説明

テーブル位置制御装置及びテーブル移動装置

【課題】xyθ移動機構において、x移動、y移動、θ回転の間の干渉による誤差を抑制することである。
【解決手段】テーブル移動装置10は、テーブル移動機構100と、制御回路20とを含んで構成される。制御回路20は、指令取得部22と、指令データにx位置等をフィードバックするための減算器24と、指令データについて制御された出力である移動指令値等に変換する制御アルゴリズム部26と、x移動、y移動、θ回転の間の相互干渉を除去する処理を行う補正部28と、補正された移動指令値等を個々の気体圧制御アクチュエータの電流駆動指令に変換してテーブル移動機構100に供給する駆動信号変換部30と、テーブル移動機構100からの各センサのデータをx座標、y座標、回転角度θに変換して減算器24に入力する位置情報変換部32を含む。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明はテーブル位置制御装置及びテーブル移動装置に係り、特に複数の気体圧制御アクチュエータを用いて、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なうテーブル位置制御装置及びテーブル移動装置に関する。
【背景技術】
【0002】
移動テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させるには、例えばテーブルをx方向に移動駆動するxモータと、y方向に移動駆動するyモータとを用いて行うことができる。この場合に、xモータはテーブルをx方向にのみ移動させ、yモータはテーブルをy方向にのみ移動させるために用いられるのであるが、実際にはxモータの移動駆動によりテーブルのy方向の位置が乱れ、同様にyモータの移動駆動によりテーブルのx方向の位置が乱れることがある。
【0003】
例えば、特許文献1には、複数のサーボモータで各軸間の干渉を防止するため、主サーボモータのモータ位置フィードバック信号と従サーボモータのモータ位置フィードバック信号の差に位置補正ゲインを掛けた補正値を主サーボモータの速度指令に加えた指令信号を従サーボモータの速度指令に与えることを特徴とする従来技術が紹介され、そして、その従来技術では、定常状態に落ち着いた後で、主サーボ軸の負荷位置と従サーボ軸の負荷位置との差が0にならないことを指摘している。そしてここでは、従サーボモータのトルク指令をモータモデルに入力した結果と、従サーボモータの位置信号から差分演算される速度フィードバック信号との差を求め、その差に相当するトルクを推定して推定された補償トルクを従サーボモータのトルク指令に加えることで、主サーボ軸の負荷位置と従サーボ軸の負荷位置との差を0にすることができると述べられている。
【0004】
【特許文献1】特開2004−86434号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させるだけでなく、x軸及びy軸に垂直なz軸周りにテーブルを回転させるには、テーブルの案内をz軸周りに回転可能に支持する必要がある。そのために、x方向に移動可能なxテーブル、y方向に移動可能なyテーブル、z軸周りに回転可能なθテーブルを順次積み重ねた構造のものが用いられる。このような複雑な積層構造のテーブルを用いずに、1つのテーブルをxy平面内で流体軸受構造で支持し、テーブルの2つの辺を適当な2つの駆動モータで移動駆動する構成をとることも可能である。
【0006】
xyθ移動装置においては、x軸移動指令とy軸移動指令とθ回転指令の3つの独立な移動指令を有することが便利であるが、この場合において、x移動、y移動、θ回転の間に干渉が生じると、任意の位置及び角度の位置決めが不正確になる。特許文献1には、主サーボモータと従サーボモータとの間でトルク補償を行うことが述べられているが、x位置、y位置、そのxy位置におけるθ回転を正確に行なうためには、サーボモータのトルク補償それのみでは不十分である。
【0007】
本発明の目的は、xyθ移動機構において、x移動、y移動、θ回転の間の干渉による位置決め誤差を抑制することを可能にするテーブル位置制御装置及びテーブル移動装置を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明に係るテーブル位置制御装置は、複数の気体圧制御アクチュエータを用いて、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なうテーブル位置制御装置であって、テーブルのx軸移動に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱を相殺し、テーブルのy軸移動に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱を相殺し、テーブルのθ回転に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱を相殺して、テーブルの移動及び回転を補正する補正手段を備えることを特徴とする。
【0009】
また、本発明に係るテーブル位置制御装置は、気体圧制御アクチュエータを用いて、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なうテーブル位置制御装置であって、テーブルのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、テーブルのy軸移動指令に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱をフィードバックし、テーブルのθ回転指令に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱をフィードバックし、各擾乱成分を相殺するように、x軸移動指令とy軸移動指令とθ回転指令とを補正する補正手段を備えることを特徴とする。
【0010】
また、本発明に係るテーブル位置制御装置において、テーブルのx軸移動指令に対してテーブルに生じるy軸移動の擾乱を表すxy伝達関数と、テーブルのx軸移動指令に対してテーブルに生じるθ回転の擾乱を表すxθ伝達関数と、テーブルのy軸移動指令に対してテーブルに生じるx軸移動の擾乱を表すyx伝達関数と、テーブルのy軸移動指令に対してテーブルに生じるθ回転の擾乱を表すyθ伝達関数と、テーブルのθ回転指令に対してテーブルに生じるx軸移動の擾乱を表すθx伝達関数と、テーブルのθ回転指令に対してテーブルに生じるy軸移動の擾乱を表すθy伝達関数と、を予め求めてそれぞれ記憶する記憶部を備え、補正手段は、テーブルのx軸移動指令に対し、記憶部に記憶されているyx伝達関数とθx伝達関数とに基づいてx軸移動指令を補正し、テーブルのy軸移動指令に対し、記憶部に記憶されているxy伝達関数とθy伝達関数とに基づいてy軸移動指令を補正し、テーブルのθ回転指令に対し、記憶部に記憶されているxθ伝達関数とyθ伝達関数とに基づいてθ回転指令を補正することが好ましい。
