チューブ及び遠心分離装置
【課題】本発明は遠心分離後のピペットを用いた上澄み液の吸い上げ操作において、沈殿物を吸う虞が少なく、誰でも容易に上澄み液のみを吸い取ることができるチューブを提供することを目的とする。
【解決手段】マイクロチューブ1は、容器本体2の底部6に、台座18が形成されるとともに、台座18と容器本体2の内壁7との間に空間が形成されている。台座18には、容器本体2の最深部近傍から台座18の頂面22まで上澄み液27が流れる流路が形成されている。台座18の頂面22は、上澄み液27を吸引する吸引具23の先端23aを乗せることができるように形成されている。そして、試料を遠心分離することにより、沈殿物28が、前記空間を形作る少なくとも容器本体2の内壁7に凝集されるように使用される。
【解決手段】マイクロチューブ1は、容器本体2の底部6に、台座18が形成されるとともに、台座18と容器本体2の内壁7との間に空間が形成されている。台座18には、容器本体2の最深部近傍から台座18の頂面22まで上澄み液27が流れる流路が形成されている。台座18の頂面22は、上澄み液27を吸引する吸引具23の先端23aを乗せることができるように形成されている。そして、試料を遠心分離することにより、沈殿物28が、前記空間を形作る少なくとも容器本体2の内壁7に凝集されるように使用される。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学、分子生物学などの試験、実験に用いられるチューブ及びこのチューブ内に収容した試料を遠心分離する遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学、分子生物学固体などの試験、実験において、生体高分子の抽出を行う手段として、マイクロチューブに生体高分子等の懸濁液を入れ、遠心分離機を用い遠心分離を行うことにより抽出を行う方法がある。遠心力を作用させると、懸濁液は上澄み液と生体高分子の沈殿物とに遠心分離される。その後、上澄み液をピペットにより吸い上げることになるが、このとき沈殿物を吸い込まずに上澄み液のみを吸い上げることが望ましい。このような沈殿物を吸い込まずに上澄み液のみを吸い上げる提案が、例えば、特許文献1に提案されている。
【0003】
図17乃至図19を用いて、特許文献1に記載のチューブ101を説明する。図17(a)は、従来例を示すチューブ101の斜視図である。図17(b)は、従来例を示すチューブ101の断面図である。図18は、従来例に係るチューブ101を遠心分離機102に挿入した状態の断面図である。図19は、従来例に係るチューブ101で遠心分離後、沈殿物103が形成された状態で上澄み液の吸い取り状態を示した図である。
【0004】
従来例に係るチューブ101は、図17(a)、(b)で示す通り、一方端に開口端104、他方端に底105のある有底筒状の形状をしている。底105は、第一の隅部106と第二の隅部107を有している。その底105の断面形状は、第一の隅部106の曲率半径が小さく、第二の隅部107の曲率半径が大きくなっている。そのため、第二の隅部107は第一の隅部106に比較し、チューブ101の開口端104の中心からの距離が遠くなっている。
【0005】
図18で示す通り、従来例1に係るチューブ101を、第二の隅部107が遠心分離機102の回転軸線CA1から最も遠い位置に配置し、懸濁液等を入れたチューブ101に遠心力を作用させたとする。そうすると、沈殿物103はチューブ101の第二の隅部107に凝集される。
【0006】
図19で示す通り、沈殿物103が凝集される第二の隅部107と対向する位置に位置する第一の隅部106にピペット108の先端108aを位置決めすることにより、沈殿物103を吸わずに上澄み液109の吸い上げを行うようになっている。
【特許文献1】特開平06−27759
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術における上澄み液109の吸い取り方法では、ピペット108の吸引時に誤って勢いよく吸い込んでしまうと、上澄み液109を吸い取る勢いで沈殿物103が浮遊してしまい、沈殿物102を吸い込んでしまう虞があった。また、従来技術における吸引の方法では、上澄み液109をすべて吸い上げようとすると、図19で示す通り、ピペット108の先端108aが沈殿物103よりも低い位置で位置決めされることになり、上澄み液109の流れによって沈殿物103がピペット108の吸引口に近づいてしまうこととなる結果、沈殿物103を吸い込んでしまう虞があった。そのため、沈殿物103を吸い込まないように操作するためには、慎重な操作が必要であり、操作には慣れが必要であった。
【0008】
そこで、本発明は遠心分離後の上澄み液の吸い取り操作において、沈殿物を吸う虞が少なく、誰でも容易に上澄み液のみを吸い取ることが容易なチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、試料を上澄み液と沈殿物とに遠心分離するために使用されるチューブに関するものである。この発明に係るチューブは、上端が開口部である内部空間を有する有底筒状の容器本体と、前記開口部を開閉可能に封止する蓋体と、を備えている。そして、前記容器本体の底部側には、台座が形成されるとともに、前記台座と前記容器本体の内壁との間に空間が形成されている。前記台座には、前記容器本体の最深部近傍から前記台座の頂面まで前記上澄み液が流れる流路が形成されている。前記台座の前記頂面は、前記上澄み液を吸引する吸引具の先端を乗せることができるように形成されている。そして、前記試料が前記チューブに入った状態で前記チューブの前記試料を遠心分離することにより、前記沈殿物が、前記空間を形作る少なくとも前記容器本体の前記内壁に凝集されるように使用され、前記上澄み液を吸引することができることを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明に係るチューブにおいて、前記流路は、毛細管現象によって前記上澄み液を前記台座の前記頂面まで引き上げるようになっていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明に係るチューブにおいて、前記台座の前記頂面には、前記吸引具の先端がスライド移動するのを妨げる突起又は凹みの少なくとも一方が形成されたことを特徴としている。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の発明に係るチューブにおいて、前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記チューブの前記容器本体の中心軸と、前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態における前記チューブの質量中心と、がほぼ一致することを特徴としている。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3の発明に係るチューブにおいて、前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態で、前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記台座の図心、前記容器本体の中心軸、及び前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態での質量中心の順でほぼ一直線上に位置することを特徴としている。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の発明に係るチューブにおいて、前記内部空間の前記内壁で、且つ、前記沈殿物が凝集する部分には、前記沈殿物を収容する凹みである沈殿物収容部が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記チューブを所定の角度で保持するチューブ保持穴が形成されたアングルロータと、前記アングルロータを回転駆動するロータ駆動手段と、前記チューブ保持穴に収容される前記請求項1乃至6のいずれかに記載されたチューブと、を備えた遠心分離装置である。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項7の発明に係る遠心分離装置において、前記チューブ保持穴内に前記チューブを収容する際に、前記チューブに形成されたチューブ側回り止め手段と前記ロータに形成されたロータ側回り止め手段とを係合することにより、前記チューブが前記ロータに対して位置決めされると共に、前記チューブ保持穴内における前記チューブの回動が阻止されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係るチューブによれば、遠心分離後の上澄み液の吸い取りにおいて、沈殿物は、台座が形成される場所とは異なるチューブの内壁の底部側に凝集される。そして、吸引具の先端の位置決めを台座の頂面で行うことができる。このため、操作者の誤操作により吸引具の先端が沈殿物の近傍に位置してしまうことにより沈殿物を誤って吸い込んでしまったり、上澄み液の流れによって沈殿物を誤って吸い込んでしまうということを防止することができ、誰でも容易にピペットを用いて沈殿物を吸い込まずに上澄み液のみ吸い上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
[第1実施形態]
(チューブの構成)
図1乃至図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るチューブについて説明する。なお、以下ではチューブが透明な合成樹脂(例えば、ポリプロピレン)で、射出成形により一体成形されたマイクロチューブ1である場合について説明する。図1(a)は、容器本体2の開口端3から蓋4を外すことによって開口端3が解放された状態(以下、解放状態)におけるマイクロチューブ1の正面図である。図1(b)は、蓋4により開口端3が封止された状態(以下、封止状態)のマイクロチューブ1の正面図である。図2(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1の平面図であり、図2(b)は、図2(a)のX1−X1線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図2(c)は、マイクロチューブ1の封止状態の断面図である。
【0019】
図1乃至図2に示す通り、マイクロチューブ1は容器本体2と蓋(蓋体)4とを備えている。容器本体2は、一方端に内部空間5の開口端3を有し、他方端に底部6を有する有底筒状の形状をしている。容器本体2の内部空間5は、容器本体2の内壁7で構成され、図示しない試料を入れることができるようになっている。容器本体2は、容器本体2の中心軸CLに垂直に切断すると円形になっている上部2aと、底部6に向かうに従って収束する略円錐台形状の下部2bとからなり、上部2aの上端である開口端3には、他部よりも大径のリング状の鍔部8が形成されている。此処で、底部6とは、容器本体2の内壁7の筒状部分における下端を塞ぐ部分であって、最深部を含む内壁7の曲面部分のことをいう。
【0020】
図2(b)に示す通り、蓋4は、容器本体2の開口端3を着脱自在に封止することができる。容器本体2の鍔部8には、折り曲げることが可能な連結部10の一端が一体に固定され、連結部10の他端には、容器本体2の内部空間5の開口端3を封止する蓋4が一体に形成されている。なお、この蓋4及び連結部10は、容器本体2と同一材料で且つ容器本体2と一体に成形されるようになっている。
【0021】
蓋4は、容器本体2の内部空間5の開口端3に嵌め込まれる円筒状嵌合部11と、この円筒状嵌合部11が容器本体2の開口端3に嵌め込まれると容器本体2の鍔部8の上面8aに重なり合う円板状部12と、円板状部12から径方向へ一体的に突出し作業者が指先を引っかけることが可能なタブ部13と、を有している。図2(c)に示す通り、この蓋4は、円筒状嵌合部11が容器本体2の内部空間5の開口端3に嵌め込まれると、円筒状嵌合部11が容器本体2の内部空間5の内壁7にしまりばめ状態で密着し、蓋4が容器本体2の鍔部8の上面8aに密着する。これにより、容器本体2の内部空間5の開口端3が、蓋4によって確実に封止され、図3で示す、遠心分離機15により遠心力を作用させたとしても容易に抜けないようになっている。なお、封止状態において、本発明に係るマイクロチューブ1の質量中心は、容器本体2の中心軸CL近傍に位置しているものとする。また、質量中心が容器本体2の中心軸CLから大きく外れる場合は、タブ部13の長さを調整することにより、封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心を容器本体2の中心軸CL近傍へ位置するよう適宜設計変更することができる。これにより図3で示す遠心分離機15のチューブ保持穴16に挿入し、遠心力を発生したとしても、チューブ保持穴16内で回動しないようになっている。
【0022】
一方、封止状態において、蓋本体のタブ部13を指先で摘んで上方へ引っ張ると、円筒状嵌合部11が容器本体2の内部空間5から抜け出し、蓋4が連結部10の折り返し部分を回動支点として回動し、容器本体2の開口端3が完全に解放される。
【0023】
また、蓋4は、容器本体2の内部空間5への異物(大気中の塵やウィルス等)の混入を防止することができると共に、容器本体2に収容した試料及び抽出液の漏出を防止することができる。また、本実施形態の容器本体2は、蓋4が連結部10を介して容器本体2の鍔部8に一体に形成されたものであるため、蓋4を紛失するようなことがない。
【0024】
図2に示す通り、マイクロチューブ1の底部6には、マイクロチューブ1の中心軸CLから離れた位置から上方に向かって立ち上がる台座18が突出形成されている。底部6には、台座18と前記容器本体2の内壁7との間に空間ができる。図2(a)に示す通り、台座18を平面視すると、略半月の形状から、幅方向に対して垂直に等間隔で2個のスリット20(流路)が形成された形状をしている。そして、図2(b)に示す通り台座18は、マイクロチューブ1の底部6から開口端3へ向かって所定の高さを持ち、その側面21が内壁7から中心軸CL近傍まで突出している。台座18の頂面22は、中心軸CLに対して直交し、マイクロチューブ1の底部6から所定の高さを持ち、図4(a)で示すピペットチップ23(吸引具)の先端23a(吸引端)の載置面を構成する。台座18の側面21は、中心軸CLに対して平行、且つ、頂面22に対して直交するよう形成されている。台座18のスリット20は、台座18の高さ方向については、台座18の頂面22から底部6まで、台座18の奥行き方向については台座18の側面21からマイクロチューブ1の内壁7まで形成されている。このような台座18を有するマイクロチューブ1は、台座18の頂面22にピペットチップ23の載置面を有することにより、ピペットチップ23の先端23aがマイクロチューブ1の底部6よりも高い高さ位置で位置決めすることができる。
【0025】
また、スリット20が形成されていることにより、マイクロチューブ1に液体を注入すると台座18の頂面22より下に存する液体は、スリット20の間に浸入する。このスリット20の間に浸入した液体はスリット20に沿って流れ、スリット20は液体の流路を構成する。このため、マイクロチューブ1内の液面が台座18の頂面22より上である場合はもちろんのこと、液面が下がったとしても、台座18の頂面22から液体を吸うことができる。
【0026】
また、スリット20は、液体は浸入することができるが、固形物は入らないようになっている。例えば、動物細胞の生体高分子に遠心力を作用させると細胞同士の接着があり、一塊になる傾向が強いが、このようなものはスリット20の内部に入らないようになっている。
