説明

テキスタイルプリント方法

【課題】各種の特性に異なる布帛に対し、発色性、染めムラ耐性及びにじみ耐性に優れた捺染画像が得られるテキスタイルプリント方法を提供する。
【解決手段】色剤、水溶性有機溶剤及び水を含有する記録インクと、前処理インクとを用いて布帛にプリントするテキスタイルプリント方法であって、組成の異なる2種以上の前処理インクを用意し、該2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法および付与量を選択して、布帛に付与することを特徴とするテキスタイルプリント方法。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、新規のテキスタイルプリント方法に関し、詳しくは、記録インクでのプリントに先立ち、プリント品質向上と多彩なデザイン表現性を付与するための前処理インクを付与するテキスタイルプリント方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来のテキスタイルプリントは、版を用いてプリントする方法やスクリーン捺染方法を用いて行われている。一方、インクジェット方式を用いたテキスタイルプリント方法が知られている。このテキスタイルプリント方法は、無版であり、少量多品種対応に適しており、短納期でプリント物を作成することができるという特徴を備えている。
【0003】
布帛にインクジェット方式でプリントする場合、にじみが発生してしまうケースが起こる。通常、布帛にはにじみ防止や色剤と布帛の定着性向上を目的とした前処理が施される。具体的には、にじみ防止のための水溶性高分子や、定着性向上のためのpH調整剤、ヒドロトロピー剤として尿素などを含有する水溶液を、布帛にディッピングあるいはコーティングした後、乾燥する処理が施されている。
【0004】
このような布帛前処理工程は、インクジェット方式のテキスタイルプリントにはなくてはならないものであるが、現状の方法では、下記に示すような様々な課題を抱えている。
【0005】
1)前処理に時間を要し、プリントの納期が遅れる
2)前処理工程分のコストがかかる
3)前処理した布帛は経時劣化を起こすため、長期保存することができない
4)プリントしない部分にも前処理が施されることで、白地汚染を発生することがある 以上の様な各課題に対して、プリントの前工程で、布帛前処理を行う方法が提案されている。例えば、布帛前処理をインクジェット法で行う方法が開示されている(例えば、特許文献1参照。)。この様な布帛前処理をインクジェット法で行うことにより、前処理済み布帛の在庫を多量に持たなくても良いこと、布帛の必要な部分にのみ前処理を行うことができることにより、装置の小型化、時間短縮、薬剤使用量の減量、汚染防止に効果があるされている。
【0006】
テキスタイルプリント物の最終品質における前処理工程の役割は非常に大きい。特に、にじみのない鮮明な画像形成、充分に高い最大濃度、あるいは布帛の表面だけでなく深部までもしっかりと染まっていること、いわゆる「いらつき」のない画像を作成するため観点からは、前処理条件がインク同様に重要な要素となっている。しかしながら、布帛の種類は、材質、糸種、織り方、布帛厚みなど様々であり、前処理には布帛ごとに適した条件があるにもかかわらず、現状ではその必要性や実現手段について、十分に検討はなされていないのが現状である。
【0007】
上記課題に関連して、布帛の各種材料に適応できるよう、種類の違う処理剤が供給される方法が開示されている(例えば、特許文献2参照。)。しかしながら、特許文献2に記載の方法においては、種類の違う処理剤を、布帛に対しどのような条件で付与するかとの方法については、全く記載がなされていない。
【0008】
布帛の前処理は、布帛種類及びプリントする図柄、あるいは仕上がりに応じて適したものにすることが望ましいことが、そのような態様は具体的に示されていないのが現状である。
【特許文献1】特開2005−232633号公報
【特許文献2】特開平5−301340号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、その目的は、各種の特性に異なる布帛に対し、発色性、染めムラ耐性及びにじみ耐性に優れた捺染画像が得られるテキスタイルプリント方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明の上記目的は、以下の構成により達成される。
【0011】
1.色剤、水溶性有機溶剤及び水を含有する記録インクと、前処理インクとを用いて布帛にプリントするテキスタイルプリント方法であって、組成の異なる2種以上の前処理インクを用意し、該2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法および付与量を選択して、布帛に付与することを特徴とするテキスタイルプリント方法。
【0012】
2.前記記録インクを付与する画像領域に付与する前記前処理インクの付与量の総計が、90%Duty以上、300%Duty未満であることを特徴とする前記1に記載のテキスタイルプリント方法。
【0013】
3.前記記録インクを付与する画像領域に付与する前記前処理インクの付与量の総計が、10ml/m以上、50ml/m未満であることを特徴とする前記1に記載のテキスタイルプリント方法。
【0014】
4.前記記録インクが含有する色剤が反応性染料であって、前記2種以上の組成の異なる前処理インクが、pH調整剤としてアルカリ成分を含有し、かつ少なくとも2種の組成の異なる前処理インクのpH調整剤濃度が異なることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載のテキスタイルプリント方法。
【0015】
5.前記記録インクが含有する色剤が酸性染料であって、前記2種以上の組成の異なる前処理インクが、pH調整剤として酸性成分を含有し、かつ2種以上の組成の異なる前処理インクのpH調整剤濃度が異なることを特徴とする前記1から3のいずれか1項に記載のテキスタイルプリント方法。
【0016】
6.前処理インクの少なくとも1種が水溶性高分子を含有し、該水溶性高分子が、水酸基価が50mgKOH/g未満で、重量平均分子量が1000以上、100000以下で、かつ25℃の水あるいはアルカリ水溶液に対して10質量%以上の溶解度を有することを特徴とする前記1から5のいずれか1項に記載のテキスタイルプリント方法。
【発明の効果】
【0017】
本発明により、各種の特性に異なる布帛に対し、発色性、染めムラ耐性及びにじみ耐性に優れた捺染画像が得られるテキスタイルプリント方法を提供することができた。
【発明を実施するための最良の形態】
【0018】
以下、本発明を実施するための最良の形態について詳細に説明する。
【0019】
本発明者は、前記課題に鑑み、特性(例えば、材質、糸種、織り方、布帛厚み等)の異なる様々な布帛に対し、種々の組成の前処理インクの付与量を変えて、プリント特性との対応を詳細に検討した結果、特性の異なる布帛ごとに、最適の前処理インク組成、前処理インク付与量の条件が異なることが判明した。前処理インクを構成する組成物のなかでも、特に、pH調整剤組成(種類、含有濃)が、各種の布帛に対するプリント特性に対して大きく影響していることが判明した。例えば、記録インクとして反応性染料インクを用いる場合、pH調整剤としてはアルカリ成分を使用するが、必ずしもアルカリ量が多いほうが良いわけでなく、最適な量が存在することが明らかになった。
【0020】
更に、インクジェット方式を用いて前処理インクを付与する場合、その付与方法によっては、染めムラが発生することが明らかになった。すなわち、布帛の単位面積当たりに同じアルカリ量を付与しても、高濃度のアルカリ液を低Duty(例えば75%Duty以下)で付与するよりも、中低濃度のアルカリ液を、例えば、90〜300%Duty程度で付与するほうが、染めムラは発生しにくいことが判明した。ただし、インク保持量の少ない薄手の布帛にたいして、200%Duty以上の前処理を付与すると、かえってにじみが発生し、染めムラが生じることも明らかになったので、本発明にあるように、布帛に応じて前処理インクの選択と付与量を選択することが必要である。
【0021】
以上の様な検討結果を踏まえ、前処理インクとしては、前処理インクを1種のみ用いて、それらを一様に布帛上に付与し、布帛に応じてその付与量を制御するだけでは、多種多様の布帛に対しては、全てを満足する条件を得ることはできないとの結論に達した。
【0022】
本発明者は、色剤、水溶性有機溶剤及び水を含有する記録インクと、前処理インクを用いて布帛にプリントするテキスタイルプリント方法であって、組成の異なる2種以上の前処理インクを用意し、プリント条件を決定した後、該2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法を選択して、布帛に付与することを特徴とするテキスタイルプリント方法により、各種の特性に異なる布帛に対し、発色性、染めムラ耐性及びにじみ耐性に優れた捺染画像を得ることができるテキスタイルプリント方法を見出したものである。
【0023】
《テキスタイルプリント方法》