【0011】
また、補正手段は、テーブルを移動及び回転駆動する複数の気体圧制御アクチュエータの各駆動電流指令に対し補正を行うことが好ましい。
【0012】
また、本発明に係るテーブル移動装置は、x軸に垂直なx駆動辺とy軸に垂直なy駆動辺とを有するテーブルと、x駆動辺においてy方向に離間して配置され、x駆動辺を協働して駆動する少なくとも2つのx駆動用気体圧制御アクチュエータと、y駆動辺を駆動する少なくとも1つのy駆動用気体圧制御アクチュエータと、各気体圧制御アクチュエータを制御し、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なう制御部と、を備え、制御部は、テーブルのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、テーブルのy軸移動指令に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱をフィードバックし、テーブルのθ回転指令に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱をフィードバックし、各擾乱成分を相殺するように、x軸移動指令とy軸移動指令とθ回転指令とを補正する補正手段を備えることを特徴とする。
【0013】
また、本発明に係るテーブル移動装置は、x軸に垂直なx駆動辺とy軸に垂直なy駆動辺とを有するテーブルと、x駆動辺においてy方向に離間して配置され、x駆動辺を協働して駆動する少なくとも2つのx駆動用気体圧制御アクチュエータと、y駆動辺を駆動する少なくとも1つのy駆動用気体圧制御アクチュエータと、テーブルの中心部である代表位置から離れた周辺部に配置され、テーブルの移動及び回転を検出する複数のセンサと、複数のセンサの検出値に基づいて各気体圧制御アクチュエータを制御し、テーブルの代表位置をxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なう制御部と、を備え、制御部は、テーブルの代表位置についてのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、テーブルの代表位置についてのy軸移動指令に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱をフィードバックし、テーブルの代表位置についてのθ回転指令に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱をフィードバックし、各擾乱成分を相殺するように、x軸移動指令とy軸移動指令とθ回転指令とを補正する補正手段を備えることを特徴とする。
【0014】
また、制御部は、テーブルの代表位置についての補正後のx軸移動指令と、補正後のθ回転指令とに基づいて、x駆動用の各気体圧制御アクチュエータに対する電流駆動指令を生成することが好ましい。
【0015】
また、複数のセンサは、x駆動辺においてy軸方向に離間して配置され、その離間した位置におけるテーブルのx方向の変位を検出する2つのx変位センサを含み、制御部は、2つのx変位センサの検出値に基づいて、テーブルの代表位置についてのx方向の移動量と、z軸周りのθ回転量とを求め、それぞれテーブルの代表位置についてのx軸移動指令及びθ回転指令にそれぞれフィードバックすることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
上記構成により、テーブル位置制御は、複数の気体圧制御アクチュエータを用いて、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なう。気体圧制御アクチュエータは、油圧を用いるものに比べてコンタミネーションの問題が少なく、また、電磁的ノイズも発生せず、温度変化による影響、振動、騒音も少なくできる。したがって、テーブル位置制御の精度の向上に適している。
【0017】
また、上記構成の少なくとも1つにより、テーブルのx軸移動に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱のように、x移動、y移動、z軸周りのθ回転の間の干渉について、補正を行う。したがって、精度のよい位置決めを行うことができる。
【0018】
また、上記構成の少なくとも1つにより、例えば、テーブルのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、各擾乱成分を相殺するようにx軸移動指令を補正する。このように、x移動、y移動、z軸周りのθ回転の間の干渉による擾乱を移動指令又はθ回転指令にフィードバックして補正を行う。したがって、これらの間の干渉による位置決め誤差を抑制することができる。
【0019】
また、上記構成の少なくとも1つにより、例えば、テーブルのx軸移動指令に対してテーブルの移動または回転に与える干渉の結果としての擾乱を表すものとして、y軸移動の擾乱を表すxy伝達関数及びθ回転の擾乱を表すxθ伝達関数をそれぞれ求めて記憶する。このように、目的とする移動指令又はθ回転指令に対して他の移動又は回転に与える擾乱を、それぞれ伝達関数の形式で予め求め記憶し、擾乱に対する補正はこれらの伝達関数に基づいて行なう。したがって、これらの間の干渉による位置決め誤差を抑制することができる。
【0020】
また、上記構成の少なくとも1つにより、テーブルを移動及び回転駆動する複数の気体圧制御アクチュエータの各駆動電流指令に対し補正を行う。すなわち、結果として生じる移動誤差、回転誤差の値を補正するのではなく、これらの誤差を相殺するような制御を行う。これにより、x移動、y移動、θ回転の間の干渉による誤差を効果的に抑制することができる。
【0021】
また、上記構成の少なくとも1つにより、テーブルの駆動は、x駆動辺においてy軸方向に離間して配置される少なくとも2つのx駆動用気体圧制御アクチュエータと、y駆動辺を駆動する少なくとも1つのy駆動用気体圧制御アクチュエータによって行なう。したがって、x移動、y移動、θ回転を最小限で3つの気体圧制御アクチュエータで行うので構成が簡単となる。
【0022】
また、上記構成の少なくとも1つにより、テーブルの中心部である代表位置から離れた周辺部に配置され、テーブルの移動及び回転を検出する複数のセンサを用いて、これらのセンサの検出値に基づいて各気体圧制御アクチュエータを制御し、テーブルの代表位置をxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なう。この場合、センサの位置はテーブルの代表位置から離れているので、その検出情報に基づいてテーブルの移動又は回転を制御すると、例えばx軸移動指令に対して、y移動及びθ回転の誤差が生じやすい。すなわち、移動指令又はθ回転指令に対し、x移動、y移動、θ回転の間の干渉が生じやすくなる。そこで、上記構成では、例えば、テーブルのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、各擾乱成分を相殺するようにx軸移動指令を補正する。このように、x移動、y移動、z軸周りのθ回転の間の干渉による擾乱を移動指令又はθ回転指令にフィードバックして補正を行う。したがって、テーブルの代表位置から離れた位置に配置されるセンサを用いても、これらの間の干渉による位置決め誤差を抑制することができる。
