説明

テトラサイクリン化合物の塩および多型体

テトラサイクリン化合物応答状態の処置において有用な化合物の塩および多型体を含む結晶形態を本明細書において提供する。本結晶化合物は、一般に細菌感染症および新生物などの状態および障害の治療または予防にとって有用であるのみならず、テトラサイクリン化合物に関する他の公知の用途にとって有用である。


【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願
本出願は、35 U.S. C. 119(e)の下で、2008年5月23日に提出された同時係属中の米国特許仮出願第61/128,712号に対する優先権の恩典を主張し、その全内容は、参照により本明細書に組み入れられる。
【背景技術】
【0002】
発明の背景
テトラサイクリン抗生物質の開発は、殺菌および/または静菌組成物を産生することができる微生物の証拠を求めて、世界の多くの地域から収集された土壌標本を系統立ってスクリーニングした、直接の結果であった。これらの新規化合物の最初のものは、クロルテトラサイクリンの名称で1948年に紹介された。2年後、オキシテトラサイクリンが利用できるようになった。これらの化合物の化学構造の解明によりその類似性が確認され、1952年にこのグループの第3のメンバーであるテトラサイクリンを産生するための分析的基礎がもたらされた。初期のテトラサイクリンに存在した環付着メチル基を有しない新規テトラサイクリン化合物ファミリーが1957年に調製され、1967年に市販されるようになり;1972年にはミノサイクリンが用いられるようになった。
【0003】
近年、様々な治療条件および投与経路において有効である新規テトラサイクリン抗生物質組成物の開発に向けて研究努力が集中している。新規テトラサイクリン類似体も同様に研究されており、これらは当初導入されたテトラサイクリン化合物と等しいか、またはそれより有効であることが判明する可能性がある。例には、米国特許第2,980,584号(特許文献1);第2,990,331号(特許文献2);第3,062,717号(特許文献3);第3,165,531号(特許文献4);第3,454,697号(特許文献5);第3,557,280号(特許文献6);第3,674,859号(特許文献7);第3,957,980号(特許文献8);第4,018,889号(特許文献9);第4,024,272号(特許文献10);および第4,126,680号(特許文献11)が含まれる。これらの特許は、薬学的に活性なテトラサイクリンおよびテトラサイクリン類似体組成物の範囲の代表である。
【0004】
歴史的に、その最初の開発および導入後まもなく、テトラサイクリンは、リケッチア;多数のグラム陽性およびグラム陰性細菌;ならびに性病性リンパ肉芽腫、封入体結膜炎、およびオウム病の原因となる物質に対して薬理学的に非常に有効であることが見いだされた。ゆえに、テトラサイクリンは、「広域スペクトル」抗生物質として知られるようになった。そのインビトロ抗菌活性、実験的感染症における有効性、および薬理学的特性がその後確立されたことにより、1つのクラスとしてのテトラサイクリンは、治療目的のために急速に広く用いられるようになった。しかし、主要なおよび軽微な病気および疾患の双方に対してテトラサイクリンが広範に使用されたことによって、片利共生および病原性(たとえば、肺炎球菌(pneumococci)およびサルモネラ(Salmonella))双方の高度感受性の細菌種においても、直接これらの抗生物質に対する抵抗性の出現に至った。テトラサイクリン抵抗性生物の出現によって、選択される抗生物質としてのテトラサイクリンおよびテトラサイクリン類似体組成物の使用は一般的に減少した。
【0005】
各々の薬学的化合物は、最適な治療血中濃度および致死濃度を有する。化合物の生物学的利用率は、理想の血中レベルを得るために必要な、薬物の製剤における投与量の強度を決定する。薬物が、生物学的利用率が異なる2つまたはそれより多い多型体として結晶化することができる場合、最適な用量は、製剤に存在する多型体に依存するであろう。いくつかの薬物は、治療濃度と致死濃度とのあいだに狭い幅を示す。たとえば、クロラムフェニコール-3-パルミテート(CAPP)は、少なくとも3つの多型体形態と1つの非晶質形態で結晶化することが知られている、広域スペクトルの抗生物質である。最も安定な形態であるAが市販されている。この多型体と、別の安定形態であるBとのあいだの生物活性の差は8倍であり、したがって、加工および/または保存の際の変化によりB型として意図されずに投与されると、化合物の致死的な過量投与の可能性が起こる。ゆえに、米国食品医薬品局などの規制当局は、固体投与剤形での活性成分の多型体含有量に対して厳密な管理を行い始めた。一般的に、多型体形態で存在する薬物に関して、純粋な、熱力学的に好ましい多型体以外の物質が市販されている場合、規制当局はバッチ毎のモニタリングを要求する可能性がある。したがって、他の動態学的に好ましい多型体を実質的に含まない、その最も熱力学的に安定な多型体の状態で純粋な薬物を産生して販売することは、医学的および商業的理由の双方にとって重要となる。
【0006】
例として、化合物の塩形態、および遊離化合物または塩の多型体形態は、薬学技術分野において、たとえば溶解度、溶解速度、生物学的利用率、化学および物理的安定性、流動性、フラクタビリティ(fractability)、ならびに圧縮可能性のみならず、化合物に基づく薬物の安全性および有効性に影響を及ぼすことが知られている(たとえば、Knapman, Modern Drug Discovery, 2000, 3(2): 53(非特許文献1)を参照されたい)。
【0007】
よって、最適な物理および化学特性を有する化合物の塩形態または遊離塩基を同定することは、薬剤としてのテトラサイクリン化合物の開発を進展させるであろう。そのような物理および化学特性の最も有用なものには次のものが含まれる:容易で再現可能な調製、結晶性、非吸湿性、水溶性、可視光および紫外光に対する安定性、温度および湿度の加速安定性条件下での低い分解速度、異性体形態間での低い異性体化速度、およびヒトに長期間投与した場合の安全性。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【特許文献1】米国特許第2,980,584号
【特許文献2】第2,990,331号
【特許文献3】第3,062,717号
【特許文献4】第3,165,531号
【特許文献5】第3,454,697号
【特許文献6】第3,557,280号
【特許文献7】第3,674,859号
【特許文献8】第3,957,980号
【特許文献9】第4,018,889号
【特許文献10】第4,024,272号
【特許文献11】第4,126,680号
【非特許文献】
【0009】
【非特許文献1】Knapman, Modern Drug Discovery, 2000, 3(2): 53
【発明の概要】
【0010】
1つの態様において、本発明は、少なくとも部分的に、アミノアルキルテトラサイクリン化合物である化合物1:

(4S,4AS,5AR,12AS)-4-7-ビス(ジメチルアミノ)-9{[(2,2-ジメチルプロピル)アミノ]メチル}-3,10,12,12A-テトラヒドロキシ-1,11-ジオキソ-1,4,4A,5,5A,6,11,12A-オクタヒドロテトラセン-2-カルボキサミド(9-(2,2-ジメチル-プロピル-アミノメチル)-ミノサイクリン)の、結晶形態などの安定な固体状形態に関する。
【0011】
別の態様において、本発明は、少なくとも部分的に、化合物1のHCl塩に関する。別の態様において、本発明は、少なくとも部分的に、化合物1のトシレート(p-トルエンスルホン酸)塩に関する。別の態様において、本発明は、少なくとも部分的に、化合物1のメシレート塩に関する。
【0012】
別の態様において、本発明は、少なくとも部分的に、化合物1の安定な結晶形態に関する。
【0013】
別の態様において、本発明は、少なくとも部分的に、化合物1の塩の安定な結晶形態に関する。たとえば、塩の安定な結晶形態は、化合物1のトシレート、塩酸、またはメシレート塩の安定な結晶形態である。
【0014】
別の態様において、本発明は、少なくとも部分的に、化合物1の多型体に関する。
【0015】
別の態様において、本発明は、少なくとも部分的に、化合物1の塩の多型体に関する。
【0016】
たとえば、本発明は、化合物1のトシレート塩の多型体に関する。本発明は、部分的に、化合物1の1型多型体に関する。本発明は、部分的に、化合物1の2型多型体に関する。本発明は、部分的に、化合物1の3型多型体に関する。
【0017】
たとえば、化合物1のトシレート塩の1型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に約8.06、13.02、および18.83°2θでX線粉末回折ピークを有する。いくつかの態様において、化合物1のトシレート塩の1型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に約8.06、11.41、13.02、18.83、20.54、および24.53°2θでX線粉末回折ピークを有する。いくつかの態様において、化合物1のトシレート塩の1型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に約5.60、8.06、8.57、11.41、13.02、15.58、18.83、20.54、および24.53°2θでX線粉末回折ピークを有する。
【0018】
たとえば、化合物1のトシレート塩の1型多型体は、約0℃〜約70℃の範囲の温度で安定である。いくつかの態様において、化合物1のトシレート塩の1型多型体は、約5℃〜約50℃の範囲の温度で安定である。いくつかの態様において、化合物1のトシレート塩の1型多型体は、約20℃〜約30℃の範囲の温度で安定である。
【0019】
化合物1のトシレート塩の1型多型体は、イソプロパノールから化合物1のトシレート塩を結晶化させることによって得られうる。
【0020】
たとえば、化合物1のトシレート塩の2型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に7.82、11.88、16.12、および21.46°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。
【0021】
たとえば、化合物1のトシレート塩の3型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に5.11、8.89、10.34、11.76、および15.60°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。
【0022】
なお別の態様において、本発明には、化合物1の結晶形態と薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とを含む薬学的組成物が含まれる。
【0023】
たとえば、本発明の薬学的化合物組成物には、化合物1の多型体と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とを含む組成物が含まれる。
【0024】
別の態様において、本発明の薬学的組成物化合物には、化合物1の塩と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とが含まれる。たとえば、塩は塩酸塩、トシレート塩、またはメシレート塩でありうる。
【0025】
1つの態様において、本発明の薬学的組成物の化合物には、化合物1の塩の多型体と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とが含まれる。たとえば、多型体は、化合物1のトシレート塩、塩酸塩、またはメシレート塩の多型体でありうる。
【0026】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、化合物1またはその塩の多型体を純粋な形態で含む。
【0027】
別の態様において、本発明の薬学的組成物には、化合物1のトシレート塩の多型体と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とが含まれる。たとえば、多型体は、化合物1のトシレート塩の1型、2型、または3型多型体でありうる。
【0028】
いくつかの態様において、薬学的組成物は、純粋な形態の化合物1のトシレート塩、塩酸塩、またはメシレート塩の多型体を含む。
【0029】
本発明の別の局面において、化合物1の塩は、化合物1の遊離塩基より安定である。
【0030】
別の態様において、本発明には、化合物1の安定な結晶形態を調製する方法が含まれる。
【0031】
別の態様において、本発明には、化合物1の塩の安定な結晶形態を調製する方法が含まれる。たとえば、安定な結晶は、化合物1のトシレート、塩酸、またはメシレート塩の結晶でありうる。
【0032】
別の態様において、本発明には、化合物1の塩の多型体を調製する方法が含まれる。たとえば、多型体は、化合物1のトシレート、塩酸、またはメシレート塩の多型体でありうる。
【0033】
別の態様において、本発明には、化合物1のトシレート塩の多型体を調製する方法が含まれる。たとえば、多型体は、化合物1のトシレート塩の1型、2型、または3型多型体でありうる。
【0034】
1つの態様において、本発明には、化合物1を溶媒と混和してスラリーを産生する段階、およびp-トルエンスルホン酸を添加する段階を含む、化合物1のトシレート塩の多型体の1型を調製する方法が含まれる。たとえば、溶媒は、イソプロパノールなどのアルコール溶媒でありうる。p-トルエンスルホン酸は、化合物1の量に対して25〜75重量%の量で、たとえば化合物1の量に対して25〜50重量%、30〜40重量%、または33重量%の量で提供される。たとえば、p-トルエンスルホン酸は、p-トルエンスルホン酸一水和物の形態で提供される。
【0035】
たとえば、スラリーは、p-トルエンスルホン酸を添加する前に加温される。
【0036】
たとえば、スラリーは、p-トルエンスルホン酸を添加する前に撹拌される。たとえば、撹拌は、20〜25℃の範囲の温度で行われる。たとえば、撹拌は10〜24時間行われる。
【0037】
たとえば、スラリーは乾燥される。たとえば、スラリーの上清の水分含有量は、0.2〜1.0 mg/mLの範囲内、または0.4〜0.8 mg/mLの範囲内である。
【0038】
なお別の態様において、本発明には、化合物1の溶液を、溶媒または溶媒の混和物において調製する段階、および溶媒または溶媒の混和物にp-トルエンスルホン酸溶液を添加する段階を含む、化合物1のトシレート塩の1型多型体を調製する方法が含まれる。
【0039】
たとえば、溶媒は、メタノール、エタノール、またはイソプロパノールなどのアルコール溶媒である。たとえば、溶媒の混和物には、アルコール溶媒が含まれる。たとえば、溶媒の混和物はさらに、第二のアルコール溶媒を含む。たとえば、溶媒の混和物には、エタノールおよびイソプロパノールが含まれる。たとえば、溶媒の混和物には、ケトン、エーテル、およびエステルなどのアンチソルベントが含まれる。たとえば、エーテルには、メチル-t-ブチルエーテルが含まれるがこれらに限定されるわけではない。たとえば、溶媒の混和物には、アルコール溶媒およびアンチソルベントが含まれる。たとえば、溶媒の混和物には、メタノールおよびメチル-t-ブチルエーテルが含まれる。
【0040】
たとえば、p-トルエンスルホン酸は、化合物1の量に対して25〜75重量%、30〜50重量%、35〜45重量%、または40重量%の量で提供される。たとえば、p-トルエンスルホン酸は、p-トルエンスルホン酸一水和物の形で提供される。
【0041】
たとえば、溶液は、0〜60℃の範囲の温度で、15〜45℃の範囲の温度で、または20〜25℃の範囲の温度で調製される。
【0042】
たとえば、溶液は、調製後加温される。たとえば、溶液は、20〜50℃の範囲の温度、または約45℃で維持される。
【0043】
たとえば、方法はさらに、化合物1のモノトシレート塩の種結晶を付加してスラリーを産生する段階を含む。スラリーを、10〜24時間、または約22時間撹拌してもよい。スラリーは、15〜45℃、または約20℃の範囲の温度で撹拌されてもよい。スラリーを乾燥させてもよい。たとえば、スラリーの水分含有量は、1〜10重量%の範囲、2〜6重量%の範囲、または約3重量%である。
【0044】
別の態様において、本発明には、以下を含む、化合物1のトシレート塩の1型多型体を調製する方法が含まれる:化合物1の遊離塩基を第一の溶媒または溶媒混和物に溶解して、第一の溶液を形成する段階;p-トルエンスルホン酸を第二の溶媒または溶媒混和物に溶解して、第二の溶液を形成する段階;ならびに第一および第二の溶液を混和して第三の溶液を形成する段階。
【0045】
1つの態様において、第一および第二の溶媒または溶媒混和物は、同一であるかまたは異なりうる。別の態様において、溶媒は、メタノール、エタノール、およびイソプロパノールなどのアルコール溶媒でありうる。別の態様において、溶媒の混和物は、エタノールおよびイソプロパノールが含まれるがこれらに限定されるわけではない2種類のアルコール溶媒の混和物である。好ましい例において、エタノールおよびイソプロパノールの容積対容積比は、2:1である。なお別の態様において、溶媒の混和物は、アルコール溶媒とアンチソルベント(たとえば、ケトン、エーテル、エステル等)との組み合わせが含まれるがこれらに限定されるわけではない混和物である。たとえば、溶媒の混和物は、メタノールおよびメチル-t-ブチルエーテルが含まれるがこれらに限定されるわけではない混和物である。好ましい例において、メタノールとメチル-t-ブチルエーテルの容積対容積比は、1:1.2である。
【0046】
別の態様において、方法はさらに、化合物1の1型多型体トシレート塩を第三の溶液に添加して第四の溶液を形成する段階を含む。たとえば、1型多型体トシレート塩は、種結晶である。いくつかの態様において、第四の溶液は撹拌するとスラリーを形成する。スラリーは、第一の溶媒もしくは溶媒混和物、または第二の溶媒もしくは溶媒混和物と同一であるかまたは異なってもよい溶媒または溶媒混和物によって洗浄されてもよい。スラリーを乾燥させてもよい。
【0047】
別の態様において、本発明は化合物1を含む純粋な組成物に関し、この組成物は約90〜100%、好ましくは95〜100%、より好ましくは98〜100%(重量/重量)または99〜100%(重量/重量)純粋であり、たとえば約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満の不純物が存在する。そのような不純物には、たとえば、分解産物、酸化産物、エピマー、溶媒、および/または他の望ましくない不純物が含まれる。
【0048】
なお別の態様において、本発明には、化合物1の結晶形態の有効量を対象に投与することによって、対象におけるテトラサイクリン応答状態を処置するための方法が含まれる。たとえば、対象はヒト対象である。
【0049】
なお別の態様において、本発明には、化合物1の安定な塩の有効量を対象に投与することによって、対象におけるテトラサイクリン応答状態を処置するための方法が含まれる。たとえば、安定な塩は、化合物1のトシレート、塩酸、またはメシレート塩である。
【0050】
なお別の態様において、本発明には、化合物1の多型体の有効量を対象に投与することによって、対象におけるテトラサイクリン応答状態を処置するための方法が含まれる。
【0051】
なお別の態様において、本発明には、化合物1の塩の多型体の有効量を対象に投与することによって、対象におけるテトラサイクリン応答状態を処置するための方法が含まれる。たとえば、多型体は、化合物1のトシレート、塩酸、またはメシレート塩の多型体でありうる。
【0052】
なお別の態様において、本発明には、化合物1のトシレート塩の多型体の有効量を対象に投与することによって、対象におけるテトラサイクリン応答状態を処置するための方法が含まれる。たとえば、トシレートの多型体は、化合物1のトシレート塩の1型、2型、または3型多型体でありうる。
【0053】
たとえば、テトラサイクリン応答状態は細菌感染症である。細菌感染症は、グラム陽性細菌、またはグラム陰性細菌に関連しうる。いくつかの態様において、細菌感染症は、大腸菌(E. coli)、黄色ブドウ球菌(S. aureus)、またはエンテロコッカス・フェカーリス(E. faecalis)に関連する。
【0054】
いくつかの態様において、細菌感染症は、テトラサイクリン、ミノサイクリン、ドキシサイクリン、サンサイクリン、クロルテトラサイクリン、デメクロサイクリン、オキシテトラサイクリン、ケロカルジン、ロリテトラサイクリン、リメサイクリン、メタサイクリン、アピサイクリン、クロモサイクリン、ピパサイクリン、メピルサイクリン、メグルサイクリン、グアメサイクリン、ペニモサイクリン、およびエタモサイクリンが含まれるがこれらに限定されるわけではない他のテトラサイクリン抗生物質に対して抵抗性である。
【図面の簡単な説明】
【0055】
【図1】結晶の化合物1を含む試料の、25℃でのX線粉末回折パターンを提供する。
【図2】出発材料(E00285)、化合物1の1型トシレート塩、2型トシレート塩、3型トシレート塩、および非晶質トシレート塩形態の25℃でのX線粉末回折パターンを提供する。
【図3】結晶の化合物1(E00285)と、IPAにおける化合物1の非晶質トシレート塩の再結晶から得られた1型トシレート塩を含む試料との、25℃でのX線粉末回折パターンの比較を提供する。
【図4】真空下で終夜乾燥させた、1型トシレート塩、2型トシレート塩、および3型トシレート塩を含む試料に関する、25℃でのX線粉末回折パターンの比較を提供する。
【図5】2型トシレート塩を含む試料の、多様な温度でのX線粉末回折分析を提供する。
【図6】3型トシレート塩を含む試料の、多様な温度でのX線粉末回折分析を提供する。
【図7】IPAにおける1型トシレート塩と3型トシレート塩との50:50混合物のスラリーを含む試料の、多様な温度でのX線粉末回折分析を提供する。
【図8】化合物1の1型トシレート塩を含む試料の、高分解能X線粉末回折パターンを提供する。
【図9】化合物1の2型トシレート塩を含む試料の、高分解能X線粉末回折パターンを提供する(93.2%HPLC純度)。
【図10】化合物1の3型トシレート塩を含む試料の、高分解能X線粉末回折パターンを提供する(96.7%HPLC純度)。
【発明を実施するための形態】
【0056】
発明の詳細な説明
テトラサイクリン型抗生物質化合物は、固相の遊離塩基形態での安定性が限られていることが長い間知られている。そのような非結晶形態のテトラサイクリン類似体化合物の1つである(4S,4AS,5AR,12AS)-4-7-ビス(ジメチルアミノ)-9{[(2,2-ジメチルプロピル)アミノ]メチル}-3,10,12,12A-テトラヒドロキシ-1,11-ジオキソ-1,4,4A,5,5A,6,11,12A-オクタヒドロテトラセン-2-カルボキサミド(化合物1;MW=556.66、MF=C29H40N4O7)は、空気、光、および/または水分に曝露されると固相において安定性が限られる。

(4S,4AS,5AR,12AS)-4-7-ビス(ジメチルアミノ)-9{[(2,2-ジメチルプロピル)アミノ]メチル}-3,10,12,12A-テトラヒドロキシ-1,11-ジオキソ-1,4,4A,5,5A,6,11,12A-オクタヒドロテトラセン-2-カルボキサミド
【0057】
具体的には、化合物1は黄色の非晶質固体であり、0℃より高い温度では、および空気に曝露されると、不安定である。化合物1は、固相では空気、光、および水分に対する曝露を制限し、0℃未満の温度で保存しなければならない。これらの制限された曝露条件外では、化合物1は分解して、空気分解産物2、3、および4のみならず4-エピ異性体5が含まれる分解産物を産生する。

【0058】
本開示以前は、化合物1の安定な結晶形態または安定な結晶酸性塩は知られていなかった。
【0059】
本発明は、結晶化合物1、化合物1の塩形態、化合物1の多型体形態、または化合物1の塩の多型体形態;化合物1の結晶形態、塩形態、多型体形態、または塩の多型体形態を含む薬学的組成物;化合物1の結晶形態、塩形態、多型体形態、または塩の多型体形態を作製する方法;およびテトラサイクリン応答状態を処置するためにそれらを使用する方法に関する。
【0060】
1.固体形態化合物
化合物1はテトラサイクリン化合物である。「テトラサイクリン化合物」という用語には、テトラサイクリンと類似の環構造を有する多くの化合物が含まれる。テトラサイクリン化合物の例には次のものが含まれる:テトラサイクリン、クロルテトラサイクリン、オキシテトラサイクリン、デメクロサイクリン、メタサイクリン、サンサイクリン、ドキシサイクリン、およびミノサイクリン。
【0061】
化合物1の遊離塩基および特定の薬学的に許容される塩は、米国特許出願公開第2005/0026876 A1号に対応する米国特許出願第10/786,881号において記述される。前述の特性の一覧によって判断されるように、化合物1の結晶形態に関する教示もしくは示唆はなく、または記述の塩形態のいずれも他より優れていることの教示もしくは示唆はない。
【0062】
このように、本発明は、製造および生物学的利用率のために、改善されたテトラサイクリン化合物の必要性、およびテトラサイクリン化合物の改善された固相状形態の必要性に取り組む。
【0063】
テトラサイクリン化合物の固相状形態である化合物1は、結晶形態でありうる。化合物の結晶形態は遊離塩基でありうる。遊離塩基の化合物の異なる塩の結晶形態が形成されうる。遊離塩基を塩に変換するために用いることができる酸の例には、塩酸、p-トルエンスルホン酸、トリフルオロ酢酸、メチルスルホン酸、ベンゼンスルホン酸、および酢酸が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0064】
化合物の中性形態は、塩を塩基または酸に接触させる段階、および親化合物を従来のように単離する段階によって再生されてもよい。化合物の親形態は、極性溶媒における溶解度などの特定の物理的特性において、様々な塩形態とは異なってもよい。
【0065】
本明細書において記述されるように、化合物1の異なる結晶形態を生成することができるプロセスが開発されている。より具体的には、本発明者らは、得られた結晶形態が、プロセスにおいて用いられる溶媒の性質に主に依存することを示した。本記述の目的に関して、「結晶形態」という用語は、多型体形態または非晶質形態のいずれかを区別なく指す。「多型体形態」は、溶質の分子のみを含み特徴的な結晶シグナチャーを有する、組織化された構造を指す。
【0066】
「多型体」および「多型体形態」という用語、ならびに本明細書における関連する用語は、同じ分子の結晶形態を指し、異なる多型体は、たとえば融解温度、融解熱、溶解度、溶解速度、および/または結晶格子における分子の整列または立体配座の結果としての振動スペクトルなどの、異なる物理的特性を有してもよい。多型体によって示される物理的特性の差は、保存安定性、圧縮性および密度(製剤および製品の製造において重要)、および溶解速度(生物学的利用率において重要な要因)などの薬学的パラメータに影響を及ぼす。安定性の差もまた、化学的反応性(たとえば、1つの投与形態が1つの多型体を含む場合に、別の多型体を含む場合より急速に退色するような識別的酸化)、または力学的特性(たとえば、動力学的に都合のよい多型体が熱力学的により安定な多型体へと変換すると、貯蔵時に錠剤が粉砕する)、またはその双方の変化(たとえば、1つの多型体の錠剤は高湿度での分解に対してより感受性が高い)に起因しうる。溶解度/溶解の差の結果として、極端な例では、同じ多型体遷移によって効力の欠如が起こるか、または他の極端な例では毒性が起こる可能性がある。加えて、結晶の物理的特性は、加工の際に重要である可能性があり、たとえば1つの多型体は、溶媒和化合物を形成する傾向がより高く、または不純物を除去する濾過および洗浄が困難である可能性がある(すなわち、粒子の形状および大きさの分布は多型体によって異なる可能性がある)。
【0067】
分子の多型体は、当技術分野において公知であるように、多数の方法によって得られうる。そのような方法には、融解再結晶、融解冷却、溶媒再結晶、脱溶媒、急速蒸発、急速冷却、徐冷、蒸気拡散、および昇華が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0068】
多型体を特徴付けするための技術には、示差走査熱量計(DSC)、X線粉末回折測定(XRPD)、単結晶X線回折測定、振動分光法、たとえばIRおよびラマン分光法、固体NMR、ホットステージ光学顕微鏡、走査型電子顕微鏡(SEM)、電子結晶学、ならびに定量分析、粒子径分析(PSA)、表面積分析、溶解度試験、および溶解試験が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0069】
本明細書において用いられる「溶媒和化合物」という用語は、溶媒を含有する物質の結晶形態を指す。「水和物」という用語は、溶媒が水である溶媒和化合物を指す。
【0070】
脱溶媒和された溶媒和化合物は、溶媒和化合物から溶媒を除去することによってのみ作製されうる物質の結晶形態である。
【0071】
本明細書において用いられる「非晶質形態」という用語は、物質の非結晶形態を指す。
【0072】
本明細書において用いられる「純粋」という用語は、約90〜100%、好ましくは95〜100%、より好ましくは98〜100%(重量/重量)、または99〜100%(重量/重量)純粋な化合物を意味する;たとえば約10%未満、約5%未満、約2%未満、または約1%未満の不純物が存在することを意味する。そのような不純物には、たとえば分解産物、酸化産物、エピマー、溶媒、および/または他の望ましくない不純物が含まれる。
【0073】
本明細書において用いられるように、化合物は、湿度、光の曝露、および0℃より高い温度の一定の条件下で4週間の期間にわたって有意な量の分解産物が観察されない場合に「安定」である。化合物は、分解不純物が出現する、または既存の不純物の面積百分率が成長し始める場合、特定の条件下で安定でないと見なされる。時間の関数としての分解物の成長量は、化合物の安定性を決定するために重要である。
【0074】
本明細書において記載される全ての範囲は、表示される範囲のエンドポイントのみならず、具体的に記載されない値および範囲が含まれる、含まれる全ての値および範囲を包含すると意図される。
【0075】
本発明は、化合物1の結晶形態、塩形態、および多型体;結晶形態、塩、および多型体を単独または他の活性成分と併用して含む組成物;結晶、塩、および多型体を調製する方法;ならびにテトラサイクリン化合物受容状態の調節においてそれらを用いる方法に向けられる。いかなる特定の操作理論にも拘束されることを意図しないが、結晶形態、塩、および多型体の保存安定性、圧縮可能性、密度、または溶解特性は、テトラサイクリン化合物の製造、製剤化、および生物学的利用率にとって有益である。
【0076】
本発明の好ましい塩、および多型体は、臨床および治療的投与剤形にとって適当な、物理的特性、たとえば安定性、溶解度、吸湿性、および溶解速度を特徴とする塩および多型体である。本発明の好ましい多型体は、固体投与剤形の製造にとって適した物理的特性、たとえば結晶の形態、圧縮可能性、および硬度を特徴とする多型体である。そのような特性は、本明細書において記述され、当技術分野において公知であるX線回折、顕微鏡、IR分光法、熱分析、および吸湿性分析などの技術を用いて決定されうる。
【0077】
1.1 化合物1の塩
1つの局面において、本発明は、化合物1の特定の薬学的に許容される塩の結晶形態を提供する。本発明のこの局面は、化合物1の塩酸、メシレートおよびトシレート塩の結晶形態を提供する:

(4S,4AS,5AR,12AS)-4-7-ビス(ジメチルアミノ)-9{[(2,2-ジメチルプロピル)アミノ]メチル}-3,10,12,12A-テトラヒドロキシ-1,11-ジオキソ-1,4,4A,5,5A,6,11,12A-オクタヒドロテトラセン-2-カルボキサミド。
【0078】
本発明の各々の塩は、化合物1の調製物から作製されうる。化合物1は、当業者に明らかな任意の方法に従って合成されうるまたは得られうる。好ましい態様において、化合物1は、以下の実施例において詳細に記述される方法に従って調製される。たとえば、その内容の全体が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許出願公開第2005/0026876 A1号を参照されたい。
【0079】
または、化合物1は、化合物1の特定の塩を単離する段階、および適当な塩基による処置によって化合物1のそのような塩を中性形態に変換する段階によって調製されうる。たとえば、化合物1は、濾過によって化合物1の塩酸塩を単離した後、酢酸エチルにおける一塩基性炭酸ナトリウムまたは他の適した塩基による処置によってそれを中性形態に変換する段階によって調製されうる。
【0080】
任意の方法によって調製された化合物1を、非希釈(すなわち、混合されないまたは希釈されない)で、または適した不活性溶媒もしくは複数の溶媒において、適当な酸に接触させて、本発明の塩形態を生じさせることができる。たとえば、化合物1をp-トルエンスルホン酸に接触させて、本発明のトシレート塩形態を生じさせることができる。
【0081】
遊離塩基の化合物1、および化合物1の非晶質二塩酸塩に関して安定性試験を行った。この塩は、化合物を水溶液に溶解して、溶液のpHを約4.2に調整した後凍結乾燥することによって形成された。遊離塩基は40℃で1ヶ月未満、および4℃では約3ヶ月で分解した。対照的に化合物1の二塩酸塩は40℃で6ヶ月間安定であり、室温(25℃)では2年間安定であった。
【0082】
以下の例において詳細に示されるように、化合物1のトシレート塩およびその多型体は、望ましい特性を示す。
【0083】
1.2 化合物1の多型体
本発明はまた、化合物1の多型体も提供する。ある態様において、本発明の多型体は、化合物1のトシレート塩の多型体である。
【0084】
本発明の各々の多型体は、化合物1の調製物から作製されうる。固体の化合物1を溶解した後、以下に記述される溶媒混合物から結晶させると、本発明の多型体型を生じさせることができる。本発明の特定の態様において、化合物1のトシレート塩を溶解した後、以下に記述される溶媒混合物から結晶化させると、本発明の特定の多型体形態を生じさせることができる。本発明のいくつかの態様において、化合物1の遊離塩基を溶解した後、酸を添加すると、化合物1の結晶塩を形成する。
【0085】
1つの態様において、本発明は、化合物1のトシレート塩の多型体を提供する。
【0086】
さらなる態様において、本発明は、図8のパターンと類似するX線粉末回折パターンを有する、化合物1のトシレート塩の1型多型体を提供し、この回折パターンの特徴は、全て表1に示される。たとえば、本発明の特定の1型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に5.60、8.06、8.57、11.41、13.02、15.58、18.83、20.54、および24.53°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。たとえば、本発明の特定の1型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に8.06、11.41、13.02、18.83、20.54、および24.53°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。たとえば、本発明の特定の1型多型体は、8.06、13.02、18.83、および24.53°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。たとえば、本発明の特定の1型多型体は、8.06および18.83°2θで主要なX線粉末回折パターンのピークを有する。
【0087】
【表1】

【0088】
別の態様において、本発明は、化合物1の2型トシレート塩を提供する。1つの態様において、化合物1のトシレート塩の2型多型体は、図9のパターンと類似するX線粉末回折パターンを有し、この回折パターンの特徴は、全て表2に示される。たとえば、本発明の特定の2型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に7.82、11.88、12.68、16.12、18.63、21.46、および23.74°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。たとえば、本発明の特定の2型多型体は、7.82、11.88、16.12、および21.46°2θで主要なX線粉末回折パターンのピークを有する。たとえば、本発明の特定の2型多型体は、11.88、および16.12°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。
【0089】
【表2】

【0090】
なお別の態様において、本発明は化合物1の3型を提供する。さらなる態様において、化合物1のトシレート塩の3型多型体は、図10のパターンと類似するX線粉末回折パターンを有し、この回折パターンの特徴は、全て表3に示される。たとえば、本発明の特定の3型多型体は、Cu Kα線照射を用いた場合に5.11、8.89、10.34、11.76、13.70、14.81、および15.60°2θでX線粉末回折パターンのピークを有する。たとえば、本発明の特定の3型多型体は、5.11、8.89、10.34、11.76、および15.60°2θで主要なX線粉末回折パターンのピークを有する。たとえば、本発明の特定の3型多型体は、5.11および15.60°2θで主要なX線粉末回折パターンのピークを有する。
【0091】
【表3】

【0092】
化合物1のトシレート塩は、典型的に大きさが5〜8ミクロンの非常に小さい不規則な粒子として結晶化した。図1は、化合物1のトシレート塩の結晶固体のX線粉末回折(XRPD)を示す。この化合物は、190℃で融解した後分解することが示された。
【0093】
化合物1またはそのトシレート塩に重量法による蒸気収着(gravimetric vapor sorption)を行った。化合物1の1分子あたり水2.5分子が存在することが決定された。XRPDを行って、出発材料(E00285)を脱水した材料と比較した。データは形態の変化を示さなかった。
【0094】
2.化合物1の合成
9-(アミノメチル)-ミノサイクリン二塩酸塩(200 mg、1等量)、DMF、およびトリメチルアセトアルデヒド(45μL、1等量)を40 mLフラスコにおいて混和して撹拌した。次に、トリエチルアミン(150μL、3等量)を加えた。室温で数分間撹拌後、NaBH(OAc)3(175 mg、2等量)およびInCl3(9 mg、0.1等量)を加えた。1時間後、反応物は透明で赤色であった。液体クロマトグラフィーにより、反応の1つの産物が示された。反応をメタノールによって停止させて、溶媒を除去し、産物をカラムクロマトグラフィーを用いて精製した。
【0095】
精製
化合物の低pH水溶液を極性の有機溶媒勾配でHPLCに注入する段階、および化合物が精製されるように産物分画を混和する段階によって、化合物1をクロマトグラフィーによって精製した。適した酸性移動相を選択することによってプロセスの安定性および選択性が増強された。有機および無機の酸性移動相は、pH制御または酸の選択を通して、エピマー不純物が含まれる副産物および近くに溶出する副産物を分離するために有効であった。酸性移動相はまた、化合物の酸化的分解を防いだ。
【0096】
たとえば、低いpH溶液はpH約2〜3を有した。用いた溶液の例には、0.1%メタンスルホン酸水溶液および0.1%トリフルオロ酢酸水溶液が含まれる。一定の態様において、94%水溶液および6%のアセトニトリルまたは別の極性有機溶媒のアイソクラティック勾配を用いて、化合物をエピマー副産物および近くに溶出する副産物から精製した。
【0097】
得られた水性産物分画を合わせて、塩基(たとえば、NaOH)を用いてpHを約4.0〜4.5に調整してもよい。化合物の疎水性不純物および酸化的分解物は、水溶液を非極性の有機溶媒(たとえば、CH2Cl2)によって洗浄することによって除去されうる。有機層を廃棄し、水層を混和して保持した。
【0098】
塩化メチレンなどの有機溶媒を用いて、4-カルボニル副産物および他の酸化的分解物などの遅く溶出する疎水性不純物を、化合物の酸性水溶液から選択的に除去できることに注目すべきである。
【0099】
次に合わせた水層のpHを、中性のpH、たとえば約7.5〜約8.5に調整してもよい。pHは、NaOHなどの塩基を添加することによって調整されてもよい。次に、中性溶液を、塩化メチレンなどの無極性有機溶媒によって洗浄した。中性pH範囲への選択的pH調整により、水相に望ましくないβ-エピマーおよび副産物を保持しながら、化合物が有機溶媒の中に抽出されることに注目すべきである。
【0100】
加えて、本明細書において記述される化合物の水溶液に抗酸化剤を同様に添加してもよい。抗酸化剤は、化合物の酸化的分解を防止するために提供されうる。亜硫酸または亜硫酸水素アンモニウムなどの抗酸化剤を用いることができる。
【0101】
3.化合物1の多型体形態を調製する方法
本発明はまた、結晶化合物1の多型体形態を調製する方法にも関する。
【0102】
1つの態様において、本明細書における教示に基づいて、1型の当業者に明らかな任意の作製法によって、化合物1のトシレート塩の1型を作製することができる。特定の態様において、1型は、イソプロパノール、アセトン、酢酸エチル、メチルペンタノン、トルエン、またはアセトニトリル溶液中での、化合物1の非晶質トシレート塩の熟成から形成されうる。1型はまた、イソプロパノールにおいてスラリーを形成した非晶質トシレート塩の再結晶からも得ることができる。1型はまた、2つのアルコール、またはアルコールおよび例えばケトン、エーテル、エステル等のアンチソルベントなどの、適当な溶媒または溶媒の混和物に遊離塩基を溶解することによっても得ることができる。酸を添加した後、塩を正しい形態で徐々に結晶化させることができる。
【0103】
化合物1の不純物および遊離塩基が可溶性であるが、化合物1の安定な結晶塩が不溶性である、たとえば結晶スラリーが沈殿によって形成されうる溶媒系を選択することができる。
【0104】
別の態様において、化合物1のトシレート塩の2型は、本明細書における教示に基づいて2型を作製する当業者に明らかな任意の方法によって作製されうる。特定の態様において、2型は、ジクロロメタン中での、化合物1の非晶質トシレート塩の熟成から形成されうる。
【0105】
別の態様において、化合物1のトシレート塩の3型は、本明細書における教示に基づいて3型を作製する当業者に明らかな任意の方法によって作製されうる。特定の態様において、3型は、メチルエチルケトン、酢酸エチル、またはメチルペンタノン中での、化合物1の非晶質トシレート塩の熟成から形成されうる。3型はまた、メチルペンタノン中での、1型の熟成から得ることができる。
【0106】
さらなる態様において、前述の化合物1のトシレート塩の多型体形態は、化合物1を溶媒と混和してスラリーを産生する段階、およびp-トルエンスルホン酸を添加する段階が含まれる方法によって産生されてもよい。
【0107】
任意の適した溶媒を用いてスラリーを作製してもよい。態様において用いられてもよい溶媒には、イソプロパノールなどのアルコール性溶媒が含まれる。任意の適した溶媒の混和物を用いて、そこから塩が結晶化する溶液を作製してもよい。態様において用いられてもよい溶媒の混和物には、メタノールとメチル-t-ブチルエーテルまたはエタノールとイソプロパノールが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0108】
たとえば、溶媒または溶媒混和物における化合物1のスラリーは、約15℃〜約45℃、または約20℃〜約25℃などの、約0℃〜約60℃の温度で産生されてもよい。産生された後、スラリーを、任意で、約20℃〜約50℃、または約45℃などの、約15℃〜約60℃の温度で加温および/または維持してもよい。
【0109】
スラリーを作製した後、p-トルエンスルホン酸を化合物1のp-トルエンスルホン酸塩を産生するために十分な量で添加してもよい。1つの態様において、p-トルエンスルホン酸は、化合物1の量に対して約25〜約75重量%、約25〜約50重量%、約30〜約40重量%、または約33重量%の量で提供される。p-トルエンスルホン酸は、p-トルエンスルホン酸一水和物の形態で添加されてもよい。
【0110】
化合物1のトシレート塩の多型体形態は、溶液法によって形成されうる。たとえば、化合物1の溶液を、約15℃〜約45℃、または約20℃〜約25℃などの、約0℃〜約60℃の温度で産生してもよい。産生された後、溶液を任意で約20℃〜約50℃または約45℃などの、約15℃〜約60℃の温度で加温および/または維持してもよい。
【0111】
溶液を作製した後、p-トルエンスルホン酸を化合物1のp-トルエンスルホン酸塩を産生するために十分な量で添加してもよい。1つの態様において、p-トルエンスルホン酸は、化合物1の量に対して約25〜約75重量%、約30〜約50重量%、約35〜約45重量%、または約40重量%の量で提供される。p-トルエンスルホン酸は、p-トルエンスルホン酸一水和物の形で添加されてもよい。
【0112】
1つの態様において、溶液に種結晶を入れるために用いられる1型多型体を添加してもよい。任意の適した溶媒を用いてp-トルエンスルホン酸溶液を形成してもよい。適した溶媒には、イソプロパノールなどのアルコール溶媒、またはメタノールとメチル-t-ブチルエーテルなどの溶媒混和物が含まれる。好ましい態様において、メタノール対メチル-t-ブチルエーテルの容積/容積比は1:1.2である。適した溶媒には、エタノールとイソプロパノールの混和物などの2種類またはそれより多くのアルコール溶媒の混和物が含まれる。好ましい態様において、エタノール対イソプロパノールの容積/容積比は、2:1である。特定の態様において、p-トルエンスルホン酸溶液には、化合物1のスラリーまたは溶液を作製するために用いられるものと同じ溶媒が含まれる。
【0113】
適当な溶媒にp-トルエンスルホン酸を添加した後、化合物のトシレート塩の1型多型体のスラリーが形成される。p-トルエンスルホン酸を添加した後に、スラリーの上清の水分含有量を適したレベルに調節してもよい。典型的に、スラリー上清の水分含有量は、約0.4〜約0.8 mg/mL、たとえば約0.6 mg/mL、約0.54 mg/mL等などの、約0.2〜約1.0 mg/mLの範囲であってもよい。
【0114】
p-トルエンスルホン酸の添加後、スラリーまたは溶液を撹拌して、結晶スラリーを産生してもよい。撹拌は48時間より多く行ってもよい。しかし、撹拌は典型的に、約10〜約24時間または約18時間などの、約5〜約36時間の期間行われる。
【0115】
撹拌は、結晶スラリーを産生するために適した任意の温度で行われてもよい。たとえば、スラリーは、約15℃〜約45℃、または約20℃〜約25℃などの、約0℃〜約60℃の温度で撹拌されてもよい。
【0116】
結晶の形成後、結晶スラリーを濾過して上清を除去してもよく、結晶を任意の適した溶媒によって洗浄してもよい。態様において、結晶は1〜4回洗浄されてもよく、溶媒は、結晶スラリーの調製にとって適した任意の溶媒であってもよい。特に、結晶を洗浄するために用いる溶媒は、当初のスラリーもしくは溶液、またはp-トルエンスルホン酸溶液を形成するために用いられるものと同じ1種または複数種の溶媒であってもよい。
【0117】
次に、産生された結晶を乾燥させて、任意の適した方法によって過剰な溶媒を除去してもよい。たとえば、乾燥は、約15℃〜約45℃などの約0℃〜約60℃の範囲の上昇した温度;結晶への乾燥窒素の吹き付け;および結晶への湿潤窒素の吹き付けが含まれるがこれらに限定されるわけではない1つまたは複数の方法によって達成されてもよい。
【0118】
化合物1のトシレート塩の試料を異なる溶媒においてスラリーにし、濾過して、湿潤固体をXRPDによって分析する熟成試験を行った。化合物1のトシレート塩の3つの多型体形態が観察された。図2は、出発材料(E00285)、化合物1の1型トシレート塩、2型トシレート塩、3型トシレート塩、および非晶質形態のXRPDスペクトルを示す。
【0119】
表4は、熟成実験において用いた溶媒を列挙する。
【0120】
【表4】

