説明

ツインクラッチ付き変速機構

【課題】異なる変速比の第1変速機と第2変速機と、入力歯車と第1変速機との間を断接する第1クラッチと、入力歯車と第2変速機との間を断接する第2クラッチと、第1クラッチを操作する第1駆動ピストンと、第2クラッチを操作する第2駆動ピストンと、モータによって駆動され第1又は第2駆動ピストンの何れかを押圧駆動するカム体と、第1クラッチを断接させる第1受動ピストンと、第2クラッチを断接させる第2受動ピストンとを備え、第1クラッチが外側に、第2クラッチが内側に配置されるツインクラッチ付き変速機構において、コンパクトな構造でクラッチを断接出来る構造を提供する。
【解決手段】第1受動ピストンの押圧力を第1クラッチに伝達する押圧部材を設け、押圧部材は、第1受動ピストンからの押圧入力を受ける1つの入力部と、同入力部が受けた押圧力を第1クラッチのリフタに伝達する複数の出力部とを備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半径方向内外に2つのクラッチを備えるツインクラッチ付き変速機構に関するものである。
【背景技術】
【0002】
同軸上に半径方向内外に2つのクラッチを備えるツインクラッチ付き変速機構において、油圧ポンプ等を含む複雑な油圧系統を不要とすることを目的として、第1クラッチを操作する第1ピストンと、第2クラッチを操作する第2ピストンと、モータにより傾動駆動され、一方に傾動したときに上記第1ピストンを押圧駆動し、他方に傾動したときに上記第2ピストンを押圧駆動するカム体を備えたクラッチ断接構造が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。
【0003】
このクラッチ断接構造では、半径方向内側に配置される第2クラッチの断接は、1本のプッシュロッドと1個のスレーブシリンダでロッドサポート部の中心点1点を押圧することにより行っているが、半径方向外周に配置される第1クラッチについては、3本のプッシュロッドと3個のスレーブシリンダでロッドサポート部の3点を押圧することにより断接を行っているため、第1クラッチの断接に関連する部品点数とコストが増加し、またそれに伴って構造が大型化していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【特許文献1】特開2007−24079号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は、上記の事情を考えてなされたものであり、同軸上の半径方向内外に2つのクラッチを備えるツインクラッチ付き変速機構において、部品点数及びコストを削減しながら、コンパクトな構造でツインクラッチを断接出来る構造を提供することを目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は上記課題を解決したものであって、請求項1に記載の発明は、
異なる変速比を有する第1変速機2A及び第2変速機2Bとを備えると共に、
第1マスタシリンダ19Aの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第1変速機2Aとの間を断接する第1クラッチ3Aと、
第2マスタシリンダ19Bの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第2変速機2Bとの間を断接する第2クラッチ3Bと、
上記第1マスタシリンダ19Aの作動液を押し出して上記第1クラッチ3Aを操作する第1駆動ピストン22Aと、
上記第2マスタシリンダ19Bの作動液を押し出して上記第2クラッチ3Bを操作する第2駆動ピストン22Bと、
モータ21によって傾動駆動され、一方に傾動したときに上記第1駆動ピストン22Aを押圧駆動し、他方に傾動したときに上記第2駆動ピストン22Bを押圧駆動するカム体63と、
上記第1マスタシリンダ19Aと上記第1クラッチ3Aとの間に配置され、上記第1マスタシリンダ19Aの液圧によって、第1スレーブシリンダ17A内で摺動することにより第1クラッチ3Aを断接させる第1受動ピストン18Aと、
上記第2マスタシリンダ19Bと上記第2クラッチ3Bとの間に配置され、上記第2マスタシリンダ19Bの液圧によって、第2スレーブシリンダ17B内で摺動することにより第2クラッチ3Bを断接させる第2受動ピストン18Bとを備え、
上記第1クラッチ3Aが半径方向外側に配置され、上記第2クラッチ3Bが半径方向内側に配置されるツインクラッチ機構3において、
上記第1受動ピストン18Aの押圧力を上記第1クラッチ3Aに伝達する押圧部材50を設け、
上記押圧部材50は、第1受動ピストン18Aからの押圧入力を受ける1つの入力部51と、
同入力部51が受けた押圧力を上記第1クラッチ3Aに伝達する複数の出力部52とを備えることを特徴とするツインクラッチ付き変速機構1に関するものである。
【0007】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のツインクラッチ付き変速機構1において、
上記第1クラッチ3Aのリフタ48Aは円筒状端部48Adを備え、
上記押圧部材50の出力部52は、第1出力部52Xと第2出力部52Yとからなり、
上記リフタ48Aの軸方向視で上記第1出力部52Xと第2出力部52Yは、上記円筒状端部48Adの端面上において、上記円筒状端部48Adの中心Cに関して点対称となる位置に、それぞれ配置されることを特徴とするものである。
【0008】
請求項3に記載の発明は、請求項1または請求項2に記載のツインクラッチ付き変速機構1において、
