説明

チャンネル切替用マルチキャスト配信装置、マルチキャスト受信装置及びチャンネル切替用マルチキャスト配信方法

【課題】インターネットテレビ放送等において迅速なチャンネル切替に貢献すると共に、データ送信処理にかかる負荷の軽減、通信手順の簡略化を図る。
【解決手段】チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループ100を受信する受信手段と、該受信した第1のマルチキャストグループ100のマルチキャストデータを蓄積する記憶手段と、該記憶手段からマルチキャストデータを読出し、一定時間遅延させる遅延手段と、該遅延させたマルチキャストデータを、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループ200で送信する送信手段とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チャンネル切替用マルチキャスト配信装置、マルチキャスト受信装置及びチャンネル切替用マルチキャスト配信方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、ブロードバンド通信網の発達によって、大容量の映像コンテンツをIP(Internet Protocol)網経由で配信するサービスの要求が高まっている。その映像コンテンツ配信サービスにおいて、予め配信時間が決められている場合には、IPマルチキャスト方式によって同じ映像コンテンツを同時に且つ多数の視聴者へ効率的に配信することができる。例えば、インターネットを利用したテレビ放送(以下、「インターネットテレビ放送(IPTV)」)では、一サービスとして、番組表に従って複数のチャンネルで各々の番組が同時に配信されている(放送波の場合と同等)。これは、各チャンネルで別々のマルチキャストアドレスを用いることにより、複数のチャンネルの各々に対応するマルチキャストグループを構成している。そのチャンネル切替は、新たに視聴するチャンネルのマルチキャストグループに参加することで行われる。これにより、視聴者は、IPTV受像機で任意のチャンネルを選択することができ、自由にチャンネルを切り替えて各チャンネルの番組を視聴することができる。なお、チャンネル切替時に、それまで視聴していたチャンネルのマルチキャストグループから離脱するか否かは任意である。
【0003】
ただし、そのチャンネル切替時には、IPTV受像機におけるデータ蓄積等の要因で、新たなチャンネルの番組再生の開始に遅れが生じる。例えば、デジタル圧縮符号化された映像コンテンツの復号用データの蓄積や、伝送誤り対策の誤り訂正符号の復号のためのデータ蓄積等、もしくはデータ到達間隔のゆらぎを補正するための再生バッファリング等に時間がかかっている。このため、迅速なチャンネル切替を実現するための従来のチャンネル切替技術が特許文献1、2に開示されている。
【特許文献1】特開2004−80785号公報
【特許文献2】特開2005−124193号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、上述した従来のチャンネル切替技術では、各視聴者からの新たなチャンネルへの切替要求に対し、チャネル切替用配信サーバが個々に応答して、ビデオデータをユニキャストで送信するために、各視聴者のチャンネル切替に対する個別のデータ送信処理が発生し、多数の視聴者から同時にチャンネル切替要求があった場合には、チャネル切替用配信サーバに多大な負荷がかかる。
【0005】
さらに、従来のチャンネル切替技術では、視聴者からチャネル切替用配信サーバに対して新たなチャンネルへの切替要求を送信する必要があり、新たなマルチキャストグループへの参加のみの単純な通信手順でチャンネル切替を実現することができず、通信手順が複雑である。
【0006】
本発明は、このような事情を考慮してなされたもので、その目的は、インターネットテレビ放送等において迅速なチャンネル切替に貢献すると共に、データ送信処理にかかる負荷の軽減、通信手順の簡略化を図ることのできるチャンネル切替用マルチキャスト配信装置、マルチキャスト受信装置及びチャンネル切替用マルチキャスト配信方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記の課題を解決するために、本発明に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信装置は、マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信装置であり、第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する受信手段と、該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する記憶手段と、前記記憶手段からマルチキャストデータを読出し、一定時間遅延させる遅延手段と、該遅延させたマルチキャストデータを、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する送信手段と、を備えたことを特徴とする。
【0008】
本発明に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信装置は、マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信装置であり、第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する受信手段と、該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する記憶手段と、前記記憶手段からマルチキャストデータを読出し、データを並び替えるデータ変更手段と、該変更されたマルチキャストデータを、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する送信手段と、を備え、前記送信手段は、前記第1のマルチキャストグループよりも高速で、前記第2のマルチキャストグループを送信し、前記データ変更手段は、前記各マルチキャストグループの速度に応じたデータの並び替えを行うことを特徴とする。
