説明

テープ貼付装置、塗布システムおよびマスキングテープ

【課題】非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープが貼付された基板において、非塗布領域と塗布領域との間の境界におけるメニスカスの発生を容易に防止する。
【解決手段】テープ貼付装置により基板9上に貼付されたマスキングテープ1では、第1マスキングテープ11の第1下面エッジ1123が非塗布領域92と塗布領域91との間の境界920よりも非塗布領域92の内側に位置しており、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11から外側へと突出する庇部120が非塗布領域92の露出領域921を覆う。これにより、基板9上に吐出された有機EL液が露出領域921に付着することが防止され、また、有機EL液が第1マスキングテープ11の側面1103に付着してメニスカスを形成することも防止される。その結果、非塗布領域92と塗布領域91との間の境界920におけるメニスカスの発生を容易に防止することができる。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、基板の主面上の非塗布領域に非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付するテープ貼付装置、当該テープ貼付装置を備えるとともに基板に流動性材料を塗布する塗布システム、および、基板の主面上の非塗布領域に密着して非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープに関する。
【背景技術】
【0002】
従来より、有機EL(Electro Luminescence)材料を利用した有機EL表示装置の開発が行われており、例えば、高分子有機EL材料を用いたアクティブマトリックス駆動方式の有機EL表示装置の製造では、ガラス基板(以下、単に「基板」という。)に対して、TFT(Thin Film Transistor)回路の形成、陽極となるITO(Indium Tin Oxide)電極の形成、隔壁の形成、正孔輸送材料を含む流動性材料(以下、「正孔輸送液」という。)の塗布、加熱処理による正孔輸送層の形成、有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)の塗布、加熱処理による有機EL層の形成、陰極の形成、および、絶縁膜の形成による封止が順次行われる。
【0003】
有機EL表示装置の製造において、正孔輸送液または有機EL液を基板に塗布する装置の1つとして、特許文献1および特許文献2に示すように、流動性材料を連続的に吐出する複数のノズルを、基板に対して主走査方向および副走査方向に相対移動することにより、基板上に流動性材料をストライプ状に塗布する装置が知られている。
【0004】
有機EL表示装置用の基板の表面には、正孔輸送液や有機EL液等の流動性材料が塗布されるべき塗布領域(すなわち、発光領域)の周囲に、ドライバ回路が組み込まれた領域や塗布領域の封止のために必要な領域が設けられている。有機EL表示装置の製造では、正孔輸送層や有機EL層の形成工程においてこれらの塗布領域の周囲の領域(以下、「非塗布領域」という。)に流動性材料が付着する可能性があり、流動性材料が付着した状態で後工程が行われると電極の特性劣化や封止不良等が発生する可能性がある。したがって、基板上の非塗布領域に流動性材料が付着することを防止する必要がある。
【0005】
特許文献3では、有機EL素子用の基板上の非塗布領域にマスキングテープを貼付することにより、素子形成領域に選択的に塗布液を塗布する技術が開示されている。特許文献3に記載の有機EL素子の製造方法では、マスキングテープの側面における塗布液との接触角を、基板と塗布液との接触角よりも大きくすることより、マスキングテープの側面における塗布液のメニスカスの発生が抑制され、当該メニスカスの突出により後工程において生じる可能性がある陰極の膜厚不足等の不具合が防止される。
【特許文献1】特開2004−111073号公報
【特許文献2】特開2004−89771号公報
【特許文献3】特開2006−216414号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献3に記載の有機EL素子の製造方法では、マスキングテープとして使用可能な材料が限定されるため、マスキングテープのコスト低減に限界がある。また、塗布液の塗布前に基板に対する親水化処理(例えば、溶媒による洗浄、紫外線照射、プラズマ照射)が行われるため、有機EL素子の製造工程が複雑化してしまい、有機EL素子の生産効率の向上に限界がある。
【0007】
本発明は、上記課題に鑑みなされたものであり、非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープが貼付された基板において、非塗布領域と塗布領域との間の境界におけるメニスカスの発生を容易に防止することを主な目的としている。
【課題を解決するための手段】
【0008】
請求項1に記載の発明は、基板の主面上の非塗布領域に前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付するテープ貼付装置であって、基板を保持する基板保持部と、第1マスキングテープの下面の一のエッジである第1下面エッジを前記基板の主面上の非塗布領域と塗布領域との間の境界よりも前記非塗布領域の内側に位置させつつ前記第1マスキングテープを前記境界と平行に前記非塗布領域に貼付し、第2マスキングテープの下面の一のエッジである第2下面エッジを前記第1下面エッジの上方に位置する前記第1マスキングテープの上面のエッジよりも外側に位置させつつ前記第2マスキングテープを前記境界と平行に前記第1マスキングテープの前記上面に貼付することにより、前記第1マスキングテープから前記外側に向かって突出するとともに前記基板の前記主面から離間する前記第2マスキングテープの一部を庇部として前記基板上に設ける貼付機構とを備える。
【0009】
請求項2に記載の発明は、請求項1に記載のテープ貼付装置であって、前記第2マスキングテープの前記庇部の下面が、前記基板の前記主面にほぼ平行とされる。
【0010】
請求項3に記載の発明は、請求項1または2に記載のテープ貼付装置であって、前記第1マスキングテープが前記非塗布領域に貼付されることにより、前記第1マスキングテープの他方の第1下面エッジが、前記非塗布領域ともう1つの塗布領域との間における前記境界に平行なもう1つの境界よりも前記非塗布領域の内側に位置し、前記第2マスキングテープが前記第1マスキングテープの前記上面に貼付されることにより、前記第2マスキングテープの他方の第2下面エッジが、前記他方の第1下面エッジの上方に位置する前記第1マスキングテープの前記上面のエッジよりも外側に位置し、前記第1マスキングテープから前記外側に向かって突出するとともに前記基板の前記主面から離間する前記第2マスキングテープの一部が、もう1つの庇部として前記基板上に設けられる。
【0011】
請求項4に記載の発明は、請求項3に記載のテープ貼付装置であって、前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープのそれぞれの中心線が、前記非塗布領域の中心線にほぼ重なっている。
【0012】
請求項5に記載の発明は、請求項4に記載のテープ貼付装置であって、前記第2マスキングテープの幅が、前記非塗布領域の幅に等しい。
【0013】
請求項6に記載の発明は、請求項1ないし5のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、前記第2マスキングテープの前記第1マスキングテープに対する粘着力が、前記第1マスキングテープの前記基板に対する粘着力よりも大きい。
【0014】
請求項7に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、前記貼付機構が、前記第1マスキングテープを前記基板の前記主面に貼付する第1貼付機構と、前記第2マスキングテープを前記基板の前記主面に貼付された前記第1マスキングテープの前記上面に貼付する第2貼付機構とを備え、前記第1貼付機構が、前記第1マスキングテープを繰り出す第1テープ供給部と、前記第1マスキングテープの前記第1テープ供給部から繰り出された部位を前記非塗布領域に向けて押圧する第1押圧部とを備え、前記第2貼付機構が、前記第2マスキングテープを繰り出す第2テープ供給部と、前記第2マスキングテープの前記第2テープ供給部から繰り出された部位を前記非塗布領域に貼付された前記第1マスキングテープに向けて押圧する第2押圧部とを備え、前記第1貼付機構および前記第2貼付機構が、前記第1マスキングテープが前記第1押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記非塗布領域の前記境界に平行な移動方向へと前記第1押圧部に対して相対的に移動することにより、前記第1マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付するとともに、前記第2マスキングテープが前記第2押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記移動方向へと前記第2押圧部に対して相対的に移動することにより、前記第2マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付する移動機構を備える。
【0015】
請求項8に記載の発明は、請求項1ないし6のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、前記貼付機構が、前記第1マスキングテープを繰り出す第1テープ供給部と、前記第2マスキングテープを繰り出す第2テープ供給部と、前記第1マスキングテープの前記第1テープ供給部から繰り出された部位を、前記第2マスキングテープに貼付するテープ貼り合わせ部と、前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープの貼り合わせられた部位を、前記第1マスキングテープを前記基板に対向させつつ前記非塗布領域に向けて押圧する押圧部と、前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープが前記押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記非塗布領域の前記境界に平行な移動方向へと前記押圧部に対して相対的に移動することにより、前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付する移動機構とを備える。
【0016】
請求項9に記載の発明は、基板の主面上の非塗布領域に前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付するテープ貼付装置であって、基板を保持する第1基板保持部、および、第1マスキングテープの下面の一のエッジである第1下面エッジを前記基板の主面上の非塗布領域と塗布領域との間の境界よりも前記非塗布領域の内側に位置させつつ前記第1マスキングテープを前記境界と平行に前記非塗布領域に貼付する第1貼付機構を有する第1テープ貼付装置と、前記基板を保持する第2基板保持部、および、第2マスキングテープの下面の一のエッジである第2下面エッジを前記第1下面エッジの上方に位置する前記第1マスキングテープの上面のエッジよりも外側に位置させつつ前記第2マスキングテープを前記境界と平行に前記第1マスキングテープの前記上面に貼付することにより、前記第1マスキングテープから前記外側に向かって突出するとともに前記基板の前記主面から離間する前記第2マスキングテープの一部を庇部として前記基板上に設ける第2貼付機構を有する第2テープ貼付装置と、前記基板を前記第1テープ貼付装置から搬出するとともに前記第2テープ貼付装置に搬入する搬送機構とを備える。
【0017】
請求項10に記載の発明は、基板に流動性材料を塗布する塗布システムであって、請求項1ないし9のいずれかに記載のテープ貼付装置と、第1マスキングテープおよび第2マスキングテープが貼付された基板上の前記第2マスキングテープを含む領域に流動性材料を塗布する塗布装置と、流動性材料が塗布された基板から前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープを剥離するテープ剥離装置と、前記テープ貼付装置、前記塗布装置および前記テープ剥離装置へと順に基板を搬送する基板搬送機構とを備え、前記塗布装置が、前記基板に向けて流動性材料を連続的に吐出する吐出機構と、前記吐出機構を前記基板の主面に平行であって前記第2マスキングテープと交差する主走査方向に前記基板に対して相対的に移動するとともに、前記主走査方向への移動が行われる毎に前記基板を前記吐出機構に対して前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する移動機構とを備える。
