チューブポンプ及びそれを備えた液体噴射記録装置
【課題】装置の低コスト化及び構成の簡素化を図った上で、防爆対策を行うことができ、また、チューブの劣化進行を抑制できるとともに、吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できるチューブポンプ及びそれを備えた液体噴射記録装置を提供する。
【解決手段】ローラ103がチューブ102を押し潰しながら移動することで、チューブ102内の流体を圧送するチューブポンプMにおいて、ローラ103には、チューブ102からローラ103に作用する力に応じて、チューブ102から接近離間する方向に向かってローラ103を変位可能とするオイルダンパー121が設けられていることを特徴とする。
【解決手段】ローラ103がチューブ102を押し潰しながら移動することで、チューブ102内の流体を圧送するチューブポンプMにおいて、ローラ103には、チューブ102からローラ103に作用する力に応じて、チューブ102から接近離間する方向に向かってローラ103を変位可能とするオイルダンパー121が設けられていることを特徴とする。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブポンプ及びそれを備えた液体噴射記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録紙等の被記録媒体にインク滴等の液体を噴射して画像や文字等の記録を行う液体噴射記録装置が知られている。液体噴射記録装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドが搭載され記録紙等の被記録媒体に対して往復動するキャリッジと、液体噴射ヘッドに液体を供給する液体収容体とを備えている。
また、液体噴射記録装置では、液体の不吐出状態を回復させる際に、液体噴射ヘッドを封止して噴射ノズルから液体を吸引したり、液体収容体から液体噴射ヘッドに向けて液体を供給する際に、両者を接続する液体供給管内を加圧してインクを圧送(いわゆる、加圧充填)したりするために、チューブポンプが採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
チューブポンプは、円筒状に形成されるケースの内周面に沿って配設されるチューブと、ケース内周面に向けてチューブを押圧するローラと、ローラをケース内周面の周方向に沿って転動させる回転体とを備えている。この場合、モータによって回転体を回転させると、ローラがケース内周面に向かってチューブを押し潰しながら、ケース内周面に沿って転動する。これにより、チューブポンプ内の液体を下流側に押し出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−240575号公報
【特許文献2】特開平8−28453号公報
【特許文献3】特開平11−19279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したチューブポンプでは、チューブ内の目詰まり等によりチューブ内の圧力が急上昇するのを抑制するために、防爆対策を講じる必要がある。この防爆対策としては、チューブ内の圧力や流量等を検出するセンサ類を設け、これらセンサ類の検出結果に基づいてモータを制御したり、流量制御弁等を設けたりする構成が知られている。
しかしながら、このような構成では、部品増加によるコストアップや、構成の複雑化に繋がるという問題がある。しかも、液体噴射記録装置用のチューブポンプでは、高回転・高停止精度は要求されないので、装置の低コスト化を図るためにより安価なモータを採用することが望まれている。
【0006】
また、チューブポンプの未使用時において、ローラによりチューブの一箇所を押圧し続けると、チューブの劣化進行に繋がるという問題もある。
さらに、チューブポンプにおいては、チューブやケースの製造バラツキにより、ローラによる押圧力に対するチューブ内の圧力が異なる虞があり、吸引圧や吐出圧にバラツキが生じるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、装置の低コスト化及び構成の簡素化を図った上で、防爆対策を行うことができ、また、チューブの劣化進行を抑制できるとともに、吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できるチューブポンプ及びそれを備えた液体噴射記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のチューブポンプは、可撓性を有するチューブと、前記チューブを外側から押圧しながら、前記チューブの軸方向に沿って移動する押圧手段と、を備え、前記押圧手段が前記チューブを押し潰しながら移動することで、前記チューブ内に収容される流体を圧送するチューブポンプにおいて、前記押圧手段には、前記チューブから前記押圧手段に作用する力に応じて、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記押圧手段を変位可能とする押圧力調整手段が設けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、チューブ内の圧力が高まると、チューブに押されて押圧力調整手段が押圧手段をチューブから離間する方向に向かって変位させるので、これに倣ってチューブが復元する。よって、チューブの断面積を拡大させ、チューブ内の圧力を緩和できる。そのため、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。これにより、チューブ内の圧力や流量を検出するセンサ類を設けたり、流量制御弁等を設けたりすることなく防爆対策を行うことができる。そのため、チューブポンプのコストアップを抑制できるとともに、構成の簡素化を図ることができる。また、防爆対策のために駆動モータの回転制御を行う必要もないので、比較的安価な駆動モータを採用できる。これによっても、チューブポンプのコストアップを抑制できる。
【0010】
さらに、チューブポンプの未使用時には、押圧手段をチューブから離間する方向に変位させておくことで、押圧手段によるチューブの押圧を解除できる。このため、チューブが押圧手段による押圧力を常に受けることを防止できるので、チューブの劣化進行を抑制でき、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
しかも、チューブ内の圧力を一定に維持できるということは、換言すればチューブ等の製造バラツキを吸収できるということになる。このため、チューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を調整することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。すなわち、部品の共用化が可能なるので、それぞれのチューブに適した部品を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、前記押圧力調整手段は、オイルが封入されるシリンダと、前記シリンダ内を移動可能なピストンと、一端側が前記ピストンに連結される一方、他端側が前記シリンダから突出して前記押圧手段を支持するピストンロッドと、を有し、前記ピストンロッドは、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記シリンダ内を進退可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、チューブから押圧手段に作用する力に応じてピストンロッドが変位するため、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。
また、シリンダ内の圧力を変更することで、押圧手段によるチューブの押圧力を変更できる。これにより、チューブ等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。そのため、それぞれのチューブに適した部品を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
さらに、シリンダ内の圧力を調整して、押圧手段をチューブから離間させることで、押圧手段によるチューブの押圧が解除される。このため、チューブの劣化進行を抑制でき、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
【0012】
また、前記シリンダは、軸方向に沿って前記ピストンが摺動する内筒と、前記内筒と同軸で、かつ外側に配置された外筒とを有していることを特徴としている。
この構成によれば、いわゆる複筒式のオイルダンパーを採用することで、チューブポンプのような小型の部品であっても充分なストローク量を確保できる。
【0013】
また、記押圧力調整手段は、回転軸に取り付けられたカム部材と、一端側が前記カム部材の周面を摺動する一方、他端側が前記押圧手段を支持する摺動部材と、を有し、前記摺動部材は、前記カム部材の回転に伴って前記チューブから接近離間する方向に向かって変位可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、チューブから押圧手段に作用する力に応じて摺動部材が変位するため、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。
また、カム部材の角度を変更することで、押圧手段によるチューブの押圧力を変更できる。これにより、チューブ等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。そのため、それぞれのチューブに適した押圧力調整手段を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
さらに、カム部材の角度を調整して、押圧手段をチューブから離間させることで、押圧手段によるチューブの押圧が解除される。このため、チューブの劣化進行を抑制でき、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
【0014】
また、前記押圧力調整手段は、前記押圧手段を前記チューブに向けて付勢するバネ部材と、前記バネ部材のバネ長を調整することにより前記バネ部材の付勢力を調整する調整機構とを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、チューブ内の圧力変化に応じて付勢手段が弾性変形することで、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。
また、調整機構によりバネ部材のバネ長を調整することにより、バネ部材の付勢力を調整できるので、押圧手段によるチューブの押圧力を変更できる。これにより、チューブ等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。そのため、それぞれのチューブに適した押圧力調整手段を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
さらに、付勢手段の付勢力を調整して、押圧手段をチューブから離間させることで、押圧手段によるチューブの押圧が解除される。これにより、チューブの劣化進行を抑制できるため、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の液体噴射記録装置は、液体が収容される液体収容体と、前記液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体供給管を通じて前記液体収容体内の前記液体を前記液体噴射ヘッドに向けて圧送する上記本発明のチューブポンプと、を有していることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のチューブポンプを備えているため、低コスト化及び装置の簡素化を図った上で、信頼性の高い液体噴射記録装置を提供できるとともに、長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るチューブポンプ及び液体噴射記録装置によれば、装置の低コスト化及び構成の簡素化を図った上で、防爆対策を行うとともに、チューブの劣化進行を抑制でき、吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】液体噴射記録装置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
