説明

ディスクスプライサを備えた自動ワインダ

【課題】ディスクスプライサ7の摩耗部品たるディスク部材7a・7aの交換の要否を適切に且つ容易に把握可能な自動ワインダ100を提供する。
【解決手段】複数の巻取ユニット1の夫々は、一対のディスク部材7a・7aをすり合わせることにより、給糸ボビン側紡績糸としての下糸Y1と巻取ボビン側紡績糸としての上糸Y2を解撚・加撚して糸継するディスクスプライサ7と、該ディスクスプライサ7の動作を制御するためのディスクスプライサ制御部52と、を備える。このディスクスプライサ制御部52は、前記機台制御装置70に対して、前記ディスクスプライサ7の動作を報告するように構成される。前記機台制御装置70は、前記ディスクスプライサ制御部52から報告されたディスクスプライサ7の動作の回数を積算するディスクスプライサ動作回数積算部72を備える。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、自動ワインダに関し、より詳しくは、ディスクスプライサの管理に係る。
【背景技術】
【0002】
糸条をチーズやコーンなどの所定の形状に巻き取る機械としての自動ワインダにおいては、糸継装置として、公知のディスクスプライサが採用される場合がある(適宜、特許第2518812号公報を参照されたい)。即ち、このディスクスプライサは、一対のディスク部材をすり合わせることによって、給糸ボビン側紡績糸としての下糸と、巻取ボビン側紡績糸としての上糸と、を解撚・加撚し、もって、これら下糸及び上糸を糸継しようとするものである。
【0003】
上記の構成で、一対のディスク部材は、ディスクスプライサの動作の度に互いにすり合わされて摩耗するものであるから、安定した糸継を継続するためには、その摩耗の程度に応じて適宜に新しいものと交換する必要がある。しかし、この摩耗の程度の進行具合は、糸継対象としての紡績糸の糸種や巻取条件、各巻取ユニットの機械的バラツキなどの巻取環境の差異を理由に、すべての巻取ユニットにおいて一定とはなり得ない。要するに、前記一対のディスク部材の寿命を推定することは極めて困難とされている。
【0004】
そこで、一般に、上記ディスク部材の交換は、所定の期間ごとに一斉に(即ち、すべての巻取ユニットで同時に)行われている。また、このような交換の態様を補完すべく、糸の継ぎ目に不良が発生した際も、該発生に呼応して上記の交換が個別具体的に行われている。
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、上述したように前記ディスク部材の摩耗の程度が極めて予測困難なものである以上、巻取環境の如何によっては、糸の継ぎ目に欠陥を含む不良パッケージを延々と生産し続けてしまう虞があるし、他方で、前記ディスク部材の交換の時期を過度に短くすると、その交換に要する費用が嵩んでしまうこととなるだろう。
【0006】
本発明は斯かる諸点に鑑みてなされたものであり、その主な目的は、ディスクスプライサの摩耗部品たるディスク部材の交換の要否を適切に且つ容易に把握可能な自動ワインダを提供することにある。
【課題を解決するための手段及び効果】
【0007】
本発明の解決しようとする課題は以上の如くであり、次にこの課題を解決するための手段とその効果を説明する。
【0008】
本発明の第一の観点によれば、以下のように構成される、自動ワインダが提供される。
即ち、自動ワインダは、複数で設けられ、給糸ボビンから解舒された紡績糸を巻取ボビンに巻き取るための巻取ユニットと、前記複数の巻取ユニットを制御するための機台制御装置と、を備える。前記複数の巻取ユニットの夫々は、一対のディスク部材をすり合わせることにより、給糸ボビン側紡績糸としての下糸と巻取ボビン側紡績糸としての上糸を解撚・加撚して糸継するディスクスプライサと、該ディスクスプライサの動作を制御するためのディスクスプライサ制御手段と、を備える。このディスクスプライサ制御手段は、前記機台制御装置に対して、前記ディスクスプライサの動作を報告するように構成される。前記機台制御装置は、前記ディスクスプライサ制御手段から報告されたディスクスプライサの動作の回数を積算するディスクスプライサ動作回数積算手段を備える。
【0009】
これによれば、ディスク部材の摩耗の程度が把握可能となるので、ディスクスプライサの摩耗部品たるディスク部材の交換の要否を適切に且つ容易に判断できる。
