説明

チロシンキナーゼ阻害剤として有用な4−(置換アニリノ)キナゾリン誘導体

本発明はチロシンキナーゼ阻害剤としての4−(置換アニリノ)キナゾリン誘導体に関する。具体的には、式I(式I中の各置換基は明細書に定義されている)の化合物、又はその医薬上許容できる塩若しくは溶媒和物を記載する。式Iの化合物の製造方法、その医薬組成物及び医薬用途も記載する。式Iの化合物は有効なチロシンキナーゼ阻害剤である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、医化学の分野に属し、具体的には、抗腫瘍活性を有する新しい部類の4−(置換アニリノ)キナゾリン誘導体及びその製造方法、及び(人間を含む)哺乳動物における、受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍、又は受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移の治療又は補助治療のための医薬としての4−(置換アニリノ)キナゾリン誘導体の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
腫瘍は人間の生命及び生活水準を厳しく脅かす主要な病気の一つである。世界保健機関(WHO)の統計データによれば、腫瘍で死ぬ患者は世界で1年当り約690万人である。生活環境及び生活習慣は変化するので、腫瘍の罹患率及び死亡率は近年不健全な環境及びいくつかの不利な因子により次第に増加している。
【0003】
腫瘍に対する伝統的な治療体制は、腫瘍を発見し破壊することにより行われている。現在、腫瘍細胞における細胞情報伝達経路の更なる研究及び腫瘍遺伝子並びに癌抑制遺伝子の作用に関する深い知識のおかげで、癌特定分子標的に反抗して方向付けられている抗腫瘍薬の開発は、より多くの注目を引き当該技術における研究焦点となっている。新しい治療体制として、腫瘍を標的とした治療が臨床的に適用され、近年顕著な進歩を得ている。プロテインチロシンキナーゼ(PTK)の情報経路が腫瘍細胞の増殖、区別、転移及びアポトーシスと密接に関連し(Li Sunら、Drug Discov Today,2000,5,344−353参照)、腫瘍を治療するためチロシンキナーゼ経路を妨げるか封鎖するのにプロテインチロシンキナーゼ阻害剤を使用することが出来る(Fabbro D.ら、Curr Opin Pharmacol,2002,2,374−381参照)ことは知られている。
【0004】
プロテインチロシンキナーゼ(PTK)は、正常及び異常細胞の増殖で重要な腫瘍性タンパク質及び原型腫瘍性タンパク質ファミリーの構成員であり、異なる基質のチロシン残基を選択的にリン酸化し、アデノシン三リン酸から多数の重要タンパク質のチロシン残基へのγ−リン酸基の移動に触媒作用を及ぼし、フェノール性ヒドロキシルをリン酸化することが出来る酵素である。プロテインチロシンキナーゼは、受容体型チロシンキナーゼ(RTK)、非受容体型チロシンキナーゼ、及びIR及びJanusキナーゼ等を含む(Robinson D.R.ら、Oncogene,2000,19,5548−5557参照)が、それらの大部分は受容体型チロシンキナーゼ(RTK)である。受容体型チロシンキナーゼ(RTK)は、内生のプロテインチロシンキナーゼであり、多数の細胞の制御に関与し、細胞の増殖を開始する分裂促進的信号の伝達で重要な役割を果し、細胞の増殖及び区別を制御する。すべてのRTKは同様な位相的構造を有するタイプIの細胞膜にかかっている細胞表面タンパク質に属する、即ち、それらは細胞外の大きなグリコシル化リガンド結合ドメイン、膜を通って発生する疎水性ドメイン、及び細胞内のチロシンキナーゼ触媒ドメイン、及び制御系列を有する。リガンド結合(例えば、上皮細胞増殖因子(EGF)又はEGFRの結合)は、受容体における部分的に符号化された受容体キナーゼの活性化を招き、それにより重要なチロシンアミノ酸をリン酸化して細胞膜を横切って増殖情報伝達に至ることが知られている。
【0005】
受容体型チロシンキナーゼは、細胞外のリガンド結合ドメインにおける異なる構造の副次的単位に基づいて4個の異なる部分群に分けることが出来(Ullrich A.ら、Cell,1990,61,203−212参照)、第一の部分群(即ち、erbBファミリー)は上皮細胞増殖因子受容体(EGFR)、HER2/Neu、HER3/c−erbB3、等を含み、第二の部分群はインスリン受容体、インスリン様増殖因子−1(IGF−1)受容体、等を含み、第三の部分群はPDGFR−α、PDGFR−β、コロニー刺激因子−1受容体(CSF−1R)、c−Kit、等を含み、更なる部分群はFGFR−1、FGFR−2、FGFR−3、FGFR−4、等を含み、ここで第三及び第四の部分群は5個及び3個の細胞外免疫グロブリン様ドメインをそれぞれ含有している。相当するリガンドに結合後、RTKは、受容体におけるホモ二量体又はヘテロ二量体の形成を開始し、PTKを活性化し、アデノシン三リン酸から受容体のチロシン残基へのリン酸基の移動に触媒作用を及ぼしてチロシン残基をリン酸化することが出来る。受容体の自働リン酸化は、二つの効果、即ち、イフェクトタンパク質の固有触媒活性の活性化及び結合部位の形成を生み出し、それにより下流のシグナル分子を活性化する(Zhu Xiaofengら、Acta Pharmaceutica Sinica,2002,37,229−234及びDeng Xiaoqiangら、Acta Pharmaceutica Sinica,2007,42,1232−1236参照)。
【0006】
受容体型チロシンキナーゼの主要な情報伝達経路には、Ras(レトロウイルス関連DNA配列)/Raf(急速促進線維肉腫)/MAPK(有糸分裂促進剤活性化プロテインキナーゼ)経路及びPI−3K(ホスファチジルイノシトール−3キナーゼ)/Akt(プロテインキナーゼB、PKB)経路が含まれる。Ras/Raf/MAPK経路は主に細胞の増殖及び生存を制御する。MAPKは分裂促進シグナルであり、活性化されたMAPKは細胞核中に入り、リン酸化による転写調節因子(例えば、Elkl、Etsl、c−Myc、等)を活性化し、それにより細胞周期及び形質転換過程を妨げ、腫瘍の形成を招く。MAPKは又タンパク質及び基質の劣化を誘発し、細胞転移を促進し、腫瘍増殖を維持することが出来る(Liebmann C.ら、Cell Signal,2001,13,777−785参照)。PI−3K/Akt情報伝達経路は、細胞増殖、細胞消滅抑制、侵入、及び転移過程を含み、Ras/Raf/MAPK経路と同じ重要な役割を果すが、ここでAktは細胞核中に移動し、リン酸化によるより多くの転写調節因子(例えば、FKHRL1、NF−B、Bcl−2等)を制御し、それにより細胞消滅を起こした遺伝子の発現を抑制し、Aktは又、グリコーゲン合成酵素キナーゼ−3(GSK−3)及び哺乳類標的のラパマイシン(mTOR)をリン酸化し、それ故にサイクリンDを更に制御し、そして一連の阻害性タンパク質(例えば、21CIPI及びp27KIPI)をリン酸化し、短縮細胞周期をもたらし、腫瘍形成を招くことがことが出来る(Shaw R.J.ら、Nature,2006,441,424−430参照)。従って、PTKにより触媒作用を及ぼされた受容体のリン酸化は、細胞増殖を究極的に促進し、腫瘍形成と直接関連する細胞消滅を抑制する。
【0007】
公知の研究結果が示しているように、Bcr−abl、EGFR、HER等などの受容体型チロシンキナーゼは腫瘍に苦しむ患者で過剰に発現されおり、特に、erbBファミリー(例えば、EGFR、HER2、等)の過剰発現は、非小細胞肺癌(NSCLC)(Brabender J.ら、Clin Cancer Res,2001,7,1850−1855参照)、白血病(Jose Ignacio Martin−Suberoacら、Cancer Genet Cvtogenet,2001,127,174−176参照)、胃腸癌(Kapitanovic S.ら、Gastroenterology,2000,112,1103−1113及びRoss J.S.ら、Cancer Invest 2001,19,554−558参照)、乳癌(Kligin J.S.ら、Breast Cancer Res Treat,1994,29,73−83参照)、前立腺癌(Scher H.I.ら、J Natl Cancer Inst,2000,92,1866−1868参照)、卵巣癌(Hellstrom I.ら、Cancer Res,2001,61,2420−2423参照)、頭部及び頚部癌(Shiga H.ら、Head Neck,2000,22,599−608参照)、等などの多数のヒト癌において検出することが出来る。より多くのヒト癌組織における受容体型チロシンキナーゼの発現及びPTKシグナル経路と腫瘍との間の関係は更に深く研究されているので、この種の標的部位は必然的に腫瘍に対する治療体制において革新を生み出す。
【0008】
多数の腫瘍細胞には異常な情報伝達経路が存在する、例えば、EGFRタンパク質の過剰発現は通常上皮細胞由来の腫瘍において見られ、PDEFRタンパク質の過剰発現は通常神経膠腫において見られ、Bcr−Ablの過剰活性化はCMLにおいて見られる、等である。1種以上の受容体の誤った制御の結果として、多発性腫瘍は臨床的により侵略的となり、従って悪い予後診断と密接に関連する(Ross J.S.ら、Cancer Investigation,2001,19,554−568参照)。前記の臨床的発見に加えて、多数の臨床的研究が示しているように、erbBファミリーにおけるチロシンキナーゼは細胞化生に関連する、即ち、1種以上のerbB受容体は多数の細胞株において過剰発現されており、EGFR又はerbB2タンパク質は核酸を入れられて非腫瘍細胞の中に入るとこれらの細胞を変質させることが出来る。更に、多数の臨床前研究が示しているように、1種以上のerbB受容体の活性は、抗増殖効果を誘起する小分子阻害剤又は阻害性抗体を使用することにより除去される(Mendelsohn J.ら、Oncogene,2000,19,6550−6565参照)。
【0009】
近年、新規な目標抗腫瘍薬を開発することは、細胞情報伝達経路の妨害に焦点が絞られている。情報伝達阻害剤は、細胞毒性によるよりもむしろ腫瘍の残存及び増殖シグナルの下方制御により細胞消滅を促進し、従ってその選択性は高く中毒性副作用は低い。現在、腫瘍を治療するために臨床的に適用されている数ダースの情報伝達阻害剤が存在し、それらは主に抗腫瘍薬としてのチロシンキナーゼ阻害剤であり、例えば、4−(置換アニリノ)キナゾリンの構造を有する化合物の開発が、Gefitinib(Iressa)、Erlotinib(Tarceva)、Lapatinib、等などの、EGFRチロシンキナーゼの標的部位に反抗して方向付けられた小分子阻害剤を目的として促進されている。
【0010】
Gefitinibは、Iressaという商標名でAstraZenecaにより開発されたEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であり、臨床的に研究されて日本で2002年にそして米国で2003年に市場に出され、事前の化学療法を受けた進行性又は転移性の非小細胞肺癌(NSCLC)を有する患者の治療に必要とされる最初のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。Erlotinibは、Tarcevaという商標名でOSIにより開発され、Genentech及びRocheに譲渡され、アメリカで2004年に市場に出されたEGFRチロシンキナーゼ阻害剤であり、NSCLC及び膵臓癌の治療に必要とされている。Erlotinibは、NSCLCの治療に対する最初の世代のアニリノキナゾリン小分子阻害剤に属し、進行NSCLCに対し生き残り効果を示すことが確認されている唯一のEGFRチロシンキナーゼ阻害剤である。Erlotinibは、種々のNSCLCに有効であり、良好な耐性を有し、骨髄抑制及び細胞毒性を全く示さず、患者の生存を著しく延ばし生活水準を改善することが出来る。Lapatinib(Tycerbという商標名を有する)は、GlaxoSmithKlineにより開発されたEGFR及びHER2の二重阻害剤であり、シグナル受容体阻害剤よりも高い、腫瘍増殖及び生存の情報伝達に対する阻害活性を示す。Lapatinibは、2007年にアメリカの食品医薬品局により承認され、HER2の過剰発現を伴いアントラサイクリン、タキサン及びトラスツズマブら、化学療法を受けた進行性又は転移性の乳癌の治療にカペシタビンとの組み合わせで必要とされた。
【0011】
なお、公開された特許出願 WO 96/33977、WO 97/30035、WO 98/13354、WO 00/55141、WO 02/41882、WO 03/82290 及び EP 837063 はすべて、4−位にアニリノ基で又は6−及び(又は)7−位に置換基で置換されたある種のキナゾリン誘導体を開示しているが、それらは受容体型チロシンキナーゼの阻害活性を有している。
【0012】
新規なターゲティング抗癌薬としての小分子チロシンキナーゼ阻害剤は、腫瘍の治療及び予防に対し新たな扉を開き、又それらはわずかな副作用及び良好な耐性を有する。数ダースの小分子チロシンキナーゼ阻害剤は腫瘍の臨床的治療に著しい貢献をしたけれども、現在のチロシンキナーゼ阻害剤よりも良い生体内活性及び(又は)改良薬理作用を有する更なる化合物を見出すことが必要とされている。従って、新規で改良された又はより有効なチロシンキナーゼ阻害剤を開発し、かかる新規な阻害剤と公知の標的タンパク質との関係及びその作用メカニズムを深く研究することは、腫瘍の臨床的治療にとって非常に重要な意義がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0013】
【特許文献1】WO 96/33977
【特許文献2】WO 97/30035
【特許文献3】WO 98/13354
【特許文献4】WO 00/55141
【特許文献5】WO 02/41882
【特許文献6】WO 03/82290
【特許文献7】EP 837063
【非特許文献】
【0014】
【非特許文献1】Li Sunら、Drug Discov Today,2000,5,344−353
【非特許文献2】Fabbro D.ら、Curr Opin Pharmacol,2002,2,374−381
【非特許文献3】Robinson D.R.ら、Oncogene,2000,19,5548−5557
【非特許文献4】Ullrich A.ら、Cell,1990,61,203−212
【非特許文献5】Zhu Xiaofengら、Acta Pharmaceutica Sinica,2002,37,229−234
【非特許文献6】Deng Xiaoqiangら、Acta Pharmaceutica Sinica,2007,42,1232−1236
【非特許文献7】Liebmann C.ら、Cell Signal,2001,13,777−785
【非特許文献8】Shaw R.J.ら、Nature,2006,441,424−430
【非特許文献9】Brabender J.ら、Clin Cancer Res,2001,7,1850−1855
【非特許文献10】Jose Ignacio Martin−Suberoacら、Cancer Genet Cvtogenet,2001,127,174−176
【非特許文献11】Kapitanovic S.ら、Gastroenterology,2000,112,1103−1113
【非特許文献12】Ross J.S.ら、Cancer Invest 2001,19,554−558
【非特許文献13】Kligin J.S.ら、Breast Cancer Res Treat,1994,29,73−83
【非特許文献14】Scher H.I.ら、J Natl Cancer Inst,2000,92,1866−1868
【非特許文献15】Hellstrom I.ら、Cancer Res,2001,61,2420−2423
【非特許文献16】Shiga H.ら、Head Neck,2000,22,599−608
【非特許文献17】Ross J.S.ら、Cancer Investigation,2001,19,554−568
【非特許文献18】Mendelsohn J.ら、Oncogene,2000,19,6550−6565
【非特許文献19】Kimberly G. Petrovら、Bioorg. Med. Chem. Lett.,2006,16,4686−4691
【非特許文献20】S. M. Bergeら、J. Pharmaceutical Sciences,1977,66:1
【非特許文献21】Prescott,Ed.のMethods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.(1976),p. 33
【非特許文献22】Rusnakら、Cell Prolif,2007,40,580−594
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0015】
本発明の目的は、チロシンキナーゼに対し有効な阻害作用を有する新規な化合物を見出すことである。
【課題を解決するための手段】
【0016】
本発明者らは、驚くべきことに、式Iの4−(置換アニリノ)キナゾリン誘導体がチロシンキナーゼに対する有効な阻害作用及び(又は)良好な生体内薬物動態を有することを見出した。本発明は該発見に基づいて達成されている。
【0017】
従って、本発明の第一局面は、式I:
【化1】


