説明

ディスクアレイ装置、ディスクアレイシステム、及びキャッシュ制御方法

【課題】マスター権限を有しないコントローラ側にホスト装置からのライト要求があった場合にも、データの一貫性を維持しつつ、応答性能の向上を図るディスクアレイ装置、ディスクアレイシステム、及びキャッシュ制御方法を提案する。
【解決手段】ディスクアレイ装置は、マスターコントローラとスレーブコントローラとを備える構成である。スレーブコントローラは、ライトデータがバッファメモリに保存されたことを示す識別情報を前記ライト要求に付加すると、識別情報が付加されたライト要求及びライトデータをマスターコントローラに送信する。マスターコントローラは、ライトデータを保存した後、識別情報が付加されたライト要求をスレーブコントローラに送信する。スレーブコントローラは該ライト要求を受信すると、ライトデータを保存するバッファメモリの属性をバッファメモリからキャッシュメモリに変更する。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクアレイ装置、ディスクアレイシステム、及びキャッシュ制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
耐障害性の向上を図る目的から、ディスクアレイ装置は、その内部の構成を二重化(冗長化)することが多い。ディスクアレイ装置を二重化する一例としては、図1に示すディスクアレイ装置や特許文献1に示す記憶デバイス制御装置のように、コントローラの二重化が挙げられる。このような構成を採ることにより、万一、ディスクアレイ装置の所定部分に障害が生じても、ディスクアレイ装置は稼動し続けることが可能であり、迅速な修理が可能である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2005−115603号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
図1に示すディスクアレイシステム100は、ディスクアレイ装置2’がホスト装置1とネットワークを介して接続されており、ディスクアレイ装置2’は、その内部に二重化されたコントローラ3’M,3’Sを有する構成である。それぞれのコントローラ3’M,3’Sは、データを一時的に保存するキャッシュメモリ5’M,5’Sを有しており、機能的には、ホスト装置1との間でデータ等の入出力を送受信するI/O送受信部4’M,4’S、及びキャッシュメモリ5’M,5’Sにおけるデータの入出力を制御するキャッシュ制御部7’M,7’Sを有する構成である。
【0005】
かかるディスクアレイシステム100においては、マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’M、及びスレーブコントローラ3’Sのキャッシュ制御部7’Sにライト要求を同時に送信することができない。なぜなら、ライト要求が同時に送信されてしまうと、コントローラ3’M,3’S間において双方のライト要求が行き違いになり、それぞれのキャッシュメモリ5’M,5’Sに異なるデータが保存されることになる。このため、キャッシュメモリ5’M,5’S間において、データの不一致が発生する可能性が高く、その結果、データの一貫性が失われる可能性も高くなる。
【0006】
そこで従来のディスクアレイシステム100では、ホスト装置1から送信されるライトデータの一貫性を維持するために、一方のコントローラが他方のコントローラを制御するためのマスター権限を有するマスターコントローラ3’Mとし、他方のコントローラをスレーブコントローラ3’Sとした場合に、それぞれのキャッシュメモリ5’M,5’Sにライトデータが書込まれる手順を次のように行っている。
【0007】
まず、マスターコントローラ3’MのI/O送受信部4’Mが、ホスト装置1からのライト要求を受信した場合(S1)、マスターコントローラ3’MのI/O送受信部4’Mは、自コントローラがマスター権限を有していると判断し、マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mに、ライト要求を送信する(S2)。マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mは、ライト要求を受信すると、ホスト装置1からライト要求に続いて送信されるライトデータを、マスターコントローラ3’MのI/O送受信部4’Mを介して、キャッシュメモリ5’Mに保存する(S3)。
【0008】