【0018】
請求項11に記載の発明は、請求項10に記載の塗布システムであって、前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含む。
【0019】
請求項12に記載の発明は、請求項11に記載の塗布システムであって、前記画素形成材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料である。
【0020】
請求項13に記載の発明は、基板の主面上の非塗布領域に密着して前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープであって、基板に対向する下面を有する第1マスキングテープと、前記第1マスキングテープの上面に前記第1マスキングテープに平行に貼付された第2マスキングテープとを備え、前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープの一方の側部において、前記第2マスキングテープの下面のエッジが前記第1マスキングテープの前記上面のエッジよりも外側に位置することにより、前記第2マスキングテープの前記第1マスキングテープから前記外側に突出する部位が、前記第1マスキングテープの前記下面を含む平面よりも上方に位置する。
【0021】
請求項14に記載の発明は、請求項13に記載のマスキングテープであって、前記第2マスキングテープの前記第1マスキングテープに対する粘着力が、前記第1マスキングテープの前記基板に対する粘着力よりも大きい。
【発明の効果】
【0022】
本発明では、非塗布領域と塗布領域との間の境界におけるメニスカスの発生を容易に防止することができる。また、請求項6および14の発明では、第1マスキングテープおよび第2マスキングテープをまとめて容易に剥離することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0023】
図1は、本発明の第1の実施の形態に係るテープ貼付装置を備える塗布システム8の構成を示す図である。塗布システム8は、マスキングテープが貼付された平面表示装置用のガラス基板(以下、単に「基板」という。)に画素形成材料を含む流動性材料を塗布するシステムである。本実施の形態では、塗布システム8において、アクティブマトリックス駆動方式の有機EL(Electro Luminescence)表示装置用の基板に、有機EL材料を含む流動性材料(以下、「有機EL液」という。)が塗布される。有機EL液は、有機EL材料の他に、キシレンやメシチレン等の有機溶媒(本実施の形態では、キシレン)を含む。
【0024】
図2は、テープ状のマスク部材であるマスキングテープ1が貼付された基板9を示す平面図である。図2では、塗布システム8(図1参照)により有機EL液が塗布される領域(以下、「塗布領域」という。)91に平行斜線を付す。本実施の形態では、基板9上に4つの塗布領域91が設けられ、1枚の基板9から4つの有機EL表示装置用の基板が製造される。4つの塗布領域91の周囲の格子状の領域92は、ドライバ回路の組み込みや後工程における絶縁膜による封止等に利用されるため、有機EL液が塗布されるべきではない領域であり、以下、「非塗布領域92」という。マスキングテープ1は、図2に示すように、基板9の(+Z)側の主面90上の非塗布領域92に貼付されて(すなわち、密着して)非塗布領域92に対する有機EL液の付着を防止する。
【0025】
図1に示すように、塗布システム8は、基板9上の非塗布領域92にマスキングテープ1(図2参照)を貼付するテープ貼付装置2、マスキングテープ1が貼付された基板9に向けて有機EL液をノズルから連続的に吐出しつつノズルを基板9に対して相対的に移動してマスキングテープ1を含む領域に有機EL液を塗布する塗布装置3、および、有機EL液が塗布された基板9からマスキングテープ1を剥離するテープ剥離装置4を備える。塗布システム8は、また、テープ貼付装置2と塗布装置3との間、および、塗布装置3とテープ剥離装置4との間に固定型の搬送ロボット81をさらに備える。塗布システム8では、2つの搬送ロボット81が、テープ貼付装置2、塗布装置3およびテープ剥離装置4へと順に基板9を搬送する基板搬送機構となっている。
【0026】
図3は、図2に示すマスキングテープ1および基板9の一部を、図2中のA−Aの位置にてマスキングテープ1の長手方向(すなわち、図2中のY方向)に垂直に切断した断面図である。図3に示すように、マスキングテープ1は、基板9に直接貼付された第1マスキングテープ11、および、第1マスキングテープ11の上面1111(すなわち、図3中における(+Z)側の面)に貼付された第2マスキングテープ12を備える。第2マスキングテープ12としては、日東電工株式会社製のNo.31等が使用される。第1マスキングテープ11は、テープ状の基材111、および、基材111の下面1112(すなわち、(−Z)側の面)に形成された粘着剤層112を備え、第2マスキングテープ12も同様に、テープ状の基材121、および、基材121の下面1212(すなわち、(−Z)側の面)に形成された粘着剤層122を備える。マスキングテープ1では、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12は、長手方向の全長に亘って図3に示す断面と同形状を有する。
【0027】
基材111,121はプラスチックフィルムにより形成される。基材111,121として使用されるプラスチックフィルムは、例えば、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリイミドフィルムであり、これらのプラスチックフィルムは、無延伸フィルムおよび延伸(一軸延伸または二軸延伸)フィルムのいずれであってもよい。本実施の形態では、基材111として、三菱化学ポリエステルフィルム株式会社製のポリエステルフィルムであるT100N38が用いられ、また、基材112もポリエステルフィルムとされる。
【0028】
基材111の上面1111(すなわち、第1マスキングテープ11の上面)には離型処理が施されていてもよいが、第1マスキングテープ11に対する第2マスキングテープ12の粘着力増大という観点から、易接着処理、帯電防止処理、コロナ処理、プラズマ処理、光触媒処理等の表面処理が施されていることが好ましい。本実施の形態では、基材111の上面1111には帯電防止処理が施されている。また、基材121の上面1211(すなわち、第2マスキングテープ12の上面)にも同様に離型処理が施されていてもよいが、後述するマスキングテープ1の剥離時における第2マスキングテープ12に対する剥離テープ45(図13.A参照)の粘着力増大という観点から、易接着処理、帯電防止処理、コロナ処理、プラズマ処理、光触媒処理等の表面処理が施されていることが好ましい。
【0029】
基材111,121の下面1112,1212には、基材111,121と粘着剤層112,122とのそれぞれの接着性向上のため、易接着処理、帯電防止処理、コロナ処理、プラズマ処理、光触媒処理等の表面処理が施されていることが好ましく、本実施の形態では、コロナ処理が施されていることが特に好ましい。
【0030】
粘着剤層112,122は、例えば、ポリエステル系粘着剤、アクリル系粘着剤、シリコーン系粘着剤、天然ゴム系粘着剤または合成ゴム系粘着剤により形成され、本実施の形態では、アクリル系粘着剤により形成される。粘着剤層112を形成するアクリル系粘着剤が製造される際には、攪拌機、温度計および反応副生成物分離管が設けられた4つ口セパラブルフラスコに、アクリル酸2−エチルヘキシル(2−EHA)100重量部、および、アクリル酸(AA)4重量部が仕込まれ、通常の溶液(酢酸エチル)重合により重量平均分子量600000のアクリル系ポリマーが生成される。そして、当該アクリル系ポリマー100重量部に対して、エポキシ系架橋剤(三菱ガス化学工業株式会社製のテトラッドC)を3.5重量部、イソシアネート系架橋剤(日本ポリウレタン工業株式会社製のコロネートL)を1重量部加えることにより、粘着剤層112の材料となるアクリル系粘着剤が生成される。
【0031】
テープ貼付装置2では、図2に示すように、マスキングテープ1(すなわち、第2マスキングテープ12および図3に示す第1マスキングテープ11)が、基板9の主面90上の非塗布領域92と非塗布領域92のX方向の両側に位置する塗布領域91との間の2つの境界920と平行にY方向を向いた状態で非塗布領域92に貼付される。
【0032】
図3に示すように、第1マスキングテープ11の下面1122(すなわち、第1マスキングテープ11の粘着剤層112の(−Z)側の面)の(+X)側に位置する一のエッジである第1下面エッジ1123は、非塗布領域92と当該非塗布領域92の(+X)側に位置する塗布領域91との間の境界920(図3中では、図示の都合上、丸い点にて表す。)よりも非塗布領域92の内側である(−X)側に位置する。また、第1マスキングテープ11の下面1122の(−X)側に位置する他方の第1下面エッジ1123は、非塗布領域92と当該非塗布領域92の(−X)側に位置するもう1つの塗布領域91との間の境界920(すなわち、非塗布領域92のもう1つの境界)よりも非塗布領域92の内側である(+X)側に位置する。
【0033】
マスキングテープ1では、第2マスキングテープ12の下面1222(すなわち、第2マスキングテープ12の粘着剤層122の(−Z)側の面)の(+X)側に位置する一のエッジである第2下面エッジ1223が、(+X)側の第1下面エッジ1123の上方に位置する第1マスキングテープ11の上面1111(すなわち、第1マスキングテープ11の基材111の(+Z)側の面)の(+X)側のエッジである第1上面エッジ1113よりも外側である(+X)側に位置する。これにより、第1マスキングテープ11から(+X)側に向かって突出するとともに基板9の主面90から離間する第2マスキングテープ12の一部が、庇部120として基板9上に設けられる。
【0034】
また、第2マスキングテープ12の下面1222の(−X)側に位置する他方の第2下面エッジ1223は、(−X)側の第1下面エッジ1123の上方に位置する第1マスキングテープ11の(−X)側の第1上面エッジ1113よりも外側である(−X)側に位置する。これにより、第1マスキングテープ11から(−X)側に向かって突出するとともに基板9の主面90から離間する第2マスキングテープ12の一部が、もう1つの庇部120として基板9上に設けられる。第2マスキングテープ12の(+X)側および(−X)側の庇部120の下面1202は、基板9の主面90に平行とされる。
【0035】
マスキングテープ1では、第1マスキングテープ11の両側の側面1103、および、第2マスキングテープ12の両側の側面1203は、基板9の主面90に略垂直とされる。また、第2マスキングテープ12のX方向の幅は非塗布領域92のX方向の幅に等しく、第2マスキングテープ12のX方向の両側の第2下面エッジ1223は、非塗布領域92の両側の境界920と平面視において重なっている。すなわち、第2マスキングテープ12のX方向の中心を通る線(以下、「中心線」という。)は、非塗布領域92の中心線に平面視において重なっている。また、第1マスキングテープ11の中心線も、非塗布領域92の中心線に平面視において重なっている。
【0036】
本実施の形態では、第1マスキングテープ11の基材111および粘着剤層112の厚さはそれぞれ、約38μmおよび約15μmとされ、第2マスキングテープ12の基材121および粘着剤層122の厚さはそれぞれ、約50μmおよび約28μmとされる。また、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の幅はそれぞれ4mmおよび6mmとされ、第2マスキングテープ12の両側の庇部120の幅はそれぞれ1mmとされる。図3では、図示の都合上、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の厚さを幅に比べて実際よりも厚く描いている(図11.Aにおいても同様)。
【0037】
マスキングテープ1では、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の基材111,121のそれぞれの厚さは10μm以上300μm以下とされることが好ましく(より好ましくは、20μm以上100μm、さらに好ましくは、25μm以上50μm以下とされる。)、粘着剤層112,122のそれぞれの厚さは1μm以上100μm以下とされることが好ましい(より好ましくは、5μm以上60μm、さらに好ましくは、10μm以上40μm以下とされる。)。
