説明

チャージポンプとブートストラップキャパシタとを有するハイサイド電力スイッチ

【課題】
【解決手段】電力スイッチング回路(10)が提供される。電力スイッチング回路は、電力半導体スイッチング装置(Q1)と、チャージポンプ回路(CHP)であって、そのオンオフを制御するための制御入力と電力半導体スイッチング装置の制御端子に接続されたチャージポンプ出力とを有するチャージポンプ回路と、電力半導体スイッチング装置のための駆動回路に電力を供給するブートストラップ電力供給装置であって、充電電流源に接続されたブートストラップキャパシタ(CBS)を有すると共に、電力半導体スイッチング装置が駆動回路によってパルスモードでスイッチングされている時に駆動回路に電力を供給するブートストラップ電力供給装置と、電力半導体スイッチング装置(Q1)をオンにするための制御電圧を供給するチャージポンプ(CHP)と、を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、電力スイッチに関し、特に、半導体電力スイッチ、詳しくは、電力MOSFETスイッチに関する。本発明は、特に、過熱や過電流の際の損傷を防止するためのインテリジェント保護回路を備える電力スイッチング装置であるインテリジェント電力スイッチに適用される。
【背景技術】
【0002】
インテリジェント電力スイッチは、電力スイッチング装置のゲートに電流をチャージするための周知の回路であるチャージポンプを用いて、連続的に電力スイッチをオンに維持する。特に、チャージポンプは、供給電圧よりも高い電圧を生成する必要がある場合に、ハイサイドNMOSスイッチにとって必要となる。さらに、パルス動作モードでは、インテリジェント電力スイッチの最大動作周波数は、ポンプのキャパシタ値が小さく、MHzレンジでの動作中でも大きいゲート電流を生成できないため、シリコン集積チャージポンプに対しては約1khzに制限されている。
【0003】
必要な場合に連続動作が可能であり、従来よりもはるかに高い周波数(例えば、20kHzないし50kHzまでのレンジの周波数)でスイッチング可能な電力スイッチング装置(例えば、インテリジェント電力スイッチング装置)を提供することが望まれている。
【0004】
さらに、自動車環境での利用に適した上述のような電力スイッチング装置を提供することが望まれている。
【発明の開示】
【0005】
本発明の目的は、必要な場合に連続動作が可能であり、さらに、例えば、20khzないし50khzのパルス幅変調スイッチング動作などの高速スイッチング動作が可能な電力スイッチング装置を提供することである。
【0006】
本発明の上述および他の目的は、以下の電力スイッチング回路によって実現される。すなわち、該電力スイッチング回路は、電力半導体スイッチング装置と、チャージポンプ回路であって、前記チャージポンプのオンオフを制御するための制御入力と前記電力半導体スイッチング装置の制御端子に接続されているチャージポンプ出力とを有するチャージポンプ回路と、前記電力半導体スイッチング装置のための駆動回路に電力を供給するブートストラップ電力供給装置であって、充電電流源に接続されたブートストラップキャパシタを有すると共に、前記電力半導体スイッチング装置が前記駆動回路によってパルスモードでスイッチングされている時に前記駆動回路に電力を供給するブートストラップ電力供給装置と、前記電力スイッチング装置が連続的にオンに維持される時に、前記電力半導体スイッチング装置をオンにしてオン状態を維持するための制御電圧を供給する前記チャージポンプと、を備える。
【0007】
本発明の目的は、以下の電力半導体をスイッチングするための方法によっても実現される。すなわち、該方法は、チャージポンプ回路であって前記チャージポンプ回路のオンオフを制御するための制御入力を有するチャージポンプ回路から電圧を生成して、前記電圧を前記電力半導体の制御端子に選択的に供給する工程と、前記電力半導体が駆動回路によってパルスモードでスイッチングされている時に、ブートストラップ電力供給装置のブートストラップキャパシタを充電する工程と、前記電力半導体が前記駆動回路によって前記パルスモードでスイッチングされている時に、前記ブートストラップ電力供給装置から前記駆動回路に電力を供給する工程と、前記電力半導体が連続的にオンに維持される時に、前記電力半導体をオンにしてオン状態を維持するための制御電圧を前記チャージポンプ回路から供給する工程と、を備える。
【0008】
本発明の他の目的、特徴、および利点は、以下の詳細な説明から明らかになる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0009】
ここで、図面を参照すると、図1は、本発明に従った回路を示す図である。ロードとキャパシタCBSとを除くすべての構成要素は、図1のIPSと呼ばれる集積回路に組み込まれることが可能である。IPSとは、「インテリジェント電力スイッチ」の略である。
【0010】
本発明に従った回路は、ハーフブリッジ構成の2つのトランジスタQ2およびQ3を用いる駆動回路によって典型的に駆動される主電力スイッチング装置Q1を有する電力スイッチ10を備えている。トランジスタQ1のゲートは、トランジスタQ2およびQ3の間の共通ノードによって駆動される。