【0023】
また、テーブルの代表位置についての補正後のx軸移動指令と、補正後のθ回転指令とに基づいて、x駆動用の各気体圧制御アクチュエータに対する電流駆動指令を生成する。これにより、θ回転のための特別なアクチュエータを設けることなく、複数のx駆動用の各気体圧制御アクチュエータに対する駆動指令によってx移動と共にθ回転を行なわせることができ、構成が簡単になる。
【0024】
また、x駆動辺においてy軸方向に離間して配置され、その離間した位置におけるテーブルのx方向の変位を検出する2つのx変位センサによって、テーブルの代表位置についてのx方向の移動量と、z軸周りの回転量とを求める。これにより、角度測定器のような特別の角度検出センサを設けることなく、θ回転を検出し、これを制御にフィードバックするので、構成が簡単となる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0025】
以下に図面を用いて本発明に係る実施の形態につき詳細に説明する。以下では、xyθ移動可能なテーブルを矩形の平面形状とするが、x方向に移動駆動するアクチュエータとy方向に移動駆動するアクチュエータとから駆動力を受ける辺を有していればよく、全体の形状自体は、目的に応じたものであってよい。例えば円形平面形状テーブルであって、その側面の一部に、各アクチュエータの駆動力を受ける面が設けられているものであってもよい。もちろん円形平面形状以外の平面形状であってもよい。また、以下で説明するアクチュエータの数、センサの数は、単なる例示であって、目的に応じ、アクチュエータの数をこれより増減してもよく、センサの数をこれより増加させてもよい。また、気体圧制御アクチュエータの構造、センサの検出方法は説明のための例示であって、これ以外の構造の気体圧制御アクチュエータを用いてテーブルを移動及び回転駆動してもよく、あるいはこれ以外の方法によってテーブルの移動及び回転を検出するものとしてもよい。
【0026】
図1は、テーブル移動装置10の構成を示す図である。テーブル移動装置10は、テーブル移動機構100と、これを制御する制御回路20とを含んで構成され、制御回路20はテーブル移動機構100に対し図1に示されるx軸方向の移動、y軸方向の移動、xy平面に垂直なz軸周りのθ回転を制御する機能を有する。
【0027】
テーブル移動機構100は、xy平面内で任意の位置に移動可能で、その任意の位置でθ回転可能に流体支持された矩形平面形状テーブルと、矩形平面形状テーブルをx方向に移動駆動可能な4つの気体圧制御アクチュエータと、y方向に移動駆動可能な2つの気体圧制御アクチュエータと、矩形平面テーブルに設けられた3つのセンサとを含んで構成される。
【0028】
制御回路20は、x位置指令x等の指令データを取得する指令取得部22と、指令データにx位置等をフィードバックするための減算器24と、指令データについて制御された出力である移動指令値及びθ回転指令値に変換する制御アルゴリズム部26と、相互干渉を除去する処理を行う補正部28と、補正された移動指令値及びθ回転指令値を個々の気体圧制御アクチュエータの電流駆動指令に変換してテーブル移動機構100に供給する駆動信号変換部30と、テーブル移動機構100からの各センサのデータをx座標、y座標、回転角度θに変換して減算器24に入力する位置情報変換部32を含み、これにより、相互干渉を相殺する補正機能を含むフィードバックループを形成する。
【0029】
なお、図1において、制御アルゴリズム部26の出力として示されるU等、補正部28の出力として示されるx等、駆動信号変換部30の出力として示されるx−1等、位置情報変換部32の入力として示されるs−1等は、いずれも信号を示すものである。例えば、x−1等は、後述する気体圧制御アクチュエータへの電流駆動指令信号を示し、S−1等は、後述するセンサシステムの出力であって位置情報変換部32に入力される信号を示す。
【0030】
図2は、テーブル移動機構100を構成するテーブルと複数の気体圧制御アクチュエータの配置を示す図である。ここでテーブル102は、平面形状が矩形をなし、テーブル移動機構100の筐体104の支持穴106と隙間をあけて配置され、筐体104に対しz軸方向に流体支持されている。気体圧制御アクチュエータは、テーブル102の矩形平面形状の各辺に向き合って合計6つ配置される。その中で4つは、テーブル102の矩形平面形状の各辺のうち、x方向に垂直でy方向に平行な2つの辺をそれぞれ駆動する。この駆動辺をx駆動辺110,111と呼ぶことにし、この辺に向かい合う気体圧制御アクチュエータを、x駆動用気体圧制御アクチュエータ114,115,116,117と呼ぶこととする。同様に、テーブル102の矩形平面形状の各辺のうち、y方向に垂直でx方向に平行な2つの辺をy駆動辺112,113と呼び、これに向かい合う残りの2つの気体圧制御アクチュエータをy駆動用気体圧制御アクチュエータ118,119と呼ぶ。
【0031】
x駆動辺110に向かい合って、x駆動用気体圧制御アクチュエータ114,115が、y方向に沿って相互に離間して配置される。離間の中心線は、テーブル102の重心位置108を通る。すなわち、離間されて配置される2つの気体圧制御アクチュエータ114,115の駆動軸は、テーブル102の重心位置108に対して対称に配置される。同様にx駆動辺111に向かい合って、x駆動用気体圧制御アクチュエータ116,117がy方向に相互に離間して配置される。そして、x駆動辺110に向かい合う2つの気体圧制御アクチュエータ114,115は、テーブル102を挟んで、x駆動辺111に向かい合う2つの気体圧制御アクチュエータ116,117とも相互に向かい合う関係で配置される。換言すれば、気体圧制御アクチュエータ114と気体圧制御アクチュエータ116とは、駆動軸方向が同軸で、テーブル102を相互に押し合う関係で配置され、同様に気体圧制御アクチュエータ115と気体圧制御アクチュエータ117とは、駆動軸方向が同軸で、テーブル102を相互に押し合う関係で配置される。
【0032】
y駆動辺112に向かい合うy駆動用気体圧制御アクチュエータ118は、y駆動辺112のx方向に沿った中央部に配置され、したがってその駆動軸は、テーブル102の重心位置108を通る。同様にy駆動辺113に向かい合うy駆動用気体圧制御アクチュエータ119は、y駆動辺113のx方向に沿った中央部に配置され、したがってその駆動軸は、テーブル102の重心位置108を通る。このように、2つのy駆動用気体圧制御気体圧制御アクチュエータ118,119は、駆動軸方向が同軸で、テーブル102を相互に押し合う関係で配置される。