【0121】
化合物1の非晶質材料の再結晶を様々な溶媒において行った。2-プロパノール(イソプロピルアルコール、IPA)における再結晶のみが、表5において示されるように1型トシレート塩を生じた。図3は、参照化合物1(E00285)およびIPAから再結晶された1型トシレート塩のXRPDスペクトルを比較する。
【0122】
【表5】

【0123】
化合物1の多型体トシレート塩の概要をスキーム1に示す。

【0124】
再結晶後、1型、2型、および3型トシレート塩の試料を、図4において示されるように真空下で終夜乾燥させて、XRPDによって分析した。乾燥後の形態に変化はなかった。
【0125】
様々な温度のXRPDを、化合物1の2型および3型トシレート塩について行った。図5および図6をそれぞれ参照されたい。
【0126】
化合物1の多型体形態の相対的安定性を分析した。たとえば、1型トシレート塩を、2型または3型トシレート塩のいずれかを種結晶としたIPAまたはメチルペンタノンのいずれかにおける24時間の熟成実験に供した。この実験のあいだ、1型の2型または3型への変化はなかった。1型と3型の50:50混合物のスラリーを、図7に示されるように、IPAにおいて0℃、25℃、40℃、および60℃で18時間分析した。1型から3型への変化はなかった。
【0127】
再結晶実験から、1型トシレート塩がIPAにおけるスラリー形成によって非晶質トシレート塩から再現性よく得られうることが示された。化合物1の1型も同様に、トシル酸の添加によって再現性よく得られうる。1型の高分解能XRPDスキャンを図8に示し、回折パターンの特徴を表1に示す。
【0128】
4.本発明の化合物、塩、結晶形態、または多型体を含む薬学的組成物
さらなる態様において、本発明は、本発明のテトラサイクリン化合物(たとえば、本発明の方法によって合成または精製される)またはその薬学的に許容される塩、プロドラッグ、もしくはエステルを含む薬学的組成物に関する。薬学的組成物は、薬学的に許容される担体を含んでもよい。
【0129】
本明細書において用いられる「組成物」という用語は、明記された成分(および表示される場合には明記された量)を含む産物のみならず、明記された量の明記された成分の混和物に直接または間接的に起因する任意の産物を包含することが意図される。「薬学的に許容される」とは、希釈剤、賦形剤、または担体が製剤の他の成分と適合性でなければならず、そのレシピエントに対して有害であってはならないことを意味する。
【0130】
先に述べたように、本発明の化合物のある態様は、アミノまたはアルキルアミノなどの塩基性官能基を含有することができ、このように薬学的に許容される酸と薬学的に許容される塩を形成することができる。「薬学的に許容される塩」という用語は、当技術分野において認識され、これには本発明の化合物の比較的非毒性の無機および有機酸付加塩が含まれる。これらの塩は、本発明の化合物の最終的な単離および精製の際に、または、その遊離塩基形態の本発明の精製化合物を適した有機もしくは無機酸と個別に反応させ、このように形成された塩を単離することによって、インサイチューで調製されうる。代表的な塩には、臭化水素酸塩、塩酸塩、硫酸塩、重硫酸塩、リン酸塩、硝酸塩、酢酸塩、吉草酸塩、オレイン酸塩、パルミチン酸塩、ステアリン酸塩、ラウリン酸塩、安息香酸塩、乳酸塩、リン酸塩、トシレート、クエン酸塩、マレイン酸塩、フマル酸塩、コハク酸塩、酒石酸塩、ナプチレート、メシレート、グルコヘプトネート、ラクトビオネート、およびラウリルスルホン酸塩等が含まれる(たとえば、Berge et al. (1977) "Pharmaceutical Salts", J. Farm. SCI. 66:1-19を参照されたい)。
【0131】
他の場合において、本発明の化合物は、1つまたは複数の酸性官能基を含有してもよく、このように薬学的に許容される塩基と薬学的に許容される塩を形成することができる。これらの例における「薬学的に許容される塩」という用語には、本発明の化合物の比較的非毒性の、無機および有機塩基付加塩が含まれる。これらの塩も同様に、化合物の最終的な単離および精製の際に、または、その遊離酸形態の精製化合物を、薬学的に許容される金属陽イオンの水酸化物、炭酸塩、もしくは重炭酸塩などの適した塩基と、アンモニアと、もしくは薬学的に許容される有機一級アミン、二級アミン、もしくは三級アミンと個別に反応させることによって、インサイチューで調製されうる。代表的なアルカリまたはアルカリ土類塩には、リチウム、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、およびアルミニウム塩等が含まれる。塩基付加塩の形成にとって有用な代表的な有機アミンには、エチルアミン、ジエチルアミン、エチレンジアミン、エタノールアミン、ジエタノールアミン、ピペラジン等が含まれる。
【0132】
「薬学的に許容されるエステル」という用語は、本発明の化合物の比較的非毒性のエステル化産物を指す。これらのエステルは、化合物の最終的な単離および精製の際に、または、その遊離酸形態の精製化合物もしくはヒドロキシルを適したエステル化剤と個別に反応させることによって、インサイチューで調製することができる。カルボン酸を、触媒の存在下でアルコールによる処置によってエステルに変換することができる。ヒドロキシルは、ハロゲン化アルカノイルなどのエステル化剤による処置によってエステルに変換されうる。この用語にはまた、生理的条件下で溶媒化されうる低級炭化水素基、たとえばアルキルエステル、メチル、エチル、およびプロピルエステルが含まれる(たとえば、Berge et al.、前記を参照されたい)。
【0133】
本発明はまた、本発明の方法によって合成および/または精製されたテトラサイクリン化合物、およびその薬学的に許容される塩に関する。
【0134】
「薬学的に許容される担体」という句は、当技術分野において認識され、これには本発明の化合物を哺乳動物に投与するために適した薬学的に許容される材料、組成物、またはビヒクルが含まれる。担体には、1つの臓器または体の一部から別の臓器または体の一部に被験物質を運ぶまたは輸送することに関係する、液体または固体の増量剤、希釈剤、賦形剤、溶媒、または封入材料が含まれる。各々の担体は、製剤の他の成分と適合性であり、患者に対して有害ではないという意味において「許容され」なければならない。薬学的に許容される担体として役立ちうる材料のいくつかの例には次のものが含まれる:乳糖、グルコース、およびショ糖などの糖;コーンスターチおよびジャガイモデンプンなどのデンプン;セルロース、およびカルボキシメチルセルロースナトリウム、エチルセルロース、および酢酸セルロースなどのその誘導体;粉末トラガカント;麦芽;ゼラチン;タルク;カカオバターおよび坐剤用ロウなどの賦形剤;落花生油、綿実油、サフラワー油、ゴマ油、オリーブ油、コーン油、および大豆油などの油;プロピレングリコールなどのグリコール;グリセリン、ソルビトール、マンニトールおよびポリエチレングリコールなどのポリオール;オレイン酸エチルおよびラウリン酸エチルなどのエステル;寒天;水酸化マグネシウムおよび水酸化アルミニウムなどの緩衝剤;アルギン酸;発熱物質を含まない水;等張生理食塩液;リンゲル液;エチルアルコール;リン酸緩衝液;ならびに薬学的製剤において使用される他の非毒性の適合性の物質。
【0135】
ラウリル硫酸ナトリウムおよびステアリン酸マグネシウムなどの湿潤剤、乳化剤、および潤滑剤のみならず、着色剤、放出剤、コーティング剤、甘味料、着香料、ならびに芳香剤、保存剤、および抗酸化剤も同様に組成物に存在しうる。
【0136】
薬学的に許容される抗酸化剤の例には次のものが含まれる:アスコルビン酸、塩酸システイン、重硫酸ナトリウム、メタ重硫酸ナトリウム、亜硫酸ナトリウム等などの水溶性抗酸化剤;パルミチン酸アスコルビル、ブチル化ヒドロキシアニソール(BHA)、ブチル化ヒドロキシトルエン(BHT)、レシチン、没食子酸プロピル、α-トコフェロール等などの脂溶性抗酸化剤;ならびにクエン酸、エチレンジアミン四酢酸(EDTA)、ソルビトール、酒石酸、リン酸等などの金属キレート剤。
【0137】
本発明の製剤には、経口、鼻腔内、局所、経皮、口腔内、舌下、直腸内、膣内、および/または非経口投与にとって適した製剤が含まれる。製剤は、単位投与剤形で簡便に表されてもよく、薬学技術分野において周知の任意の方法によって調製されてもよい。担体材料と混和されて1つの投与剤形を産生することができる活性成分の量は、一般的に治療効果を生じる化合物の量であろう。一般的に、100パーセント中、この量は約1パーセントから約99パーセントの範囲の活性成分、好ましくは約5パーセント〜約70パーセント、最も好ましくは約10パーセント〜約30パーセントの範囲であろう。
【0138】
これらの製剤または組成物を調製する方法には、本発明の化合物を担体、および任意で1つまたは複数の補助成分と関連させる段階が含まれる。一般的に、製剤は、本発明の化合物を液体担体、細粉固体担体、またはその双方に均一にかつ完全に関連させる段階、および必要であれば産物を成形する段階によって調製される。
【0139】
経口投与にとって適した本発明の製剤は、各々が活性成分として本発明の化合物の規定量を含有する、カプセル剤、カシェ剤、丸剤、錠剤、ロゼンジ(香料基剤、通常、ショ糖およびアカシアまたはトラガカントを用いる)、粉剤、顆粒剤の形態であるか、または水性もしくは非水性液体中の溶液もしくは懸濁剤、または水中油型もしくは油中水型液体乳剤、またはエリキシル剤もしくはシロップ剤、または香錠(ゼラチンおよびグリセリン、またはショ糖およびアカシアなどの不活性基剤を用いる)、および/またはマウスウォッシュ等であってもよい。本発明の化合物は、ボーラス、舐剤、またはペースト剤として投与されてもよい。
【0140】
経口投与のための本発明の固体投与剤形(カプセル剤、錠剤、丸剤、糖衣錠、粉剤、顆粒剤等)において、活性成分は、クエン酸ナトリウム、またはリン酸二カルシウムおよび/または以下のいずれかなどの1つまたは複数の薬学的に許容される担体と混合される:デンプン、乳糖、ショ糖、グルコース、マンニトールおよび/またはケイ酸などの充填剤または増量剤;カルボキシメチルセルロース、アルギネート、ゼラチン、ポリビニルピロリドン、ショ糖および/またはアカシアなどの結合剤;グリセロールなどの湿潤剤;寒天、炭酸カルシウム、ジャガイモまたはタピオカデンプン、アルギン酸、特定のケイ酸塩、および炭酸ナトリウムなどの崩壊剤;パラフィンなどの溶出遅延剤;四級アンモニウム化合物などの吸収加速剤;セチルアルコールおよびモノステアリン酸グリセロールなどの湿潤剤;カオリンおよびベントナイト土などの吸収剤;タルク、ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸マグネシウム、固体ポリエチレングリコール、ラウリル硫酸ナトリウム、およびその混合物などの潤滑剤;ならびに着色剤。カプセル剤、錠剤、および丸剤の場合、薬学的組成物はまた、緩衝剤を含んでもよい。類似のタイプの固体組成物はまた、ラクトースまたは乳糖のような賦形剤のみならず高分子量ポリエチレングリコール等を用いる軟および硬ゼラチンカプセルにおける充填剤として使用されてもよい。
【0141】
錠剤は、任意で1つまたは複数の補助成分と共に圧縮または成型によって作製されてもよい。圧縮錠は、結合剤(たとえば、ゼラチンまたはヒドロキシプロピルメチルセルロース)、潤滑剤、不活性希釈剤、保存剤、崩壊剤(たとえば、デンプングリコールナトリウムまたはクロスリンクしたカルボキシメチルセルロースナトリウム)、表面活性または分散剤を用いて調製されてもよい。成型錠は、不活性な液体希釈剤によって湿らせた粉末化合物の混合物を適した機器において成型することによって作製されてもよい。
【0142】
錠剤、ならびに糖衣錠、カプセル剤、丸剤、および顆粒剤などの、本発明の薬学的組成物の他の固体投与剤形は、任意で、製剤技術分野において周知の腸溶コーティングおよび他のコーティングなどのコーティングおよび外皮によって刻み目を入れられてもよくまたは調製されてもよい。それらは、たとえば望ましい放出プロフィールを提供するために、様々な比率のヒドロキシプロピルメチルセルロース、他のポリマーマトリクス、リポソーム、および/またはミクロスフェアを用いて、その中の活性成分の遅いまたは制御された放出を提供するように製剤化されてもよい。それらは、たとえば細菌保持フィルターを通した濾過によって、または使用直前に滅菌水もしくは何らかの他の滅菌注射用培地に溶解することができる滅菌固体組成物の形で滅菌剤を組み入れることによって、滅菌されてもよい。これらの組成物はまた、任意で不透明化剤を含有してもよく、かつ、消化管の特定の部分のみに、または特定の部分に優先的に、任意で遅延性の様式で活性成分を放出する組成物であってよい。用いることができる包埋組成物の例には、ポリマー物質およびロウが含まれる。活性成分は、適当であれば、前述の賦形剤の1つまたは複数を含むマイクロカプセル化した形態でありうる。
【0143】
本発明の化合物の経口投与のための液体投与剤形には、薬学的に許容される乳剤、マイクロエマルジョン、液剤、懸濁剤、シロップ剤およびエリキシル剤が含まれる。活性成分のほかに、液体投与剤形は、水、またはエチルアルコール、イソプロピルアルコール、炭酸エチル、酢酸エチル、ベンジルアルコール、安息香酸ベンジル、プロピレングリコール、1,3-ブチレングリコール、油(特に、綿実油、落花生油、コーン油、胚芽油、オリーブ油、ヒマシ油、およびゴマ油)、グリセロール、テトラヒドロフリルアルコール、ポリエチレングリコール、およびソルビタンの脂肪酸エステル、ならびにその混合物などの他の溶媒、溶解剤および乳化剤などの当技術分野において一般的に用いられる不活性希釈剤を含有してもよい。
【0144】
不活性希釈剤のほかに、経口組成物にはまた、湿潤剤、乳化剤および懸濁剤、甘味料、着香料、着色剤、香料、ならびに保存剤などのアジュバントが含まれうる。
【0145】
活性化合物のほかに、懸濁剤は、たとえばエトキシル化イソステアリルアルコール、ポリオキシエチレンソルビトール、およびソルビタンエステル、微結晶セルロース、メタ水酸化アルミニウム、ベントナイト、寒天、およびトラガカント、ならびにその混合物などの懸濁剤を含有してもよい。
【0146】
直腸内または膣内投与のための本発明の薬学的組成物の製剤は、本発明の1つまたは複数の化合物を、たとえば室温では固体であるが体温では液体であり、ゆえに直腸腔または膣腔では融解して活性化合物を放出する、カカオバター、ポリエチレングリコール、坐剤用ロウ、またはサリチル酸塩を含む1つまたは複数の適した非刺激性賦形剤または担体と混合することによって調製されてもよい坐剤として表されてもよい。
【0147】
膣内投与にとって適した本発明の製剤にはまた、当技術分野において適当であることが公知であるような担体を含有するペッサリー、タンポン、クリーム、ゲル、ペースト、フォーム、またはスプレー製剤が含まれる。
【0148】
本発明の化合物の局所または経皮投与のための投与剤形には、粉剤、スプレー、軟膏、ペースト、クリーム、ローション、ゲル、液剤、パッチ、および吸入剤が含まれる。活性化合物は、薬学的に許容される担体、および必要であれば任意の保存剤、緩衝剤または噴射剤と共に滅菌条件下で混合されてもよい。
【0149】
軟膏、ペースト、クリーム、およびゲルは、本発明の活性化合物に加えて動物および植物脂肪、油、ロウ、パラフィン、デンプン、トラガカント、セルロース誘導体、ポリエチレングリコール、シリコン、ベントナイト、ケイ酸、タルク、および酸化亜鉛、またはその混合物などの賦形剤を含有してもよい。
【0150】
粉剤およびスプレーは、本発明の化合物に加えて、ラクトース、タルク、ケイ酸、水酸化アルミニウム、ケイ酸カルシウム、およびポリアミド粉末、またはこれらの物質の混合物などの賦形剤を含有しうる。スプレーはさらに、クロロフルオロ炭化水素などの通常の噴射剤、ならびにブタンおよびプロパンなどの揮発性の非置換炭化水素を含有することができる。
【0151】
経皮パッチは、本発明の化合物の体への制御された送達を提供するさらなる長所を有する。そのような投与剤形は、適切な培地に化合物を溶解または分散させることによって作製されうる。吸収増強剤も同様に、皮膚を通した化合物の流入を増加させるために用いることができる。そのような流入速度は、速度制御メンブレンを提供することによって、またはポリマーマトリクスもしくはゲルにおいて活性化合物を分散させることのいずれかによって、制御されうる。
【0152】
眼科用製剤、眼科用軟膏、粉剤、液剤等も同様に本発明の範囲内であることが企図される。
【0153】
非経口投与にとって適した本発明の薬学的組成物は、1つまたは複数の薬学的に許容される滅菌等張水溶液もしくは非水溶液、分散剤、懸濁剤、もしくは乳剤と、または、抗酸化剤、緩衝剤、静菌剤、意図されるレシピエントの血液に対して製剤を等張にする溶質、懸濁剤、もしくは濃化剤を含有してもよい滅菌された注射可能な溶液もしくは分散液で使用直前に再構成されてもよい滅菌粉末と組み合わせて、本発明の1つまたは複数の化合物を含む。
【0154】
本発明の薬学的組成物において使用されてもよい適した水性および非水性担体の例には、水、エタノール、ポリオール(グリセロール、プロピレングリコール、ポリエチレングリコール等)、およびその適した混合物、オリーブ油などの植物油、ならびにオレイン酸エチルなどの注射可能な有機エステルが含まれる。たとえばレシチンなどのコーティング材料を用いることによって、分散剤の場合には必要な粒子径を維持することによって、および界面活性剤を用いることによって、適切な流動性を維持することができる。
【0155】
これらの組成物はまた、保存剤、湿潤剤、乳化剤、および分散剤などのアジュバントを含有してもよい。微生物の作用の予防は、様々な抗菌剤および抗真菌剤、たとえばパラベン、クロロブタノール、フェノール、ソルビン酸等を含めることによって確実にしてもよい。同様に、糖、塩化ナトリウム等などの等張物質を組成物に含めることが望ましい可能性がある。加えて、注射可能な薬学的剤形の持続的な吸収は、モノステアリン酸アルミニウムおよびゼラチンなどの吸収を遅らせる物質を含めることによってもたらされてもよい。
【0156】
いくつかの場合において、薬物の効果を延長させるために、皮下または筋肉内注射から薬物の吸収を遅らせることが望ましい。これは、水溶性が低い結晶または非晶質材料の液体懸濁液を用いることによって成就されてもよい。薬物の吸収速度は、その溶解速度に依存し、次に結晶の大きさおよび結晶形態に依存する可能性がある。または非経口投与された薬物形態の遅延型の吸収は、油性ビヒクルに薬物を溶解または懸濁させることによって成就されてもよい。
【0157】
注射可能なデポー剤形は、ポリ乳酸-ポリグリコール酸エステルなどの生体分解性のポリマーにおいて本発明の化合物の微小封入マトリクスを形成することによって作製される。薬物対ポリマー比、および使用される特定のポリマーの性質に応じて、薬物放出速度を制御することができる。他の生体分解性ポリマーの例には、ポリ(オルトエステル)およびポリ(無水物エステル)が含まれる。デポー注射可能製剤はまた、体組織と適合性であるリポソームまたはマイクロエマルジョンにおいて薬物を捕捉することによって調製される。
【0158】
本発明の調製物は、経口投与、非経口投与、局所表面、または直腸内投与されてもよい。それらは、各々の投与経路にとって適した剤形で与えられる。たとえば、それらは、錠剤またはカプセル剤の剤形で投与される。たとえば、それらは、注射剤、注入剤、吸入剤、ローション、軟膏、坐剤等によって投与される。経口投与が好ましい。
【0159】
本明細書において用いられる、「非経口投与」および「非経口投与される」という句は、腸内および局所表面投与以外の通常注射による投与様式を意味し、これには静脈内、筋肉内、動脈内、髄腔内、嚢内、眼窩内、心臓内、皮内、腹腔内、気管内、皮下、表皮下、関節内、被膜下、クモ膜下、脊椎内、および胸骨内注射および注入が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0160】
本明細書において用いられる「全身投与」、「全身投与される」、「末梢投与」、および「末梢投与される」という句は、化合物が患者の系に入ってこのように代謝および他の類似のプロセスを受けるような、中枢神経系への直接投与以外の化合物、薬物、または他の材料の投与、たとえば皮下投与を意味する。
【0161】
これらの化合物は、経口、鼻腔内(たとえば、スプレーによって)、直腸内、膣内、非経口、槽内、および局所表面(たとえば、口腔内および舌下が含まれる粉剤、軟膏、または滴下液)が含まれる任意の適した投与経路によって治療のためにヒトおよび他の動物に投与されてもよい。
【0162】
選択される投与経路によらず、本発明の適した水和形態および/または薬学的組成物において用いられてもよい本発明の化合物は、当業者に公知の従来の方法によって薬学的に許容される投与剤形に製剤化される。
【0163】
「治療的有効量」という用語は、研究者、獣医師、医師、もしくは他の臨床家によって求められる組織、系、動物、またはヒトの生物学的もしくは医学的応答を誘発するであろう、または処置される疾患の症状の1つもしくは複数の発症を予防するもしくはある程度緩和するために十分である、本発明の塩または多型体の量を指す。
【0164】
本発明の薬学的組成物における活性成分の実際の用量レベルは、患者に対して毒性を示すことなく、特定の患者、組成物、および投与様式に関して、望ましい治療応答を達成するために有効である活性成分の量を得るために、変化させてもよい。
【0165】
選択された用量レベルは、使用される本発明の特定の化合物、またはそのエステル、塩、もしくはアミドの活性、投与経路、投与時間、使用される特定の化合物の排泄速度、処置期間、使用される特定の化合物と併用して用いられる他の薬物、化合物および/または材料、処置される患者の年齢、性別、体重、状態、全体的な健康状態および以前の病歴、ならびに医学の技術分野において周知である類似の要因が含まれる多様な要因に依存するであろう。
【0166】
当業者である医師または獣医師は、必要な薬学的組成物の有効量を容易に決定して処方することができる。たとえば、医師または獣医師は、薬学的組成物において使用される本発明の化合物の用量を、望ましい治療効果を達成するために必要な用量より低いレベルで開始して、望ましい効果が達成されるまで用量を徐々に増加させることができるであろう。
【0167】
一般的に、本発明の化合物の適した1日量は、治療効果を生じるために有効な最低用量である化合物の量であろう。そのような有効量は一般的に、前述の要因に依存するであろう。一般的に、表記の鎮痛効果に関して用いられる場合、患者1人あたりの本発明の化合物の静脈内および皮下用量は、約0.0001〜約100 mg/kg体重/日、より好ましくは約0.01〜約50 mg/kg/日、およびなおより好ましくは約0.1〜約10 mg/kg/日の範囲であろう。たとえば、いくつかの態様において、用量は、0.5〜約4.0 mg/kg/日である。望ましければ、活性化合物の有効な1日量を、個別に投与される1、2、3、4、5、6回またはそれより多い下位用量として、1日、1週間、または他の適した期間の適当な間隔で、任意で単位投与剤形で投与してもよい。
