、一酸化炭素ガス、水素ガスなどのような還元性ガス中で焼成してもよい。また焼成雰囲気中の水蒸気分圧を低くして焼成してもよい。
【0060】
焼成は通常、管状電気炉、箱型電気炉、トンネル炉、遠赤外線炉、マイクロ波加熱炉、シャフト炉、反射炉、ロータリー炉、ローラーハース炉などの通常の焼成炉を用いて行われる。焼成は回分式で行ってもよいし、連続式で行ってもよい。また焼成は静置式で行ってもよいし、流動式で行ってもよい。
【0061】
焼成時間は、焼成炉の形式、焼成温度、焼成雰囲気などにより異なるが、通常は10分以上300時間以下である。
【0062】
以上により、多数のセルが隔壁を隔てて並設された柱状のハニカム焼成体を得ることができる。得られたハニカム焼成体は、成形直後のハニカム成形体の形状をほぼ維持した形状を有する。得られたハニカム焼成体は、研削加工等により、所望の形状に加工することもできる。
【0063】
次に、得られたハニカム焼成体の隔壁の気孔を形成する表面に、触媒を含有する触媒層を層状に形成する。触媒層の形成方法は特に限定されず、公知の方法で形成することができる。具体的には、先ず、触媒を含有する触媒スラリーを調製し、その触媒スラリーを、吸引法等の方法により、ハニカム焼成体の隔壁の気孔形成面にコートする。その後、室温又は加熱条件下で乾燥することにより、触媒層を形成することができる。以上により、本発明のハニカム構造体を得ることができる。
【0064】
以上説明した本発明のハニカム構造体は、排ガスに含まれる被浄化成分の浄化を必要とする各種産業分野において、例えば、排ガス処理システムに触媒コンバータとして組み込まれ、利用される。特に、内燃機関、燃焼機器等からの排ガスの浄化を必要とする自動車産業、機械産業、窯業等の産業分野において、有効に利用される。
【符号の説明】
【0065】
10…ハニカム構造体、12a,12b…セル、14…隔壁、16…目封止部、18…触媒層。


【特許請求の範囲】
【請求項1】
二つの端面の間を連通する複数のセルが形成されるように配置された多孔質の隔壁と、
前記複数のセルのそれぞれの両端開口部のうち一方を目封止する複数の目封止部と、
前記隔壁の気孔を形成する表面に層状に担持された、触媒を含有する触媒層と、
を備えるチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体であって、
ハニカム構造体の中央部の前記セルに形成された前記目封止部の、前記セルの連通方向に垂直なセル内部側の面位置が、ハニカム構造体の周縁部の前記セルに形成された前記目封止部の面位置よりも、セル内部側に位置している、チタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。
【請求項2】
ハニカム構造体の中央部の前記セルに形成された前記目封止部の配置位置が、ハニカム構造体の周縁部の前記セルに形成された前記目封止部の配置位置よりも、セル内部側に位置している、請求項1記載のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。
【請求項3】
ハニカム構造体の中央部の前記セルに形成された前記目封止部の長さが、ハニカム構造体の周縁部の前記セルに形成された前記目封止部の長さよりも長い、請求項1又は2記載のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。
【請求項4】
前記複数の目封止部の長さの最大値と最小値との差が、1mm以上10mm以下である、請求項3に記載のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。
【請求項5】
前記触媒が、
活性アルミナからなる担体コートと、
前記担体コートの内部に分散担持される、Pt、Rh、及びPdからなる群より選択される一以上の貴金属と、
前記担体コートに含有される、酸化セリウム、酸化ジルコニア、及びシリカからなる群より選択される一以上の化合物と、
を含む、請求項1〜4のいずれか一項に記載のチタン酸アルミニウム質ハニカム構造体。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2012−81415(P2012−81415A)
【公開日】平成24年4月26日(2012.4.26)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−229662(P2010−229662)
【出願日】平成22年10月12日(2010.10.12)
【出願人】(000002093)住友化学株式会社 (8,981)
【Fターム(参考)】