【0009】
本発明に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信装置においては、前記第1のマルチキャストグループと前記第2のマルチキャストグループは、異なるマルチキャストアドレスを有することを特徴とする。
【0010】
本発明に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信装置においては、前記第1のマルチキャストグループと前記第2のマルチキャストグループは、同じマルチキャストアドレスを有することを特徴とする。
【0011】
本発明に係るマルチキャスト受信装置は、マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるマルチキャスト受信装置であり、マルチキャストグループを受信する受信手段と、該受信したマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する記憶手段と、を備え、チャンネル切替時に、新たなチャンネルに対応するマルチキャストグループに参加すると共に、該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストグループにも参加し、該両方のマルチキャストグループを受信することを特徴とする。
【0012】
本発明に係るマルチキャスト受信装置は、マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるマルチキャスト受信装置であり、マルチキャストグループを受信する受信手段と、該受信したマルチキャストグループを転送する転送手段と、を備え、チャンネル切替時に、新たなチャンネルに対応するマルチキャストグループに参加すると共に、該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストグループにも参加し、該両方のマルチキャストグループを受信し、該受信したチャンネル切替用のマルチキャストグループについては、新たなチャンネルに対応するマルチキャストグループと同じマルチキャストアドレスに変更して転送することを特徴とする。
【0013】
本発明に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信方法は、マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信方法であって、第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する過程と、該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する過程と、前記蓄積されたマルチキャストデータを、一定時間遅延させて、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する過程と、を含むことを特徴とする。
【0014】
本発明に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信方法は、マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信方法であって、第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する過程と、該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する過程と、前記蓄積されたマルチキャストデータを並び替える過程と、該変更されたマルチキャストデータを、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する過程と、を含み、前記第1のマルチキャストグループよりも高速で、前記第2のマルチキャストグループを送信し、前記各マルチキャストグループの速度に応じたマルチキャストデータの並び替えを行うことを特徴とする。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、インターネットテレビ放送等において迅速なチャンネル切替に貢献すると共に、データ送信処理にかかる負荷の軽減、通信手順の簡略化を図ることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、図面を参照し、本発明の実施形態について説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1の構成を示すブロック図である。図1において、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、送受信部11とメモリ12と送信データ生成部14とプロセッサ15を備える。送受信部11は、データの送受信を行う。メモリ12は、マルチキャストデータ蓄積部13を有し、送受信部11で受信されたマルチキャストデータをマルチキャストデータ蓄積部13に格納する。送信データ生成部14は、マルチキャストデータ蓄積部13に格納されたマルチキャストデータから、送受信部11で送信するチャンネル切替用マルチキャストデータを生成する。プロセッサ15は、サーバ1全体の制御を行う。
【0017】
以下、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1について各実施形態を挙げて詳細に説明する。
【0018】
[第1実施形態]