【図3】オイルダンパーの断面図である。
【図4】第1実施形態におけるチューブポンプの通常時における動作説明図である。
【図5】第1実施形態におけるチューブ内圧力の上昇時における動作説明図である。
【図6】チューブポンプの動作説明図である。
【図7】オイルダンパーの動作説明図である。
【図8】オイルダンパーの他の構成を示す断面図である。
【図9】オイルダンパーの動作説明図である。
【図10】第2実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
【図11】チューブポンプの動作説明図である。
【図12】第3実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
【図13】チューブポンプの他の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
(液体噴射記録装置)
図1は、液体噴射記録装置を示す斜視図である。
同図に示すように、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2,3と、被記録媒体Sに液体を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4に液体を供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向として説明する。
【0019】
一対の搬送手段2,3は、それぞれX方向に延びて設けられたグリッドローラ20,30と、グリッドローラ20,30に沿ってそれぞれに平行に延びるピンチローラ21,31と、詳細は図示しないがグリッドローラ20,30を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構とを備えている。
【0020】
液体供給手段5は、液体が収容された液体収容体50と、液体収容体50と液体噴射ヘッド4とを接続する液体供給管51とを備えている。液体収容体50は、複数備えられており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体が収容された液体タンク50Y,50M,50C,50Bが並べて設けられている。液体タンク50Y,50M,50C,50BのそれぞれにはチューブポンプMが設けられており、液体供給管51を通じて液体を液体噴射ヘッド4へ押圧移動できる。液体供給管51は、液体噴射ヘッド4(キャリッジユニット62)の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0021】
走査手段6は、X方向に延びて設けられた一対のガイドレール60,61と、一対のガイドレール60,61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62をX方向に移動させる駆動機構63と、を備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60,61の間に配設された一対のプーリ64,65と、一対のプーリ64,65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67とを備えている。
【0022】
一対のプーリ64,65は、一対のガイドレール60,61の両端部間にそれぞれ配設されており、X方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は一対のガイドレール60,61間に配設されており、この無端ベルト66にはキャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには複数の液体噴射ヘッド4が搭載されており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体に個別に対応する液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4Bが副走査方向に並んで搭載されている。
【0023】
(チューブポンプ)
図2はチューブポンプの平面図である。
同図に示すように、本実施形態のチューブポンプMは、ハウジング101と、ハウジング101の内周面に沿って配索された可撓性を有するチューブ102と、チューブ102をハウジング101の内周面に向けて押圧する一対のローラ(押圧手段)103と、各ローラ103をハウジング101の内周面に沿って転動させる回転体104と、を備えている。
【0024】
ハウジング101は、平面視U字状の部材であり、その内周面は軸線O1回りに所定角度範囲(例えば、180度程度)に亘って円弧状に形成された円弧部111と、円弧部111の周方向両端から接線方向に延在する延在部112とを有している。
チューブ102は、一端(吸引口102a)が上流側に配置された上述した液体タンク50Y,50M,50C,50B(図1参照)の供給口(不図示)にチューブコネクタ(不図示)を介して接続されている。一方、下流側に配置された液体供給管51(図1参照)に、チューブ102の他端(吐出口102b)がチューブコネクタ(不図示)を介して接続されている。チューブ102は、その軸方向とハウジング101の内周面の周方向とを一致させた状態で、外周面の一部がハウジング101の内周面に接するようにハウジング101の全周に亘って配索されている。すなわち、チューブ102は、ハウジング101内で略U字状に保持されている。
【0025】
回転体104は、ハウジング101の径方向内側において、DCモータ等の図示しない駆動モータのモータ軸105に固定されている。そして、回転体104は、駆動モータの駆動により軸線O1回りに所定の速度で回転するように構成されている(図2中G1)。
【0026】
図3はオイルダンパーの断面図である。
ここで、同図に示すように、回転体104は、チューブ102内の圧力変化に応じて伸縮可能な一対のオイルダンパー(押圧力調整手段)121を備えている。各オイルダンパー121は、いわゆる複筒式のオイルダンパーであり、軸線O1からハウジング101の内周面に向けて(径方向外側に向けて)互いに逆方向に延在している。具体的に、オイルダンパー121は、同軸上に配置された外筒122及び内筒123を有するシリンダ124と、外筒122及び内筒123の間に配置され、外筒122及び内筒123を連通させる連通孔125が形成されたベースバルブ126と、内筒123を軸方向で区画するピストン127と、ピストン127に連結されて、シリンダ124の軸方向に沿って延在するピストンロッド128と、を備えている。また、シリンダ124内には、互いに交じり合わない2種類の流体(オイル(第1流体)P及びガス(第2流体)Q)が封入され、ベースバルブ126の連通孔125を通じて内筒123及び外筒122を流通可能に構成されている。なお、シリンダ124内に封入するものは、流体であればオイルに限られない。
【0027】
ピストン127は、内筒123の軸方向に貫通する貫通孔127aを有し、内筒123内を軸方向に摺動可能に構成されている。
ピストンロッド128は、一端側がシリンダ124(内筒123)内でピストン127に連結されている。一方、ピストンロッド128の他端側は、シリンダ124の外方に突出している。そして、ピストンロッド128の他端には、ローラ103が回転可能に支持されている(図2参照)。
【0028】
各ローラ103は、各ピストンロッド128の他端、すなわち軸線O1回りで180度間隔に配置された部材である。各ローラ103の軸線O2は、軸線O1に平行に配置されている。各ローラ103は、その外周面がチューブ102におけるハウジング101とは反対側に接するように構成されている。すなわち、チューブ102は、ローラ103とハウジング101の円弧部111との間に挟持され、径方向Rから押圧されている。そして、ローラ103は、回転体104の回転により軸線O1回りに公転(図2中G1)するとともに、軸線O2回りに自転(図2中G2)するように構成されている。なお、本実施形態におけるチューブ102の径方向Rとは、チューブ102の軸方向と直交する方向のうち、ハウジング101の周壁の法線方向と一致する方向である。
【0029】
上述のとおり、一対のローラ103は、軸線O1を中心として180度異なる位置に対向して配置されている。これにより、本実施形態のチューブポンプMは、ローラ103が対向する方向にチューブ102を押圧することができる。そのため、一対のローラ103は、常に軸線O1を中心として一定の力でチューブ102を押圧することができる。すなわち、ローラ103の押圧方向は、チューブ102の径方向Rに一致している。これにより、本実施形態のチューブポンプMは、送液時に安定した送液状態を維持することができる。なお、上述の通り本実施形態においては一対のローラ103を示すが、単一のローラ103を用いても以下に説明する形態を実施することができる。
【0030】
(作用)
次に、上述したチューブポンプの作用について説明する。図4はチューブポンプの通常時における動作説明図であり、図5はチューブ内の圧力上昇時における動作説明図である。
まず、図4に示すように、駆動モータを駆動して回転体104を軸線O1回りに回転させる。すると、回転体104に取り付けられたローラ103が軸線O1回りに公転する。そして、ローラ103が、ハウジング101の円弧部111との間でチューブ102を径方向に沿って押し潰しながら、チューブ102上を軸方向に沿って移動する。これにより、チューブ102内におけるローラ103の公転方向奥側(進行方向側)が加圧され、チューブ102内の液体が下流側に向けて順次圧送される。このとき、ローラ103は、チューブ102外周面との間の摩擦力により、軸線O2回りに自転するため、チューブ102上をスムーズに移動する。
【0031】
そして、チューブ102内を圧送された液体は、チューブ102の吐出口102bから液体供給管51内に吐出され、液体供給管51を通って液体噴射ヘッド4へ供給される。これにより、液体噴射ヘッド4への加圧充填を行うことができる。
一方、ローラ103が公転することで、ローラ103の公転方向手前側は負圧となる。これにより、チューブ102の吸引口102aから液体収容体50に収容された液体がチューブ102内に吸引される。これにより、液体収容体50に収容された液体を、チューブポンプMにより順次吸引できる。
【0032】
ここで、チューブポンプMの作動時、ローラ103は常に一定の押圧力でチューブ102を押圧している。具体的には、ローラ103からチューブ102に径方向Rに沿って押圧力F1が作用する。さらに、ローラ103は、回転体104の回転によりチューブ102上を軸方向に沿って移動するため、ローラ103からチューブ102に軸方向に沿って回転力F2が作用する。また、チューブ102に押圧力F1が作用することで、この押圧力F1に抗するようにチューブ102からローラ103に反発力が作用する。この反発力は、チューブ102内の圧力変化によって変動する。
【0033】
ところで、上述したようにチューブ102内で目詰まり等を起こすと、チューブ102内の圧力が急上昇するという問題がある。
【0034】
図6,図7は、チューブポンプの動作説明図であり、図6はチューブポンプの平面図、図7はオイルダンパーの断面図を示している。