【0027】
また、台座18のスリット20内には、一定条件下において、スリット内部に浸入した液体を、台座18の頂面22の近傍まで引き上げるいわゆる毛細管現象が発生する。此処で、毛細管現象を発生させる台座18のスリット幅等の寸法は、使用される溶液により、実験等によって最適な数値が適宜決定される。以下では、台座18のスリット内部20に毛細管現象が発生するマイクロチューブ1を用いた場合で説明する。
【0028】
(マイクロチューブの使用状態)
図3乃至図5を用いて、このようなマイクロチューブ1の使用状態を説明する。図3は、遠心分離機15のアングルロータ24のチューブ保持穴16にマイクロチューブ1が挿入され、所定の位置に配置された様子を示す図である。図4(a)は、遠心分離後、マイクロチューブ1の台座18の頂面22に位置決めされたピペットチップ23により上澄み液27を吸い上げる状態を示した図である。図4(b)は、台座18の頂面22より液面が下がった状態で上澄み液27を吸い上げる状態を示した図である。図4(c)は、マイクロチューブ1を傾けて上澄み液27を吸い上げる状態を示した図である。図5(a)は、毛細管現象により上澄み液27がスリット20内で保持される様子を示した図である。図5(b)は、毛細管現象が発生しない状態でのスリット20内の上澄み液27の様子を示した図である。
【0029】
ここでは、生体高分子の懸濁液26を遠心分離により生体高分子を沈澱させ、上澄み液27を除去する手順を説明する。先ず、蓋4を開放した容器本体2の開口端3から生体高分子の懸濁液26を注入し、開口端3を蓋4により封止する。そして、遠心分離機15のチューブ保持穴16にマイクロチューブ1を挿入する。此処で、マイクロチューブ1は、チューブ保持穴16内で回動可能となっている。マイクロチューブ1を挿入後、図3で示す通り、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で、台座18を平面視した場合の図心(以下、台座の図心という。)CFが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるような位置(以下、所定の位置という。)に配置する。そして、遠心分離機15により遠心力を作用させると、マイクロチューブ1の底部6の内、遠心分離機15の回転軸25から最も遠い位置L2に、最も大きな遠心力が作用する。従って、生体高分子は台座18の側面21と対向する位置におけるマイクロチューブ1の底部6aに一塊の沈殿物28として凝集する。すなわち、マイクロチューブ1は、沈殿物27が容器本体2の内壁7における低部6側に凝集されるように使用され、沈殿物27は、台座18から離れた位置に凝集する。操作者は、遠心分離後、遠心分離機15からマイクロチューブ1を取り出し、ピペットにより上澄み液27の除去を行う。
【0030】
図4(a)で示す通り、台座18の頂面22は、沈殿物27よりも上方へ位置し、ピペットチップ23の先端23a位置決めはマイクロチューブ1の台座18の頂面22で行う。これにより、ピペットチップ23の先端23aの位置決めは、沈殿物28が凝集される部分より高い位置で、且つ、沈殿物28が凝集する場所とは容器本体2の中心軸CLを挟んで反対側で行うことができる。
【0031】
ピペットチップ23内を減圧すると、大気圧との圧力差により上澄み液27はピペットチップ23内に吸い上げられる。このとき、マイクロチューブ1内の上澄み液27は、台座18に形成されているスリット20の間を通りピペットチップ23に吸引される。スリット20の内部には台座18の側面21に形成されたスリット20から上澄み液27が補充される。
【0032】
図4(b)で示す通り、上澄み液27が吸い続けられ、台座18の頂面22よりも上澄み液27の液面が下がったとする。この場合においても、スリット20の内部には既に台座18の頂面22の近傍と台座18の外に存する上澄み液27とを繋ぐ流路が形成されているため、上澄み液27はスリット20に沿って圧力差により吸い続けることができる。そして、上澄み液27の除去が進み、上澄み液27の液面が底部6近傍まで達したとする。この場合においても台座18には底までスリット20が形成されていることにより、底部近傍の上澄み液27もスリット20の内部に浸入することができるため底近傍の上澄み液27も吸い取ることができる。
【0033】
さらに、図4(c)で示す通り、上澄み液27がほとんど吸い取られ、上澄み液27がスリット20の内部に浸入し難くなった場合は、マイクロチューブ1をスリット20が下になるように傾けることによりスリット20の内部へ浸入させ易くさせ、上澄み液27をスリット20の内部に浸入させる。そして、ピペットの吸引力により頂面22へ運ばれ吸い取ることができる。従って、ピペットチップ23の先端23aを台座18の頂面22に位置決めしたまま、上澄み液27をほとんど残らず吸い取ることができる。
【0034】
また、図5(a)に示す通り、台座18の頂面22よりも上澄み液27の液面が下がった状態でピペットによる吸引を止めたとする。先に述べた通り、スリット20の内部の上澄み液27には毛細管現象が発生することにより、スリット20の内部に位置する上澄み液27は、台座18の頂面22の近傍とスリット20の外部との液体を繋ぐようにスリット20の内部で保持される。従って、この場合においても、引き続き台座18の頂面22から余計な空気を吸う事なく効率的に上澄み液27を吸い続けることができる。また、効率的に上澄み液27を吸い取ることができるため、毛細管現象が発生しない構成に比較して、吸い取られる上澄み液27の流れにより沈殿物28が浮遊してしまうことを抑えることができる。
【0035】
なお、台座18のスリット内部20に毛細管現象が発生しないマイクロチューブ1で、上澄み液27の液面が台座18の頂面22よりも低い位置で吸い上げを行ったとする。この場合は、毛細管現象が発生するマイクロチューブ1と比較して、図5(b)で示す通り、台座18の頂面22と上澄み液27の液面との間に距離があるため、ピペットで吸い上げを行うためには、毛細管現象が発生する構成に比べて強い吸引力が必要となる。そのため吸引時において上澄み液27が急激に移動することとなり、上澄み液27の流れにより沈殿物28が浮遊してしまう虞がある。
【0036】
また、上澄み液27を除去する手順で説明したが、本発明に係るマイクロチューブ1は、遠心分離後の上澄み液27を使用する場合にも用いることができる。例えば、マイクロチューブ1に乳鉢で磨砕した検体に抽出液を加えた溶液(試料)を注入し、遠心分離機15により遠心力を作用させ、これにより検体から抽出対象物が抽出されたとする。このような場合に、抽出後の検体の沈殿物を吸わずに、後の工程に使用される抽出対象物を含んだ上澄み液のみを吸い上げるといった使用方法にも用いることができる。
【0037】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取りにおいて、沈殿物28が容器本体2の中心軸CLを挟んで台座18の壁面に対向する位置に凝集する。そして、ピペットチップ23の先端23aの位置決めを台座18の頂面22で行うため、沈殿物28が凝集する位置よりも高い高さで位置決めすることができる。このため、操作者の誤操作によりピペットチップ23の先端23aが沈殿物28の近傍に位置してしまい、ピペットチップに沈殿物28を誤って吸い込んでしまったり、上澄み液27の流れによって浮遊した沈殿物28を誤ってピペットチップに吸い込んでしまうということを防止することができ、誰でも容易にピペットを用いて沈殿物28を吸い込まずに上澄み液27のみ吸い上げることができる。さらに上澄み液27の除去作業においては、上澄み液27のみをほとんど吸い取ることができ、これにより沈殿物28の回収効率を上げることができる。
【0038】
また、抽出対象物を含んだ上澄み液27を後の工程に使用する場合においては、後の工程に使用される上澄み液のみを吸い取ることができる。
【0039】
(第1変形例)
図6を参照して、第1実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第1変形例のマイクロチューブ1は、台座18の頂面22を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0040】
図6(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第1変形例の平面図であり、図6(b)は、図6(a)のX2−X2線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図6(c)は、上澄み液27の吸い上げ状態を示す断面図である。
【0041】
図6(a)、(b)に示す通り台座18の頂面22には、スリット20と直交するような溝30が一定の距離をおいて複数形成されることにより、凹凸形状が形成されている。
【0042】
(本実施例の作用)
図6(c)を参照してこのようなピペットチップ23の載置面を持つマイクロチューブ1において、上澄み液27の吸い取り作業を説明する。先に述べた通り、台座18の頂面22にはスリット20と直交するような溝30が一定の距離をおいて複数形成されることにより、ピペットチップ23の先端23aの載置部に凹凸形状が形成されている。これにより、ピペットチップ23の先端23aが凹凸形状に引っ掛かることとなり、台座18の頂面22に位置決めされたピペットチップ23の先端23aがスライド移動し難くなっている。
【0043】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取り作業において、台座18の頂面22が凹凸形状に形成されていることにより、台座18の頂面22に一度位置決めされたピペットチップ23の先端がスライド移動し難くなっている。そのため第1の実施形態の効果は奏することはもちろんのこと、第1の実施形態と比較してピペットチップ23の先端23aの位置ズレに伴う沈殿物28の誤吸引を少なくする効果を奏する。
【0044】
(第2変形例)
(マイクロチューブの構成)
図7を参照して、第1実施形態の第2変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第2変形例のマイクロチューブ1は、台座18の頂面22を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0045】
図7(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第2変形例の平面図であり、図7(b)は、(a)のX3−X3線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図7(c)は、上澄み液27の吸い上げ状態を示す断面図である。
【0046】
図7(a)、(b)に示す通り、台座18の頂面22には、上方に向かって、台座18の側面21と頂面22とが交差する位置である頂面22の縁から上方に向かって凸部が連設されている。
【0047】
(本実施例の作用)
図7(c)を参照してこのようなピペットチップ23の載置面を持つマイクロチューブ1において、上澄み液27を吸い取り作業を説明する。先に述べた通り、台座18の頂面22には、上方に向かって、台座18の側面21と頂面22とが交差する位置である載置部の縁から上方に向かって凸部が連設されている。これにより、頂面22内に位置決めされたピペットチップ23の先端23aが凸部に引っ掛かることとなり、ピペットチップ23の先端23aが台座18の頂面22からはみ出ることを規制する。
【0048】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取り作業において、台座18の頂面22の縁に凸部が連設されていることにより、台座18の頂面22に位置決めされたピペットチップ23の先端23aは、台座18の頂面22からはみ出ないようになっている。そのため第1の実施形態の効果は奏することはもちろんのこと、第1の実施形態と比較してピペットチップ23の先端23aの位置ズレに伴う沈殿物28の誤吸引を少なくする効果を奏する。
【0049】
(第3変形例)
図8を参照して、第1実施形態の第3変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第3変形例のマイクロチューブ1は、容器本体2の下部2aの内壁7に形成される沈殿物収容部32を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0050】
図8(a)、(b)に示す通り、沈殿物収容部32は、台座18の側面21と対向する位置であって、マイクロチューブ1が遠心分離機15に傾斜をもって保持された場合に、マイクロチューブ1の内部空間5のうち最も大きな遠心力が作用する部分、すなわち沈殿物が凝集する部分に形成されている。また、台座18との関係では、平面視すると沈殿物収容部の図心CF2、容器本体2の中心軸CL、台座18の図心CFの順で一直線上に位置している(図8(a)参照)。沈殿物収容部32は、長半径に沿って切った半楕円体形状を、内壁7から切り抜いた後に形成される形状をしており、沈殿物収容部32を平面視すると横長の楕円形状をしており、側面視すると内壁7から三日月形状が切り抜かれた後に形成される形状をしている。なお、沈殿物収容部32は、マイクロチューブ1が遠心分離機15に傾斜をもって保持された場合に、マイクロチューブ1の内部空間5のうち最も大きな遠心力が作用する部分(図3参照)に形成されていることが好まく、使用されるアングルロータ24のチューブを保持する角度や、マイクロチューブ1の形状を考慮して最も大きな遠心力が作用する位置に形成されるように適宜設計変更することができる。
【0051】
なお、沈殿物収容部32を形成することによりマイクロチューブ1の肉厚が一部他と比べて薄くなるが、封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMに影響を与えるほどのものではなく、仮に封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMが容器本体2の中心軸CLから大きく外れた場合、タブ部13の長さを調整することにより、封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMを容器本体2の中心軸CL近傍へ位置するよう適宜設計変更することができる。これにより遠心分離機15のチューブ保持穴16に挿入し、遠心力を発生したとしても、チューブ保持穴16内で回動しないようになっている。
【0052】
また、沈殿物収容部32を形成するため、マイクロチューブ1の一部の肉厚が他の肉厚と比べて薄くなるが、遠心分離機15からかかる遠心力に応じて、マイクロチューブ1の下部7を円筒形にすることにより、適宜、遠心力に耐える肉厚に設計変更することが可能である。従って、遠心分離機15により遠心力をかけても、マイクロチューブ1は沈殿物収容部32から破損することはない。
【0053】
(本実施例の作用)
このような沈殿物収容部32を持つマイクロチューブ1において、溶液中の動物細胞について遠心力を作用させることにより沈殿させた場合を説明する。先に述べた通り、動物細胞の場合は、遠心力を作用させた場合に細胞同士の接着があり、一塊になる傾向がある。
【0054】
溶液が注入されたマイクロチューブ1は、図3で示す通り、遠心分離機15のチューブ保持穴16内で、台座18の図心CFが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるようにマイクロチューブ1を配置する。先に述べた通り、沈殿物収容部32は、台座18の側面21と対向する位置であって、マイクロチューブ1が遠心分離機15に傾斜をもって保持された場合に、マイクロチューブ1の内部空間5のうち最も大きな遠心力が作用する部分、すなわち沈殿物が凝集する部分に形成されている。従って、動物細胞は沈殿物収容部32に一塊の沈殿物28として凝集する。