本発明のテキスタイルプリント方法においては、設定したプリント情報に従って、各色記録インクの吐出位置及び吐出量を決定してプリント条件を設定した後、本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法および付与量を選択して、布帛に付与することを特徴とする。
【0024】
以下に、本発明のテキスタイルプリント方法に適用することのできる前処理インクの付与条件の決定の具体的な方法について説明する。
【0025】
(前処理液の付与条件の決定方法)
〈布帛の種類を判別して決定する方法〉
本発明のテキスタイルプリント方法において、記録インクによるプリント条件を決定した後、本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法を選択する判定プロセスの第1の方法は、布帛の種類情報を基づいて決定する方法である。
【0026】
具体的な決定プロセスとしては、
1)第1ステップとして、使用する布帛種類の情報を入力し、
2)次いで、第2ステップとして布帛種類の情報に応じて本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクの使用する条件(例えば、2種以上用意されている前処理インクのいずれか一方のみを使用するケース、あるいは2種以上の組成の異なる前処理インクを組み合わせて用いるケース)を選択し、
3)第3のステップとして、第1ステップ及び第2ステップの情報に基づいて、選択した前処理インクの布帛への付与量を決定するプロセスを経て、
指定された布帛上に、上記判定方法に従って決定された2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用して、所定量吐出して前処理を施した後、記録インクによりプリントを行う方法である。
【0027】
本発明のテキスタイルプリント方法に適用可能な布帛としては、実に様々な種類のものが挙げられ、布帛を構成する糸の種類、織り方、布帛厚みなどだけをとっても多くのバリエーションがある。
【0028】
布帛を判別する方法として、あらかじめ種々の布帛情報を登録し、使用する布帛ごとに2種以上ある前処理インクの選択と、付与量制御を決定する方法を用いる。プリンタを制御するパソコンにて、登録してある布帛情報を選択することで、自動的に2種以上ある前処理インクの選択と、付与量制御が決定され、所定の条件で前処理インクが布帛に付与される。
【0029】
〈布帛の前処理インク保持量を判別して決定する方法〉
本発明のテキスタイルプリント方法において、記録インクによるプリント条件を決定した後、本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法を選択する判定プロセスの第2の方法は、布帛の記録インクの保持量情報に基づいて決定する方法である。
【0030】
具体的な決定プロセスとしては、
1)第1ステップとして、使用する布帛の記録インクの保持量情報を入力し、
2)次いで、第2ステップとして布帛の記録インクの保持量情報に応じて本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクの使用する条件(例えば、2種以上用意されている前処理インクのいずれか一方のみを使用するケース、あるいは2種以上の組成の異なる前処理インクを組み合わせて用いるケース)を選択し、
3)第3のステップとして、第1ステップ及び第2ステップの情報に基づいて、選択した前処理インクの布帛への付与量を決定するプロセスを経て、
指定された布帛上に、上記判定方法に従って決定された2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用して、所定量吐出して前処理を施した後、記録インクによりプリントを行う方法である。
【0031】
布帛の記録インク保持量情報は、対象の布帛の記録インク保持量を予め測定しておき、得られた測定結果から、前処理インクの選択と、その付与量を制御するアルゴリズムを決めておき、それに順じて、布帛上に所定の前処理液を付与する方法である。なお、本発明でいう布帛の記録インク保持量は、布帛を一定面積に裁断した試料片を記録インクに浸した後、一定条件で搾り、未処理の試料片の質量と搾った後の試料片の質量の差より測定することできる。この布帛の記録インク保持量は、使用する布帛を構成する糸の種類、織り方、布帛厚みなどにより決定される因子である。
【0032】
〈布帛の厚みを判別して決定する方法〉
本発明のテキスタイルプリント方法において、記録インクによるプリント条件を決定した後、本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法を選択する判定プロセスの第3の方法は、布帛の厚み情報に基づいて決定する方法である。
【0033】
具体的な決定プロセスとしては、
1)第1ステップとして、使用する布帛の厚み情報を入力し、
2)次いで、第2ステップとして布帛の厚み情報に応じて本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクの使用する条件(例えば、2種以上用意されている前処理インクのいずれか一方のみを使用するケース、あるいは2種以上の組成の異なる前処理インクを組み合わせて用いるケース)を選択し、
3)第3のステップとして、第1ステップ及び第2ステップの情報に基づいて、選択した前処理インクの布帛への付与量を決定するステップを経て、
指定された布帛上に、上記判定方法に従って決定された2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用して、所定量吐出して前処理を施した後、記録インクによりプリントを行う方法である。
【0034】
本発明において、布帛の厚みを測定する方法としては、一般的な厚み測定機器、例えば、ノギス、マイクロメータ、ダイアルシックネスゲージ、山文電気(株)製のオフライン厚み計測装置TOF/V(Ver.3.22)、非接触型厚さ測定装置Vario Metric(日本レーザー社製)等を用いて容易に測定して求めることができる。
【0035】
得られた布帛の膜厚情報より、前処理インクの選択と、布帛への前処理インクの付与量を制御するアルゴリズムを決めておき、それに順ずる方法である。
【0036】
〈記録インクの付与量を判別して決定する方法〉
本発明のテキスタイルプリント方法において、記録インクによるプリント条件を決定した後、本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法を選択する判定プロセスの第4の方法は、単位面積当たりの記録インクの平均付与量情報に基づいて決定する方法である。
【0037】
具体的な決定プロセスとしては、
1)第1ステップとして、決定した記録インクのプリント条件情報から、単位面積当たりの記録インクの平均付与量を計算し、
2)次いで、第2ステップとして、記録インクの上記平均付与量に応じて、2種以上の組成の異なる前処理インクの使用する条件(例えば、2種以上用意されている前処理インクのいずれか一方のみを使用するケース、あるいは2種以上の組成の異なる前処理インクを組み合わせて用いるケース)を選択し、
3)第3のステップとして、第1ステップ及び第2ステップの情報に基づいて、選択した前処理インクの布帛への付与量を決定するステップを経て、
指定された布帛上に、上記判定方法に従って決定された2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用して、所定量吐出して前処理を施した後、記録インクによりプリントを行う方法である。
【0038】
本発明者は、上述のような布帛の各種情報だけでなく、作成するプリント図柄などによる記録インク付与量によっても、前処理インクの組成や最適付与量が異なることを見出した。
【0039】
第4の方法では、記録インクによるプリント条件情報に従って、布帛のプリント領域を分割し、分割した各々のプリント部位ごとの単位面積当たりの記録インクの平均付与量を計算し、記録インク付与量に応じて前処理インクの使用する種類の選択と、付与量を制御するアルゴリズムを予め決めておく方法を適用することが好ましい。この場合の分割た単位面積当たりの記録インクの平均付与量としては、プリント図柄単位ごと(例えば、1m×1m)でもよいし、より小面積の単位ごとでもよい(例えば、1cm×1cm)、さらに、画像解像度から計算できる1ピクセルごとに記録インク量を計算してもよい。
【0040】
〈各種情報を総合的に判別して決定する方法〉
本発明のテキスタイルプリント方法において、記録インクによるプリント条件を決定した後、本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法を選択する判定プロセスの第5の方法は、布帛種類、布帛の記録インク保持量及び布帛の厚みから選ばれる少なくとも1種の情報に基づいて決定する方法である。
【0041】
具体的な決定プロセスとしては、
1)第1ステップとして、使用する布帛の種類、布帛の記録インク保持量及び布帛の厚みから選ばれる少なくとも1種の情報を入力し、
2)次いで、第2ステップとして、単位面積当たりの記録インクの平均付与量を入力し、