図5〜図7に示すように、チューブ102内の圧力が急上昇すると、この圧力変化に応じてチューブ102からローラ103に作用する反発力が大きくなる。すると、オイルダンパー121のピストンロッド128がシリンダ124(内筒123)内を縮退移動する。これにより、ローラ103がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位する。そのため、ローラ103とハウジング101との間のスペースが拡大することで、チューブ102の断面積が増加してチューブ102内の圧力を緩和できる。よって、チューブ102内の圧力をほぼ一定に維持できる。
【0035】
このように、本実施形態では、チューブ102からローラ103に作用する力に応じて、チューブ102から離間する方向にローラ103を移動可能とするオイルダンパー121を設ける構成とした。
この構成によれば、チューブ102内の圧力が高まるとチューブ102に押されてオイルダンパー121のピストンロッド128がチューブ102から離間する方向に変位するので、ローラ103とハウジング101との間のスペースが拡大し、チューブ102内の圧力を緩和できる。これにより、チューブ102内の圧力や流量を検出するセンサ類を設けたり、流量制御弁等を設けたりすることなく防爆対策を行うことができる。そのため、チューブポンプMのコストアップを抑制できるとともに、構成の簡素化を図ることができる。また、防爆対策ために駆動モータの回転制御を行う必要もないので、比較的安価な駆動モータを採用できる。これによっても、チューブポンプMのコストアップを抑制できる。
【0036】
しかも、本実施形態では、オイルダンパー121内の圧力を変更することで、ローラ103による押圧力F1を変更できる。これにより、チューブ102やローラ103等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプMの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
【0037】
また、ローラ103による押圧力F1を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブ102に対して同一のオイルダンパー121を使用することができる。すなわち、オイルダンパー121の共用化が可能なるので、それぞれのチューブ102に適したオイルダンパー121を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、押圧力調整手段に複筒式のオイルダンパー121を採用することで、チューブポンプMのような小型の部品であっても充分なストローク量を確保できる。
【0038】
ところで、チューブポンプMの未使用時において、チューブポンプMの回転が停止すると、ローラ103はチューブ102の一箇所を押圧し続けることになる。その結果、チューブ102の劣化が進行する虞がある。
そこで、本実施形態では、オイルダンパー121の圧力を調整して、ローラ103をチューブ102から離間させることで、ローラ103によるチューブ102の押圧が解除される。これにより、チューブ102がローラ103による押圧力F1を常に受けることを防止できる。そのため、チューブ102の劣化進行を抑制でき、チューブポンプMの長寿命化を図ることができる。
【0039】
そして、本実施形態の液体噴射記録装置1は、上述したチューブポンプMを備えているため、低コスト化及び装置の簡素化を図った上で、信頼性の向上できるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0040】
なお、上述した第1実施形態では、押圧力調整手段に複筒式のオイルダンパー121を用いた場合について説明した。しかし、これに限らず、いわゆる単筒式のオイルダンパー130を用いても構わない。具体的には、図8に示すように、オイルダンパー130は、シリンダ131と、シリンダ131を軸方向に沿って第1室131a及び第2室131bに区画するとともに、シリンダ131内を軸方向に沿って摺動可能に構成されたフリーピストン132と、軸方向に沿って貫通する貫通孔133aを有し、第1室131a内を軸方向に摺動可能なピストン133と、ピストン133に連結されて、シリンダ131の軸方向に沿って延在するピストンロッド134と、を備えている。なお、第1室131a内にはオイルPが封入され、第2室131b内にはガスQが封入されている。
【0041】
この構成によれば、上述した複筒式のオイルダンパー121と同様に、図9に示すように、チューブ102からローラ103に作用する反発力に応じて、ピストンロッド134がシリンダ131内を縮退移動する。これにより、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、上述した複筒式のオイルダンパー121に比べて構造の簡素化が可能になり、低コストなチューブポンプMを提供できる。
【0042】
なお、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、図3,図8で示したようにローラ103はチューブ102を押しつぶす形態(通常状態)に復帰する。上述した図7及び図9では、封入されているガスQが圧縮された形態を示した。これは、チューブ102の反発力により、ピストンロッド128,134がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位し、ピストン127,133がオイルPを押圧したためである。
チューブ102内部の圧力上昇が解消され、この反発力が弱まると、圧縮されたガスQが通常状態に戻ろうとする復帰力が働く。この復帰力により、チューブ102の反発力によって変位した方向とは逆方向にピストン127,133、ピストンロッド128,134及びローラ103が変位する。これによって、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、ローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10は第2実施形態におけるチューブポンプの平面図である。本実施形態では、押圧力調整手段にカム機構を採用する点で、上述した第1実施形態と相違している。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態の押圧力調整手段151は、モータ軸(回転軸)105に固定されたケーシング161と、ケーシング161内に回転可能に収容されたカム部材152と、カム部材152の回転に伴ってカム部材152の周面に摺接しながら、チューブ102の径方向に向けて移動する一対の摺動部材(第1摺動部材153a及び第2摺動部材153b)と、ケーシング161及びカム部材152の間に配置された一対の付勢手段154と、を備えている。
【0044】
ケーシング161は、直方体形状に形成され、その後壁部159(図10中奥側の壁部)の中心部にモータ軸105が固定されている。そして、ケーシング161は、駆動モータの駆動により軸線O1回りに回転するように構成されている。また、ケーシング161内には、モータ軸105と同軸(軸線O1)で延在する回転軸158が設けられている。そして、回転軸158には、カム部材152が回転可能に支持されている。
カム部材152は、外周面が一対の湾曲面155により構成された楕円状の板材であり、カム部材152の中心(長軸と短軸との交点)に上述した回転軸158が取り付けられている。
【0045】
一対の摺動部材153a,153bは、ケーシング161における対向する側壁部156において、面方向でオフセットする位置からそれぞれカラー157を介して挿通されている。具体的に、第1摺動部材153aは、一端がケーシング161内でカム部材152の一方の湾曲面155における周方向一端側に接している。さらに、第1摺動部材153aの他端側は、ハウジング101の側壁部156から外方に延在している。そして、第1摺動部材153aの他端は、一方のローラ103を回転可能に支持している。また、第2摺動部材153bは、一端がケーシング161内でカム部材152の他方の湾曲面155における周方向一端側に接している。さらに、第2摺動部材153bの他端側は、ハウジング101の側壁部156から外方に延在している。そして、第2摺動部材153bの他端は、他方のローラ103を回転可能に支持している。
【0046】
各付勢手段154は、コイルバネ等からなり、ケーシング161における対向する側壁部163とカム部材152とにそれぞれ接続されている。具体的に、一方の付勢手段154は、一端が一方の側壁部163に連結されている。さらに、一方の付勢手段154は、他端がカム部材152の一方の湾曲面155における周方向他端側に当接部材162を介して当接している。また、他方の付勢手段154は、一端が他方の側壁部163に連結されている。さらに、他方の付勢手段154は、他端がカム部材152の他方の湾曲面155における周方向他端側に当接部材162を介して当接している。すなわち、付勢手段154は、カム部材152を回転方向G1とは逆方向に付勢し得るように構成されている。また、当接部材162は、カム部材152の回転に伴ってカム部材152の周面を摺動可能に構成されている。
【0047】
次に、第2実施形態のチューブポンプの作用について説明する。
駆動モータを駆動してケーシング161を軸線O1回りに回転させる。すると、押圧力調整手段151及びローラ103が一体となって軸線O1回りに回転する(図10中矢印G1参照)。つまり、回転軸158またはモータ軸105と、ケーシング161と、は固定されており、駆動モータを駆動すれば押圧力調整手段151全体が回転する。なお、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bは、それぞれカラー157において摺動可能に支持されており、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bはケーシング161の回転に伴ってそれぞれ回転する。このとき、カム部材152には、チューブ102からローラ103に作用する反発力が、摺動部材153a,153bを介して回転方向G1と同方向に作用する。つまり、ローラ103がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位するように反発力が働く。この反発力に従い、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bが、チューブ102から離間する方向に変位するための変位力が働く。この変位力のため、湾曲面155の先端にそれぞれ位置する第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bが湾曲面155に倣ってカム部材152を回転方向G1に回転させようとする。
【0048】
これに対し、カム部材152には、付勢手段154による付勢力が回転方向G1に抗するように作用する。つまり、カム部材152を回転方向G1に回転させようとする回転力と、付勢手段154による付勢力が釣り合っている。なおローラ103がチューブ102を押圧しながら回転することができる状態において、カム部材152を回転方向G1に回転させようとする回転力は、予め計測するなどして知られている。付勢手段154による付勢力は、この回転力と同一値として設計されている。
そのため、ローラ103は常に一定の押圧力でチューブ102を押圧しながら回転することができる。
【0049】
図11は、チューブポンプの動作説明図である。