図2は、本発明の第1実施形態に係るIPTVシステムの全体構成を示すブロック図である。図2において、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1、コンテンツ配信サーバ2及び視聴者装置3は、IPマルチキャスト対応の通信ネットワーク4に接続されている。各装置1〜3及び通信ネットワーク4は、IPマルチキャスト方式として一般的なIGMP(Internet Group Management Protocol)に対応している。
【0019】
コンテンツ配信サーバ2は、インターネットテレビ放送で提供する番組をマルチキャストグループ(マルチキャストGp)100で、通信ネットワーク4を介して各視聴者装置3に配信する。コンテンツ配信サーバ2は、複数のチャンネルを提供することができる。マルチキャストGp100は、チャンネル毎に設けられる。各チャンネルのマルチキャストGp100は、それぞれ異なるマルチキャストアドレスを有する。
【0020】
チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、コンテンツ配信サーバ2から直接にマルチキャストGp100を受信する。なお、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、通信ネットワーク4を介してマルチキャストGp100に参加し、通信ネットワーク4からマルチキャストGp100を受信するようにしてもよい。
【0021】
図1のチャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1において、送受信部11は、マルチキャストGp100を受信し、マルチキャストGp100のマルチキャストデータをメモリ12に書き込む。マルチキャストデータは、所属するマルチキャストGp100毎に区別されて、メモリ12内のマルチキャストデータ蓄積部13に格納される。
【0022】
送信データ生成部14は、マルチキャストGp100毎に、メモリ12からマルチキャストデータを読出し、各々のマルチキャストGp100対応のチャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータを生成する。チャンネル切替用マルチキャストGp200は、マルチキャストGp100とは異なる固有のマルチキャストアドレスを有する。
【0023】
送信データ生成部14は、メモリ12から読み出したマルチキャストデータを、一定時間遅延させて、送受信部11に出力する。送受信部11は、チャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータを通信ネットワーク4に送信する。
【0024】
視聴者装置3は、マルチキャストGp100への参加(Join)命令110を通信ネットワーク4に送信することで、マルチキャストGp100を受信する。ここで、チャンネル切替が発生した場合、視聴者装置3は、新たなチャンネルのマルチキャストGp100への参加命令110と共に、当該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストGp200への参加命令210を通信ネットワーク4に送信する。これにより、視聴者装置3は、新たなチャンネルのマルチキャストGp100と、当該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストGp200を両方受信する。
【0025】
図3には、マルチキャストGp100のマルチキャストデータと、そのマルチキャストGp100対応のチャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータとの間の時間軸上の関係が示されている。図3に示されるように、チャンネル切替用マルチキャストGp200は、マルチキャストGp100から一定時間だけ遅れている。この遅延は、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1で付加される。
【0026】
従って、視聴者装置3は、マルチキャストGp100で配信されるデータよりも過去のデータを、チャンネル切替用マルチキャストGp200で受信する。これにより、視聴者装置3は、マルチキャストGp100及びチャンネル切替用マルチキャストGp200を並行して受信することで、チャンネル切替時のデータ蓄積を、従来よりも速い速度で行うことができる。
【0027】
図3の例では、チャンネル切替用マルチキャストGp200は、マルチキャストGp100から3パケット分遅延している。図3において、マルチキャストGp100で新たなチャンネルの4番目から6番目のパケットを受信した時(t1)には、チャンネル切替用マルチキャストGp200で同じチャンネルの1番目から3番目のパケットを受信している。つまり、マルチキャストGp100で3個のパケット(4番目から6番目)を受信する時間で、チャンネル切替用マルチキャストGp200から受信するパケットを含めて合計6個のパケット(1番目から6番目)を受信することができ、視聴者装置3においてチャンネル切替時のデータ蓄積速度が上がる。これにより、チャンネル切替時において、新たなチャンネルの再生開始に必要な一定量のデータ蓄積にかかる時間が短縮されるので、新たなチャンネルの再生開始までの待ち時間が減り、迅速なチャンネル切替を実現することができる。
【0028】
また、上述の第1実施形態によれば、チャンネル切替時の蓄積用データ送信をマルチキャストで行うので、各視聴者のチャンネル切替に対する個別のデータ送信処理は不要である。これにより、多数の視聴者が同時にチャンネル切替を行ったとしても、サーバにかかる負荷は変わらず、問題ない。
【0029】
また、視聴者からサーバに対して新たなチャンネルへの切替要求を送信することは不要であり、新たなマルチキャストグループへの参加のみの単純な通信手順でチャンネル切替を実現することができる。
【0030】