3)第3のステップとして、第1ステップ及び第2ステップの情報に応じて本発明に係る2種以上の組成の異なる前処理インクの使用する条件(例えば、2種以上用意されている前処理インクのいずれか一方のみを使用するケース、あるいは2種以上の組成の異なる前処理インクを組み合わせて用いるケース)を選択し、前処理インクの布帛への付与量を決定するステップを経て、
指定された布帛上に、上記判定方法に従って決定された2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用して、所定量吐出して前処理を施した後、記録インクによりプリントを行う方法である。
【0042】
すなわち、前処理インクの布帛上への付与をより最適化された条件で行う観点からは、布帛に関する各種情報と、記録インクの付与量に関する情報とを踏まえて、前処理インクの種類と付与量を決定することが好ましい態様である。
【0043】
本発明に係る前処理インクの付与方法、特に前処理インクの付与量の総計について以下のように制御して行うことは特に好ましい。
【0044】
本発明の効果を充分に発現させるために、少なくとも記録インクを付与する画像領域に付与するインクジェット前処理インクの付与量の総計が、90%Duty以上300%Duty未満とすることは特に好ましい。
【0045】
90%Duty未満では、布帛によっては染めムラを充分に抑えることが出来ない場合がある。300%Duty以上では、乾燥に負荷がかかり、充分乾燥できないなどしてにじみを充分に抑制できないことがあるからである。
【0046】
ここでいう、前処理インクの付与量の総計とは、前処理インクを付与するヘッドごとの各射出Duty%の総計である。
【0047】
例えば、4つのヘッドを用いて前処理インクを付与し、ヘッドごとの射出Dutyが、50%、50%、25%、25%の場合、総量は150%Dutyとなる。
【0048】
以上は、前処理インクの付与の均一性と、総付与液量の両方から勘案されるものであるので、上記の規定は、前処理インクを付与する各ヘッドは射出する液適量が大きく違わないものが好ましい。好ましくは、液適量が1pl〜30plの範囲のものが好ましい。
【0049】
さらに好ましくは、4plから30plである。
【0050】
また、本発明の効果を充分に発現させるために、少なくとも記録インクを付与する画像領域に付与するインクジェット前処理インクの付与量の総計が、10ml/m以上、50ml/m未満であることは特に好ましい。
【0051】
10ml/m未満では、布帛によっては染めムラを充分に抑えることができない場合がある。50ml/m以上では、乾燥に負荷がかかり、充分乾燥できないなどしてにじみを充分に抑制できないことがあるからである。
【0052】
ここでいう、前処理インクの付与量の総計とは、前処理インクを付与する各ヘッドから付与する前処理インクの総計である。
【0053】
《テキスタイルプリント装置》
本発明のキスタイルプリント方法に適用可能なテキスタイルプリント装置の一例について説明する。
【0054】
〔前処理インクを付与するのに用いるインクジェットヘッド〕
本発明のテキスタイルプリント方法においては、本発明に係る前処理インクをインクジェットヘッド(以下、単にヘッドともいう)を用いて布帛上に付与することができる。
【0055】
前処理インクをヘッドで付与することで、必要な部位に必要な量を均一にムラなく付与することが出来る。
【0056】
前処理インクを付与するヘッドは、後述する記録インクを付与するヘッドを搭載したキャリッジと別キャリッジに搭載することが好ましい。別キャリッジに前処理インクを付与するヘッドを搭載することで、前処理インクを付与した後、記録インクを付与するまでの間に前処理インクを乾燥する乾燥装置を設けることができる。
【0057】
前処理インクの吐出に用いるヘッドとしては、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式などさまざまな方法から選択することができる。ピエゾ方式、コンティニュアス方式は高分子材料を含むインクなどでも安定に射出する可能性が高く好ましい、特にピエゾ方式は小型で集積度が高く好ましい。
【0058】
前処理インクの吐出に用いるヘッドは、2種以上の組成の異なる前処理インクを準備することを特徴とする本発明においては、2基以上用意する。
【0059】
前処理インクの吐出に用いるヘッドより吐出する前処理インクのインク液滴量は、前述のように、本発明では使用する布帛の種類、布帛の記録インク保持量、布帛の厚さ、単位面積当たりの記録インクの平均付与量により決定されることを特徴とするが、概ね1plから100plの範囲から選択することが好ましい。
【0060】
〔乾燥手段〕
本発明のテキスタイルプリント装置においては、布帛上に前処理インクの付与した後、布帛を乾燥する乾燥手段を有していることが好ましい。
【0061】
本発明において、乾燥工程においては、付与された前処理インクの機能を最大限に発現する程度まで乾燥することが好ましい。多くの場合、前処理インクの付与により、後続の記録インクでの記録と合わせて、総インク量が増えて、それによりにじみが発生しやすくなるため、可能な限り、布帛に付与された前処理インクの水分及び有機溶剤を乾燥することが好ましい。本発明においては、布帛表面温度を30℃から80℃の範囲で、布帛や前処理インクの組成ごとに適した温度設定をすることが好ましい。
【0062】
上記乾燥工程においては、乾燥により前処理インクが保持していた水分や有機溶剤がプリンタ内部に充満すると、乾燥速度が低下するだけでなく、プリンタ内部のセンサーなどの電気系統が腐食などを起こす可能性があるので、これらの揮発成分はプリンタ外部に排出することが好ましい。例えば、排気塔を設け、ファンなどを利用し強制的に排出することが好ましい。
【0063】
本発明に使用するテキスタイルプリント装置において適用可能な乾燥手段の具体的な方法としては、温度制御可能な風または温風による乾燥手段、ホットプレートを用いた乾燥手段、可視光或いは遠赤外光を用いた乾燥手段、ヒートローラーを用いた乾燥手段、マイクロ波を照射する手段を用いた乾燥手段等を適宜選択して用いることができる。
【0064】
〔記録インクの付与に用いるインクジェットヘッド〕
記録インクの付与に用いるインクジェットヘッドとしては、ピエゾ方式、サーマル方式、コンティニュアス方式などさまざまな方法から選択することができる。ピエゾ方式、コンティニュアス方式は高分子材料を含むインクなどでも安定に射出する可能性が高く好ましい、特にピエゾ方式は小型で集積度が高く好ましい。
【0065】
〔テキスタイルプリント装置の構成〕
以下に、図を用いて上記説明した本発明に適用可能なテキスタイルプリント装置について説明するが、本発明は、これら例示する図面に示す構成にのみ限定されるものではない。
【0066】
図1は、テキスタイルプリント装置の構成の一例を示す部分概略図である。
【0067】
図1は、テキスタイルプリント装置の粘着ベルトと、粘着性ベルトを駆動するローラーと、前処理インクを付与するインクジェットヘッドと、布帛に前処理インクを付与した後に布帛を乾燥する乾燥手段と、布帛に記録インクを付与するインクジェットヘッドの構成のみを示したものであり、本発明のテキスタイルプリント装置においては、その他に、前処理インク及び記録インクを付与する制御手段等を備えている。
【0068】
図1において、1は、サポートロール2、搬送ロール3に保持され、無端基材ベルト上に粘着手段、特に好ましくは地貼り剤を有する粘着性ベルトである。
【0069】
右方向より搬送された布帛Pは、ニップロール4と粘着性ベルト1とで狭持され、粘着性ベルト1に固定される。次いで、前処理インクをヘッド5より布帛上に付与した後、温度制御可能な風または温風を吹き付ける手段で、内部にファン6A及び発熱体6Bを備えた温風付与手段6により付与した前処理インクを十分に乾燥した後、記録インクをヘッド7より布帛上に付与して画像形成を行う。
【0070】
図2は、テキスタイルプリント装置の他の構成を示す部分概略図である。
【0071】
図2に示すテキスタイルプリント装置は、上記図1に示したテキスタイルプリント装置に対し、前処理インク吐出用のヘッド5の上流側と、記録インクを吐出するヘッド7の下流側に、それぞれ温風付与手段6を追加した構成である。前処理インク吐出用のヘッド5の上流側に設置した温風付与手段6により、布帛P及び粘着性ベルト1を加熱することにより、粘着性ベルト1が有する粘着手段に、布帛Pを強固に固定することができる。記録インクを吐出するヘッド7の下流側に設けた温風付与手段6により、布帛に付与された記録インクを速やかに乾燥させることができる。
【0072】
図3は、テキスタイルプリント装置の他の一例を示す部分概略図である。
【0073】
図3に示すテキスタイルプリント装置は、上記図1に示したテキスタイルプリント装置に対し、更に乾燥手段として、前処理インクを付与するヘッド5の位置で、布帛を保持搬送する粘着性ベルト裏面、及び記録インクを付与するヘッド7の位置で、布帛を保持搬送する粘着性ベルト裏面に、それぞれベルトに接触する様にホットプレート10を配置した例を示してある。
【0074】