【0033】
上記のように、各気体圧制御アクチュエータ114,115,116,117,118,119には、駆動信号変換部30から電流駆動指令が供給される。すなわち気体圧制御アクチュエータ114には電流駆動指令x−1が、気体圧制御アクチュエータ115には電流駆動指令x−2が、気体圧制御アクチュエータ116には電流駆動指令x−3が、気体圧制御アクチュエータ117には電流駆動指令x−4が供給される。同様に、気体圧制御アクチュエータ118には電流駆動指令y−1が、気体圧制御アクチュエータ119には電流駆動指令y−2が供給される。
【0034】
テーブル102を移動駆動あるいは回転駆動するには、各気体圧制御アクチュエータに供給される電流駆動指令を次のように制御して行うことができる。
【0035】
x方向にテーブル102を移動駆動するときは、電流駆動指令x−1,x−2,x−3,x−4をすべて同じ駆動方向で同じ大きさの電流駆動指令としてそれぞれx駆動用気体圧制御アクチュエータ114,115,116,117に供給する。ここで駆動方向が同じとは、図2に示すx方向について同じ方向という意味である。したがって、気体圧制御アクチュエータの駆動方向とは必ずしも一致しない。つまり、電流駆動指令x−1,x−2に対応する気体圧制御アクチュエータ114,115の駆動方向は、図2における−x方向がアクチュエータとして対象物を押す方向であるのに対し、電流駆動指令x−3,x−4に対応する気体圧制御アクチュエータ116,117の駆動方向は、図2における+x方向がアクチュエータとして対象物を押す方向である。
【0036】
y方向にテーブル102を移動駆動するときは、電流駆動指令y−1,y−2をすべて同じ駆動方向で同じ大きさの電流駆動指令としてそれぞれy駆動用気体圧制御アクチュエータ118,119に供給する。この場合も同じ駆動方向とは、図2に示すy方向について同じ方向という意味であって、気体圧制御アクチュエータ118,119についていえば、一方はテーブル102を押す方向に駆動され、他方はテーブル102に押される方向に駆動される。
【0037】
テーブル102をz軸周りに回転駆動するときは、電流駆動指令y−1,y−2はゼロとしてy駆動用気体圧制御アクチュエータ118,119を駆動しない状態の下で、4つのx電流駆動指令x−1からx−4を、x−1とx−3の第1の組と、x−2とx−4の第2の組との2つの組に分け、同じ組の電流駆動指令は同じ駆動方向とし、異なる組の間では駆動方向を逆とする。図2の紙面上においてテーブル102を時計方向に回転駆動するときは、x−1とx−3の第1の組の電流駆動指令の駆動方向を図2に示す+x方向に、x−2,x−4の第2の組の電流駆動指令の駆動方向を−x方向とする。各電流駆動指令の大きさは同じである。これにより、テーブル102は、その重心位置108の周りに時計方向に回転するように駆動力モーメントを受ける。同様に、テーブル102を反時計方向に回転駆動するときは、第1の組の電流駆動指令の駆動方向を図2に示す−x方向に、第2の組の電流駆動指令を+x方向とする。これにより、テーブル102は、その重心位置108の周りに反時計方向に回転するように駆動力モーメントを受ける。
【0038】
図3は、気体圧制御アクチュエータの構造の1例を示すものとして、図2における気体圧制御アクチュエータ119の部分の断面図である。この気体圧制御アクチュエータ119は、粗動と微動が可能なアクチュエータである。気体圧制御アクチュエータ119は、テーブル移動機構100の筐体104の中に設けられる案内部130と、案内部130に案内されてy方向に移動可能な可動子132を含んで構成される。
【0039】
案内部130は、例えば底部を有する円筒状の穴で、底面に粗動用の気体圧Pcを有する気体を供給する粗動気体供給部134を備え、側面に微動用の気体圧Pfを有する気体を供給する微動気体供給部136を備える。可動子132は、案内部130の内部形状に対応し、例えば円柱状の部材である。可動子132は、側面と先端部に開口を有し、その間を結ぶ気体流路138を内部に備えている。気体流路138は、側面の開口から微動用の気体圧Pfを有する気体を受け取り、可動子132の内部を流し先端部の開口から、その先端部の面とテーブル102のy駆動辺113との間の隙間に向かって流す機能を有する。気体流路138には適当な絞り部144を設けることが好ましい。
【0040】
このような構成の気体圧制御アクチュエータ119において、粗動用の気体圧Pcを有する気体は、案内部130の底面と可動子132の底面の間の気体室140に供給され、可動子132の底面133にy方向の駆動力を与える。この機構は、周知のピストン・シリンダ機構と同様である。微動用の気体圧Pfを有する気体は、可動子132の先端部の面とy駆動辺113との間の隙間を流れるが、テーブル102は、もう一方のy駆動辺112においてもう一方のy駆動用気体圧制御アクチュエータ118から押付力Fを可動子132の先端面に対し及ぼしている。すなわち、微動用の気体圧Pfを有する気体は、この押付力Fに抗して、可動子132の先端部の面とy駆動辺113との間の隙間を流れ、この隙間の間隔は、気体圧Pfによって可変できる。この機構はいわゆる気体軸受機構に類似するもので、気体圧Pfを変化させることで、気体の流れる隙間の間隔をサブμmからμmの程度で変化させることができる。したがって、気体圧Pfを制御することで、y駆動辺113を微小移動させることができる。このようにして、気体圧Pcの制御と気体圧Pfの制御を組み合わせることで、気体圧制御アクチュエータ119は、微動から粗動まで幅広い範囲で精度よくテーブル102を移動駆動できる。
【0041】
図4は、テーブル移動機構100を構成するセンサシステム150を説明する図である。図2と共通の要素には同一の符号を付し、詳細な説明を省略する。なお、ここでは気体圧制御アクチュエータの図示を省略している。センサシステム150は、テーブル102において、x駆動辺110に設けられる2つの反射面154,155と、y駆動辺112に設けられる1つの反射面158と、これら3つの反射面にレーザ光を照射し、各反射面から戻される反射光を受け取って、各反射面における入射光と反射光の位相差から各反射面の変位を検出するためのレーザ干渉光学系を含んで構成される。
【0042】
x駆動辺110に設けられる2つの反射面154,155は、y方向に平行な反射面で、y方向に沿って相互に離間して配置される。離間の距離は、各反射面154,155に入射光の光軸の間の間隔Lで示されている。離間の中心線は、テーブル102の重心位置108を通る。すなわち、2つの反射面154,155は、テーブル102の重心位置108に対し対称に配置される。y駆動辺112に設けられる反射面158は、その入射光の光軸の方向がテーブル102の重心位置108を通っていないが、もちろん、重心位置108を通るものとしてもよい。かかる反射面154,155,158は、テーブル102の上に取り付けられた適当な反射鏡を用いることができる。また、テーブル102の側面の一部を鏡面に磨いて反射面とし、これを用いるものとしてもよい。