【0055】
図8(c)で示す通り、操作者は、遠心分離機15よりマイクロチューブ1を取り出し、台座18の頂面22にピペットチップ23の先端23aを位置決めし、ピペットにより上澄み液27の吸い取りを行う。上澄み液27の吸い取りが始まると台座18の側面21に形成されたスリット20の内部に上澄み液27が流れる。第3変形例に係るマイクロチューブ1には、沈殿物収容部32が形成され、沈殿物28は沈殿物収容部に収容されるため、上澄み液27の流れによる影響を受け難くなっている。従って、上澄み液27の除去中に一塊になった沈殿物28の剥離を抑えることにより上澄み液27中に沈殿物28が浮遊することを抑え得ることができる。
【0056】
なお、沈殿物収容部がない構成の場合、上澄み液27の流れにより一塊となった動物細胞の沈殿物28の剥離が発生する虞があり、沈殿物28が上澄み液27中に浮遊することにより、上澄み液27の吸い取り作業において、沈殿物28を吸い込んでしまう虞がある。
【0057】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離により凝集する沈殿物28が沈殿物収容部32に収容されることにより、上澄み液27の吸い取りを行う際に発生する上澄み液27の流れの影響を受け難くなっている。そのため沈殿物28の剥離を防止することができる。これにより剥離した沈殿物28を吸い込むことがなくなるため、第1の実施形態よりも、さらに沈殿物28を吸い込むことなく上澄み液27のみを吸い取ることができる。
【0058】
(第4変形例)
図9を参照して、第1実施形態の第4変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第4変形例のマイクロチューブ1は、タブ部13を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0059】
図9(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第4変形例の正面図であり、図9(b)は、第4変形例の平面図である。図9(c)は、図9(b)のX5−X5線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。
【0060】
図9(a)に示す通り、本変形に係るマイクロチューブ1のタブ部13の長さは通常のマイクロチューブ1のものよりも長くなっている。図6(b)に示す通り、平面視すると、タブ部13が伸びる方向は、容器本体2の中心軸CLを挟んで台座18が形成される方向とは反対方向に延びている。これにより封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMが、容器本体2の中心軸CLからズレている。台座18の図心CF、容器本体2の図心CF、容器本体2の中心軸CLの位置関係は、マイクロチューブ1を平面視すると、台座18の図心CF、容器本体2の中心軸CL、質量中心CMの順で一直線上に位置している。
【0061】
(本実施例の作用)
図10(a)、(b)を参照して、操作者がマイクロチューブ1をチューブ保持穴16に所定の位置で配置しなかった場合について説明する。図10(a)は、操作者がマイクロチューブ1をチューブ保持穴16内に所定の位置で配置しなかった場合の図であり、図10(b)は、遠心分離後のマイクロチューブ1の配置状態を示した図である。
【0062】
本発明に係るマイクロチューブ1は、図3に示す通り、遠心分離機15のチューブ保持穴16内で、台座18の図心CFが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1となる位置、すなわち所定の位置でマイクロチューブ1を配置して遠心分離に用いられるものであるが、図8(a)に示す通り、操作者が、所定の位置に配置しない場合がある。
【0063】
しかしながら、第4変形例に係るマイクロチューブ1には、図10(a)に示す通りマイクロチューブ1を封止した状態において、平面視すると質量中心CMと容器本体2の中心軸CLとがズレているため、遠心分離機15によりマイクロチューブ1に遠心力を作用させると、質量中心CMは遠心力により回転軸25から離れる方向へ動くように作用する。このとき質量中心CMが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAと容器本体2の中心軸CLとを結ぶ同一線上にないため、マイクロチューブ1には、質量中心CMが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAと容器本体2の中心軸CLとを結ぶ同一線上に位置するように、マイクロチューブ1の中心軸CLを中心としてマイクロチューブ1に回転モーメントが作用する。図10(b)に示す通り、質量中心CMが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAから最も離れて位置すると、質量中心CMが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAと容器本体2の中心軸CLとを結ぶ同一線上となる位置になるので、回転モーメントは作用しなくなりその位置で止まることとなる。此処で、先に述べた通り、封止状態でのマイクロチューブ1を平面視すると台座18の図心CF、容器本体2の中心軸CL、質量中心CMの順で一直線上に位置している。このため、台座18の図心CFが遠心分離機15の回転軸25に最も近づく位置に配置されることとなる。
【0064】
よって、操作者がマイクロチューブ1の挿入時に所定の位置で配置しなかった場合においても、マイクロチューブ1の底部6に形成された台座18が遠心分離機15の回転軸25に対して最も近づくように、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で、所定の位置に回動されるようになっている。
【0065】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、操作者がチューブ保持穴16にマイクロチューブ1を所定の位置に配置しなくとも、遠心力を作用させると所定の位置にマイクロチューブ1が配置される。従って、台座18側に沈澱物28が凝集することを防止することができ、沈殿物28を上澄み液27の吸引時において沈殿物28を吸うことを防止することができる。
[第2実施形態]
(遠心分離装置の構成)
図11、図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る遠心分離装置41について説明する。図11は、遠心分離装置41の断面図を模式的に表した図である。図12(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブ1の正面図である。図12(b)は、第2実施形態に係るマイクロチューブ1の平面図である。図12(c)は、図12(b)のX6−X6線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。なお、この図11〜図12に示す遠心分離装置41は、その基本的構造が図1から図3と一部同一であるため、同一構造には同一符号を付し、重複することになる説明を省略する。
【0066】
図11に示す通り、遠心分離装置41は、遠心分離機15と、マイクロチューブ1と、を備えている。
【0067】
遠心分離機15は、筺体42とアングルロータ24とロータ駆動手段(ロータ駆動手段とは、モータMと図示しない動力伝達手段、ギアトレイン又はベルト伝動機構等をいう。)とを備えている。アングルロータ24は筺体42にとりつけられた図示しない軸受けにより支持された回転軸25により回転自在に保持され、動力伝達手段を介しモータMと連結されて回転するようになっている。
【0068】
アングルロータ24は、略擂り鉢状の凹部が回転軸25と同心に形成されている。その凹部のリング状のテーパー面43には、ほぼ直角に複数のチューブを挿入するためのチューブ保持穴16が回転軸25と同心の円周に沿って間隔をおいて形成されている。チューブ保持穴16を、図示しない中心軸に対して垂直に切断すると、リング状のテーパー面43から中程までは円形状をしており中程から底まではD形状となっている。これにより、チューブ保持穴16の内周面の一部は、底へ向かって中程から底近傍まで平坦面(回り止め手段)44を形成する。そして、この平坦面44は、チューブ保持穴16の軸心(不図示)と平行で、且つ、平坦面44が、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに最も近づく位置をとり、且つ、平坦面44の中心から伸ばした垂線が回転軸25の軸心CAを通る位置に形成されている。此処で、断面が円形状からD形状となるまでの深さをSとする。
【0069】
図12に示す通り、マイクロチューブ1は容器本体2と蓋4とを備えている。容器本体2は、一方端に内部空間5の開口端3を有し、他方端に底部6を有する有底筒状の形状をしている。容器本体2の内部空間5には、図示しない試料を入れることができるようになっている。
【0070】
図12(a)に示す通り、容器本体2の上端にはその開口端3に他部よりも大径のリング状の鍔部8が形成されている。容器本体2の鍔部8の下からHの長さまでは、容器本体2の中心軸CLに垂直に切った断面が円形状となっている。此処で、先に述べた深さSは、長さHより若干深くなっている(図11参照)。そして、チューブの中程から底に向かい一定の長さは、容器本体2の中心軸CLに垂直に切った断面がD形状となっている。これにより、マイクロチューブ1の外壁45の一部には平坦面(回り止め手段)46が形成される。そして、断面形状がD形状となる部分よりも下方側は、その底に向かうに従って収束する略円錐台形状になっている。此処で、底部6とは、容器本体2の内壁7であって、容器本体2の最深部から最深部を囲む曲線部までのことをいう。そして、マイクロチューブ1の外壁45に平坦面46が形成される側の底部6には、開口端3に向かって立ち上がる台座18が形成されている。蓋4と台座18は、第1実施形態と同じ形状になっている。
【0071】
(遠心分離装置の使用状態)
図13(a)(b)を用いて、遠心分離機15にマイクロチューブ1を挿入し所定の位置に配置する様子を説明する。図13(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブ1をチューブ保持穴16に挿入する前の断面図であり、図13(b)は、挿入後の断面図である。
【0072】
図13(a)で示す通り、生体高分子の懸濁液26が注入されたマイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46と、遠心分離機15のチューブ保持穴16の平坦面44とを位置決めする。
【0073】
図13(b)に示す通り、マイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46と、遠心分離機15のチューブ保持穴16の平坦面44とを位置決めした状態で挿入されると、マイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46とチューブ保持穴16に形成された平坦面44とが面接触する。これにより、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で配置されることになる。
【0074】
そして、遠心分離機15により遠心力を作用させると、マイクロチューブ1の底部6の内、遠心分離機15の回転軸25から最も遠い位置L2に、最も大きな遠心力が作用する。従って、生体高分子は台座18の側面21と対向する位置におけるマイクロチューブ1の底部6aに一塊の沈殿物28として凝集する。
【0075】
上澄み液の吸い上げ作業については、マイクロチューブ1の構成が実施形態1とほぼ同一であるので、図4及び図5を用いて説明する。操作者は、遠心分離後、遠心分離機15からマイクロチューブ1を取り出し、ピペットにより上澄み液27の吸い上げを行う。
【0076】
図4(a)で示す通り、ピペットチップ23の先端23aの位置決めはマイクロチューブ1の台座18の頂面22で行う。これにより、ピペットチップ23の先端23aの位置決めは、沈殿物28が凝集される部分より高い位置で、且つ、沈殿物28が凝集する場所とは容器本体2の中心軸CLを挟んで反対側で行うことができる。
【0077】
ピペットチップ23内を減圧すると、大気圧との圧力差により上澄み液27はピペットチップ23内に吸い上げられる。このとき、マイクロチューブ1内の上澄み液27は、台座18に形成されているスリット20の間を通りピペットチップ23に吸引される。スリット20の内部には台座18の側面21に形成されたスリット20から上澄み液27が補充される。
【0078】
図4(b)で示す通り、上澄み液27が吸い続けられ、台座18の頂面22よりも上澄み液27の液面が下がったとする。この場合においても、スリット20の内部には既に台座18の頂面22の近傍と台座18の外に存する上澄み液27とを繋ぐ流路が形成されているため、上澄み液27はスリット20に沿って圧力差により吸い続けることができる。
【0079】
そして、上澄み液27の除去が進み、上澄み液27の液面が底部6近傍まで達したとする。この場合においても台座18には底までスリット20が形成されていることにより、底部近傍の上澄み液27もスリット20の内部に浸入することができるため底近傍の上澄み液27も吸い取ることができる。また、図4(c)で示す通り、上澄み液27がほとんど吸い取られ、上澄み液27がスリット20の内部に浸入しなくなった場合は、マイクロチューブ1をスリット20が下になるように傾けることにより、上澄み液27はスリット20の内部に浸入させる。そして、ピペットの吸引力により頂面22へ運ばれ吸い取ることができる。従って、ピペットチップ23を台座18の頂面22に位置決めしたまま、上澄み液27をほとんど残らず吸い取ることができる。
【0080】
なお、上澄み液27を除去する手順を説明したが、本発明に係る遠心分離装置41は、遠心分離後の上澄み液27を使用する場合にも用いることができる。例えば、マイクロチューブ1に乳鉢で磨砕した試料に抽出液を加えた溶液を注入し、遠心分離機15により遠心力を作用させ、これにより試料から抽出対象物が抽出されたとする。このような場合に、抽出後の試料の沈殿物を吸わずに、後の工程に使用される抽出対象物を含んだ溶液のみを吸い上げるといった使用方法にも用いることができる。
【0081】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離機15の使用時において、マイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46とチューブ保持穴16に形成された平坦面44とが面接触する、これにより、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で保持されることになる。従って、常に遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取りにおいて、沈殿物28が中心軸CLを挟んで台座18の壁面に対向する位置に凝集する。すなわち、沈殿物28が台座18の側に凝集することなく、沈殿物28が中心軸CLを挟んで台座18の壁面に対向する位置に確実に凝集する。そして、ピペットチップ23の先端23aの位置決めを台座18の頂面22で行うため、沈殿物28が凝集する位置よりも高い高さで位置決めすることができるようになっている。このため、操作者の誤操作によりピペットチップ23の先端23aが沈殿物28の近傍に位置してしまい、ピペットチップ23に沈殿物28を誤って吸い込んでしまったり、上澄み液27の流れによって浮遊した沈殿物28をピペットチップ23に誤って吸い込んでしまうということを防止することができ、誰でも容易にピペットを用いて沈殿物28を吸い込まずに上澄み液27のみ吸い上げることができる。さらに上澄み液27の除去作業においては、上澄み液27をほとんど吸い取ることができ、これにより沈殿物28の回収効率を上げることができる。