その後、マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mは、ライト要求をスレーブコントローラ3’Sのキャッシュ制御部7’Sに送信し(S4)、マスターコントローラ3’Mのキャッシュメモリ5’Mに保存したライトデータを、スレーブコントローラ3’Sのキャッシュメモリ5’Sに送信する(S5)。スレーブコントローラ3’Sのキャッシュ制御部7’Sは、キャッシュメモリ5’Sにライトデータを保存すると、ライトデータの保存完了報告をマスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mに送信する(S6)。マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mは、該保存完了報告をマスターコントローラ3’MのI/O送受信部4’Mに送信し(S7)、マスターコントローラ3’MのI/O送受信部4’Mがホスト装置1に該保存完了報告を送信する(S8)。
【0009】
一方、スレーブコントローラ3’SのI/O送受信部4’Sが、ホスト装置1からのライト要求を受信した場合には、図2に示すように、キャッシュメモリ5’M,5’Sにライトデータが書込まれる。
【0010】
まず、スレーブコントローラ3’SのI/O送受信部4’Sが、ホスト装置1からのライト要求を受信した場合(S11)、スレーブコントローラ3’SのI/O送受信部4’Sは、自コントローラがマスター権限を有していないと判断すると、マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mに、ライト要求を送信する(S12)。また、スレーブコントローラ3’SのI/O送受信部4’Sは、ホスト装置1からライトデータを受信すると、受信したライトデータをマスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mに送信する。
【0011】
マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mは、ライト要求を受信すると、該ライト要求に続いて送信されるライトデータを、キャッシュメモリ5’Mに保存する(S13)。その後、マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mは、ライト要求をスレーブコントローラ3’Sのキャッシュ制御部7’Sに送信し(S14)、マスターコントローラ3’Mのキャッシュメモリ5’Mに保存したライトデータを、スレーブコントローラ3’Sのキャッシュメモリ5’Sに送信する(S15)。
【0012】
スレーブコントローラ3’Sのキャッシュ制御部7’Sは、キャッシュメモリ5’Sにライトデータを保存すると、ライトデータの保存完了報告をマスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mに送信する(S16)。マスターコントローラ3’Mのキャッシュ制御部7’Mは、該保存完了報告をスレーブコントローラ3’SのI/O送受信部4’Sに送信し(S17)、スレーブコントローラ3’SのI/O送受信部4’Sが、ホスト装置1に該保存完了報告を送信する(S18)。
【0013】
このように、ディスクアレイ装置は、ライト処理の実行において、マスター権限を有しないスレーブコントローラがライト要求を受信した場合、スレーブコントローラがライト要求及びライトデータを一旦マスターコントローラに送信した後、マスターコントローラから改めてライト要求及びライトデータを受信しなければならず、無駄なデータ転送をしていた。
【0014】
また、二重化されたコントローラが共通のキャッシュメモリを備えるディスクアレイシステムの場合には、上述のような無駄なデータ転送は生じないが、それぞれのコントローラが、キャッシュメモリ内の別々の記憶領域に対し、ロック(排他制御)を行った後、二重書込みを行うことにより、ライトデータの一貫性を維持する必要がある。かかるロック処理には時間を要するため、結果として、ライト処理に多くの時間を要し、応答性能の低下が生じてしまう。
【0015】
そこで、本発明は、マスター権限を有しないコントローラ側にホスト装置からのライト要求があった場合にも、データの一貫性を維持しつつ、応答性能の向上を図るディスクアレイ装置、ディスクアレイシステム、及びキャッシュ制御方法を提案する。
【課題を解決するための手段】
【0016】
