説明

テトラヒドロキノリン誘導体の結晶

【課題】 A形と称される化合物(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩を提供することを目的とする。
【解決手段】 本発明は、ノシセプチン受容体拮抗薬である化合物(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩の新規結晶に関する。本結晶は、熱力学的安定性および医薬品製剤に包含するための適合性に関してすぐれており、ノシセプチン受容体が関連する疾患、例えば、痛みや食欲の調節又は記憶・学習等に関連する医薬として有用である。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ノシセプチン受容体ORL1(Opioid receptor like−1受容体)へのノシセプチンの結合を阻害する作用を有する物質、すなわちテトラヒドロキノリン誘導体の結晶に関し、より詳しくは(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩の結晶に関する。
【0002】
ノシセプチン受容体ORL1へのノシセプチンの結合を阻害する化合物は、癌性疼痛、術後疼痛、偏頭痛、痛風、慢性リウマチ、慢性疼痛、神経痛等の痛みを伴う疾患に対する鎮痛薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬耐性克服薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬による依存性もしくは退薬性症候群克服薬;鎮痛作用増強薬;抗肥満薬もしくは食欲調節薬;加齢、脳血管障害及びアルツハイマー病に代表される学習記憶力低下もしくは痴呆症状の改善薬もしくは予防薬;注意欠陥多動性障害及び学習障害に代表される発達期認知機能改善薬;精神分裂症治療薬;パーキンソン病及び舞踏病に代表される退行性神経変性疾患治療薬;抗うつ薬もしくは感情調節薬;尿崩症治療薬もしくは予防薬;多尿症治療薬もしくは予防薬;低血圧治療薬等として有用である。
【背景技術】
【0003】
ノシセプチン(orphanin FQと同一物質)は、オピオイドペプチドと類似の構造を持つ17個のアミノ酸単位よりなるペプチドである。ノシセプチンは侵害刺激に対する反応性の増強活性、食欲増進活性、空間学習能力を低下させる活性、古典的オピエイト作動薬の鎮痛作用に対する拮抗作用、ドーパミン放出抑制作用、水利尿作用、血管拡張作用、全身血圧降下作用などを有しており、脳内でノシセプチン受容体ORL1を介して痛みや食欲の調節又は記憶・学習等に関与していると考えられている[ネイチャー,377巻,532頁(1995);ソサエティフォーニューロサイエンス(Society for Neuroscience),22巻,455頁(1996);ニューロレポート(NeuroReport),8巻,423頁(1997);ヨーロピアンジャーナルオブニューロサイエンス(Eur.J.Neuroscience),9巻,194頁(1997);ニューロサイエンス(Neuroscience),75巻,1頁(1996);ibid.,333頁(1996);ライフサイエンス,60巻,PL15頁(1997);ibid.,PL141頁(1997);プロシーディングフォーナショナルアカデミーオブサイエンス(Proceedings for National academy of sciences),94巻,14858頁(1997)参照]。
【0004】
また、ノシセプチン受容体ORL1の発現が阻止されたノックアウト・マウスにおいては、モルヒネ耐性が減弱されること又は記憶・学習能力が向上することが知られている[ニューロサイエンスレターズ(Neuroscience Letters),237巻,136頁(1997);ネイチャー,394巻,577頁(1998)参照]。
【0005】
更に、ノシセプチン自身はモルヒネ退薬時に見られるような禁断症状様の症状を引き起こすこと、及び非ペプチド性のノシセプチン受容体アンタゴニストはモルヒネ耐性、依存性、退薬症候群様の症状を改善することが報告されている[サイコファーマコロジー(Psychopharmacology),151巻,344−350頁(2000)、ジャーナルオブニューロサイエンス(Journal of Neuroscience),20巻,7640頁(2000)参照)]。
【0006】
一方、ノシセプチン前駆蛋白質の欠損マウスにおいては、不安様作用およびストレスに対する反応の変化が示されている[プロシーディングフォーナショナルアカデミーオブサイエンス(Proceedings for National academy of sciences),96巻,10444頁(1999)参照]。
【0007】