ここで、チューブ102内の圧力が急上昇すると、この圧力変化に応じてチューブ102からローラ103に作用する反発力が大きくなり、カム部材152を回転方向G1に回転する力が大きくなる。すると、図11に示すように、カム部材152を介して付勢手段154が圧縮され、カム部材152が軸線O1回りに回転する。これにより、摺動部材153a,153bは、カム部材152の各湾曲面155上を摺動しながらケーシング161内に縮退する。したがって、ローラ103がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に移動する。そのため、ローラ103とハウジング101との間のスペースを拡大して、チューブ102内の圧力を緩和できる。よって、チューブ102内の圧力をほぼ一定に維持できる。すなわち、コイルバネのバネ定数は、チューブ102内の圧力が所望の値以内の場合は、圧縮変形せず、チューブ102内の圧力が所望の値を超えると、これに従って除々に圧縮変形する程度の強度に設定されている。
【0050】
このように、本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態では、押圧力調整手段151において、カム部材152の回転許容角度を変更することで、ローラ103とハウジング101の内周面との距離を変更できる。これにより、ローラ103による押圧力F1を変更できる。
【0051】
さらに、本実施形態では、カム部材152の回転許容角度を調整して、ローラ103をチューブ102から離間させることで、ローラ103によるチューブ102の押圧が解除される。この場合、カム部材152の回転方向前方にストッパ170を設け(図10参照)、段階的にカム部材152の回転許容角度を設定することも可能である。
これにより、チューブ102がローラ103による押圧力F1を常に受けることを防止できるため、チューブ102の劣化進行を抑制できる。よって、チューブポンプMの長寿命化を図ることができる。
【0052】
なお、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、図10で示したようにローラ103はチューブ102を押しつぶす形態(通常状態)に復帰する。上述した図11では、カム部材152の回転力と付勢手段154の付勢力の均衡が崩れ、カム部材152が回転した形態を示した。これは、チューブ102の反発力により、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bがチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位し、カム部材152を回転方向G1に回転する力が大きくなったためである。
チューブ102内部の圧力上昇が解消され、この反発力が弱まると、付勢手段154の付勢力が、カム部材152を図10に示す通常状態に戻そうとする復帰力として働く。この復帰力により、チューブ102の反発力によって変位した方向とは逆方向に第1摺動部材153a、第2摺動部材153b及びローラ103が変位する。このように、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、ローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。カム部材152の回転力と、付勢手段154の付勢力と、の均衡が保たれているため、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bは図10に示す位置で静止し、押圧力調整手段151はモータの回転によってチューブ102を押しつぶしながら回転する。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、押圧力調整手段をコイルバネ等の付勢手段により構成する点で上述した実施形態と相違している。図12は、第3実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
同図に示すように、本実施形態の押圧力調整手段201は、モータ軸105からハウジング101の内周面に向けて互いに逆方向に延在する一対のバネ部材202と、各バネ部材202の先端にそれぞれ連結され、ローラ103を回転可能に支持する軸受部材203と、各バネ部材202の付勢力を調整する調整機構204と、を備えている。
【0054】
各バネ部材202は、基端側がモータ軸105に取り付けられた支持部材210に連結されている。一方、各バネ部材202の先端側は、軸受部材203にそれぞれ連結されている。これにより、ローラ103は、バネ部材202が弾性変形することで、チューブ102内の圧力変化に応じてチューブ102から接近離間する方向に移動可能に構成されている。
【0055】
調整機構204は、各軸受部材203にそれぞれ連結された一対のアーム212を備えている。各アーム212は、クランク状に折り曲げられて構成され、一端側が各軸受部材203にそれぞれ連結されている。一方、各アーム212の他端側同士は、対向するように配置されている。また、アーム212の他端側にはアーム212の厚さ方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。そして、各アーム212は、他端側同士がボルト213及びナット214により締結されている。具体的に、アーム212の各貫通孔には、一方のアーム212側から他方のアーム212側に向けてボルト213が挿通され、他方のアーム212側からナット214が羅入されている。
【0056】
この構成によれば、チューブ102内の圧力変化に応じてバネ部材202が弾性変形することで、アーム212が接近離間する方向に向かって移動することになる。これにより、ローラ103がチューブ102から離間する方向に移動する。そのため、ローラ103とハウジング101との間のスペースが拡大し、チューブ102内の圧力を緩和できる。
【0057】
なお、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、図12で示したようにローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。上述した形態では、バネ部材202の付勢力は、ローラ103がチューブ102を押圧しながら回転する値に設定されている。チューブ102内部の圧力が上昇すると、チューブ102の反発力により、バネ部材202はモータ軸105に向けて(ハウジング101の径方向内側に向けて)縮む。
チューブ102内部の圧力上昇が解消され、この反発力が弱まると、バネ部材202の付勢力が、ローラ103を図12に示す通常状態に戻そうとする復帰力として働く。この復帰力により、チューブ102の反発力によって変位した方向とは逆方向(ハウジング101の径方向外側)にローラ103が変位する。これによって、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、ローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。
【0058】
また、本実施形態では、ボルト213及びナット214間の距離に応じて、アーム212同士が接近離間する方向に移動し、バネ部材202が伸縮するようになっている。このため、ハウジング101とローラ103との間隔を調整することができる。この間隔を調整することは、ローラ103によるチューブ102の押圧力F1を調整することになる。
さらに、ハウジング101とローラ103との間隔の調整によりローラ103によるチューブ102の押圧力F1を調整することで、バネ部材202自体を変更することなく、ローラ103からチューブ102に作用する押圧力F1を変更することができる。
【0059】
しかも、ボルト213及びナット214間の距離を調整して、ローラ103をチューブ102から離間させることで、ローラ103によるチューブ102の押圧が解除される。これにより、チューブ102がローラ103による押圧力F1を常に受けることを防止できる。そのため、チューブ102の劣化進行を抑制でき、チューブポンプMの長寿命化を図ることができる。
【0060】
なお、上述した第3実施形態では、調整機構204によりバネ部材202を圧縮し、チューブ102からローラ103を離間させる構成について説明した。しかし、これに限らず、図13に示すように、押圧解除部材220を別体で設けるような構成にしても構わない。
具体的に、押圧解除部材220は、C字状の部材であり、アーム部221の両端に、アーム部221の延在方向に直交する規制部222が形成されている。そして、バネ部材202を圧縮した状態で各規制部222により軸受部材203同士を挟持することで、ローラ103をチューブ102から離間させた状態で保持できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、チューブ102をハウジング101に沿わせて円弧状に配索する構成について説明したが、ローラ103がハウジング101との間でチューブを押し潰しながら移動する構成であれば、適宜設計変更が可能である。例えば、チューブ102を直線状に配索しても構わない。
【0062】
さらに、上述した実施形態では、チューブポンプMを用いて加圧充填する構成について説明したが、これに限られない。すなわち、液体噴射ヘッド4における噴射面に対向する位置に吸引キャップを設け、この吸引キャップ内を吸引する際にチューブポンプMを用いても構わない。
また、押圧力調整手段は、チューブ102からローラ103に作用する力に応じて、チューブ102から接近離間する構成であれば、適宜設計変更が可能である。例えば、ローラ103を可倒可能なアームの先端で支持し、弾性部材を介してローラ103をチューブ102側に向かって付勢するように構成してもよい。この場合であっても、チューブ102内の圧力に応じてローラ103が変位するので、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…液体噴射記録装置 4…液体噴射ヘッド 50…液体収容体 51…液体供給管 102…チューブ 103…ローラ(押圧手段) 105…モータ軸(回転軸) 121…オイルダンパー(押圧力調整手段) 124,131…シリンダ 151,201…押圧力調整手段 127,133…ピストン 128,134…ピストンロッド 152…カム部材 153…摺動部材 202…バネ部材 204…調整機構 M…チューブポンプ P…オイル(第1流体) Q…ガス(第2流体)
【技術分野】
【0001】
本発明は、チューブポンプ及びそれを備えた液体噴射記録装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から、記録紙等の被記録媒体にインク滴等の液体を噴射して画像や文字等の記録を行う液体噴射記録装置が知られている。液体噴射記録装置は、液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体噴射ヘッドが搭載され記録紙等の被記録媒体に対して往復動するキャリッジと、液体噴射ヘッドに液体を供給する液体収容体とを備えている。
また、液体噴射記録装置では、液体の不吐出状態を回復させる際に、液体噴射ヘッドを封止して噴射ノズルから液体を吸引したり、液体収容体から液体噴射ヘッドに向けて液体を供給する際に、両者を接続する液体供給管内を加圧してインクを圧送(いわゆる、加圧充填)したりするために、チューブポンプが採用されている(例えば、特許文献1〜3参照)。
【0003】
チューブポンプは、円筒状に形成されるケースの内周面に沿って配設されるチューブと、ケース内周面に向けてチューブを押圧するローラと、ローラをケース内周面の周方向に沿って転動させる回転体とを備えている。この場合、モータによって回転体を回転させると、ローラがケース内周面に向かってチューブを押し潰しながら、ケース内周面に沿って転動する。これにより、チューブポンプ内の液体を下流側に押し出すようになっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2005−240575号公報
【特許文献2】特開平8−28453号公報