かかる課題を解決するため、本発明は、マスターコントローラ及びスレーブコントローラによって行われるキャッシュメモリへの二重書き込みを制御するディスクアレイ装置であって、マスターコントローラは、マスターI/O部と、マスターキャッシュメモリと、マスターキャッシュ制御部と、を備え、スレーブコントローラは、スレーブI/O部と、スレーブキャッシュメモリと、メモリ属性を変更することによりキャッシュメモリとして機能させるバッファメモリと、スレーブキャッシュ制御部と、を備え、スレーブI/O部は、ホスト装置からライト要求及びライトデータを受信した場合、ライトデータをバッファメモリに保存し、バッファメモリに保存したことを示す識別情報を付加したライト要求及びライトデータをマスターコントローラに送信し、マスターキャッシュ制御部は、識別情報が付加されたライト要求及びライトデータを受信した場合、ライトデータをマスターキャッシュメモリに保存し、識別情報を付加したライト要求をスレーブコントローラに送信し、スレーブキャッシュ制御部は、マスターコントローラから識別情報を付加したライト要求を受信した場合、ライトデータが保存されたバッファメモリの属性を変更し、キャッシュメモリとして機能させる。
【0017】
また、本発明は、ホスト装置と、ホスト装置と通信可能に構成され、且つマスターコントローラ及びスレーブコントローラによって行われるキャッシュメモリへの二重書き込みを制御するディスクアレイ装置と、を備えるディスクアレイシステムであって、マスターコントローラは、マスターI/O部と、マスターキャッシュメモリと、マスターキャッシュ制御部と、を備え、スレーブコントローラは、スレーブI/O部と、スレーブキャッシュメモリと、メモリ属性を変更することによりキャッシュメモリとして機能させるバッファメモリと、スレーブキャッシュ制御部と、を備え、スレーブI/O部は、ホスト装置からライト要求及びライトデータを受信した場合、ライトデータをバッファメモリに保存し、バッファメモリに保存したことを示す識別情報を付加したライト要求及びライトデータをマスターコントローラに送信し、マスターキャッシュ制御部は、識別情報が付加されたライト要求及びライトデータを受信した場合、ライトデータをマスターキャッシュメモリに保存し、識別情報を付加したライト要求をスレーブコントローラに送信し、スレーブキャッシュ制御部は、マスターコントローラから識別情報を付加したライト要求を受信した場合、ライトデータが保存されたバッファメモリの属性を変更し、キャッシュメモリとして機能させる。
【0018】
さらに、本発明は、マスターコントローラ及びスレーブコントローラによって行われるキャッシュメモリへの二重書き込みを制御するディスクアレイ装置のキャッシュ制御方法であって、マスターコントローラは、マスターI/O部と、マスターキャッシュメモリと、マスターキャッシュ制御部と、を備え、スレーブコントローラは、スレーブI/O部と、スレーブキャッシュメモリと、メモリ属性を変更することによりキャッシュメモリとして機能させるバッファメモリと、スレーブキャッシュ制御部と、を備え、スレーブI/O部は、ホスト装置からライト要求及びライトデータを受信するステップと、ライトデータをバッファメモリに保存するステップと、バッファメモリに保存したことを示す識別情報を付加したライト要求及びライトデータをマスターコントローラに送信するステップと、を実行し、マスターキャッシュ制御部は、識別情報が付加されたライト要求及びライトデータを受信するステップと、ライトデータをマスターキャッシュメモリに保存するステップと、識別情報を付加したライト要求をスレーブコントローラに送信するステップと、を実行し、スレーブキャッシュ制御部は、マスターコントローラから識別情報を付加したライト要求を受信するステップと、ライトデータが保存されたバッファメモリの属性を変更し、キャッシュメモリとして機能させるステップと、を実行する。
【発明の効果】
【0019】
本発明によれば、コントローラが二重化されたディスクアレイ装置において、マスター権限を有しないコントローラに、キャッシュメモリのみならずバッファメモリをも搭載し、且つバッファメモリの属性をキャッシュメモリに変更できる(切り替える)ようにした。このため、マスター権限を有しないコントローラにホスト装置からのライト要求があった場合であっても、コントローラ間における無駄なデータ転送を回避しつつ、データの一貫性を維持することができる。これにより、ディスクアレイ装置は、ライト処理の処理時間が低減されるので、応答性能の向上を図ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【図1】ディスクアレイシステム100の書込み手順の一例を示すブロック図である。