【0082】
また、抽出対象物を含んだ上澄み液27を後の工程に使用する場合においては、後の工程に使用される上澄み液のみを吸い取ることができる。
【0083】
(第1変形例)
図14、図15を参照して、第2実施形態の第1変形例に係る遠心分離装置41について説明する。第1変形例の遠心分離装置41は、マイクロチューブ1の容器本体2の形状及び連結部10に形成される係合突起(回り止め手段)47、アングルロータ(ロータ)24に形成されるチューブ保持穴16及び係合孔48(回り止め手段)を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例の遠心分離装置41と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0084】
図14は、第2実施形態の第1変形例に係る遠心分離装置41の断面図を模式的に表した図である。図15(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1の正面図である。図15(b)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1の平面図である。図15(c)は、図15(b)のX7−X7線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。
【0085】
アングルロータ24のテーパー面43には、ほぼ直角に複数のチューブを挿入するためのチューブ保持穴16が回転軸25と同心の円周に沿って間隔をおいて形成されている。そして、テーパー面上で、チューブ保持穴16の中心と回転軸25の軸心CAとを結ぶ線上であって、チューブ保持穴16の近傍には係合孔48が形成されている。
【0086】
図15(a)、(b)、(c)に示す通り、容器本体2の鍔部8には、折り曲げることが可能な連結部10の一端が一体に固定され、連結部10の他端には、容器の内部空間5の開口端3を封止する蓋4が一体に形成されている。この連結部10の一端側には、先に述べたアングルロータ24に形成された係合孔に挿入される係合突起47が形成されている。図15(b)に示す通り、係合突起47は、容器本体2の中心軸CLと台座18の図心CFとを結ぶ線上の先に位置している。
【0087】
(遠心分離装置の使用状態)
図16(a)、(b)を用いて、第2実施形態の第1変形例の遠心分離装置41の使用状態を説明する。図16(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1をチューブ保持穴16に挿入する前の断面図であり、図16(b)は、マイクロチューブ1を挿入後の断面図である。
【0088】
図16(a)で示す通り、生体高分子の懸濁液26が注入されたマイクロチューブ1の連結部10に形成された係合突起47と、アングルロータ24に形成された係合孔48と、を位置決めする。
【0089】
図16(b)に示す通り、マイクロチューブ1をチューブ保持穴16に挿入するとともに、マイクロチューブ1の連結部10に形成された係合突起47と、アングルロータ24に形成された係合孔48とを係合させる。これにより、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で配置されることになる。
【0090】
(本実施例の効果)
本変形例においても、第2実施形態とほぼ同等の効果を奏することができる。
【0091】
(第1・第2実施形態のその他の変形例)
なお、以上の説明では、容器本体2、蓋4、連結部10を合成樹脂で、射出成形により一体成形する例で説明したが、材質、成形方法はこれに限定されるものではない。例えば、蓋4、連結部10を別部品にしても良いし、圧縮成形で成形しても良い。
【0092】
また、以上の説明では、チューブをマイクロチューブである場合を例示して説明したが、チューブの種類はこれに限定されず、遠心分離機15に使用されるチューブであればよい。
【0093】
また、以上の説明では、生体高分子の抽出で説明したが、当該マイクロチューブ1の使用方法はこれに限定されるものではなく、反応、培養等に広く用いられる。
【0094】
また、以上の説明ではチューブの下部2bの形状について、略円錐台形状を例示して説明したが、下部2bの形状はこれに限定されるものではなく、チューブの底部6に台座18を形成することができればどのような形状でもよい。例えば、円筒形、半円球形、円錐形等でもよい。
【0095】
また、以上の説明では台座18の側面21の下部から頂面22に形成される流路について、スリット形状を例示して説明したが、流路はこれに限定されるものではなく、台座18の側面21の下部から台座18の頂面22まで流路が形成されており、台座18の頂面22に先端23aが位置決めされたピペットによりチューブ内の液体を吸い上げることができればどのような形状でもよい。例えば、台座18の側面21の下部から台座18の頂面22まで1以上の管を形成してもよい。
【0096】
また、チューブの封止状態で平面視した場合、台座18の図心、容器本体の中心軸、及び封止状態でのチューブの質量中心の順でほぼ一直線上に位置することについて、タブ部13の長さを長くすることを例示して説明したが、これに限定されるものではなく、アングルロータ24に保持されたマイクロチューブ1に遠心力を作用させた後に、チューブがチューブ保持穴16内で所定の位置になるようにチューブ保持穴16内でチューブが回動するようになっていれば良い。例えば、蓋4に鉛等を埋め込んでも良いし、連結部10を金属製のヒンジにすることにより質量中心CMをずらすようにしても良い。この場合、台座18の位置は適宜設計変更される。
【0097】
また、以上の説明では、チューブとアングルロータ24の係合手段をタブ部13の裏面に形成された係合突起とアングルロータ24に形成された係合孔に係合させること等により、アングルロータ24のチューブ保持穴16でのチューブの回動を阻止しつつマイクロチューブ1を所定の位置に配置することを説明したが、これに限定されるものではなく、アングルロータ24のチューブ保持穴16にチューブが挿入された状態において、チューブがチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で位置決めされていればよい。例えば、リング状のゴムのスペーサーをチューブ保持穴16とマイクロチューブ1の間に挟んで位置決めを行い、回動を阻止する構成でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のマイクロチューブは、生化学、分子生物学などの試験、実験に広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1(a)は、容器本体の開口端から蓋を外すことによって開口端が解放された状態におけるマイクロチューブ1の正面図である。図1(b)は、蓋により開口端が封止された状態のマイクロチューブ1の正面図である。
【図2】図2(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブの平面図である。図2(b)は、図2(a)のX1−X1線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。図2(c)は、マイクロチューブの封止状態の断面図である。
【図3】図3は、遠心分離機のアングルロータのチューブ保持穴にマイクロチューブが挿入され、所定の位置に配置された様子を示す図である。
【図4】図4(a)は、遠心分離後、マイクロチューブの台座の頂面に位置決めされたピペットチップにより上澄み液を吸い上げる状態を示した図である。図4(b)は、台座の頂面より液面が下がった状態で上澄み液を吸い上げる状態を示した図である。図4(c)は、マイクロチューブを傾けて上澄み液を吸い上げる状態を示した図である。
【図5】図5(a)は、毛細管現象により上澄み液がスリット内で保持される様子を示した図である。図5(b)は、毛細管現象が発生しない状態でのスリット内の上澄み液の様子を示した図である。
【図6】図6(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブにおける第1変形例の平面図である。図6(b)は、図6(a)のX2−X2線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。図6(c)は、上澄み液の吸い上げ状態を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第2変形例の平面図である。図7(b)は、(a)のX3−X3線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。図7(c)は、上澄み液27の吸い上げ状態を示す断面図である。
【図8】図8(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第3変形例の平面図である。図8(b)は、図8(a)のX4−X4線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図8(c)は、上澄み液の吸い上げ状態を示す断面図である。
【図9】図9(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブにおける第4変形例の正面図である。図9(b)は、第4変形例の平面図である。図9(c)は、図9(b)のX5−X5線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。
【図10】図10(a)は、操作者がマイクロチューブをチューブ保持穴内に所定の位置で配置しなかった場合の図である。図10(b)は、遠心分離後のマイクロチューブの配置状態を示した図である。
【図11】図11は、遠心分離装置の断面図を模式的に表した図である。
【図12】図12(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブの正面図である。図12(b)は、第2実施形態に係るマイクロチューブの平面図である。図12(c)は、図12(b)のX6−X6線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。
【図13】図13(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブをチューブ保持穴に挿入する前の断面図である。図13(b)は、挿入後の断面図である。
【図14】図14は、第2実施形態の第1変形例に係る遠心分離装置の断面図を模式的に表した図である。
【図15】図15(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブの正面図である。図15(b)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブの平面図である。図15(c)は、図15(b)のX7−X7線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。
【図16】図16(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブをチューブ保持穴に挿入する前の断面図である。図16(b)は、マイクロチューブを挿入後の断面図である。
【図17】図17(a)は、従来例を示すチューブの斜視図である。図17(b)は、従来例を示すチューブの断面図である。
【図18】図18は、従来例に係るチューブを遠心分離機に挿入した状態の断面図である。
【図19】図19は、従来例に係るチューブ101で遠心分離後、沈殿物103が形成された状態で上澄み液の吸い取り状態を示した図である。
【符号の説明】
【0100】
1……マイクロチューブ(チューブ)、2……容器本体、3……開口端、4……蓋(蓋体)、6……底部、7……内壁、16……チューブ保持穴、18……台座、20……スリット(流路)、22……頂面、23……ピペットチップ(吸引具)、23a……先端(吸引端)、24……アングルロータ、25……回転軸、28……沈殿物、30……溝(突起又は凹み)、31……凸部(突起又は凹み)、32……沈殿物収容部、41……遠心分離装置、44……平坦面(回り止め手段)、46……平坦面(回り止め手段)、47……係合突起(回り止め手段)、48……係合孔(回り止め手段)、CL……容器本体の中心軸、CM……マイクロチューブの質量中心、CF……台座の図心
【技術分野】
【0001】
本発明は、生化学、分子生物学などの試験、実験に用いられるチューブ及びこのチューブ内に収容した試料を遠心分離する遠心分離装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
生化学、分子生物学固体などの試験、実験において、生体高分子の抽出を行う手段として、マイクロチューブに生体高分子等の懸濁液を入れ、遠心分離機を用い遠心分離を行うことにより抽出を行う方法がある。遠心力を作用させると、懸濁液は上澄み液と生体高分子の沈殿物とに遠心分離される。その後、上澄み液をピペットにより吸い上げることになるが、このとき沈殿物を吸い込まずに上澄み液のみを吸い上げることが望ましい。このような沈殿物を吸い込まずに上澄み液のみを吸い上げる提案が、例えば、特許文献1に提案されている。
【0003】
図17乃至図19を用いて、特許文献1に記載のチューブ101を説明する。図17(a)は、従来例を示すチューブ101の斜視図である。図17(b)は、従来例を示すチューブ101の断面図である。図18は、従来例に係るチューブ101を遠心分離機102に挿入した状態の断面図である。図19は、従来例に係るチューブ101で遠心分離後、沈殿物103が形成された状態で上澄み液の吸い取り状態を示した図である。
【0004】
従来例に係るチューブ101は、図17(a)、(b)で示す通り、一方端に開口端104、他方端に底105のある有底筒状の形状をしている。底105は、第一の隅部106と第二の隅部107を有している。その底105の断面形状は、第一の隅部106の曲率半径が小さく、第二の隅部107の曲率半径が大きくなっている。そのため、第二の隅部107は第一の隅部106に比較し、チューブ101の開口端104の中心からの距離が遠くなっている。
【0005】
図18で示す通り、従来例1に係るチューブ101を、第二の隅部107が遠心分離機102の回転軸線CA1から最も遠い位置に配置し、懸濁液等を入れたチューブ101に遠心力を作用させたとする。そうすると、沈殿物103はチューブ101の第二の隅部107に凝集される。
【0006】
図19で示す通り、沈殿物103が凝集される第二の隅部107と対向する位置に位置する第一の隅部106にピペット108の先端108aを位置決めすることにより、沈殿物103を吸わずに上澄み液109の吸い上げを行うようになっている。
【特許文献1】特開平06−27759
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