【特許文献3】特開平11−19279号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ところで、上述したチューブポンプでは、チューブ内の目詰まり等によりチューブ内の圧力が急上昇するのを抑制するために、防爆対策を講じる必要がある。この防爆対策としては、チューブ内の圧力や流量等を検出するセンサ類を設け、これらセンサ類の検出結果に基づいてモータを制御したり、流量制御弁等を設けたりする構成が知られている。
しかしながら、このような構成では、部品増加によるコストアップや、構成の複雑化に繋がるという問題がある。しかも、液体噴射記録装置用のチューブポンプでは、高回転・高停止精度は要求されないので、装置の低コスト化を図るためにより安価なモータを採用することが望まれている。
【0006】
また、チューブポンプの未使用時において、ローラによりチューブの一箇所を押圧し続けると、チューブの劣化進行に繋がるという問題もある。
さらに、チューブポンプにおいては、チューブやケースの製造バラツキにより、ローラによる押圧力に対するチューブ内の圧力が異なる虞があり、吸引圧や吐出圧にバラツキが生じるという問題がある。
【0007】
そこで、本発明は、上述の課題に鑑みてなされたものであって、装置の低コスト化及び構成の簡素化を図った上で、防爆対策を行うことができ、また、チューブの劣化進行を抑制できるとともに、吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できるチューブポンプ及びそれを備えた液体噴射記録装置を提供するものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上述した課題を解決して、このような目的を達成するために、本発明のチューブポンプは、可撓性を有するチューブと、前記チューブを外側から押圧しながら、前記チューブの軸方向に沿って移動する押圧手段と、を備え、前記押圧手段が前記チューブを押し潰しながら移動することで、前記チューブ内に収容される流体を圧送するチューブポンプにおいて、前記押圧手段には、前記チューブから前記押圧手段に作用する力に応じて、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記押圧手段を変位可能とする押圧力調整手段が設けられていることを特徴としている。
【0009】
この構成によれば、チューブ内の圧力が高まると、チューブに押されて押圧力調整手段が押圧手段をチューブから離間する方向に向かって変位させるので、これに倣ってチューブが復元する。よって、チューブの断面積を拡大させ、チューブ内の圧力を緩和できる。そのため、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。これにより、チューブ内の圧力や流量を検出するセンサ類を設けたり、流量制御弁等を設けたりすることなく防爆対策を行うことができる。そのため、チューブポンプのコストアップを抑制できるとともに、構成の簡素化を図ることができる。また、防爆対策のために駆動モータの回転制御を行う必要もないので、比較的安価な駆動モータを採用できる。これによっても、チューブポンプのコストアップを抑制できる。
【0010】
さらに、チューブポンプの未使用時には、押圧手段をチューブから離間する方向に変位させておくことで、押圧手段によるチューブの押圧を解除できる。このため、チューブが押圧手段による押圧力を常に受けることを防止できるので、チューブの劣化進行を抑制でき、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
しかも、チューブ内の圧力を一定に維持できるということは、換言すればチューブ等の製造バラツキを吸収できるということになる。このため、チューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を調整することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。すなわち、部品の共用化が可能なるので、それぞれのチューブに適した部品を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
【0011】
また、前記押圧力調整手段は、オイルが封入されるシリンダと、前記シリンダ内を移動可能なピストンと、一端側が前記ピストンに連結される一方、他端側が前記シリンダから突出して前記押圧手段を支持するピストンロッドと、を有し、前記ピストンロッドは、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記シリンダ内を進退可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、チューブから押圧手段に作用する力に応じてピストンロッドが変位するため、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。
また、シリンダ内の圧力を変更することで、押圧手段によるチューブの押圧力を変更できる。これにより、チューブ等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。そのため、それぞれのチューブに適した部品を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
さらに、シリンダ内の圧力を調整して、押圧手段をチューブから離間させることで、押圧手段によるチューブの押圧が解除される。このため、チューブの劣化進行を抑制でき、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
【0012】
また、前記シリンダは、軸方向に沿って前記ピストンが摺動する内筒と、前記内筒と同軸で、かつ外側に配置された外筒とを有していることを特徴としている。
この構成によれば、いわゆる複筒式のオイルダンパーを採用することで、チューブポンプのような小型の部品であっても充分なストローク量を確保できる。
【0013】
また、記押圧力調整手段は、回転軸に取り付けられたカム部材と、一端側が前記カム部材の周面を摺動する一方、他端側が前記押圧手段を支持する摺動部材と、を有し、前記摺動部材は、前記カム部材の回転に伴って前記チューブから接近離間する方向に向かって変位可能に構成されていることを特徴としている。
この構成によれば、チューブから押圧手段に作用する力に応じて摺動部材が変位するため、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。
また、カム部材の角度を変更することで、押圧手段によるチューブの押圧力を変更できる。これにより、チューブ等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。そのため、それぞれのチューブに適した押圧力調整手段を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
さらに、カム部材の角度を調整して、押圧手段をチューブから離間させることで、押圧手段によるチューブの押圧が解除される。このため、チューブの劣化進行を抑制でき、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
【0014】
また、前記押圧力調整手段は、前記押圧手段を前記チューブに向けて付勢するバネ部材と、前記バネ部材のバネ長を調整することにより前記バネ部材の付勢力を調整する調整機構とを備えていることを特徴としている。
この構成によれば、チューブ内の圧力変化に応じて付勢手段が弾性変形することで、チューブ内の圧力をほぼ一定に維持できる。
また、調整機構によりバネ部材のバネ長を調整することにより、バネ部材の付勢力を調整できるので、押圧手段によるチューブの押圧力を変更できる。これにより、チューブ等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
また、押圧手段による押圧力を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブに対して同一の押圧力調整手段を使用することができる。そのため、それぞれのチューブに適した押圧力調整手段を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
さらに、付勢手段の付勢力を調整して、押圧手段をチューブから離間させることで、押圧手段によるチューブの押圧が解除される。これにより、チューブの劣化進行を抑制できるため、チューブポンプの長寿命化を図ることができる。
【0015】
また、本発明の液体噴射記録装置は、液体が収容される液体収容体と、前記液体を噴射する液体噴射ヘッドと、液体供給管を通じて前記液体収容体内の前記液体を前記液体噴射ヘッドに向けて圧送する上記本発明のチューブポンプと、を有していることを特徴としている。
この構成によれば、上記本発明のチューブポンプを備えているため、低コスト化及び装置の簡素化を図った上で、信頼性の高い液体噴射記録装置を提供できるとともに、長寿命化を図ることができる。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係るチューブポンプ及び液体噴射記録装置によれば、装置の低コスト化及び構成の簡素化を図った上で、防爆対策を行うとともに、チューブの劣化進行を抑制でき、吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】液体噴射記録装置を示す斜視図である。
【図2】第1実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
【図3】オイルダンパーの断面図である。
【図4】第1実施形態におけるチューブポンプの通常時における動作説明図である。
【図5】第1実施形態におけるチューブ内圧力の上昇時における動作説明図である。
【図6】チューブポンプの動作説明図である。
【図7】オイルダンパーの動作説明図である。
【図8】オイルダンパーの他の構成を示す断面図である。
【図9】オイルダンパーの動作説明図である。
【図10】第2実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
【図11】チューブポンプの動作説明図である。
【図12】第3実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
【図13】チューブポンプの他の構成を示す平面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
(第1実施形態)
次に、本発明の第1実施形態を図面に基づいて説明する。
(液体噴射記録装置)
図1は、液体噴射記録装置を示す斜視図である。
同図に示すように、液体噴射記録装置1は、紙等の被記録媒体Sを搬送する一対の搬送手段2,3と、被記録媒体Sに液体を噴射する液体噴射ヘッド4と、液体噴射ヘッド4に液体を供給する液体供給手段5と、液体噴射ヘッド4を被記録媒体Sの搬送方向(主走査方向)と略直交する方向(副走査方向)に走査させる走査手段6とを備えている。以下、副走査方向をX方向、主走査方向をY方向として説明する。
【0019】
一対の搬送手段2,3は、それぞれX方向に延びて設けられたグリッドローラ20,30と、グリッドローラ20,30に沿ってそれぞれに平行に延びるピンチローラ21,31と、詳細は図示しないがグリッドローラ20,30を軸回りに回転動作させるモータ等の駆動機構とを備えている。
【0020】
液体供給手段5は、液体が収容された液体収容体50と、液体収容体50と液体噴射ヘッド4とを接続する液体供給管51とを備えている。液体収容体50は、複数備えられており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体が収容された液体タンク50Y,50M,50C,50Bが並べて設けられている。液体タンク50Y,50M,50C,50BのそれぞれにはチューブポンプMが設けられており、液体供給管51を通じて液体を液体噴射ヘッド4へ押圧移動できる。液体供給管51は、液体噴射ヘッド4(キャリッジユニット62)の動作に対応可能な可撓性を有するフレキシブルホースからなる。