【0043】
レーザ干渉光学系は、レーザ光を放射するレーザヘッド160と、放射されたレーザ光を、各反射面154,154,158に向けて分配するビームスプリッタ162,164と、各反射面154,155,158にほぼ鉛直方向にレーザ光を入射してその反射光を受け取り、入射光と反射光との位相差を検出して出力する光干渉計166,168,170を含んで構成される。各光干渉計166,168,170の出力は、対応する反射面154,155,158の変位を示す信号S−1,S−2,S−3として、位置情報変換部32に入力される。すなわち、信号S−1は、反射面154におけるx方向の変位を示し、信号S−2は、反射面155におけるx方向の変位を示し、信号S−3は、反射面158におけるy方向の変位を示す。
【0044】
再び図1に戻り、次に制御回路20を構成する各要素について説明する。制御回路20は、上記のように、指令取得部22と、減算器24と、制御アルゴリズム部26と、補正部28と、駆動信号変換部30と、位置情報変換部32とを含む。そして、駆動信号変換部30と、位置情報変換部32との間にはテーブル移動機構100が配置される。
【0045】
指令取得部22は、テーブル102の移動及び回転の目標値を指令値として取得する機能を有する。ここで指令値は、テーブル102の目標x座標であるx、目標y座標であるy、座標x,yにおける目標回転角度であるθである。これらの指令データは、テーブル102を移動駆動するプログラムによって、遂時的に与えられる。
【0046】
減算器24は、指令データから、テーブル102の実際の位置データを減算し、テーブル102の移動における目標値と実際値との間の誤差を算出する機能を有する。指令データは、上記のx,y,θであり、実際値のデータは、位置情報変換部32から出力されるテーブル102の実際のx座標、y座標、回転角度θである。減算器24は、各指令データx,y,θのそれぞれに対応し、その誤差として、x−x,y−y,θ−θを算出し、制御アルゴリズム部26に出力する機能を有する。
【0047】
制御アルゴリズム部26では、入力された誤差であるx−x,y−y,θ−θをそれぞれゼロに近づける制御アルゴリズムを実行し、そのために必要なテーブル102の移動指令値及びθ回転指令値として、x軸移動指令値U,y軸移動指令値U,θ回転指令値Uθを出力する機能を有する。
【0048】
図5は、制御アルゴリズム部26の詳細なブロックダイヤグラムである。制御アルゴリズム部26では、減算器24から入力された3つの誤差データx−x,y−y,θ−θのそれぞれに対応し、同じ内容の制御アルゴリズムを実行する。そこで、3つの誤差に対する各処理を代表して、x方向位置誤差データx−xに対する処理を説明する。
【0049】
減算器24から入力された誤差信号は、変位比例ゲイン40によって増幅されるとともに積分器42によって積分処理される。変位比例ゲイン40によって増幅された信号と積分器42によって積分された信号とは、加算器44によって加算される。すなわちここでは位置誤差に対し比例積分(PI)制御が行われている。PI制御された後の信号はリミッタ46において出力が所定の値に制限され、速度指令として減算器52の一方側信号として入力される。リミッタ46は、PI制御された信号を次の段の入力信号としてそのまま用いるときに現れるオーバーシュートの影響を抑制する機能を有する。
【0050】
一方、位置情報変換部32からのテーブル102の実際のx位置信号は、微分器48によって微分され、テーブル102の速度信号として、減算器52の他方側信号として入力される。微分器48の分母成分は、所定の周波数帯域の前後のゲインを下げ、高周波ノイズ等を抑制する機能を有する。微分器48の出力は、減算器52に入力される前に減衰器50によって適当な信号レベルに調整される。
【0051】
減算器52は、速度指令とテーブル102の速度信号との差を算出し、速度誤差信号とする機能を有する。減算器52によって出力される速度誤差信号は、速度比例ゲイン54によって増幅され、リミッタ56によって次段へのオーバーシュートの影響を抑制する処理が行われて、加速度指令として減算器62の一方側信号として入力される。ここでは、位置誤差の処理がPI制御であるのに対し、比例(P)制御が行われている。一方で微分器48によって求められたテーブル102の速度信号はさらに微分器58で微分され、テーブル102の加速度信号として、減算器62の他方側信号として入力される。微分器58の分母成分の内容は微分器48で説明したものと同様である。微分器58の出力は、減算器62に入力される前に減衰器60によって適当な信号レベルに調整されることも、前に説明したのと同様である。
【0052】
減算器62は、加速度指令とテーブル102の加速度信号との差を算出し、加速度誤差信号とする機能を有する。減算器62によって出力される加速度誤差信号は、加速度比例ゲイン64によって増幅され、適当な極性変換(PO)66を行なった後、リミッタ68によって次段へのオーバーシュートを抑制する処理が行われる。リミッタ68の出力は、位置指令xに実際の位置xを近づけるための駆動信号であり、具体的には、テーブル102をx方向に駆動するアクチュエータへの駆動信号に対応する。アクチュエータへの駆動信号は具体的には電流駆動指令データであるので、加速度比例ゲイン64は、デジタル信号を電流信号に変換する電流変換機能を有し、リミッタ68は、電流リミッタの機能を有することになる。
【0053】
このようにして、x方向位置誤差データx−xに対し制御アルゴリズムが実行されて、位置誤差をゼロに近づけるための移動指令値Uが生成される。同様なアルゴリズムの実行によって、y方向位置誤差データy−yについても、これをゼロに近づけるための移動指令値Uが生成され、回転誤差データθ−θについても、これをゼロに近づけるためのθ回転指令値Uθが生成される。これらの生成された指令値U,U,Uθは、補正部28に入力される。
【0054】
補正部28は、相互干渉を除去する処理を行う機能を有し、具体的な演算処理としては、図6に示される行列演算が行なわれる。図6に示される行列演算は、1行3列の指令値ベクトルに3行3列の相互干渉除去ベクトルを乗算して、相互干渉が除去された1行3列の補正後指令値ベクトルを得る処理を示している。
【0055】
3行3列の相互干渉除去ベクトルの各成分も図6に示されている。ここでxy(S)は、テーブル102のx軸移動指令に対してテーブル102に生じるy軸移動の擾乱を表すxy伝達関数である。またxθ(S)は、テーブル102のx軸移動指令に対してテーブル102に生じるθ回転の擾乱を表すxθ伝達関数である。同様に、yx(S)は、テーブル102のy軸移動指令に対してテーブル102に生じるx軸移動の擾乱を表すyx伝達関数であり、yθ(S)は、テーブル102のy軸移動指令に対してテーブル102に生じるθ回転の擾乱を表すyθ伝達関数である。また、θx(S)は、テーブル102のθ回転指令に対してテーブル102に生じるx軸移動の擾乱を表すθx伝達関数であり、θy(S)は、テーブル102のθ回転指令に対してテーブルに生じるy軸移動の擾乱を表すθy伝達関数である。