上記ツインクラッチ付き変速機構1は、少なくとも上記第1受動ピストン18Aと上記第1スレーブシリンダ17Aを収容するシリンダブロック16を備え、
上記押圧部材50は、第1受動ピストン18Aの軸方向視で基幹部50aと分岐部50bとからなるY字形に形成され、
上記押圧部材50は、上記基幹部50aの端部においてシリンダブロック16に揺動可能に軸支され、
上記分岐部50bは、上記第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49を囲むように延出されると共に、
上記第1出力部52Xおよび上記第2出力部52Yは、第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49の押圧点54と一直線になるよう配置されることを特徴とするものである。
【0009】
請求項4に記載の発明は、請求項1乃至請求項3の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1において、
第1受動ピストン18Aの軸方向視で、上記第1出力部52Xから上記入力部51までの長さと、上記第2出力部52Yから上記入力部51までの長さが等しく、上記各部を結んだ線が二等辺三角形になるように形成されることを特徴とするものである。
【0010】
請求項5に記載の発明は、請求項1乃至請求項4の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1において、
上記入力部51は、上記基幹部50aのうち、軸支部50cよりも分岐部50bに近い側に設けられることを特徴とするものである。
【0011】
請求項6に記載の発明は、請求項1乃至請求項5の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1において、
上記押圧部材50の基幹部50aは、上記シリンダブロック16の外周より内側に軸支されると共に、上記第1スレーブシリンダ17Aの軸線と並行に、シリンダブロック16の内方の軸支部50cの方へ曲げて形成されることを特徴とするものである。
【0012】
請求項7に記載の発明は、請求項1乃至請求項6の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1において、
上記第1スレーブシリンダ17Aの径は上記第2スレーブシリンダ17Bの径より大きいことを特徴とするものである。
【0013】
請求項8に記載の発明は、請求項1乃至請求項7の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1において、
上記第1駆動ピストン22Aが収容される第1マスタシリンダ19Aと、上記第2駆動ピストン22Bが収容される第2マスタシリンダ19Bの、少なくとも何れか一方に油圧を検知する油圧センサ89を設けたことを特徴とするものである。
【発明の効果】
【0014】
請求項1の発明において、
上記構成により、1つの入力部と複数の出力部とを備える上記押圧部材50を設けるだけで、上記第2クラッチ3Bの断接が可能になるので、部品点数およびコストの削減ができると共に、上記ツインクラッチ付き変速機構1の大型化を防ぎ、コンパクトな構造とすることができる。
【0015】
請求項2の発明において、
上記構成により、第1クラッチ3Aのリフタ48Aを、第1出力部52Xと第2出力部52Yで均等に押すことができるので、第1クラッチ3Aの断接を適切に行うことができる。
【0016】
請求項3の発明において、
上記構成によって、第1クラッチ3Aのリフタ48Aを均等に押しながらも、上記第2受動ピストン18Bの先端部を避けつつ上記押圧部材50をコンパクトに配置することができる。
【0017】
請求項4の発明において、
上記入力部51からの伝達力を、各出力部52に均等に伝えることができる。
【0018】
請求項5の発明において、
上記構成によって、入力部51を、分岐部50b側、すなわち出力部52側に設けることにより、基幹部50aの軸支部50c側に設けるよりも少ない力で押圧部材50を押すことができる。
【0019】
請求項6の発明において、
シリンダブロック16の外方に上記押圧部材50の軸支部50cを設けるのと比べて、大型化することなくシリンダブロック16と押圧部材50を設けることができる。
【0020】
請求項7の発明において、
第1スレーブシリンダ17A側には押圧部材50が介在しているので、第2スレーブシリンダ17Bに比してストロークが小さくてすむが、大きい作用力を必要とするので、直径を大きくしてある。これによって、必要油量がほぼ等しくなるので、2本のマスタシリンダ19A、19Bの寸法・容量をほぼ同じくすることができる。
【0021】
請求項8の発明において、
変速機構1において、制御性を向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
【図1】本発明の一実施形態に係るツインクラッチ付き変速機構1の構成図である。
【図2】上記ツインクラッチ付き常時噛み合い式変速機2の縦断面図である。
【図3】ツインクラッチ3とスレーブシリンダ装置4の拡大図である。
【図4】押圧部材50の図であり、図(a)は平面図、図(b)は側面図である。
【図5】クラッチアクチュエータ5の断面正面図である。
【図6】クラッチアクチュエータ5の断面側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0023】
図1は、本発明の一実施形態に係るツインクラッチ付き変速機構1の構成図である。この変速機構は、主として、常時噛み合い式変速機2と、ツインクラッチ3と、スレーブシリンダ装置4と、クラッチアクチュエータ5と、制御部6と、作動油供給装置7とからなっている。
