説明

チップを用いた検査装置

【課題】平板状のチップを複数個セットさせると共に、チップ内部の試料に光照射することによって試料成分を測定するチップを用いた検査装置であって、チップを縦置きに配置しても、チップの飛び出しを防止するとともに、チップの交換を容易に行うことのできる検査装置を提供する。
【解決手段】チップ2を収納するチップホルダ3と、チップホルダ3が複数個並べて載置された保持台4と、保持台4を回転軸を中心に回転させる回転駆動部6と、チップ2に光を照射し、照射の結果得られた光を検知する測光部9と、保持台4上であってチップ2の重心よりも保持台4の回転中心に近い位置に形成されたロック機構とを備え、ロック機構は、保持台4に設けられたロック46と、ロック46に引っ掛かるチップ2に設けられたフック21とを備え、チップ2の脱着時に、チップホルダ3は、保持台4に対して回転軸81に対して垂直方向に移動可能であることを特徴とする。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チップを用いた検査装置に係り、特に、チップを回転させて、遠心力等を利用して貯留された試料を光検査するチップを用いた検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、特許文献1には、マイクロチップを横置きした状態で回転させて、遠心力で貯留された試料を光検査するチップを用いた検査装置が開示されている。しかし、マイクロチップを横置きすると、一度に多くのマイクロチップを装置に装着することができず、検査効率を向上させることができなかった。
一方、特許文献2には、チップを縦置き状態で回転させて、遠心力及び重力を利用して貯留された試料を光検査するチップを用いた検査装置が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2008−008875号公報
【特許文献2】特開2008−268198号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、チップを用いた検査装置にチップを縦置きに配置して、チップを回転させると、チップに遠心力が働いた際に、横置きの場合に比べて、飛び出そうとする力が大きくなるという問題がある。
図15(a)、及び図16(a)は、チップ101を横置きにした状態で保持台102に載置し、保持台102を回転させることによってチップ101に遠心力を加える場合を示す図であり、図15(b)、及び図16(b)は、チップ103を縦置きにした状態で保持台102に載置し、保持台102を回転させることによってチップ103に遠心力を加える場合を示す図である。
これらの図において、横置きのチップ101と縦置きのチップ103のそれぞれを載置する保持台102を同じ回転速度で回転させた場合、両チップ101、103にかかる遠心力の力は同じである。しかし、縦置きのチップ103の重心位置は、横置きのチップ101の重心位置よりも高いので、遠心力に抗して、チップが保持台102にとどまるための突き当て(支点)位置が図16(b)の位置にある場合、チップ103の方が、チップ101より大きな上向きの力がはたらく。このため、チップ103の方が保持台から飛び出しそうになる。
【0005】
本発明の目的は、上記の問題点に鑑みて、チップを縦置きに配置しても、チップの飛び出しを防止するとともに、チップの交換を容易に行うことのできるチップを用いた検査装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記の課題を解決するために、請求項1に記載の発明は、平板状のチップを複数個セットさせると共に、前記チップの内部に封入された試料に対して光照射することによって試料成分を測定するチップを用いた検査装置であって、前記チップを収納するチップホルダと、該チップホルダが複数個並べて載置された保持台と、該保持台を回転軸を中心に回転させる回転駆動部と、前記チップに光を照射し、照射の結果得られた光を検知する測光部と、前記保持台上であって前記チップの重心よりも前記保持台の回転中心に近い位置に形成されたロック機構と、を備え、該ロック機構は、前記保持台に設けられたロックと、該ロックに引っ掛かる前記チップに設けられたフックと、を備え、前記チップの脱着時に、前記チップホルダは、前記保持台に対して前記回転軸に対して垂直方向に移動可能であることを特徴とするチップを用いた検査装置である。
請求項2に記載の発明は、前記保持台に、該保持台が回転された時に、前記チップホルダが前記保持台に位置決めされた状態で、前記チップホルダにかかる遠心方向と同方向に前記チップホルダを押圧するチップホルダ押圧弾性部材を備えたことを特徴とする請求項1に記載のチップを用いた検査装置である。
請求項3に記載の発明は、前記保持台に、該保持台が回転された時に、前記チップにかかる遠心方向と同方向に押圧するチップ押圧用弾性部材を備えたことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチップを用いた検査装置である。