{式中、RはC1−6アルキルスルフィニル、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルチオ、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルチオ、C1−6アルキルアミド、C1−6アルキルスルホンアミド、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルホンアミド、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルホニル、又は式:
【0018】
【化2】


(式中、R及びRは各々独立に水素、C1−6アルキル、及び1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルから成る群より選択される)の基から選択される}
の化合物、又はその医薬上許容できる塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0019】
第一局面の態様によれば、本発明は、RがC1−6アルキルスルフィニル、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルフィニルから選択される式Iの化合物を提供する。本発明の式I化合物の一態様において、RはC1−4アルキルスルフィニル、又は1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルフィニルから選択される。
【0020】
第一局面の態様によれば、本発明は、RがC1−6アルキルチオ、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルチオから選択される式Iの化合物を提供する。本発明の式I化合物の一態様において、RはC1−4アルキルチオ、又は1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルチオから選択される。
【0021】
第一局面の態様によれば、本発明は、RがC1−6アルキルアミド、C1−6アルキルスルホンアミド、又は1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルホンアミドから選択される式Iの化合物を提供する。本発明の式I化合物の一態様において、RはC1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミド、又は1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルホンアミドから選択される。
【0022】
第一局面の態様によれば、本発明は、Rが1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルホニルから選択される式Iの化合物を提供する。本発明の式I化合物の一態様において、Rは1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルホニルから選択される。
【0023】
第一局面の態様によれば、本発明は、Rが式:
【0024】
【化3】


(式中、R及びRは本発明の第一局面による式Iの化合物に対して定義された意味を有する)の基から選択される式Iの化合物を提供する。本発明の式I化合物の一態様において、Rは式:
【0025】
【化4】


(式中、R及びRは各々独立に水素、C1−4アルキル、及び1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルから成る群、例えば、水素、メチル、エチル、及びトリフロオロメチルより選択される)の基から選択される。
【0026】
第一局面の態様によれば、本発明は、RがC1−4アルキルスルフィニル、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルチオ、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−6アルキルチオ、C1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミド、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルホンアミド、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルホニル、又は式:
【0027】
【化5】


(式中、R及びRは各々独立に水素、C1−4アルキル、及び1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルから成る群より選択される)の基から選択される式Iの化合物を提供する。
【0028】
第一局面の態様によれば、本発明は、前記ハロゲンがフッ素、塩素又は臭素から選択される式Iの化合物を提供する。一態様において、前記ハロゲンはフッ素又は塩素、好ましくはフッ素から選択される。
【0029】
第一局面の態様によれば、本発明は、前記アルキルが線状又は分岐状アルキル基である式Iの化合物を提供する。
【0030】
第一局面の態様によれば、本発明は、前記アルキルがメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、ペンチル、及びヘキシルから成る群より選択される式Iの化合物を提供する。一態様において、前記アルキルはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、n−ブチル、sec−ブチル、及びtert−ブチルから成る群より選択される。一態様において、前記アルキルはメチル、エチル、n−プロピル、iso−プロピル、及びn−ブチルから選択される。
【0031】
第一局面の態様によれば、本発明は、前記の医薬上許容できる塩が塩酸塩、硫酸塩、メシレート、キシレンスルフォン酸塩、フマル酸塩、及びマレイン酸塩から成る群より選択される式Iの化合物、又はその水和物などの溶媒和物を提供する。
【0032】
第一局面の態様によれば、本発明は、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(スルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メタンスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(アセトアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(N−メチルスルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(N−エチルスルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、及び
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
から成る群より選択される式Iの化合物、又はその医薬上許容できる塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0033】
第一局面の態様によれば、本発明は、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(スルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メタンスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、及び
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
から成る群より選択される式Iの化合物、又はその医薬上許容できる塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0034】
第一局面の態様によれば、本発明は、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(スルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メタンスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、及び
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
から成る群より選択される式Iの化合物、又はその医薬上許容できる塩若しくは溶媒和物を提供する。
【0035】
本発明の第二局面は、以下の工程:
a)適切な塩基の存在下有機溶媒などの適切な溶媒中で、式II:
【0036】
【化6】