【0024】
常時噛み合い式変速機2は、外軸10Aと内軸10Bとからなるメイン軸10と、これと平行なカウンタ軸11と、さらにこれらと平行な軸線を有するシフトフォーク駆動装置12とを備えている。上記外軸10Aは1、3、5速の奇数段変速歯車を備え、上記内軸10Bは、2、4、6速の偶数段変速歯車を備え、これら歯車に対応する歯車がカウンタ軸11に設けてある。外軸10Aと奇数段変速歯車によって変速する変速機を第1変速機2A、内軸と偶数段変速歯車によって変速する変速機は第2変速機2Bである。
【0025】
ツインクラッチ3は、外側の第1クラッチ3Aと内側の第2クラッチ3Bとから構成されている。第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aは入力歯車15に接続されている。
【0026】
スレーブシリンダ装置4は、シリンダブロック16に第1スレーブシリンダ17Aと第2スレーブシリンダ17Bの2本のスレーブシリンダを備えている。メイン軸10の中心線の延長上にあるのが第2スレーブシリンダ17Bであり、内部に第2受動ピストン18Bが摺動可能に設けてある。これは第2クラッチ3Bを断接するものである。第2スレーブシリンダ17Bの隣に設けてあるのは第1スレーブシリンダ17Aであり、内部に第1受動ピストン18Aが摺動可能に設けてある。これは第1クラッチ3Aを断接するものである。スレーブシリンダ装置4とツインクラッチ3との間に駆動力伝達機構44が設けてある。
【0027】
クラッチアクチュエータ5は、第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bの2本のマスタシリンダと、ウォームギヤ装置20と、ウォームギヤ装置20を駆動する制御モータ21と、ウォームギヤ装置20によって傾動駆動されるカム体63とを備えている。第1マスタシリンダ19Aは内部に摺動可能な第1駆動ピストン22Aを備え、第2マスタシリンダ19Bは内部に摺動可能な第2駆動ピストン22Bを備えている。これらの駆動ピストンは、制御モータ21で駆動されるウォームギヤ装置20とカム体63によって駆動される。第1マスタシリンダ19Aと第1スレーブシリンダ17A、及び第2マスタシリンダ19Bと第2スレーブシリンダ17Bは、それぞれ第1管路23Aおよび第2管路23Bで接続され、駆動ピストンの動きに応じてスレーブシリンダ装置4の受動ピストン18A、18Bの何れかが動くようになっている。制御部6の指令によって、制御モータ21の停止、回転、および回転方向が制御され、ウォームギヤ装置20によって、駆動ピストン19A、19Bの何れかが駆動され、作動油が加圧される。
【0028】
図2は、上記常時噛み合い式変速機2の縦断面図である。図において、メイン軸10の内軸10Bの中央部より右側の細径部に、ニードルベアリング24を介して外軸10Aが被せてあり、相対回転可能である。メイン軸10の左端は、内軸10Bがクランクケース25にボールベアリング26Lを介して支持され、メイン軸10の中央部は、外軸10Aがクランクケース25にボールベアリング26Rを介して支持されている。カウンタ軸の両端は、それぞれクランクケース25にボールベアリング27L、27Rを介して支持されている。
【0029】
メイン軸10にはM1〜M6の6個の歯車が設けてあり、カウンタ軸11には上記歯車M1〜M6に対応して、これらと常時噛み合うC1〜C6の6個の歯車が設けてある。Mはメイン軸付属歯車、Cはカウンタ軸付属歯車、添数字1〜6は1速〜6速の変速比を決める歯車であることを示している。奇数段変速歯車M1、M3、M5、は外軸10Aに、偶数段変速歯車M2、M4、M6、は内軸10Bに設けてある。奇数段変速歯車からなる変速機が第1変速機2A、偶数段変速歯車からなる変速機が第2変速機2Bである。
【0030】
上記歯車符号に付した添字xは、軸と一体形成された固定歯車、添字wは、軸に保持され、軸上の所定の位置で軸に対して相対回転可能の空転歯車、添字sは、軸方向摺動可能の摺動可能歯車を表す。摺動可能歯車(添字s)は、スプラインによって軸に保持され、軸に対して周方向に相対回転しないが軸方向には摺動が可能な歯車である。固定歯車(添字x)が噛み合う相手側の歯車、及び摺動可能歯車(添字s)が噛み合う相手側の歯車は、必ず空転歯車(添字w)である。空転歯車(添字w)は単独では歯車としての機能を果たせず、歯車としての機能を果たすには、隣に設けられている摺動可能歯車(添字s)に係合して軸に固定されることが必要である。摺動可能歯車には、シフトフォーク駆動機構のシフトフォークF(図1)が係合する係合溝Gが設けてあり、これに係合するシフトフォークFによって、摺動可能歯車(添字s)は必要に応じて軸方向に移動する。常時噛み合い式変速機の作用については、公知技術であるので、説明を省略する。
【0031】
図3は、ツインクラッチ3とスレーブシリンダ装置4の拡大図である。図において、メイン軸外軸10Aの右端部に、クランク軸の出力歯車に常時噛み合う入力歯車15がニードルベアリング28を介して回転可能に設けてある。この入力歯車15に第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aが、ゴム製緩衝材29を介して取付けてある。第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aの内側に、第1クラッチ3Aのクラッチインナ14Aが設けてあり、その内周はスプライン30とワッシャ31とナット32によってメイン軸外軸10Aに固定されている。
【0032】