【0021】
走査手段6は、X方向に延びて設けられた一対のガイドレール60,61と、一対のガイドレール60,61に沿って摺動可能なキャリッジユニット62と、キャリッジユニット62をX方向に移動させる駆動機構63と、を備えている。駆動機構63は、一対のガイドレール60,61の間に配設された一対のプーリ64,65と、一対のプーリ64,65間に巻回された無端ベルト66と、一方のプーリ64を回転駆動させる駆動モータ67とを備えている。
【0022】
一対のプーリ64,65は、一対のガイドレール60,61の両端部間にそれぞれ配設されており、X方向に間隔をあけて配置されている。無端ベルト66は一対のガイドレール60,61間に配設されており、この無端ベルト66にはキャリッジユニット62が連結されている。キャリッジユニット62の基端部62aには複数の液体噴射ヘッド4が搭載されており、具体的には、イエロー、マゼンタ、シアン、ブラックの4種類の液体に個別に対応する液体噴射ヘッド4Y,4M,4C,4Bが副走査方向に並んで搭載されている。
【0023】
(チューブポンプ)
図2はチューブポンプの平面図である。
同図に示すように、本実施形態のチューブポンプMは、ハウジング101と、ハウジング101の内周面に沿って配索された可撓性を有するチューブ102と、チューブ102をハウジング101の内周面に向けて押圧する一対のローラ(押圧手段)103と、各ローラ103をハウジング101の内周面に沿って転動させる回転体104と、を備えている。
【0024】
ハウジング101は、平面視U字状の部材であり、その内周面は軸線O1回りに所定角度範囲(例えば、180度程度)に亘って円弧状に形成された円弧部111と、円弧部111の周方向両端から接線方向に延在する延在部112とを有している。
チューブ102は、一端(吸引口102a)が上流側に配置された上述した液体タンク50Y,50M,50C,50B(図1参照)の供給口(不図示)にチューブコネクタ(不図示)を介して接続されている。一方、下流側に配置された液体供給管51(図1参照)に、チューブ102の他端(吐出口102b)がチューブコネクタ(不図示)を介して接続されている。チューブ102は、その軸方向とハウジング101の内周面の周方向とを一致させた状態で、外周面の一部がハウジング101の内周面に接するようにハウジング101の全周に亘って配索されている。すなわち、チューブ102は、ハウジング101内で略U字状に保持されている。
【0025】
回転体104は、ハウジング101の径方向内側において、DCモータ等の図示しない駆動モータのモータ軸105に固定されている。そして、回転体104は、駆動モータの駆動により軸線O1回りに所定の速度で回転するように構成されている(図2中G1)。
【0026】
図3はオイルダンパーの断面図である。
ここで、同図に示すように、回転体104は、チューブ102内の圧力変化に応じて伸縮可能な一対のオイルダンパー(押圧力調整手段)121を備えている。各オイルダンパー121は、いわゆる複筒式のオイルダンパーであり、軸線O1からハウジング101の内周面に向けて(径方向外側に向けて)互いに逆方向に延在している。具体的に、オイルダンパー121は、同軸上に配置された外筒122及び内筒123を有するシリンダ124と、外筒122及び内筒123の間に配置され、外筒122及び内筒123を連通させる連通孔125が形成されたベースバルブ126と、内筒123を軸方向で区画するピストン127と、ピストン127に連結されて、シリンダ124の軸方向に沿って延在するピストンロッド128と、を備えている。また、シリンダ124内には、互いに交じり合わない2種類の流体(オイル(第1流体)P及びガス(第2流体)Q)が封入され、ベースバルブ126の連通孔125を通じて内筒123及び外筒122を流通可能に構成されている。なお、シリンダ124内に封入するものは、流体であればオイルに限られない。
【0027】
ピストン127は、内筒123の軸方向に貫通する貫通孔127aを有し、内筒123内を軸方向に摺動可能に構成されている。
ピストンロッド128は、一端側がシリンダ124(内筒123)内でピストン127に連結されている。一方、ピストンロッド128の他端側は、シリンダ124の外方に突出している。そして、ピストンロッド128の他端には、ローラ103が回転可能に支持されている(図2参照)。
【0028】
各ローラ103は、各ピストンロッド128の他端、すなわち軸線O1回りで180度間隔に配置された部材である。各ローラ103の軸線O2は、軸線O1に平行に配置されている。各ローラ103は、その外周面がチューブ102におけるハウジング101とは反対側に接するように構成されている。すなわち、チューブ102は、ローラ103とハウジング101の円弧部111との間に挟持され、径方向Rから押圧されている。そして、ローラ103は、回転体104の回転により軸線O1回りに公転(図2中G1)するとともに、軸線O2回りに自転(図2中G2)するように構成されている。なお、本実施形態におけるチューブ102の径方向Rとは、チューブ102の軸方向と直交する方向のうち、ハウジング101の周壁の法線方向と一致する方向である。
【0029】
上述のとおり、一対のローラ103は、軸線O1を中心として180度異なる位置に対向して配置されている。これにより、本実施形態のチューブポンプMは、ローラ103が対向する方向にチューブ102を押圧することができる。そのため、一対のローラ103は、常に軸線O1を中心として一定の力でチューブ102を押圧することができる。すなわち、ローラ103の押圧方向は、チューブ102の径方向Rに一致している。これにより、本実施形態のチューブポンプMは、送液時に安定した送液状態を維持することができる。なお、上述の通り本実施形態においては一対のローラ103を示すが、単一のローラ103を用いても以下に説明する形態を実施することができる。
【0030】
(作用)
次に、上述したチューブポンプの作用について説明する。図4はチューブポンプの通常時における動作説明図であり、図5はチューブ内の圧力上昇時における動作説明図である。
まず、図4に示すように、駆動モータを駆動して回転体104を軸線O1回りに回転させる。すると、回転体104に取り付けられたローラ103が軸線O1回りに公転する。そして、ローラ103が、ハウジング101の円弧部111との間でチューブ102を径方向に沿って押し潰しながら、チューブ102上を軸方向に沿って移動する。これにより、チューブ102内におけるローラ103の公転方向奥側(進行方向側)が加圧され、チューブ102内の液体が下流側に向けて順次圧送される。このとき、ローラ103は、チューブ102外周面との間の摩擦力により、軸線O2回りに自転するため、チューブ102上をスムーズに移動する。
【0031】
そして、チューブ102内を圧送された液体は、チューブ102の吐出口102bから液体供給管51内に吐出され、液体供給管51を通って液体噴射ヘッド4へ供給される。これにより、液体噴射ヘッド4への加圧充填を行うことができる。
一方、ローラ103が公転することで、ローラ103の公転方向手前側は負圧となる。これにより、チューブ102の吸引口102aから液体収容体50に収容された液体がチューブ102内に吸引される。これにより、液体収容体50に収容された液体を、チューブポンプMにより順次吸引できる。
【0032】
ここで、チューブポンプMの作動時、ローラ103は常に一定の押圧力でチューブ102を押圧している。具体的には、ローラ103からチューブ102に径方向Rに沿って押圧力F1が作用する。さらに、ローラ103は、回転体104の回転によりチューブ102上を軸方向に沿って移動するため、ローラ103からチューブ102に軸方向に沿って回転力F2が作用する。また、チューブ102に押圧力F1が作用することで、この押圧力F1に抗するようにチューブ102からローラ103に反発力が作用する。この反発力は、チューブ102内の圧力変化によって変動する。
【0033】
ところで、上述したようにチューブ102内で目詰まり等を起こすと、チューブ102内の圧力が急上昇するという問題がある。
【0034】
図6,図7は、チューブポンプの動作説明図であり、図6はチューブポンプの平面図、図7はオイルダンパーの断面図を示している。
図5〜図7に示すように、チューブ102内の圧力が急上昇すると、この圧力変化に応じてチューブ102からローラ103に作用する反発力が大きくなる。すると、オイルダンパー121のピストンロッド128がシリンダ124(内筒123)内を縮退移動する。これにより、ローラ103がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位する。そのため、ローラ103とハウジング101との間のスペースが拡大することで、チューブ102の断面積が増加してチューブ102内の圧力を緩和できる。よって、チューブ102内の圧力をほぼ一定に維持できる。
【0035】
このように、本実施形態では、チューブ102からローラ103に作用する力に応じて、チューブ102から離間する方向にローラ103を移動可能とするオイルダンパー121を設ける構成とした。
この構成によれば、チューブ102内の圧力が高まるとチューブ102に押されてオイルダンパー121のピストンロッド128がチューブ102から離間する方向に変位するので、ローラ103とハウジング101との間のスペースが拡大し、チューブ102内の圧力を緩和できる。これにより、チューブ102内の圧力や流量を検出するセンサ類を設けたり、流量制御弁等を設けたりすることなく防爆対策を行うことができる。そのため、チューブポンプMのコストアップを抑制できるとともに、構成の簡素化を図ることができる。また、防爆対策ために駆動モータの回転制御を行う必要もないので、比較的安価な駆動モータを採用できる。これによっても、チューブポンプMのコストアップを抑制できる。
【0036】
しかも、本実施形態では、オイルダンパー121内の圧力を変更することで、ローラ103による押圧力F1を変更できる。これにより、チューブ102やローラ103等の製造バラツキを吸収できるため、通常使用時におけるチューブポンプMの吸引圧や吐出圧のバラツキを低減できる。
【0037】
また、ローラ103による押圧力F1を変更することで、チューブ径や肉厚の異なる様々なチューブ102に対して同一のオイルダンパー121を使用することができる。すなわち、オイルダンパー121の共用化が可能なるので、それぞれのチューブ102に適したオイルダンパー121を別々に製造する場合に比べて、低コスト化及び製造効率の向上を図ることができる。
また、本実施形態では、押圧力調整手段に複筒式のオイルダンパー121を採用することで、チューブポンプMのような小型の部品であっても充分なストローク量を確保できる。
【0038】
ところで、チューブポンプMの未使用時において、チューブポンプMの回転が停止すると、ローラ103はチューブ102の一箇所を押圧し続けることになる。その結果、チューブ102の劣化が進行する虞がある。
そこで、本実施形態では、オイルダンパー121の圧力を調整して、ローラ103をチューブ102から離間させることで、ローラ103によるチューブ102の押圧が解除される。これにより、チューブ102がローラ103による押圧力F1を常に受けることを防止できる。そのため、チューブ102の劣化進行を抑制でき、チューブポンプMの長寿命化を図ることができる。
【0039】
そして、本実施形態の液体噴射記録装置1は、上述したチューブポンプMを備えているため、低コスト化及び装置の簡素化を図った上で、信頼性の向上できるとともに、長寿命化を図ることができる。
【0040】