したがって、ノシセプチン受容体ORL1へのノシセプチンの結合を特異的に阻害する物質は、癌性疼痛、術後疼痛、偏頭痛、痛風、慢性リウマチ、慢性疼痛、神経痛等の痛みを伴う疾患に対する鎮痛薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬耐性克服薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬による依存性もしくは退薬性症候群克服薬;鎮痛作用増強薬;抗肥満薬もしくは食欲調節薬;加齢、脳血管障害及びアルツハイマー病に代表される学習記憶力低下もしくは痴呆症状の改善薬もしくは予防薬;注意欠陥多動性障害及び学習障害に代表される発達期認知機能改善薬;精神分裂症治療薬;パーキンソン病及び舞踏病に代表される退行性神経変性疾患治療薬;抗うつ薬もしくは感情調節薬;尿崩症治療薬もしくは予防薬;多尿症治療薬もしくは予防薬;低血圧治療薬等として有用である。
【0008】
ノシセプチン受容体ORL1へのノシセプチンの結合を特異的に阻害する物質としては、例えばWO99/029696号、WO00/27815号、WO01/83454号、WO03/40099号、WO03/64425号に開示がある。これらの化合物は、いずれもベンゼン骨核にシクロアルカンが縮合した骨核を有しているが、本発明は、ピリジン骨核にシクロアルカンが縮合しており、骨核が異なるものである。
【0009】
一方、テトラヘドロンレターズ、2000年、41巻、9829〜9833頁には下記構造を有する化合物が開示されている。
【0010】
【化1】

この化合物は、ハロペリドールの誘導体として開発されたものであり、作用メカニズムは、本発明化合物と異なるものである。
【特許文献1】WO99/029696号、
【特許文献2】WO00/27815号、
【特許文献3】WO01/83454号、
【特許文献4】WO03/40099号、
【特許文献5】WO03/64425号、
【非特許文献1】テトラヘドロンレターズ、2000年、41巻、9829〜9833頁、
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、ノシセプチン受容体ORL1へのノシセプチンの結合を阻害する化合物の結晶を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
臨床試験および安定性試験において多形結晶が一定に保たれないと、用いられた、または測定された正確な用量があるロットから次のロットまで同等にならないことから、医薬化合物の多形結晶は、適当な剤形の開発に関連する重要な事柄である。医薬化合物を使用目的で製造する場合には、それぞれの投与において送達される多形結晶を知ることにより、製造工程で同一の結晶形が用いられ、それぞれの用量に同量の薬物が含まれていることを保証することが重要である。したがって、単一の多形結晶あるいは何種類かの既知の多形結晶の組合せが存在することを確かめることが不可欠である。さらに、ある種の多形結晶は、大きな熱力学的安定性を示し、医薬品製剤に包含する場合に、他の多形結晶に比べてより適していることもある。
【0013】
本発明は、ノシセプチン受容体ORL1へのノシセプチンの結合を阻害する化合物である、(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩のA形結晶を提供する。
【0014】
化合物(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オールは、下式の構造を有する。
【0015】
【化2】

【0016】
そして、この化合物には、A形、B形、C形と呼ばれる多形結晶が存在し、B形、C形の結晶は、溶媒中で平衡化することによりA形へと変化する。すなわち、A形は、この化合物の他の結晶形を上回る優れた特性を有しており、無水物で非吸湿性であり、他の多形結晶に比べて熱力学的により安定であり、医薬品製剤に包含する場合にもより安定であり、且つ生体内に取り込まれたときに高いバイオアベイラビリティを有する。
【0017】
A形結晶は、典型的には、粉末X線回折において、回折角度(2θ±0.1°)約13.6°、15.0°、15,7°、18.1°、22.9°、23.3°、27.4°、28.2°および29.5°に主要なピークを有し、より詳しくは、回折角度(2θ±0.1°)23.3°、15.0°および15.7°に強いピークを有し、回折角度(2θ±0.1°)23.3°、15.0°、15.7°、28.2°、22.9°および18.9°に中程度のピークを有し、そして、回折角度(2θ±0.1°)29.5°、27.4°および13.6°にもピークを有する。そして、好ましくは、粉末X線回折において、図1に示される回折パターン又はこれと結晶学的に同等の回折パターンを示す。
【0018】
A形結晶は、示差走査熱量計測定において、286−289℃に吸熱ピークを有している。又、207℃付近にも小さな吸熱ピークを有している。
【0019】
A形結晶を調製する際の出発の(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オールの形態学的組成は特に限定されず、塩酸塩の非晶形、B形、C形結晶からA形結晶に平衡化させることができる。
【0020】