【0038】
これにより、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の柔軟性を維持しつつ強度を確保して取り扱いを容易とすることができる。上述のように、マスキングテープ1の断面は長手方向の全長に亘って同形状とされるため、図3に示すマスキングテープ1の形状に関する上記説明は、マスキングテープ1(すなわち、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12)の長手方向に垂直な任意の断面において同様である。
【0039】
図4ないし図6はそれぞれ、テープ貼付装置2の構成を示す平面図、正面図および左側面図である。図4ないし図6に示すように、テープ貼付装置2は、基板9を保持する基板保持部21、基板9を基板保持部21と共に基板9の主面90(図2参照)に平行な所定の移動方向(すなわち、図4ないし図6中のY方向であり、以下、「走査方向」という。)に移動する基板移動機構22、有機EL液が塗布される前の基板9の主面90上の非塗布領域92(図2参照)に第1マスキングテープ11(図3参照)を貼付する第1テープ貼付ヘッド23、非塗布領域92に貼付された第1マスキングテープ11の上面1111に第2マスキングテープ12(図3参照)を貼付する第2テープ貼付ヘッド23a、並びに、第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aを走査方向に垂直な方向(すなわち、図4ないし図6中のX方向)に個別に移動するヘッド移動機構24を備える。
【0040】
テープ貼付装置2では、基板移動機構22により、基板保持部21が基板9と共にレール221に沿って水平方向に移動する。また、ヘッド移動機構24により、第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aが基板9の移動経路の上方においてレール241に沿って水平方向に移動する。
【0041】
図7.Aは、第1テープ貼付ヘッド23の構成を拡大して示す左側面図であり、図7.Bは、第2テープ貼付ヘッド23aの構成を拡大して示す左側面図である。図7.Aおよび図7.Bではそれぞれ、第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aのハウジング231に収容される内部構成を描いている。第1テープ貼付ヘッド23では、ベーステープ271(いわゆる、セパレータ)の一方の面に第1マスキングテープ11が保持された2層構造のテープ27を利用して第1マスキングテープ11の貼付が行われ、第2テープ貼付ヘッド23aでは、ベーステープ271の一方の面に第2マスキングテープ12が保持された2層構造のテープ27aを利用して第2マスキングテープ12の貼付が行われる。テープ27では、第1マスキングテープ11の粘着剤層112の下面1122(図3参照)がベーステープ271に粘着しており、テープ27aでは、第2マスキングテープ12の粘着剤層122の下面1222(図3参照)がベーステープ271に粘着している。
【0042】
ベーステープ271の厚さは、10μm以上300μm以下とされることが好ましく、より好ましくは20μm以上100μmとされ、さらに好ましくは38μm以上75μm以下とされる。本実施の形態では、ベーステープ271の厚さは約50μmとされる。
【0043】
ベーステープ271は、第1マスキングテープ11の基材111および第2マスキングテープ12の基材121と同様に、ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィン系フィルム、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート等のポリエステル系フィルム、ナイロン等のポリアミド系フィルム、トリアセチルセルロースフィルム、ポリイミドフィルム等のプラスチックフィルムにより形成され、本実施の形態では、一方の面にコロナ処理が施されたポリエステルフィルム(東レ株式会社製のS−105)が利用される。
【0044】
ベーステープ271の第1マスキングテープ11または第2マスキングテープ12を保持する面には、第1マスキングテープ11または第2マスキングテープ12からの剥離性を高めるために、必要に応じてシリコーン処理、アクリル/シリコーン処理、長鎖アルキル処理、フッ素処理等の離型処理が施されてもよく、本実施の形態では、上記ポリエステルフィルムのコロナ処理が施された面にシリコーン塗液を塗布した後、140℃にて1分間乾燥させることによりシリコーン処理が施される。シリコーン層の乾燥後の重量は、約0.07g/cmとなる。
【0045】
上記シリコーン塗液は、ポリジメチルシロキサン(信越化学工業株式会社製のKS−3601)100重量部に、アセチレン系反応制御剤(信越化学工業株式会社製のCAT−PLR−1)を2重量部、アセチレン系反応制御剤(信越化学工業株式会社製のCAT−PLR−2)を1重量部、並びに、溶剤(丸善株式会社製のノルマルヘキサン、および、東亜合成株式会社製のノルマルヘプタン)を加えて20分間攪拌し、さらに、触媒(信越化学工業株式会社製のCAT−PL−50T)を5重量部加えて10分間攪拌することにより生成される。
【0046】
テープ27は、第1マスキングテープ11の基材111上にアクリル系粘着剤を塗布して130℃にて1分間乾燥させることにより粘着剤層112を形成した後、粘着剤層112上にベーステープ271を貼付することにより形成される。
【0047】
図7.Aに示すように、第1テープ貼付ヘッド23は、未使用のテープ27が巻き付けられるとともにテープ27(すなわち、第1マスキングテープ11およびベーステープ271)を繰り出す第1テープ供給部である第1供給リール232、第1供給リール232から繰り出されたテープ27から第1マスキングテープ11を分離するとともに当該分離された部位(すなわち、第1マスキングテープ11の第1供給リール232から繰り出された部位)を基板9の非塗布領域92(図2参照)に向けて押圧する第1押圧部233、第1マスキングテープ11が分離された後のテープ27(すなわち、ベーステープ271)を巻き取って回収する第1テープ回収部である第1回収リール234、および、これらの構成を収容するハウジング231を備える。
【0048】
図7.Bに示すように、第2テープ貼付ヘッド23aの構造は、図7.Aに示す第1テープ貼付ヘッド23とほぼ同様であり、ベーステープ271の一方の主面に第2マスキングテープ12が保持されたテープ27aを繰り出す第2テープ供給部である第2供給リール232a、第2マスキングテープ12の第2供給リール232aから繰り出された部位を非塗布領域92に貼付された第1マスキングテープ11に向けて押圧する第2押圧部233a、ベーステープ271を巻き取って回収する第2テープ回収部である第2回収リール234a、および、これらの構成を収容するハウジング231を備える。テープ貼付装置2では、第2テープ貼付ヘッド23aが第1テープ貼付ヘッド23とは反対向きに配置される。
【0049】
テープ貼付装置2により基板9に第1マスキングテープ11が貼付される際には、まず、図4ないし図6に示すヘッド移動機構24により第1テープ貼付ヘッド23がX方向に移動されて基板9の移動経路の上方に位置する。このとき、基板9は、第1テープ貼付ヘッド23の(−Y)側に位置している。続いて、基板移動機構22により基板9が(+Y)方向に移動し、図7.Aに示す貼付開始位置に位置する。基板9が貼付開始位置に位置すると、第1テープ貼付ヘッド23の第1押圧部233の切断部235により、テープ27の切断部235と対向する側において第1マスキングテープ11のみが切断される。
【0050】
切断された第1マスキングテープ11は、第1供給リール232および回収リール234が図7.A中における反時計回りに回転することにより、ベーステープ271と共に第1押圧部233のテープ分離部材236の先端へと送られ、当該先端において、ベーステープ271が送られてきた方向とはおよそ反対側に導かれることにより、第1マスキングテープ11がベーステープ271から剥離し、その先端部がハウジング231の下部開口237から基板9に向かって移動する。
【0051】
これと並行して、エアシリンダ238により貼付ローラ239が下部開口237を介して下方に移動し、図7.Cに示すように、第1マスキングテープ11の先端部を上側から基板9の主面90に向けて押圧して貼付するとともに、基板移動機構22(図6参照)により基板9が図7.Aの(+Y)方向に移動を開始する。そして、第1供給リール232からテープ27が継続的に送り出されるとともに、第1マスキングテープ11が第1押圧部233の貼付ローラ239により押圧された状態で、基板移動機構22により基板9が非塗布領域92の境界920(図2参照)に平行な走査方向(すなわち、(+Y)方向)に移動することにより、基板9の主面90上において第1マスキングテープ11が境界920に沿って非塗布領域92に順次貼付される。
【0052】
図7.Aに示す第1テープ貼付ヘッド23では、切断部235によりテープ27上の第1マスキングテープ11のみが再び切断され、第1マスキングテープ11が後端部まで基板9に貼付されることにより第1マスキングテープ11が基板9の主面90に密着する。テープ貼付装置2では、基板移動機構22および第1テープ貼付ヘッド23が、第1マスキングテープ11を基板9の主面90の非塗布領域92に貼付する第1貼付機構となっている。
【0053】
なお、第1マスキングテープ11の貼付開始は、テープ27を供給しつつテープ27の供給速度に等しい速度で移動している基板9に対して行われてもよい。また、第1テープ貼付ヘッド23では、第1マスキングテープ11の先端部および後端部の貼付時には、第1マスキングテープ11が第1押圧部233の貼付ローラ239により基板9に向けて押圧されている必要があるが、先端部および後端部の貼付時以外は、貼付ローラ239がハウジング231内へと退避して第1マスキングテープ11の押圧が解除されていてもよい。換言すれば、テープ貼付装置2の第1貼付機構では、第1マスキングテープ11の少なくとも先端部および後端部の貼付時に第1マスキングテープ11が基板9に対して押圧された状態で、基板9が第1テープ貼付ヘッド23の第1押圧部233に対して走査方向に相対的に移動することにより、第1マスキングテープ11が基板9上の非塗布領域92に貼付される。
【0054】
テープ貼付装置2により第1マスキングテープ11上に第2マスキングテープ12が貼付される際には、図4ないし図6に示すヘッド移動機構24により、第1テープ貼付ヘッド23が(−X)方向へと移動して基板9の移動経路の上方から退避され、第2テープ貼付ヘッド23aが(−X)方向へと移動して基板9の移動経路の上方に位置する。このとき、基板9は、第2テープ貼付ヘッド23aの(+Y)側に位置している。
【0055】
第2マスキングテープ12の貼付は、上述の第1マスキングテープ11の貼付とほぼ同様であり、図7.Bに示す第2押圧部233aの貼付ローラ239により第2マスキングテープ12の先端部が第1マスキングテープ11の上面1111に向けて押圧されて貼付されるとともに、基板移動機構22(図6参照)により基板9が(−Y)方向に移動を開始する。そして、第2マスキングテープ12が第2押圧部233aの貼付ローラ239により押圧された状態で、基板移動機構22により基板9が非塗布領域92の境界920(図2参照)に平行な走査方向(すなわち、(−Y)方向)に移動することにより、基板9の主面90上において、第2マスキングテープ12が境界920に沿って第1マスキングテープ11の上面1111上に順次貼付される。これにより、基板9の非塗布領域92上にマスキングテープ1(図2参照)が貼付されることとなる。
【0056】
テープ貼付装置2では、基板移動機構22および第2テープ貼付ヘッド23aが、第2マスキングテープ12を基板9の主面90に貼付された第1マスキングテープ11の上面1111に貼付する第2貼付機構となっている。換言すれば、テープ貼付装置2では、第1貼付機構および第2貼付機構が、基板9を走査方向に移動する基板移動機構22を共有する(すなわち、基板移動機構22を備える)。
【0057】
なお、テープ貼付装置2の第2貼付機構では、上述の第1貼付機構と同様に、第2マスキングテープ12の少なくとも先端部および後端部の貼付時に第2マスキングテープ12が第1マスキングテープ11に対して押圧された状態で、基板9が第2テープ貼付ヘッド23aの第2押圧部233aに対して走査方向に相対的に移動することにより、第2マスキングテープ12が第1マスキングテープ11上に貼付される。