なお、上述した第1実施形態では、押圧力調整手段に複筒式のオイルダンパー121を用いた場合について説明した。しかし、これに限らず、いわゆる単筒式のオイルダンパー130を用いても構わない。具体的には、図8に示すように、オイルダンパー130は、シリンダ131と、シリンダ131を軸方向に沿って第1室131a及び第2室131bに区画するとともに、シリンダ131内を軸方向に沿って摺動可能に構成されたフリーピストン132と、軸方向に沿って貫通する貫通孔133aを有し、第1室131a内を軸方向に摺動可能なピストン133と、ピストン133に連結されて、シリンダ131の軸方向に沿って延在するピストンロッド134と、を備えている。なお、第1室131a内にはオイルPが封入され、第2室131b内にはガスQが封入されている。
【0041】
この構成によれば、上述した複筒式のオイルダンパー121と同様に、図9に示すように、チューブ102からローラ103に作用する反発力に応じて、ピストンロッド134がシリンダ131内を縮退移動する。これにより、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、上述した複筒式のオイルダンパー121に比べて構造の簡素化が可能になり、低コストなチューブポンプMを提供できる。
【0042】
なお、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、図3,図8で示したようにローラ103はチューブ102を押しつぶす形態(通常状態)に復帰する。上述した図7及び図9では、封入されているガスQが圧縮された形態を示した。これは、チューブ102の反発力により、ピストンロッド128,134がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位し、ピストン127,133がオイルPを押圧したためである。
チューブ102内部の圧力上昇が解消され、この反発力が弱まると、圧縮されたガスQが通常状態に戻ろうとする復帰力が働く。この復帰力により、チューブ102の反発力によって変位した方向とは逆方向にピストン127,133、ピストンロッド128,134及びローラ103が変位する。これによって、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、ローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。
【0043】
(第2実施形態)
次に、本発明の第2実施形態について説明する。図10は第2実施形態におけるチューブポンプの平面図である。本実施形態では、押圧力調整手段にカム機構を採用する点で、上述した第1実施形態と相違している。なお、以下の説明では、上述した第1実施形態と同様の構成については同一の符号を付して説明を省略する。
図10に示すように、本実施形態の押圧力調整手段151は、モータ軸(回転軸)105に固定されたケーシング161と、ケーシング161内に回転可能に収容されたカム部材152と、カム部材152の回転に伴ってカム部材152の周面に摺接しながら、チューブ102の径方向に向けて移動する一対の摺動部材(第1摺動部材153a及び第2摺動部材153b)と、ケーシング161及びカム部材152の間に配置された一対の付勢手段154と、を備えている。
【0044】
ケーシング161は、直方体形状に形成され、その後壁部159(図10中奥側の壁部)の中心部にモータ軸105が固定されている。そして、ケーシング161は、駆動モータの駆動により軸線O1回りに回転するように構成されている。また、ケーシング161内には、モータ軸105と同軸(軸線O1)で延在する回転軸158が設けられている。そして、回転軸158には、カム部材152が回転可能に支持されている。
カム部材152は、外周面が一対の湾曲面155により構成された楕円状の板材であり、カム部材152の中心(長軸と短軸との交点)に上述した回転軸158が取り付けられている。
【0045】
一対の摺動部材153a,153bは、ケーシング161における対向する側壁部156において、面方向でオフセットする位置からそれぞれカラー157を介して挿通されている。具体的に、第1摺動部材153aは、一端がケーシング161内でカム部材152の一方の湾曲面155における周方向一端側に接している。さらに、第1摺動部材153aの他端側は、ハウジング101の側壁部156から外方に延在している。そして、第1摺動部材153aの他端は、一方のローラ103を回転可能に支持している。また、第2摺動部材153bは、一端がケーシング161内でカム部材152の他方の湾曲面155における周方向一端側に接している。さらに、第2摺動部材153bの他端側は、ハウジング101の側壁部156から外方に延在している。そして、第2摺動部材153bの他端は、他方のローラ103を回転可能に支持している。
【0046】
各付勢手段154は、コイルバネ等からなり、ケーシング161における対向する側壁部163とカム部材152とにそれぞれ接続されている。具体的に、一方の付勢手段154は、一端が一方の側壁部163に連結されている。さらに、一方の付勢手段154は、他端がカム部材152の一方の湾曲面155における周方向他端側に当接部材162を介して当接している。また、他方の付勢手段154は、一端が他方の側壁部163に連結されている。さらに、他方の付勢手段154は、他端がカム部材152の他方の湾曲面155における周方向他端側に当接部材162を介して当接している。すなわち、付勢手段154は、カム部材152を回転方向G1とは逆方向に付勢し得るように構成されている。また、当接部材162は、カム部材152の回転に伴ってカム部材152の周面を摺動可能に構成されている。
【0047】
次に、第2実施形態のチューブポンプの作用について説明する。
駆動モータを駆動してケーシング161を軸線O1回りに回転させる。すると、押圧力調整手段151及びローラ103が一体となって軸線O1回りに回転する(図10中矢印G1参照)。つまり、回転軸158またはモータ軸105と、ケーシング161と、は固定されており、駆動モータを駆動すれば押圧力調整手段151全体が回転する。なお、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bは、それぞれカラー157において摺動可能に支持されており、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bはケーシング161の回転に伴ってそれぞれ回転する。このとき、カム部材152には、チューブ102からローラ103に作用する反発力が、摺動部材153a,153bを介して回転方向G1と同方向に作用する。つまり、ローラ103がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位するように反発力が働く。この反発力に従い、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bが、チューブ102から離間する方向に変位するための変位力が働く。この変位力のため、湾曲面155の先端にそれぞれ位置する第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bが湾曲面155に倣ってカム部材152を回転方向G1に回転させようとする。
【0048】
これに対し、カム部材152には、付勢手段154による付勢力が回転方向G1に抗するように作用する。つまり、カム部材152を回転方向G1に回転させようとする回転力と、付勢手段154による付勢力が釣り合っている。なおローラ103がチューブ102を押圧しながら回転することができる状態において、カム部材152を回転方向G1に回転させようとする回転力は、予め計測するなどして知られている。付勢手段154による付勢力は、この回転力と同一値として設計されている。
そのため、ローラ103は常に一定の押圧力でチューブ102を押圧しながら回転することができる。
【0049】
図11は、チューブポンプの動作説明図である。
ここで、チューブ102内の圧力が急上昇すると、この圧力変化に応じてチューブ102からローラ103に作用する反発力が大きくなり、カム部材152を回転方向G1に回転する力が大きくなる。すると、図11に示すように、カム部材152を介して付勢手段154が圧縮され、カム部材152が軸線O1回りに回転する。これにより、摺動部材153a,153bは、カム部材152の各湾曲面155上を摺動しながらケーシング161内に縮退する。したがって、ローラ103がチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に移動する。そのため、ローラ103とハウジング101との間のスペースを拡大して、チューブ102内の圧力を緩和できる。よって、チューブ102内の圧力をほぼ一定に維持できる。すなわち、コイルバネのバネ定数は、チューブ102内の圧力が所望の値以内の場合は、圧縮変形せず、チューブ102内の圧力が所望の値を超えると、これに従って除々に圧縮変形する程度の強度に設定されている。
【0050】
このように、本実施形態においても、上述した第1実施形態と同様の効果を奏することができる。
また、本実施形態では、押圧力調整手段151において、カム部材152の回転許容角度を変更することで、ローラ103とハウジング101の内周面との距離を変更できる。これにより、ローラ103による押圧力F1を変更できる。
【0051】
さらに、本実施形態では、カム部材152の回転許容角度を調整して、ローラ103をチューブ102から離間させることで、ローラ103によるチューブ102の押圧が解除される。この場合、カム部材152の回転方向前方にストッパ170を設け(図10参照)、段階的にカム部材152の回転許容角度を設定することも可能である。
これにより、チューブ102がローラ103による押圧力F1を常に受けることを防止できるため、チューブ102の劣化進行を抑制できる。よって、チューブポンプMの長寿命化を図ることができる。
【0052】
なお、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、図10で示したようにローラ103はチューブ102を押しつぶす形態(通常状態)に復帰する。上述した図11では、カム部材152の回転力と付勢手段154の付勢力の均衡が崩れ、カム部材152が回転した形態を示した。これは、チューブ102の反発力により、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bがチューブ102の径方向(チューブ102から離間する方向)に変位し、カム部材152を回転方向G1に回転する力が大きくなったためである。
チューブ102内部の圧力上昇が解消され、この反発力が弱まると、付勢手段154の付勢力が、カム部材152を図10に示す通常状態に戻そうとする復帰力として働く。この復帰力により、チューブ102の反発力によって変位した方向とは逆方向に第1摺動部材153a、第2摺動部材153b及びローラ103が変位する。このように、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、ローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。カム部材152の回転力と、付勢手段154の付勢力と、の均衡が保たれているため、第1摺動部材153a及び第2摺動部材153bは図10に示す位置で静止し、押圧力調整手段151はモータの回転によってチューブ102を押しつぶしながら回転する。
【0053】
(第3実施形態)
次に、本発明の第3実施形態について説明する。第3実施形態では、押圧力調整手段をコイルバネ等の付勢手段により構成する点で上述した実施形態と相違している。図12は、第3実施形態におけるチューブポンプの平面図である。
同図に示すように、本実施形態の押圧力調整手段201は、モータ軸105からハウジング101の内周面に向けて互いに逆方向に延在する一対のバネ部材202と、各バネ部材202の先端にそれぞれ連結され、ローラ103を回転可能に支持する軸受部材203と、各バネ部材202の付勢力を調整する調整機構204と、を備えている。