【0168】
本発明の化合物を単独で投与することが可能であるが、化合物を薬学的組成物として投与することが好ましい。
【0169】
5.本発明のテトラサイクリン化合物を用いる方法
本発明はまた、状態が処置されるように、本発明に従う化合物1またはその薬学的に許容される塩を含む組成物の有効量を対象に投与することによって、対象におけるテトラサイクリン応答状態を処置するための方法にも関する。
【0170】
本明細書において用いられるように、「処置する」、「処置している」、または「処置」という用語は、疾患または障害(たとえば、テトラサイクリン化合物応答状態)および/またはその付随する症状を緩和または排除する方法を指す。本明細書において用いられる「予防する」、「予防している」、または「予防」という用語は、対象が疾患または障害を獲得しないようにする方法を指す。本明細書において用いられる「対象」には、哺乳動物が含まれる。哺乳動物は、たとえば任意の哺乳動物、たとえばヒト、霊長類、マウス、ラット、イヌ、ネコ、ウシ、ウマ、ヤギ、ラクダ、ヒツジ、またはブタでありうる。好ましくは哺乳動物はヒトである。
【0171】
「テトラサイクリン化合物応答状態」または「テトラサイクリン応答状態」という言葉には、本発明のテトラサイクリン化合物の投与によって処置、予防、またはそうでなければ改善されうる状態が含まれる。テトラサイクリン化合物応答状態には、細菌、ウイルス、および真菌感染症(他のテトラサイクリン化合物に対して抵抗性である感染症が含まれる)、がん(たとえば、前立腺がん、乳がん、結腸がん、肺がん、黒色腫、リンパのがん、およびU.S. 6,100,248において記述される障害が含まれるがこれらに限定されるわけではない、望ましくない細胞増殖を特徴とする他の障害)、関節炎、骨粗鬆症、糖尿病、およびテトラサイクリン化合物が活性であることが見いだされている他の状態(たとえば、その各々が明白に参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,789,395号;第5,834,450号;第6,277,061号、および第5,532,227号を参照されたい)が含まれる。本発明の化合物は、下痢、尿路感染症、皮膚および皮膚構造の感染症、耳、鼻、および喉の感染症、創傷感染症、乳腺炎等などの重要な哺乳動物および動物疾患を予防または制御するために用いられうる。加えて、本発明のテトラサイクリン化合物を用いて新生物を処置するための方法も同様に含まれる(van der Bozert et al., Cancer Res., 1998, 48:6686-6690)。1つの態様において、テトラサイクリン応答状態は、細菌感染症ではない。別の態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、本質的に非抗菌性である。たとえば、本発明の非抗菌性テトラサイクリン化合物は、当技術分野において公知のアッセイによって測定した場合に約4μg/mlより大きいMICを有してもよい。
【0172】
テトラサイクリン化合物応答状態にはまた。炎症プロセス関連状態(IPAS)が含まれる。「炎症プロセス関連状態」という用語には、領域において炎症または炎症因子(たとえば、マトリクスメタロプロテナーゼ(MMP)、酸化窒素(NO)、TNF、インターロイキン、血漿タンパク質、細胞防御システム、サイトカイン、脂質代謝、プロテアーゼ、毒性ラジカル、接着分子等)が関係している、または異常な量で存在する状態が含まれる。炎症プロセスは、損傷に対する生きている組織の応答である。炎症の原因は、物理的損傷、化学物質、微生物、組織の壊死、がん、または他の物質による可能性がある。急性炎症はごく数日間の短期間持続型である。しかしより長く持続する場合、これは慢性炎症と呼ばれる場合がある。
【0173】
IPASには、炎症障害が含まれる。炎症障害は一般的に、発熱、発赤、腫脹、疼痛、または機能喪失を特徴とする。炎症障害の原因の例には、微生物感染症(たとえば、細菌および真菌感染症)、物理的作用因子(たとえば、火傷、放射線、および外傷)、化学的作用因子(たとえば、毒素、および苛性物質)、組織の壊死および様々なタイプの免疫反応が含まれるがこれらに限定されるわけではない。さらなる態様において、IPASには、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,929,055号および第5,532,227号において記述される障害が含まれる。
【0174】
炎症障害の例には、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、急性および慢性の感染症(ジフテリアおよび百日咳が含まれる細菌および真菌)、急性および慢性の気管支炎、副鼻腔炎、上部呼吸器感染症(一般的な風邪等)、急性および慢性の胃腸炎および結腸炎、急性および慢性の膀胱炎および尿道炎、急性および慢性の皮膚炎、急性および慢性の結膜炎、急性および慢性の漿膜炎(心膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎および腱炎)、尿毒症性心膜炎、急性および慢性の胆嚢炎、急性および慢性の膣炎、急性および慢性のブドウ膜炎、薬物反応、虫さされ、熱傷(熱、化学、および電気)、ならびに日焼けが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0175】
「炎症プロセス関連状態」という用語には、1つの態様において、NO関連状態が含まれる。「NO関連状態」という用語には、酸化窒素(NO)または誘導可能な酸化窒素シンターゼ(iNOS)が関与するまたは関連する状態が含まれる。NO関連状態には、NOおよび/またはiNOSの異常な量を特徴とする状態が含まれる。好ましくは、NO関連状態は、本発明のテトラサイクリン化合物を投与することによって処置されうる。米国特許第6,231,894号;第6,015,804号;第5,919,774号;および第5,789,395号において記述される障害、疾患、および状態も同様にNO関連状態として含まれる。これらの特許の各々の全内容は参照により本明細書に組み入れられる。
【0176】
NO関連状態の他の例には、マラリア、老化、糖尿病、血管性卒中、神経変性障害(アルツハイマー病、ハンチントン病、およびパーキンソン病)、心疾患(梗塞後の再灌流関連損傷)、若年性糖尿病、炎症障害、変形性関節炎、リウマチ性関節炎、急性、再発性および慢性の感染症(細菌、ウイルス、および真菌)、急性および慢性の気管支炎、副鼻腔炎、および呼吸器感染症(一般的な風邪等)、急性および慢性の胃腸炎および結腸炎、急性および慢性の膀胱炎および尿道炎、急性および慢性の皮膚炎、急性および慢性の結膜炎、急性および慢性の漿膜炎(心膜炎、腹膜炎、滑膜炎、胸膜炎、および腱炎)、尿毒症性心膜炎、急性および慢性の胆嚢炎、嚢胞性線維症、急性および慢性の膣炎、急性および慢性のブドウ膜炎、薬物反応、虫さされ、熱傷(熱、化学、および電気)、ならびに日焼けが含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0177】
「炎症プロセス関連状態」という用語には、1つの態様において、マトリクスメタロプロテナーゼ関連状態(MMPAS)が含まれる。MMPASには、MMPまたはMMP活性の異常な量を特徴とする状態が含まれる。これらはまた、本発明の化合物を用いて処置されてもよいテトラサイクリン化合物応答状態として含まれる。
【0178】
マトリクスメタロプロテナーゼ関連状態(MMPAS)の例には、アテローム性動脈硬化症、角膜潰瘍、気腫、変形性関節炎、多発性硬化症(Liedtke et al., Ann. Neurol. 1998, 44:35-46;Chandler et al., J. Neuroimmunol.1997, 72:155-71)、骨肉腫、骨髄炎、気管支拡張症、慢性肺閉塞疾患、皮膚および眼の疾患、歯周炎、骨粗鬆症、リウマチ性関節炎、潰瘍性大腸炎、炎症障害、腫瘍の生育および浸潤(Stetler- Stevenson et al., Annu. Rev. Cell Biol. 1993, 9:541-73;Tryggvason et al., Biochim. Biophys. Acta 1987, 907:191-217;Li et al., Mol. Carcinog. 1998, 22:84-89)、転移、急性肺損傷、卒中、虚血、糖尿病、大動脈または血管動脈瘤、皮膚組織創傷、ドライアイ、骨および軟骨分解(Greenwald et al., Bone 1998, 22:33-38;Ryan et al., Curr. Op. Rheumatol 1996, 8:238-247)が含まれるがこれらに限定されるわけではない。他のMMPASには、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,459,135号;第5,321,017号;第5,308,839号;第5,258,371号;第4,935,412号;第4,704,383号;第4,666,897号;およびRE第34,656号において記述されるMMPASが含まれる。
【0179】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答状態はがんである。本発明のテトラサイクリン化合物が処置に有用である可能性があるがんの例には、全ての固形腫瘍、すなわち癌腫、たとえば腺がんおよび肉腫が含まれる。腺がんは、腺様組織に由来するか、または腫瘍細胞が認識可能な腺構造を形成する癌腫である。肉腫には広く、その細胞が胚結合組織のような原線維または均一な物質の中に埋もれている腫瘍が含まれる。本発明の化合物を用いて処置されてもよい癌腫の例には、前立腺がん、乳がん、卵巣がん、精巣がん、肺がん、結腸がん、および乳がんが含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の方法は、これらの腫瘍タイプの処置に限定されないが、任意の臓器系に由来する任意の固形腫瘍に拡大される。処置可能ながんの例には、結腸がん、膀胱がん、乳がん、黒色腫、卵巣がん、前立腺がん、肺がん、および同様に多様な他のがんが含まれるがこれらに限定されるわけではない。本発明の方法はまた、たとえば前立腺がん、乳がん、腎臓がん、卵巣がん、精巣がん、および結腸がんなどの腺がんにおけるがんの成長の阻害を引き起こす。
【0180】
1つの態様において、本発明は、がん細胞の成長の阻害が起こるように、すなわち細胞の増殖、浸潤、転移、または腫瘍の発生が減少する、遅れる、または停止するように、置換されたテトラサイクリン化合物の有効量を投与することによって、がんに罹っているまたはがんに罹るリスクを有する対象を処置するための方法に関する。阻害は、炎症プロセスの阻害、炎症プロセスのダウンレギュレーション、いくつかの他の機序、または機序の組み合わせに起因してもよい。または、テトラサイクリン化合物は、がんの再発を防止するために、たとえば外科的切除または放射線治療後の残留がんを処置するために有用である可能性がある。本発明に従う有用なテトラサイクリン化合物は、他のがん処置と比較してそれらが実質的に非毒性であることから特に有利である。さらなる態様において、本発明の化合物は、化学療法などの、しかしこれらに限定されない標準的ながん治療と併用して投与される。
【0181】
テトラサイクリン応答状態の例にはまた、神経精神障害および神経変性障害の双方が含まれるが、アルツハイマー病、ピック病などのアルツハイマー病に関連する認知症、パーキンソン病、および他のびまん性レヴィー小体病、老年性認知症、ハンチントン病、ジル・ド・ラ・ツレット症候群、多発性硬化症、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、進行性核上麻痺、てんかん、およびクロイツフェルト-ヤコブ病、高血圧症および睡眠障害などの自律神経機能障害、神経精神障害(うつ病、統合失調症、統合失調感情障害、コルサコフ精神病、躁病、不安障害、恐怖障害等)、学習または記憶障害(健忘症、または加齢関連記憶力喪失、注意欠陥障害等)、気分変調障害、大うつ障害、強迫障害、精神活性物質使用による障害、不安、恐怖症、パニック障害のみならず双極性感情障害(重度の双極性感情(気分)障害(BP-1)、双極性感情神経障害、たとえば偏頭痛および肥満等)に限定されない神経障害が含まれる。さらなる神経障害には、たとえばその最新版の全内容が参照により本明細書に組み入れられる、精神障害に関する全米精神医学会の診断および統計マニュアル(American Psychiatric Association's Diagnostic and Statistical manual of Mental Disorders(DSM))において記載される障害が含まれる。
【0182】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答状態は、糖尿病、たとえば若年性糖尿病、真性糖尿病、I型糖尿病、またはII型糖尿病である。さらなる態様において、タンパク質のグリコシル化は、本発明のテトラサイクリン化合物の投与によって影響を受けない。別の態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、インスリン治療などの、しかしこれに限定されない標準的な糖尿病治療と併用して投与される。
【0183】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答状態は骨量障害である。骨量障害には、対象の骨が障害である障害、および/または骨の形成、修復、またはリモデリングが有利である状態が含まれる。たとえば、骨量障害には骨粗鬆症(たとえば、骨の強度および密度の減少)、骨折、外科技法に関連する骨形成(たとえば、顔面再構築)、骨形成不全(脆弱骨病)、低ホスファターゼ血症、パジェット病、線維性骨形成障害、大理石骨病、骨髄腫骨疾患、および原発性副甲状腺機能亢進症に関連する場合などの骨におけるカルシウムの枯渇が含まれる。骨量障害には、骨の形成、修復、またはリモデリングが対象にとって有利である全ての状態のみならず、本発明のテトラサイクリン化合物によって処置されうる対象の骨または骨格系に関連する他の全ての障害が含まれる。さらなる態様において、骨量障害には、その各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,459,135号;第5,231,017号;第5,998,390号;第5,770,588号;RE第34,656号;第5,308,839号;第4,925,833号;第3,304,227号;および第4,666,897号において記述される障害が含まれる。
【0184】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答状態は急性の肺損傷である。急性の肺損傷には、成人呼吸窮迫症候群(ARDS)、ポンプ後(post pump)症候群(PPS)、および外傷が含まれる。外傷には、外因性の物質または事象によって引き起こされる生きている組織に対する任意の損傷が含まれる。外傷の例には、挫傷、堅い表面との接触、または切断もしくは肺に対する他の損傷が含まれるがこれらに限定されるわけではない。
【0185】
本発明はまた、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物を投与することによって、急性の肺損傷を処置するための方法にも関する。
【0186】
本発明のテトラサイクリン応答状態にはまた、慢性肺障害も含まれる。本発明は、本明細書において記述される化合物などのテトラサイクリン化合物を投与することによって慢性肺障害を処置するための方法に関する。本発明には、慢性肺障害が処置されるように置換テトラサイクリン化合物の有効量を対象に投与する段階が含まれる。慢性肺障害の例には、喘息、嚢胞性線維症、および肺気腫が含まれるがこれらに限定されるわけではない。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、その各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,977,091号;第6,043,231号;第5,523,297号;および第5,773,430号において記述される障害などの急性および/または慢性肺障害を処置するために用いられる。
【0187】
なお別の態様において、テトラサイクリン化合物応答状態は、虚血、卒中、または虚血性卒中である。本発明はまた、本発明の置換されたテトラサイクリン化合物の有効量を投与することによって虚血、卒中、または虚血性卒中を処置するための方法に関する。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,231,894号;第5,773,430号;第5,919,775号;および第5,789,395号において記述される障害を処置するために用いられる。
【0188】
別の態様において、テトラサイクリン化合物応答状態は皮膚創傷である。本発明はまた、少なくとも部分的に、急性の外傷性損傷(たとえば、切断、熱傷、擦過傷等)に対する上皮組織の治癒応答を改善するための方法にも関する。この方法には、急性創傷を治癒する上皮化組織の能力を改善するために本発明のテトラサイクリン化合物(抗菌活性を有してもよく、有しなくてもよい)を用いる段階が含まれてもよい。この方法は、治癒組織のコラーゲン蓄積速度を増加させうる。この方法はまた、MMPのコラーゲン分解および/またはゼラチン分解活性を減少させることによって、上皮化組織におけるタンパク質分解活性を減少させうる。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、皮膚の表面に投与される(たとえば、局所表面に)。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、たとえばその各々の全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第5,827,840号;第4,704,383号;第4,935,412号;第5,258,371号;第5,308,8391号;第5,459,135号;第5,532,227号;および第6,015,804号において記述されるように、皮膚創傷および他のそのような障害を処置するために用いられる。
【0189】
なお別の態様において、テトラサイクリン化合物応答状態は、対象(たとえば、大動脈または血管動脈瘤等を有するまたはそれらのリスクを有する対象)の血管組織における大動脈または血管動脈瘤である。テトラサイクリン化合物は、血管動脈瘤の大きさを低減するために有効である可能性があり、または動脈瘤が防止されるように血管動脈瘤の発症前に対象に投与されてもよい。1つの態様において、血管組織は動脈、たとえば大動脈、たとえば腹部大動脈である。さらなる態様において、本発明のテトラサイクリン化合物は、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,043,225号および第5,834,449号において記述される障害を処置するために用いられる。
【0190】
細菌感染症は、広く多様なグラム陽性菌およびグラム陰性菌によって引き起こされる可能性がある。本発明の化合物は、他のテトラサイクリン化合物に対して抵抗性である生物に対して、抗生物質として有用である。本発明のテトラサイクリン化合物の抗生物質活性は、Waitz, J.A., National Commission for Clinical Laboratory Standards, Document M7-A2, vol. 10, no. 8, pp. 13-20, 2nd edition, Villanova, PA (1990)において記述されるインビトロの標準的なブロス希釈法を用いて決定されてもよい。
【0191】
テトラサイクリン化合物はまた、たとえばリケッチア感染症、多数のグラム陽性およびグラム陰性細菌感染症、性病性リンパ肉芽腫、封入体結膜炎、およびオウム病などの、テトラサイクリン化合物によって従来処置される感染症を処置するために用いられてもよい。テトラサイクリン化合物は、たとえば、肺炎桿菌(K. pneumoniae)、サルモネラ(Salmonella)、腸内連鎖球菌(E. hirae)、アシネトバクター・バウマニイ(A. baumanii)、カタル球菌(B. catarrhalis)、インフルエンザ菌(H. influenzae)、緑膿菌(P. aeruginosa)、エンテロコッカス・フェシウム(E.faecium)、大腸菌、黄色ブドウ球菌、またはエンテロコッカス・フェカーリスの感染症を処置するために用いられてもよい。1つの態様において、テトラサイクリン化合物は、他のテトラサイクリン抗生物質化合物に対して抵抗性である細菌感染症を処置するために用いられる。本発明のテトラサイクリン化合物は、薬学的に許容される担体と共に投与されてもよい。
【0192】
別の治療物質または処置と「併用して」という言葉には、テトラサイクリン化合物(たとえば、阻害剤)と他の治療物質または処置との同時投与、テトラサイクリン化合物を先に投与した後に他の治療物質または処置を投与すること、および他の治療物質または処置を先に投与した後にテトラサイクリン化合物を投与することが含まれる。他の治療物質は、IPASなどの疾患または障害の症状を処置、予防、または低減するために当技術分野において公知である、任意の物質であってもよい。さらに、他の治療物質は、テトラサイクリン化合物の投与と併用して投与した場合に患者に対して有益な、任意の物質であってもよい。1つの態様において、本発明の方法によって処置されるがんなどの疾患には、その全内容が参照により本明細書に組み入れられる、米国特許第6,100,248号;第5,843,925号;第5,837,696号;および第5,668,122号において記述される疾患が含まれる。
【0193】
化合物の「有効量」という言葉は、テトラサイクリン化合物応答状態を治療または予防するために必要または十分である量である。有効量は、対象の体格および体重、病気のタイプ、または特定のテトラサイクリン化合物などの要因に応じて変化しうる。たとえば、テトラサイクリン化合物の選択は、「有効量」を構成するものに影響を及ぼしうる。当業者は、前述の要因を調べて、過度の実験を行うことなく、テトラサイクリン化合物の有効量に関する決定を行うことができるであろう。
【0194】
本発明の治療法において、本発明の1つまたは複数のテトラサイクリン化合物を単独で対象に投与してもよく、またはより典型的には、本発明の化合物を、従来の賦形剤、すなわち非経口、経口、もしくは他の望ましい投与にとって適した、活性化合物と有害に反応しない、およびそのレシピエントに対して有害ではない、薬学的に許容される有機もしくは無機担体物質と混合して、薬学的組成物の一部として投与してもよい。
【0195】
本発明はさらに、さらなる限定であると解釈されるべきではない以下の実施例によってさらに説明される。
【実施例】
【0196】
6.本発明の例証
実施例1:9-アルキルアミノメチルミノサイクリンの合成