本発明の化合物、(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩は、癌性疼痛、術後疼痛、偏頭痛、痛風、慢性リウマチ、慢性疼痛、神経痛等の痛みを伴う疾患に対する鎮痛薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬耐性克服薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬による依存性もしくは退薬性症候群克服薬;鎮痛作用増強薬;抗肥満薬もしくは食欲調節薬;加齢、脳血管障害及びアルツハイマー病に代表される学習記憶力低下もしくは痴呆症状の改善薬もしくは予防薬;注意欠陥多動性障害及び学習障害に代表される発達期認知機能改善薬;精神分裂症治療薬;パーキンソン病及び舞踏病に代表される退行性神経変性疾患治療薬;抗うつ薬もしくは感情調節薬;尿崩症治療薬もしくは予防薬;多尿症治療薬もしくは予防薬;低血圧治療薬等として有用である。特にA形結晶は、バイオアベイラビリティが高いので、他の結晶形のものと比べて少ない量で作用が発現しやすい。
【0021】
したがって、本発明はさらに、この結晶を活性成分として含む医薬品製剤およびある種の障害の治療におけるこのA形結晶およびその製剤の用途に関する。
【発明の効果】
【0022】
この発明によれば、ノシセプチンのノシセプチン受容体への結合に拮抗する作用を有する物質のなかでも、熱力学的に安定であり、医薬品製剤に包含する場合にも安定であり、且つ生体内に取り込まれたときに高いバイオアベイラビリティを有する物質が提供される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
A形結晶の調製
(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オールは、以下のスキームにより調製可能である。
【0024】
【化3】

【0025】
プロセス1
化合物とプロパルギルアミンとをアルコール溶媒中、NaAuCl4の存在下で反応させ、化合物とする。続いて化合物をm−クロロ過安息香酸を用いて酸化し、化合物とする。化合物を無水酢酸中で加熱反応し、化合物を得た後、化合物のアセチル基を加水分解して化合物を得る。ここで、化合物は、シス体/トランス体に分割可能である。
【0026】
化合物のトランス体の水酸基をトリエチルシリル基で保護し化合物としたのち、水素化リチウムアルミニウムにより還元し、化合物を得る。そして化合物をトシル化して化合物とする。
【0027】
プロセス2
Boc-4−ピペリドンを塩基中でPhNTf2と反応させた後、ビス(ピナコレート)ジボラン、塩化[1,1'-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]パラジウム(以下、「PdCl2(dppf)」という)及びdppfと反応させた後、2-クロロ-4-フルオロ-1-ヨードベンゼンと反応を行い、化合物を得る。化合物をハイドロボレーションして化合物10を得る。化合物10の保護基を除去し、ついで光学分割することにより、化合物11を得る。
【0028】
プロセス3
化合物と化合物11とをヨウ化ナトリウムの存在下、縮合し、化合物12とし、更にトリエチルシリル基を除去して目的の化合物を得ることができる。
【0029】
得られた(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オールを、メタノール、エタノール等の溶媒に溶解させ、例えば1N−HCl溶液を加えて塩酸塩を形成させ、溶媒を留去して塩酸塩の固体(非結晶形)を得る。
【0030】
A形結晶を調製する場合の原料となる(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩は、非結晶形であっても差し支えなく、又、B形、C形の結晶形を用いてもA形に平衡化が可能である。
【0031】
平衡化は、(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩(非結晶形)を、例えばエタノールに溶解させ、ついでn−ヘプタン、アセトン等の溶媒を滴下して混合液を室温まで冷却することにより行なわれる。
【0032】
X線粉末回折(XRPD)
本発明化合物のX線粉末回折(XRPD)パターンは、3kwX線発生器(CuKα1放射)およびNaI(Ti)シンチレーション検出器を備えたPhilips Analytical X'Pert PRO X-ray Diffraction Systemで測定した。試料を周囲温度に維持し、3.5°から40°(2シータ)まで測定した。その結果を、第1図に示す。
【0033】
A形(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩の特徴は、約13.6°、15.0°、15,7°、18.1°、22.9°、23.3°、27.4°、28.2°および29.5°(2シータ±0.1°)に主要な反射を有するX線粉末回折パターンであった。
【0034】
A形結晶は、示差走査熱量計測定において、286〜289℃に吸熱ピークを有している。又、207℃付近にも小さな吸熱ピークを有している。
【0035】
医薬組成物