本発明に適用可能なテキスタイルプリント装置には、上記説明した構成に加えて、布帛の種類、布帛の記録インク保持量、布帛の厚さ、単位面積当たりの記録インクの平均付与量により前処理インクの吐出条件を制御するためのCPUを含む前処理インク制御部、あるいは設定されたプリント条件に従って各色記録インクの吐出を制御する記録インク制御部を備えている。
【0075】
《前処理インク》
次に、本発明に係る前処理インクの詳細について説明する。
【0076】
本発明に係る組成の異なる2種以上の前処理インクにおいては、それぞれの前処理インクの組成としては、布帛条件の違い(例えば、布帛の種類、厚さ、記録インクの付与量等)に対応するため、機能性化合物の濃度を異なる2種以上の前処理液により構成する方法や、あるいは2つの化合物を同一の前処理液に添加した場合に、凝集や各機能性化合物の失活等の悪影響を起こすような場合、それぞれの機能性化合物を2種以上の前処理液に分離して含有させる構成等を採ることができる。
【0077】
本発明に係る組成の異なる2種以上の前処理インクにおいては、特に、pH調整剤を含有し、それぞれの前処理インク間でpH調整剤の濃度を異なる構成とすることが好ましい。
【0078】
本発明に係る前処理インクが含有するpH調整剤は、記録インク中の色剤の布帛に対する定着性を向上させる機能を有している。例えば、記録インクが色剤として反応性染料を用いる場合には、pH調整剤としてアルカリ成分を添加することができる。アルカリ成分としては、有機塩基、無機塩基から選択することが出来る。中でも水溶性の無機塩基が、発色性、臭気、記録インクへの溶解性、排水負荷などの点で好ましく、中でも炭酸塩あるいは重炭酸塩が好ましい。また、カリウム塩は、ナトリウム塩に対して種々の印字環境下での射出安定性に優れており好ましい。炭酸カリウム、炭酸水素カリウムを、単独あるいは他のナトリウム塩と併用して用いることが好ましい。
【0079】
記録インクが色剤として酸性染料を用いる場合には、酸成分を添加することができる。酸性成分としては、例えば、有機酸、強酸のアンモニウム塩を挙げることができ、特に、硫酸アンモニウムを好ましく用いることができる。
【0080】
前処理インクには、にじみ防止を目的に、水溶性高分子を添加することができる。
【0081】
水溶性高分子としては、水酸基価が50mgKOH/g未満で、重量平均分子量が1000以上、100000以下であり、かつ25℃の水あるいはアルカリ水溶液に対して10質量%以上の溶解度を有する水溶性高分子が好ましい。
【0082】
本発明に係る水溶性高分子としては、例えば、ポリビニルピロリドン、ポリエチレングリコール、エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合物、グリセリンのポリエチレンオキサイド付加物、グリセリンのポリプロピレン付加物、ジグリセリンのポリエチレンオキサイド付加物、ジグリセリンのポリプロピレン付加物及びアクリル樹脂から選ばれる少なくとも1種であることが好ましい。
【0083】
ポリビニルピロリドンは、分子量と相関する粘性特性値で分類されており、K(コリドン)15、K30、K60(以上、東京化成工業社製)などが好ましく用いることができ、特に、K15、K30がインクジェット射出安定性が高く、かつ、にじみ抑制に効果があり好ましい。前処理インクへの添加量としては、固形分として2〜20質量%添加することが好ましい。
【0084】
ポリエチレングリコールとしては、重量平均分子量が600以上のものを好ましく用いることが出来る。さらに1000以上、4000以下のものが特ににじみ抑制に効果があり好ましい。前処理インクへの添加量としては、2質量%〜20質量%添加することが好ましい。
【0085】
エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合物としては、ポリプロピレングリコールの末端にポリエチレンオキサイドを付加させた構造のもの、ポリエチレングリコールの末端にポリプロピレンオキサイドを付加させた構造のもの、エチレンオキサイド−プロピレノキサイドのランダム共重合体などが挙げられる。
【0086】
ポリプロピレングリコールの末端にポリエチレンオキサイドを付加させた構造のものとしては、ADEKA株式会社のアデカプルロニックL、P、Fシリーズに種々のエチレンオキサイド−プロピレンオキサイド配合比率品や種々の分子量のものが市販されており、それらから選択することが出来る。特に、ポリプロピレングリコール部の分子量が2000以下で水溶性のものを好ましく用いることが出来る。具体的には、L−62、L−64、F−68、F−88,F−108、L−44、L−34、L−23などを挙げることができる。
【0087】
ポリエチレングリコールの末端にポリプロピレンオキサイドを付加させた構造のものとしては、同じくADEKA株式会社のリバースタイプ、17R−2、17R−3、17R−4などから選択して用いることが出来る。
【0088】
エチレンオキサイドプロピレンオキサイド共重合物の前処理インクへの添加量としては、2質量%〜20質量%添加することが好ましい。
【0089】
ジグリセリンのポリエチレンオキサイド付加物としては、坂本薬品工業株式会社のSC−Eシリーズから選択して用いることができる。SC−E450、SC−E750、SC−E1000、SC−E1500などを好ましく用いることが出来る。前処理インクへの添加量としては、2〜20質量%の範囲で添加することが好ましい。
【0090】
ジグリセリンのポリプロピレン付加物としては、坂本薬品工業株式会社のSC−Pシリーズから選択して用いることができ、SC−P400、SC−P750、SC−P1000などを好ましく用いることが出来る。前処理インクへの添加量としては、2〜20質量%の範囲が好ましい。
【0091】
水溶性高分子の前処理インクへの添加量として上記に挙げた好ましい範囲については、その下限未満では十分なにじみ抑制効果が発現できず、上限を越える添加量ではインクジェット射出が不安定になり好ましくない。
【0092】
水溶性高分子は単独で用いても複数種を併用してもよい。
【0093】
前処理インクには、発色性向上のたにヒドロトロピー剤を添加することで、特に、記録インクに酸性染料あるいは反応性染料を用いた場合、プリント後の発色性向上に好ましい効果を発揮する。ヒドロトロピー剤としては、例えば、水溶性のアミド類、スルホンアミド類、尿素、尿素誘導体等が挙げられ、特に尿素が好ましい。
【0094】
ヒドロトロピー剤は、前処理インク中、2質量%以上、40質量%未満の量が好ましい。
【0095】
このほか、前処理インクには、水溶性溶剤を含有することが出来る。以下に示す具体例の有機溶剤を含有することができる。
【0096】
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0097】
本発明において、pH調整剤を含む前処理インクが2種以上用意してあり、プリント条件を判別し、2種の前処理インクを単独で使用する、あるいは複数種を使用する方法を選択するが、2種以上の組成の異なる前処理インクの組成は、以下のように設定するのが好ましい。
【0098】
2種以上の組成の異なる前処理インクにおいて、それぞれpH調整剤の組成が異なることが好ましい。先に述べたように、布帛ごと、あるいは記録インク付与量ごとに、pH調整剤組成及び付与量の好ましい範囲が異なるからである。
【0099】
pH調整剤組成を変える場合、pH調整剤の種類を変えても良いし、pH調整剤濃度を変えてもよい。
【0100】
pH調整剤組成の異なる2種以上の組成の異なる前処理インクの設定方法としては、以下の方法を好ましく用いることができる。
【0101】
また、このとき、同時に水溶性高分子、ヒドロトロピー剤の添加量を変化させる、あるいは、水溶性有機溶剤や界面活性剤の種類や添加量を変えるなどしてもよい。
【0102】
pH調整剤を含む前処理インクとしては、2種以上、8種以下用意することが好ましい。種類が多い場合、より最適な前処理調整が出来る反面、使用するヘッドが多くなること、インクタンク、インク供給ラインも多くなるため、プリンタが大型化しプリンタコストも高くなる。好ましくは、2〜4種用意することが好ましい。
【0103】
なお、同一組成の前処理インクは、単独のヘッドから付与しても良いし、複数のヘッドから供給しても良い。
【0104】
複数の前処理組成物を混合して、一つの前処理インクとして用いることがあるので、混合しても析出や、激しい増粘を起こさないことが好ましい。前処理インク同士を1/1で混合し、24時間放置後も析出変化のないことが好ましい。
【0105】
〔2種以上の組成の異なる前処理インクの使用方法〕
次に、2種以上の組成の異なる前処理インクの使い分けについて説明する。
【0106】
本発明では、前記プリント条件の判別に従い、2種以上の組成の異なる前処理インクを使い分ける。
【0107】
布帛を判別する方法として、あらかじめ布帛を登録し、布帛ごとに2種以上ある前処理インクの選択と、付与量制御を決めておく方法の場合、あらかじめ、布帛ごとに、使用する前処理インク種を決めておくことができる。このとき、布帛によっては、複数の前処理インクをあらかじめ決めておいた任意の量ごとに付与することもできる。
【0108】