第1クラッチ3Aのクラッチアウタ13Aの内側に、第2クラッチ3Bのクラッチアウタ13Bが一体回転可能に取付けてある。第2クラッチ3Bのクラッチアウタ13Bの内側に、第2クラッチ3Bのクラッチインナ14Bが設けてあり、その内周部はスプライン33とワッシャ34とナット35によってメイン軸内軸10Bに固定されている。
【0033】
第1クラッチ3Aにおいて、クラッチアウタ13Aに複数枚の駆動摩擦板36Aが軸方向に摺動可能に設けてあり、クラッチインナ14Aには上記駆動摩擦板36Aと交互に複数枚の従動摩擦板37Aが軸方向に摺動可能に設けてある。図において、クラッチインナ14Aの右端側外周部は、上記各摩擦板からなる摩擦板群38Aの一方の端部に当接する受圧プレート部39Aとなっている。摩擦板群38Aの他方の端部にはこれらに当接する環状の加圧プレート40Aが設けられ、クラッチインナ14Aに設けられたサークリップ41Aで内端が支持されている皿ばね42Aによって摩擦板群38Aを上記受圧プレート部39Aの方へ押し、第1クラッチ3Aを接続状態にしている。
【0034】
第2クラッチ3Bにおいて、クラッチアウタ13Bに複数枚の駆動摩擦板36Bが軸方向に摺動可能に設けてあり、クラッチインナ14Bには上記駆動摩擦板36Bと交互に複数枚の従動摩擦板37Bが軸方向に摺動可能に設けてある。図において、クラッチインナ14Bの右端側外周部は、上記各摩擦板からなる摩擦板群38Bの一方の端部に当接する受圧プレート部39Bとなっている。摩擦板群38Bの他方の端部にはこれらに当接する環状の加圧プレート40Bが設けられ、クラッチインナ14Bに設けられたサークリップ41Bで内端が支持されている皿ばね42Bによって摩擦板群38Bを上記受圧プレート部39Bの方へ押し、第2クラッチ3Bを接続状態にしている。
【0035】
第1クラッチ3Aには、一端が第1クラッチ3Aの加圧プレート40Aに当接し、第1クラッチ3Aのクラッチインナ14Aと第2クラッチ3Bのクラッチアウタ13Bとを貫通し、他端が第1クラッチ3Aの外方へ突出する複数の第1駆動ロッド43Aが設けてある。後述の駆動力伝達機構44によってこの第1駆動ロッド43Aが押されたとき、第1クラッチ3Aは断となる。
【0036】
第2クラッチ3Bには、一端が第2クラッチ3Bの加圧プレート40Bに当接し、第2クラッチ3Bのクラッチインナ14Bを貫通し、他端が第2クラッチ3Bの外方へ突出する複数の第2駆動ロッド43Bが設けてある。後述の駆動力伝達機構44によってこの第2駆動ロッド43Bが押されたとき、第2クラッチ3Bは断となる。
【0037】
上記クラッチの開放端側に、スレーブシリンダ装置4と駆動力伝達機構44とが設けてある。スレーブシリンダ装置4は、2本のスレーブシリンダと、これらにそれぞれ摺動可能に嵌挿されている受動ピストンを備え、駆動力伝達機構44は、受動ピストンの動きを、それぞれに対応するクラッチに伝達してクラッチを断接する。
【0038】
スレーブシリンダ装置4のシリンダブロック16は、第1スレーブシリンダ17Aと第2スレーブシリンダ17Bの2本のスレーブシリンダを備えている。メイン軸中心線の延長上にあるのが第2スレーブシリンダ17Bであり、内部に第2受動ピストン18BがOリング67を介して摺動可能に設けてある。これは第2クラッチ3Bを断接するものである。第2スレーブシリンダ17Bの隣に設けてあるのは第1スレーブシリンダ17Aであり、内部に第1受動ピストン18AがOリング67を介して摺動可能に設けてある。これは第1クラッチ3Aを断接するものである。
【0039】
上記第1スレーブシリンダ17Aの内径は上記第2スレーブシリンダ17Bの内径より大きい。第1スレーブシリンダ17A側には、後述の第1リフタ48Aを押す押圧部材50が介在しているので、第2スレーブシリンダ17Bに比してストロークが小さくてすむが、大きい作用力を必要とするので、内径を大きくしてある。これによって、必要油量がほぼ等しくなるので、クラッチアクチュエータ5の2本のマスタシリンダ19A、19Bの寸法・容量をほぼ同じくすることができる。
【0040】
上記シリンダブロック16の各スレーブシリンダ17A、17Bの端部には、それぞれ作動油の入力ポート45A、45Bが設けられ、クラッチアクチュエータ5のマスタシリンダ19A、19Bに繋がる管路23A、23Bを接続するスイベル管継手46A、46Bが設けてある。シリンダブロック16にはシリンダブロックカバー47が設けてある。
【0041】
駆動力伝達機構44は、ツインクラッチ3とスレーブシリンダ装置4の間に設けられ、第1クラッチ3Aへ駆動力を伝達する第1リフタ48Aと、第2クラッチ3Bへ駆動力を伝達する第2リフタ48Bとからなっている。第1受動ピストン18Aと第1リフタ48Aとの間には、押圧部材50が介装されている。
【0042】
第1リフタ48Aは、シリンダブロックカバー47に軸方向摺動可能に設けられた内側摺動リング48Aaと、同内側摺動リング48Aaにボールベアリング48Abを介して回転可能に設けられた外側回転リング48Acとで構成されている。外側回転リング48Acに、上記第1駆動ロッド43Aの端部が固定されている。内側摺動リング48Aaの端部は、円筒状端部48Adとなっている。
【0043】
第2リフタ48Bは、第1リフタ48Aの内側摺動リング48Aaの中心孔に軸方向摺動可能に設けられた内側摺動部材48Baと、同内側摺動部材48Baにボールベアリング48Bbを介して回転可能に設けられた外側回転リング48Bcとで構成されている。外側回転リング48Bcに、上記第2駆動ロッド43Bの端部が固定されている。
【0044】