なお、一つのチャンネルについてのチャンネル切替時の蓄積用データを、複数のチャンネル切替用マルチキャストGp200で配信してもよい。この場合、視聴者装置3は、チャンネル切替時に、同じチャンネルの複数のチャンネル切替用マルチキャストGp200に参加することで、さらに高速にデータ蓄積を行うことができ、新たなチャンネルの再生開始までの待ち時間を一層短縮させることが可能になる。
【0031】
ここで、図4を用いて、上述の第1実施形態の応用例を示す。図4では、視聴者側に、マルチキャスト受信装置30と視聴者装置31の組合せを設けている。図4において、視聴者装置31は、チャンネル切替が発生した場合、新たなチャンネルのマルチキャストGp100への参加命令110のみを送信する。マルチキャスト受信装置30は、その参加命令110を受信すると、新たなチャンネルのマルチキャストGp100への参加命令110と共に、当該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストGp200への参加命令210を通信ネットワーク4に送信する。これにより、マルチキャスト受信装置30は、新たなチャンネルのマルチキャストGp100と、当該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストGp200を両方受信する。
【0032】
そして、マルチキャスト受信装置30は、マルチキャストGp100についてはそのまま視聴者装置31に転送する。一方、マルチキャストGp200については、マルチキャストGp100と同じマルチキャストアドレスに変更して、視聴者装置31に転送する。図4中では、視聴者装置31に転送されるマルチキャストGp100aは、マルチキャストGp100と同じマルチキャストアドレスであるが、マルチキャストGp100及び200の両方のデータを有する。これにより。視聴者装置31は、新たなチャンネルのマルチキャストGp100に参加するだけで、マルチキャストGp100とチャンネル切替用のマルチキャストGp200の両方のデータを受信することができる。
なお、マルチキャスト受信装置30は、視聴者装置31からの離脱要求、もしくはその他のデータ通信に関しては、単なるブリッジ動作を行う。
【0033】
[第2実施形態]
図5は、本発明の第2実施形態に係るIPTVシステムの全体構成を示すブロック図である。図5に示すように第2実施形態では、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、通信ネットワーク4に接続するルータ5に接続して配置されている。また、ルータ5には、視聴者装置3も接続されている。
【0034】
図5において、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、2つのポートを有する。一方のポートは、視聴者装置3の通信をルータ5でミラーし受信する。もう一方のポートは、通常の通信に使用し、通信ネットワーク4に向かうポートと同一ネットワークセグメントに属するルータ5のポートに接続する。
【0035】
チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、上述の第1実施形態と同様に、マルチキャストGp100で受信したマルチキャストデータを、一定時間遅延させて、チャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータとして送信する。但し、本第2実施形態では、チャンネル切替用マルチキャストGp200には、マルチキャストGp100と同じマルチキャストアドレスを用いる。従って、視聴者装置3は、チャンネル切替時に、新たなチャンネルのマルチキャストGp100への参加命令110を送信するだけで、新たなチャンネルのマルチキャストGp100及びチャンネル切替用マルチキャストGp200の両方を受信することができる。これにより、通信手順がさらに簡単になる。
【0036】
通常のマルチキャスト転送では、データのループを防止するために、RPF(Reverse Path Forwarding)チェックを各ルータで行う。そのため、チャンネル切替用マルチキャストGp200をルータ5によって正常に転送を行わせるためには、ルータ5において通信ネットワーク4に向かうポートと同一ネットワークセグメントを有するポートに転送する必要がある。
【0037】
図5に示す構成では、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1が送信したチャンネル切替用マルチキャストGp200は、再度、当該チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1に到達する。しかしながら、実際にチャンネル切替用マルチキャストGp200が動作する時間は、ほんの一瞬であり、ループ等は問題にならないこともある。一方、ループを回避するためには、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1に、自分の送信したデータを再度送信しないように、チェック機能を設ければよい。例えば、送信したデータの識別子フィールドを用いるか、もしくは転送データにマーキングをつけてチャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1から送信するなどが挙げられる。他の方法としては、マルチキャストGp100を直接の参加要求(Join)によってではなく、ルータ5の通信ネットワーク4からの入力ポートをミラーして受信する方法(別途ポートを設けるなど)がある。この方法では、ルータ5までマルチキャストを送信させる必要があるので、例えば、ルータ5に当該参加要求を送信する必要がある。
【0038】
次に、図6を参照して、図5に示すIPTVシステムのチャンネル切替時の動作を説明する。