布帛を判別する方法として、布帛の記録インク保持量を測定し、その測定結果から前処理インクの選択と、付与量を制御するアルゴリズムを決めておき、それに順ずる方法で行う場合、一定の記録インク保持量を閾値として決めておき、閾値を境に前処理インクを選択することができる。この場合、閾値を境に記録インク保持量の多い側の布帛には、pH調整剤量の多い前処理インクを選択することが好ましい。pH調整剤量の多い前処理インクとは、pH調整剤がアルカリの場合、pHが高いほうのインクを意味する。同じく、pH調整剤が多い前処理インクとは、pH調整剤が酸の場合、pHが低いほうのインクを意味する。
【0109】
布帛を判別する方法として、布帛の厚みを測定する方法がある。その測定結果から前処理インクの選択と、付与量を制御するアルゴリズムを決めておく。この方法に準じて前処理インクを付与する場合には、一定の布帛の厚み閾値として決めておき、閾値を境に前処理インクを選択することができる。この場合、閾値を境に厚い側の布帛には、pH調整剤量の多い前処理インクを選択することが好ましい。pH調整材料の多い前処理インクとは、pH調整剤がアルカリの場合、pHが高いほうのインクを意味する。同じく、pH調整剤が酸の場合、pHが低いほうのインクを意味する。
【0110】
プリント条件の判別として、記録インク付与量を判別するプロセスが挙げられ、単位面積当たりの平均インク量を計算し、インク量に応じて前処理インクの選択と、付与量を制御するアルゴリズムを決めておく。この方法に順じて前処理インクの付与を行う場合には、一定のインク付与量を閾値として決めておき、閾値を境に前処理インクを選択することができる。この場合、閾値を境にインク量が多いときには、pH調整剤量の多い前処理インクを選択することが好ましい。
【0111】
また、本発明においては、2種以上の組成の異なる前処理インクの総付与量を制御することは望ましい。特に、記録インクが付与されるプリント部に対応して、前処理インクの総付与量を制御することは望ましい。2種以上の組成の異なる前処理インクの総付与量としては、5ml/m以上付与することが好ましく、更には10ml/m以上付与することが好ましい。
【0112】
《記録インク》
本発明に適用可能な記録インクは、色剤のほか水溶性有機溶剤、各種添加剤を含有することができる。
【0113】
〔色剤〕
〈染料〉
記録インクが含有する色剤としては、反応性染料、酸性染料、分散染料、顔料などを用いることができる。
【0114】
各色剤の含有量としては、特に制限はないが、例えば、反応性染料の含有量としては、3質量%以上、20質量%未満であることが好ましく、更には、5質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。特に、同一色の水性インクで最も染料濃度の高い水性インク中の反応性染料の含有量は、10質量%以上、15質量%未満であることが好ましい。
【0115】
以下、本発明に係る記録インクに適用可能な染料の具体例を列挙するが、本発明では、これら例示する染料にのみ限定されるものではない。
【0116】
本発明で用いることのできる反応性染料としては、例えば、アゾ染料、メチン染料、アゾメチン染料、キサンテン染料、キノン染料、フタロシアニン染料、トリフェニルメタン染料、ジフェニルメタン染料等を挙げることができる。
【0117】
具体的には、
C.I.Reactive Yellow2、3、7、15、17、18、22、23、24、25、27、37、39、42、57、69、76、81、84、85、86、87、92、95、102、105、111、125、135、136、137、142、143、145、151、160、161、165、167、168、175、176、
C.I.Reactive Orange1、4、5、7、11、12、13、15、16、20、30、35、56、64、67、69、70、72、74、82、84、86、87、91、92、93、95、107、
C.I.Reactive Red2、3、3:1、5、8、11、21、22、23、24、28、29、31、33、35、43、45、49、55、56、58、65、66、78、83、84、106、111、112、113、114、116、120、123、124、128、130、136、141、147、158、159、171、174、180、183、184、187、190、193、194、195、198、218、220、222、223、226、228、235、
C.I.Reactive Violet1、2、4、5、6、22、23、33、36、38、
C.I.Reactive Blue2、3、4、7、13、14、15、19、21、25、27、28、29、38、39、41、49、50、52、63、69、71、72、77、79、89、104、109、112、113、114、116、119、120、122、137、140、143、147、160、161、162、163、168、171、176、182、184、191、194、195、198、203、204、207、209、211、214、220、221、222、231、235、236、
C.I.Reactive Green8、12、15、19、21、
C.I.Reactive Brown2、7、9、10、11、17、18、19、21、23、31、37、43、46、
C.I.Reactive Black5、8、13、14、31、34、39等が挙げられる。
【0118】
本発明に適用可能な酸性染料としては、
C.I.Acid Yellow1、3、11、17、18、19、23、25、36、38、40、40:1、42、44、49、59、59:1、61、65、67、72、73、79、99、104、159、169、176、184、193、200、204、207、215、219219:1、220、230、232、235、241、242、246、
C.I.Acid Orange3、7、8、10、19、22、24、51、51S、56、67、74、80、86、87、88、89、94、95、107、108、116、122、127、140、142、144、149、152、156、162、166、168、
C.I.Acid Red1、6、8、9、13、18、27、35、37、52、54、57、73、82、88、97、97:1、106、111、114、118、119、127、131、138、143、145、151、183、195、198、211、215、217、225、226、249、251、254、256、257、260、261、265、266、274、276、277、289、296、299、315、318、336、337、357、359、361、362、364、366、399、407、415、
C.I.Acid Vioret17、19、21、42、43、47、48、49、54、66、78、90、97、102、109、126、
C.I.Acid Blue 1、7、9、15、23、25、40、61:1、62、72、74、80、83、90、92、103、104、112、113、114、120、127、127:1、128、129、138、140、142、156、158、171、182、185、193、199、201、203、204、205、207、209、220、221、224、225、229、230、239、258、260、264、277:1、278、279、280、284、290、296、298、300、317、324、333、335、338、342、350、
C.I.Acid Green 9、12、16、19、20、25、27、28、40、43、56、73、81、84、104、108、109、
C.I.Acid Brown 2、4、13、14、19、28、44、123、224、226、227、248、282、283、289、294、297、298、301、355、357、413、
C.I.Acid Black 1、2、3、24、24:1、26、31、50、52、52:1、58、60、63、63S、107、109、112、119、132、140、155、172、187、188、194、207、222、
本発明に適用可能な分散染料としては、
C.I.Disperse Yellow3、4、5、7、9、13、23、24、30、33、34、42、44、49、50、51、54、56、58、60、63、64、66、68、71、74、76、79、82、83、85、86、88、90、91、93、98、99、100、104、108、114、116、118、119、122、124、126、135、140、141、149、160、162、163、164、165、179、180、182、183、184、186、192、198、199、202、204、210、211、215、216、218、224、227、231、232、
C.I.Disperse Orange1、3、5、7、11、13、17、20、21、25、29、30、31、32、33、37、38、42、43、44、45、46、47、48、49、50、53、54、55、56、57、58、59、61、66、71、73、76、78、80、89、90、91、93、96、97、119、127、130、139、142、