本発明の化合物は、経口又は非経口的に投与することができ、その投与に適する形態に製剤化することにより、癌性疼痛、術後疼痛、偏頭痛、痛風、慢性リウマチ、慢性疼痛、神経痛等の痛みを伴う疾患に対する鎮痛薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬耐性克服薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬による依存性もしくは退薬性症候群克服薬;鎮痛作用増強薬;抗肥満薬もしくは食欲調節薬;加齢、脳血管障害及びアルツハイマー病に代表される学習記憶力低下もしくは痴呆症状の改善薬もしくは予防薬;注意欠陥多動性障害及び学習障害に代表される発達期認知機能改善薬;精神分裂症治療薬;パーキンソン病及び舞踏病に代表される退行性神経変性疾患治療薬;抗うつ薬もしくは感情調節薬;尿崩症治療薬もしくは予防薬;多尿症治療薬もしくは予防薬;低血圧治療薬等として使用することができる。
【0036】
本発明の化合物は、実際に臨床的に使用する場合、通常、その投与形態に合わせて薬学的に許容されうる添加剤と共に各種剤形に製剤化した後投与することができる。その際の添加剤としては、製剤分野において通常用いられる各種の添加剤を使用することができ、具体的には例えば、ゼラチン、乳糖、白糖、酸化チタン、デンプン、結晶セルロース、ヒドロキシプロピルメチルセルロース、カルボキシメチルセルロース、トウモロコシデンプン、マイクロクリスタリンワックス、白色ワセリン、メタケイ酸アルミン酸マグネシウム、無水りん酸カルシウム、クエン酸、クエン酸三ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、ソルビトール、ソルビタン脂肪酸エステル、ポリソルベート、ショ糖脂肪酸エステル、ポリオキシエチレン、硬化ヒマシ油、ポリビニルピロリドン、ステアリン酸マグネシウム、軽質無水ケイ酸、タルク、植物油、ベンジルアルコール、アラビアゴム、プロピレングリコール、ポリアルキレングリコール、シクロデキストリン又はヒドロキシプロピルシクロデキストリン等が挙げられる。
【0037】
これらの添加剤を用いて製剤化される剤形としては、例えば、錠剤、カプセル剤、顆粒剤、散剤、坐剤等の固形製剤;例えばシロップ剤、エリキシル剤、注射剤等の液体製剤等が挙げられ、これらは、製剤分野における通常の方法に従って調製することができる。なお、液体製剤としては、用時に水又は他の適当な媒体に溶解又は懸濁させる形であってもよい。また、特に注射剤の場合、必要に応じて生理食塩水又はブドウ糖液に溶解又は懸濁させてもよく、更に緩衝剤や保存剤を添加してもよい。
【0038】
これらの製剤は、本発明の結晶を医薬組成物を基準にして1〜100重量%、好ましくは1〜60重量%の割合で含有することができる。これらの製剤は、さらに、治療上有効な他の化合物を含んでいてもよい。
【0039】
本発明の化合物を、癌性疼痛、術後疼痛、偏頭痛、痛風、慢性リウマチ、慢性疼痛、神経痛等の痛みを伴う疾患に対する鎮痛薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬耐性克服薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬による依存性もしくは退薬性症候群克服薬;鎮痛作用増強薬;抗肥満薬もしくは食欲調節薬;加齢、脳血管障害及びアルツハイマー病に代表される学習記憶力低下もしくは痴呆症状の改善薬もしくは予防薬;注意欠陥多動性障害及び学習障害に代表される発達期認知機能改善薬;精神分裂症治療薬;パーキンソン病及び舞踏病に代表される退行性神経変性疾患治療薬;抗うつ薬もしくは感情調節薬;尿崩症治療薬もしくは予防薬;多尿症治療薬もしくは予防薬;低血圧治療薬等として使用する場合、その投与量及び投与回数は、患者の性別、年齢、体重、症状の程度及び目的とする治療効果の種類や範囲等により変えることができる。又、投与量は通常、1日あたり体重1kgにつき0.001から50mgであり、単回または複数回で投与することができる。投与量は、1日あたり約0.01から約25mg/kgであるのが好ましく、1日あたり約0.05から約10mg/kgであるのがより好ましい。
【実施例】
【0040】
以下に実施例を挙げて本発明を更に具体的に説明するが、本発明はこれらによってなんら限定されるものではない。
【0041】
実施例
A形(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩の製造
プロセス1
(6R,8S)−トルエン−4−スルホン酸−8−トリエチルシラニルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−イルメチルエステルの合成
4−シクロヘキサノンカルボン酸エチル(100g、0.588mol)とNaAuCl4・2H2O(6.0g)のエタノール溶液(500mL)に、ゆっくりとプロパルギルアミン(75.3mL)を加えた。還流下、一昼夜攪拌後、反応液を室温まで冷却し、セライトろ過後、ろ液を減圧下、濃縮した。残渣をシリカゲルクロマトグラフィー(hexane/EtOAc、1:1)により精製し、5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−カルボン酸エチル(化合物)を赤褐色オイルとして124g(>100%不純物を含む)得た。