【図2】ディスクアレイシステム100の書込み手順の一例を示すブロック図である。
【図3】ディスクアレイシステム300の構成の一例を示すブロック図である。
【図4】ディスクアレイシステム300の書込み手順の一例を示す説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、本発明の実施の形態について、図面を参照して説明する。なお、図面中、同一の要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。また、以下の実施の形態は、本発明を説明するための例示であり、本発明をその実施の形態のみに限定する趣旨ではない。さらに、本発明は、その要旨を逸脱しない限り、さまざまな変形が可能である。
【0022】
(1)ディスクアレイシステムの構成
図3は、本実施の形態によるディスクアレイシステム300の構成を示したブロック図である。ディスクアレイシステム300は、中央演算装置であるホスト装置1が第1通信線8を介してディスクアレイ装置2と通信可能に接続される。
【0023】
ホスト装置1は、CPU(図示せず)、バスに接続されたメモリ(図示せず)、入力部(図示せず)、出力部(図示せず)及び入出力インタフェース(図示せず)など、通常のコンピュータ装置と同様のハードウェアを備えている。ホスト装置1は、物理的には、専用化したシステム、あるいは汎用の情報処理装置のいずれであってもよい。たとえば、一般的な構成の情報処理装置において、後述する書込み方法における処理を規定したソフトウェアを実行することにより、本実施形態のホスト装置1として動作させることもできる。
【0024】
ディスクアレイ装置2は、コントローラ3M,3Sが二重化され、それぞれのコントローラ3M,3Sが互いに通信可能に接続されている。それぞれのコントローラ3M,3Sのうち、コントローラ3Mが、他のコントローラ3Sを制御するためのマスター権限を有するマスターコントローラであり、コントローラ3Sがマスター権限を有しないスレーブコントローラである。
【0025】
ディスクアレイ装置2の各コントローラ3M,3Sは、マイクロプロセッサ(図示せず)、バスに接続されたメモリ(図示せず)、キャッシュメモリ5M,5S、入力部(図示せず)、出力部(図示せず)、入出力インタフェース(図示せず)、及びHDDコントローラ(図示せず)などのハードウェアを備えている。マイクロプロセッサ、メモリ、キャッシュメモリ5M,5S、入力部、出力部、入出力インタフェース、及びHDDコントローラは、第2通信線を介して、複数のハードディスクと接続されている。
【0026】
コントローラ3M,3Sが備えるキャッシュメモリ5M,5Sは、読み書き性能を向上するために搭載されるメモリであり、ライトデータ及びリードデータを一時的に保存するメモリである。
【0027】
また、スレーブコントローラ3Sは、上述したハードウェアの他、バッファメモリ6をさらに備える構成である。このバッファメモリ6は、キャッシュメモリ5Sの他にスレーブコントローラ3Sに搭載される第二のメモリであり、ホスト装置1から送信されるライトデータを一時的に保存するメモリである。
【0028】
また、ディスクアレイ装置2は、1以上のハードディスクを1以上の論理ディスクとして管理する。論理ディスクは、一のハードディスクから構成される記憶領域をグループ化することにより形成された1つの仮想的な記憶領域、または、一のハードディスクの記憶領域を複数分割した分割記憶領域をグループ化することにより形成された1つの仮想的な記憶領域を示す。
【0029】
ディスクアレイ装置2の各コントローラ3M,3Sは、機能的には、I/O送受信部(I/O部)4M,4S、及びキャッシュ制御部7M,7Sを含んでいる。I/O送受信部4M,4S、及びキャッシュ制御部7M,7Sは、主にマイクロプロセッサがメモリに格納されるプログラムを実行し、各ハードウェアを制御することにより実現してもよく、例えばRAIDチップのような汎用の集積回路で実現してもよい。
【0030】
ここで、I/O送受信部4M,4Sは、ホスト装置1から送信されるライト要求,ライトデータ及びリード要求等を受信し、リードデータ等を送信する。
【0031】