請求項4に記載の発明は、前記チップ押圧用弾性部材は、遠心方向に対して垂直方向にも押圧することを特徴とする請求項3に記載のチップを用いた検査装置である。
請求項5に記載の発明は、前記保持台に、該記保持台が回転された時に、前記チップホルダの回転方向への押圧を抑制する梁を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つの請求項に記載のチップを用いた検査装置である。
【発明の効果】
【0007】
本願発明によれば、チップを縦置きに配置しても、簡便な構成で、チップの飛び出しを防止することができるとともに、チップの交換も容易に行うことのできるチップを用いた検査装置を実現することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【図1】チップを用いた検査装置の斜視図である。
【図2】図1に示したチップを用いた検査装置の平面図である。
【図3】図2に示したチップを用いた検査装置のA−A断面図であり、測定室の上面に蓋部を設けた図である。
【図4】図2に示したチップを用いた検査装置のB−B断面図であり、測定室より下部は省略した図である。
【図5】チップの保持過程を説明するための図である。
【図6】チップの保持過程を説明するための図である。
【図7】チップの保持過程を説明するための図である。
【図8】チップの保持過程を説明するための図である。
【図9】チップの保持過程を説明するための図である。
【図10】チップの取り出し過程を説明するための図である。
【図11】チップの取り出し過程を説明するための図である。
【図12】チップの取り出し過程を説明するための図である。
【図13】チップの取り出し過程を説明するための図である。
【図14】チップを保持または取り出す過程における、チップホルダ押圧用弾性部材及びチップ押圧用弾性部材の変位の変化をまとめた図である。
【図15】チップを保持台に横置きまたは縦置きにして回転させた時の状態を説明するための斜視図である。
【図16】チップを保持台に横置きまたは縦置きにして回転させた時の状態を説明するための断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本願発明に係るチップを用いた検査装置の実施形態を図1〜図14を参照して説明する。
図1は本実施形態に係るチップを用いた検査装置の斜視図、図2は図1に示したチップを用いた検査装置の平面図、図3は図2に示したチップを用いた検査装置のA−A断面図であり、測定室の上面に蓋部を設けた図、図4は図2に示したチップを用いた検査装置のB−B断面図であり、測定室より下部は省略した図である。
なお、通常、チップはチップを用いた検査装置に複数装着されるが、図3においては、1個のチップ2がチップホルダ3に装着され、対向する位置(紙面右側上部)に配置されるチップ2及びチップホルダ3は省略されている。また、図1、図2、及び図4においては、チップ2の装着は省略されている。
図1に示すように、チップを用いた検査装置1は、複数のチップ2を縦置きに保持するチップホルダ3と、チップホルダ3を載置する保持台4と、測定室ベース板5上に複数の脚6によって支持され、保持台4を取り囲むように収納する略円筒状の測定室7と、保持台4を回転させる回転駆動部(モータ)8と、チップ2内に貯留された試料に光を照射し、照射の結果得られた光を検知する測光部9と、を備える。
【0010】
図3に示すように、測定室7には蓋部10が設けられ、測定室7の底部には貫通孔71が設けられ、貫通孔71を通って回転駆動部8の回転軸81が挿通され、保持台4が、回転軸81に固定され、回転可能に構成されている。さらに、測定室7の底部には、測光部9に対応する位置に、測光部7とチップ2に貯留された試料との間で測光するための光の入出を行う貫通孔72が設けられる。
【0011】
また、図3に示すように、測光部9は、測光部9の側面に基板92を介して、例えば、LED等からなるチップ2内に貯留された試料に光を照射するための光源部91と、光源部91から出射した光をチップ2内に貯留された試料の方向に反射し、また、チップ2内に貯留された試料に対する光の照射の結果得られた蛍光を透過する傾斜配置されたハーフミラー93と、ハーフミラー93とチップ2との間に設けられ、凸面がハーフミラー93と対向し、平面がチップ2に対向し、材質が、光源部91からの光を透過でき、且つ、チップ2内に貯留された試料からの蛍光を透過することのできる、例えば、ガラスからなる平凸レンズ94と、チップ2内に貯留された試料から平凸レンズ94、ハーフミラー93を透過した蛍光を検知する検知部95と、を備える。なお、検知部95には、例えば、光電子増倍管(Photo Multiplier Tube:PMT)やフォトダイオード(Photo diode)が用いられる。