図6は、第2実施形態に係るチャンネル切替時の処理シーケンス図である。図6には、視聴者が、視聴するチャンネルをチャンネル1からチャンネル2に切替える場合が例示されている。なお、図6では、説明の便宜上、コンテンツ配信サーバ2とチャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1間のルータ5経由のシーケンスを省略している。
【0039】
まず、視聴者装置3は、チャンネル1のマルチキャストGp100に参加しており、ルータ5経由でチャンネル1のマルチキャストGp100を受信し、チャンネル1の番組を再生している(このシーケンスは図示せず)。また、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、チャンネル1,2を含む全チャンネルのマルチキャストGp100に参加しており、全チャンネルのマルチキャストGp100を受信している(ステップS1)。
【0040】
ここで、視聴者が、視聴するチャンネルをチャンネル1からチャンネル2に切替える。これにより、視聴者装置3は、チャンネル2のマルチキャストGp100への参加(Join)命令110を送信する(ステップS2)。この参加命令110は、ルータ5で受信され、ルータ5のミラー機能によって、ルータ5からチャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1に送信される(ステップS3)。ルータ5は、その参加命令110に応じて、チャンネル2のマルチキャストGp100の転送を開始する(ステップS4)。
【0041】
また、視聴者装置3は、チャンネル1のマルチキャストGp100からの離脱(Leave)命令を送信する(ステップS5)。この離脱命令は、ルータ5で受信され、ルータ5のミラー機能によって、ルータ5からチャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1に送信される(ステップS6)。ルータ5は、その離脱命令に応じて、チャンネル1のマルチキャストGp100の転送を停止する(ステップS7)。
【0042】
チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、ルータ5からのチャンネル2に係る参加命令110に応じて、チャンネル2のチャンネル切替用マルチキャストGp200の配信を開始する(ステップS8)。このチャンネル切替用マルチキャストGp200は、ルータを経由して視聴者装置3に転送される。
【0043】
この結果、視聴者装置3は、チャンネル2のマルチキャストGp100及びチャンネル切替用マルチキャストGp200を両方受信する。これにより、視聴者装置3において、チャンネル切替時のデータ蓄積速度が向上し、新たなチャンネルの再生開始に必要な一定量のデータ蓄積にかかる時間が短縮され、迅速なチャンネル切替を実現することができる。
【0044】
また、同じチャンネルに係る参加命令が複数の視聴者装置3から発生しても、マルチキャストでチャンネル切替時の蓄積用データ送信を行っているので、個別のデータ送信処理は不要である。
【0045】
なお、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、チャンネル切替用マルチキャストGp200の配信開始時に、視聴者装置3のデータ蓄積に十分な時間を計時するタイマを起動し、そのタイムアウト時に当該配信を終了する。このとき、配信終了前に、他の視聴者装置3からの参加命令があったときには、タイマを再起動し、チャンネル切替用マルチキャストGp200の配信を継続する。
【0046】
また、チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1は、チャンネル毎に、各視聴者装置3からの参加命令と離脱命令を管理して各視聴者の視聴チャンネルを把握し、必要に応じてチャンネル切替用マルチキャストGp200を配信するようにする。これは、既に視聴しているチャンネルに対しても、参加命令が送出される場合があるためである。
【0047】
次に、チャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータ構成の変形例を説明する。
【0048】
上述の図3に示される構成では、マルチキャストGp100のマルチキャストデータに対して、特にパケットの並び替えを行うことなく、単に遅延させるのみで、チャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータを構成した。また、マルチキャストGp100とチャンネル切替用マルチキャストGp200の送信速度は同じであった。ここでは、チャンネル切替用マルチキャストGp200の送信速度を上げると共に、パケットの並び替えを行うことによって、視聴者装置3におけるチャンネル切替時のデータ蓄積速度の向上を図る。
【0049】
図7には、チャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータの構成例が示されている。
【0050】
図7(a)では、チャンネル切替用マルチキャストGp200の送信速度をマルチキャストGp100の送信速度の3倍にすると共に、各マルチキャストGpの速度に応じたパケットの並び替えを行う。図7(a)において、例えば、マルチキャストGp100で4番目のパケットを受信する期間で、チャンネル切替用マルチキャストGp200により1番目から3番目のパケットを受信するように、パケットが並び替えられている。これにより、マルチキャストGp100で4番目のパケットを受信する期間で、チャンネル切替用マルチキャストGp200の受信分を含めて1番目から4番目までの4つのパケットを受信し、蓄積することができる。この結果、データ蓄積速度は4倍になる。
【0051】