第2受動ピストン18Bの先端は、半球状の先端を有する押圧用突出部49となっている。この部分が第2リフタ48Bの内側摺動部材48Baの端面に当接している。第2リフタ48Bの内側摺動部材48Baが第2受動ピストン18Bに押されると、外側回転リング48Bcと第2駆動ロッド43Bを介して第2クラッチ3Bの加圧プレート40Bが押され、第2クラッチ3Bは断となる。
【0045】
図4は、第1受動ピストン18Aと第1リフタ48Aとの間に介装された押圧部材50の図であり、図(a)は第1受動ピストン18Aの軸方向から見た平面図、図(b)は側面図である。平面形は、基幹部50aと分岐部50bとからなるY字形をなし、基幹部50aは平面図では直線状であるが、側面視ではほぼ直角に曲げてあり、その端部の軸支部50cでシリンダブロック16に揺動可能に支持されている。分岐部50bは第2受動ピストン18Bの先端の押圧用突出部49を囲むように伸び、分岐部50bの先端部で第1リフタ48Aの内側摺動リング48Aaの円筒状端部48Adの端面に当接している。
【0046】
上記押圧部材50は、第1受動ピストン18Aの先端突起53からの押圧入力を受ける1つの入力部51と、同入力部51が受けた押圧力を上記第1クラッチ3Aに伝達する2個の半球状の出力部52X、52Yとを備えている。上記構成により、1つの入力部と2個の出力部を備える押圧部材を設けるだけで、上記第1クラッチの断接が可能になるので、部品点数およびコストの削減ができると共に、上記ツインクラッチの大型化を防ぎ、コンパクトな構造とすることができる。
【0047】
第1クラッチ3Aのリフタ48Aの内側摺動リング48Aaは円筒状端部48Adを備え、上記記押圧部材50の第1出力部52Xと第2出力部52Yは、上記円筒状端部48Adの端面上において、上記円筒状端部48Adの中心Cに関して点対称となる位置にそれぞれ配置されている。したがって、リフタ48Aを、第1出力部52Xと第2出力部52Yで均等に押すことができるので、第1クラッチ3Aの断接を適切に行うことができる。
【0048】
押圧部材50は、基幹部50aの端部の軸支部50cにおいてシリンダブロック16に揺動可能に軸支され、分岐部50bは、第2リフタ48Bの内側摺動部材48Baの端面に対する第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49を囲むように延出されると共に、第1出力部52Xおよび第2出力部52Yは、第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49の押圧点54と一直線になるよう配置されている。このような構成によって、第1クラッチ3Aのリフタ48Aを均等に押しながらも、上記第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49を避けつつ、押圧部材50をコンパクトに配置することができる。
【0049】
第1受動ピストン18Aの軸方向視で、第1出力部52Xから入力部51までの長さと、第2出力部52Yから入力部51までの長さが等しくしてあり、入力部51と第1出力部52Xと第2出力部52Yとを結んだ線が二等辺三角形になるように形成されている。したがって、入力部51からの伝達力を、各出力部52X、52Yに均等に伝えることができる。
【0050】
入力部51は、基幹部50a上で、軸支部50cよりも分岐部50bに近い側に設けられている。上記構成によって、分岐部50b側、すなわち出力部52に近い側に設けることにより、軸支部50cに近い側に設けるよりも少ない力で押圧部材50を押すことができる。
【0051】
押圧部材50の基幹部50aは、シリンダブロック16の外周より内側で軸支部50cによって軸支されると共に、上記第1スレーブシリンダ17Aの軸線と並行に、シリンダブロック16の内方の軸支部50cの方へ曲げて形成されている。このように構成されているので、シリンダブロック16の外方に上記押圧部材50の基幹部50aを取付けるのと比べて、大型化することなくシリンダブロック16と押圧部材50を設けることができる。
【0052】
押圧部材50の入力点51が第1受動ピストン18Aの先端突起53で押されると、分岐部50bの先端の出力部52X、52Yが第1リフタ48Aの内側摺動リング48Aaを押し、外側回転リング48Acと第1駆動ロッド43Aを介して第1クラッチ3Aの加圧プレート40Aが押され、第1クラッチ3Aは断となる。
【0053】
図5は、クラッチアクチュエータ5の断面正面図、図6は、クラッチアクチュエータ5の断面側面図である。クラッチアクチュエータ5の殻体は、本体ケース55、2本のマスタシリンダ19A、19B、およびモータケース56からなっている。
【0054】
本体ケース55の中には、ウォームギヤ装置20が設けてある。ウォームギヤ装置20は、ウォーム57とウォームホイール58とからなっている。ウォーム57は、ボールベアリング59に回転可能に支持されている。ウォームホイール58は、ボールベアリング60に支持された回動軸61(図6)に固定され、回動可能となっている。回動軸61は互いに連結された前部回動軸61aと後部回動軸61bとからなり、上記ウォームホイール58は前部回動軸61aに固定され、後部回動軸61bにはカム体63が固定されている。カム体63はウォームホイール58と共に回動する。カム体63の左右の腕の端部(図5)には、それぞれ上向きの押圧突起64が設けてある。上記ウォーム57は、モータケース56内に設けられた制御モータ21の回転軸延長部65に結合されて駆動される。
【0055】