また、スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sは、上述した機能の他、ホスト装置1から送信されたライトデータをバッファメモリ6に一時的に保存する。さらに、ホスト装置1から送信されたライトデータがバッファメモリ6に一時的に保存された場合に、スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sは、ライトデータがバッファメモリ6に一時的に保存されたことを示す識別情報をライト要求に付加し、マスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mに送信する。
【0032】
キャッシュ制御部7M,7Sは、主に、キャッシュメモリ5M,5Sに対するデータの入出力を制御し、ハードディスクに保存されるデータの属性情報及び位置情報を管理する。また、キャッシュ制御部7M,7Sは、キャッシュメモリ5M,5S又はバッファメモリ6に一時的に保存されるデータの属性情報及び位置情報を管理し、各メモリM,5S,6の属性を管理する。キャッシュメモリ5M,5S又はバッファメモリ6に保存されるデータは、キャッシュメモリ5M,5S又はバッファメモリ6の記憶領域を、所定の記憶領域毎に分割した、ページと呼ばれる分割記憶領域に保存する。
【0033】
なお、第1通信線8としては、主にSAN(Storage Area Network)が使用され、第2通信線(図示せず)としては、FC(Fibre Channel),SAS(Serial Attached SCSI),SATA(Serial ATA),USB,IEEE1394等のHDDへのアクセス線が使用される。
【0034】
このように構成されたディスクアレイシステム300において、ホスト装置1から送信されるライト要求及びライトデータをスレーブコントローラ3Sが受信する場合の、キャッシュメモリ5M,5Sの二重書込み処理を、図4に示す説明図を用いて説明する。
【0035】
まず、スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sが、ホスト装置1からのライト要求を受信した場合(S41)、スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sは、自コントローラ内に、マスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mを有するか否か、すなわち自コントローラがマスター権限を有しているか否かを判断する。スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sは、自コントローラがマスター権限を有していないと判断すると、ホスト装置1から続いて送信されるライトデータを受信し(S42)、受信したライトデータをバッファメモリ6の所定のページに保存する(S43)。
【0036】
スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sは、ライトデータがバッファメモリ6の所定のページに保存されたことを示す識別子を識別情報としてライト要求に付加すると、識別情報が付加されたライト要求、及びライトデータをマスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mに送信する(S44)。
【0037】
マスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mは、識別情報が付加されたライト要求、及びライトデータを受信すると、受信したライトデータを、キャッシュメモリ5Mの所定のページに保存する(S45)。その後、マスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mは、識別情報が付加されたライト要求をスレーブコントローラ3Sのキャッシュ制御部7Sに送信する(S46)。スレーブコントローラ3Sのキャッシュ制御部7Sに送信する際のライト要求には、バッファメモリ6の属性変更の指示も含まれる。
【0038】
スレーブコントローラ3Sのキャッシュ制御部7Sは、識別情報が付加されたライト要求を受信すると、ライトデータが保存されているメモリの属性を変更する(S47)。具体的には、スレーブコントローラ3Sのキャッシュ制御部7Sは、ライトデータが保存されているバッファメモリ6の属性をキャッシュメモリ5Sに変更する。これにより、バッファメモリ6をキャッシュメモリ5Sとして使用することができる。
【0039】
スレーブコントローラ3Sのキャッシュ制御部7Sは、ライトデータが保存されているメモリの属性変更が完了すると、ライトデータの二重書込み処理が終了した旨の完了報告をマスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mに送信する(S48)。