塩酸ミノサイクリン(化合物2)を、無水メチルスルホン酸またはトリフルオロメタンスルホン酸などの類似の水スカベンジャー酸と共にメチルスルホン酸またはフッ化水素酸に溶解した。N-ヒドロキシメチルフタルイミドを反応混合物に添加した。反応が完了するまで混合物を20〜35℃で撹拌した。酸溶液を氷/水混合物に加えると、トリフリン酸塩を容易に沈殿させて、濾過および収集することができる。固体をアセトンに再度溶解して、塩基によって中性pHにした。水を添加することによって産物を沈殿させた。トリフリン酸がスカベンジャーとして存在する場合、産物は中和しなくとも沈殿しうる。産物はビスおよびトリスアルキル化産物の混合物として単離された。この反応物の単離された材料を所望のビス比(90%)で濃縮した。
【0197】
固体をEtOHまたはMeOHに懸濁した。メチルアミンを用いてアミノ分解を行った。反応が進行するとフタルアミド副産物が沈殿し、これを濾過によって除去した。約1.5倍量のt-ブチルメチルエーテルを反応混合物に添加することによって淡黄色固体産物が沈殿し、これを単純な濾過によって収集すると、多くの小さい不純物およびメチルアミン試薬が溶液中に残った。化合物のさらなる精製は、メタノールなどの低級脂肪族アルコールによる再スラリー形成を通して行った。
【0198】
遊離塩基としての化合物4を、メタノールおよびアルデヒドを充填した水素添加容器に移した。不活化Pd/C触媒を充填して容器を水素ガスによって加圧した。反応混合物を約30 psiの水素圧下で約24時間水素添加した。化合物4から1への変換が完了した後、溶液を濾過して、セライトパッドを通して洗浄した。この時点で、反応混合物は、約3〜7%の非常に低いβC-4エピマーを含有した。
【0199】
産物(1)は、産物をその不純物から選択的に単離するために以下のように作り上げた。溶液のpHを、濃HClによって約4.5に調整して、溶液をジクロロメタンによって抽出した。好ましいエピマー産物(たとえば、α)を選択的に回収するために、水層をジクロロメタンによって抽出した。ジクロロメタン層を合わせて濃縮し、n-ヘプタン2 Lを添加して産物を沈殿させた。さらなる精製は、粗産物を溶解するためにt-ブチルメチルエーテルを伴うまたは伴わない調製技法を繰り返すことによって得られた。
【0200】
実施例2:化合物1の精製
粗9-(2',2'-ジメチルプロピルアミノメチル)ミノサイクリンの遊離塩基(40 g)を緩衝液A(0.1%メタンスルホン酸水溶液−MSA)150 mLに溶解して、pHをMSAによって2〜3に調整した。
【0201】
溶液を濾過して、HPLCに注入すると、産物は94%緩衝液Aおよび6%アセトニトリルのアイソクラティック勾配によって溶出された。産物のピークが検出されると、産物の分画収集を開始した。各分画を分析し、主なピークの80%AUCより大きい許容基準を、初期産物分画に用いた。分画を合わせる場合、プールした分画の不純物および相対濃度のレベルを、最終産物の仕様を満たす選択基準の考慮に入れた。産物分画に、収集した分画の当初の容積の10%に等しい10%亜硫酸ナトリウム水溶液を添加した。
【0202】
以下の実施例は、1回注入の出力結果を表す。複数回注入の出力結果を同様に合わせて作り上げてもよい。産物の分画容積3.5 L(亜硫酸ナトリウムが含まれる)を収集して、pHを、水酸化ナトリウム溶液を用いて4.0〜4.5に調整した。水溶液をジクロロメタン2 Lによって洗浄し、有機層を分離して廃棄した。
【0203】
水層のpHを、水酸化ナトリウムを用いて7.5 〜8.5に調整し、産物をジクロロメタン2.4 Lによって4回抽出した。各抽出前に、pHを水酸化ナトリウムまたはMSAによって7.5〜8.5に再度調整した。
【0204】
4つのジクロロメタン層を合わせて約200 mLに濃縮し、これを激しく撹拌されているn-ヘプタン(2.5 L)に徐々に添加した(約10分間かけて)。懸濁液を室温で約10分間撹拌し、n-ヘプタン1.5 Lによって徐々に希釈した(5分間かけて)。スラリーを0〜5℃に冷却して、1〜2時間撹拌する。懸濁した固体を濾過してn-ヘプタン3×150 mLによって洗浄した。一定の重量が達成されるまで、および全ての残留溶媒レベルが仕様の範囲内となるまで、産物を40℃の真空下で少なくとも24時間乾燥させた。9-(2',2'-ジメチルプロピルアミノメチル)ミノサイクリンの遊離塩基約13.6 gが黄色の固体として単離された。
【0205】
実施例3:化合物1の結晶HCl塩の調製
化合物1(13 g)をアセトン(300 mL)に溶解して、濾過し、濾紙をさらにアセトンによって洗浄した。合わせた濾液および洗浄液を5℃に冷却した。合わせた濾液および洗浄液に、濃HCl(3.9 mL)のアセトン溶液(79 mL)を激しく撹拌しながら徐々に添加した。得られたスラリーを氷浴中で15分間撹拌して濾過した。
【0206】
最初の固体収穫物を冷アセトンおよびペンタンによって洗浄し、真空下で48時間乾燥させると、黄色の非晶質固体13.7 gが得られた。飽和した濾液を有するフラスコをアルミニウムホイルで覆って、2週間放置すると、そのあいだに単結晶の成長が観察された。結晶を濾過によって収集して、ヘキサンによって洗浄した。
【0207】
実施例4:化合物1の結晶メタンスルホン酸塩の調製
25 mLの三頚フラスコに不活性な窒素雰囲気下でイソプロパノール(IPA)3 mLを充填した。化合物1の非晶質の遊離塩基225 mgをフラスコに添加することによってスラリーを調製した。スラリーを45℃の温度まで加温した。次に、メタンスルホン酸水和物(98.0 mg)をスラリーに添加した。スラリーを45℃で1時間撹拌した後、22℃に冷却すると、濃厚な結晶スラリーを産生した。スラリーを濾過してIPA(2×1 mL)によって洗浄した。一定の重量を達成するために、55℃で2時間より長く乾燥させることによって、過剰量のIPAを結晶ケークから除去した。化合物1の結晶メシレート(メタンスルホン酸)塩(180 mg)を単離した。結晶メシレート塩は5℃で不安定であることが決定された。
【0208】
実施例5:化合物1の結晶トシレート塩の調製(スラリー法を使用)
5 Lの三頚フラスコに不活性窒素雰囲気下でイソプロパノール(IPA)2.0 Lを充填した。化合物1の非晶質の遊離塩基289 gをフラスコに添加することによってスラリーを調製した。p-トルエンスルホン酸水和物(97.0 g)のIPA溶液(400 mL)をスラリーに添加した。水(9 mL)を添加することによってスラリー上清の水分含有量を0.6 g/Lに調整し、スラリーを20〜25℃で18時間撹拌して、濃厚な結晶スラリーを産生した。スラリーを濾過してIPA(2×500 mL)によって洗浄した。ケークの中に乾燥窒素を24時間吹き付けることによって過剰量のIPAを結晶ケークから除去した。3重量パーセント(重量%)のIPAを含有する固体に関して、ケークの中に湿潤窒素を相対湿度70〜75%で24時間吹き付けることによって、ケークをさらに乾燥させた。ケークは、0.9重量%IPAを保持したが、これはこの方法によってさらに低減されなかった。ケークの中に乾燥窒素を24時間吹き付けることによって過剰量の水をケークから除去した。化合物1のトシレート塩がオレンジ色の粉末(337 g)として単離された。化合物1の単離されたトシレート塩は、唯一の観察された形態を有する結晶であった:X線粉末回折(XPRD)および熱重量測定(TG)分析によって決定した場合に、非化学量論的な半水和物。
【0209】
実施例6:化合物1の結晶トシレート塩の調製(溶液法を使用)
5 Lの三頚フラスコに不活性窒素雰囲気下で、メタノール1.7 Lおよびメチル-t-ブチルエーテル1.7 Lを充填した。p-トルエンスルホン酸一水和物(209 g)および化合物1の非晶質の遊離塩基(556 g)を撹拌しながらフラスコに添加することによって、透明な溶液を得た。化合物1のモノトシレート塩の種結晶量(3 g)を添加して結晶化を開始させて、さらなる量のメタノール(0.1 L)およびメチル-t-ブチルエーテル(0.5 L)を添加した。得られたスラリーを約20℃で22時間撹拌して濃厚な結晶スラリーを産生した。スラリーを濾過してメタノール1.1 Lとメチル-t-ブチルエーテル1.3 Lの混合物によって洗浄した後、メチル-t-ブチルエーテル(2×2.4 L)によって洗浄した。化合物1のトシレート塩がオレンジ色の粉末として単離された。ケークの中に乾燥窒素を24時間吹き付けることによって結晶ケークから過剰量の溶媒を除去した。次に、固体が約6重量パーセント(重量%)の溶媒を含有するまで、ケークを約30℃の真空下で乾燥させた。固体が3重量パーセント(重量%)未満の溶媒を含有するまで、約45℃の真空下でケークをさらに乾燥させた。化合物1の単離されたトシレート塩は、X線粉末回折(XPRD)によって決定した場合に観察された1型を有する結晶であった。
【0210】
実施例7:化合物1のトシレート塩の特徴付け
化合物1の単離されたトシレート塩のXRPDパターンは、5.6、8.0、8.6、11.4、13.0、15.5、18.8、20.4、および24.5°の2θ値を含んだ。
【0211】
結晶トシレート塩を、窒素流下で加熱速度10℃/分で熱重量測定(TG)分析に供した。81.3℃までに3.9%の重量損失が観察され、これは水分の喪失によるものであった。
【0212】
乾燥させると、化合物1の結晶トシレート塩の水分含有量は0.5%であると計算された。室温で24時間放置した後、この値は5%まで増加した。非晶質の化合物1とは対照的に、化合物1の結晶トシレート塩は、室温で数週間および数ヶ月間安定であり、約5%の水分含有量を維持した。
【0213】
対象の結晶トシレート塩の吸湿性を、対称蒸気収着分析器を用いて決定し、25.0℃で5%〜95%〜1%まで、25℃で5%の間隔で、パーセント相対湿度(%RH)の関数として獲得された重量%として報告した。脱着時にわずかなヒステリシスを有する、95%RHで12重量%の最大重量増加が観察され、IPAによる2重量%の喪失が観察された。
【0214】
結晶トシレート塩は、以下の表6において要約される溶解度を有すると決定された。溶解度は、周囲温度で過剰量の固体を溶媒と2時間混合した後上清を濾過することによって決定された。上清の濃度を高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によって決定した。対象の結晶トシレート塩56.8 mgを水0.5 mLにおいて、および対象の結晶トシレート塩122.1 mgを水1.0 mlにおいて平衡にすると、透明な溶液が得られた。水1.0 mL中での本発明の結晶トシレート塩122.1 mgのpHは5.70であると決定された。
【0215】
【表6】