の化合物、又はその塩若しくは反応性誘導体を、式III:
【0037】
【化7】


の化合物、又はその適切な塩と反応させる工程、及び、
b)その反応混合物を適切な還元剤で処理する工程であって、それにより式I(式中、Rは本発明第一局面の任意の態様で定義された通りの意味を有する)の化合物を生ずる工程、
を含む、本発明の第一局面の態様による式Iの化合物を製造する方法を提供する。
【0038】
第二局面の態様によれば、本発明は、塩基がトリエチルアミン、トリエタノールアミン、アルキルジメチルアミン、及びナトリウムメトキシド等などの有機塩基、又は水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、及び炭酸ナトリウム等などの無機塩基であっても良い、式Iの化合物の製造方法を提供する。一態様において、塩基はトリエチルアミンである。
【0039】
第二局面の態様によれば、本発明は、式IIIの化合物の塩が塩酸塩、硫酸塩、及び硝酸塩等から成る群より選択される、式Iの化合物の製造方法を提供する。一態様において、式IIIの化合物の塩は塩酸塩である。
【0040】
第二局面の態様によれば、本発明は、還元剤が水素化ホウ素ナトリウム、シアノ水素化ホウ素ナトリウム、及びナトリウムトリアセトキシボロヒドリド、等から成る群より選択される、式Iの化合物の製造方法を提供する。一態様において、還元剤は水素化ホウ素ナトリウムである。他の態様において、還元剤はシアノ水素化ホウ素ナトリウムである。
【0041】
第二局面の態様によれば、本発明は、所望により式II及びCHCHCHR中のどの官能基も保護されている、式Iの化合物の製造方法を提供する。
【0042】
本発明の第二局面による方法において、必要なら、いくつかの基(例えば、アミノ、ヒドロキシル基等)は、式Iの化合物の製造中望ましくない反応を防ぐために保護する必要があり、他方保護基は適切な時に保護を取り除く。このような例は述べるには多過ぎ、具体的には述べない保護基及び脱保護方法の使用は、すべて本発明の範囲内である。
【0043】
本発明の第二局面による方法において、式IIの化合物は当該技術における公知技術に従って当業者により製造することが出来、典型的な方法において、式IIの化合物は、参考文献、例えば、Kimberly G. Petrovら、Bioorg. Med. Chem. Lett.,2006,16,4686−4691に従って製造することが出来る。
【0044】
本発明の第三局面は、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物、及び所望により1種以上の医薬上許容できる担体又は賦形剤を含む医薬組成物に関する。
【0045】
本発明の第四局面は、(人間を含む)哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼに関連する病気又は疾患の治療及び(又は)予防のための医薬の製造における、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物の使用に関する。
【0046】
本発明の第四局面は又、(人間を含む)哺乳動物における、受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍、又は受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移の治療又は補助治療及び(又は)予防のための医薬の製造における、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物の使用にも関する。
【0047】
本発明により完全に予測できることであるが、本発明の化合物は、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結腸直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮、外陰部、等の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫、等などの非固形腫瘍を含む、erbB受容体型チロシンキナーゼ感受性の癌、例えば、EGFR又はHer2が過剰に発現されている腫瘍、及びEGF駆動の腫瘍を治療するのに使用することが出来る。従って、上記用語、「受容体型チロシンキナーゼに関連する病気又は疾患」、及び「受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍」又は「受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移」に含まれる腫瘍又は癌は、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結腸直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮、外陰部、等の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫、等などの非固形腫瘍を含む、erbB受容体型チロシンキナーゼ感受性の癌、例えば、EGFR又はHer2が過剰に発現されている腫瘍、及びEGF駆動の腫瘍を含んでいても良い。
【0048】
本発明の第五局面は、治療及び(又は)予防を必要とする哺乳動物に、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物を治療的に有効な量投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼに関連する病気又は疾患の治療及び(又は)予防のための方法に関する。
【0049】
本発明の第五局面は又、治療又は補助治療及び(又は)予防を必要とする(人間を含む)哺乳動物に、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物を治療的に有効な量投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍、又は受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移の治療又は補助治療及び(又は)予防のための方法にも関する。
【0050】
本発明の第五局面は更に、治療及び(又は)予防を必要とする(人間を含む)哺乳動物に、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物を治療的に有効な量投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における腫瘍又は癌の治療及び(又は)予防のための方法であって、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結腸直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮、外陰部、等の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫、等などの非固形腫瘍を含み、erbB受容体型チロシンキナーゼ感受性の癌、例えば、EGFR又はHer2が過剰に発現されている腫瘍、及びEGF駆動の腫瘍を含む、腫瘍又は癌の治療及び(又は)予防のための方法にも関する。
【0051】
本発明の第六局面は、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物、及び所望により1種以上の医薬上許容できる担体又は賦形剤を含む、受容体型チロシンキナーゼに関連する病気又は疾患の治療及び(又は)予防のための医薬組成物に関する。
【0052】
本発明の第六局面は又、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物、及び所望により1種以上の医薬上許容できる担体又は賦形剤を含む、(人間を含む)哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍、又は受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移の治療又は補助治療及び(又は)予防のための医薬組成物にも関する。
【0053】
本発明の第六局面は更に、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物、及び所望により1種以上の医薬上許容できる担体又は賦形剤を含む医薬組成物であって、(人間を含む)哺乳動物における、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結腸直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮、外陰部、等の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫、等などの非固形腫瘍を含み、erbB受容体型チロシンキナーゼ感受性の癌、例えば、EGFR又はHer2が過剰に発現されている腫瘍、及びEGF駆動の腫瘍を含む、腫瘍又は癌の治療及び(又は)予防のための医薬組成物にも関する。
【0054】
本発明の第七局面は、受容体型チロシンキナーゼに関連する病気又は疾患の治療及び(又は)予防のための、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物に関する。
【0055】
本発明の第七局面は又、(人間を含む)哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍、又は受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移の治療又は補助治療及び(又は)予防のための、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物にも関する。
【0056】
本発明の第七局面は更に、(人間を含む)哺乳動物における腫瘍又は癌であって、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結腸直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮、外陰部、等の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫、等などの非固形腫瘍を含み、erbB受容体型チロシンキナーゼ感受性の癌、例えば、EGFR又はHer2が過剰に発現されている腫瘍、及びEGF駆動の腫瘍を含む、前記の腫瘍又は癌の治療及び(又は)予防のための、本発明第一局面の任意の態様による式Iの化合物にも関する。
【0057】
本発明の任意の局面又はかかる任意局面の任意の態様における特徴は、他の任意の局面又はかかる他の任意局面の任意態様に、それらが互いに矛盾しないならば、当てはまり得る。勿論、それらが逆である場合、必要なら、相応する特徴を適切に修正することが出来る。本発明において、例えば、「本発明第一局面の任意の態様」という表現が述べられている場合、用語「任意の」は本発明第一局面の任意の従属的局面を表し、他の局面に関する同様の表現が述べられている場合、この用語は同じ意味を有する。
【0058】
本発明を以下の通り更に説明する。
本発明で引用したすべての参考文献は本願明細書に引用して援用し、もしもこれらの参考文献で表現された意味が本発明で定義されたものと異なるならば、本発明における表現を優先させる。なお、本発明での使用用語及び句は、特に断りのない限り、当業者に周知の普通の意味を有する。それにもかかわらず、本発明ではこれらの用語及び句をより詳細に更に例証し説明することが望ましい。もしも述べられた用語及び句がそれらの普通の意味と異なる意味を有するならば、本発明で表現された意味を優先させる。
【0059】
本発明の式Iの化合物において、キナゾリン環は以下の典型的な順序:
【0060】
【化8】