【0010】
前記機台制御装置は、前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を初期化するディスクスプライサ動作回数初期化手段を備えることが好ましい。
【0011】
これによれば、ディスク部材の交換と同時に、前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を初期化(クリアする/ゼロにする)できるので、(1)ディスク部材の摩耗の程度と、(2)前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数と、の(1)と(2)を直感的に結びつけて解釈できる。
【0012】
前記機台制御装置は、前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を表示するディスクスプライサ動作回数表示手段を備えることが好ましい。
【0013】
これによれば、『自動ワインダの品質管理者あるいは保全員が、ディスクスプライサ動作回数表示手段による該表示を介して、何れの巻取ユニットがディスク部材の交換を必要としているのかをすばやく認識し且つ対処できる』、という効率的な作業環境が実現される。
【0014】
前記機台制御装置は、前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を初期化するディスクスプライサ動作回数初期化手段と、前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を表示するディスクスプライサ動作回数表示手段と、を備える。前記ディスクスプライサ動作回数表示手段は、上記動作の回数と共に、前記ディスクスプライサのディスク部材の交換の目安となる動作の回数としてのディスクスプライサ交換目安動作回数を併せて表示する。
【0015】
これによれば、各巻取ユニットごとに、ディスク部材の残された寿命を容易に把握可能となるので、例えば交換用のディスク部材の確保などを円滑に行え、もって、一層効率的な作業環境が実現される。
【発明を実施するための最良の形態】
【0016】
以下、本発明の実施の形態を説明する。図1は本発明の一実施形態に係る自動ワインダの巻取ユニットの概略図である。
【0017】
図1に示す巻取ユニット1は、給糸ボビンBから解舒される紡績糸Yをトラバースさせながら巻取ボビンBf上に巻き付けて、所定長で所定形状のパッケージPとするものである。
【0018】
この巻取ユニット1は、巻取ボビンBfを把持するクレードル2と、紡績糸Yをトラバースさせる綾振ドラム(巻取ドラム)3と、を備えている。クレードル2は、綾振ドラム3に対して近接又は離間する方向に揺動自在であり、それによって、巻取ボビンBfに紡績糸Yを巻いて形成したパッケージPが綾振ドラム3に対して接触又は離間される。また、クレードル2には、糸切れ時にクレードル2を上げて、パッケージPを綾振ドラム3から離反させるリフトアップ機構2aと、クレードル2を上げると同時に、クレードル2に把持されたパッケージPの回転を停止させるパッケージブレーキ機構2bが取り付けられている。
【0019】
綾振ドラム3の周面には螺旋状の綾振溝3aが形成されており、この綾振溝3aによって紡績糸Yをトラバースさせるようにしている。また、巻取ユニット1は、給糸ボビンBと綾振ドラム3との間の糸走行経路中に、給糸ボビンB側から順に、解舒補助装置4、ヤーンフィーラ5、テンション付与装置6、糸継装置としてのディスクスプライサ7、ヤーンクリアラ8を配設している。
【0020】
解舒補助装置4は、給糸ボビンBの解舒と共に芯管に被さる筒体を下げることにより、給糸ボビンBからの糸の解舒を補助するものである。ヤーンフィーラ5は、解舒補助装置4とテンション付与装置6との間における紡績糸Yの有無を検出するものである。テンション付与装置6は、走行する紡績糸Yに所定のテンションを付与するものである。図1に示される例では、固定の櫛歯6aに対して可動の櫛歯6bを配置するゲート式のものが用いられている。櫛歯6aに対して櫛歯6bが噛み合わせ状態または開放状態になるように旋回自在になっており、その旋回はロータリー式のソレノイドにより行われる。
【0021】