【0012】
図1〜図3に示すように、保持台4は、チップホルダ3を載置する円板状部分41と、円板状部分41の外周縁に、円板の中心軸方向に沿って延びる円筒状部分42とを備え、材質は、例えば、アルミニウムのような金属部材が用いられる。
【0013】
図1に示すように、チップホルダ3は、保持台4の中心軸から周縁に向かって延びるように、放射状に複数(図1では6個)配置される。
また、図3及び図4に示すように、チップホルダ3は、保持台4に設けた開口部分43を通って一部下方側に突出する突出部31を有し、側面には保持台4から落下しないように、保持台4の上面に摺動可能な摺動部32が設けられる。チップホルダ3は、保持台4の開口部分43とチップホルダ3の摺動部32とによって、保持台4に対して回転軸に対して垂直方向に移動可能に構成される。
【0014】
図3に示すように、保持台4には、チップ2を保持台4の周縁方向に向かって押圧するチップ押圧用弾性部材44が設けられており、チップ2は、チップホルダ3(紙面左側の部分)に当接される。チップ押圧用弾性部材44としては、例えば、板ばねを用いることができる。更に、保持台4には、チップホルダ3を周縁方向に向かって押圧するチップホルダ押圧用弾性部材45が設けられる。チップホルダ押圧用弾性部材45としては、例えば、板ばねを用いることができる。
【0015】
また、図3に示すように、チップホルダ3には、内部に試料を注入されたチップ2が挿入される。このとき、チップ2は平板状であり、縦に装着される。
なお、ここで言うチップ2の縦置きとは、図4で見たときに、チップ2の紙面左右方向の長さに対して、紙面上下方向の長さが長くなるようにチップ2を置いたときのことである。
【0016】
また、図3に示すように、チップ2には、フック21が設けられており、フック21に、保持台4に固定されたロック46が引っかかるように配置される。
【0017】
次に、本実施形態に係るチップを用いた検査装置1の動作について説明する。
まず、図3に示すように、チップ2を図3の状態で保持して、回転駆動部8によって回転駆動し、チップ2に遠心力をかける。この遠心力を利用してチップ2は、内部に保持された試料が分離や試薬との反応・撹拌を経て、チップ2の測定領域に処理した試料を移動させる。このとき、チップ2は縦置きされているために、遠心力によって飛び出そうとする力が大きくかかる(横置きより大きいという意味)。しかし、本装置では、チップ2が遠心方向(保持台4における中心軸から周縁に向かう方向)に向かってチップホルダ3に当接されるため、この方向への力は規制される。また、図3における紙面上方向への移動は、チップ2のフック21と保持台4のロック46とが引っかかって、その方向への移動が規制される。チップ2に遠心力を加えるときに、この遠心力はチップ2にかかるため、フック21とロック46とのロック機構を、チップ2の重心より保持台4の周縁側に位置させるよりも、チップ2の重心より中心軸側に位置させた方が小さな力でチップ2の飛び出しを抑制できる。そのため、本装置では、ロック機構をチップ2の重心より保持台4の中心軸側に位置させることによって、チップ2を縦置きにし、遠心力がかかっても、チップ2の飛び出しを抑制することができる。
【0018】
飛び出しを抑制されたチップ2は、内部の試料を良好に処理することができ、この処理を終えると、処理された試料は、チップ2の測定領域に移動され、測光部9で検知される。より詳細には、光源部91から出射した光は、ハーフミラー93で反射され、レンズ94に入射される。レンズ94に入射した光は、チップ2の測定領域付近で集光する。チップ2の測定領域に位置する処理された試料は光が照射されると蛍光を発し、この蛍光はレンズ94、ハーフミラー93を通過して検知部95で検知される。
【0019】
試料が入っているチップ2は、本装置1で検査処理を終えると、再利用されることなく、交換される。このため、上述のようにチップ2のフック21を保持台4のロック46に引っかけ、飛び出すことを抑制することはできるが、これだけではチップ交換ができず、チップを用いた検査装置として利用することができない。
そのため、本実施形態に係るチップを用いた検査装置では、チップ2の飛び出しを抑制できるとともに、チップ2の交換も容易に行えるものである。以下に、図3及び図5〜図13を参照して、チップ2を保持させる工程とチップ2を取り出す工程について詳述する。
【0020】
図5〜図13は、図3に示したチップ押圧用弾性部材44及びチップホルダ押圧用弾性部材45の周辺を拡大した図であり、図5〜図9はチップを保持させる工程、図10〜図13はチップ2を取り出す工程を説明するための図である。図14は、チップを保持させる工程(図5〜図9)、及びチップ2を取り出す工程(図10〜図13)における、チップホルダ押圧用弾性部材45及びチップ押圧用弾性部材44の変位の変化をまとめた図である。
【0021】