本体ケース55の上部には、第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bが、それぞれOリング68を介して嵌挿されている。各マスタシリンダ19A、19Bの上部には、それぞれ作動油の出力ポート69A、69Bが設けてあり、スイベル管継手70A、70Bを介してスレーブシリンダ17A、17Bに連なる管路23A、23Bが連結されている。これらのマスタシリンダにはそれぞれ同一構造の駆動ピストン22A、22Bが装着されている。したがって説明は、右側の第1マスタシリンダ19Aと第1駆動ピストン22Aについて行う。
【0056】
第1駆動ピストン22Aは、上部フランジ71と、上部フランジ71と比べてやや小径の中間フランジ72と、下部フランジ73とを備えている。上部フランジ71の上面に、ばね受け部材74が設けられ、第1マスタシリンダ19A内の上部との間にコイルばね75が装着され、第1駆動ピストン22Aを下方へ付勢している。ばね受け部材74の外周と第1マスタシリンダ19Aの内面との間には上部シール材76が設けられ、油の漏れを防止している。中間フランジ72と下部フランジ73との間には下部シール材77が設けられ、油の漏れを防いでいる。
【0057】
下部フランジ73の下方の第1マスタシリンダ19Aの下端部にサークリップ78を介してワッシャ79が固定されている。下部フランジ73の下面がワッシャ79の上面に当接することによって第1駆動ピストン22Aの抜け止めとなる。ワッシャ79の中央孔に第1駆動ピストン22Aの下部のロッド部80が挿通されている。ロッド部80の下端に上記カム体63の端部の押圧突起64が当接している。
【0058】
図6において、第1マスタシリンダ19Aの側面に作動油供給装置7が接続されている。これは第1マスタシリンダ19Aの側壁の作動油供給ポート83に接続されたスイベル管継手84と、作動油を貯留するリザーバタンク85と、上記スイベル管継手84とリザーバタンク85とを繋ぐホース86とからなっている。第2マスタシリンダ19Bの側面にも、同様に作動油供給装置7が接続されている。これは、リザーバタンク85に連なるホース86を途中で分岐して第2マスタシリンダ19Bの作動油供給ポート83に接続されているものである。
【0059】
第1マスタシリンダ19Aの側壁には、上記スイベル管継手84内の油路に連なる主供給孔87と副供給孔88が設けてある。主供給孔87は細径で、副供給孔88は比較的大径である。主供給孔87は、第1駆動ピストン22Aが下死点にまで下降しているときに、上部シール材76のやや上方となる位置に設けてあり、温度変化による作動油の体積変化等に応じて、不足する作動油をリザーバタンク85から供給し、過剰となる作動油がリザーバタンク85へ回収される。主供給孔87の先端は細径となっているので、ホース86の振動などの影響が、第1管路23Aに伝達することが防止される。副供給孔88はピストン22Aの位置に関係なく、常に上下のシール材76、77間の空間とリザーバタンク85とを連通している。
【0060】
第1駆動ピストン22Aがやや上昇すると、主供給孔87は上部シール材76によって塞がれ、第1管路23Aとリザーバタンク85は非連通となり、第1駆動ピストン22Aが更に上昇すると、第1管路23A内の作動油は加圧され、第1受動ピストン18Aが駆動される。
【0061】
第1マスタシリンダ19Aの上部に、シリンダ内部の油圧を検知する油圧センサ89が設けてある。上記油圧センサ89は、第2マスタシリンダ19Bにも設けてある。これは、シングルクラッチより緻密な制御が必要とされるツインクラッチにおいて、制御性を向上させるためである。
【0062】
本体ケース55の側部にカム体63の傾動角度を検出するポテンショメータ90が設けてあり、その検出値は制御装置6(図1)に送られ、制御モータ21の制御操作に供される。第2マスタシリンダ19B内の構造作用は、第1マスタシリンダ19A内の構造作用と同じであるから説明を省略する。第1マスタシリンダ19Aに特有の部材の符号には、Aを付し、第2マスタシリンダ19Bに特有の部材の符号には、Bを付してある。
【0063】
以上述べた構成を備えたツインクラッチ付き変速機構1は次のように作用する。
変速機構停止時には、ツインクラッチ3A、3Bは、いずれも接続状態となっている。
第1変速機2Aを作動させる場合は、第2クラッチ3Bを断にする。制御装置6の指令により、制御モータ21が一方向に回転駆動され、ウォームギヤ装置20とカム体63が回動し、第2駆動ピストン22Bが上方へ押され、第2マスタシリンダ19B、第2管路23Bおよび第2スレーブシリンダ17Bの作動油が加圧され、第2受動ピストン18Bが押し出される。第2受動ピストン18Bの移動によって、第2リフタ48Bが押され、第2駆動ロッド43Bを介して第2クラッチ3Bの加圧プレート40Bが押され、第2クラッチ3Bが断となり、第1変速機2Aの作動が可能となる。
【0064】
第2変速機2Bを作動させる場合は、第1クラッチ3Aを断にする。制御装置6の指令により、制御モータ21が上記の逆方向に回転駆動され、ウォームギヤ装置20とカム体63が上記と逆方向に回動し、第1駆動ピストン22Aが上方へ押され、作動油が加圧されて、第1受動ピストン18Aが押し出される。第1受動ピストン18Aの移動によって、押圧部材50を介して第1リフタ48Aが押され、第1駆動ロッド43Aを介して第1クラッチ3Aの加圧プレート40Aが押され、第1クラッチ3Aが断となり、第2変速機2Bの作動が可能となる。
【0065】
以上詳述したように、上記実施形態においては次のような効果がもたらされる。
(1)上記押圧部材50は、第1受動ピストン18Aからの押圧入力を受ける1つの入力部51と、同入力部51が受けた押圧力を第1クラッチ3Aに伝達する2個の出力部52X、52Yとを備えているので、1つの入力部と2個の出力部を備える押圧部材を設けるだけで、上記第1クラッチの断接が可能になり、部品点数およびコストの削減ができ、ツインクラッチの大型化を防ぎ、コンパクトな構造とすることができる。