【0058】
テープ貼付装置2では、図2に示すように、基板9の格子状の非塗布領域92のうち、基板移動機構22による基板9の移動方向である走査方向に平行に伸びる3つの領域(すなわち、図2中のY方向に伸びる領域)にのみマスキングテープ1(すなわち、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12)が貼付される。なお、非塗布領域92のうち、走査方向に垂直に伸びる領域(すなわち、図2中のX方向に伸びる領域)には第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の貼付は行われない。後述するように、塗布システム8では、非塗布領域92のうち第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の貼付が省略された領域に対しては有機EL液の塗布は行われない。
【0059】
図1に示す塗布システム8では、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が貼付された基板9(図2参照)が、搬送ロボット81によりテープ貼付装置2から搬出されて塗布装置3に搬入される。
【0060】
次に、基板9に有機EL液を塗布する塗布装置3について説明する。図8および図9は、塗布装置3を示す平面図および正面図である。図8および図9に示すように、塗布装置3は、マスキングテープ1(すなわち、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12)が非塗布領域92(図2参照)に貼付された基板9を保持する基板保持部31を備える。図8および図9では、図示の都合上、基板9の主面90上に貼付されたマスキングテープ1の図示を省略している。
【0061】
塗布装置3は、また、基板保持部31を基板9の主面90に平行な所定の方向(すなわち、図8中のY方向であり、以下、「副走査方向」という。)に水平移動するとともに垂直方向に向く軸を中心として回転する基板移動機構32、基板9上に形成された位置調整用目印(図示省略)を撮像して検出する目印検出部33、基板保持部31上の基板9に向けて3本のノズル37から有機EL液を連続的に吐出する吐出機構である塗布ヘッド34、基板9の主面90に平行であって副走査方向に垂直な方向(すなわち、図8中のX方向であり、以下、「主走査方向」という。)に塗布ヘッド34を水平移動するヘッド移動機構35、主走査方向に関して基板保持部31の両側に設けられるとともに塗布ヘッド34からの有機EL液を受ける2つの受液部36、および、塗布ヘッド34の3本のノズル37に有機EL液を供給する流動性材料供給部38を備える。塗布装置3では、ヘッド移動機構35および基板移動機構32が、塗布ヘッド34の3本のノズル37を基板9に対して主走査方向に相対的に移動するとともに、基板9を塗布ヘッド34の3本のノズル37に対して副走査方向に相対的に移動する移動機構となる。
【0062】
塗布ヘッド34では、3本のノズル37が、図8中のX方向(すなわち、主走査方向)に関して略直線状に離れて配列されるとともに図8中のY方向(すなわち、副走査方向)に僅かにずれて配置され、これらのノズル37から吐出された有機EL液が、基板9の塗布領域91(図2参照)に予め形成されている主走査方向に伸びる隔壁の間の溝に塗布される。本実施の形態では、隣接する2本のノズル37の間の副走査方向に関する距離は、隔壁間のピッチ(以下、「隔壁ピッチ」という。)に等しい。塗布ヘッド34では、赤色(R)、緑色(G)、青色(B)と互いに色が異なる3種類の有機EL材料をそれぞれ含む3種類の有機EL液が3本のノズル37から吐出される。
【0063】
塗布装置3により有機EL液の塗布が行われる際には、まず、テープ貼付装置2(図4ないし図6参照)により非塗布領域92にマスキングテープ1(図2参照)が貼付された基板9が基板保持部31に載置されて保持され、目印検出部33からの出力に基づいて基板移動機構32が駆動されて基板9が図8中に実線にて示す塗布開始位置に位置する。塗布ヘッド34は予め図8および図9中に実線にて示す位置に位置している。
【0064】
続いて、流動性材料供給部38から塗布ヘッド34へと有機EL液が供給されてノズル37から有機EL液の吐出が開始され、ヘッド移動機構35が駆動されて塗布ヘッド34の移動が開始される。塗布装置3では、ノズル37から有機EL液を基板9に向けて連続的に吐出しつつ、ノズル37を基板9に対して図8中の(−X)側から(+X)側へと(すなわち、基板9に貼付された第1マスキングテープおよび第2マスキングテープの長手方向と垂直に交差する主走査方向に)相対的に移動することにより、基板9の隔壁間の3つの隣接する溝、および、マスキングテープ1の第2マスキングテープ12上に有機EL液が塗布される。
【0065】
塗布ヘッド34が図8および図9中に二点鎖線にて示す位置まで移動すると、基板移動機構32が駆動され、基板9が基板保持部31と共に図8中の(+Y)側に(すなわち、副走査方向に)隔壁ピッチの3倍の距離だけ移動する。このとき、塗布ヘッド34では、3本のノズル37から受液部36に向けて有機EL液が連続的に吐出されている。
【0066】
副走査方向における基板9の移動が終了すると、塗布ヘッド34が有機EL液を吐出しつつ図8中において(+X)側から(−X)側へと(すなわち、主走査方向に)移動することにより、基板9上に3種類の有機EL液が塗布された後、副走査方向における基板9の移動が再び行われる。
【0067】
図10は、マスキングテープ1が貼付された基板9を示す平面図である。塗布装置3では、基板9が図8中に二点鎖線にて示す塗布終了位置に位置するまで、塗布ヘッド34の主走査方向への移動、および、塗布ヘッド34の1回の主走査方向への移動が行われる毎に行われる基板9の副走査方向へのピッチ移動が繰り返され、これにより、図10に示すように、基板9上の第1マスキングテープ11(図3参照)および第2マスキングテープ12を含む領域(すなわち、非塗布領域92に貼付されたマスキングテープ1上の領域、および、塗布領域91の隔壁間の溝)に有機EL液93がストライプ状に塗布される。なお、図10では、図示の都合上、基板9上に塗布された有機EL液93の幅およびピッチを実際よりも大きく描いている。
【0068】
塗布装置3では、有機EL液93の塗布が行われている間、塗布ヘッド34のノズル37(図8および図9参照)から有機EL液93が連続的に吐出されている。塗布装置3では、非塗布領域92のうち基板9の移動方向に垂直に伸びる領域(すなわち、図10中においてX方向に伸びる領域であり、マスキングテープ1の貼付が省略されている領域)に対して、塗布ヘッド34を受液部36上に待機させた状態で、基板9を当該領域の幅(すなわち、図10中のY方向の幅)と等しい距離だけ副走査方向に移動することにより、当該領域への有機EL液93の塗布が回避される。
【0069】
図11.Aは、有機EL液が塗布されたマスキングテープ1および基板9の一部を、図10中のB−Bの位置にて切断して示す断面図であり、図3に対応している。また、図11.Bは、非塗布領域792の幅に等しい1枚のマスキングテープ71のみが非塗布領域792に貼付された比較例の基板79に対して有機EL液793が塗布された場合の断面を示す図である。図11.Bに示すように、比較例の基板79では、非塗布領域792と塗布領域791との間の境界7920上に位置するマスキングテープ71の側面713に有機EL液793が付着してメニスカス794が形成され、図11.Cに示すように、マスキングテープ71の剥離後に基板79上に残る有機EL材料の膜795において、非塗布領域792と塗布領域791との間の境界7920にて当該メニスカス794(図11.B参照)に対応する部分796が突出してしまう。その結果、後工程において有機EL材料の膜上に形成される他の膜(例えば、陰極の膜)の厚さが、当該突出部において不足してしまうおそれがある。
【0070】
これに対し、本実施の形態に係る塗布システム8のテープ貼付装置2(図4ないし図6参照)により基板9上に貼付されたマスキングテープ1では、図11.Aに示すように、非塗布領域92に貼付された第1マスキングテープ11の(−X)側の第1下面エッジ1123が、非塗布領域92と当該非塗布領域92の(−X)側の塗布領域91との間の境界920よりも(+X)側に位置している。また、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11から(−X)側へと突出する庇部120が、非塗布領域92のうち第1マスキングテープ11の(−X)側にて第1マスキングテープ11から露出する領域921(以下、「露出領域921」という。)と離間しつつ当該露出領域921を覆う。
【0071】
これにより、塗布装置3のノズル37(図8および図9参照)から基板9上に吐出された有機EL液93が、非塗布領域92の露出領域921に付着することを防止することができるとともに、非塗布領域92に貼付された第1マスキングテープ11の(−X)側の側面1103に付着することも防止することができる。その結果、非塗布領域92と(−X)側の塗布領域91との間の境界920におけるメニスカスの発生を容易に防止することができ、後工程において有機EL材料の膜上に形成される他の膜の厚さ不足等の不具合が防止される。
【0072】
また、マスキングテープ1では、第1マスキングテープ11の(+X)側の第1下面エッジ1123が、非塗布領域92と(+X)側の塗布領域91との間の境界920よりも(−X)側に位置しており、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11から(+X)側へと突出する庇部120が、非塗布領域92のうち第1マスキングテープ11の(+X)側の露出領域921と離間しつつ当該露出領域921を覆う。これにより、非塗布領域92の(+X)側の露出領域921に対する有機EL液93の付着、および、第1マスキングテープ11の(+X)側の側面1103に対する有機EL液93の付着が防止される。その結果、非塗布領域92と(+X)側の塗布領域91との間の境界920においてもメニスカスの発生を容易に防止することができる。
【0073】
なお、塗布装置3では、ノズル37が高速に移動しつつ有機EL液を吐出するため、ノズル37が(+X)方向に移動しつつ有機EL液の塗布が行われる際には、第1マスキングテープ11の(−X)側(すなわち、ノズル37の移動方向の上流側)の露出領域921において、境界920近傍に僅かに有機EL液93が付着することがあるが、後工程に対する影響のおそれがない程度に付着量が微量であるため、非塗布領域92に対する有機EL液93の付着は、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12により実質的に防止されていると考えてよい。また、ノズル37が(−X)方向に移動しつつ有機EL液の塗布が行われる際には、第1マスキングテープ11の(+X)側の露出領域921の境界920近傍に有機EL液が僅かに付着することがあるが、この場合も上記と同様に、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12により、非塗布領域92に対する有機EL液93の付着が実質的に防止されていると考えてよい。
【0074】
一方、ノズル37が(+X)方向に移動しつつ有機EL液の塗布が行われる際には、マスキングテープ1の(+X)側(すなわち、ノズル37の移動方向の下流側)に位置する塗布領域91において、有機EL液93の塗布領域91に対する塗布開始位置が境界920から僅かな距離だけ離間することがある。しかしながら、塗布領域91の境界920近傍の領域は有機EL表示装置の画素領域として利用されず、かつ、塗布領域91の境界920近傍において有機EL液93が塗布されない距離が、画素領域として利用されない領域の幅よりも小さいため、上記塗布開始位置と境界920との僅かな離間は有機EL表示装置の性能には影響しない。また、ノズル37が(−X)方向に移動しつつ有機EL液の塗布が行われる際には、マスキングテープ1の(−X)側に位置する塗布領域91において、有機EL液93の塗布領域91に対する塗布開始位置が境界920から僅かな距離だけ離間することがあるが、上記と同様に、当該離間は有機EL表示装置の性能には影響しない。
【0075】