に従って番号付けすることが出来る。
【0061】
本願明細書での使用用語「ハロゲン」又は「ハロ」は、フッ素、塩素、臭素及びヨウ素を表現する。
【0062】
本発明において、述べられている場合、使用用語「ヒドロカルビル」はアルキル、アルケニル及びアルキニルを含む。
【0063】
本発明において、述べられている場合、使用用語「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」は当該技術で周知の普通の意味を有し、それらは、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、n−ブチル、sec−ブチル、tert−ブチル、アリル、プロペニル、プロピニルであるが、それらに限定されない線状又は分岐状のヒドロカルビル基であり、「アルキル」、「アルケニル」及び「アルキニル」は又集合的に「ヒドロカルビル」又は「脂肪族ヒドロカルビル」と呼ぶことも出来る。
【0064】
本発明の式Iの化合物を合成する方法において、使用されるすべての原料は、特別の定めのない限り、従来技術により製造するか、又は従来技術で公知の方法により製造するか、又は商業的に入手することが出来る。上記反応計画で使用される中間体、原料、試薬及び反応条件はすべて、当業者により修正することが出来る。なお、当業者は又、本発明の第二局面の方法により本発明に列挙されない式Iの他の化合物を合成することも出来る。
【0065】
本発明の式Iの化合物は、過敏症などの不都合な効果を生成しない限りにおいて、追加の活性成分と組み合わせて使用することが出来る。
【0066】
本発明の式Iに示される活性化合物は、抗癌剤単独として、又は1種以上の追加抗腫瘍薬と組み合わせて使用することが出来る。組み合わせ治療は、治療成分の各々を同時に、順序正しく、又は別個に投与することにより行われる。
【0067】
本発明において、用語「組成物」は、指定された量の指定された成分を含む製品、及び指定された量の種々の指定成分を組み合わせることにより直接的に又は間接的に得られる任意の製品を表現する。
【0068】
本発明の化合物は、無機酸又は有機酸から誘導される医薬上許容できる塩の形で使用することが出来る。用語「医薬上許容できる塩」は、過剰の毒性、刺激、過敏症、等なしに人間又は下等動物の組織と接触するのに適していて、信頼できる医学的決定の範囲内にある効果/危険の妥当な比率と釣り合った塩を表現する。医薬上許容できる塩は当該技術において周知である。例えば、S. M. Berge等は詳細な医薬上許容できる塩を記載している(S. M. Bergeら、J. Pharmaceutical Sciences,1977,66:1参照)。該塩は、本発明の化合物の最終的分離精製過程においてその場で製造するか、又は本発明化合物の遊離の塩基性官能基と適切な有機酸との反応により単独で製造することが出来る。典型的な酸付加塩として、酢酸塩、アジピン酸塩、アルギン酸塩、クエン酸塩、アスパラギン酸塩、安息香酸塩、ベンゼンスルホナート、重硫酸塩、酪酸塩、カンファレート(camphorate)、カンファースルホン酸塩(camphor sulfonate)、ジグルコン酸塩、グリセロリン酸塩、ヘミ硫酸塩、ヘプチレート(heptylate)、カプロン酸塩、フマル酸塩、塩酸塩、臭化水素酸塩、ヨウ化水素酸塩、2−ヒドロキシエシレート(イソチオネート)、乳酸塩、マレイン酸塩、メシレート、ニコチネート、2−ナプシレート(2−napsylate)、シュウ酸塩、パルメート(palmate)、ペクチン酸塩、過硫酸塩、3−フェニルプロピオン酸塩、ピクリン酸塩、ピバリン酸塩、プロピオン酸塩、琥珀酸塩、酒石酸塩、チオシアン酸塩、リン酸塩、グルタミン酸塩、炭酸水素塩、p−トシレート、及びウンデカン酸塩が挙げられるが、それらに限定されない。同様に、アルカリ性の窒素含有基は、以下の物質、即ち、エチル、プロピル及びブチルの塩化物、臭化物及びヨウ化物などの低級アルキルハロゲン化物;硫酸ジメチル、硫酸ジエチル、硫酸ジブチル及び硫酸ジペンチルなどの硫酸ジアルキル;デシル、ドデシル、テトラデシル及びオクタデシルの塩化物、臭化物及びヨウ化物などの長鎖ハロゲン化物;臭化ベンジル、臭化フェニルエチルなどのアルアルキルハロゲン化物等を用いて四級化することが出来る。それ故に、水又は油に溶解性又は分散性の製品を得ることが出来る。医薬上許容できる酸付加塩を形成することができる酸の例には、塩酸、臭化水素酸、硫酸、及びリン酸などの無機酸、及びシュウ酸、マレイン酸、琥珀酸及びクエン酸などの有機酸が含まれる。
【0069】
塩基付加塩は、本発明化合物の遊離のカルボン酸部分を適切な塩基と反応させることにより、本発明化合物の最終的分離精製過程においてその場で製造することが出来、該塩基は、例えば、医薬上許容できる、金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩及び炭酸水素塩、又はアンモニア、又は有機の第一級アミン、第二級アミン若しくは第三級アミンであっても良い。
【0070】
医薬上許容できる塩は、リチウム、ナトリウム、カリウム、マグネシウム及びアルミニウム等などのアルカリ金属又はアルカリ土類金属の陽イオン、及びアンモニウム、テトラメチルアンモニウム、テトラエチルアンモニウム、メチルアンモニウム、ジメチルアンモニウム、トリメチルアンモニウム、トリエチルアンモニウム、ジエチルアンモニウム、及びエチルアンモニウム等を含む非中毒性第四アンモニウム及びアミン陽イオンに基づいた塩を含むが、それらに限定されない。塩基付加塩を形成することができる典型的有機アミンとして、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペリジン、ピペラジン、等が挙げられる。
【0071】
本発明の式Iの化合物は更に、それらの異性体、ラセミ体、光学異性体、ジアステレオマー、光学異性体に富む生成物、溶媒和物及びエステルを含み、又本発明の式Iの化合物、及びそれらの異性体、ラセミ体、光学異性体、ジアステレオマー、光学異性体に富む生成物、溶媒和物及びエステルは更に、水和物、アルコール溶媒和物、等などの溶媒和物を形成することが出来る。該化合物は更に、プロドラッグ、即ち、生体内代謝後に活性成分を放出することが出来る形であっても良い。適切なプロドラッグ誘導体を選択し調製することは、当業者にとって周知の事実である。一般的に、本発明の目的に対して、水、エタノールなどの医薬上許容できる溶媒を用いた本発明化合物の溶媒和物は、非溶媒和物の形の本発明化合物と同等である。
【0072】
本発明の医薬組成物における種々の活性成分の実際的投与量レベルは、活性化合物の決められた量が特定の患者、投薬形態、投与様式において望ましい治療反応を生ずるように、変化させることが出来る。投与量レベルは、具体的化合物の活性度、投与経路、治療すべき病気の厳しさ、及び患者の状態と過去の病歴によって決定しなければならない。しかしながら、当該技術における伝統的な方法は、化合物の投与量を、望ましい治療効果を達成するためのレベルよりも低いレベルから望ましい治療効果を達成するのに充分なレベルまで徐々に増加させることである。
【0073】
前述の又は他の治療及び(又は)予防において、治療的に及び(又は)予防的に有効な量の本発明の化合物は、純粋な化合物の形で、又はその医薬上許容できるエステル又はプロドラッグの形で使用することが出来る。その代わりに、該化合物は、該化合物及び1種以上の医薬上許容できる賦形剤を含む医薬組成物を経由して投与することが出来る。本発明の化合物の「治療的に及び(又は)予防的に有効な量」という用語は、該化合物が予防的に及び(又は)治療的に妥当な効果/危険の比率を達成するのに充分な量であることを意味する。本発明の化合物又は組成物の一日当りの全量は、信頼できる医学的決定の範囲内で医師により決定しなければならいことを理解すべきである。いくらかの特定患者に関しては、治療の特定量は、治療すべき病気及びその厳しさ、使用される特定化合物の活性度、使用される特定の組成物、患者の年齢、体重、一般的健康状態、性別及び食べ物、使用される特定化合物の投与の時間及び経路及び排泄速度、特定化合物と組み合わせて又は同時に投与される薬、及び医薬の技術で周知の同様な因子を含む種々の因子に基づいて決定しなければならない。例えば、化合物の投与量を、望ましい治療効果を達成するためのレベルよりも低いレベルから望ましい治療効果を達成するのに充分なレベルまで徐々に増加させることは、当該技術において普通の方法である。一般に、哺乳動物、特に人間に対する式Iの化合物の投与量は、1日当り体重1kg当り0.001〜1000mg、例えば、1日当り体重1kg当り0.01〜100mg、1日当り体重1kg当り0.01〜10mgであっても良い。
【0074】
有効量の本発明化合物を含む医薬組成物は、当業者に周知の医薬上許容できる担体を使用することにより調製することが出来る。それ故に、本発明は更に、1種以上の非中毒性の医薬上許容できる担体を配合した本発明の化合物を含む医薬組成物を提供する。該医薬組成物は、経口投与、非経口的注射、又は直腸投与のために固形状または液体状で具体的に配合することが出来る。
【0075】
医薬組成物は、投与を促進するために多くの投薬形態、例えば、経口用製剤(例えば、錠剤、カプセル、溶液又は懸濁液);注射可能な製剤(例えば、注射可能な溶液又は懸濁液、又は注射前に水を加えることによりすぐに使用できる注射可能な乾燥粉末)で配合することが出来る。医薬組成物における担体は、経口用製剤に対して、結合剤(例えば、澱粉、典型的にはトウモロコシの現存澱粉、小麦又は米、ゼラチン、メチルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム、及び/又はポリビニルピロリドン)、希釈剤(例えば、乳糖、D形グルコース、蔗糖、マンニトール、ソルビトール、セルロース、及び/又はグリセロール)、潤滑剤(例えば、二酸化珪素、タルク、ステアリン酸又はその塩、典型的には現存するステアリン酸マグネシウム又はステアリン酸カルシウム、及び/又はポリエチレングリコール)を含み、必要なら、澱粉、寒天、アルギン酸又はその塩、典型的にはアルギン酸ナトリウムなどの分解剤、及び(又は)発泡混合物、共溶剤、安定剤、懸濁剤、着色剤、香料添加剤、等を更に含み、注射可能な製剤に対して、保存料、可溶化剤、安定剤等を含み、局所用の製剤に対して、基材、希釈剤、潤滑剤、保存料、等を含む。該医薬品は経口的に又は非経口的に(例えば、静脈に、皮下に又は局所に)投与することが出来、もしもいくつかの薬が胃の状況で安定でないならば、それらは配合された腸溶性錠剤であっても良い。
【0076】
より具体的に、本発明の医薬組成物は、人間又は他の哺乳動物に対して経口的に、直腸に、非経口的に、管腔内に、経膣的に、腹腔内に、局所に(例えば、粉末、軟膏、又は滴により)、頬側に、投与するか、又は口腔用スプレー又は鼻腔用スプレーとして投与することが出来る。該文脈における用語「非経口的」は、静脈の、筋肉内の、腹腔内の、胸郭内の、皮下の及び関節内の注射又は注入を含む投与様式を表現する。
【0077】
非経口的注射に適した組成物は、生理的に容認できる殺菌した水性又は非水性溶剤、分散剤、懸濁剤、又は乳化剤、及び殺菌した注射可能な溶液又は分散液を形成するための滅菌分散剤を含むことが出来る。適切な水性又は非水性の担体、希釈剤、溶剤又は媒体の例には、水、エタノール、ポリオール(プロピレングリコール、ポリエチレングリコール、グリセロール、等)、植物油(例えば、オリーブ油)、オレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステル及びそれらの適切な混合物が含まれる。
【0078】
これらの組成物は更に、保存料、湿潤剤、乳化剤及び分散剤などの賦形剤を含むことが出来る。ニパギン、ノーチサン(nautisan)、フェノール、ソルビン酸、等などの種々の抗菌剤及び抗真菌剤の使用は、微生物と戦う効果を確実にすることが出来る。砂糖、塩化ナトリウム、等などの等張化剤を含むことも望ましい。モノステアリン酸アルミニウム及びゼラチンなどの吸収遅延用物質の使用は、注射可能な投薬形態の吸収を延長することが出来る。
【0079】
該懸濁液は該活性化合物の他に更に、エトキシル化イソオクタデカノール、ポリオキシエチレンソルビトール及びポリオキシエチレンソルビタン、微結晶性セルロース、水酸化メタ−アルミニウム、ベントナイト、寒天及びトラガカントゴム、又はこれら物質の混合物などの懸濁剤を含むことが出来る。
【0080】
或る場合には、薬の効果を延長するために、皮下に又は筋肉内に投与された薬の吸収速度を減少させることが望ましい。これは、水溶性の悪い結晶又は非晶質形状の液体懸濁液を使用することにより達成することが出来る。このように、薬の吸収速度はその溶解速度に依存するが、一方該溶解速度は結晶の大きさ及び形状に依存する。若しくは、非経口投与された薬の吸収遅延は、該薬を油媒体に溶解又は分散させることにより達成することが出来る。
【0081】
注射可能な持続性医薬投薬形態は、ポリラクチド−ポリグリコリドなどの生物分解性ポリマー中に薬のマイクロカプセル基材を形成することにより調製することが出来る。薬の放出速度は、薬対ポリマーの比及び具体的に使用されるポリマーの性質により制御することが出来る。生物分解性ポリマーの他の例には、ポリ(オルトエステル)及びポリ(無水物)が含まれる。注射可能な持続性医薬投薬形態は又、体内組織に適合したリポソーム又はマイクロエマルジョン中に薬を包埋することによっても調製することが出来る。
【0082】
注射可能な製剤は、細菌除去用フィルターを用いたろ過により又は滅菌固体組成物の形状をした殺菌剤を配合することにより殺菌することが出来、該固体組成物は臨床応用前に滅菌水又は他の注射可能な滅菌媒体中に溶解又は分散させることが出来る。
【0083】
本発明の化合物又はその組成物は、経口的に又は非経口的に投与することが出来る。経口投与用のそれらのものは錠剤、カプセル、被覆された投薬形態であっても良く、非経口投与用の医薬品は注射薬及び坐薬であっても良い。これらの製剤は当業者に周知の方法により調製される。錠剤、カプセル及び被覆された投薬形態を製造するために、使用される賦形剤は、澱粉、ゼラチン、アラビアゴム、シリカ、ポリエチレングリコールなどの普通に使用される賦形剤であり、液体投薬形態に使用される溶剤は水、エタノール、プロピレングリコール、植物油(例えば、トウモロコシ油、ラッカセイ油、オリーブ油、等)である。本発明の化合物を含む製剤は更に、界面活性剤、潤滑剤、錠剤分解物質、保存料、香料添加剤及び着色剤、等などの他の賦形剤を含むことが出来る。錠剤、カプセル、被覆された投薬形態、注射薬及び坐薬において、本発明の式I化合物の投与量は、単一投薬形態に存在する該化合物の量で表現される。単一投薬形態において、本発明の式I化合物の量は通常1〜5000mgであり、好ましい単一投薬形態は10〜500mgを含有し、より好ましい単一投薬形態は20〜300mgを含有する。具体的に、本発明で提供される経口投与用の固体投薬形態は、カプセル、錠剤、ピル、粉末、及び顆粒を含む。かかる固体投薬形態において、該活性化合物は、クエン酸ナトリウム又はリン酸ジカルシウム及び(又は)以下の物質、即ち、a)澱粉、乳糖、蔗糖、グルコース、マンニトール及びケイ酸などの充填剤又は増量剤、b)カルボキシメチルセルロース、アルギン酸塩、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、蔗糖、及びアラビアゴムなどの結合剤、c)グリセロールなどの保湿剤、d)寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモ又はキャッサバ澱粉、アルギン酸、いくつかのケイ酸塩及び炭酸ナトリウムなどの分解剤、e)パラフィンワックスなどの溶液遮断薬、f)四級アンモニウム化合物などの吸収促進剤、g)セタノール及びグリセロールモノステアレートなどの湿潤剤、h)カオリン及びベントナイトなどの吸着剤、及びi)タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ドデシル硫酸ナトリウム及びそれらの混合物などの潤滑剤、などの少なくとも1種の不活性な医薬上許容できる賦形剤又は担体と混合することが出来る。カプセル、錠剤及びピルの場合、これらの投薬形態は又緩衝剤を含んでいても良い。
【0084】
同様なタイプの固体組成物は、軟質カプセル及び硬質カプセルの充填剤としても使用することが出来る乳糖及び高分子量ポリエチレングリコールなどの賦形剤を使用している。
【0085】
錠剤、糖衣錠、カプセル、ピル及び顆粒の固体投薬形態は、調合医薬の分野で周知の腸溶性被覆材料及び他の被覆材料などの被覆剤及び殻材料を用いて調製することが出来る。これらの固体投薬形態は所望により日光遮断剤を含んでいても良く、それらの組成物は、所望により遅延様式で、それらが活性成分を腸管のいくつかの位置で単に又は優先的に放出することを可能にすることが出来る。埋め込み組成物の例は高分子物質及びワックスを含む。適切なら、該活性化合物は、前述した1種以上の賦形剤を用いてマイクロカプセルの形で配合することが出来る。
【0086】
経口投与用の液体投薬形態は、医薬上許容できる乳化剤、溶剤、懸濁剤、シロップ及びエリキシル剤を含む。該活性化合物の他に、該液体投薬形態は更に、水又は他の溶剤、可溶化剤及び乳化剤などの当該技術で普通に使用されている不活性希釈剤、例えば、エタノール、イソプロパノール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、ブタン−1,3−ジオール、ジメチルホルムアミド、油(例えば、綿実油、ラッカセイ油、トウモロコシ油、胚油、オリーブ油、ヒマシ油、及びゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフルフリルアルコール、ポリエチレングリコール及びソルビタンの脂肪酸エステル、及びそれらの混合物を含んでいても良い。不活性希釈剤の他に、経口投与用の該組成物は更に、湿潤剤、乳化剤及び懸濁剤、甘味剤、香料添加剤、及び香料などの賦形剤を含むことが出来る。
【0087】
直腸又は膣投与用の組成物は好ましくは坐薬である。坐薬は、本発明の化合物を、カカオバター、ポリエチレングリコール又は坐薬用ワックスなどの適切な非刺激性の賦形剤又は担体と混合することにより調製することが出来、それらは室温で固体であるが、体温で液体となり、直腸管腔又は膣管中で活性化合物を放出することが出来る。
【0088】
又、本発明の化合物を局所投与用に使用することも望ましい。局所投与用の本発明化合物の投薬形態は、粉末、スプレー、軟膏及び吸入を含む。該活性化合物及び医薬上許容できる担体は、滅菌状態下、任意の望ましい保存料、緩衝剤又は高圧ガスと混合することが出来る。点眼薬、眼用軟膏、粉末及び溶液はすべて本発明の範囲内にある。
【0089】
本発明の化合物はリポソームの形で投与することが出来る。それは当該技術で周知であり、リポソームは通常リン脂質又は他の脂質を使用することにより調製される。リポソームは、水性媒体に分散されている単層又は多層の水和液晶を用いて形成される。リポソームを形成することの出来る、任意の非中毒性で生理的に容認でき代謝可能な脂質が使用可能である。リポソーム形態の本発明の組成物は、本発明の化合物の他に、安定剤、保存料、賦形剤を含むことが出来る。好ましい脂質は自然の及び合成のリン脂質及びホスファチジルコリン(レシチン)であり、それらは単独に又は一緒に使用することが出来る。リポソームを形成する方法は当該技術において周知である。参考文献、例えば、Prescott,Ed.のMethods in Cell Biology,Volume XIV,Academic Press,New York,N.Y.(1976),p. 33を見ることが出来る。
【0090】
本発明の発明者らは、驚くべきことに、式Iのキナゾリン誘導体がEGFR及びHer2両方のチロシンキナーゼに阻害活性を示し、他方、EGFR及びHer2のチロシンキナーゼが高度に発現されている細胞株を抑制することを見出したのである。それ故に、本発明の化合物は、主として、EGFRファミリーの1種以上のチロシンキナーゼを阻害し、該キナーゼ活性を抑制することにより抗増殖、抗転移及び細胞消滅の促進効果をもたらすことによって、EGFR及びHer2の受容体型チロシンキナーゼにより単独に又は部分的に仲介された病気の治療に使用することが出来る。具体的に、EGFR及びHer2のチロシンキナーゼに対する阻害効果により、本発明の化合物は、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮及び外陰部の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫などの非固形腫瘍を含む、erbB受容体型チロシンキナーゼに敏感な1種以上の腫瘍、特に、EGF駆動の腫瘍及びEGFR又はHer2が高度に発現されている腫瘍の予防及び治療に使用することが出来る。
【0091】
〔実施例〕
具体的な製造例及び生物学的試験例を用いて、本発明を更に説明するが、これらの例及び試験例は単に詳細な実証のために使用しているに過ぎず、決して本発明を限定するために使用しているのではないことを理解すべきである。
【0092】
例で使用される物質及び方法は、本発明では一般的に及び(又は)具体的に記載する。本発明の目的を果すために使用する多くの物質及び操作方法は当該技術において知られているけれども、それでもやはり出来るだけ詳細にそれらを説明する。本発明で使用される物質及び方法が詳しく説明されていなくても、それらが当該技術において周知であることを、当業者は明らかに知っている。
【0093】
本発明においては、特に明記しない限り、(i)温度は摂氏(℃)で表現され、操作は室温又は環境温度で行われ、(ii)有機溶媒は無水硫酸ナトリウムで乾燥され、溶媒の蒸発は減圧下におけるロータリーエバポレーター及び60℃以下の浴温度を用いて行われ、(iii)反応の進行は薄層クロマトグラフィー(TLC)を用いて監視され、(iv)最終生成物は満足なプロトン核磁気共鳴スペクトル(H−NMR)及び質量スペクトル(MS)データを有する。
【0094】
[実施例1]
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(スルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン(化合物1)の合成
【0095】
a. アミノ−Cbz保護ナトリウムタウレートの合成
【化9】