【0011】
トランジスタQ1のドレーンは、通例、電圧源VCCに接続されている。ダイオードD1のアノードは、抵抗器Rと直列に電圧源VCCに接続されている。抵抗器Rの他方の端部は、ブートストラップキャパシタCBSに接続されている。第2のダイオードD2は、抵抗器RとキャパシタCBSとの共通の接合点にアノードが接続されている。ダイオードD2のカソードは、ブートストラップ電圧源をトランジスタQ2およびQ3に提供するよう接続されている。図1に示したスイッチ10は、ハイサイドスイッチである。すなわち、図示されたように接地されたロードを通してハイサイド電圧VCCを切り替える。
【0012】
トランジスタQ2およびQ3は、従来の制御回路Cによって制御される。さらに、オン/オフ信号によって制御されるチャージポンプCHPが設けられており、オン/オフ信号は、制御回路Cも制御する。チャージポンプの出力は、トランジスタQ1のゲートに接続された電圧よりも高い一定の電圧である。チャージポンプは、周知の回路である。
【0013】
回路は、以下のように動作する。トランジスタQ1の高速スイッチング時には、パルス電圧がロードに供給される。キャパシタCBSは、トランジスタQ1がオフの時のみ、ダイオードD1および抵抗器Rを介して実質的に充電されうる。トランジスタQ1がオンの時には、ドレーンとソースとの間の電圧は、ほぼゼロであるため、キャパシタCBSは、その期間には実質的には充電されない。しかしながら、トランジスタQ1がオフの時に、キャパシタCBSは、ロードとダイオードD1および抵抗器Rを介して、グランドに対して電圧VCBSまで充電されうる。電圧VCBSは、ダイオードD2を介して、トランジスタQ2およびQ3を備えるハーフブリッジのためのハイサイド電圧源として、トランジスタQ2およびQ3を備える駆動回路に供給される。ブートストラップキャパシタCBSは、トランジスタQ1の20ないし50khzの高スイッチング周波数においても十分な電圧まで充電可能であり、それにより、トランジスタQ2およびQ3に電源が提供される。
【0014】
しかしながら、トランジスタQ1が連続的にオンに制御されている時、すなわち、パルス信号によってオンオフを切り替えられていない時には、トランジスタQ1のドレーンおよびソースの間の電圧はほぼゼロに降下するため、キャパシタCBSは、この期間中には実質的に充電できない。キャパシタCBSは、充電不可能であるため、VCBS=VGSQ1+VFD2まで放電され、ICがキャパシタCBSからの電流をシンクする場合、または、キャパシタCBSの漏電のために、完全に放電されうる。VFD2は、ダイオードD2の順電圧降下である。かかる状況では、トランジスタQ1が連続的な伝導状態にある時にオンにされるチャージポンプCHPが設けられる。チャージポンプの出力からの電圧VCHPがトランジスタQ1のゲートに接続されることにより、トランジスタQ1は連続オン状態に維持される。
【0015】
したがって、本発明の回路は、電力スイッチング装置において、高周波数で電力スイッチング装置をスイッチングすると共に、必要に応じて、電力スイッチング装置が連続伝導モードに維持されることを可能にする能力を提供する。
【0016】
図2は、本発明に従った回路の動作を示すグラフである。電力スイッチQ1をオンにする前の期間中に、キャパシタCBSは、ダイオードD1、抵抗器R、キャパシタCBS、およびロードを含む直列回路を備える分圧器によって決定されるように、中間電圧VCBSIまで充電される。トランジスタQ1がONにされると、ゲート電圧は、図2に示すように、VCBSとMOSFET寄生容量CQ1に対するキャパシタンスCBSの比とによって決まる電圧まで上昇する。長期的には、キャパシタCBSが放電した場合(自己放電した場合またはICへの供給に用いられた場合)に、チャージポンプからの電流のキャパシタCBSへの流れ込みがD2によってブロックされるため、チャージポンプは任意のVCBSに対してVGSQ1=VCHPを維持する。
【0017】
チャージポンプ、ダイオード、およびキャパシタCBSのこの構成の利点は、チャージポンプを用いてキャパシタCBSを充電し続けるのに比べて、信頼性が上昇することである。後者の場合には、ICHPは、キャパシタCBSの漏れ電流を超えてしまう。すなわち、Ileak CBS<ICHP≡数μAとなる。高価なキャパシタおよび良好な実装のみが、特に自動車環境で、この条件を満たしうる。したがって、本発明によると、チャージポンプは、比較的小さい電流を供給するため、ブートストラップキャパシタCBSの充電には用いられない。ダイオードD2は、チャージポンプがブートストラップキャパシタを充電することを阻止する。トランジスタQ1がONになると、ソースは、図2に示すように、追随して電圧VCCに達する。グランドに対して測定される電圧VCBSも上昇する。ソース電圧が上昇すると、VCBSは、トランジスタQ1がONになる前のキャパシタCBSの充電量VCBSIだけソース電圧よりも上昇する。これは、図2に示されている。
【0018】