(2)第1クラッチ3Aのリフタ48Aは円筒状端部48Adを備え、押圧部材50の出力部52は、第1出力部52Xと第2出力部52Yとからなり、リフタ48Aの軸方向視で第1出力部52Xと第2出力部52Yは、円筒状端部48Adの端面上において、上記円筒状端部48Adの中心Cに関して点対称となる位置にそれぞれ配置されている。したがって、リフタ48Aを、第1出力部52Xと第2出力部52Yで均等に押すことができるので、第1クラッチ3Aの断接を適切に行うことができる。
(3)押圧部材50は、基幹部50aの端部の軸支部50cにおいてシリンダブロック16に揺動可能に軸支され、分岐部50bは第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49を囲むように延出されると共に、第1出力部52Xおよび第2出力部52Yは、第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49の押圧点54と一直線になるよう配置されている。このような構成によって、第1クラッチ3Aのリフタ48Aを均等に押しながらも、上記第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49を避けつつ、押圧部材50をコンパクトに配置することができる。
(4)第1受動ピストン18Aの軸方向視で、第1出力部52Xから入力部51までの長さと、第2出力部52Yから入力部51までの長さが等しくしてあり、上記各点を結んだ線が二等辺三角形になるように形成されている。したがって、入力部51からの伝達力を、各出力部52X、52Yに均等に伝えることができる。
(5)入力部51は、基幹部50a上で、軸支部50cよりも分岐部50bに近い側に設けられている。上記構成によって、分岐部50b側、すなわち出力部52に近い側に設けることにより、軸支部50cに近い側に設けるよりも少ない力で押圧部材50を押すことができる。
(6)押圧部材50の基幹部50aは、シリンダブロック16の外周より内側で軸支部50cによって軸支されると共に、上記第1スレーブシリンダ17Aの軸線と並行に、シリンダブロック16の内方の軸支部50cの方へ曲げて形成されている。このように構成されているので、シリンダブロック16の外方に上記押圧部材50の基幹部50aを取付けるのと比べて、大型化することなくシリンダブロック16と押圧部材50を設けることができる。
(7)上記第1スレーブシリンダ17Aの内径は上記第2スレーブシリンダ17Bの内径より大きい。第1スレーブシリンダ17A側には押圧部材50が介在しているので、第2スレーブシリンダ17Bに比してストロークが小さくてすむが、大きい作用力を必要とするので、内径を大きくしてある。これによって、必要油量がほぼ等しくなるので、2本のマスタシリンダの寸法・容量をほぼ同じくすることができる。
(8)シリンダ内部の油圧を検知する油圧センサ89が、第1マスタシリンダ19Aと第2マスタシリンダ19Bに設けてある。これは、制御性を向上させるためである。
【符号の説明】
【0066】
1…ツインクラッチ付き変速機構、2…常時噛み合い式変速機、2A…第1変速機、2B…第2変速機、3…ツインクラッチ、3A…第1クラッチ、3B…第2クラッチ、4…スレーブシリンダ装置、5…クラッチアクチュエータ、6…制御部、7…作動油供給装置、、10…メイン軸、10A…メイン軸外軸、10B…メイン軸内軸、11…カウンタ軸、12…シフトフォーク駆動装置、13A,13B…クラッチアウタ、14A,14B…クラッチインナ、15…入力歯車、16…シリンダブロック、17A…第1スレーブシリンダ、17B…第2スレーブシリンダ、18A…第1受動ピストン、18B…第2受動ピストン、19A…第1マスタシリンダ、19B…第2マスタシリンダ、20…ウォームギヤ装置、21…制御モータ、22A…第1駆動ピストン、22B…第2駆動ピストン、23A…第1管路、23B…第2管路、25…クランクケース、36A,36B…駆動摩擦板、37A,37B…従動摩擦板、38A,38B…摩擦板群、39A,39B…受圧プレート部、40A,40B…加圧プレート、43A…第1駆動ロッド、43B…第2駆動ロッド、44…駆動力伝達機構、45A,45B…入力ポート、46A,46B…スイベル管継手、47…シリンダブロックカバー、48A…第1リフタ、48Aa…内側摺動リング、48Ab…ボールベアリング、48Ac…外側回転リング、48Ad…円筒状端部、48B…第2リフタ、48Ba…内側摺動部材、48Bc…外側回転リング、49…押圧用突出部、50…押圧部材、50a…基幹部、50b…分岐部、50c…軸支部、51…入力部、52…出力部、52X…第1出力部、52Y…第2出力部、53…第1受動ピストンの先端突起、54…第2受動ピストンの押圧点、55…本体ケース、56…モータケース、57…ウォーム、58…ウォームホイール、61…回動軸、63…カム体、64…押圧突起、65…回転軸延長部、69A,69B…出力ポート、70A,70B…スイベル管継手、71…上部フランジ、72…中間フランジ、73…下部フランジ、74…ばね受け部材、75…コイルばね、76…上部シール材、77…下部シール材、83…作動油供給ポート、84…スイベル管継手、85…リザーバタンク、87…主供給孔、88…副供給孔、89…油圧センサ、90…ポテンショメータ、C…円筒状端部48Adの中心。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