【0056】
また、図6におけるP(S)等は、図1において補正部28の出力に対し、補正部以降の要素全体が応答するプロセス応答を示す。概略的にいえば、補正部28の出力に対するテーブル移動機構100の応答を示す伝達関数である。P(S)は、x軸移動指令値に対する応答を示し、P(S)はy軸移動指令値に対する応答を示し、Pθ(S)はθ回転指令値に対する応答を示す。相互干渉除去ベクトルの各成分が、指令信号に対する相互干渉の応答を示す伝達関数そのものでなく、テーブル移動機構100等の応答を示す伝達関数で除算されるのは、相互干渉の補正が、位置信号x、y、回転信号θを直接補正するのではなく、移動指令値及びθ回転指令値レベルで補正するためである。すなわち、指令値に対する位置信号への応答の伝達関数としてのP,P,Pθで、相互干渉の応答の伝達関数を規準化する必要があるためである。
【0057】
これらの伝達関数等は、予め、制御対象となるテーブル移動装置10の具体的構造について、実験により求めることができる。求められたこれらの伝達関数は、テーブル移動装置10に設けられる適当な記憶装置に記憶される。
【0058】
図6に従って、例えばx軸移動指令値Uは、相互干渉除去の補正が行われた後、x=U−U{yx(S)/P(S)}−Uθ{θx(S)/P(S)}として出力される。つまり、テーブル102のx軸移動指令値Uに対しては、y軸移動指令値Uによってx軸方向の変位擾乱(δxy)=Uyx(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令であるδxy/P(S)=U{yx(S)/P(S)}と、θ回転指令値Uθによってx軸方向の変位擾乱(δxθ)=Uθθx(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令であるδxθ/P(S)=Uθ{θx(S)/P(S)}とが補正される。つまり、y軸移動指令値Uによってx軸方向の変位擾乱(δxy)=Uyx(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令であるδxy/P(S)=U{yx(S)/P(S)}と、θ回転指令値Uθによってx軸方向の変位擾乱(δxθ)=Uθθx(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令であるδxθ/P(S)=Uθ{θx(S)/P(S)}とがフィードバックされて補正される。これにより、x軸移動指令値Uに対するx軸移動について、その他の指令値に基づく擾乱である相互干渉が除去できる。
【0059】
同様にして、y軸移動指令値Uは、相互干渉除去の補正が行われた後、y=U−U{xy(S)/P(S)}−Uθ{θy(S)/P(S)}として出力される。つまり、テーブル102のy軸移動指令値Uに対しては、x軸移動指令値Uによってy軸方向の変位擾乱(δyx)=Uxy(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令である(δyx)/P(s)=U{xy(S)/P(S)}と、θ回転指令値Uθによってy軸方向の変位擾乱(δyθ)=Uθθy(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令であるδyθ/P(S)=Uθ{θy(S)/PS)}とが補正される。
【0060】
また、θ回転指令値Uθは、相互干渉除去の補正が行われた後、θ=Uθ−U{xθ(S)/Pθ(S)}−U{yθ(S)/Pθ(S)}として出力される。つまり、テーブル102のθ回転指令値Uθに対し、x軸移動指令値Uによってθ回転擾乱(δθx)=Uxθ(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令である(δθx)/Pθ(s)=U{xθ(S)/Pθ(S)}と、y軸移動指令値Uによってθ回転擾乱(δθy)=Uyθ(S)が生じるのでそれによる等価擾乱指令である(δθy)/Pθ(s)=U{yθ(S)/Pθ(S)}が補正される。
【0061】
図7は、この補正の様子を示すブロックグラムである。例えば、x軸移動指令値Uは、これからUθ{θx(S)/P(S)}が減算され、その結果に対しさらにU{yx(S)/P(S)}が減算されて補正後のx軸移動指令値xとなる。これにそれ以後のプロセス応答として伝達関数P(S)が乗算されたものがテーブル移動機構100の出力となって、実際のx座標となり、減算器24にフィードバックされる。
【0062】
同様に、y軸移動指令値Uは、これからUθ{θy(S)/P(S)}とU{xy(S)/P(S)}がそれぞれ減算されて補正後のy軸移動指令値yとなる。これにそれ以後のプロセス応答として伝達関数P(S)が乗算されたものがテーブル移動機構100の出力となって、実際のy座標となり、減算器24にフィードバックされる。
【0063】
また、θ回転指令値Uθは、これからU{xθ(S)/Pθ(S)}とU{yθ(S)/Pθ(S)}がそれぞれ減算されて補正後のθ回転指令値θとなる。これにそれ以後のプロセス応答として伝達関数Pθ(S)が乗算されたものがテーブル移動機構100の出力となって、実際の回転角度θとなり、減算器24にフィードバックされる。
【0064】
このようにして、制御アルゴリズム部26から出力された移動指令値及びθ回転指令値が補正部28において、相互干渉を除去する処理が行われ、補正後の移動指令値及びθ回転指令値として駆動信号変換部30に入力される。駆動信号変換部30は、補正部28から出力される補正後のx軸移動指令値x、補正後のy軸移動指令値y、補正後のθ回転指令値θの3つの信号から、テーブル移動機構100の6つの気体圧制御アクチュエータへの電流駆動指令x−1,x−2,x−3,x−4,y−1,y−2をそれぞれ生成する機能を有する。
【0065】
図8は、駆動信号変換部30の処理内容を示すブロック図である。ここで、補正部28の出力である補正後の移動指令値及びθ回転指令値x,y,θの符号は、図2で示したx,y,θの方向をプラスとし、テーブル移動機構100に対する出力である各電流駆動指令x−1,x−2,x−3,x−4,y−1,y−2の符号は、各気体圧制御アクチュエータ114,115,116,117,118,119についてその駆動軸の方向に沿ってテーブル102を押す方向をプラスとしてある。
【0066】