【0042】
化合物(124g)のクロロホルム溶液(800mL)に0℃にてm−クロロ過安息香酸(1.5eq、153g)を加えた。混合物を室温で2時間攪拌後、水で希釈した。得られた混合物をクロロホルムで抽出し、有機層を飽和亜硫酸水素ナトリウム溶液、飽和重曹溶液で順次洗浄し、ついで硫酸ナトリウム上で乾燥後、減圧下で濃縮し、130gの5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−カルボン酸エチル1−オキシド(化合物)を得た。
【0043】
上記で得られた化合物を無水酢酸(300mL)に溶解し、130℃で1時間攪拌した。溶媒を留去後、残渣を酢酸エチルに溶解し、酢酸エチルを飽和重曹にて洗浄した。得られた有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc、3:1〜1:1)にて精製し、78.2gの8−アセトキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−カルボン酸エチル(化合物)を赤褐色オイル状で得た。化合物は、シス/トランス混合物(1:1)であり、不純物を含む。
【0044】
化合物(78.2g)のTHF(500mL)溶液に0℃にてNaOEt(1.0eq)を加え、混合物を室温で30分攪拌した。ついで飽和塩化アンモニム水溶液を用いてクエンチした。得られた混合物を水で希釈後、混合物をクロロホルム抽出した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥後、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc、2:1〜1:1)にて精製し、18.7g(化合物から14%)の(6RS,8SR)−8−ヒドロキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−カルボン酸エチル(化合物)(シス体)をオレンジの固体として得、又、化合物のトランス体42.2gを赤褐色固体として得た。
【0045】
化合物のトランス体のDMF(700mL)溶液にイミダゾール(300eq)、トリエチルシリルクロリド(2.0eq)を加え、室温で3時間攪拌した。反応液を酢酸エチルで希釈後、得られた溶液を飽和食塩水、水で順次洗浄した。有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc、9:1〜17:3)にて精製し、33.7g(化合物から17%)の(6RS,8SR)−8−トリエチルシラニルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−カルボン酸エチルエステル(化合物)を青白色オイル状で得た。
【0046】
化合物(78.2g)のTHF(500mL)溶液に0℃にて水素化リチウムアルミニウム(0.8eq)を加え、室温で10分間攪拌した。水を用いてクエンチした後、混合物をセライトろ過し、ついでろ液を減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc、2:1〜1:1)にて精製し、31.4g(>100%)のラセミ体の化合物を黄青色オイルとして得た。ラセミ体の化合物の光学分割は、キラルパックAD(hexane/IPA、50:1、0.1wt%Et2NH含有、流速:200mL/min)により行ない、(6R,8S)及び(6R,8R)の(8−トリエチルシラニルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−イル)メタノール(化合物)の光学活性アイソマー(15.3g、99.9%ee)を先行画分から得た。
【0047】
化合物(15.3g)のクロロホルム(400mL)溶液に、氷冷下、トシルクロリド(1.5eq)、トリエチルアミン(3.0eq)、ジメチルアミノピリジン(0.1eq)を加え、室温で2.5時間攪拌した。反応液を濃縮後、得られた残渣を酢酸エチルで希釈し、有機層を飽和食塩水で洗浄した。更に有機層を硫酸ナトリウム上で乾燥後、減圧下で濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(hexane/EtOAc、9:1〜2:1)にて精製し、22.9g(98%)の(6R,8S)−トルエン−4−スルホン酸−8−トリエチルシラニルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−6−イルメチルエステル(化合物)を青白色オイル状で得た。
1HNMR(400MHz,CDCl3)δ:0.60(3H,m),0.88(3H,t,J=7.7Hz),1.59(1H,m),1.94(1H,m),2.45(3H,s),2.49(1H,dd,J=5.1,16.5Hz),2.67(1H,m),2.89(1H,dd,J=5.1,16.5Hz),4.01(1H,dd,J=6.2,9.5Hz),4.10(1H,m),4.82(1H,t,J=2.9Hz),7.08(1H,m),7.34(3H,m),7.79(2H,m),8.38(1H,m)