しかしながら、従来技術における上澄み液109の吸い取り方法では、ピペット108の吸引時に誤って勢いよく吸い込んでしまうと、上澄み液109を吸い取る勢いで沈殿物103が浮遊してしまい、沈殿物102を吸い込んでしまう虞があった。また、従来技術における吸引の方法では、上澄み液109をすべて吸い上げようとすると、図19で示す通り、ピペット108の先端108aが沈殿物103よりも低い位置で位置決めされることになり、上澄み液109の流れによって沈殿物103がピペット108の吸引口に近づいてしまうこととなる結果、沈殿物103を吸い込んでしまう虞があった。そのため、沈殿物103を吸い込まないように操作するためには、慎重な操作が必要であり、操作には慣れが必要であった。
【0008】
そこで、本発明は遠心分離後の上澄み液の吸い取り操作において、沈殿物を吸う虞が少なく、誰でも容易に上澄み液のみを吸い取ることが容易なチューブを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
請求項1に係る発明は、試料を上澄み液と沈殿物とに遠心分離するために使用されるチューブに関するものである。この発明に係るチューブは、上端が開口部である内部空間を有する有底筒状の容器本体と、前記開口部を開閉可能に封止する蓋体と、を備えている。そして、前記容器本体の底部側には、台座が形成されるとともに、前記台座と前記容器本体の内壁との間に空間が形成されている。前記台座には、前記容器本体の最深部近傍から前記台座の頂面まで前記上澄み液が流れる流路が形成されている。前記台座の前記頂面は、前記上澄み液を吸引する吸引具の先端を乗せることができるように形成されている。そして、前記試料が前記チューブに入った状態で前記チューブの前記試料を遠心分離することにより、前記沈殿物が、前記空間を形作る少なくとも前記容器本体の前記内壁に凝集されるように使用され、前記上澄み液を吸引することができることを特徴としている。
【0010】
請求項2に係る発明は、請求項1の発明に係るチューブにおいて、前記流路は、毛細管現象によって前記上澄み液を前記台座の前記頂面まで引き上げるようになっていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に係る発明は、請求項1又は2の発明に係るチューブにおいて、前記台座の前記頂面には、前記吸引具の先端がスライド移動するのを妨げる突起又は凹みの少なくとも一方が形成されたことを特徴としている。
【0012】
請求項4に係る発明は、請求項1乃至3の発明に係るチューブにおいて、前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記チューブの前記容器本体の中心軸と、前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態における前記チューブの質量中心と、がほぼ一致することを特徴としている。
【0013】
請求項5に係る発明は、請求項1乃至3の発明に係るチューブにおいて、前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態で、前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記台座の図心、前記容器本体の中心軸、及び前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態での質量中心の順でほぼ一直線上に位置することを特徴としている。
【0014】
請求項6に係る発明は、請求項1乃至5の発明に係るチューブにおいて、前記内部空間の前記内壁で、且つ、前記沈殿物が凝集する部分には、前記沈殿物を収容する凹みである沈殿物収容部が形成されていることを特徴としている。
【0015】
請求項7に係る発明は、前記チューブを所定の角度で保持するチューブ保持穴が形成されたアングルロータと、前記アングルロータを回転駆動するロータ駆動手段と、前記チューブ保持穴に収容される前記請求項1乃至6のいずれかに記載されたチューブと、を備えた遠心分離装置である。
【0016】
請求項8に係る発明は、請求項7の発明に係る遠心分離装置において、前記チューブ保持穴内に前記チューブを収容する際に、前記チューブに形成されたチューブ側回り止め手段と前記ロータに形成されたロータ側回り止め手段とを係合することにより、前記チューブが前記ロータに対して位置決めされると共に、前記チューブ保持穴内における前記チューブの回動が阻止されることを特徴としている。
【発明の効果】
【0017】
以上のように、本発明に係るチューブによれば、遠心分離後の上澄み液の吸い取りにおいて、沈殿物は、台座が形成される場所とは異なるチューブの内壁の底部側に凝集される。そして、吸引具の先端の位置決めを台座の頂面で行うことができる。このため、操作者の誤操作により吸引具の先端が沈殿物の近傍に位置してしまうことにより沈殿物を誤って吸い込んでしまったり、上澄み液の流れによって沈殿物を誤って吸い込んでしまうということを防止することができ、誰でも容易にピペットを用いて沈殿物を吸い込まずに上澄み液のみ吸い上げることができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明の最良の実施形態を図面に基づき詳述する。なお、各図面において、同じ符号を付した部材等は、同じ構成のものであり、これらについての重複説明は適宜省略するものとする。また、各図面においては、説明に不要な部材等は適宜、図示を省略している。
[第1実施形態]
(チューブの構成)
図1乃至図2を参照して、本発明の第1実施形態に係るチューブについて説明する。なお、以下ではチューブが透明な合成樹脂(例えば、ポリプロピレン)で、射出成形により一体成形されたマイクロチューブ1である場合について説明する。図1(a)は、容器本体2の開口端3から蓋4を外すことによって開口端3が解放された状態(以下、解放状態)におけるマイクロチューブ1の正面図である。図1(b)は、蓋4により開口端3が封止された状態(以下、封止状態)のマイクロチューブ1の正面図である。図2(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1の平面図であり、図2(b)は、図2(a)のX1−X1線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図2(c)は、マイクロチューブ1の封止状態の断面図である。
【0019】
図1乃至図2に示す通り、マイクロチューブ1は容器本体2と蓋(蓋体)4とを備えている。容器本体2は、一方端に内部空間5の開口端3を有し、他方端に底部6を有する有底筒状の形状をしている。容器本体2の内部空間5は、容器本体2の内壁7で構成され、図示しない試料を入れることができるようになっている。容器本体2は、容器本体2の中心軸CLに垂直に切断すると円形になっている上部2aと、底部6に向かうに従って収束する略円錐台形状の下部2bとからなり、上部2aの上端である開口端3には、他部よりも大径のリング状の鍔部8が形成されている。此処で、底部6とは、容器本体2の内壁7の筒状部分における下端を塞ぐ部分であって、最深部を含む内壁7の曲面部分のことをいう。
【0020】
図2(b)に示す通り、蓋4は、容器本体2の開口端3を着脱自在に封止することができる。容器本体2の鍔部8には、折り曲げることが可能な連結部10の一端が一体に固定され、連結部10の他端には、容器本体2の内部空間5の開口端3を封止する蓋4が一体に形成されている。なお、この蓋4及び連結部10は、容器本体2と同一材料で且つ容器本体2と一体に成形されるようになっている。
【0021】
蓋4は、容器本体2の内部空間5の開口端3に嵌め込まれる円筒状嵌合部11と、この円筒状嵌合部11が容器本体2の開口端3に嵌め込まれると容器本体2の鍔部8の上面8aに重なり合う円板状部12と、円板状部12から径方向へ一体的に突出し作業者が指先を引っかけることが可能なタブ部13と、を有している。図2(c)に示す通り、この蓋4は、円筒状嵌合部11が容器本体2の内部空間5の開口端3に嵌め込まれると、円筒状嵌合部11が容器本体2の内部空間5の内壁7にしまりばめ状態で密着し、蓋4が容器本体2の鍔部8の上面8aに密着する。これにより、容器本体2の内部空間5の開口端3が、蓋4によって確実に封止され、図3で示す、遠心分離機15により遠心力を作用させたとしても容易に抜けないようになっている。なお、封止状態において、本発明に係るマイクロチューブ1の質量中心は、容器本体2の中心軸CL近傍に位置しているものとする。また、質量中心が容器本体2の中心軸CLから大きく外れる場合は、タブ部13の長さを調整することにより、封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心を容器本体2の中心軸CL近傍へ位置するよう適宜設計変更することができる。これにより図3で示す遠心分離機15のチューブ保持穴16に挿入し、遠心力を発生したとしても、チューブ保持穴16内で回動しないようになっている。
【0022】
一方、封止状態において、蓋本体のタブ部13を指先で摘んで上方へ引っ張ると、円筒状嵌合部11が容器本体2の内部空間5から抜け出し、蓋4が連結部10の折り返し部分を回動支点として回動し、容器本体2の開口端3が完全に解放される。
【0023】
また、蓋4は、容器本体2の内部空間5への異物(大気中の塵やウィルス等)の混入を防止することができると共に、容器本体2に収容した試料及び抽出液の漏出を防止することができる。また、本実施形態の容器本体2は、蓋4が連結部10を介して容器本体2の鍔部8に一体に形成されたものであるため、蓋4を紛失するようなことがない。
【0024】
図2に示す通り、マイクロチューブ1の底部6には、マイクロチューブ1の中心軸CLから離れた位置から上方に向かって立ち上がる台座18が突出形成されている。底部6には、台座18と前記容器本体2の内壁7との間に空間ができる。図2(a)に示す通り、台座18を平面視すると、略半月の形状から、幅方向に対して垂直に等間隔で2個のスリット20(流路)が形成された形状をしている。そして、図2(b)に示す通り台座18は、マイクロチューブ1の底部6から開口端3へ向かって所定の高さを持ち、その側面21が内壁7から中心軸CL近傍まで突出している。台座18の頂面22は、中心軸CLに対して直交し、マイクロチューブ1の底部6から所定の高さを持ち、図4(a)で示すピペットチップ23(吸引具)の先端23a(吸引端)の載置面を構成する。台座18の側面21は、中心軸CLに対して平行、且つ、頂面22に対して直交するよう形成されている。台座18のスリット20は、台座18の高さ方向については、台座18の頂面22から底部6まで、台座18の奥行き方向については台座18の側面21からマイクロチューブ1の内壁7まで形成されている。このような台座18を有するマイクロチューブ1は、台座18の頂面22にピペットチップ23の載置面を有することにより、ピペットチップ23の先端23aがマイクロチューブ1の底部6よりも高い高さ位置で位置決めすることができる。
【0025】
また、スリット20が形成されていることにより、マイクロチューブ1に液体を注入すると台座18の頂面22より下に存する液体は、スリット20の間に浸入する。このスリット20の間に浸入した液体はスリット20に沿って流れ、スリット20は液体の流路を構成する。このため、マイクロチューブ1内の液面が台座18の頂面22より上である場合はもちろんのこと、液面が下がったとしても、台座18の頂面22から液体を吸うことができる。
【0026】
また、スリット20は、液体は浸入することができるが、固形物は入らないようになっている。例えば、動物細胞の生体高分子に遠心力を作用させると細胞同士の接着があり、一塊になる傾向が強いが、このようなものはスリット20の内部に入らないようになっている。
【0027】
また、台座18のスリット20内には、一定条件下において、スリット内部に浸入した液体を、台座18の頂面22の近傍まで引き上げるいわゆる毛細管現象が発生する。此処で、毛細管現象を発生させる台座18のスリット幅等の寸法は、使用される溶液により、実験等によって最適な数値が適宜決定される。以下では、台座18のスリット内部20に毛細管現象が発生するマイクロチューブ1を用いた場合で説明する。
【0028】
(マイクロチューブの使用状態)
図3乃至図5を用いて、このようなマイクロチューブ1の使用状態を説明する。図3は、遠心分離機15のアングルロータ24のチューブ保持穴16にマイクロチューブ1が挿入され、所定の位置に配置された様子を示す図である。図4(a)は、遠心分離後、マイクロチューブ1の台座18の頂面22に位置決めされたピペットチップ23により上澄み液27を吸い上げる状態を示した図である。図4(b)は、台座18の頂面22より液面が下がった状態で上澄み液27を吸い上げる状態を示した図である。図4(c)は、マイクロチューブ1を傾けて上澄み液27を吸い上げる状態を示した図である。図5(a)は、毛細管現象により上澄み液27がスリット20内で保持される様子を示した図である。図5(b)は、毛細管現象が発生しない状態でのスリット20内の上澄み液27の様子を示した図である。
【0029】
ここでは、生体高分子の懸濁液26を遠心分離により生体高分子を沈澱させ、上澄み液27を除去する手順を説明する。先ず、蓋4を開放した容器本体2の開口端3から生体高分子の懸濁液26を注入し、開口端3を蓋4により封止する。そして、遠心分離機15のチューブ保持穴16にマイクロチューブ1を挿入する。此処で、マイクロチューブ1は、チューブ保持穴16内で回動可能となっている。マイクロチューブ1を挿入後、図3で示す通り、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で、台座18を平面視した場合の図心(以下、台座の図心という。)CFが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるような位置(以下、所定の位置という。)に配置する。そして、遠心分離機15により遠心力を作用させると、マイクロチューブ1の底部6の内、遠心分離機15の回転軸25から最も遠い位置L2に、最も大きな遠心力が作用する。従って、生体高分子は台座18の側面21と対向する位置におけるマイクロチューブ1の底部6aに一塊の沈殿物28として凝集する。すなわち、マイクロチューブ1は、沈殿物27が容器本体2の内壁7における低部6側に凝集されるように使用され、沈殿物27は、台座18から離れた位置に凝集する。操作者は、遠心分離後、遠心分離機15からマイクロチューブ1を取り出し、ピペットにより上澄み液27の除去を行う。
【0030】
図4(a)で示す通り、台座18の頂面22は、沈殿物27よりも上方へ位置し、ピペットチップ23の先端23a位置決めはマイクロチューブ1の台座18の頂面22で行う。これにより、ピペットチップ23の先端23aの位置決めは、沈殿物28が凝集される部分より高い位置で、且つ、沈殿物28が凝集する場所とは容器本体2の中心軸CLを挟んで反対側で行うことができる。
【0031】
ピペットチップ23内を減圧すると、大気圧との圧力差により上澄み液27はピペットチップ23内に吸い上げられる。このとき、マイクロチューブ1内の上澄み液27は、台座18に形成されているスリット20の間を通りピペットチップ23に吸引される。スリット20の内部には台座18の側面21に形成されたスリット20から上澄み液27が補充される。
【0032】
図4(b)で示す通り、上澄み液27が吸い続けられ、台座18の頂面22よりも上澄み液27の液面が下がったとする。この場合においても、スリット20の内部には既に台座18の頂面22の近傍と台座18の外に存する上澄み液27とを繋ぐ流路が形成されているため、上澄み液27はスリット20に沿って圧力差により吸い続けることができる。そして、上澄み液27の除去が進み、上澄み液27の液面が底部6近傍まで達したとする。この場合においても台座18には底までスリット20が形成されていることにより、底部近傍の上澄み液27もスリット20の内部に浸入することができるため底近傍の上澄み液27も吸い取ることができる。