【0040】
マスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mは、完了報告を受信すると、この完了報告を、スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sに送信する(S49)。
【0041】
スレーブコントローラ3SのI/O送受信部4Sは、完了報告を受信すると、この完了報告を、ホスト装置1に送信し(S50)、キャッシュメモリ5M,5Sの二重書込み処理が終了する。
【0042】
なお、マスターコントローラ3MのI/O送受信部4Mが、ホスト装置1から送信されるライト要求及びライトデータを受信する場合の、キャッシュメモリ5M,5Sの二重書込み処理は、次に説明するが、図1で説明した二重書込み処理と同じである。
【0043】
まず、マスターコントローラ3MのI/O送受信部4Mが、ホスト装置1からのライト要求を受信すると、自コントローラがマスター権限を有していると判断するので、ライト要求、及び続いてホスト装置1から送信されるライトデータをキャッシュ制御部7Mに送信する。キャッシュ制御部7Mは、キャッシュメモリ5Mにライトデータを保存する。
【0044】
その後、マスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mは、ライト要求をスレーブコントローラ3Sのキャッシュ制御部7Sに送信し、マスターコントローラ3Mのキャッシュメモリ5Mに保存したライトデータを、スレーブコントローラ3Sのキャッシュメモリ5Sに送信する。スレーブコントローラ3Sのキャッシュ制御部7Sは、キャッシュメモリ5Sにライトデータを保存すると、ライトデータの保存完了報告をマスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mに送信する。マスターコントローラ3Mのキャッシュ制御部7Mは、該保存完了報告をI/O送受信部4Mに送信し、I/O送受信部4Mがホスト装置1に該保存完了報告を送信することで、キャッシュメモリ5M,5Sの二重書込み処理が終了する。
【0045】
このように、本実施形態のディスクアレイ装置2によれば、ホスト装置1から送信されるライト要求及びライトデータをスレーブコントローラ3Sが受信した場合、スレーブコントローラ3Sは、識別情報が付加されたライト要求とともにライトデータをマスターコントローラ3Mに送信し、マスターコントローラ3Mは、識別情報が付加されたライト要求のみをスレーブコントローラ3Sに送信する。このため、本実施形態によれば、コントローラ3M,3S間におけるライトデータの転送を一回で済ませることができる。
【0046】
また、スレーブコントローラ3Sがマスターコントローラ3Mから識別情報が付加されたライト要求のみを受信した場合、ライトデータが保存されているバッファメモリ6の属性をキャッシュメモリ5Sに変更すればよいので、スレーブコントローラ3Sの内部におけるライトデータのコピー回数を抑止することもできる。
【0047】
このように、本実施形態によれば、コントローラ3M,3S間における無駄なデータ転送を回避しつつ、データの一貫性を維持することができる。これにより、ライト処理の処理時間が低減されるので、応答性能の向上を図ることができる。
【産業上の利用可能性】
【0048】
本発明は、データの一貫性を維持し、且つ応答性能の向上を図ることを目的とするディスクアレイシステムに広く適用することができる。
【符号の説明】
【0049】
100,300…ディスクアレイシステム、1…ホスト装置、2…ディスクアレイ装置、3…コントローラ、3M…マスターコントローラ、3S…スレーブコントローラ、4M…マスターコントローラのI/O送受信部(マスターI/O部)、4S…スレーブコントローラのI/O送受信部(スレーブI/O部)、5M…マスターコントローラのキャッシュメモリ(マスターキャッシュメモリ)、5S…スレーブコントローラのキャッシュメモリ(スレーブキャッシュメモリ)、6…バッファメモリ、7M…マスターコントローラのキャッシュ制御部(マスターキャッシュ制御部)、7S…スレーブコントローラのキャッシュ制御部(スレーブキャッシュ制御部)。

【特許請求の範囲】
【請求項1】
マスターコントローラ及びスレーブコントローラによって行われるキャッシュメモリへの二重書き込みを制御するディスクアレイ装置であって、
前記マスターコントローラは、マスターI/O部と、マスターキャッシュメモリと、マスターキャッシュ制御部と、を備え、