ディスクスプライサ7は、糸欠点を検出して行う糸切断時、または解舒中の糸切れ時などに、給糸ボビンB側紡績糸としての下糸Y1と、パッケージP側紡績糸としての上糸Y2と、を糸継するものである。このディスクスプライサ7は円盤状のディスク部材7a・7aを一対で備え、このディスク部材7a・7aが下糸Y1と上糸Y2とを挟持している状態で、このディスク部材7a・7aを互いにすり合わせることにより、下糸Y1と上糸Y2を解撚・加撚して糸継するように構成されている。ヤーンクリアラ8は、紡績糸Yの欠陥を検出するためのものであって、クリアラ8からの紡績糸Yの太さに応じた信号が適宜のアナライザで処理されることで、スラブ等の糸欠点を検出する。また、このクリアラ8には、糸欠点を検出した時の糸切断用のカッター8aが付設されている。
【0022】
ディスクスプライサ7の上下には、給糸ボビンB側の下糸Y1を捕捉して案内する下糸捕捉案内手段11と、パッケージP側の上糸Y2を捕捉して案内する上糸捕捉案内手段12が設けられている。この構成で、糸切断時または糸切れ時においては、下糸捕捉案内手段11の吸引口11aが図示の位置で下糸Y1を捕捉し、軸11bを中心にして下から上へと旋回してディスクスプライサ7に下糸Y1を案内する。同時に、上糸捕捉案内手段12のサクションマウス12aが図示の位置から軸12bを中心にして下から上へと旋回し、逆転させられるパッケージPから上糸Y2を捕捉し、更に軸12bを中心にして上から下へと旋回し、ディスクスプライサ7に上糸Y2を案内するようになっている。
【0023】
次に、巻取ユニット1の制御について説明する。本実施形態において巻取ユニット1は、巻取ユニット1の各部を制御するための巻取ユニット制御装置50を備えている。
【0024】
この巻取ユニット制御装置50は、図略のCPU及びRAM、ROMを備えるものであって、加えて、ヤーンフィーラ入力部51と、ディスクスプライサ制御部(ディスクスプライサ制御手段)52と、ヤーンクリアラ制御部53と、を有している。
【0025】
ヤーンフィーラ入力部51は、紡績糸Yの有無に関するヤーンフィーラ5からの信号を受信し、ディスクスプライサ制御部52にその有無を報告するものである。ヤーンクリアラ制御部53は、紡績糸Yの太さに応じた信号をヤーンクリアラ8から受信し、適宜のアナライザで処理することで、スラブ等の糸欠点を検出するものであって、糸欠点を検出した場合は、カッター8aを作動させることにより、紡績糸Yを切断する。なお、このヤーンクリアラ8は、糸欠点を検出できるのみならず、ヤーンクリアラ8内の紡績糸Yの有無も検出可能である。そして、ヤーンクリアラ制御部53は、このヤーンクリアラ8内の紡績糸Yの有無を、ディスクスプライサ制御部52へ送信するように構成されている。
【0026】
ディスクスプライサ制御部52は、上記のヤーンフィーラ入力部51及びヤーンクリアラ制御部53からの信号に基づいて、ディスクスプライサ7を制御するものである。より詳しくは、第一に、(a)ヤーンクリアラ制御部53から、ヤーンクリアラ8内には紡績糸Yが無い(即ち、糸切れが発生した/糸を切断した)という信号がディスクスプライサ制御部52へ送信され、第二に、その後、(b)ヤーンクリアラ制御部53から、ヤーンクリアラ8内に紡績糸Y(上糸Y2)が有る(上糸捕捉案内手段12による上糸Y2の案内が成功した)という信号がディスクスプライサ制御部52へ送信され、且つ、(c)ヤーンフィーラ入力部51から、ヤーンフィーラ5内に紡績糸Y(下糸Y1)が有る(下糸捕捉案内手段11による下糸Y1の案内が成功した)という信号がディスクスプライサ制御部52へ送信された場合において、下糸Y1及び上糸Y2の糸継を実行するようにディスクスプライサ7を制御する。
【0027】
本実施形態に係る自動ワインダ100は、図2に示すように、複数並べて設けられる巻取ユニット1・1・・・と、これら複数の巻取ユニット1・1・・・を制御するための機台制御装置70と、を備えている。
【0028】
この機台制御装置70は、図略の演算部と、符号71で図示する記憶部(例えばフラッシュメモリなど)と、ディスクスプライサ動作回数積算部(ディスクスプライサ動作回数積算手段)72と、ディスプレイ(ディスクスプライサ動作回数表示手段)73と、ディスクスプライサ動作回数初期化部(ディスクスプライサ動作回数初期化手段)74と、を備えている。
【0029】