まず、チップ2を保持させる工程について説明する。はじめに、チップ2がチップホルダ3に保持されていない、空のチップホルダ3の状態では、チップホルダ押圧用弾性部材45によって、チップホルダ3は遠心方向(保持台4の中心から周縁に向かう方向)に向かって押圧され、保持台4に当接されている。このときのチップホルダ押圧用弾性部材45の変位を、図14に示すようにAとし、また、チップ押圧用弾性部材44の変位をCとする。
次に、図5に示すように、チップホルダ3にチップ2を上側から下側に向かって挿入する。チップ2には遠心方向に向かって突出するフック21が設けられ、このフック21の下面にテーパー部211が形成されている。ロック46には、このテーパー部211と略平行なロック46のテーパー部461が形成されており、両者のテーパー部211、461が対向する。
次に、図6に示すように、チップ2を挿入していくと、フック21とロック46との両者のテーパー部211、461が当接する。ロック46は保持台4に対して固定されているのに対し、チップ2が挿入されたチップホルダ3は保持台4に対して可動である。このため、チップ2を更に挿入していくと、ロック46のテーパー部461に沿ってチップ2とチップホルダ3とが遠心方向と逆方向(図6の紙面右方向)に移動される。この移動に伴って、チップホルダ押圧用弾性手段45はチップホルダ3に押されて、遠心方向と逆方向に向かって撓む。従って、図14に示すように、チップ2の挿入に伴って、チップホルダ押圧用弾性部材45は、AからBの変位に向かって撓む。さらに、チップ2とチップホルダ3とが遠心方向と逆方向(図6の紙面右方向)に移動されると、チップホルダ3に押されて、保持台に固定されたチップ押圧用弾性部材44も撓む。このとき、チップ押圧用弾性部材44は、図14に示すように、CからEの変位に向かって撓む。
次に、図7に示すように、チップ2のフック21がロック46のテーパー部461を通過した後、ロック46の垂直方向に延びる面462にフック21が当接し、その垂直方向に沿ってチップ2が移動される。このとき、チップホルダ3は、移動しないので、図14に示すように、チップホルダ押圧用弾性部材45は変位Bを保持したまま、またチップ押圧用弾性部材44は変位Eを保持したままである。
次に、図8に示すように、チップ2をチップホルダ3に挿入しきった時に、チップ2がチップ押圧用弾性部材44を押圧し、チップ押圧用弾性部材44を撓ませる。このとき、図14に示すように、チップ押圧用弾性部材44は、EからDの変位になる。また、図9に示すように、フック21は、ロック46との当接部分がなくなる。これにより、チップ2がチップホルダ3を遠心方向と逆方向に押す力がなくなるので、チップホルダ押圧用弾性部材45は、チップホルダ3を遠心方向に押圧することになり、同時にチップ押圧用弾性部材44もチップ2を遠心方向に押圧することになる。その結果、チップホルダ3は遠心方向に位置する保持台4に当接され、チップ2は遠心方向に位置するチップホルダ3に当接され、フック21とロック46とが引っかかり状態となる。従って、このようなフック21とロック46とが引っかかり状態となったとき、図14に示すように、チップホルダ押圧用弾性部材45の変位は、当初のAの変位に戻り、さらに、チップ押圧用弾性部材44の変位も当初のCの変位に戻ることになる。
【0022】
次に、チップ2を取り出す工程について説明する。図10に示す状態で、チップホルダ3を遠心方向と逆方向に押していくと、チップホルダ3を押圧していたチップホルダ押圧用弾性部材45が撓みつつ、チップ押圧用弾性部材44も押圧されて撓む。従って、図14に示すように、チップホルダ3の移動に伴って、チップホルダ押圧用弾性部材45は、AからBの変位に向かって撓み、さらにチップ押圧用弾性部材44は、CからDの変位に向かって撓む。
次に、図11に示すように、チップホルダ3を押し切ってチップホルダ3が可動できるところまで移動させると、チップホルダ3の移動に伴ってチップ2も移動されることから、フック21とロック46との引っかかり状態がなくなる。チップ押圧用弾性部材44は、傾斜した板バネであり、その機能はチップ2を傾斜した板ばねに対して垂直方向(図11では紙面右下から左上に向かう方向)に押圧するものである。従って、チップ押圧用弾性部材44には、遠心方向に向かって押圧する成分と、遠心方向に対して垂直方向(図11の紙面上側)に向かって押圧する成分とがある。このため、図14に示すDの変位には、遠心方向に向かう変位と、遠心方向に対して垂直方向への変位とがあり、図11に示すように、チップ押圧用弾性部材44を撓ませた状態でフック21とロック46の引っかかり状態がなくなったとき、図14のDの変位のうち、遠心方向に対して垂直方向へ変位していた分の付勢が生じ、図12に示すように、チップ押圧用弾性部材44が紙面上側に向かってチップ2を押圧し、チップ2をロック46の垂直方向に延びる面462に沿ってフック21が移動する。