図7(b)では、チャンネル切替用マルチキャストGp200の送信速度をマルチキャストGp100の送信速度の2倍にすると共に、各マルチキャストGpの速度に応じたパケットの並び替えを行う。図7(b)において、例えば、マルチキャストGp100で4番目と5番目のパケットを受信する期間で、チャンネル切替用マルチキャストGp200により0番目から3番目のパケットを受信するように、パケットが並び替えられている。これにより、マルチキャストGp100で4番目と5番目のパケットを受信する期間で、チャンネル切替用マルチキャストGp200の受信分を含めて0番目から5番目までの6つのパケットを受信し、蓄積することができる。この結果、データ蓄積速度は3倍になる。
【0052】
図7(c)では、チャンネル切替用マルチキャストGp200の送信速度をマルチキャストGp100の送信速度の3倍にすると共に、各マルチキャストGpの速度に応じたパケットの並び替えを行う。図7(c)において、例えば、マルチキャストGp100で4番目のパケットを受信してから5番目のパケット受信時点までで、チャンネル切替用マルチキャストGp200により0番目から3番目のパケットを受信するように、パケットが並び替えられている。これにより、マルチキャストGp100で4番目のパケットを受信してから5番目のパケット受信時点までで、チャンネル切替用マルチキャストGp200の受信分を含めて0番目から5番目までの6つのパケットを受信し、蓄積することができる。この結果、データ蓄積速度はバースト的に4倍強になる。
【0053】
次に、視聴者装置3における再生方法の一例を説明する。
【0054】
ここでは、図8を参照して、視聴者装置3の再生器が、データ蓄積なしでも再生を開始するタイプである場合を説明する。図8は、視聴者装置3における再生方法の一例を説明するための説明図である。図8では、チャンネル切替用マルチキャストGp200は、マルチキャストGp100と同じ送信速度であると共に、マルチキャストGp100から4パケット分遅延している。
【0055】
図8において、マルチキャストGp100で6番目のパケット配信時に、チャンネル切替に伴う参加命令が視聴者装置3から発生している。これにより、視聴者装置3は、マルチキャストGp100で6番目のパケットから受信し始めると共に、チャンネル切替用マルチキャストGp200で2番目のパケットから受信し始める。視聴者装置3は、マルチキャストGp100及びチャンネル切替用マルチキャストGp200で受信したパケットを受信(再生)バッファに格納する。受信(再生)バッファは、再生用の通常のデータ蓄積量である4つのパケットを蓄積することができる。
【0056】
視聴者装置3の再生器は、受信(再生)バッファにパケットが格納されると、最も過去のパケットである2番目のパケットから、順番に読み出して再生を行う。これにより、チャンネル切替用マルチキャストGp200で受信された2番目から5番目までのパケットがまず再生される。この2番目から5番目までのパケットの再生期間中において、マルチキャストGp100で受信された6番目から9番目までのパケットは、受信(再生)バッファに蓄積される。これにより、再生用の通常のデータ蓄積量が確保され、安定した番組再生が可能になる。
【0057】
視聴者装置3は、チャンネル切替用マルチキャストGp200で4つのパケットを受信すると、当該マルチキャストGp200から離脱する。これ以降は、マルチキャストGp100のみの受信になる。
【0058】
この再生方法によれば、チャンネル切替時において、受信(再生)バッファに再生用の通常のデータ蓄積量を溜めながら、チャンネル切替発生とほぼ同時に再生を開始することができる。そのデータ蓄積用にはマルチキャストGp100を利用し、初期の再生用にはチャンネル切替用マルチキャストGp200を利用する。このように、本発明によれば、迅速なチャンネル切替と安定した番組再生の両方を実現することが可能になる。
【0059】
以上、本発明の実施形態を図面を参照して詳述してきたが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、インターネットテレビ放送を例に挙げて説明したが、本発明は、マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供する各種システムに適用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0060】
【図1】本発明の一実施形態に係るチャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ1の構成を示すブロック図である。
【図2】本発明の第1実施形態に係るIPTVシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図3】同実施形態に係るマルチキャストグループ100,200間の時間軸上の関係を示す図である。
【図4】本発明の第1実施形態に係るIPTVシステムの応用例を示すブロック図である。
【図5】本発明の第2実施形態に係るIPTVシステムの全体構成を示すブロック図である。
【図6】同実施形態に係るチャンネル切替時の処理シーケンス図である。
【図7】本発明に係るチャンネル切替用マルチキャストGp200のマルチキャストデータの構成例を示す図である。
【図8】視聴者装置3における再生方法の一例を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0061】
1…チャンネル切替用マルチキャスト配信サーバ、2…コンテンツ配信サーバ、3…視聴者装置(マルチキャスト受信装置)、4…通信ネットワーク、5…ルータ、11…送受信部、12…メモリ、13…マルチキャストデータ蓄積部、14…送信データ生成部、15…プロセッサ、30…マルチキャスト受信装置


【特許請求の範囲】
【請求項1】
マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信装置であり、
第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する受信手段と、