【0054】
各バネ部材202は、基端側がモータ軸105に取り付けられた支持部材210に連結されている。一方、各バネ部材202の先端側は、軸受部材203にそれぞれ連結されている。これにより、ローラ103は、バネ部材202が弾性変形することで、チューブ102内の圧力変化に応じてチューブ102から接近離間する方向に移動可能に構成されている。
【0055】
調整機構204は、各軸受部材203にそれぞれ連結された一対のアーム212を備えている。各アーム212は、クランク状に折り曲げられて構成され、一端側が各軸受部材203にそれぞれ連結されている。一方、各アーム212の他端側同士は、対向するように配置されている。また、アーム212の他端側にはアーム212の厚さ方向に貫通する貫通孔(不図示)が形成されている。そして、各アーム212は、他端側同士がボルト213及びナット214により締結されている。具体的に、アーム212の各貫通孔には、一方のアーム212側から他方のアーム212側に向けてボルト213が挿通され、他方のアーム212側からナット214が羅入されている。
【0056】
この構成によれば、チューブ102内の圧力変化に応じてバネ部材202が弾性変形することで、アーム212が接近離間する方向に向かって移動することになる。これにより、ローラ103がチューブ102から離間する方向に移動する。そのため、ローラ103とハウジング101との間のスペースが拡大し、チューブ102内の圧力を緩和できる。
【0057】
なお、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、図12で示したようにローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。上述した形態では、バネ部材202の付勢力は、ローラ103がチューブ102を押圧しながら回転する値に設定されている。チューブ102内部の圧力が上昇すると、チューブ102の反発力により、バネ部材202はモータ軸105に向けて(ハウジング101の径方向内側に向けて)縮む。
チューブ102内部の圧力上昇が解消され、この反発力が弱まると、バネ部材202の付勢力が、ローラ103を図12に示す通常状態に戻そうとする復帰力として働く。この復帰力により、チューブ102の反発力によって変位した方向とは逆方向(ハウジング101の径方向外側)にローラ103が変位する。これによって、チューブ102内部の圧力上昇が解消されると、ローラ103はチューブ102を押しつぶす形態に復帰する。
【0058】
また、本実施形態では、ボルト213及びナット214間の距離に応じて、アーム212同士が接近離間する方向に移動し、バネ部材202が伸縮するようになっている。このため、ハウジング101とローラ103との間隔を調整することができる。この間隔を調整することは、ローラ103によるチューブ102の押圧力F1を調整することになる。
さらに、ハウジング101とローラ103との間隔の調整によりローラ103によるチューブ102の押圧力F1を調整することで、バネ部材202自体を変更することなく、ローラ103からチューブ102に作用する押圧力F1を変更することができる。
【0059】
しかも、ボルト213及びナット214間の距離を調整して、ローラ103をチューブ102から離間させることで、ローラ103によるチューブ102の押圧が解除される。これにより、チューブ102がローラ103による押圧力F1を常に受けることを防止できる。そのため、チューブ102の劣化進行を抑制でき、チューブポンプMの長寿命化を図ることができる。
【0060】
なお、上述した第3実施形態では、調整機構204によりバネ部材202を圧縮し、チューブ102からローラ103を離間させる構成について説明した。しかし、これに限らず、図13に示すように、押圧解除部材220を別体で設けるような構成にしても構わない。
具体的に、押圧解除部材220は、C字状の部材であり、アーム部221の両端に、アーム部221の延在方向に直交する規制部222が形成されている。そして、バネ部材202を圧縮した状態で各規制部222により軸受部材203同士を挟持することで、ローラ103をチューブ102から離間させた状態で保持できる。
【0061】
以上、本発明の実施形態について図面を参照して詳述したが、具体的な構成はこの実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
例えば、上述した実施形態では、チューブ102をハウジング101に沿わせて円弧状に配索する構成について説明したが、ローラ103がハウジング101との間でチューブを押し潰しながら移動する構成であれば、適宜設計変更が可能である。例えば、チューブ102を直線状に配索しても構わない。
【0062】
さらに、上述した実施形態では、チューブポンプMを用いて加圧充填する構成について説明したが、これに限られない。すなわち、液体噴射ヘッド4における噴射面に対向する位置に吸引キャップを設け、この吸引キャップ内を吸引する際にチューブポンプMを用いても構わない。
また、押圧力調整手段は、チューブ102からローラ103に作用する力に応じて、チューブ102から接近離間する構成であれば、適宜設計変更が可能である。例えば、ローラ103を可倒可能なアームの先端で支持し、弾性部材を介してローラ103をチューブ102側に向かって付勢するように構成してもよい。この場合であっても、チューブ102内の圧力に応じてローラ103が変位するので、上述した実施形態と同様の効果を奏することができる。
【符号の説明】
【0063】
1…液体噴射記録装置 4…液体噴射ヘッド 50…液体収容体 51…液体供給管 102…チューブ 103…ローラ(押圧手段) 105…モータ軸(回転軸) 121…オイルダンパー(押圧力調整手段) 124,131…シリンダ 151,201…押圧力調整手段 127,133…ピストン 128,134…ピストンロッド 152…カム部材 153…摺動部材 202…バネ部材 204…調整機構 M…チューブポンプ P…オイル(第1流体) Q…ガス(第2流体)
【特許請求の範囲】
【請求項1】
可撓性を有するチューブと、
前記チューブを外側から押圧しながら、前記チューブの軸方向に沿って移動する押圧手段と、
前記押圧手段が前記チューブを押し潰しながら移動することで、前記チューブ内の流体を圧送するチューブポンプにおいて、
前記押圧手段には、前記チューブから前記押圧手段に作用する力に応じて、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記押圧手段を変位可能とする押圧力調整手段が設けられていることを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
前記押圧力調整手段は、混合不能な第1流体及び第2流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内を移動可能なピストンと、一端側が前記ピストンに連結される一方、他端側が前記シリンダから突出して前記押圧手段を支持するピストンロッドと、を有し、
前記ピストンロッドは、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記シリンダ内を進退可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のチューブポンプ。
【請求項3】
前記シリンダは、前記ピストンが移動する内筒と、前記内筒と同軸で、かつ外側に配置された外筒とを有していることを特徴とする請求項2記載のチューブポンプ。
【請求項4】
前記押圧力調整手段は、回転軸に取り付けられたカム部材と、一端側が前記カム部材の周面を摺動する一方、他端側が前記押圧手段を支持する摺動部材と、を有し、
前記摺動部材は、前記カム部材の回転に伴って前記チューブから接近離間する方向に向かって変位可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のチューブポンプ。
【請求項5】
前記押圧力調整手段は、前記押圧手段を前記チューブに向けて付勢するバネ部材と、前記バネ部材のバネ長を調整することにより前記バネ部材の付勢力を調整する調整機構とを備えていることを特徴とする請求項1記載のチューブポンプ。
【請求項6】
液体が収容される液体収容体と、
前記液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
液体供給管を通じて前記液体収容体内の前記液体を前記液体噴射ヘッドに向けて圧送する請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のチューブポンプと、を有していることを特徴とする液体噴射記録装置。
【請求項1】
可撓性を有するチューブと、
前記チューブを外側から押圧しながら、前記チューブの軸方向に沿って移動する押圧手段と、
前記押圧手段が前記チューブを押し潰しながら移動することで、前記チューブ内の流体を圧送するチューブポンプにおいて、
前記押圧手段には、前記チューブから前記押圧手段に作用する力に応じて、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記押圧手段を変位可能とする押圧力調整手段が設けられていることを特徴とするチューブポンプ。
【請求項2】
前記押圧力調整手段は、混合不能な第1流体及び第2流体が封入されるシリンダと、前記シリンダ内を移動可能なピストンと、一端側が前記ピストンに連結される一方、他端側が前記シリンダから突出して前記押圧手段を支持するピストンロッドと、を有し、
前記ピストンロッドは、前記チューブから接近離間する方向に向かって前記シリンダ内を進退可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のチューブポンプ。
【請求項3】
前記シリンダは、前記ピストンが移動する内筒と、前記内筒と同軸で、かつ外側に配置された外筒とを有していることを特徴とする請求項2記載のチューブポンプ。
【請求項4】
前記押圧力調整手段は、回転軸に取り付けられたカム部材と、一端側が前記カム部材の周面を摺動する一方、他端側が前記押圧手段を支持する摺動部材と、を有し、
前記摺動部材は、前記カム部材の回転に伴って前記チューブから接近離間する方向に向かって変位可能に構成されていることを特徴とする請求項1記載のチューブポンプ。
【請求項5】
前記押圧力調整手段は、前記押圧手段を前記チューブに向けて付勢するバネ部材と、前記バネ部材のバネ長を調整することにより前記バネ部材の付勢力を調整する調整機構とを備えていることを特徴とする請求項1記載のチューブポンプ。
【請求項6】
液体が収容される液体収容体と、
前記液体を噴射する液体噴射ヘッドと、
液体供給管を通じて前記液体収容体内の前記液体を前記液体噴射ヘッドに向けて圧送する請求項1ないし請求項5の何れか1項に記載のチューブポンプと、を有していることを特徴とする液体噴射記録装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【公開番号】特開2012−57525(P2012−57525A)
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−201119(P2010−201119)
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年3月22日(2012.3.22)
【国際特許分類】
【出願日】平成22年9月8日(2010.9.8)
【出願人】(501167725)エスアイアイ・プリンテック株式会社 (198)
【Fターム(参考)】
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