【0096】
25.0gのタウリンを200mlの1M NaOH溶液に溶解し、激しく撹拌しながら、同時にカルボベンゾキシクロライド(CbzCl、51g)のジオキサン溶液及び300mlの1M水酸化ナトリウム溶液を滴下した。滴下終了後、室温で1時間撹拌して反応させ、水相を酢酸エチルで抽出し、水相を減圧濃縮して46.1gの白色固体を収率82%で得た。
【0097】
b. 2−ベンジルオキシホルムアミドエチルスルホニルクロライドの合成
【0098】
【化10】

【0099】
反応フラスコ中に、20.0gのアミノ−Cbz保護ナトリウムタウレート、SOCl(30ml)及びDMF1mlを加え、還流下3時間反応させ、室温まで冷却し、ろ過し、減圧蒸留して溶媒を除去して17.9gの油状生成物を収率91%で得た。
【0100】
c. 2−ベンジルオキシホルムアミドエチルスルホンアミドの合成
【0101】
【化11】

【0102】
反応フラスコ中に、100mlのアンモニア水及び100mlのジオキサンを加え、アセトニトリル(30ml)中17.9gの2−ベンジルオキシホルムアミドエチルスルホニルクロライドの溶液を氷浴条件下滴下し、滴下終了後、室温で2時間撹拌して反応させ、反応液を減圧濃縮し、ろ過し、ろ過ケーキを水洗し、乾燥して12.3gの白色固体を収率74%で得た。
【0103】
d. 2−ホルムアミドエチルスルホンアミドの合成
【0104】
【化12】

【0105】
反応フラスコ中に、10.3gの2−ベンジルオキシホルムアミドエチルスルホンアミド、10%パラジウム炭素(3.0g)及び600mlのメタノールを加え、水素雰囲気下室温で一晩撹拌し、35mlのギ酸を加え、30分撹拌し、ろ過し、減圧濃縮して5.6gの油状生成物を収率93%で得た。
【0106】
e. 2−スルホンアミドエチルアミン塩酸塩の合成
【0107】
【化13】

【0108】
2−ホルムアミドエチルスルホンアミドを無水ジエチルエーテルに加え、塩化水素ガスの下で3時間撹拌し反応させ、ろ過し、ろ過ケーキを無水ジエチルエーテルで洗浄し、乾燥して4.6gの白色固体を収率87%で得た。
【0109】
f. N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(スルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミンの合成
【0110】
【化14】

【0111】
2.4gの化合物5−(4−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロアニリノ)−6−キナゾリニル)フラン−2−ホルムアルデヒドをジクロロメタン/メタノール(3:1)の混合物に溶解し、1.0gのトリエチルアミンを加え、10分撹拌し反応させ、1.6gの2−アミノエチルスルホンアミド塩酸塩を加え、室温で撹拌し反応させ、TLCによる原料検出で反応が終了したら、氷浴下バッチ式に0.57gの水素化ホウ素ナトリウムを加え、TLCによる検出で反応が終了したら、適量のジクロロメタンを加え、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーに処して2.2gの黄色固体を収率74%で得た。
【0112】
H NM(600MHz,DMSO−d,δppm):10.06(s,1H),9.1(s,1H),8.58(s,1H),8.20(dd,1H,J=1.8Hz,J=9Hz),8.15(s,1H),7.87(d,1H,J=7.8Hz),7.82(d,1H,J=8.4Hz),7.48(d,1H,J=7.8Hz),7.34(d,1H,J=7.8Hz),7.32(s,1H),7.29(d,1H,J=9Hz),7.21(d,1H,J=2.4Hz),7.18(d,1H,J=1.8Hz),7.12(s,1H),5.23(s,2H),3.42(m,2H),3.35(s,2H),4.23(s,2H),3.13(m,2H).
MS(m/z):[M+H]582.1.
【0113】
化合物1をテトラヒドロフランに溶解し、p−トルエンスルホン酸のエタノール溶液にゆっくりと滴下し、2時間還流し反応させ、黄緑色沈殿物を析出させた。ろ過し乾燥させて化合物1のp−トシレ−トを得た。
【0114】
[実施例2]
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン(化合物2)の合成
【0115】
a. Boc保護2−メルカプトエチルアミンの合成
【化15】

【0116】
反応フラスコ中に、35.3gのジ炭酸ジtertブチル、20.4gの2−メルカプトエチルアミン塩酸塩及び200mlのジクロロメタンを加え、氷浴条件下バッチ式で25mlのトリエチルアミンを加え、室温で一晩撹拌し反応させ、過剰量の0.5M塩酸溶液を加えて洗浄し、有機層を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して8gの油状液体を収率87%で得た。
【0117】
b. Boc保護2−メチルチオエチルアミンの合成
【0118】
【化16】