【0033】
さらに、図4(c)で示す通り、上澄み液27がほとんど吸い取られ、上澄み液27がスリット20の内部に浸入し難くなった場合は、マイクロチューブ1をスリット20が下になるように傾けることによりスリット20の内部へ浸入させ易くさせ、上澄み液27をスリット20の内部に浸入させる。そして、ピペットの吸引力により頂面22へ運ばれ吸い取ることができる。従って、ピペットチップ23の先端23aを台座18の頂面22に位置決めしたまま、上澄み液27をほとんど残らず吸い取ることができる。
【0034】
また、図5(a)に示す通り、台座18の頂面22よりも上澄み液27の液面が下がった状態でピペットによる吸引を止めたとする。先に述べた通り、スリット20の内部の上澄み液27には毛細管現象が発生することにより、スリット20の内部に位置する上澄み液27は、台座18の頂面22の近傍とスリット20の外部との液体を繋ぐようにスリット20の内部で保持される。従って、この場合においても、引き続き台座18の頂面22から余計な空気を吸う事なく効率的に上澄み液27を吸い続けることができる。また、効率的に上澄み液27を吸い取ることができるため、毛細管現象が発生しない構成に比較して、吸い取られる上澄み液27の流れにより沈殿物28が浮遊してしまうことを抑えることができる。
【0035】
なお、台座18のスリット内部20に毛細管現象が発生しないマイクロチューブ1で、上澄み液27の液面が台座18の頂面22よりも低い位置で吸い上げを行ったとする。この場合は、毛細管現象が発生するマイクロチューブ1と比較して、図5(b)で示す通り、台座18の頂面22と上澄み液27の液面との間に距離があるため、ピペットで吸い上げを行うためには、毛細管現象が発生する構成に比べて強い吸引力が必要となる。そのため吸引時において上澄み液27が急激に移動することとなり、上澄み液27の流れにより沈殿物28が浮遊してしまう虞がある。
【0036】
また、上澄み液27を除去する手順で説明したが、本発明に係るマイクロチューブ1は、遠心分離後の上澄み液27を使用する場合にも用いることができる。例えば、マイクロチューブ1に乳鉢で磨砕した検体に抽出液を加えた溶液(試料)を注入し、遠心分離機15により遠心力を作用させ、これにより検体から抽出対象物が抽出されたとする。このような場合に、抽出後の検体の沈殿物を吸わずに、後の工程に使用される抽出対象物を含んだ上澄み液のみを吸い上げるといった使用方法にも用いることができる。
【0037】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取りにおいて、沈殿物28が容器本体2の中心軸CLを挟んで台座18の壁面に対向する位置に凝集する。そして、ピペットチップ23の先端23aの位置決めを台座18の頂面22で行うため、沈殿物28が凝集する位置よりも高い高さで位置決めすることができる。このため、操作者の誤操作によりピペットチップ23の先端23aが沈殿物28の近傍に位置してしまい、ピペットチップに沈殿物28を誤って吸い込んでしまったり、上澄み液27の流れによって浮遊した沈殿物28を誤ってピペットチップに吸い込んでしまうということを防止することができ、誰でも容易にピペットを用いて沈殿物28を吸い込まずに上澄み液27のみ吸い上げることができる。さらに上澄み液27の除去作業においては、上澄み液27のみをほとんど吸い取ることができ、これにより沈殿物28の回収効率を上げることができる。
【0038】
また、抽出対象物を含んだ上澄み液27を後の工程に使用する場合においては、後の工程に使用される上澄み液のみを吸い取ることができる。
【0039】
(第1変形例)
図6を参照して、第1実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第1変形例のマイクロチューブ1は、台座18の頂面22を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0040】
図6(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第1変形例の平面図であり、図6(b)は、図6(a)のX2−X2線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図6(c)は、上澄み液27の吸い上げ状態を示す断面図である。
【0041】
図6(a)、(b)に示す通り台座18の頂面22には、スリット20と直交するような溝30が一定の距離をおいて複数形成されることにより、凹凸形状が形成されている。
【0042】
(本実施例の作用)
図6(c)を参照してこのようなピペットチップ23の載置面を持つマイクロチューブ1において、上澄み液27の吸い取り作業を説明する。先に述べた通り、台座18の頂面22にはスリット20と直交するような溝30が一定の距離をおいて複数形成されることにより、ピペットチップ23の先端23aの載置部に凹凸形状が形成されている。これにより、ピペットチップ23の先端23aが凹凸形状に引っ掛かることとなり、台座18の頂面22に位置決めされたピペットチップ23の先端23aがスライド移動し難くなっている。
【0043】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取り作業において、台座18の頂面22が凹凸形状に形成されていることにより、台座18の頂面22に一度位置決めされたピペットチップ23の先端がスライド移動し難くなっている。そのため第1の実施形態の効果は奏することはもちろんのこと、第1の実施形態と比較してピペットチップ23の先端23aの位置ズレに伴う沈殿物28の誤吸引を少なくする効果を奏する。
【0044】
(第2変形例)
(マイクロチューブの構成)
図7を参照して、第1実施形態の第2変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第2変形例のマイクロチューブ1は、台座18の頂面22を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0045】
図7(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第2変形例の平面図であり、図7(b)は、(a)のX3−X3線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図7(c)は、上澄み液27の吸い上げ状態を示す断面図である。
【0046】
図7(a)、(b)に示す通り、台座18の頂面22には、上方に向かって、台座18の側面21と頂面22とが交差する位置である頂面22の縁から上方に向かって凸部が連設されている。
【0047】
(本実施例の作用)
図7(c)を参照してこのようなピペットチップ23の載置面を持つマイクロチューブ1において、上澄み液27を吸い取り作業を説明する。先に述べた通り、台座18の頂面22には、上方に向かって、台座18の側面21と頂面22とが交差する位置である載置部の縁から上方に向かって凸部が連設されている。これにより、頂面22内に位置決めされたピペットチップ23の先端23aが凸部に引っ掛かることとなり、ピペットチップ23の先端23aが台座18の頂面22からはみ出ることを規制する。
【0048】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取り作業において、台座18の頂面22の縁に凸部が連設されていることにより、台座18の頂面22に位置決めされたピペットチップ23の先端23aは、台座18の頂面22からはみ出ないようになっている。そのため第1の実施形態の効果は奏することはもちろんのこと、第1の実施形態と比較してピペットチップ23の先端23aの位置ズレに伴う沈殿物28の誤吸引を少なくする効果を奏する。
【0049】
(第3変形例)
図8を参照して、第1実施形態の第3変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第3変形例のマイクロチューブ1は、容器本体2の下部2aの内壁7に形成される沈殿物収容部32を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0050】
図8(a)、(b)に示す通り、沈殿物収容部32は、台座18の側面21と対向する位置であって、マイクロチューブ1が遠心分離機15に傾斜をもって保持された場合に、マイクロチューブ1の内部空間5のうち最も大きな遠心力が作用する部分、すなわち沈殿物が凝集する部分に形成されている。また、台座18との関係では、平面視すると沈殿物収容部の図心CF2、容器本体2の中心軸CL、台座18の図心CFの順で一直線上に位置している(図8(a)参照)。沈殿物収容部32は、長半径に沿って切った半楕円体形状を、内壁7から切り抜いた後に形成される形状をしており、沈殿物収容部32を平面視すると横長の楕円形状をしており、側面視すると内壁7から三日月形状が切り抜かれた後に形成される形状をしている。なお、沈殿物収容部32は、マイクロチューブ1が遠心分離機15に傾斜をもって保持された場合に、マイクロチューブ1の内部空間5のうち最も大きな遠心力が作用する部分(図3参照)に形成されていることが好まく、使用されるアングルロータ24のチューブを保持する角度や、マイクロチューブ1の形状を考慮して最も大きな遠心力が作用する位置に形成されるように適宜設計変更することができる。
【0051】
なお、沈殿物収容部32を形成することによりマイクロチューブ1の肉厚が一部他と比べて薄くなるが、封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMに影響を与えるほどのものではなく、仮に封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMが容器本体2の中心軸CLから大きく外れた場合、タブ部13の長さを調整することにより、封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMを容器本体2の中心軸CL近傍へ位置するよう適宜設計変更することができる。これにより遠心分離機15のチューブ保持穴16に挿入し、遠心力を発生したとしても、チューブ保持穴16内で回動しないようになっている。
【0052】
また、沈殿物収容部32を形成するため、マイクロチューブ1の一部の肉厚が他の肉厚と比べて薄くなるが、遠心分離機15からかかる遠心力に応じて、マイクロチューブ1の下部7を円筒形にすることにより、適宜、遠心力に耐える肉厚に設計変更することが可能である。従って、遠心分離機15により遠心力をかけても、マイクロチューブ1は沈殿物収容部32から破損することはない。
【0053】
(本実施例の作用)
このような沈殿物収容部32を持つマイクロチューブ1において、溶液中の動物細胞について遠心力を作用させることにより沈殿させた場合を説明する。先に述べた通り、動物細胞の場合は、遠心力を作用させた場合に細胞同士の接着があり、一塊になる傾向がある。
【0054】
溶液が注入されたマイクロチューブ1は、図3で示す通り、遠心分離機15のチューブ保持穴16内で、台座18の図心CFが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるようにマイクロチューブ1を配置する。先に述べた通り、沈殿物収容部32は、台座18の側面21と対向する位置であって、マイクロチューブ1が遠心分離機15に傾斜をもって保持された場合に、マイクロチューブ1の内部空間5のうち最も大きな遠心力が作用する部分、すなわち沈殿物が凝集する部分に形成されている。従って、動物細胞は沈殿物収容部32に一塊の沈殿物28として凝集する。
【0055】
図8(c)で示す通り、操作者は、遠心分離機15よりマイクロチューブ1を取り出し、台座18の頂面22にピペットチップ23の先端23aを位置決めし、ピペットにより上澄み液27の吸い取りを行う。上澄み液27の吸い取りが始まると台座18の側面21に形成されたスリット20の内部に上澄み液27が流れる。第3変形例に係るマイクロチューブ1には、沈殿物収容部32が形成され、沈殿物28は沈殿物収容部に収容されるため、上澄み液27の流れによる影響を受け難くなっている。従って、上澄み液27の除去中に一塊になった沈殿物28の剥離を抑えることにより上澄み液27中に沈殿物28が浮遊することを抑え得ることができる。
【0056】
なお、沈殿物収容部がない構成の場合、上澄み液27の流れにより一塊となった動物細胞の沈殿物28の剥離が発生する虞があり、沈殿物28が上澄み液27中に浮遊することにより、上澄み液27の吸い取り作業において、沈殿物28を吸い込んでしまう虞がある。
【0057】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離により凝集する沈殿物28が沈殿物収容部32に収容されることにより、上澄み液27の吸い取りを行う際に発生する上澄み液27の流れの影響を受け難くなっている。そのため沈殿物28の剥離を防止することができる。これにより剥離した沈殿物28を吸い込むことがなくなるため、第1の実施形態よりも、さらに沈殿物28を吸い込むことなく上澄み液27のみを吸い取ることができる。
【0058】
(第4変形例)
図9を参照して、第1実施形態の第4変形例に係るマイクロチューブ1について説明する。第4変形例のマイクロチューブ1は、タブ部13を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例のマイクロチューブ1と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0059】
図9(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第4変形例の正面図であり、図9(b)は、第4変形例の平面図である。図9(c)は、図9(b)のX5−X5線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。
【0060】
図9(a)に示す通り、本変形に係るマイクロチューブ1のタブ部13の長さは通常のマイクロチューブ1のものよりも長くなっている。図6(b)に示す通り、平面視すると、タブ部13が伸びる方向は、容器本体2の中心軸CLを挟んで台座18が形成される方向とは反対方向に延びている。これにより封止状態でのマイクロチューブ1の質量中心CMが、容器本体2の中心軸CLからズレている。台座18の図心CF、容器本体2の図心CF、容器本体2の中心軸CLの位置関係は、マイクロチューブ1を平面視すると、台座18の図心CF、容器本体2の中心軸CL、質量中心CMの順で一直線上に位置している。
【0061】
(本実施例の作用)
図10(a)、(b)を参照して、操作者がマイクロチューブ1をチューブ保持穴16に所定の位置で配置しなかった場合について説明する。図10(a)は、操作者がマイクロチューブ1をチューブ保持穴16内に所定の位置で配置しなかった場合の図であり、図10(b)は、遠心分離後のマイクロチューブ1の配置状態を示した図である。
【0062】
本発明に係るマイクロチューブ1は、図3に示す通り、遠心分離機15のチューブ保持穴16内で、台座18の図心CFが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1となる位置、すなわち所定の位置でマイクロチューブ1を配置して遠心分離に用いられるものであるが、図8(a)に示す通り、操作者が、所定の位置に配置しない場合がある。
【0063】