テープ貼付装置2では、上述のように、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が、それぞれの中心線が非塗布領域92の中心線に重なるように貼付され、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が、非塗布領域92の中心線に対して線対称とされる。これにより、塗布装置3において、ノズル37が(+X)方向に移動しつつ有機EL液の塗布が行われる場合と、ノズル37が(−X)方向に移動しつつ有機EL液の塗布が行われる場合とで、非塗布領域92に対する有機EL液の僅かな付着や塗布領域91における有機EL液の塗布開始位置と境界920との僅かな離間の態様を等しくすることができる。その結果、非塗布領域92の両側の2つの塗布領域91に対する有機EL液の塗布の質を均一化することができる。
【0076】
また、テープ貼付装置2では、第2マスキングテープ12の幅が非塗布領域92の幅に等しくされ、第2マスキングテープ12の幅方向のエッジが平面視において非塗布領域92の両側の境界920に重ねられる。これにより、非塗布領域92に対する有機EL液の付着がより確実に防止される。
【0077】
マスキングテープ1では、第2マスキングテープ12の庇部120の下面1202が基板9の主面90に平行とされることにより、第2マスキングテープ12の側面1203に付着した有機EL液93が、庇部120の下面1202に沿って第1マスキングテープ11の側面1103へと流れて側面1103に付着してしまうことを防止することができる。その結果、第2マスキングテープ12の側面1203に付着した有機EL液93が、庇部120の下面1202および第1マスキングテープ11の側面1103を経由して非塗布領域92に付着してしまうことが防止される。
【0078】
マスキングテープ1では、各庇部120の幅(すなわち、図3に示す第1マスキングテープ11の第1上面エッジ1113と第2マスキングテープ12の第2下面エッジ1223との間のX方向の距離)はそれぞれ、0.5mm以上3mm以下とされることが好ましい。各庇部120の幅が0.5mm以上とされることにより、第1マスキングテープ11の側面1103に対する有機EL液の付着防止の確実性をより向上することができる。また、各庇部120の幅が3mm以下とされることにより、庇部120の強度を十分に確保することができ、庇部120が基板9の主面90に向けて垂れてしまうことを防止することができる。
【0079】
図1に示す塗布システム8では、塗布装置3により有機EL液が塗布された基板9が、搬送ロボット81により塗布装置3から搬出されてテープ剥離装置4に搬入される。図12は、テープ剥離装置4を示す平面図である。図12に示すように、テープ剥離装置4は、図4ないし図6に示すテープ貼付装置2の第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aに代えて1つのテープ剥離ヘッド43を備える。テープ剥離装置4のその他の構成はテープ貼付装置2とほぼ同様である。
【0080】
テープ剥離装置4は、基板9を保持する基板保持部41、基板9を基板保持部41と共に図12中のY方向に移動する基板移動機構42、マスキングテープ1(すなわち、図3に示す第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12)を保持して剥離するテープ剥離ヘッド43、および、テープ剥離ヘッド43を基板9の移動方向に垂直な方向(すなわち、図12中のX方向)に移動するヘッド移動機構44を備える。テープ剥離装置4では、基板移動機構42により、基板9が基板保持部41と共にレール421に沿って水平方向に移動するとともに垂直方向を向く回転軸を中心として回転する。また、ヘッド移動機構44により、テープ剥離ヘッド43が基板9の移動範囲の上方においてレール441に沿って水平方向に移動する。
【0081】
図13.Aは、テープ剥離ヘッド43の構成を拡大して示す左側面図である。図13.Aでも、図7.Aと同様に、テープ剥離ヘッド43のハウジング431の内部構成を描いている。図13.Aに示すように、テープ剥離ヘッド43は、マスキングテープ1の第2マスキングテープ12に粘着することによりマスキングテープ1の少なくとも一部を保持する剥離テープ45、剥離テープ45の粘着面を第2マスキングテープ12に対向させつつ剥離テープ45を案内して基板9上のマスキングテープ1の第2マスキングテープ12に順次粘着させる剥離テープ案内部である粘着機構433、未使用の剥離テープ45を粘着機構433に供給する剥離テープ供給部である供給リール432、剥離テープ45を剥離テープ45に粘着されたマスキングテープ1(すなわち、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12)と共に基板9から引き上げて回収する剥離テープ回収部である回収リール434、並びに、これらの構成を収容するハウジング431を備える。粘着機構433は、エアシリンダ436および押圧ローラ437を備える。また、剥離テープ45の幅は、マスキングテープ1の第2マスキングテープ12の幅よりも大きい。
【0082】
テープ剥離装置4により基板9からマスキングテープ1が剥離される際には、まず、図12に示す基板移動機構42およびヘッド移動機構44により、基板9およびテープ剥離ヘッド43が移動されて剥離開始位置に位置する。このとき、図13.Aに示すように、剥離対象であるマスキングテープ1の先端が、テープ剥離ヘッド43のハウジング431の下部開口435の下方に位置する。
【0083】
続いて、エアシリンダ436により押圧ローラ437が下部開口435を介して下方に移動し、剥離テープ45を上側(すなわち、剥離テープ45の粘着面とは反対側)からマスキングテープ1の第2マスキングテープ12の先端部に押圧して粘着する。次に、基板移動機構42(図12参照)により基板9が図13.A中の(+Y)方向に移動を開始する。これと同時に、供給リール432および回収リール434の図13.A中における時計回りの回転が開始されて供給リール432に巻き付けられている剥離テープ45が送り出されるとともに、図13.Bに示すように、押圧ローラ437が上方に移動して元の位置に戻ることにより、剥離テープ45に粘着された第2マスキングテープ12の先端部が第1マスキングテープ11と共に(+Z)側に持ち上げられ、第1マスキングテープ11の先端部が基板9から剥離する。そして、図13.Aに示す供給リール432から剥離テープ45が継続的に送り出されるとともに基板9が移動を継続することにより、基板9上の第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が剥離テープ45に粘着されつつ基板9から剥離し、回収リール434により巻き取られて回収される。
【0084】
テープ剥離装置4では、有機EL液が塗布された基板9から第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が剥離されることにより、基板9の塗布領域91上にのみ有機EL液が残置される。このように、図12に示すテープ剥離装置4では、テープ剥離ヘッド43によりマスキングテープ1を保持して持ち上げた状態で、基板移動機構42により基板9をマスキングテープ1が貼付されている方向に沿って移動することにより、基板9からのマスキングテープ1の剥離が行われる。
【0085】
塗布システム8では、テープ貼付装置2により基板9に貼付されたマスキングテープ1において、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11に対する粘着力が、第1マスキングテープ11の基板9の非塗布領域92に対する粘着力よりも大きくされる。本実施の形態では、第1マスキングテープ11の非塗布領域92に対する粘着力は、0.01N/20mm以上1.2N/20mm以下とされ、好ましくは、0.02N/20mm以上0.8N/20mm以下(より好ましくは、0.03N/20mm以上0.4N/20mm以下)とされる。
【0086】
上記粘着力は、温度23℃、相対湿度50%の条件下にて、貼付速度0.3m/minかつ線圧78.4N/cmのラミネータにて幅20mmの第1マスキングテープを非塗布領域92に貼付し、貼付から30分間経過した後に、引張試験機により、剥離角度180°かつ引張速度0.3m/minにて剥離した際の(すなわち、第1マスキングテープの先端を第1マスキングテープ11の残りの部位と重なる方向へと速度0.3m/minにて引っ張りつつ剥離した際の)力である。また、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11に対する粘着力は、第1マスキングテープ11の非塗布領域92に対する粘着力よりも0.1N/20mm以上大きくされる。
【0087】
このように、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11に対する粘着力が、第1マスキングテープ11の基板9に対する粘着力よりも大きくされることにより、テープ剥離装置4において、剥離テープ45により第2マスキングテープ12を持ち上げる際に、第1マスキングテープ11が第2マスキングテープ12から剥がれて基板9上に残ることを防止し、第1マスキングテープ11と第2マスキングテープ12とをまとめて(すなわち、1回の剥離動作により)容易に剥離することができる。
【0088】
また、テープ剥離装置4では、有機EL液が付着した第2マスキングテープ12の上面を剥離テープ45により覆ってマスキングテープ1を基板9から剥離するため、第2マスキングテープ12上に付着した有機EL液を基板9に落下させることなくマスキングテープ1を回収することができる。なお、剥離テープ45のマスキングテープ1への粘着開始は、剥離テープ45を供給しつつ剥離テープ45の供給速度に等しい速度で移動している基板9に対して行われてもよい。
【0089】
図1に示す塗布システム8では、マスキングテープ1の基板9からの剥離が終了すると、基板9がテープ剥離装置4から塗布システム8外へと搬出されて基板9に対する有機EL液の塗布が終了する。なお、塗布システム8では、実際には、マスキングテープ1の貼付、有機EL液の塗布、および、マスキングテープ1の剥離が、複数の基板に対して連続的に行われる。
【0090】
以上に説明したように、図1に示す塗布システム8では、テープ貼付装置2、塗布装置3およびテープ剥離装置4により、非塗布領域92と塗布領域91の間の境界920におけるメニスカスの発生を防止しつつ実質的に塗布領域91のみに有機EL液が塗布された基板9を容易に得ることができる。
【0091】
ところで、有機EL表示装置用の基板上に形成される有機EL層の膜厚(すなわち、有機EL液の乾燥により形成される有機EL材料の膜の厚さ)は、平面表示装置の表示性能等に大きく影響するため、高精度にコントロールされる必要がある。したがって、メニスカスの発生を防止して有機EL層の膜厚の均一性を向上することができる塗布システム8は、有機EL表示装置用の基板に対する有機EL液の塗布に特に適しているといえる。また、有機EL表示装置以外の他の平面表示装置でも、有機EL表示装置と同様に、基板上に形成される画素形成材料の膜厚が高精度にコントロールされる必要があるため、塗布システム8は、平面表示装置用の画素形成材料を含む流動性材料の塗布にも適しているといえる。
【0092】
次に、本発明の第2の実施の形態に係る塗布システムのテープ貼付装置について説明する。図14は、第2の実施の形態に係るテープ貼付装置2aを示す平面図である。テープ貼付装置2aでは、図4に示すテープ貼付装置2の第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aに代えて、1つのテープ貼付ヘッド23bを備える。テープ貼付装置2aのその他の構成は、図4ないし図6に示すテープ貼付装置2と同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。
【0093】
図15.Aは、テープ貼付ヘッド23bの構成を拡大して示す左側面図であり、図15.Aでは、図7.Aおよび図7.Bと同様に、テープ貼付ヘッド23bのハウジング231に収容される内部構成を描いている。図15.Aに示すように、テープ貼付ヘッド23bは、図7.Aに示す第1テープ貼付ヘッド23の構成に加えて、ベーステープ271の一方の主面に第2マスキングテープ12が保持されたテープ27aを繰り出す第2テープ供給部である第2供給リール232a、テープ27aのベーステープ271を巻き取って回収する第2テープ回収部である第2回収リール234a、および、第1マスキングテープ11に第2マスキングテープ12を貼付するテープ貼り合わせ部230を備える。テープ貼付ヘッド23bのその他の構成は、図7.Aに示す第1テープ貼付ヘッド23と同様であり、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。なお、テープ貼付ヘッド23bは、図7.Aに示す第1テープ貼付ヘッド23と同様の向きで配置される。