ESI−MS Found:m/z 448.3[M+H]+
【0048】
プロセス2:
(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)ピペリジン−3−オールの合成
1-Boc-4-ピペリドン(251.3g、1.261mol)のTHF(6L)溶液にリチウムヘキサメチルシラジド(1.6L、1.0M in THF)を−78℃にてカニューレを用いて加え、同温度で1時間攪拌した。得られた反応溶液にPhNTf2(450.5g、1.26lmol)のTHF(1.5L)溶液を15分かけて滴下した。−78℃で30分攪拌後、更に2℃で3時間攪拌した。反応液に水(4L)を加え、水層を酢酸エチルを用いて抽出した。次いで有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をジオキサン(9L)に溶解し、酢酸カリウム(371.3g、3.783mol)、ビス(ピナコレート)ジボラン(320.2g、1.261mol)、PdCl2(dppf)(51.5g、0.063mol)及びdppf(35.0g、0.063mol)を加え、80℃で12時間攪拌した。反応液を氷水(4.5L)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下濃縮した。次いで残渣をDMF(8L)に溶解させ、得られた溶液に炭酸カリウム(522.8g、3.783mol)と2-クロロ-4-フルオロ-1-ヨードベンゼン(323.4g、1.261mol)を加え、80℃で21時間攪拌した。反応液を氷水(8L)中に注ぎ、ジエチルエーテルを用いて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥し、ついで減圧下濃縮した。得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-Hexane/EtOAc=20:1〜10:1)により精製し、4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−1−t−ブチルオキシカルボニル−1,2,3,6−テトラヒドロピリジン(化合物)(154.6g、39%)をオレンジ色のオイル状で得た。
【0049】
R-Alpine-boramine(268.5g、0.645mol)のDME(2.7L)溶液にBF3OEt(162mL、1.290mol)を滴下し、室温で2時間攪拌した。得られた溶液に化合物(154.5g、0.496mol)のDME(800mL)溶液を約30分かけて滴下し、室温で13時間攪拌した。更に、得られた溶液にエタノール(110mL)、水(55mL)、5N-NaOH溶液(200mL)及び30%H2O2を順次加え、室温で10時間攪拌した。反応液を水(2L)に注ぎ、酢酸エチルで抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下で濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-hexane/EtOAc=10:1〜5:1〜3:1〜1:1)で精製し、4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−1−t-ブチルオキシカルボニルピペリジン−3−オール(化合物10)(84.8g、52%)を無色オイル状で得た。
【0050】
化合物10(84.6g、0.257mol)を4N-HCl/Dioxane(700mL)に溶解し、室温で4時間攪拌した。ついで5N-NaOH溶液を0℃(ice bath)でゆっくりと加え、10分間攪拌した。反応液を酢酸エチルで抽出し、得られた有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下濃縮して粗生成物(53.6g、91%)を淡黄色固体として得た。得られた結晶をキラルパックAD(内径5.0cmx長さ50cm、n-Hexane/EtOH/Et2NH=900:100:1)により精製し、(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)ピペリジン−3−オール(化合物11)(slower、37.3g、63%)を淡茶色固体として得た。
1HNMR(300MHz,CDCl)δ:1.80(1H,d,J=13.0Hz),2.11(1H,m),2.55(1H,t,J=11.0Hz),2.70(1H,t,J=12.3Hz),3.13(1H,d,J=12.5Hz),3.36(2H,m),4.23(1H,bs),6.99(1H,m),7.19(2H,m)
ESI−MS Found:m/z 230[M+H]+
【0051】
プロセス3:化合物と化合物11の縮合