しかしながら、第4変形例に係るマイクロチューブ1には、図10(a)に示す通りマイクロチューブ1を封止した状態において、平面視すると質量中心CMと容器本体2の中心軸CLとがズレているため、遠心分離機15によりマイクロチューブ1に遠心力を作用させると、質量中心CMは遠心力により回転軸25から離れる方向へ動くように作用する。このとき質量中心CMが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAと容器本体2の中心軸CLとを結ぶ同一線上にないため、マイクロチューブ1には、質量中心CMが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAと容器本体2の中心軸CLとを結ぶ同一線上に位置するように、マイクロチューブ1の中心軸CLを中心としてマイクロチューブ1に回転モーメントが作用する。図10(b)に示す通り、質量中心CMが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAから最も離れて位置すると、質量中心CMが遠心分離機15の回転軸25の軸心CAと容器本体2の中心軸CLとを結ぶ同一線上となる位置になるので、回転モーメントは作用しなくなりその位置で止まることとなる。此処で、先に述べた通り、封止状態でのマイクロチューブ1を平面視すると台座18の図心CF、容器本体2の中心軸CL、質量中心CMの順で一直線上に位置している。このため、台座18の図心CFが遠心分離機15の回転軸25に最も近づく位置に配置されることとなる。
【0064】
よって、操作者がマイクロチューブ1の挿入時に所定の位置で配置しなかった場合においても、マイクロチューブ1の底部6に形成された台座18が遠心分離機15の回転軸25に対して最も近づくように、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で、所定の位置に回動されるようになっている。
【0065】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、操作者がチューブ保持穴16にマイクロチューブ1を所定の位置に配置しなくとも、遠心力を作用させると所定の位置にマイクロチューブ1が配置される。従って、台座18側に沈澱物28が凝集することを防止することができ、沈殿物28を上澄み液27の吸引時において沈殿物28を吸うことを防止することができる。
[第2実施形態]
(遠心分離装置の構成)
図11、図12を参照して、本発明の第2実施形態に係る遠心分離装置41について説明する。図11は、遠心分離装置41の断面図を模式的に表した図である。図12(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブ1の正面図である。図12(b)は、第2実施形態に係るマイクロチューブ1の平面図である。図12(c)は、図12(b)のX6−X6線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。なお、この図11〜図12に示す遠心分離装置41は、その基本的構造が図1から図3と一部同一であるため、同一構造には同一符号を付し、重複することになる説明を省略する。
【0066】
図11に示す通り、遠心分離装置41は、遠心分離機15と、マイクロチューブ1と、を備えている。
【0067】
遠心分離機15は、筺体42とアングルロータ24とロータ駆動手段(ロータ駆動手段とは、モータMと図示しない動力伝達手段、ギアトレイン又はベルト伝動機構等をいう。)とを備えている。アングルロータ24は筺体42にとりつけられた図示しない軸受けにより支持された回転軸25により回転自在に保持され、動力伝達手段を介しモータMと連結されて回転するようになっている。
【0068】
アングルロータ24は、略擂り鉢状の凹部が回転軸25と同心に形成されている。その凹部のリング状のテーパー面43には、ほぼ直角に複数のチューブを挿入するためのチューブ保持穴16が回転軸25と同心の円周に沿って間隔をおいて形成されている。チューブ保持穴16を、図示しない中心軸に対して垂直に切断すると、リング状のテーパー面43から中程までは円形状をしており中程から底まではD形状となっている。これにより、チューブ保持穴16の内周面の一部は、底へ向かって中程から底近傍まで平坦面(回り止め手段)44を形成する。そして、この平坦面44は、チューブ保持穴16の軸心(不図示)と平行で、且つ、平坦面44が、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに最も近づく位置をとり、且つ、平坦面44の中心から伸ばした垂線が回転軸25の軸心CAを通る位置に形成されている。此処で、断面が円形状からD形状となるまでの深さをSとする。
【0069】
図12に示す通り、マイクロチューブ1は容器本体2と蓋4とを備えている。容器本体2は、一方端に内部空間5の開口端3を有し、他方端に底部6を有する有底筒状の形状をしている。容器本体2の内部空間5には、図示しない試料を入れることができるようになっている。
【0070】
図12(a)に示す通り、容器本体2の上端にはその開口端3に他部よりも大径のリング状の鍔部8が形成されている。容器本体2の鍔部8の下からHの長さまでは、容器本体2の中心軸CLに垂直に切った断面が円形状となっている。此処で、先に述べた深さSは、長さHより若干深くなっている(図11参照)。そして、チューブの中程から底に向かい一定の長さは、容器本体2の中心軸CLに垂直に切った断面がD形状となっている。これにより、マイクロチューブ1の外壁45の一部には平坦面(回り止め手段)46が形成される。そして、断面形状がD形状となる部分よりも下方側は、その底に向かうに従って収束する略円錐台形状になっている。此処で、底部6とは、容器本体2の内壁7であって、容器本体2の最深部から最深部を囲む曲線部までのことをいう。そして、マイクロチューブ1の外壁45に平坦面46が形成される側の底部6には、開口端3に向かって立ち上がる台座18が形成されている。蓋4と台座18は、第1実施形態と同じ形状になっている。
【0071】
(遠心分離装置の使用状態)
図13(a)(b)を用いて、遠心分離機15にマイクロチューブ1を挿入し所定の位置に配置する様子を説明する。図13(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブ1をチューブ保持穴16に挿入する前の断面図であり、図13(b)は、挿入後の断面図である。
【0072】
図13(a)で示す通り、生体高分子の懸濁液26が注入されたマイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46と、遠心分離機15のチューブ保持穴16の平坦面44とを位置決めする。
【0073】
図13(b)に示す通り、マイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46と、遠心分離機15のチューブ保持穴16の平坦面44とを位置決めした状態で挿入されると、マイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46とチューブ保持穴16に形成された平坦面44とが面接触する。これにより、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で配置されることになる。
【0074】
そして、遠心分離機15により遠心力を作用させると、マイクロチューブ1の底部6の内、遠心分離機15の回転軸25から最も遠い位置L2に、最も大きな遠心力が作用する。従って、生体高分子は台座18の側面21と対向する位置におけるマイクロチューブ1の底部6aに一塊の沈殿物28として凝集する。
【0075】
上澄み液の吸い上げ作業については、マイクロチューブ1の構成が実施形態1とほぼ同一であるので、図4及び図5を用いて説明する。操作者は、遠心分離後、遠心分離機15からマイクロチューブ1を取り出し、ピペットにより上澄み液27の吸い上げを行う。
【0076】
図4(a)で示す通り、ピペットチップ23の先端23aの位置決めはマイクロチューブ1の台座18の頂面22で行う。これにより、ピペットチップ23の先端23aの位置決めは、沈殿物28が凝集される部分より高い位置で、且つ、沈殿物28が凝集する場所とは容器本体2の中心軸CLを挟んで反対側で行うことができる。
【0077】
ピペットチップ23内を減圧すると、大気圧との圧力差により上澄み液27はピペットチップ23内に吸い上げられる。このとき、マイクロチューブ1内の上澄み液27は、台座18に形成されているスリット20の間を通りピペットチップ23に吸引される。スリット20の内部には台座18の側面21に形成されたスリット20から上澄み液27が補充される。
【0078】
図4(b)で示す通り、上澄み液27が吸い続けられ、台座18の頂面22よりも上澄み液27の液面が下がったとする。この場合においても、スリット20の内部には既に台座18の頂面22の近傍と台座18の外に存する上澄み液27とを繋ぐ流路が形成されているため、上澄み液27はスリット20に沿って圧力差により吸い続けることができる。
【0079】
そして、上澄み液27の除去が進み、上澄み液27の液面が底部6近傍まで達したとする。この場合においても台座18には底までスリット20が形成されていることにより、底部近傍の上澄み液27もスリット20の内部に浸入することができるため底近傍の上澄み液27も吸い取ることができる。また、図4(c)で示す通り、上澄み液27がほとんど吸い取られ、上澄み液27がスリット20の内部に浸入しなくなった場合は、マイクロチューブ1をスリット20が下になるように傾けることにより、上澄み液27はスリット20の内部に浸入させる。そして、ピペットの吸引力により頂面22へ運ばれ吸い取ることができる。従って、ピペットチップ23を台座18の頂面22に位置決めしたまま、上澄み液27をほとんど残らず吸い取ることができる。
【0080】
なお、上澄み液27を除去する手順を説明したが、本発明に係る遠心分離装置41は、遠心分離後の上澄み液27を使用する場合にも用いることができる。例えば、マイクロチューブ1に乳鉢で磨砕した試料に抽出液を加えた溶液を注入し、遠心分離機15により遠心力を作用させ、これにより試料から抽出対象物が抽出されたとする。このような場合に、抽出後の試料の沈殿物を吸わずに、後の工程に使用される抽出対象物を含んだ溶液のみを吸い上げるといった使用方法にも用いることができる。
【0081】
(本実施例の効果)
以上のように、本実施形態のマイクロチューブ1によれば、遠心分離機15の使用時において、マイクロチューブ1の外壁45に形成された平坦面46とチューブ保持穴16に形成された平坦面44とが面接触する、これにより、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で保持されることになる。従って、常に遠心分離後におけるピペットを使用した上澄み液27の吸い取りにおいて、沈殿物28が中心軸CLを挟んで台座18の壁面に対向する位置に凝集する。すなわち、沈殿物28が台座18の側に凝集することなく、沈殿物28が中心軸CLを挟んで台座18の壁面に対向する位置に確実に凝集する。そして、ピペットチップ23の先端23aの位置決めを台座18の頂面22で行うため、沈殿物28が凝集する位置よりも高い高さで位置決めすることができるようになっている。このため、操作者の誤操作によりピペットチップ23の先端23aが沈殿物28の近傍に位置してしまい、ピペットチップ23に沈殿物28を誤って吸い込んでしまったり、上澄み液27の流れによって浮遊した沈殿物28をピペットチップ23に誤って吸い込んでしまうということを防止することができ、誰でも容易にピペットを用いて沈殿物28を吸い込まずに上澄み液27のみ吸い上げることができる。さらに上澄み液27の除去作業においては、上澄み液27をほとんど吸い取ることができ、これにより沈殿物28の回収効率を上げることができる。
【0082】
また、抽出対象物を含んだ上澄み液27を後の工程に使用する場合においては、後の工程に使用される上澄み液のみを吸い取ることができる。
【0083】
(第1変形例)
図14、図15を参照して、第2実施形態の第1変形例に係る遠心分離装置41について説明する。第1変形例の遠心分離装置41は、マイクロチューブ1の容器本体2の形状及び連結部10に形成される係合突起(回り止め手段)47、アングルロータ(ロータ)24に形成されるチューブ保持穴16及び係合孔48(回り止め手段)を除き、その基本的構成が上記実施例と同様であるため、上記実施例の遠心分離装置41と同様の構成には同一符号を付し、上記実施形態の説明と重複することになる説明を省略する。
【0084】
図14は、第2実施形態の第1変形例に係る遠心分離装置41の断面図を模式的に表した図である。図15(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1の正面図である。図15(b)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1の平面図である。図15(c)は、図15(b)のX7−X7線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。
【0085】
アングルロータ24のテーパー面43には、ほぼ直角に複数のチューブを挿入するためのチューブ保持穴16が回転軸25と同心の円周に沿って間隔をおいて形成されている。そして、テーパー面上で、チューブ保持穴16の中心と回転軸25の軸心CAとを結ぶ線上であって、チューブ保持穴16の近傍には係合孔48が形成されている。
【0086】
図15(a)、(b)、(c)に示す通り、容器本体2の鍔部8には、折り曲げることが可能な連結部10の一端が一体に固定され、連結部10の他端には、容器の内部空間5の開口端3を封止する蓋4が一体に形成されている。この連結部10の一端側には、先に述べたアングルロータ24に形成された係合孔に挿入される係合突起47が形成されている。図15(b)に示す通り、係合突起47は、容器本体2の中心軸CLと台座18の図心CFとを結ぶ線上の先に位置している。
【0087】
(遠心分離装置の使用状態)
図16(a)、(b)を用いて、第2実施形態の第1変形例の遠心分離装置41の使用状態を説明する。図16(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブ1をチューブ保持穴16に挿入する前の断面図であり、図16(b)は、マイクロチューブ1を挿入後の断面図である。
【0088】
図16(a)で示す通り、生体高分子の懸濁液26が注入されたマイクロチューブ1の連結部10に形成された係合突起47と、アングルロータ24に形成された係合孔48と、を位置決めする。
【0089】
図16(b)に示す通り、マイクロチューブ1をチューブ保持穴16に挿入するとともに、マイクロチューブ1の連結部10に形成された係合突起47と、アングルロータ24に形成された係合孔48とを係合させる。これにより、マイクロチューブ1がチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で配置されることになる。
【0090】
(本実施例の効果)
本変形例においても、第2実施形態とほぼ同等の効果を奏することができる。
【0091】
(第1・第2実施形態のその他の変形例)
なお、以上の説明では、容器本体2、蓋4、連結部10を合成樹脂で、射出成形により一体成形する例で説明したが、材質、成形方法はこれに限定されるものではない。例えば、蓋4、連結部10を別部品にしても良いし、圧縮成形で成形しても良い。
【0092】
また、以上の説明では、チューブをマイクロチューブである場合を例示して説明したが、チューブの種類はこれに限定されず、遠心分離機15に使用されるチューブであればよい。