【0119】
氷浴及び窒素保護条件下、4.8gのNaHを、無水テトラヒドロフラン(250ml)中28gのBoc保護2−メルカプトエチルアミンの溶液にバッチ式で加え、温度を室温まで上げ1時間反応させ、氷浴条件下テトラヒドロフラン中12mlのヨードメタンを滴下し、滴下後、室温で約1時間反応させ、飽和炭酸ナトリウム溶液を加えて反応をクエインチし、該反応液を水に注ぎ、酢酸エチルで抽出し、該有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去して油状液体を得た。カラムクロマトグラフィーに処して14.2gの目的生成物を収率47%で得た。
【0120】
c. Boc保護2−メチルスルフィニルエチルアミンの合成
【0121】
【化17】

【0122】
氷浴条件下、14.0gのBoc保護2−メチルチオエチルアミンをメタノールに溶解し、過ヨウ素酸ナトリウム水溶液を滴下し、加えた後、室温で一晩撹拌し反応させ、ろ過し、ろ過ケーキをジクロロメタンで洗浄した。減圧蒸留してろ液中の有機試薬を除去し、飽和塩化ナトリウム溶液を加え、酢酸エチルで抽出し、無水硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過し、減圧蒸留して溶媒を除去して13.2gの油状生成物を収率87%で得た。
【0123】
d. Boc保護2−メチルスルフィニルエチルアミン塩酸塩の合成
【0124】
【化18】

【0125】
12gのBoc保護2−メチルスルフィニルエチルアミンを無水ジエチルエーテルに溶解し、塩化水素ガスを供給し、TLCによる原料検出で反応が終了したら、減圧蒸留して溶媒を除去して6.8gの油状生成物を収率82%で得た。
【0126】
e. N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミンの合成
【0127】
【化19】

【0128】
12gの化合物5−(4−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロアニリノ)−6−キナゾリニル)フラン−2−ホルムアルデヒドp−トシレートを、ジクロロメタン/メタノール(3:1)混合溶液に溶解し、12mlのトリエチルアミンを加え、10分撹拌して反応させ、6.0gの2−メチルスルフィニルエチルアミン塩酸塩を加え、室温で撹拌して反応させ、TLCによる原料検出で反応が終了したら、氷浴下2.0gの水素化ホウ素ナトリウムをバッチ式に加え、TLCによる検出で反応が終了したら、適量のジクロロメタンを加え、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーに処して7.3gの黄色固体を収率69%で得た。
【0129】
H−NM(600MHz,DMSO−d,δppm):9.92(s,1H),9.044(s,1H),8.92(s,1H),8.41(t,1H,J=6.6Hz),7.93(d,1H,J=7.8Hz),7.64(dd,1H,J=2.4Hz,J=9Hz),7.50(d,1H,J=7.8Hz),7.48(d,1H,J=9.6Hz),7.36(d,1H,J=9Hz),7.25(d,1H,J=3.0Hz),7.22(dd,1H,J=2.4Hz,J=9Hz),7.11(d,1H,J=7.2Hz),7.25(d,1H,J=3.0Hz),5.32(s,2H),4.47(s,2H),3.51(t,2H,J=7.2Hz),2.67(t,2H,J=7.2Hz),2.29(s,3H).
MS(m/z):[M+H]565.5.
【0130】
[実施例3]
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン(化合物3)の合成
【化20】

【0131】
10.0gの化合物5−(4−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロアニリノ)−6−キナゾリニル)フラン−2−ホルムアルデヒドを、ジクロロメタン/メタノール(3:1)混合溶液に溶解し、4.3gのトリエチルアミンを加え、10分撹拌して反応させ、6.9gの2−メチルチオエチルアミン塩酸塩を加え、室温で撹拌して反応させ、TLCによる原料検出で反応が終了したら、氷浴下、2.4gの水素化ホウ素ナトリウムをバッチ式で加え、TLCによる検出で反応が終了したら、適量のジクロロメタンを加え、飽和塩化アンモニウム溶液で洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーに処して6.5gの黄色固体を収率56%で得た。
【0132】
H−NM(600MHz,DMSO−d,δppm):9.93(s,1H),8.73(s,1H),8.55(s,1H),8.16(d,1H,J=2.4Hz),8.01(d,1H,J=2.4Hz),7.80(d,1H,J=7.4Hz),7.74(dd,1H,J=2.4Hz,J=9Hz),7.45(m,1H),7.34(d,1H,J=7.8Hz),7.32(s,1H),7.29(d,1H,J=8.4Hz),7.19(t,1H,J=8.4Hz),7.05(d,1H,J=3.0Hz),6.48(d,1H,J=3.0Hz),5.25(s,2H),3.83(s,2H),2.77(t,2H,J=7.2Hz),2.59(t,2H,J=7.2Hz),2.04(s,3H).
MS(m/z):[M+H]549.5.
【0133】
[実施例4]
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン(化合物4)の合成
【0134】
a. tert−ブチル2−アミノエチルアミノフォーメ−トの合成
【化21】

【0135】
500ml反応フラスコ中に、30mlのエチレンジアミンを加え、氷浴条件下、18.0gのジ炭酸ジtert−ブチルのジクロロメタン溶液(200ml)を滴下し、自然に室温にして一晩反応させ、100mlのジクロロメタンを加え、飽和炭酸ナトリウム溶液でそして次に飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧蒸留して溶媒を除去して10.9gの淡黄色油状液体を収率82.6%で得た。
【0136】
b. tert−ブチル2−メチルスルホンアミドエチルアミノフォーメ−トの合成
【0137】
【化22】

【0138】
1000ml反応フラスコ中に、36.9gのtert−ブチル2−アミノエチルアミノフォーメ−ト及び200mlのジクロロメタンを加え、電磁式撹拌し、氷浴で冷却し、96mlのトリエチルアミンを加え、35.9gのメチルスルホニルクロライドのジクロロメタン溶液200mlをゆっくりと滴下し、自然に室温にして一晩反応させ、氷水を滴下して反応をクエンチし、有機相を分離し、水相をジクロロメタンで抽出し。有機相を合わせ、5mol/Lの希塩酸、飽和炭酸水素ナトリウム及び飽和塩化ナトリウム溶液で順次洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、ろ過し、減圧蒸留して溶媒を除去し28.6gの黄褐色固体を収率52.1%で得た。
【0139】
c. N−(2−アミノエチル)メチルスルホンアミド塩酸塩の合成
【0140】
【化23】

【0141】
500ml反応フラスコ中に、tert−ブチル2−メチルスルホンアミドエチルアミノフォーメ−ト(25g)並びにエタノール及びメタノールの混合液350mlを加え、電該式撹拌し、乾燥塩化水素ガスを3時間供給し、室温で一晩撹拌し、減圧濃縮して小容量にし、吸引ろ過し、14.6gの灰褐色粉末状固体を収率79.3%で得た。
【0142】
d. N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミンの合成
【0143】
【化24】

【0144】
室温で、10.0gの化合物5−(4−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロアニリノ)−6−キナゾリニル)フラン−2−ホルムアルデヒド、6.5gの化合物N−(2−アミノエチル)メタンスルホンアミド塩酸塩、及び14.6gのトリエチルアミンをジクロロメタン/メタノール(3:1)の混合溶液中で一晩撹拌し、次に氷浴で0℃に冷却し、その温度下、1.4gの水素化ホウ素ナトリウムを加え、室温に上げて一晩撹拌し続け、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーに処して5.7gの目的生成物を収率45.0%で得た。
【0145】
H−NMR(300MHz,CDCl,δppm):8.65(s,1H),8.62(s,1H),8.28(s,1H),7.84〜7.73(m,3H),7.53(d,1H,J=8.7Hz),7.33−7.28(m,1H),7.19〜7.15(m,2H),6.98(t,1H,J=8.4Hz),6.86(d,1H J=4.5Hz),6.57(d,1H,J=1.8Hz),6.20(d,1H,J=1.8Hz),5.04(s,2H),3.73(s,2H),3.18(t,2H,J=8.4Hz),2.87(s,3H),2.78(t,2H,J=8.4);
13C−NMR(75MHz,CDCl,δppm):164.4,161.2,157.8,154.4,153.7,152.2,150.7,148.9,139.0,138.9,132.4,130.1,130.0,124.9,128.6,128.5,124.9,122.7,122.4,122.3,115.3,115.1,114.8,114.5,113.9,113.6,109.7,107.1,70.1,47.4,45.2,42.2,40.0;
HR−MS(m/z):計算値:C2927ClFN [M+H]596.1529,測定値:596.1533.
【0146】
[実施例5]
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン(化合物5)の合成
【0147】
a. 2,2,2−トリフルオロエチル−(4−メチルフェニル)スルホネートの合成
【化25】

【0148】
2.1mlの2,2,2−トリフルオロエタノール及び4.4mlのトリエチルアミンを100mlのジクロロメタンに加え、氷浴下5.0gのp−トルエンスルホニルクロライドをバッチ式で加え、添加後に室温に上げて一晩撹拌した。反応液を水先し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、5.9gの淡黄色油状液体を収率98.7%で得た。
【0149】
b. tert−ブチル2−メルカプトエチルアミノフォーメートの合成
【0150】
【化26】

【0151】
3.5gのジ炭酸ジtertブチル及び2.0gの2−メルカプトエチルアミン塩酸塩を200mlのジクロロメタンに加え、氷浴条件下2.5mlのトリエチルアミンを滴下し、次に室温に上げて一晩撹拌して反応した。反応液を0.5M塩酸水溶液で洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、2.7gの油状液体を収率87.1%で得た。
【0152】
c. tert−ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエチルチオ)エチルアミノフォーメートの合成
【0153】
【化27】

【0154】
1.7gの水素化ナトリウムを30mlの乾燥ジメチルホルムアミドに加え、次に氷浴下7.5gのtert−ブチル2−メルカプトエチルアミノフォーメートをバッチ式で加え、添加後1時間撹拌し、次に2,2,2−トリフルオロエチル−(4−メチルフェニル)スルホネートをゆっくりと加え、添加後室温に上げて一晩撹拌した。該反応液を水に注ぎ、ジエチルエーテルで抽出し、0.5M水酸化ナトリウム水溶液で洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、カラムクロマトグラフィーに処して5.4gの淡黄色油状液体を収率53.8%で得た。
【0155】
d. tert−ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノフォーメートの合成
【0156】
【化28】

【0157】
3.9gのtert−ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエチルチオ)エチルアミノフォーメートを50mlのジクロロメタンに溶解し、氷浴下12.2gのm−クロロペルオキシ安息香酸をバッチ式で加え、添加後室温に上げて5時間撹拌して反応させた。飽和亜硫酸水素ナトリウム水溶液で反応をクエンチし、ジクロロメタンで抽出し、有機層を合わせ、飽和炭酸ナトリウム水溶液で洗浄し、飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、溶媒を留去し、3.9gの白色個体を収率89.4%で得た。
【0158】
e. 2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアンモニウムクロライドの合成
【0159】
【化29】