例えば回転駆動を行なわない場合は、補正部28からのx軸移動指令値xは、その極性をマイナスとしたものをx−1,x−2とし、プラスにしたものをx−3,x−4として出力する。これは、図2において、+x方向にテーブル102を移動駆動したいときには、気体圧制御アクチュエータ116,117に対しテーブル102を押す方向の電流駆動指令を、気体圧制御アクチュエータ114,115に対しテーブル102から押される方向、つまり引っ込む方向の電流駆動指令を与えることを意味する。同様に、補正部28からのy軸移動指令値yは、その極性をマイナスとしたものをy−1とし、プラスにしたものをy−2として出力する。これは、図2において、+y方向にテーブル102を移動駆動したいときには、気体圧制御アクチュエータ119に対しテーブル102を押す方向の電流駆動指令を、気体圧制御アクチュエータ118に対しテーブル102から押される方向、つまり引っ込む方向の電流駆動指令を与えることを意味する。
【0067】
回転駆動のみを行なう場合は、補正部28からのθ回転指令値θは、その極性をマイナスとしたものをx−2,x−3とし、プラスにしたものをx−1,x−4として出力する。これは、図2において、+θ方向、すなわち紙面に対し反時計方向にテーブル102を回転駆動したいときには、気体圧制御アクチュエータ114,117に対しテーブル102を押す方向の電流駆動指令を、気体圧制御アクチュエータ115,116に対しテーブル102から押される方向、つまり引っ込む方向の電流駆動指令を与えることを意味する。回転とx方向移動とを行なう場合には、上記のx移動駆動の場合と回転駆動の場合との組み合わせになる。このようにして、回転駆動もx駆動用気体圧制御アクチュエータの駆動指令の方向の極性を適当に変更して組み合わせることで行うことができる。
【0068】
図9は、位置情報変換部32の信号処理を示す図である。位置情報変換部32は、テーブル102に対して設けられるセンサシステム150から出力される信号S−1,S−2,S−3から、テーブル102の代表位置のx座標、y座標およびその位置における回転角度θに変換する機能を有する。テーブル102の代表位置としては、例えばテーブル102の重心位置108等の中心部の位置を用いることができる。
【0069】
図9に示されるように、テーブル102のx座標は、信号S−1と信号S−2の平均値から得ることができる。すなわち、信号S−1はx駆動辺110に平行な反射面154のx方向の変位を示し、信号S−2は、反射面154からx駆動辺110にそってy方向に離間する反射面155のx方向変位を示すので、この2つの変位量を平均することで、2つの反射面154,155の離間の中心位置におけるx方向変位とできる。テーブル102の重心位置108は、2つの反射面154,155の離間の中心線上にあるので、信号S−1と信号S−2の平均値は、テーブル102の中央部の代表位置のx座標あるいは、テーブル102の移動に伴うx方向の変位を示すことになる。テーブル102の代表位置として、テーブル102の重心位置108以外の位置を用いるときは、テーブル102上でその代表位置と重心位置108との相対位置関係を予め求めておき、その相対位置関係を用いて、信号S−1と信号S−2の平均値からその代表位置のx座標に変換を行うことができる。なお、図9に示すように、必要があれば、信号S−1と信号S−2の平均値処理の後に、極性変換POを行なうことがよい。
【0070】
テーブル102の回転角度θは、信号S−1の絶対値と信号S−2の絶対値の差を、反射面154,155の間の間隔Lで除すことで近似的に得ることができる。この場合も必要があれば、信号S−1と信号S−2の差分処理の後に、極性変換POを行なうことで、回転方向を正確に示すことができる。テーブル102のy座標は、信号S−3の値から直接得ることができる。このようにして、テーブル102のx駆動辺110に設けられた2つの反射面154,155とこれに対応するレーザ干渉計からなるセンサシステムによって、テーブル102の回転角度θを検出することができる。
【0071】
位置情報変換部32によってテーブル102の代表位置のx座標、y座標、回転角度θが得られると、これらは減算器24に入力され、それぞれ、指令データx,y,θに対し減算処理が行われ、x方向位置誤差、y方向位置誤差、回転角度誤差が算出される。それ以後は、上記の制御アルゴリズム部26の機能によってこれらの誤差を少なくする制御が行われ、補正部28によって相互干渉が抑制される補正処理が行われる。このようにして、xyθ移動機構において、x移動、y移動、θ回転の間の干渉による位置決め誤差を抑制することができ、精度のよいテーブル移動を行なうことができる。
【図面の簡単な説明】
【0072】
【図1】本発明に係る実施の形態のテーブル移動装置の構成を示す図である。
【図2】本発明に係る実施の形態において、テーブル移動機構を構成するテーブルと複数の気体圧制御アクチュエータの配置を示す図である。
【図3】本発明に係る実施の形態において、気体圧制御アクチュエータの構造の1例を示す図である。
【図4】本発明に係る実施の形態において、テーブル移動機構を構成するセンサシステムを説明する図である。
【図5】本発明に係る実施の形態におけるアルゴリズム部の詳細なブロックダイヤグラムである。
【図6】本発明に係る実施の形態において、補正部で行なわれる行列演算を説明する図である。
【図7】本発明に係る実施の形態において、相互干渉除去のための補正の様子を示すブロックグラムである。
【図8】本発明に係る実施の形態において、駆動信号変換部の処理内容を示すブロック図である。
【図9】本発明に係る実施の形態において、位置情報変換部の信号処理を示す図である。
【符号の説明】
【0073】
10 テーブル移動装置、20 制御回路、22 指令取得部、24,52,62 減算器、26 制御アルゴリズム部、28 補正部、30 駆動信号変換部、32 位置情報変換部、40 変位比例ゲイン、42 積分器、44 加算器、46,56,68 リミッタ、48,58 微分器、50,60 減衰器、54 速度比例ゲイン、64 加速度比例ゲイン、66 極性変換、100 テーブル移動機構、102 テーブル、104 筐体、106 支持穴、108 重心位置、110,111,112,113 駆動辺、114,115,116,117,118,119 気体圧制御アクチュエータ、130 案内部、132 可動子、133 可動子の底面、134 粗動気体供給部、136 微動気体供給部、138 気体流路、140 気体室、144 絞り部、150 センサシステム、154,155,158 反射面、160 レーザヘッド、162,164 ビームスプリッタ、166,168,170 光干渉計。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の気体圧制御アクチュエータを用いて、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なうテーブル位置制御装置であって、
テーブルのx軸移動に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱を相殺し、