化合物(20.0g、44.68mmol)、化合物11(12.3g、53.55mmol)、ヨウ化ナトリウム(67.0g、0.447mol)及びトリエチルアミン(31.1mL、0.223mol)のDMF(1L)溶液を80℃で12時間攪拌し、得られた反応液を氷水(1L)に注ぎ、ついで酢酸エチルにて抽出した。有機層を水及び飽和食塩水で順次洗浄後、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィー(n-hexane/EtOAc=1:1〜CHCl3/MeOH=20:1)にて精製し、(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−8−トリエチルシラニルオキシ−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン(化合物12)(18.2g、81%)を淡茶色オイル状で得た。
【0052】
化合物12(18.1g、35.8mmol)のTHF(400mL)溶液にTBAF(179mL、1.0M in THF)を室温で加え、13時間攪拌した。ついで反応液に飽和重炭酸ナトリウム溶液(400mL)及び水(400mL)を加え、酢酸エチルにて抽出した。有機層を飽和食塩水で洗浄し、硫酸ナトリウム上で乾燥し、減圧下濃縮した。残渣をNHシリカゲルカラムクロマトグラフィー(CHCl3/MeOH=100:1〜10:1)で精製し、ついで酢酸エチルで洗浄することにより(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール(7.78g、56%)を固体として得た。
【0053】
上記化合物(7.77g、19.9mmol)をメタノール(100mL)に懸濁させ、この懸濁液に1N-HClを滴下し、室温で30分間攪拌した後、溶媒を減圧下留去した。ついで得られた塩酸塩を80℃にてエタノール(360mL)に溶解させたのち、n-Heptane(360mL)を滴下し、混合液をゆっくり室温まで冷却した。得られた沈殿を濾別し、n-Heptane/EtOH混合溶液(1:1)にて洗浄し、室温で乾燥して、塩酸塩(6.67g、78%)を針状の白色結晶として得た。
1HNMR(300MHz,CD3OD)δ:1.65−1.81(1H,m),1.83−2.09(2H,m),2.20−2.31(1H,m),2.49−2.78(3H,m),2.80−2.96(1H,m),3.00−3.18(3H,m),3.18−3.34(1H,m),3.45−3.72(2H,m),4.20−4.35(1H,m),4.47(2H,s),4.75−5.00(1H,m),7.02−7.16(1H,m),7.16−7.33(2H,m),7.40−7.52(1H,m),7.60−7.71(1H,m),8.35−8.43(1H,m)
ESI−MS Found:m/z 391.1[M+H]+
【0054】
このようにして得られた(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩のA形結晶について、全自動粉末X線回折装置X'pert PROを用い、PW3373/00 ceramic Cu LFF X線チューブK-α照射により、粉末X線回折を行った。測定条件は以下の表1の通りであり、以下の表2に示すデータが得られた。
【0055】
【表1】

【0056】
【表2】

【0057】
(製剤例1)
(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩のA形結晶10部、重質酸化マグネシウム15部及び乳糖75部を均一に混合して、350μm以下の粉末状又は細粒状の散剤とする。この散剤をカプセル容器に入れてカプセル剤とする。
【0058】
(製剤例2)
(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩のA形結晶45部、澱粉15部、乳糖16部、結晶性セルロース21部、ポリビニルアルコール3部及び蒸留水30部を均一に混合した後、破砕造粒して乾燥し、次いで篩別して直径1400〜180μmの大きさの顆粒剤とする。
【0059】
(製剤例3)
製剤例2と同様の方法で顆粒剤を作製した後、この顆粒剤96部に対してステアリン酸カルシウム3部を加えて圧縮成形し直径10mmの錠剤を作製する。
【0060】
(製剤例4)
製剤例2の方法で得られた顆粒剤90部に対して結晶性セルロース10部及びステアリン酸カルシウム3部を加えて圧縮成形し、直径8mmの錠剤とした後、これにシロップゼラチン、沈降性炭酸カルシウム混合懸濁液を加えて糖衣錠を作製する。
【0061】
これらの製剤は、また、治療上有効な他の化合物を含んでいてもよい。
【0062】
本発明の化合物の医薬としての有用性は、例えば、下記の薬理試験例により証明される。
薬理試験例1(ノシセプチン受容体結合阻害実験)
ヒトノシセプチン受容体遺伝子をコードするcDNAを発現ベクターpCR3(Invitrogen社製)に組み込み、pCR3/ORL1を作製した。次に、pCR3/ORL1をトランスフェクタム(Nippongene社製)を用いてCHO細胞に導入し、1mg/ml G418に耐性の安定発現株(CHO/ORL1細胞)を得た。この安定発現株より膜画分を調製し、受容体結合実験を行なった。膜画分11μg、50pM[125I]Tyr14−Nociceptin(Amersham Pharmacia社製)、1mgのWheatgerm agglutinin SPA beads(PVTベースのもの;Amersham Pharmacia社製)及び被験化合物をNC buffer(50mM Hepes、10mM塩化ナトリウム、1mM塩化マグネシウム、2.5mM塩化カルシウム、0.1%BSA、0.025%バシトラシン、pH7.4)に懸濁させ、37℃で60分間インキュベーションした後、放射活性を測定した。ノシセプチン受容体に対する結合活性は、本発明の化合物による[125I]Tyr14−Nociceptin結合の50%阻害濃度(IC50値)で表示する。その結果、本発明化合物は、9.00nMであった。