【0094】
図14に示すテープ貼付装置2aにより基板9に第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が貼付される際には、まず、図14に示すヘッド移動機構24によりテープ貼付ヘッド23bがX方向に移動されて基板9の移動経路の上方に位置し、基板移動機構22により基板9が(+Y)方向に移動し、図15.Aに示す貼付開始位置に位置する。
【0095】
テープ貼付ヘッド23bでは、第2マスキングテープ12の第2供給リール232aから繰り出されてベーステープ271から剥離された部位が、第1テープ供給部である第1供給リール232から繰り出されたテープ27(すなわち、ベーステープ271、および、ベーステープ271の一方の主面に保持された第1マスキングテープ11)と共にテープ貼り合わせ部230のローラ2301,2302に挟まれることにより、第1マスキングテープ11の基材111の上面1111(図3参照)に、第2マスキングテープ12の粘着剤層122の下面1222(図3参照)が貼付される。
【0096】
続いて、押圧部233の切断部235により、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が第2マスキングテープ12側から切断され、テープ分離部材236の先端において第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12がベーステープ271から剥離し、その先端部がハウジング231の下部開口237から基板9に向かって移動する。また、これと並行して、押圧部233のエアシリンダ238により貼付ローラ239が下部開口237を介して下方に移動し、図15.Bに示すように、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の貼り合わせられた部位の先端部が、第1マスキングテープ11の粘着剤層112(図3参照)を基板9に対向させつつ第2マスキングテープ12の基材121(図3参照)側から基板9の主面90に向けて押圧されて貼付されるとともに、基板9が図15.Aの(+Y)方向に移動を開始する。
【0097】
そして、第1供給リール232および第2供給リール232aからそれぞれテープ27およびテープ27aが継続的に送り出されるとともに、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が押圧部233の貼付ローラ239により押圧された状態で、図14に示す基板移動機構22により基板9が非塗布領域92の境界920(図2参照)に平行な走査方向(すなわち、(+Y)方向)に移動することにより、基板9の主面90上において第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12(すなわち、マスキングテープ1)が境界920に沿って非塗布領域92に順次貼付される。
【0098】
図15.Aに示すテープ貼付ヘッド23bでは、切断部235によりベーステープ271上の第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が再び切断され、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が後端部まで基板9に貼付されることによりマスキングテープ1の第1マスキングテープ11が基板9の主面90に密着する。図14に示すテープ貼付装置2aでは、基板移動機構22およびテープ貼付ヘッド23bが、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12を基板9の主面90の非塗布領域92に貼付する貼付機構となっている。
【0099】
なお、図15.Aに示す第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の貼付開始は、テープ27およびテープ27aを供給しつつこれらのテープの供給速度に等しい速度で移動している基板9に対して行われてもよい。また、テープ貼付ヘッド23bでは、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の先端部および後端部の貼付時以外は、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の押圧が解除されていてもよい。換言すれば、テープ貼付装置2aの貼付機構では、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の少なくとも先端部および後端部の貼付時に第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が基板9に対して押圧された状態で、基板9がテープ貼付ヘッド23bの押圧部233に対して走査方向に相対的に移動することにより、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が基板9上の非塗布領域92に貼付される。
【0100】
テープ貼付装置2aにより第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が貼付された基板9では、第1の実施の形態と同様に(図3参照)、第1マスキングテープ11の幅方向の両側(すなわち、(+X)側および(−X)側)の第1下面エッジ1123が、非塗布領域92と塗布領域91との間の境界920よりも非塗布領域92の内側に位置し、第2マスキングテープ12の両側の第2下面エッジ1223が、第1マスキングテープ11の第1上面エッジ1113よりも外側に位置する。これにより、幅方向の両側において第1マスキングテープ11から外側に突出する第2マスキングテープ12の一部が庇部120となる。
【0101】
第2の実施の形態に係るテープ貼付装置2aでは、テープ貼付ヘッド23bにおいて第1マスキングテープ11と第2マスキングテープ12とが貼り合わせられるため、基板移動機構22のY方向への1回の移動により、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12を同時に基板9の非塗布領域92に貼付することができる。その結果、基板9に対するマスキングテープ1の迅速な貼付を実現することができる。
【0102】
一方、第1の実施の形態に係るテープ貼付装置2では、第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aの構造を簡素なものとし、さらに、両テープ貼付ヘッドの構造を共通とすることにより、テープ貼付装置2の装置構造が簡素化される。
【0103】
第2の実施の形態に係る塗布システムでは、庇部120(図11.A参照)を有するマスキングテープ1(すなわち、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12)が非塗布領域92に貼付された基板9が、テープ貼付装置2aから搬出されて塗布装置3に搬入される。そして、第1の実施の形態と同様に、有機EL液の塗布が行われた後、テープ剥離装置4へと搬入されてマスキングテープ1の剥離が行われる。
【0104】
第2の実施の形態に係る塗布システムでは、テープ貼付装置2aにより貼付されたマスキングテープ1により、第1の実施の形態と同様に、塗布装置3のノズル37(図8および図9参照)から基板9上に吐出された有機EL液が、非塗布領域92の露出領域921(図11.A参照)に付着することを防止することができるとともに、非塗布領域92に貼付された第1マスキングテープ11の両側の側面1103(図11.A参照)に付着することも防止することができる。その結果、非塗布領域92と両側の塗布領域91との間の境界920におけるメニスカスの発生を容易に防止することができ、後工程において有機EL材料の膜上に形成される他の膜の厚さ不足等の不具合が防止される。
【0105】
テープ貼付装置2aでは、第1の実施の形態と同様に、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12が、それぞれの中心線が非塗布領域92の中心線に重なるように貼付されることにより、非塗布領域92に対する有機EL液の僅かな付着や塗布領域91における有機EL液の塗布開始位置と境界920との僅かな離間の態様を等しくすることができる。その結果、非塗布領域92の両側の2つの塗布領域91に対する有機EL液の塗布の質を均一化することができる。また、第2マスキングテープ12の幅が非塗布領域92の幅に等しくされ、平面視において第2マスキングテープ12のエッジが非塗布領域92の両側の境界920に重なるように第2マスキングテープ12が貼付されることにより、非塗布領域92に対する有機EL液の付着がより確実に防止される。
【0106】
マスキングテープ1では、第1の実施の形態と同様に、第2マスキングテープ12の庇部120の下面1202が基板9の主面90に平行とされることにより、第2マスキングテープ12の側面1203(図11.A参照)に付着した有機EL液が第1マスキングテープ11の側面1103および非塗布領域92に付着してしまうことが防止される。
【0107】
また、第2の実施の形態に係る塗布システムでは、テープ貼付装置2aにより基板9に貼付されたマスキングテープ1において、第1の実施の形態と同様に、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11に対する粘着力が、第1マスキングテープ11の基板9に対する粘着力よりも大きくされる。これにより、テープ剥離装置において、第1マスキングテープ11と第2マスキングテープ12とをまとめて(すなわち、1回の剥離動作により)容易に剥離することができる。
【0108】
次に、本発明の第3の実施の形態に係る塗布システムのテープ貼付装置について説明する。図16は、第3の実施の形態に係るテープ貼付装置2bを示す平面図である。図16に示すように、テープ貼付装置2bは、第1テープ貼付装置201a、第2テープ貼付装置201b、および、第1テープ貼付装置201aと第2テープ貼付装置201bとの間に配置されて基板9を第1テープ貼付装置201aから搬出するとともに第2テープ貼付装置201bに搬入する搬送機構202を備える。第1テープ貼付装置201aは、第2テープ貼付ヘッド23aが設けられない点を除き、図4ないし図6に示すテープ貼付装置2と同様の構成を備える。また、第2テープ貼付装置201bは、第1テープ貼付ヘッド23が設けられない点を除き、図4ないし図6に示すテープ貼付装置2と同様の構成を備える。
【0109】
第1テープ貼付装置201aは、図4に示すテープ貼付装置2と同様に、基板9を保持する基板保持部21、基板9を走査方向(すなわち、図16中のY方向)に移動する基板移動機構22、基板9上の非塗布領域92に第1マスキングテープ11(図3参照)を貼付する第1テープ貼付ヘッド23、および、第1テープ貼付ヘッド23を走査方向に垂直な方向(すなわち、図16中のX方向)に移動するヘッド移動機構24を備える。第1テープ貼付装置201aでは、基板移動機構22および第1テープ貼付ヘッド23が、第1マスキングテープ11を基板9の主面90の非塗布領域92に貼付する第1貼付機構となっている。
【0110】
第2テープ貼付装置201bも、第1テープ貼付装置201aと同様に、基板9を保持する基板保持部21、基板9を走査方向に移動する基板移動機構22、基板9上に貼付された第1マスキングテープ11の上面1111に第2マスキングテープ12(図3参照)を貼付する第2テープ貼付ヘッド23a、および、第2テープ貼付ヘッド23aを走査方向に垂直な方向に移動するヘッド移動機構24を備える。第2テープ貼付装置201bでは、基板移動機構22および第2テープ貼付ヘッド23aが、第2マスキングテープ12を基板9の主面90に貼付された第1マスキングテープ11の上面1111に貼付する第2貼付機構となっている。
【0111】
第3の実施の形態に係るテープ貼付装置2bでは、第1テープ貼付装置201aにより、第1の実施の形態と同様に(図3参照)、第1マスキングテープ11の幅方向の両側(すなわち、(+X)側および(−X)側)の第1下面エッジ1123を、非塗布領域92と塗布領域91との間の境界920よりも非塗布領域92の内側に位置させつつ、第1マスキングテープ11が境界920と平行に非塗布領域92に貼付される。第1マスキングテープ11が貼付された基板9は、搬送機構202により第1テープ貼付装置201aから搬出されて第2テープ貼付装置201bに搬入される。
【0112】