このチップ押圧用弾性部材44の押圧による移動が終わると、チップ押圧用弾性部材44へは、遠心方向に向かう変位が残っているので、図14に示すように、チップ押圧用弾性部材44の変位はEになる。さらに、フック21を垂直方向に移動させるに従って、フック21のテーパー部211とロック46のテーパー部461とが対向されたときに、チップホルダ押圧用弾性部材45がチップホルダ3を押圧する力によって、フック21のテーパー部211とロック46のテーパー部461とが摺動され、このテーパー部211、461の摺動に伴って、チップ2とチップホルダ3が遠心方向に移動される。その移動に伴って、図14に示すようにチップホルダ押圧用弾性部材45は、その変位をBからAに変化させ、さらにチップ押圧用弾性部材44は、その変位をEからCに変化させる。そして、その結果、図13に示すように、この両テーパー部211、461の摺動を終え、チップ2は上方向に持ち上げられ、取り出すことができる。このようにチップ2が取り出されることで、図14に示すように、チップホルダ押圧用弾性部材45の変位は、当初のAの変位に戻り、さらに、チップ押圧用弾性部材44の変位も当初のCの変位に戻ることになる。
なお、上記では、フック21とロック46との引っかかり状態を無くす工程(図11)で、チップホルダ3を押圧していたが、チップ2を遠心方向と逆方向に押圧しても(但し、チップ2の重力方向への押圧が弱い場合)、フック21とロック46との引っかかり状態を無くすことができる。
【0023】
このように、本実施形態に係るチップを用いた検査装置によれば、チップ2のフック21と、保持台4に固定されたロック46と、遠心方向及び遠心方向と逆方向に移動可能な構成、換言すると、回転軸に対して垂直方向への移動可能な構成と、チップホルダ3を保持台4に対して遠心方向に押圧するチップホルダ押圧用弾性部材45と、チップ2を遠心方向及び遠心方向に対して垂直方向に押圧するチップ押圧用弾性部44と、を備えることによって、チップ2の飛び出しを防止でき、且つ、チップ2の取り付け・取り出しを良好に行なうことができる。特に、チップ2を取り出すときに、チップ押圧用弾性部材44がチップ2を垂直方向に押圧することによって、チップ2の垂直方向への取り出しを補助することができ、チップ2の取り出しを容易に行なうことができる。
【0024】
なお、処理された試料を検知する工程において、チップ2が所期の位置にいないと、検知が行なえないことがあるが、本装置では、チップホルダ3をチップホルダ押圧用弾性部材45によって保持台4に押圧することによって、チップホルダ3を保持台4に位置決めし、チップ2をチップ押圧用弾性部材44によってチップホルダ3に押圧することによって、チップ2をチップホルダ3に位置決めされる。これにより、結果的に、本装置では、チップ2を保持台4に位置決めすることができる。
【0025】
また、保持台4を回転させると、チップホルダ3には、回転方向(図4における紙面左右方向)にも力がかかり、縦置きに対応したチップホルダ3も縦長になり、回転方向への力が大きくかかって、撓むことがある。このため、チップホルダ3の回転方向における側面に、保持台4に固定された梁47を当接させることによって、チップホルダ3が回転方向に撓むことを抑制することができる。
【0026】
なお、本発明に係るチップを用いた検査装置には、試料として、その用途に応じたものを用いることができる。例えば医学用途においては、血液や尿などの体液を試料として用いることができ、また、例えば環境用途においては、河川の水などを試料として用いることができ、さらにまた、例えば食品用途においては、食品に付着したカビなどを溶媒に溶かし、そのカビを溶かした溶媒を試料として用いることができる。
本発明に係るチップを用いた検査装置は、チップに遠心力を効果的に付加できることから、例えば血液のように、血漿を含む液体と血球を含む液体との複数の液体で構成される場合、遠心力を付加することでそれぞれの液体で分離させ、一方の成分を検査することができるものである。人体から得られる体液は例えば数分〜数十分で500Gのような大きな遠心力を付加することで分離されるものであり、試料を貯留するチップにも500Gのような大きな遠心力が付加される。本発明に係るチップを用いた検査装置は、上述のように、遠心力によるチップの飛び出しを抑制するものであるので、付加される遠心力が大きな血液や尿などの体液を試料する用途においては、特に好適に用いることができる。
【符号の説明】
【0027】
1 チップを用いた検査装置
2 チップ(マイクロチップ)
21 フック
3 チップホルダ
31 突出部
32 摺動部
4 保持台
41 円板状部分
42 円筒状部分
43 開口部分
44 チップ押圧用弾性部材
45 チップホルダ押圧用弾性部材
46 ロック
5 測定室ベース板
6 脚
7 測定室
71 貫通孔
72 貫通孔
8 回転駆動部(モータ)
81 回転軸
9 測光部
91 光源部
92 基板
93 ハーフミラー
94 レンズ(平凸レンズ)
95 検知部
10 蓋部