C.I.Disperse Red1、4、5、7、11、12、13、15、17、27、43、44、50、52、53、54、55、56、58、59、60、65、72、73、74、75、76、78、81、82、86、88、90、91、92、93、96、103、105、106、107、108、110、111、113、117、118、121、122、126、127、128、131、132、134、135、137、143、145、146、151、152、153、154、157、159、164、167、169、177、179、181、183、184、185、188、189、190、191、192、200、201、202、203、205、206、207、210、221、224、225、227、229、239、240、257、258、277、278、279、281、288、298、302、303、310、311、312、320、324、328、
C.I.Disperse Violet 1、4、8、23、26、27、28、31、33、35、36、38、40、43、46、48、50、51、52、56、57、59、61、63、69、77、
C.I.Disperse Green9、
C.I.Disperse Brown1、2、4、9、13、19
C.I.Disperse Blue3、7、9、14、16、19、20、26、27、35、43、44、54、55、56、58、60、62、64、71、72、73、75、79、81、82、83、87、91、93、94、95、96、102、106、108、112、113、115、118、120、122、125、128、130、139、141、142、143、146、148、149、153、154、158、165、167、171、173、174、176、181、183、185、186、187、189、197、198、200、201、205、207、211、214、224、225、257、259、267、268、270、284、285、287、288、291、293、295、297、301、315、330、333、
C.I.Disperse Black1、3、10、24等が挙げられる。
【0119】
分散染料を用いたインクジェット捺染において、高温処理で発色させる場合は、機械や布地の白場に染料が昇華することで汚染の原因とならないために、昇華堅牢度のよい分散染料を選定することが好ましい。
【0120】
〈顔料〉
本発明に係る記録インクにおいては、色剤として顔料を用いることができる。
【0121】
本発明に適用可能な顔料としては、
カーボンブラック、
C.I.Pigment Yellow1、3、12、13、14、16、17、43、55、74、81、83、109、110、120、138、
C.I.Pigment Orange13、16、34、43、
C.I.Pigment Red2、5、8、12、17、22、23、41、112、114、122、123、146、148、149、150、166、170、220、238、245、258、
C.I.Pigment Violet19、23、
C.I.Pigment Blue15、15:1、15:3、15:5、29、
C.I.Pigment Brown 22、
C.I.Pigment Black 1、7、
C.I.Pigment White 6、
〔水溶性溶剤〕
本発明に係る記録インクに用いることのできる水溶性溶剤としては、以下に示す具体例の有機溶剤を含有することができる。
【0122】
アルコール類(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、t−ブタノール)、多価アルコール類(例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、ポリエチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、ポリプロピレングリコール、ブチレングリコール、ヘキサンジオール、ペンタンジオール、グリセリン、ヘキサントリオール、チオジグリコール)、アミン類(例えば、エタノールアミン、ジエタノールアミン、トリエタノールアミン、N−メチルジエタノールアミン、N−エチルジエタノールアミン、モルホリン、N−エチルモルホリン、エチレンジアミン、ジエチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、テトラエチレンペンタミン、ポリエチレンイミン、ペンタメチルジエチレントリアミン、テトラメチルプロピレンジアミン)、アミド類(例えば、ホルムアミド、N、N−ジメチルホルムアミド、N、N−ジメチルアセトアミド等)、複素環類(例えば、2−ピロリドン、N−メチル−2−ピロリドン、シクロヘキシルピロリドン、2−オキサゾリドン、1、3−ジメチル−2−イミダゾリジノン等)、スルホキシド類(例えば、ジメチルスルホキシド)等が挙げられる。
【0123】
〔水溶性高分子〕
本発明に係る記録インクは、水溶性高分子を含有することが、にじみ抑制の観点から好ましい。水溶性高分子としては、酸価が100mgKOH/g以上、300mgKOH/g以下であり、かつ重量平均分子量が3000以上、30000以下であることが好ましい。
【0124】
記録インクに適用可能な高分子化合物としては、上記前処理インクで説明した水溶性高分子の中で、酸価及び重量平均分子量として、上記で規定する要件を、満たすものを用いることができる。
【0125】
〔その他の添加剤〕
本発明に係る記録インクにおいては、インクの長期保存安定性を保つため、防腐剤、防黴剤をインク中に添加することができる。防腐剤、防黴剤としては、例えば、芳香族ハロゲン化合物(例えば、Preventol CMK)、メチレンジチオシアナート、含ハロゲン窒素硫黄化合物、1,2−ベンズイソチアゾリン−3−オン(例えば、PROXEL GXL)などが挙げられる。
【0126】
《布帛》
本発明に使用することができる布帛または編布を構成する繊維素材としては、絹、ナイロン、羊毛、アクリル繊維、ポリウレタン、木綿、麻、レーヨンポリウレタン、ポリエステル、アセテート等を挙げることができ、これらの繊維は、織物、編布、不織布等いずれの形態にしたものでもよい。
【実施例】
【0127】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。なお、実施例において「部」あるいは「%」の表示を用いるが、特に断りがない限り「質量部」あるいは「質量%」を表す。
【0128】
実施例1
《前処理インクの調製》
〔前処理インクPTB1の調製〕
下記の各添加剤を添加、混合、溶解して、前処理インクPTB1を調製した。
【0129】
炭酸ナトリウム 0.7部
尿素 12.0部
エチレングリコール(EG) 10.0部
ジレチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 5.0部
プルロニックF88(株式会社ADEKA製) 3.0部
イオン交換水 69.3部
〔前処理インクPTB2の調製〕
下記の各添加剤を添加、混合、溶解して、前処理インクPTB2を調製した。
【0130】
炭酸ナトリウム 3.0部
尿素 12.0部
エチレングリコール(EG) 10.0部
ジレチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 5.0部
プルロニックF88(株式会社ADEKA製) 3.0部
イオン交換水 67.0部
《記録インクセットの調製:反応性染料》
(イエローインクY1の調製)
C.I.リアクティブイエロー95 10質量%
エチレングリコール 15質量%
プロピレングリコール 20質量%
グリセリン 3質量%
ジョンクリル70J(BASF社製水溶性樹脂) 3質量%
以上の各添加剤を混合した後、イオン交換水で100質量%に仕上げて、イエローインクY1を調製した。
【0131】
(マゼンタインクM1、シアンインクC1、ブラックインクBk1、ライトマゼンタインクLM1、ライトシアンインクLC1の調製)
上記イエローインクY1の調製において、色材としてC.I.リアクティブイエロー95(10質量%)に代えて、それぞれC.I.リアクティブレッド24(12質量%)、C.I.リアクティブブルー72(10質量%)、C.I.リアクティブブラック39(11質量%)、C.I.リアクティブレッド24(3.5質量%)、C.I.リアクティブブルー72(3質量%)を用いた以外は同様にして、マゼンタインクM1、シアンインクC1、ブラックインクBk1、ライトマゼンタインクLM1、ライトシアンインクLC1を調製した。
【0132】
《テキスタイルプリントの作成》
〔試料1〜15の作成〕
(テキスタイルプリント装置)
図3に記載のテキスタイルプリント装置を用いて、下記に示す各布帛に対し、ヘッド5により前処理インクを付与した後に、温風付与手段6により乾燥し、次いで、ヘッド7により記録インクセットを吐出し、Y、M、C、B、G、R、混合Bk(Y、M、C各100%)の最大濃度で、半径30mmの水玉(真円、塗りつぶし)及び、1辺30mmの正方形(塗りつぶし)、デザインプリント柄模様3種を複数描画する画像を、連続して描画した。
【0133】