そして、第2テープ貼付装置201bにより、幅方向の両側において、第2マスキングテープ12の第2下面エッジ1223を第1マスキングテープ11の第1上面エッジ1113よりも外側に位置させつつ、第2マスキングテープ12が境界920と平行に第1マスキングテープ11の上面1111に貼付される。これにより、幅方向の両側において第1マスキングテープ11から外側に突出する第2マスキングテープ12の一部が庇部120となる。
【0113】
その結果、第3の実施の形態に係る塗布システムでは、第1の実施の形態と同様に、塗布装置3のノズル37(図8および図9参照)から基板9上に吐出された有機EL液が、非塗布領域92の露出領域921(図11.A参照)に付着することを防止することができるとともに、非塗布領域92に貼付された第1マスキングテープ11の両側の側面1103(図11.A参照)に付着することも防止することができる。これにより、非塗布領域92と両側の塗布領域91との間の境界920におけるメニスカスの発生が容易に防止される。
【0114】
次に、本発明の第4の実施の形態に係る塗布システムのテープ貼付装置について説明する。第4の実施の形態に係るテープ貼付装置は、図4ないし図6に示すテープ貼付装置2から第2テープ貼付ヘッド23aが省略される点を除いてテープ貼付装置2と同様の構成を備え、以下の説明において対応する構成に同符号を付す。
【0115】
第4の実施の形態に係るテープ貼付装置では、第1マスキングテープ11の上面1111に予め第2マスキングテープ12が貼付されたマスキングテープ1(図3参照)が、ベーステープ271の一方の面に保持された状態で、図7.Aに示す第1テープ貼付ヘッド23内の第1供給リール232にベーステープ271と共に巻き付けられている。そして、第1マスキングテープ11の下面1122(図3参照)を基板9に対向させつつ、第1マスキングテープ11および第1マスキングテープ11に平行に貼付された第2マスキングテープ12が基板9の主面90に押圧された状態で、基板移動機構22により基板9が走査方向に移動することにより、基板9の非塗布領域92にマスキングテープ1(すなわち、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12)が貼付される。
【0116】
マスキングテープ1では、第1の実施の形態に係るテープ貼付装置2により第1マスキングテープ11と第2マスキングテープ12とが基板9上に順に貼付されて形成される場合と同様に、幅方向の両側の側部において、第2マスキングテープ12の第2下面エッジ1223が第1マスキングテープ11の第1上面エッジ1113よりも外側に位置する。これにより、第2マスキングテープ12の第1マスキングテープ11から幅方向の外側に突出する部位である庇部120が、基板9の主面90(すなわち、第1マスキングテープ11の下面1122を含む平面)よりも上方に位置する。その結果、第1の実施の形態と同様に、非塗布領域92と両側の塗布領域91との間の境界920におけるメニスカスの発生が容易に防止される。
【0117】
以上、本発明の実施の形態について説明してきたが、本発明は上記実施の形態に限定されるものではなく、様々な変更が可能である。
【0118】
例えば、基板9の非塗布領域92に貼付されたマスキングテープ1では、第1マスキングテープ11の両側の側面1103は、必ずしも基板9の主面90に略垂直(すなわち、第1マスキングテープ11の下面1122に略垂直)である必要はなく、第1マスキングテープ11の第1上面エッジ1113が第2マスキングテープ12の第2下面エッジ1223よりも幅方向の内側に位置するのであれば、基板9の主面90から離れるに従って幅方向の内側または外側に向かうように傾斜していてもよい。
【0119】
第2マスキングテープ12についても同様に、第2マスキングテープ12の両側の側面1203は、必ずしも基板9の主面90に略垂直である(すなわち、第2マスキングテープ12の下面1222に略垂直である)必要はなく、基板9の主面90から離れるに従って幅方向の内側または外側に向かうように傾斜していてもよい。ただし、第2マスキングテープ12の最大幅が非塗布領域92の幅に等しくされ、第2マスキングテープ12の幅方向のエッジが、平面視において非塗布領域92の両側の境界920に重ねられることにより、非塗布領域92に対する有機EL液の付着がより確実に防止される。
【0120】
マスキングテープ1では、庇部120の下面1202は、必ずしも基板9の主面90に平行とされる必要はないが、庇部120の下面1202が基板9の主面90にほぼ平行とされることにより、上述のように、有機EL液が第1マスキングテープ11の側面1103や非塗布領域92に付着してしまうことが防止される。また、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12のそれぞれの中心線は、必ずしも非塗布領域92の中心線に重なっている必要はないが、第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12の中心線をそれぞれ非塗布領域92の中心線にほぼ重ねて第1マスキングテープ11および第2マスキングテープ12を非塗布領域92に貼付することにより、上述のように、非塗布領域92の両側の2つの塗布領域91に対する有機EL液の塗布の質を均一化することができる。
【0121】
第1の実施の形態に係るテープ貼付装置2では、基板移動機構22による基板9の走査方向への移動に代えて、第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aがそれぞれ走査方向に移動されることにより、走査方向における基板9の第1押圧部233に対する相対的な移動、および、基板9の第2押圧部233aに対する相対的な移動が実現されてもよい。また、ヘッド移動機構24による第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aの移動に代えて、基板9が基板保持部21と共に走査方向に垂直な方向に移動されてもよい。
【0122】
テープ貼付装置2では、第1テープ貼付ヘッド23と第2テープ貼付ヘッド23aとが同じ向きに配置され、基板9が(−Y)方向(または、(+Y)方向)に移動する際に、第1テープ貼付ヘッド23による第1マスキングテープ11の貼付と並行して、既に非塗布領域92に貼付されている他の第1マスキングテープ11上への第2テープ貼付ヘッド23aによる第2マスキングテープ12の貼付が行われてもよい。また、テープ貼付装置2では、第1テープ貼付ヘッド23および第2テープ貼付ヘッド23aの各構成が、1つのハウジングに収容され、ヘッド移動機構24により一体的に走査方向に垂直な方向に移動されてもよい。
【0123】
第2の実施の形態に係るテープ貼付装置2aでは、基板移動機構22による基板9の走査方向への移動に代えて、テープ貼付ヘッド23bが走査方向に移動されることにより、基板9の押圧部233に対する相対的な移動が実現されてもよい。また、ヘッド移動機構24によるテープ貼付ヘッド23bの移動に代えて、基板9が基板保持部21と共に走査方向に垂直な方向に移動されてもよい。
【0124】
第1マスキングテープ11は、基板9に貼付される前の状態において、必ずしも、ベーステープ271に保持されている必要はなく、第1マスキングテープ11単体にてテープ貼付装置に保持されてもよい(第2マスキングテープ12においても同様)。
【0125】
マスキングテープ1は、3枚以上のマスキングテープが積層されることにより構成されてもよい。例えば、3層のマスキングテープによりマスキングテープ1が構成される場合、中間層のマスキングテープの幅が最上層のマスキングテープの幅よりも小さいときには、中間層のマスキングテープは最下層のマスキングテープと共に上述の第1マスキングテープとみなされる。また、中間層のマスキングテープの幅が最下層のマスキングテープの幅よりも大きいときには、中間層のマスキングテープは最上層のマスキングテープと共に上述の第2マスキングテープと見なされる。
【0126】
上記実施の形態に係る塗布システムの塗布装置3では、塗布ヘッド34に設けられるノズルの本数は3本には限定されず、また、必ずしも3種類の有機EL液が同時に塗布される必要もない。例えば、3本以上のノズルから同一種類の有機EL液が同時に吐出されて基板9に塗布されてもよい。この場合、隣接する2本のノズルの間の副走査方向に関する距離は、隔壁ピッチの3倍と等しくされる。なお、基板9の塗布領域91には、必ずしも隔壁が形成されている必要はなく、塗布装置3では、隔壁が設けられていない塗布領域91に対して、有機EL液が所定のピッチにて塗布されてもよい。
【0127】
また、塗布システムでは、2つの固定型の搬送ロボット81(図1参照)に代えて、自走式の1つ(または、複数)の搬送ロボットが、テープ貼付装置2、塗布装置3およびテープ剥離装置4へと順に基板9を搬送する基板搬送機構として設けられてもよい。
【0128】
上記塗布システムは、有機EL液の塗布以外に、有機EL表示装置用の基板9に対して正孔輸送材料を含む流動性材料(以下、「正孔輸送液」という。)を塗布する際に、非塗布領域92に対する正孔輸送液の付着防止に利用されてもよい。ここで、「正孔輸送材料」とは、有機EL表示装置の正孔輸送層を形成する材料であり、「正孔輸送層」とは、有機EL材料により形成された有機EL層へと正孔を輸送する狭義の正孔輸送層のみを意味するのではなく、正孔の注入を行う正孔注入層も含む。
【0129】
また、塗布システムは、必ずしも有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料を画素形成材料として含む流動性材料の塗布の際にのみ利用されるわけではなく、例えば、液晶表示装置やプラズマ表示装置等の平面表示装置用の基板に対し、着色材料や蛍光材料等の他の種類の画素形成材料を含む流動性材料を塗布する場合やその他の流動性材料を塗布する場合に利用されてもよい。さらには、有機薄膜太陽電池用基板や半導体ウエハ、光ディスク用基板等の様々な基板に対する流動性材料の塗布の際に利用されてもよい。
【図面の簡単な説明】
【0130】
【図1】第1の実施の形態に係る塗布システムの構成を示す図である。
【図2】基板の平面図である。
【図3】マスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図4】テープ貼付装置の平面図である。
【図5】テープ貼付装置の正面図である。
【図6】テープ貼付装置の左側面図である。
【図7.A】第1テープ貼付ヘッドを拡大して示す左側面図である。
【図7.B】第2テープ貼付ヘッドを拡大して示す左側面図である。
【図7.C】第1テープ貼付ヘッドの一部を拡大して示す左側面図である。
【図8】塗布装置の平面図である。
【図9】塗布装置の正面図である。
【図10】マスキングテープおよび基板の平面図である。
【図11.A】マスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図11.B】比較例のマスキングテープおよび基板の一部を示す断面図である。
【図11.C】比較例の基板の一部を示す断面図である。
【図12】テープ剥離装置の平面図である。
【図13.A】テープ剥離ヘッドを拡大して示す左側面図である。
【図13.B】テープ剥離ヘッドの一部を拡大して示す左側面図である。
【図14】第2の実施の形態に係るテープ貼付装置の平面図である。
【図15.A】テープ貼付ヘッドを拡大して示す左側面図である。
【図15.B】テープ貼付ヘッドの一部を拡大して示す左側面図である。
【図16】第3の実施の形態に係るテープ貼付装置の平面図である。
【符号の説明】
【0131】
1 マスキングテープ
2,2a,2b テープ貼付装置
3 塗布装置
4 テープ剥離装置
8 塗布システム
9 基板
11 第1マスキングテープ
12 第2マスキングテープ
21 基板保持部
22 基板移動機構
23 第1テープ貼付ヘッド
23a 第2テープ貼付ヘッド
23b テープ貼付ヘッド
32 基板移動機構
34 塗布ヘッド
35 ヘッド移動機構
81 搬送ロボット
90 主面
91 塗布領域
92 非塗布領域
93 有機EL液
120 庇部
201a 第1テープ貼付装置
201b 第2テープ貼付装置
202 搬送機構
230 テープ貼り合わせ部
232 第1供給リール
232a 第2供給リール
233 (第1)押圧部
233a 第2押圧部
920 境界
1111 上面
1113 第1上面エッジ
1122 下面
1123 第1下面エッジ
1202 下面
1222 下面
1223 第2下面エッジ

【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の主面上の非塗布領域に前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付するテープ貼付装置であって、