【0063】
薬理試験例2(ノシセプチン誘導G蛋白質活性化に対する拮抗作用)
ノシセプチン受容体ORL1を安定発現したCHO細胞を用いて、ノシセプチン誘導G蛋白質活性化に対する被験化合物の作用を検討した。CHO/ORL1細胞より調製した膜画分、50nMノシセプチン、200pM GTPγ[35S](NEN社製)、1.5mgのWheatgerm agglutinin SPA beads(Amersham Pharmacia社製)及び被験化合物をGDP buffer(20mM Hepes、100mM塩化ナトリウム、10mM塩化マグネシウム、1mM EDTA、5μM GDP、pH7.4)中で混合し、25℃で150分間インキュベートした後、放射活性を測定した。ノシセプチン誘導G蛋白質活性化に対する拮抗作用は、本発明化合物によるGTPγ[35S]結合の50%阻害濃度(IC50値)で表示する。その結果、本発明化合物は、5.90nMであった。
【0064】
薬理試験例3(拮抗試験)
雄性ICR(CD−1)マウス(20-40g)を使用し、ノシセプチンアゴニストにより生じる運動抑制に対する拮抗作用を観察した。即ち、20cm×30cm×20cmのケージ内でのマウスの運動量を、赤外線センサーを用いて測定した。0.5%メチルセルロース液もしくは溶媒に溶かした試験化合物(1-10mg/kg)とノシセプチンアゴニスト(1mg/kg)を皮下投与し、60分間の運動量を測定した。測定期間中のノシセプチンアゴニスト群の運動量と溶媒投与群の運動量の差を100%として、試験化合物群の運動量を%で表すことにより評価した。その結果、本発明化合物を投与した場合の運動量は75%以上であった。
【図面の簡単な説明】
【0065】
【図1】A形(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩のX線粉末回折パターンである。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
化合物(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩のA形結晶。
【請求項2】
粉末X線回折において、回折角度(2シータ±0.1°)23.3°、15.0°および15.7°(2シータ±0.1°)にピークを有する、請求項1に記載のA形結晶。
【請求項3】
粉末X線回折において、回折角度(2シータ±0.1°)23.3°、15.0°、15.7°、28.2°、22.9°および18.9°にピークを有する、請求項1に記載のA形結晶。
【請求項4】
粉末X線回折において、回折角度(2シータ±0.1°)13.6°、15.0°、15,7°、18.1°、22.9°、23.3°、27.4°、28.2°および29.5°にピークを有する、請求項1に記載のA形結晶。
【請求項5】
粉末X線回折において、図1に示される回折パターン又はこれと結晶学的に同等の回折パターンを示す、請求項1に記載のA形結晶。
【請求項6】
薬学的に許容される添加剤および有効量の請求項1〜5に記載のA形結晶を含む医薬組成物。
【請求項7】
化合物(6R,8S)−6−[(3R,4R)−4−(2−クロロ−4−フルオロフェニル)−3−ヒドロキシピペリジン−1−イルメチル]−5,6,7,8−テトラヒドロキノリン−8−オール・塩酸塩のA形結晶を有効成分として含有する、鎮痛薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬耐性克服薬;モルヒネに代表される麻薬性鎮痛薬による依存性もしくは退薬性症候群克服薬;鎮痛作用増強薬;抗肥満薬もしくは食欲調節薬;加齢、脳血管障害及びアルツハイマー病に代表される学習記憶力低下もしくは痴呆症状の改善薬もしくは予防薬;注意欠陥多動性障害及び学習障害に代表される発達期認知機能改善薬;精神分裂症治療薬;パーキンソン病及び舞踏病に代表される退行性神経変性疾患治療薬;抗うつ薬もしくは感情調節薬;尿崩症治療薬もしくは予防薬;多尿症治療薬もしくは予防薬;又は低血圧治療薬。


【図1】
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【公開番号】特開2006−241096(P2006−241096A)
【公開日】平成18年9月14日(2006.9.14)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−60632(P2005−60632)
【出願日】平成17年3月4日(2005.3.4)
【出願人】(000005072)萬有製薬株式会社 (51)
【Fターム(参考)】