各布帛Pを繰り出し部(不図示)より搬送し、無端基材ベルト上に粘着手段を有する粘着性ベルト1で布帛Pを保持、搬送しながら、ヘッド5より布帛P上に均一に前処理インクを所定量付与した。ヘッド5は、4つのヘッドより構成され、各ヘッドは液滴量14pl、駆動周波数10kHz、のピエゾ形ヘッド(ノズル数512)であり、一つの前処理インクに対し2基使用し、前処理インクPTB1、PTB2をそれぞれ2基のヘッドに装填した。また、各ヘッドの最大インク吐出量(100%Duty)を11ml/mとなるように調整した。すなわち、一つの前処理インクに対しては200%Duty(22ml/m)まで選択できる条件とした。
【0134】
また、ヘッド5の下部で布帛P背面と接触する位置に、内部に発熱体を備え、布帛の全巾をカバーする大きさのホットプレート10を配置し、布帛を55℃に加熱した。
【0135】
ヘッド5とヘッド7との間には、内部にファン6A及び発熱体6Bを備えた温風付与手段6を設け、搬送する布帛の表面温度が55℃になるように制御して、前処理インクの乾燥を行った。
【0136】
画像記録に用いるヘッド7は、6基のヘッドから構成され、それぞれのインク(Y1、M1、C1、Bk1、LM1、LC1)に対応して、1基ずつ使用した。これらのヘッドは、液滴量14pl、駆動周波数10kHz、のピエゾ形ヘッド(ノズル数512)である。
【0137】
また、ヘッド5、ヘッド7を構成する各ヘッドとも、720dpi×720dpiの解像度で、8パス印字モードの同条件で記録した。なお、本発明でいうdpiとは、2.54cmあたりのドット数を表す。
【0138】
(前処理インク選択のアルゴリズム)
(プリント条件A:試料1〜5)
プリント条件を判別し、布帛の種類情報に基づいて、予め表1に記載のように設定した、1)2種の前処理インクの選択、2)各前処理インクの付与量(Duty%)、3)総前処理インクの付与量(ml/m)の条件に従って、前処理液の付与を行った。
【0139】
(プリント条件B:試料6〜10)
前処理液PTB2のみを用いて、表1に記載の布帛と前処理インクの付与量(Duty%)の組み合わせで、布帛上に前処理液の付与を行った。
【0140】
(プリント条件C:試料11〜15)
前処理液PTB1のみを用いて、表1に記載の布帛と前処理インクの付与量(Duty%)の組み合わせで、布帛上に前処理液の付与を行った。
【0141】
〔布帛の種類〕
布帛1:シルク薄手(11匁以下)
布帛2:シルク厚手(12匁以上)
布帛3:綿薄手
布帛4:綿ニット
布帛5:綿厚手
〔後処理〕
上記印字画像をプリントした後、布帛を粘着性ベルト1から剥離し、剥離した布帛を乾燥機に入れて、70℃の送風乾燥条件で乾燥した後、ロール上に一旦巻き取った。次いで、巻き取ったプリント物を、捺染用スチーマーにて加熱発色した。その後、水洗、湯洗、ソーピング、乾燥を行って、試料1〜15を得た。
【0142】
《プリント画像の評価》
〔発色性の評価〕
Y、M、C、K、B、G、R、混合Bk(Y、M、C各100%)のすべての濃度を測定した。
【0143】
比較として、下記前処理液を調製し、布帛にマングルを使用して付与後、乾燥することで比較布帛を別途作製し、この比較布帛にプリントした試料の発色濃度の総計との比較評価を行った。
【0144】
〈反応染料用 比較布帛用前処理液〉
炭酸ナトリウム 2質量%
ポリビニルピロリドン(K30、東京応化工業社製) 10質量%
尿素 5質量%
上記各添加剤を混合、溶解した後、イオン交換水で100質量%に仕上げた。
【0145】
5:比較布帛濃度に対して、同等以上の発色濃度
4:比較布帛濃度に対して、96%〜99%の発色濃度
3:比較布帛濃度に対して、91%〜95%の発色濃度
2:比較布帛濃度に対しての86%〜90%発色濃度
1:比較布帛濃度に対しての85以下の発色濃度
〔にじみ耐性の評価〕
上記方法により形成した1辺30mmの正方形(塗りつぶし)の境界部分のにじみの有無を目視観察し、下記の基準に従って、にじみ耐性を評価した。
【0146】
5:まったくにじみがない
4:YMCコンポジットKベタ画像(33ml/m)で、画像周辺部に若干のにじみが見られる
3:YMCコンポジットKベタ画像(33ml/m)で、画像周辺部でにじみが見られるが、B、G、Rの二次色ベタ画像(22ml/m)ではにじみはほとんどない
2:B、G、Rの二次色ベタ画像(22ml/m)で画像周辺部でもにじみが見られる
1:Y、M、C単色画像(11ml/m)でも画像周辺部でもにじみが見られる
〔染着均一性の評価〕
各プリントを縦及び横に引っ張った際の未然着部の有無を目視観察し、下記の基準に従って染色均一性の評価を行った。
【0147】
3:布帛を縦、横に引っ張っても未染着部分が見えず均一に染まっている
2:布帛を縦、横に引っ張ると、部分的に未染着部分があるが、引っ張りを戻すと未染着部分は見えなくなる
1:布帛を縦、横に引っ張ると、未染着部分が目立ち、引っ張りを戻しても未染着部分が少し確認される
以上により得られた結果を、表1に示す。
【0148】
【表1】

【0149】
表1に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する布帛の種類情報に従って、2種の前処理インクの付与条件を制御したプリント条件Aは、すべての布帛に対して、発色濃度が高く、にじみや染めムラも見られない高品位のプリントを得ることができた。
【0150】
一方、比較であるプリント条件B、Cでは、1種類のみ前処理インクを使用して、布帛に応じて付与量のみを変化させて対応しており、布帛によって、発色不良があったり、にじみや染めムラが発生してしまい、すべての布帛に対し高品位のプリントを得ることができなかった。
【0151】
実施例2
《前処理インクの調製》
〔前処理インクPTB3の調製〕
下記の各添加剤を添加、混合、溶解して、前処理インクPTB3を調製した。
【0152】
炭酸水素ナトリウム 2.0部
尿素 12.0部
エチレングリコール(EG) 10.0部
ジレチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 5.0部
ポリビニルピロリドン(K30、東京応化工業社製) 3.5部
イオン交換水 67.5部
〔前処理インクPTB4の調製〕
下記の各添加剤を添加、混合、溶解して、前処理インクPTB4を調製した。
【0153】
炭酸水素ナトリウム 4.0部
尿素 12.0部
エチレングリコール(EG) 10.0部
ジレチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 5.0部
ポリビニルピロリドン(K30、東京応化工業社製) 3.5部
イオン交換水 65.5部
《記録インクセットの調製:反応性染料》
実施例1にて調製した各色インクを用いた。
【0154】
《テキスタイルプリントの作成》
〔試料16〜27の作成〕
(テキスタイルプリント装置)
実施例1と同様の図3に記載のテキスタイルプリント装置を用いた。
【0155】
(前処理インク選択のアルゴリズム)
(プリント条件D:試料16〜19)
プリント条件を判別し、布帛の記録インク保持量(ml/m)情報に基づいて、予め表2に記載のように設定した、1)2種の前処理インクの単独あるいは2種選択、2)各前処理インクの付与量(Duty%)、3)総前処理インクの付与量(ml/m)の条件に従って、前処理液の付与を行った。
【0156】
(プリント条件E:試料20〜23)
前処理液PTB3のみを用いて、表2に記載の記録インク保持量(ml/m)情報に基づいて、前処理インクの付与量(Duty%)で、布帛上に前処理液の付与を行った。
【0157】
(プリント条件F:試料24〜27)
前処理液PTB4のみを用いて、表2に記載の記録インク保持量(ml/m)情報に基づいて、前処理インクの付与量(Duty%)で、布帛上に前処理液の付与を行った。
【0158】
〔布帛の種類〕
布帛6:綿天竺製で、記録インク保持量が、30ml/m未満の布帛
布帛7:綿天竺製で、記録インク保持量が、30ml/m以上、50ml/m未満の範囲にある布帛
布帛8:綿天竺製で、記録インク保持量が、50ml/m以上、70ml/m未満の範囲にある布帛
布帛9:綿天竺製で、記録インク保持量が、70ml/m以上、150ml/m未満の範囲にある布帛
〔後処理〕
上記印字画像をプリントした後、布帛を粘着性ベルト1から剥離し、剥離した布帛を乾燥機に入れて、70℃の送風乾燥条件で乾燥した後、ロール上に一旦巻き取った。次いで、巻き取ったプリント物を、捺染用スチーマーにて加熱発色した。その後、水洗、湯洗、ソーピング、乾燥を行って、試料16〜27を得た。
【0159】
《プリント画像の評価》
実施例1に記載の方法と同様にして、発色性、にじみ耐性及び染着均一性の評価を行い、得られた結果を表2に示す。
【0160】
【表2】

【0161】
表2に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する布帛の記録インク保持量(ml/m)情報に従って、2種の前処理インクの付与条件を制御したプリント条件Dは、すべての布帛に対して、発色濃度が高く、にじみや染めムラも見られない高品位のプリントを得ることができた。
【0162】