【0160】
3.9gのtert−ブチル2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノフォーメートを60mlの無水ジエチルエーテルに加え、塩化水素ガスの下室温で一晩撹拌して反応させた。吸引ろ過し、ジエチルエーテルで洗浄し、2.7gの白色固体を収率87.7%で得た。
【0161】
f. N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミンの合成
【0162】
【化30】

【0163】
室温で、10.0gの化合物5−(4−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロアニリノ)−6−キナゾリニル)フラン−2−ホルムアルデヒドp−トシレート、7.1gの化合物2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミン塩酸塩、11mlのトリエチルアミン及び20gの無水硫酸ナトリウムを、ジクロロメタン/メタノール(3:1)混合溶液中において、一晩撹拌し、次に氷浴で0℃に冷却し、その温度下1.8gの水素化ホウ素ナトリウムを加え、自然に室温に上げ、一晩撹拌し続け、炭酸水素ナトリウム溶液を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーに処して5.4gの目的生成物を収率53.5%で得た。
【0164】
H−NMR(400MHz,acetone−d,δppm):9.33(s,1H),8.77−8.75(m,2H),8.30−8.28(m,1H),8.24(s,1H),7.97(d,J=4.4Hz,1H),7.90(d,J=4.4Hz,1H),7.61(q,J=7.6Hz,1H),7.53−7.35(m,3H),7.24(d,J=0.8Hz,1H),7.28−7.24(m,1H),7.08(s,1H),6.60(s,1H),5.42(s,2H),4.73(q,J=10Hz,2H). 3.60(t,J=6.0Hz,2H),3.40(t,J=6.0Hz,2H);
13C−NMR(100MHz,acetone−d,δppm):171.0,165.3,162.9,158.9,155.9,155.5,153.4,151.6,150.7,141.2,141.2,134.7,131.6,131.5,130.1,129.7,126.4,125.0,124.9,123.3,122.2,116.9,115.8,115.0,110.7,108.6,71.0,57.5,57.2,56.9,56.6,46.6,43.5,33.8;
HR−MS(m/z):計算値:C3025ClFS [M+H]649.1294,測定値:649.1288.
【0165】
[実施例6]
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン(化合物6)の合成
【化31】

【0166】
室温で、240mgの化合物5−(4−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロアニリノ)−6−キナゾリニル)フラン−2−ホルムアルデヒド、120mgの化合物2−トリフルオロメチルスルホニルエチルアミン塩酸塩、0.2mlのトリエチルアミンを10mlのジクロロメタン中で混合後、0.2mlの氷酢酸を加え、4時間撹拌語、氷浴で0℃に冷却し、その温度下500mgのトリアセトキシ水素化ホウ素ナトリウムを加え、次に室温に上げて12時間撹拌し続け、飽和炭酸水素ナトリウム溶液を加えて反応をクエンチし、酢酸エチルで抽出し、有機相を飽和塩化ナトリウム溶液で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥し、カラムクロマトグラフィーに処して35.7mgの黄色固体を収率11.1%で得た。
【0167】
H−NMR(400MHz,CDCl,δppm):8.70(s,1H),8.27(s,1H),7.98−7.96(m,1H),7.90−7.88(m,2H0,7.84(d,J=1.2Hz,1H),7.54(dd,J=2.4Hz,J=8.8Hz,1H),7.39−7.34(m,1H),7.24−7.22(m,1H),7.04−6.97(m,2H),6.76(d,J=1.2Hz,1H),6.45(d,J=1.6Hz,1H),5.17(s,2H),3.92(s,2H),3.55−3.49(m,2H),3.37−3.34(m,2H);
13C−NMR(100MHz,CDCl,δppm):164.20,161.75,157.80,154.97,153.55,151.06,149.77,49.57,139.14,139.07,132.14,130.17,130.09,129.25,128.80,128.18,125.18,124.06,23.40,123.34,122.45,122.43,122.29,120.81, 117.56,115.34,115.01,114.95,114.74,114.18,114.08,113.86,112.46,07.11,70.37,47.87,46.12,45.74;
HR−MS(m/z):計算値:C2923ClFS [M+H]635.1137,測定値:635.1142.
【0168】
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン(化合物61)は、2−トリフルオロメチルスルホニルエチルアミン塩酸塩を2−メチルスルホニルエチルアミン塩酸塩で置換すること以外は、化合物6の製造方法の手順と同様な手順を使用することにより容易に得ることが出来た。
【0169】
[実施例7]
その他の化合物の製造
以下の表に化合物7〜14として示した式Iの化合物は、上に示した対応する実施例の手順と同様な手順により得ることが出来た。
【0170】
【化32】

【0171】
【表0】

【0172】
〔生物学的試験〕
以下の試験は、生体外での、EGFRチロシンキナーゼに対する本発明の化合物の阻害活性、及びNCI−N87細胞及びBT474細胞の阻害剤としての本発明化合物の効果を測定するのに使用することが出来た。
【0173】
A) プロテインチロシンキナーゼのリン酸化の測定
生体外でのキナーゼ分析は、Cell Signaling Technology CompanyからのHTScan EGF受容体キナーゼ検定キット(#7909)及びHTScan HER2/ErbB2キナーゼ検定キット(#7058)を使用することにより実行した。操作工程は使用したキットの仕様を表し、該方法をEGFR又はHer2受容体型チロシンキナーゼの基質ペプチドリン酸化に対する被験化合物の阻害効果を測定するのに使用した。室温で、ATP及び基質ペプチド及び被験化合物をキナーゼ反応緩衝液中で培養し、培養の期間後、停止緩衝液を加えて該反応を終了させて該試料をストレプトアビジン被覆96ウェルプレートに移動し、該プレートを洗浄して基質ペプチドのリン酸化度を、TMBで着色し、2M硫酸で該反応を停止し、基質リン酸化に対するHRP印抗体を使用することにより検出した。450nm波長における吸収を検出し、IC50値(μM)を計算した。その結果を表1に記載する。
【0174】
B) 細胞増殖の抑制
試験は、Rusnakら、Cell Prolif,2007,40,580−594に記載された方法を参照することにより実行した。細胞増殖抑制の試験は、Her2受容体を過度に発現しているヒト乳癌細胞BT474、及びEGFR及びHer2受容体を過度に発現しているヒト胃癌細胞株NCI−N87を使用した。
【0175】
10%のウシ胎仔血清、2mMのグルタミン及び非必須アミノ酸を含むダルベッコ改変イーグル培地(DMEM)中で、5%CO細胞培養器において37℃で細胞を培養し、細胞培養ビン中に細胞を有するようにトリプシン/エチレンジアミン4酢酸(EDTA)を使用した。該細胞を96ウェル細胞培養プレートに4000/ウェル(0.1ml培地)で加え、壁に一晩付着させ、0.1mlの被験化合物の希釈溶液を加え、DMSOの最終濃度を0.25%とし、該細胞培養プレートを37℃及び5%CO条件で72時間培養した。細胞形状の変化を顕微鏡で観察し、次に50μlの50%(質量/容量)トリクロロ酢酸(TCA)をウェル毎に加えて細胞を固定した。TCAの最終濃度を10%とし、5分間そのままにして及び4℃の冷蔵庫中に1時間置き、培養プレートのウェルを脱イオン水で5回洗浄してTCAを除去し、水抜きをし、湿った痕跡が観察されなくなるまで空気中で乾燥した。100μlの0.4%(質量/容量)SRBを各ウェルに加え、10分間室温でそのままにし、各ウェル中の液体を捨て、次にそれらのウェルを1%酢酸で5回洗浄し、空気中で乾燥し、150μlの10mMトリス塩基(トリヒドロキシメチルアミノメタン、pH10.5)で抽出し、540nm波長における吸収を検出した。IC50値(μM)の結果を表1に記載する。
【0176】
【表1】

【0177】
化合物の生物活性を評価するための一重要試験としての「細胞増殖抑制の試験」において、本発明の化合物はより良い生物活性を有することが理解できる。
【0178】
なお、同じ試験において、化合物61は化合物6に近い生物活性結果を有し、化合物7〜14も又化合物2又は3に近い生物活性結果を有する。結果は、本発明の式Iの化合物がチロシンキナーゼに対して有効な阻害剤であることを示している。
【0179】
C) 生体内生物活性の評価
雌、4〜6週間、体重22±2gのBALB/cAヌードマウスをShanghai SLAC Laboratory Animal Co. Ltdから購入し、SPF等級の環境で飼育した。
【0180】
1)ヌードマウスにおけるヒト胃癌NCI−N87が移植された腫瘍に対する本化合物の単一投与量における治療効果
生体外で培養されたNCI−N87細胞をヌードマウスの右わきのしたの皮下に各々約5x10個接種し、腫瘍形成後生体内で2回継代培養した。滅菌状態下、発育良好の腫瘍組織を約1.5mmの腫瘍片に切断し、ヌードマウスの右わきのしたに接種した。腫瘍直径をノギスにより測定し、腫瘍が100〜200mmに成長してから動物を不規則に分けた(d)。化合物2,3及び5及び正の対照(化合物61)を200mg/kgの投与量で、1日当り1回、28日間連続して胃内に投与し、対照群には同等量の溶剤を付与した。投与期間中、マウスの体重及び腫瘍の直径を1週間当り3回測定した。該腫瘍体積及び相対的腫瘍体積は該測定データにより計算したが、腫瘍体積(TV)を計算するための式は、TV=1/2×a×b(式中a,bは腫瘍の外径及び内径を表す)であり、相対的腫瘍体積(RTV)を計算するための式は、RTV=V/V(式中、Vは投与用のグループを分ける際に測定した腫瘍体積(即ち、d)であり、Vは毎回測定した腫瘍体積である)である。抗腫瘍活性に対する評価指数は相対的腫瘍成長割合T/C(%)であり、その計算式はT/C(%)=(TRTV/CRTV)×100%(式中、TRTVは治療グループのRTVであり、CRTVは負の対照のRTVである)である。相対的腫瘍抑制割合を計算するための式は1−T/C(%)である。該相対的腫瘍抑制割合は60%以上であり、統計的治療はPが0.05以下であることを示している、即ち、該薬は有効である。試験の結果を以下の表に示す。
【0181】
【表2】