前記スレーブコントローラは、スレーブI/O部と、スレーブキャッシュメモリと、メモリ属性を変更することによりキャッシュメモリとして機能させるバッファメモリと、スレーブキャッシュ制御部と、を備え、
前記スレーブI/O部は、
ホスト装置からライト要求及びライトデータを受信した場合、前記ライトデータを前記バッファメモリに保存し、前記バッファメモリに保存したことを示す識別情報を付加した前記ライト要求及び前記ライトデータを前記マスターコントローラに送信し、
前記マスターキャッシュ制御部は、
前記識別情報が付加されたライト要求及び前記ライトデータを受信した場合、前記ライトデータを前記マスターキャッシュメモリに保存し、前記識別情報を付加したライト要求を前記スレーブコントローラに送信し、
前記スレーブキャッシュ制御部は、
前記マスターコントローラから前記識別情報を付加したライト要求を受信した場合、前記ライトデータが保存された前記バッファメモリの属性を変更し、キャッシュメモリとして機能させる、
ディスクアレイ装置。
【請求項2】
ホスト装置と、前記ホスト装置と通信可能に構成され、且つマスターコントローラ及びスレーブコントローラによって行われるキャッシュメモリへの二重書き込みを制御するディスクアレイ装置と、を備えるディスクアレイシステムであって、
前記マスターコントローラは、マスターI/O部と、マスターキャッシュメモリと、マスターキャッシュ制御部と、を備え、
前記スレーブコントローラは、スレーブI/O部と、スレーブキャッシュメモリと、メモリ属性を変更することによりキャッシュメモリとして機能させるバッファメモリと、スレーブキャッシュ制御部と、を備え、
前記スレーブI/O部は、
ホスト装置からライト要求及びライトデータを受信した場合、前記ライトデータを前記バッファメモリに保存し、前記バッファメモリに保存したことを示す識別情報を付加した前記ライト要求及び前記ライトデータを前記マスターコントローラに送信し、
前記マスターキャッシュ制御部は、
前記識別情報が付加されたライト要求及び前記ライトデータを受信した場合、前記ライトデータを前記マスターキャッシュメモリに保存し、前記識別情報を付加したライト要求を前記スレーブコントローラに送信し、
前記スレーブキャッシュ制御部は、
前記マスターコントローラから前記識別情報を付加したライト要求を受信した場合、前記ライトデータが保存された前記バッファメモリの属性を変更し、キャッシュメモリとして機能させる、
ディスクアレイシステム。
【請求項3】
マスターコントローラ及びスレーブコントローラによって行われるキャッシュメモリへの二重書き込みを制御するディスクアレイ装置のキャッシュ制御方法であって、
前記マスターコントローラは、マスターI/O部と、マスターキャッシュメモリと、マスターキャッシュ制御部と、を備え、
前記スレーブコントローラは、スレーブI/O部と、スレーブキャッシュメモリと、メモリ属性を変更することによりキャッシュメモリとして機能させるバッファメモリと、スレーブキャッシュ制御部と、を備え、
前記スレーブI/O部は、ホスト装置からライト要求及びライトデータを受信するステップと、前記ライトデータを前記バッファメモリに保存するステップと、前記バッファメモリに保存したことを示す識別情報を付加した前記ライト要求及び前記ライトデータを前記マスターコントローラに送信するステップと、を実行し、
前記マスターキャッシュ制御部は、前記識別情報が付加されたライト要求及び前記ライトデータを受信するステップと、前記ライトデータを前記マスターキャッシュメモリに保存するステップと、前記識別情報を付加したライト要求を前記スレーブコントローラに送信するステップと、を実行し、
前記スレーブキャッシュ制御部は、前記マスターコントローラから前記識別情報を付加したライト要求を受信するステップと、前記ライトデータが保存された前記バッファメモリの属性を変更し、キャッシュメモリとして機能させるステップと、を実行する、
キャッシュ制御方法。

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【公開番号】特開2011−192053(P2011−192053A)
【公開日】平成23年9月29日(2011.9.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2010−58055(P2010−58055)
【出願日】平成22年3月15日(2010.3.15)
【出願人】(000004237)日本電気株式会社 (19,353)
【Fターム(参考)】