異なる変速比を有する第1変速機2A及び第2変速機2Bとを備えると共に、
第1マスタシリンダ19Aの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第1変速機2Aとの間を断接する第1クラッチ3Aと、
第2マスタシリンダ19Bの液圧によって操作され、入力歯車15と上記第2変速機2Bとの間を断接する第2クラッチ3Bと、
上記第1マスタシリンダ19Aの作動液を押し出して上記第1クラッチ3Aを操作する第1駆動ピストン22Aと、
上記第2マスタシリンダ19Bの作動液を押し出して上記第2クラッチ3Bを操作する第2駆動ピストン22Bと、
モータ21によって傾動駆動され、一方に傾動したときに上記第1駆動ピストン22Aを押圧駆動し、他方に傾動したときに上記第2駆動ピストン22Bを押圧駆動するカム体63と、
上記第1マスタシリンダ19Aと上記第1クラッチ3Aとの間に配置され、上記第1マスタシリンダ19Aの液圧によって、第1スレーブシリンダ17A内で摺動することにより第1クラッチ3Aを断接させる第1受動ピストン18Aと、
上記第2マスタシリンダ19Bと上記第2クラッチ3Bとの間に配置され、上記第2マスタシリンダ19Bの液圧によって、第2スレーブシリンダ17B内で摺動することにより第2クラッチ3Bを断接させる第2受動ピストン18Bとを備え、
上記第1クラッチ3Aが半径方向外側に配置され、上記第2クラッチ3Bが半径方向内側に配置されるツインクラッチ付き変速機構1において、
上記第1受動ピストン18Aの押圧力を上記第1クラッチ3Aに伝達する押圧部材50を設け、
上記押圧部材50は、第1受動ピストン18Aからの押圧入力を受ける1つの入力部51と、
同入力部51が受けた押圧力を上記第1クラッチ3Aに伝達する複数の出力部52とを備えることを特徴とするツインクラッチ付き変速機構1。
【請求項2】
上記第1クラッチ3Aのリフタ48Aは円筒状端部48Adを備え、
上記押圧部材50の出力部52は、第1出力部52Xと第2出力部52Yとからなり、
上記リフタ48Aの軸方向視で上記第1出力部52Xと第2出力部52Yは、上記円筒状端部48Adの端面上において、上記円筒状端部48Adの中心Cに関して点対称となる位置にそれぞれ配置されることを特徴とする請求項1に記載のツインクラッチ付き変速機構1。
【請求項3】
上記ツインクラッチ付き変速機構1は、少なくとも上記第1受動ピストン18Aと上記第1スレーブシリンダ17Aを収容するシリンダブロック16を備え、
上記押圧部材50は、第1受動ピストン18Aの軸方向視で基幹部50aと分岐部50bとからなるY字形に形成され、
上記押圧部材50は、上記基幹部50aの端部においてシリンダブロック16に揺動可能に軸支され、
上記分岐部50bは、上記第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49を囲むように延出されると共に、
上記第1出力部52Xおよび上記第2出力部52Yは、第2受動ピストン18Bの押圧用突出部49の押圧点54と一直線になるよう配置されることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のツインクラッチ付き変速機構1。
【請求項4】
第1受動ピストン18Aの軸方向視で、上記第1出力部52Xから上記入力部51までの長さと、上記第2出力部52Yから上記入力部51までの長さが等しく、上記各部を結んだ線が二等辺三角形になるように形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項3の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1。
【請求項5】
上記入力部51は、上記基幹部50aのうち、軸支部50cよりも分岐部50bに近い側に設けられることを特徴とする請求項1乃至請求項4の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1。
【請求項6】
上記押圧部材50の基幹部50aは、上記シリンダブロック16の外周より内側に軸支されると共に、上記第1スレーブシリンダ17Aの軸線と並行に、シリンダブロック16の内方の軸支部50cの方へ曲げて形成されることを特徴とする請求項1乃至請求項5の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1。
【請求項7】
上記第1スレーブシリンダ17Aの径は上記第2スレーブシリンダ17Bの径より大きいことを特徴とする請求項1乃至請求項6の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1。
【請求項8】
上記第1駆動ピストン22Aが収容される第1マスタシリンダ19Aと、上記第2駆動ピストン22Bが収容される第2マスタシリンダ19Bの、少なくとも何れか一方に油圧を検知する油圧センサ89を設けたことを特徴とする請求項1乃至請求項7の何れかに記載のツインクラッチ付き変速機構1。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【公開番号】特開2011−179637(P2011−179637A)
【公開日】平成23年9月15日(2011.9.15)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−46367(P2010−46367)
【出願日】平成22年3月3日(2010.3.3)
【出願人】(000005326)本田技研工業株式会社 (23,863)
【Fターム(参考)】