一方、比較であるプリント条件E、Fでは、1種類のみ前処理インクを使用して、布帛の記録インク保持量(ml/m)情報に応じて付与量のみを変化させて対応しており、記録インク保持量(ml/m)の異なる布帛によって、発色不良が発生し、にじみや染めムラが発生してしまい、すべての布帛に対し高品位のプリントを得ることができなかった。
【0163】
実施例3
《前処理インクの調製》
〔前処理インクPTB5の調製〕
下記の各添加剤を添加、混合、溶解して、前処理インクPTB5を調製した。
【0164】
炭酸カリウム 2.0部
尿素 12.0部
エチレングリコール(EG) 10.0部
ジレチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 5.0部
プルロニックF88(株式会社ADEKA製) 3.0部
イオン交換水 68.0部
〔前処理インクPTB6の調製〕
下記の各添加剤を添加、混合、溶解して、前処理インクPTB6を調製した。
【0165】
炭酸カリウム 8.0部
尿素 12.0部
エチレングリコール(EG) 10.0部
ジレチレングリコールモノブチルエーテル(DEGBE) 5.0部
プルロニックF88(株式会社ADEKA製) 3.0部
イオン交換水 62.0部
《記録インクセットの調製:反応性染料》
実施例1にて調製した各色インクを用いた。
【0166】
《テキスタイルプリントの作成》
〔試料28〜31の作成〕
(テキスタイルプリント装置)
実施例1と同様の図3に記載のテキスタイルプリント装置を用いた。
【0167】
(前処理インク選択のアルゴリズム)
(プリント条件G:試料28〜31)
プリント条件を判別し、布帛の厚み情報に基づいて、予め表3に記載のように設定した、1)2種の前処理インクの単独あるいは2種選択、2)各前処理インクの付与量(Duty%)、3)総前処理インクの付与量(ml/m)の条件に従って、前処理液の付与を行った。
【0168】
〔布帛の種類〕
布帛10:綿製で、厚みが150μm未満の布帛
布帛11:綿製で、厚みが150μm以上、400μm未満の範囲にある布帛
布帛12:綿製で、厚みが400μm以上、1000μm未満の範囲にある布帛
布帛13:綿製で、厚みが1000μm以上、7000μm未満の範囲にある布帛
〔後処理〕
上記印字画像をプリントした後、布帛を粘着性ベルト1から剥離し、剥離した布帛を乾燥機に入れて、70℃の送風乾燥条件で乾燥した後、ロール上に一旦巻き取った。次いで、巻き取ったプリント物を、捺染用スチーマーにて加熱発色した。その後、水洗、湯洗、ソーピング、乾燥を行って、試料28〜31を得た。
【0169】
《プリント画像の評価》
実施例1に記載の方法と同様にして、発色性、にじみ耐性及び染着均一性の評価を行い、得られた結果を表3に示す。
【0170】
【表3】

【0171】
表3に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する布帛の厚み(μm)情報に従って、2種の前処理インクの付与条件を制御したプリント条件Gは、様々な厚さの布帛に対して、発色濃度が高く、にじみや染めムラも見られない高品位のプリントを得ることができることが分かる。
【0172】
実施例4
《前処理インクの調製》
実施例3で調製した前処理インクPTB5、PTB6を用いた。
【0173】
《記録インクセットの調製:反応性染料》
実施例1にて調製した各色インクを用いた。
【0174】
《テキスタイルプリントの作成》
〔試料28〜31の作成〕
(テキスタイルプリント装置)
実施例1と同様の図3に記載のテキスタイルプリント装置を用いた。
【0175】
(前処理インク選択のアルゴリズム)
(プリント条件H:試料32〜43)
プリント条件を判別し、布帛の厚み情報及び5mm×5mm範囲ごとの平均記録インク付与量(%Duty)情報に基づいて、予め表4に記載のように設定した、1)2種の前処理インクの単独あるいは2種選択、2)各前処理インクの付与量(Duty%)の条件に従って、前処理液の付与を行った。
【0176】
(プリント条件I:試料44〜55)
前処理液PTB5のみを用いて、表4に記載の布帛の厚み情報及び5mm×5mm範囲ごとの平均記録インク付与量(%Duty)情報に基づいて、前処理インクの付与量(Duty%)で、布帛上に前処理液の付与を行った。
【0177】
(プリント条件J:試料56〜67)
前処理液PTB6のみを用いて、表4に記載の布帛の厚み情報及び5mm×5mm範囲ごとの平均記録インク付与量(%Duty)情報に基づいて、前処理インクの付与量(Duty%)で、布帛上に前処理液の付与を行った。
【0178】
〔布帛の種類〕
実施例3に記載の布帛10〜13を用いた。
【0179】
〔後処理〕
上記印字画像をプリントした後、布帛を粘着性ベルト1から剥離し、剥離した布帛を乾燥機に入れて、70℃の送風乾燥条件で乾燥した後、ロール上に一旦巻き取った。次いで、巻き取ったプリント物を、捺染用スチーマーにて加熱発色した。その後、水洗、湯洗、ソーピング、乾燥を行って、試料32〜67を得た。
【0180】
《プリント画像の評価》
実施例1に記載の方法と同様にして、発色性、にじみ耐性及び染着均一性の評価を行い、得られた結果を表4に示す。
【0181】
【表4】

【0182】
表4に記載の結果より明らかなように、本発明で規定する布帛の厚み(μm)情報及び平均記録インク付与量(%Duty)情報に従って、2種の前処理インクの付与条件を制御したプリント条件Hは、様々な厚さの布帛と様々な平均記録インク付与量条件に対して、発色濃度が高く、にじみや染めムラも見られない高品位のプリントを得ることができた。
【0183】
一方、比較であるプリント条件I、Jでは、1種類のみ前処理インクを使用して、様々の布帛の厚み及び平均記録インク付与量(%Duty)条件に応じて付与量を変化させて対応させたが、全ての条件をカバーすることができず、一部で発色不良があり、にじみや染めムラも発生してしまい、すべての条件に対し高品位のプリントを得ることができなかった。
【0184】
実施例5
前処理インクとして酸性成分を含む前処理液を用い、また、酸性染料を含むインクを用いて、前処理インクとして、上記実施例1〜4に記載の各条件と同様にして評価を行った結果、本発明で規定する条件で作成したプリント試料は、実施例1〜4のそれぞれ表1〜表4に記載したのと同様の結果を得ることができた。
【図面の簡単な説明】
【0185】
【図1】テキスタイルプリント装置の構成の一例を示す部分概略図である。
【図2】テキスタイルプリント装置の他の構成を示す部分概略図である。
【図3】テキスタイルプリント装置の他の構成を示す部分概略図である。
【符号の説明】
【0186】
1 粘着性ベルト
2 サポートロール
3 搬送ロール
4 ニップロール
5 前処理インク吐出用ヘッド
6 温風付与手段
7 記録インク吐出用ヘッド
10 ホットプレート

【特許請求の範囲】
【請求項1】
色剤、水溶性有機溶剤及び水を含有する記録インクと、前処理インクとを用いて布帛にプリントするテキスタイルプリント方法であって、組成の異なる2種以上の前処理インクを用意し、該2種以上の組成の異なる前処理インクを単独または複数種使用する方法および付与量を選択して、布帛に付与することを特徴とするテキスタイルプリント方法。
【請求項2】
前記記録インクを付与する画像領域に付与する前記前処理インクの付与量の総計が、90%Duty以上、300%Duty未満であることを特徴とする請求項1に記載のテキスタイルプリント方法。
【請求項3】
前記記録インクを付与する画像領域に付与する前記前処理インクの付与量の総計が、10ml/m以上、50ml/m未満であることを特徴とする請求項1に記載のテキスタイルプリント方法。
【請求項4】
前記記録インクが含有する色剤が反応性染料であって、前記2種以上の組成の異なる前処理インクが、pH調整剤としてアルカリ成分を含有し、かつ少なくとも2種の組成の異なる前処理インクのpH調整剤濃度が異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のテキスタイルプリント方法。
【請求項5】
前記記録インクが含有する色剤が酸性染料であって、前記2種以上の組成の異なる前処理インクが、pH調整剤として酸性成分を含有し、かつ2種以上の組成の異なる前処理インクのpH調整剤濃度が異なることを特徴とする請求項1から3のいずれか1項に記載のテキスタイルプリント方法。
【請求項6】
前処理インクの少なくとも1種が水溶性高分子を含有し、該水溶性高分子が、水酸基価が50mgKOH/g未満で、重量平均分子量が1000以上、100000以下で、かつ25℃の水あるいはアルカリ水溶液に対して10質量%以上の溶解度を有することを特徴とする請求項1から5のいずれか1項に記載のテキスタイルプリント方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2010−143175(P2010−143175A)
【公開日】平成22年7月1日(2010.7.1)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−325205(P2008−325205)
【出願日】平成20年12月22日(2008.12.22)
【出願人】(305002394)コニカミノルタIJ株式会社 (317)
【Fターム(参考)】