該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する記憶手段と、
前記記憶手段からマルチキャストデータを読出し、一定時間遅延させる遅延手段と、
該遅延させたマルチキャストデータを、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する送信手段と、
を備えたことを特徴とするチャンネル切替用マルチキャスト配信装置。
【請求項2】
マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信装置であり、
第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する受信手段と、
該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する記憶手段と、
前記記憶手段からマルチキャストデータを読出し、データを並び替えるデータ変更手段と、
該変更されたマルチキャストデータを、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する送信手段と、を備え、
前記送信手段は、前記第1のマルチキャストグループよりも高速で、前記第2のマルチキャストグループを送信し、
前記データ変更手段は、前記各マルチキャストグループの速度に応じたデータの並び替えを行う、
ことを特徴とするチャンネル切替用マルチキャスト配信装置。
【請求項3】
前記第1のマルチキャストグループと前記第2のマルチキャストグループは、異なるマルチキャストアドレスを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチャンネル切替用マルチキャスト配信装置。
【請求項4】
前記第1のマルチキャストグループと前記第2のマルチキャストグループは、同じマルチキャストアドレスを有することを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のチャンネル切替用マルチキャスト配信装置。
【請求項5】
マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるマルチキャスト受信装置であり、
マルチキャストグループを受信する受信手段と、
該受信したマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する記憶手段と、を備え、
チャンネル切替時に、新たなチャンネルに対応するマルチキャストグループに参加すると共に、該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストグループにも参加し、該両方のマルチキャストグループを受信する、
ことを特徴とするマルチキャスト受信装置。
【請求項6】
マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるマルチキャスト受信装置であり、
マルチキャストグループを受信する受信手段と、
該受信したマルチキャストグループを転送する転送手段と、を備え、
チャンネル切替時に、新たなチャンネルに対応するマルチキャストグループに参加すると共に、該新たなチャンネルへのチャンネル切替用のマルチキャストグループにも参加し、該両方のマルチキャストグループを受信し、
該受信したチャンネル切替用のマルチキャストグループについては、新たなチャンネルに対応するマルチキャストグループと同じマルチキャストアドレスに変更して転送する、
ことを特徴とするマルチキャスト受信装置。
【請求項7】
マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信方法であって、
第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する過程と、
該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する過程と、
前記蓄積されたマルチキャストデータを、一定時間遅延させて、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する過程と、
を含むことを特徴とするチャンネル切替用マルチキャスト配信方法。
【請求項8】
マルチキャスト方式で複数のチャンネルを提供するシステムにおけるチャンネル切替用マルチキャスト配信方法であって、
第1のチャンネルに対応する第1のマルチキャストグループを受信する過程と、
該受信した第1のマルチキャストグループのマルチキャストデータを蓄積する過程と、
前記蓄積されたマルチキャストデータを並び替える過程と、
該変更されたマルチキャストデータを、前記第1のチャンネルへのチャンネル切替用の第2のマルチキャストグループで送信する過程と、を含み、
前記第1のマルチキャストグループよりも高速で、前記第2のマルチキャストグループを送信し、
前記各マルチキャストグループの速度に応じたマルチキャストデータの並び替えを行う、
ことを特徴とするチャンネル切替用マルチキャスト配信方法。



【図1】
image rotate

【図2】
image rotate

【図3】
image rotate

【図4】
image rotate

【図5】
image rotate

【図6】
image rotate

【図7】
image rotate

【図8】
image rotate


【公開番号】特開2008−22217(P2008−22217A)
【公開日】平成20年1月31日(2008.1.31)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−191462(P2006−191462)
【出願日】平成18年7月12日(2006.7.12)
【出願人】(000208891)KDDI株式会社 (2,700)
【Fターム(参考)】