ダイオードD2は、実際のダイオードである必要はなく、すなわち、Q2が、キャパシタCBSに流れる電流を阻止するよう能動的に制御されてもよい。これにより、電圧降下VFD2が回避され、電力消費が低減されて、比較的低いバッテリ電圧での動作が可能になる。
【0019】
したがって、電力スイッチング回路であって、チャージポンプと、スイッチング回路が連続オンモードと20ないし50khzの範囲のスイッチング周波数との両方で動作することを可能にするブートストラップ電力供給装置と、を備える電力スイッチング回路について説明した。
【0020】
本発明は、特定の実施形態について説明されているが、多くの他の変更例、変形例、および他の利用があることは、当業者にとって明らかである。したがって、本発明は、本明細書の具体的な開示によっては限定されず、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【図1】本発明に従った回路の説明図。
【図2】本発明に従った回路の動作を示すグラフ。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
電力スイッチング回路であって、
電力半導体スイッチング装置と、
チャージポンプ回路であって、前記チャージポンプのオンオフを制御するための制御入力と前記電力半導体スイッチング装置の制御端子に接続されたチャージポンプ出力とを有するチャージポンプ回路と、
前記電力半導体スイッチング装置のための駆動回路に電力を供給するブートストラップ電力供給装置であって、充電電流源に接続されたブートストラップキャパシタを有すると共に、前記電力半導体スイッチング装置が前記駆動回路によってパルスモードでスイッチングされている時に前記駆動回路に電力を供給するブートストラップ電力供給装置と、
前記電力スイッチング装置が連続的にオンに維持される時に、前記電力半導体スイッチング装置をオンにしてオン状態を維持するための制御電圧を供給する前記チャージポンプと、を備え、
前記駆動回路のトランジスタスイッチは、前記チャージポンプが前記ブートストラップキャパシタを充電することを防止するよう能動的に制御される、電力スイッチング回路。
【請求項2】
請求項1に記載の電力スイッチング回路であって、
前記ブートストラップキャパシタは、第1のダイオードによって前記充電電流源に接続されている、電力スイッチング回路。
【請求項3】
請求項2に記載の電力スイッチング回路であって、
前記ブートストラップキャパシタは、チャージングレジスタに直列に接続されている、電力スイッチング回路。
【請求項4】
請求項1に記載の電力スイッチング回路であって、
前記ブートストラップキャパシタは、前記電力スイッチング装置に接続されたロードを介して前記充電電流源から充電される、電力スイッチング回路。
【請求項5】
請求項1に記載の電力スイッチング回路であって、
前記電力スイッチング装置は、前記ロードを電圧源に接続するハイサイドスイッチング装置である、電力スイッチング回路。
【請求項6】
請求項1に記載の電力スイッチング回路であって、
前記電力スイッチング装置は、MOSFETを有する、電力スイッチング回路。
【請求項7】
電力半導体をスイッチングするための方法であって、
チャージポンプ回路であって前記チャージポンプ回路のオンオフを制御するための制御入力を有するチャージポンプ回路から電圧を生成して、前記電圧を前記電力半導体の制御端子に選択的に供給する工程と、
前記電力半導体が駆動回路によってパルスモードでスイッチングされている時に、ブートストラップ電力供給装置のブートストラップキャパシタを充電する工程と、
前記電力半導体が前記駆動回路によって前記パルスモードでスイッチングされている時に、前記ブートストラップ電力供給装置から前記駆動回路に電力を供給する工程と、
前記電力半導体が連続的にオンに維持される時に、前記電力半導体をオンにしてオン状態を維持するための制御電圧を前記チャージポンプ回路から供給する工程と、
前記駆動回路のトランジスタスイッチを能動的に制御することにより、前記チャージポンプ回路による前記ブートストラップキャパシタの充電を防止する工程と、を備える、方法。

【図1】
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【図2】
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【公表番号】特表2006−528480(P2006−528480A)
【公表日】平成18年12月14日(2006.12.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−521157(P2006−521157)
【出願日】平成16年7月19日(2004.7.19)
【国際出願番号】PCT/US2004/023138
【国際公開番号】WO2005/010943
【国際公開日】平成17年2月3日(2005.2.3)
【出願人】(505300623)インターナショナル・レクティファイヤ・コーポレーション (23)
【氏名又は名称原語表記】INTERNATIONAL RECTIFIER CORPORATION
【Fターム(参考)】