【0093】
また、以上の説明では、生体高分子の抽出で説明したが、当該マイクロチューブ1の使用方法はこれに限定されるものではなく、反応、培養等に広く用いられる。
【0094】
また、以上の説明ではチューブの下部2bの形状について、略円錐台形状を例示して説明したが、下部2bの形状はこれに限定されるものではなく、チューブの底部6に台座18を形成することができればどのような形状でもよい。例えば、円筒形、半円球形、円錐形等でもよい。
【0095】
また、以上の説明では台座18の側面21の下部から頂面22に形成される流路について、スリット形状を例示して説明したが、流路はこれに限定されるものではなく、台座18の側面21の下部から台座18の頂面22まで流路が形成されており、台座18の頂面22に先端23aが位置決めされたピペットによりチューブ内の液体を吸い上げることができればどのような形状でもよい。例えば、台座18の側面21の下部から台座18の頂面22まで1以上の管を形成してもよい。
【0096】
また、チューブの封止状態で平面視した場合、台座18の図心、容器本体の中心軸、及び封止状態でのチューブの質量中心の順でほぼ一直線上に位置することについて、タブ部13の長さを長くすることを例示して説明したが、これに限定されるものではなく、アングルロータ24に保持されたマイクロチューブ1に遠心力を作用させた後に、チューブがチューブ保持穴16内で所定の位置になるようにチューブ保持穴16内でチューブが回動するようになっていれば良い。例えば、蓋4に鉛等を埋め込んでも良いし、連結部10を金属製のヒンジにすることにより質量中心CMをずらすようにしても良い。この場合、台座18の位置は適宜設計変更される。
【0097】
また、以上の説明では、チューブとアングルロータ24の係合手段をタブ部13の裏面に形成された係合突起とアングルロータ24に形成された係合孔に係合させること等により、アングルロータ24のチューブ保持穴16でのチューブの回動を阻止しつつマイクロチューブ1を所定の位置に配置することを説明したが、これに限定されるものではなく、アングルロータ24のチューブ保持穴16にチューブが挿入された状態において、チューブがチューブ保持穴16内で回動することを阻止するとともに、台座18の図心CFが、遠心分離機15の回転軸25の軸心CAに対して最も近づく距離L1になるように、マイクロチューブ1を遠心分離機15のチューブ保持穴16内で位置決めされていればよい。例えば、リング状のゴムのスペーサーをチューブ保持穴16とマイクロチューブ1の間に挟んで位置決めを行い、回動を阻止する構成でも良い。
【産業上の利用可能性】
【0098】
本発明のマイクロチューブは、生化学、分子生物学などの試験、実験に広く使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【0099】
【図1】図1(a)は、容器本体の開口端から蓋を外すことによって開口端が解放された状態におけるマイクロチューブ1の正面図である。図1(b)は、蓋により開口端が封止された状態のマイクロチューブ1の正面図である。
【図2】図2(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブの平面図である。図2(b)は、図2(a)のX1−X1線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。図2(c)は、マイクロチューブの封止状態の断面図である。
【図3】図3は、遠心分離機のアングルロータのチューブ保持穴にマイクロチューブが挿入され、所定の位置に配置された様子を示す図である。
【図4】図4(a)は、遠心分離後、マイクロチューブの台座の頂面に位置決めされたピペットチップにより上澄み液を吸い上げる状態を示した図である。図4(b)は、台座の頂面より液面が下がった状態で上澄み液を吸い上げる状態を示した図である。図4(c)は、マイクロチューブを傾けて上澄み液を吸い上げる状態を示した図である。
【図5】図5(a)は、毛細管現象により上澄み液がスリット内で保持される様子を示した図である。図5(b)は、毛細管現象が発生しない状態でのスリット内の上澄み液の様子を示した図である。
【図6】図6(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブにおける第1変形例の平面図である。図6(b)は、図6(a)のX2−X2線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。図6(c)は、上澄み液の吸い上げ状態を示す断面図である。
【図7】図7(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第2変形例の平面図である。図7(b)は、(a)のX3−X3線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。図7(c)は、上澄み液27の吸い上げ状態を示す断面図である。
【図8】図8(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブ1における第3変形例の平面図である。図8(b)は、図8(a)のX4−X4線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。図8(c)は、上澄み液の吸い上げ状態を示す断面図である。
【図9】図9(a)は、第1実施形態に係るマイクロチューブにおける第4変形例の正面図である。図9(b)は、第4変形例の平面図である。図9(c)は、図9(b)のX5−X5線に沿って示すマイクロチューブ1の断面図である。
【図10】図10(a)は、操作者がマイクロチューブをチューブ保持穴内に所定の位置で配置しなかった場合の図である。図10(b)は、遠心分離後のマイクロチューブの配置状態を示した図である。
【図11】図11は、遠心分離装置の断面図を模式的に表した図である。
【図12】図12(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブの正面図である。図12(b)は、第2実施形態に係るマイクロチューブの平面図である。図12(c)は、図12(b)のX6−X6線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。
【図13】図13(a)は、第2実施形態に係るマイクロチューブをチューブ保持穴に挿入する前の断面図である。図13(b)は、挿入後の断面図である。
【図14】図14は、第2実施形態の第1変形例に係る遠心分離装置の断面図を模式的に表した図である。
【図15】図15(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブの正面図である。図15(b)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブの平面図である。図15(c)は、図15(b)のX7−X7線に沿って示すマイクロチューブの断面図である。
【図16】図16(a)は、第2実施形態の第1変形例に係るマイクロチューブをチューブ保持穴に挿入する前の断面図である。図16(b)は、マイクロチューブを挿入後の断面図である。
【図17】図17(a)は、従来例を示すチューブの斜視図である。図17(b)は、従来例を示すチューブの断面図である。
【図18】図18は、従来例に係るチューブを遠心分離機に挿入した状態の断面図である。
【図19】図19は、従来例に係るチューブ101で遠心分離後、沈殿物103が形成された状態で上澄み液の吸い取り状態を示した図である。
【符号の説明】
【0100】
1……マイクロチューブ(チューブ)、2……容器本体、3……開口端、4……蓋(蓋体)、6……底部、7……内壁、16……チューブ保持穴、18……台座、20……スリット(流路)、22……頂面、23……ピペットチップ(吸引具)、23a……先端(吸引端)、24……アングルロータ、25……回転軸、28……沈殿物、30……溝(突起又は凹み)、31……凸部(突起又は凹み)、32……沈殿物収容部、41……遠心分離装置、44……平坦面(回り止め手段)、46……平坦面(回り止め手段)、47……係合突起(回り止め手段)、48……係合孔(回り止め手段)、CL……容器本体の中心軸、CM……マイクロチューブの質量中心、CF……台座の図心
【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を上澄み液と沈殿物とに遠心分離するために使用されるチューブにおいて、
上端が開口部である内部空間を有する有底筒状の容器本体と、
前記開口部を開閉可能に封止する蓋体と、を備え、
前記容器本体の底部側には、台座が形成されるとともに、前記台座と前記容器本体の内壁との間に空間が形成され、
前記台座には、前記容器本体の最深部近傍から前記台座の頂面まで前記上澄み液が流れる流路が形成され、
前記台座の前記頂面は、前記上澄み液を吸引する吸引具の先端を乗せることができるように形成され、
前記試料が前記チューブに入った状態で前記チューブの前記試料を遠心分離することにより、
前記沈殿物が、前記空間を形作る少なくとも前記容器本体の前記内壁に凝集されるように使用され、前記上澄み液を吸引することができる、
ことを特徴とするチューブ。
【請求項2】
前記流路は、毛細管現象によって前記上澄み液を前記台座の前記頂面まで引き上げるようになっている、
ことを特徴とするチューブ。
【請求項3】
前記台座の前記頂面には、前記吸引具の先端がスライド移動するのを妨げる突起又は凹みの少なくとも一方が形成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のチューブ。
【請求項4】
前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記チューブの前記容器本体の中心軸と、前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態における前記チューブの質量中心と、がほぼ一致する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のチューブ。
【請求項5】
前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態で、前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記台座の図心、前記容器本体の中心軸、及び前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態での質量中心の順でほぼ一直線上に位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項6】
前記内部空間の前記内壁で、且つ、前記沈殿物が凝集する部分には、前記沈殿物を収容する凹みである沈殿物収容部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のチューブ。
【請求項7】
前記チューブを所定の角度で保持するチューブ保持穴が形成されたアングルロータと、
前記アングルロータを回転駆動するロータ駆動手段と、
前記チューブ保持穴に収容される前記請求項1乃至6のいずれかに記載されたチューブと、
を備えた遠心分離装置。
【請求項8】
前記チューブ保持穴内に前記チューブを収容する際に、前記チューブに形成されたチューブ側回り止め手段と前記ロータに形成されたロータ側回り止め手段とを係合することにより、前記チューブが前記ロータに対して位置決めされると共に、前記チューブ保持穴内における前記チューブの回動が阻止される、
ことを特徴とする請求項7に記載の遠心分離装置。
【請求項1】
試料を上澄み液と沈殿物とに遠心分離するために使用されるチューブにおいて、
上端が開口部である内部空間を有する有底筒状の容器本体と、
前記開口部を開閉可能に封止する蓋体と、を備え、
前記容器本体の底部側には、台座が形成されるとともに、前記台座と前記容器本体の内壁との間に空間が形成され、
前記台座には、前記容器本体の最深部近傍から前記台座の頂面まで前記上澄み液が流れる流路が形成され、
前記台座の前記頂面は、前記上澄み液を吸引する吸引具の先端を乗せることができるように形成され、
前記試料が前記チューブに入った状態で前記チューブの前記試料を遠心分離することにより、
前記沈殿物が、前記空間を形作る少なくとも前記容器本体の前記内壁に凝集されるように使用され、前記上澄み液を吸引することができる、
ことを特徴とするチューブ。
【請求項2】
前記流路は、毛細管現象によって前記上澄み液を前記台座の前記頂面まで引き上げるようになっている、
ことを特徴とするチューブ。
【請求項3】
前記台座の前記頂面には、前記吸引具の先端がスライド移動するのを妨げる突起又は凹みの少なくとも一方が形成された、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載のチューブ。
【請求項4】
前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記チューブの前記容器本体の中心軸と、前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態における前記チューブの質量中心と、がほぼ一致する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれかに記載のチューブ。
【請求項5】
前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態で、前記チューブの前記容器本体の前記開口端側から平面視した場合、前記台座の図心、前記容器本体の中心軸、及び前記チューブの前記開口端が前記蓋体によって封止された状態での質量中心の順でほぼ一直線上に位置する、
ことを特徴とする請求項1乃至3のいずれか1項に記載のチューブ。
【請求項6】
前記内部空間の前記内壁で、且つ、前記沈殿物が凝集する部分には、前記沈殿物を収容する凹みである沈殿物収容部が形成されている、
ことを特徴とする請求項1乃至5のいずれかに記載のチューブ。
【請求項7】
前記チューブを所定の角度で保持するチューブ保持穴が形成されたアングルロータと、
前記アングルロータを回転駆動するロータ駆動手段と、
前記チューブ保持穴に収容される前記請求項1乃至6のいずれかに記載されたチューブと、
を備えた遠心分離装置。
【請求項8】
前記チューブ保持穴内に前記チューブを収容する際に、前記チューブに形成されたチューブ側回り止め手段と前記ロータに形成されたロータ側回り止め手段とを係合することにより、前記チューブが前記ロータに対して位置決めされると共に、前記チューブ保持穴内における前記チューブの回動が阻止される、
ことを特徴とする請求項7に記載の遠心分離装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図16】
【図17】
【図18】
【図19】
【公開番号】特開2010−38876(P2010−38876A)
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−205540(P2008−205540)
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成22年2月18日(2010.2.18)
【国際特許分類】
【出願日】平成20年8月8日(2008.8.8)
【出願人】(000208765)株式会社エンプラス (403)
【Fターム(参考)】
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