【0216】
実施例8:化合物1のXRPD
X線粉末回折パターンをCu Kα線照射(40 kV、40 mA)を用いて、θ-θゴニオメータ、発散V20および受光スリット、グラファイト二次モノクロメータおよびシンチレーションカウンターを用いてSiemens D5000回折計において収集した。認定されたCorundum標準(NIST 1976)を用いて、機器の性能をチェックした。データ収集のために用いたソフトウェアは、Diffrac Plus XRD Commander v2.3.1であり、データをDiffrac Plus EVA v 11,0.0.2またはv 13.0.0.2を用いて分析および表示した。
【0217】
粉末試料をフラットプレート標本として用いて調製した。試料約35 mgを、研磨したゼロバックグラウンド(510)シリコンウェーハの中に切り込まれた腔の中に穏やかに充填した。分析のあいだ試料を自身の平面で回転させた。データ収集の詳細は以下のとおりである:
角度の範囲:2〜42°2θ
ステップサイズ:0.05°2θ
収集時間:4秒/ステップ
高分解能X線粉末回折パターンをCu Kα線照射(40 kV、40 mA)、自動XYZステージ、自動試料配置のためのレーザービデオ顕微鏡、およびHiStar 2次元領域検出器を用いて、Bruker AXS C2 GADDS回折計において収集した。X線光学系は、0.3 mmのピンホールコリメータに連結させた1つのGobel多層膜ミラーからなる。
【0218】
光線の発散、すなわち、試料におけるX線光線の有効サイズは約4 mmであった。試料-検出器の距離20 cmでθ-θ連続スキャンモードを使用すると、これは3.2°〜29.7°の有効2θ範囲を与える。典型的に、試料はX線光線に120秒間曝露されるであろう。データ収集のために用いたソフトウェアは、GADDS for WNT 4.1.16であり、データはDiffrac Plus EVA v 9.0.0.2またはv 13.0.0.2を用いて分析および表示された。
【0219】
実施例9:温度および水分安定性試験
様々な温度および/または湿度条件に曝露した場合の、各々の塩に関する高速液体クロマトグラフィー(HPLC)不純物プロフィールの変化をモニターすることによって、化合物1のトシレート塩およびメシレート塩について安定性試験を行った。各試料を密封容器に入れて、制御された次の3つの環境に曝露した:冷蔵(5℃)、20℃で60%相対湿度、および40℃で75%相対湿度。2週間後、結晶トシレート塩は、化合物1の最も安定な結晶形態であると決定された。結晶トシレート塩の安定性試験を継続した。
【0220】
試料を、トシレート塩に関して0、1、2、4週間(表7)および3ヶ月(表8)の時点で;ならびにメシレート塩に関して0、1、および2週間(表9)で、以下の逆相HPLC不純物プロフィール法によって分析した。
【0221】
逆相HPLC分析をSYMMETRY SHIELD RP 18カラム(4.6×250 mm、粒子径5 pm)を用いて行ったが、類似または同等のカラムを用いる分析は類似の結果を生じると予想されるであろう。移動相成分はpH 3.3の0.01 M酢酸アンモニウム水溶液(A)およびアセトニトリル(B)であった。移動相成分は、6%から15%のBまで5分間で増加し、15%のBで15分間維持し、15%から60%のBまで10分間で増加した後60%から90%のBまで2分間で増加し、その後系を6%のBで4分間再度平衡にする勾配であった。流速は1.0 mL/分であり、注入容積は10.0 μLであった。カラム温度は30℃に維持された。検出は280 nmでの紫外光(UV)によって行った。化合物1の保持時間は約15.7分であった。試料溶液を移動相Aにおいて最終濃度2.0 mg/mLに調製した。
【0222】
【表7】