【0182】
生体内活性スクリーニング試験の結果に示されているように、ヒト胃癌NCI−N87がヌードマウスに移植された腫瘍モデルに関して、化合物2の腫瘍抑制割合(94.8%)は化合物61のそれ(89.8%)より極めて高く、第2は化合物3であるが、それは化合物61の活性よりも低い活性(腫瘍抑制割合:84.6%)を有している。化合物2に対するグループの6匹の動物はすべて腫瘍回帰を示し、正の対照グループ(化合物61)の5匹のマウスが腫瘍回帰を示し、化合物3に対するグループの4匹の動物が腫瘍回帰を示した。
【0183】
2)ヌードマウスにおけるヒト卵巣癌SK−OV−3が移植された腫瘍に対する本化合物の単一投与量における治療効果
ヒト卵巣癌SK−OV−3細胞をヌードマウスに皮下接種し、腫瘍が60〜150mmに成長してから、該動物を不規則に数グループに分けた(d)。化合物2,3及び5及び正の対照(化合物61)に対するグループに、200mg/kgの投与量で、1日当り1回、21日間連続して胃内投与し、該対照群には同等量の溶剤を付与した。投与期間中、マウスの体重及び腫瘍の直径を1週間当り3回測定した。該腫瘍体積、相対的腫瘍抑制割合等は上述の方法により計算した。試験の結果を表3に示す。
【0184】
【表3】

【0185】
ヒト卵巣癌SK−OV−3がヌードマウスに移植された腫瘍モデルに関する腫瘍抑制活性試験結果が示しているように、化合物2の腫瘍抑制割合は化合物61のそれより極めて高く(86%対79%)、第2は化合物3であるが、それは化合物61の活性よりもわずかに低い活性(腫瘍抑制割合:75%)を有している。化合物2に対するグループの中で2匹の動物が腫瘍回帰を示し、一方対照グループ(化合物61)の中で1匹の動物が腫瘍回帰を示した。
【0186】
3)ヌードマウスにおけるヒト卵巣癌SK−OV−3が移植された腫瘍に対する本化合物の異なる投与量における治療効果
ヒト卵巣癌SK−OV−3細胞をヌードマウスに皮下接種し、腫瘍が60〜150mmに成長してから、動物を不規則に数グループに分けた(d)。三つのグループを50mg、100mg及び200mg投与量の化合物用に整え、負の対照グループは200mg/kgの溶剤を付与され、正の対照グループ(化合物61)は200mg/kgの投与量を有し、1日当り1回21日間連続して胃内に投与された。腫瘍体積、及びマウスの体重を1週間当り3回測定し、すべてのデータを記録した。腫瘍体積、相対的腫瘍抑制割合等は上述の方法により計算した。試験の結果を以下の表に示す。
【0187】
【表4】

【0188】
ヒト卵巣癌SK−OV−3がヌードマウスに移植された腫瘍に対する化合物の異なる投与量における腫瘍抑制試験結果が示しているように、化合物2及び化合物3は両方ともヒト卵巣癌SK−OV−3がヌードマウスに移植された腫瘍の増殖を異なる程度で抑制することが出来、該抑制効果は投与量依存性を示している。化合物2は、最善の活性を付与しており、正の対照薬(化合物61)の腫瘍抑制割合よりも同等の投与量で極めて高い腫瘍抑制割合を示しており、100mg/kgの投与量で腫瘍に対する有効な抑制(腫瘍抑制割合:64%)を達成することが出来た。
【0189】
上記の結果は、本発明の化合物がチロシンキナーゼ駆動の腫瘍に対して良好な腫瘍抑制効果を有していることを示している。
【0190】
D) 化合物2の薬物動態学の評価
雄、体重200〜220gの8匹の健康なSDラットを2個のグループに不規則に分け(各グループ4匹)、化合物2及び化合物61をそれぞれ両方とも100mg/kgの投与量で単一回胃内部に投与したが、薬投与体積は10ml/kgであり、すべての薬は10%のTween−80及び90%の脱イオン水と配合した。試験前12時間動物に絶食させ、飲料水は自由にした。そして投与の2時間後に食物を与えた。投与後0.25、0.5、1.0、2.0、3.0、5.0、7.0、9.0、12及び24時間で、0.3mlの血液試料をラット眼球の後ろの静脈叢からヘパリン化試験管中に取り出し、次に5分間11000rpmで遠心分離機にかけ、血漿を分離して20℃で保存した。最初の形態及び血漿中のその代謝体における薬の濃度を液体クロマトグラフィー質量分析により測定した。その結果を表5に示す。
【0191】
【表5】

【0192】
化合物2は、明白により良い吸収性及びバイオアベイラビリティを有しており、同じ投与量レベルで濃度−時間曲線において正の対照の2倍だけ最大の血漿濃度又は面積を付与している。代表例のAUC0−tで表現されているように、化合物2は化合物6対照グループと比較して187%の相対的バイオアベイラビリティを有している。
【0193】
E) hERGカリウム電流に対する化合物2の影響
リポソームトランスフェクション法によりhERG cDNAを含有する核外遺伝子の核酸をHEK(ヒト胚腎)293細胞に取り込み、生体外で表現されたhERGカリウム電流(Ikr)に対する異なる濃度の化合物2の阻害影響を全細胞パッチクランプ記録方式の使用により観察し、Ikr効果に対する該薬の相違に関する分析及び比較を、化合物61を正の対照として使用することにより行った。
【0194】
化合物2に関しては、Ikrパルス電流に対するその半実効的阻害投与量IC50は10.06±0.96μMであり、テール電流に対するその半実効的阻害投与量IC50は約9.24±0.33μMであった。化合物61に関しては、Ikrパルス電流に対するその半実効的阻害投与量レベルIC50は1.09±0.045μMであり、テール電流に対するその半実効的阻害投与量レベルIC50は約0.98±0.40μMであった。
【0195】
生体外で表現されたhERGカリウムイオンチャネルに関しては、化合物2のそれに対する阻害強さは化合物61の阻害強さよりも低かった。上記の結果は、化合物2の方がより良い安全性を有していることを示している。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
式I:
【化1】


{式中、RはC1−6アルキルスルフィニル、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルフィニル、C1−6アルキルチオ、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルチオ、C1−6アルキルアミド、C1−6アルキルスルホンアミド、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルホンアミド、1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルホニル、又は式:
【化2】


(式中、R及びRは各々独立に水素、C1−6アルキル、及び1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルから成る群より選択される)の基から選択される}
の化合物、又はその医薬上許容できる塩若しくは溶媒和物。
【請求項2】
RがC1−6アルキルスルフィニル、又は1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルフィニルから選択される、請求項1による式Iの化合物。
【請求項3】
RがC1−6アルキルチオ、又は1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルチオから選択される、請求項1による式Iの化合物。
【請求項4】
RがC1−6アルキルアミド、C1−6アルキルスルホンアミド、又は1個以上のハロゲンで置換されたC1−6アルキルスルホンアミドから選択される、請求項1による式Iの化合物。
【請求項5】
RがC1−4アルキルスルフィニル、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルフィニル、C1−4アルキルチオ、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−6アルキルチオ、C1−4アルキルアミド、C1−4アルキルスルホンアミド、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルホンアミド、1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルスルホニル、又は式:
【化3】


(式中、R及びRは各々独立に水素、C1−4アルキル、及び1〜3個のハロゲンで置換されたC1−4アルキルから成る群より選択される)の基から選択される、請求項1による式Iの化合物。
【請求項6】
請求項1〜5のいずれか一項による式Iの化合物であって、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(スルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(メタンスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルスルホニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(トリフルオロメチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルチオ)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルフィニル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(アセトアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(N−メチルスルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(N−エチルスルファモイル)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、及び
N−(4−(3−フルオロベンジルオキシ)−3−クロロフェニル)−6−(5−((2−(2,2,2−トリフルオロエチルスルホンアミド)エチルアミノ)メチル)−2−フリル)−キナゾリン−4−アミン、
から成る群より選択される前記の化合物、又はその医薬上許容できる塩若しくは溶媒和物。
【請求項7】
請求項1〜6のいずれか一項による式Iの化合物を製造する方法であって、以下の工程:
a)適切な塩基の存在下有機溶媒などの適切な溶媒中で、式II:
【化4】


の化合物、又はその塩若しくは反応性誘導体を、式III:
【化5】


の化合物、又はその適切な塩と反応させる工程、及び、
b)その反応混合物を適切な還元剤で処理する工程であって、それにより式I(式中、Rは請求項1で定義された通りの意味を有する)の化合物を生ずる工程、
を含む、方法。
【請求項8】
請求項1〜6のいずれか一項による式Iの化合物及び所望により1種以上の医薬上許容できる担体又は賦形剤を含む、薬剤組成物。
【請求項9】
(人間を含む)哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼに関連する病気又は疾患の治療及び(又は)予防のための薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか一項による式Iの化合物の使用。
【請求項10】
(人間を含む)哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍又は受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移の治療又は補助治療及び(又は)予防のための薬剤の製造における、請求項1〜6のいずれか一項による式Iの化合物の使用であって、
さらに、受容体型チロシンキナーゼに関連する前記病気若しくは疾患、受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍、又は受容体型チロシンキナーゼ主導の腫瘍細胞の増殖及び転移、は、erbB受容体型チロシンキナーゼ感受性の癌であり、例えばEGFR又はHer2が過剰に発現されている腫瘍及びEGF駆動の腫瘍であり、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結腸直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮、外陰部、等の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫、等などの非固形腫瘍を含む、
使用。
【請求項11】
治療及び(又は)予防を必要とする哺乳動物に、請求項1〜6のいずれか一項による式Iの化合物を治療的に有効な量投与することを含む、それを必要とする哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼに関連する病気又は疾患の治療及び(又は)予防のための方法。
【請求項12】
治療又は補助治療及び(又は)予防を必要とする(人間を含む)哺乳動物に、請求項1〜6のいずれか一項による式Iの化合物を治療的に有効な量投与することを含む、それを必要とする該哺乳動物における受容体型チロシンキナーゼ媒介の腫瘍又は受容体型チロシンキナーゼ駆動の腫瘍細胞の増殖及び転移の治療又は補助治療及び(又は)予防のための方法。
【請求項13】
治療及び(又は)予防を必要とする(人間を含む)哺乳動物に、請求項1〜6のいずれか一項による式Iの化合物を治療的に有効な量投与することを含む、それを必要とする該哺乳動物における腫瘍又は癌の治療及び(又は)予防のための方法であって、
前記腫瘍又は癌はerbB受容体型チロシンキナーゼ感受性の癌を含み、例えばEGFR又はHer2が過剰に発現されている腫瘍及びEGF駆動の腫瘍であり、胆管、骨、膀胱、脳/中枢神経系、乳房、結腸直腸、子宮内膜、胃、頭部及び頚部、肝臓、肺(特に非小細胞肺癌)、神経細胞、食道、卵巣、膵臓、前立腺、腎臓、皮膚、睾丸、甲状線、子宮、外陰部、等の癌などの固形腫瘍、及び白血病、多発性骨髄腫、又はリンパ腫、等などの非固形腫瘍を含む、
方法。

【公表番号】特表2013−505899(P2013−505899A)
【公表日】平成25年2月21日(2013.2.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2012−530099(P2012−530099)
【出願日】平成22年9月20日(2010.9.20)
【国際出願番号】PCT/CN2010/001449
【国際公開番号】WO2011/035540
【国際公開日】平成23年3月31日(2011.3.31)
【出願人】(512078616)チールー ファーマシューティカル カンパニー、リミテッド (1)
【Fターム(参考)】