【特許請求の範囲】
【請求項1】
平板状のチップを複数個セットさせると共に、前記チップの内部に封入された試料に対して光照射することによって試料成分を測定するチップを用いた検査装置であって、
前記チップを収納するチップホルダと、
該チップホルダが複数個並べて載置された保持台と、
該保持台を回転軸を中心に回転させる回転駆動部と、
前記チップに光を照射し、照射の結果得られた光を検知する測光部と、
前記保持台上であって前記チップの重心よりも前記保持台の回転中心に近い位置に形成されたロック機構と、を備え、
該ロック機構は、前記保持台に設けられたロックと、該ロックに引っ掛かる前記チップに設けられたフックと、を備え、
前記チップの脱着時に、前記チップホルダは、前記保持台に対して前記回転軸に対して垂直方向に移動可能であることを特徴とするチップを用いた検査装置。
【請求項2】
前記保持台に、該保持台が回転された時に、前記チップホルダが前記保持台に位置決めされた状態で、前記チップホルダにかかる遠心方向と同方向に前記チップホルダを押圧するチップホルダ押圧弾性部材を備えた
ことを特徴とする請求項1に記載のチップを用いた検査装置。
【請求項3】
前記保持台に、該保持台が回転された時に、前記チップにかかる遠心方向と同方向に押圧するチップ押圧用弾性部材を備えた
ことを特徴とする請求項1または請求項2に記載のチップを用いた検査装置。
【請求項4】
前記チップ押圧用弾性部材は、遠心方向に対して垂直方向にも押圧することを特徴とする請求項3に記載のチップを用いた検査装置。
【請求項5】
前記保持台に、該記保持台が回転された時に、前記チップホルダの回転方向への押圧を抑制する梁を設けたことを特徴とする請求項1ないし請求項4のいずれか1つの請求項に記載のチップを用いた検査装置。

【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate

【図9】
image rotate

【図10】
image rotate

【図11】
image rotate

【図12】
image rotate

【図13】
image rotate

【図14】
image rotate

【図15】
image rotate

【図16】
image rotate


【公開番号】特開2011−75476(P2011−75476A)
【公開日】平成23年4月14日(2011.4.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−229312(P2009−229312)
【出願日】平成21年10月1日(2009.10.1)
【出願人】(000102212)ウシオ電機株式会社 (1,414)
【Fターム(参考)】