* RHは相対湿度を指す。
** 総不純物には、明記されたバッチにおける全ての不純物が含まれた。
*** RRT 1.26はβ-エピマーを指す。
【0223】
【表8】

* RHは相対湿度を指す。
** 総不純物には、明記されたバッチにおける全ての不純物が含まれた。
【0224】
【表9】

【0225】
上記のデータは、冷蔵でおよび/または20℃&60%RH条件下で少なくとも4週間保存した場合、化合物1のトシレート塩が安定であることを証明する。化合物1のトシレート塩は、0℃〜70℃の範囲、または5℃〜50℃の範囲、または20℃〜30℃の範囲の温度で安定である。
【0226】
実施例10:光安定性試験
光安定性試験を化合物1のトシレート塩について行った。2つの試料を透明なガラスペトリ皿において調製した。1つの試料をアルミニウムホイルで覆って対照試料とした。双方の試料をES 2000 Enviromental Light 10チャンバーに入れて、12キロルクスのクールホワイト蛍光に全体で47時間曝露した。試料をHPLC不純物プロフィール法によって分析し、結果を表10に要約する。
【0227】
【表10】

【0228】
同等物
当業者は、本明細書において記述される具体的態様および方法に対する多くの同等物を、ルーチンにすぎない実験を用いて認識または確認することができるであろう。そのような同等物は以下の特許請求の範囲に包含されることが意図される。
【0229】
本明細書において引用される全ての特許、特許出願、および文献参考文献は、明示的に参照により本明細書に組み入れられる。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記化合物1の結晶形態:


【請求項2】
下記化合物1のトシレート塩:


【請求項3】
請求項2記載の塩の結晶形態。
【請求項4】
図8に記載されるパターンと実質的に類似のX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項3記載の結晶形態の多型体。
【請求項5】
Cu Kα線照射を用いた場合に約8.06、13.02、および18.83°2θでのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4記載の多型体。
【請求項6】
Cu Kα線照射を用いた場合に約8.06、11.41、13.02、18.83、20.54、および24.53°2θでのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4記載の多型体。
【請求項7】
Cu Kα線照射を用いた場合に約5.60、8.06、8.57、11.41、13.02、15.58、18.83、20.54、および24.53°2θでのピークを含むX線粉末回折パターンを特徴とする、請求項4記載の多型体。
【請求項8】
下記化合物1のトシレート塩をイソプロパノールから結晶化することによって得られる、請求項4記載の多型体:


【請求項9】
第一の溶媒または溶媒の混和物に化合物1の遊離塩基を溶解して、第一の溶液を形成する段階;
第二の溶媒または溶媒の混和物にp-トルエンスルホン酸を溶解して、第二の溶液を形成する段階;および
第一の溶液と第二の溶液とを混和して、第三の溶液を形成する段階
を含む、下記化合物1の安定な結晶トシレート塩を調製する方法:


【請求項10】
第一の溶媒または溶媒混和物と第二の溶媒または溶媒混和物とが同一であるかまたは異なる、請求項9記載の方法。
【請求項11】
第一の溶媒混和物と第二の溶媒混和物が各々独立してアルコール溶媒の混和物である、請求項9記載の方法。
【請求項12】
各々の溶媒混和物が、独立して2種類のアルコール溶媒の混和物である、請求項11記載の方法。
【請求項13】
2種類のアルコール溶媒がエタノールおよびイソプロパノールである、請求項12記載の方法。
【請求項14】
エタノールおよびイソプロパノールの容積対容積比が2:1である、請求項13記載の方法。
【請求項15】
各々の溶媒混和物がアルコール溶媒およびアンチソルベントを含む、請求項9記載の方法。
【請求項16】
アルコール溶媒がメタノールである、請求項15記載の方法。
【請求項17】
アンチソルベントがケトン、エーテル、およびエステルから選択される、請求項15記載の方法。
【請求項18】
エーテルがメチル-t-ブチルエーテルである、請求項17記載の方法。
【請求項19】
各々の溶媒混和物がメタノールおよびメチル-t-ブチルエーテルを含む、請求項9記載の方法。
【請求項20】
メタノールおよびメチル-t-ブチルエーテルの容積対容積比が1:1.2である、請求項19記載の方法。
【請求項21】
p-トルエンスルホン酸が化合物1の量に対して25〜75重量%の量で提供される、請求項9記載の方法。
【請求項22】
p-トルエンスルホン酸がp-トルエンスルホン酸一水和物の形態で提供される、請求項9記載の方法。
【請求項23】
化合物1の1型多型体トシレート塩を第三の溶液に添加して第四の溶液を形成する段階をさらに含む、請求項9記載の方法。
【請求項24】
第四の溶液が攪拌時にスラリーを形成する、請求項23記載の方法。
【請求項25】
スラリーを乾燥させる段階をさらに含む、請求項24記載の方法。
【請求項26】
請求項9記載の方法に従って得られる、下記化合物1のトシレート塩の多型体:


【請求項27】
請求項3記載の結晶塩と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項28】
請求項4記載の多型体と、薬学的に許容される希釈剤、賦形剤、または担体とを含む、薬学的組成物。
【請求項29】
多型体が純粋な形態で存在する、請求項28記載の薬学的組成物。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【公表番号】特表2011−520988(P2011−520988A)
【公表日】平成23年7月21日(2011.7.21)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−510742(P2011−510742)
【出願日】平成21年5月26日(2009.5.26)
【国際出願番号】PCT/US2009/045143
【国際公開番号】WO2009/143509
【国際公開日】平成21年11月26日(2009.11.26)
【出願人】(500127209)パラテック ファーマシューティカルズ インコーポレイテッド (50)
【Fターム(参考)】