テーブルのy軸移動に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱を相殺し、
テーブルのθ回転に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱を相殺して、
テーブルの移動及び回転を補正する補正手段を備えることを特徴とするテーブル位置制御装置。
【請求項2】
気体圧制御アクチュエータを用いて、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なうテーブル位置制御装置であって、
テーブルのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、
テーブルのy軸移動指令に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱をフィードバックし、
テーブルのθ回転指令に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱をフィードバックし、
各擾乱成分を相殺するように、x軸移動指令とy軸移動指令とθ回転指令とを補正する補正手段を備えることを特徴とするテーブル位置制御装置。
【請求項3】
請求項2に記載のテーブル位置制御装置において、
テーブルのx軸移動指令に対してテーブルに生じるy軸移動の擾乱を表すxy伝達関数と、
テーブルのx軸移動指令に対してテーブルに生じるθ回転の擾乱を表すxθ伝達関数と、
テーブルのy軸移動指令に対してテーブルに生じるx軸移動の擾乱を表すyx伝達関数と、
テーブルのy軸移動指令に対してテーブルに生じるθ回転の擾乱を表すyθ伝達関数と、
テーブルのθ回転指令に対してテーブルに生じるx軸移動の擾乱を表すθx伝達関数と、
テーブルのθ回転指令に対してテーブルに生じるy軸移動の擾乱を表すθy伝達関数と、
を予め求めてそれぞれ記憶する記憶部を備え、
補正手段は、
テーブルのx軸移動指令に対し、記憶部に記憶されているyx伝達関数とθx伝達関数とに基づいてx軸移動指令を補正し、
テーブルのy軸移動指令に対し、記憶部に記憶されているxy伝達関数とθy伝達関数とに基づいてy軸移動指令を補正し、
テーブルのθ回転指令に対し、記憶部に記憶されているxθ伝達関数とyθ伝達関数とに基づいてθ回転指令を補正することを特徴とするテーブル位置制御装置。
【請求項4】
請求項2又は請求項3に記載のテーブル制御装置において、
補正手段は、
テーブルを移動及び回転駆動する複数の気体圧制御アクチュエータの各駆動電流指令に対し補正を行うことを特徴とするテーブル制御装置。
【請求項5】
x軸に垂直なx駆動辺とy軸に垂直なy駆動辺とを有するテーブルと、
x駆動辺においてy方向に離間して配置され、x駆動辺を協働して駆動する少なくとも2つのx駆動用気体圧制御アクチュエータと、
y駆動辺を駆動する少なくとも1つのy駆動用気体圧制御アクチュエータと、
各気体圧制御アクチュエータを制御し、テーブルをxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なう制御部と、
を備え、
制御部は、
テーブルのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、
テーブルのy軸移動指令に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱をフィードバックし、
テーブルのθ回転指令に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱をフィードバックし、
各擾乱成分を相殺するように、x軸移動指令とy軸移動指令とθ回転指令とを補正する補正手段を備えることを特徴とするテーブル移動装置。
【請求項6】
x軸に垂直なx駆動辺とy軸に垂直なy駆動辺とを有するテーブルと、
x駆動辺においてy方向に離間して配置され、x駆動辺を協働して駆動する少なくとも2つのx駆動用気体圧制御アクチュエータと、
y駆動辺を駆動する少なくとも1つのy駆動用気体圧制御アクチュエータと、
テーブルの中心部である代表位置から離れた周辺部に配置され、テーブルの移動及び回転を検出する複数のセンサと、
複数のセンサの検出値に基づいて各気体圧制御アクチュエータを制御し、テーブルの代表位置をxy平面内の任意の位置に移動させ、またはz軸周りの任意の角度でθ回転させる制御を行なう制御部と、
を備え、
制御部は、
テーブルの代表位置についてのx軸移動指令に対し、y軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるx軸移動の擾乱をフィードバックし、
テーブルの代表位置についてのy軸移動指令に対し、x軸移動指令及びθ回転指令のそれぞれによって生じるy軸移動の擾乱をフィードバックし、
テーブルの代表位置についてのθ回転指令に対し、x軸移動指令及びy軸移動指令のそれぞれによって生じるθ回転の擾乱をフィードバックし、
各擾乱成分を相殺するように、x軸移動指令とy軸移動指令とθ回転指令とを補正する補正手段を備えることを特徴とするテーブル移動装置。
【請求項7】
請求項6に記載のテーブル移動装置において、
制御部は、
テーブルの代表位置についての補正後のx軸移動指令と、補正後のθ回転指令とに基づいて、x駆動用の各気体圧制御アクチュエータに対する電流駆動指令を生成することを特徴とするテーブル移動装置。
【請求項8】
請求項6に記載のテーブル移動装置において、
複数のセンサは、x駆動辺においてy軸方向に離間して配置され、その離間した位置におけるテーブルのx方向の変位を検出する2つのx変位センサを含み、
制御部は、2つのx変位センサの検出値に基づいて、テーブルの代表位置についてのx方向の移動量と、z軸周りのθ回転量とを求め、それぞれテーブルの代表位置についてのx軸移動指令及びθ回転指令にそれぞれフィードバックすることを特徴とするテーブル移動装置。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7】
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【図8】
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【図9】
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【公開番号】特開2007−213342(P2007−213342A)
【公開日】平成19年8月23日(2007.8.23)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−32916(P2006−32916)
【出願日】平成18年2月9日(2006.2.9)
【出願人】(503094070)ピー・エス・シー株式会社 (36)
【Fターム(参考)】