基板を保持する基板保持部と、
第1マスキングテープの下面の一のエッジである第1下面エッジを前記基板の主面上の非塗布領域と塗布領域との間の境界よりも前記非塗布領域の内側に位置させつつ前記第1マスキングテープを前記境界と平行に前記非塗布領域に貼付し、第2マスキングテープの下面の一のエッジである第2下面エッジを前記第1下面エッジの上方に位置する前記第1マスキングテープの上面のエッジよりも外側に位置させつつ前記第2マスキングテープを前記境界と平行に前記第1マスキングテープの前記上面に貼付することにより、前記第1マスキングテープから前記外側に向かって突出するとともに前記基板の前記主面から離間する前記第2マスキングテープの一部を庇部として前記基板上に設ける貼付機構と、
を備えることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項2】
請求項1に記載のテープ貼付装置であって、
前記第2マスキングテープの前記庇部の下面が、前記基板の前記主面にほぼ平行とされることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項3】
請求項1または2に記載のテープ貼付装置であって、
前記第1マスキングテープが前記非塗布領域に貼付されることにより、前記第1マスキングテープの他方の第1下面エッジが、前記非塗布領域ともう1つの塗布領域との間における前記境界に平行なもう1つの境界よりも前記非塗布領域の内側に位置し、
前記第2マスキングテープが前記第1マスキングテープの前記上面に貼付されることにより、前記第2マスキングテープの他方の第2下面エッジが、前記他方の第1下面エッジの上方に位置する前記第1マスキングテープの前記上面のエッジよりも外側に位置し、前記第1マスキングテープから前記外側に向かって突出するとともに前記基板の前記主面から離間する前記第2マスキングテープの一部が、もう1つの庇部として前記基板上に設けられることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項4】
請求項3に記載のテープ貼付装置であって、
前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープのそれぞれの中心線が、前記非塗布領域の中心線にほぼ重なっていることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項5】
請求項4に記載のテープ貼付装置であって、
前記第2マスキングテープの幅が、前記非塗布領域の幅に等しいことを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項6】
請求項1ないし5のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、
前記第2マスキングテープの前記第1マスキングテープに対する粘着力が、前記第1マスキングテープの前記基板に対する粘着力よりも大きいことを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、
前記貼付機構が、
前記第1マスキングテープを前記基板の前記主面に貼付する第1貼付機構と、
前記第2マスキングテープを前記基板の前記主面に貼付された前記第1マスキングテープの前記上面に貼付する第2貼付機構と、
を備え、
前記第1貼付機構が、
前記第1マスキングテープを繰り出す第1テープ供給部と、
前記第1マスキングテープの前記第1テープ供給部から繰り出された部位を前記非塗布領域に向けて押圧する第1押圧部と、
を備え、
前記第2貼付機構が、
前記第2マスキングテープを繰り出す第2テープ供給部と、
前記第2マスキングテープの前記第2テープ供給部から繰り出された部位を前記非塗布領域に貼付された前記第1マスキングテープに向けて押圧する第2押圧部と、
を備え、
前記第1貼付機構および前記第2貼付機構が、
前記第1マスキングテープが前記第1押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記非塗布領域の前記境界に平行な移動方向へと前記第1押圧部に対して相対的に移動することにより、前記第1マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付するとともに、前記第2マスキングテープが前記第2押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記移動方向へと前記第2押圧部に対して相対的に移動することにより、前記第2マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付する移動機構を備えることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれかに記載のテープ貼付装置であって、
前記貼付機構が、
前記第1マスキングテープを繰り出す第1テープ供給部と、
前記第2マスキングテープを繰り出す第2テープ供給部と、
前記第1マスキングテープの前記第1テープ供給部から繰り出された部位を、前記第2マスキングテープに貼付するテープ貼り合わせ部と、
前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープの貼り合わせられた部位を、前記第1マスキングテープを前記基板に対向させつつ前記非塗布領域に向けて押圧する押圧部と、
前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープが前記押圧部により押圧された状態で、前記基板を前記非塗布領域の前記境界に平行な移動方向へと前記押圧部に対して相対的に移動することにより、前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープを前記境界に沿って順次貼付する移動機構と、
を備えることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項9】
基板の主面上の非塗布領域に前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープを貼付するテープ貼付装置であって、
基板を保持する第1基板保持部、および、第1マスキングテープの下面の一のエッジである第1下面エッジを前記基板の主面上の非塗布領域と塗布領域との間の境界よりも前記非塗布領域の内側に位置させつつ前記第1マスキングテープを前記境界と平行に前記非塗布領域に貼付する第1貼付機構を有する第1テープ貼付装置と、
前記基板を保持する第2基板保持部、および、第2マスキングテープの下面の一のエッジである第2下面エッジを前記第1下面エッジの上方に位置する前記第1マスキングテープの上面のエッジよりも外側に位置させつつ前記第2マスキングテープを前記境界と平行に前記第1マスキングテープの前記上面に貼付することにより、前記第1マスキングテープから前記外側に向かって突出するとともに前記基板の前記主面から離間する前記第2マスキングテープの一部を庇部として前記基板上に設ける第2貼付機構を有する第2テープ貼付装置と、
前記基板を前記第1テープ貼付装置から搬出するとともに前記第2テープ貼付装置に搬入する搬送機構と、
を備えることを特徴とするテープ貼付装置。
【請求項10】
基板に流動性材料を塗布する塗布システムであって、
請求項1ないし9のいずれかに記載のテープ貼付装置と、
第1マスキングテープおよび第2マスキングテープが貼付された基板上の前記第2マスキングテープを含む領域に流動性材料を塗布する塗布装置と、
流動性材料が塗布された基板から前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープを剥離するテープ剥離装置と、
前記テープ貼付装置、前記塗布装置および前記テープ剥離装置へと順に基板を搬送する基板搬送機構と、
を備え、
前記塗布装置が、
前記基板に向けて流動性材料を連続的に吐出する吐出機構と、
前記吐出機構を前記基板の主面に平行であって前記第2マスキングテープと交差する主走査方向に前記基板に対して相対的に移動するとともに、前記主走査方向への移動が行われる毎に前記基板を前記吐出機構に対して前記主走査方向に垂直な副走査方向に相対的に移動する移動機構と、
を備えることを特徴とする塗布システム。
【請求項11】
請求項10に記載の塗布システムであって、
前記流動性材料が、平面表示装置用の画素形成材料を含むことを特徴とする塗布システム。
【請求項12】
請求項11に記載の塗布システムであって、
前記画素形成材料が、有機EL表示装置用の有機EL材料または正孔輸送材料であることを特徴とする塗布システム。
【請求項13】
基板の主面上の非塗布領域に密着して前記非塗布領域に対する流動性材料の付着を防止するマスキングテープであって、
基板に対向する下面を有する第1マスキングテープと、
前記第1マスキングテープの上面に前記第1マスキングテープに平行に貼付された第2マスキングテープと、
を備え、
前記第1マスキングテープおよび前記第2マスキングテープの一方の側部において、前記第2マスキングテープの下面のエッジが前記第1マスキングテープの前記上面のエッジよりも外側に位置することにより、前記第2マスキングテープの前記第1マスキングテープから前記外側に突出する部位が、前記第1マスキングテープの前記下面を含む平面よりも上方に位置することを特徴とするマスキングテープ。
【請求項14】
請求項13に記載のマスキングテープであって、
前記第2マスキングテープの前記第1マスキングテープに対する粘着力が、前記第1マスキングテープの前記基板に対する粘着力よりも大きいことを特徴とするマスキングテープ。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【図6】
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【図7.A】
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【図7.B】
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【図7.C】
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【図8】
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【図9】
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【図10】
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【図11.A】
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【図11.B】
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【図11.C】
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【図12】
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【図13.A】
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【図13.B】
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【図14】
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【図15.A】
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【図15.B】
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【図16】
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【公開番号】特開2009−266766(P2009−266766A)
【公開日】平成21年11月12日(2009.11.12)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2008−118229(P2008−118229)
【出願日】平成20年4月30日(2008.4.30)
【出願人】(000207551)大日本スクリーン製造株式会社 (2,640)
【出願人】(000003964)日東電工株式会社 (5,557)
【Fターム(参考)】