ディスクスプライサ動作回数積算部72は、各巻取ユニット1の巻取ユニット制御装置50のディスクスプライサ制御部52の夫々と電気的に接続されている。そして、ディスクスプライサ制御部52は、機台制御装置70(ディスクスプライサ動作回数積算部72)に対して、ディスクスプライサ7の動作を報告するように構成されている。なお、「ディスクスプライサ7の動作」とは具体的には「ディスクスプライサ7が紡績糸Yに対して糸継を行った(又は行っている、行う予定である)こと」を意味する。ディスクスプライサ制御部52からの該報告を受けると、ディスクスプライサ動作回数積算部72は、記憶部71に記憶されており該報告に対応するディスクスプライサ7の動作の回数を読み込み、該動作の回数に一を加え、加算された該動作の回数を再び記憶部71に記憶させることにより、該報告に対応するディスクスプライサ7の動作の回数を積算するように構成されている。
【0030】
ディスクスプライサ動作回数初期化部74は、ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算され、記憶部71に記憶されている、ディスクスプライサ7の動作の回数を初期化(即ち、動作の回数をゼロに戻す(クリアする)。)するものである。具体的には後述する。
【0031】
ディスプレイ73は、ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算されたディスクスプライサ7の動作の回数を品質管理者あるいは保全員へ表示するものである。図3に、その一表示例を示す。即ち、本図に示す如くディスプレイ73は、ディスクスプライサ7の動作の回数を、符号80で示す表形式(動作回数一覧表80)や符号81で示す棒グラフ形式(動作回数グラフ81)で表示している。
【0032】
動作回数一覧表80には、各錘No.ごとに、(1)各巻取ユニット1ごとに割り当てられている錘No.(一の「錘」は、一の巻取ユニットを意味する。最左列)と、(2)該錘No.に対応するディスクスプライサ7の動作の回数(図中、「動作回数」で示す。最右列)と、(3)該動作の回数の積算を開始した年月日(図中、「積算開始日」で示す。中央列)と、が同一行に(即ち、対応させたかたちで)表示されるようになっている。なお、一般に、一の機台制御装置70は、例えば60の巻取ユニット1(巻取ユニット制御装置50)を制御するよう構成されているので、本図に示すように動作回数一覧表80には適宜のスクロールバーが設けられ、これにより、本図に示されていない錘No.(及び動作回数、積算開始日)についても閲覧可能となっている。
【0033】
動作回数グラフ81には、(1)錘No.と、(2)該錘No.に対応するディスクスプライサ7の動作の回数と、が棒グラフの形式で表示されるようになっている。即ち、横軸が錘No.であり、縦軸が各錘No.に対応するディスクスプライサ7の動作の回数である。
【0034】
この動作回数グラフ81の表示の態様は、品質管理者あるいは保全員が自由に変更できるようになっている。即ち、本図において符号82で示すグラフ設定に係るグループボックス(各種コントロール(ボタンやテキストボックスなど)を互いに関連付けるための枠)のように、動作回数グラフ81の縦軸について言えば、その目盛最大値や目盛最小値を所望の値とできるようになっている。なお、この品質管理者あるいは保全員による目盛最大値や目盛最小値の変更は、同グループボックス82内に配設されている符号82aで示す実行ボタンを押すことにより動作回数グラフ81に対して反映されるようになっている。
【0035】
また、動作回数グラフ81には、上記動作の回数と共に、ディスクスプライサ7のディスク部材7a・7aの交換の目安となる動作の回数としてのディスクスプライサ交換目安動作回数を示す線81a・81bが破線で併せて表示されている。
【0036】
これら線81a・81bのうち比して太い破線である線81aは、ディスクスプライサ7のディスク部材7a・7aの交換を強く求める指標(即ち、寿命の指標)である。従って、動作回数グラフ81において例えば錘No.8に係るディスクスプライサ7の動作の回数は線81aで示す動作回数(以下、単に寿命回数とも称する。)を上回っているので、該錘No.8に係るディスクスプライサ7のディスク部材7a・7aは使用により摩耗し寿命に到達しているから早急に新しいものと交換すべきである、ことを品質管理者あるいは保全員が容易に判断できるようになっている。なお、本実施形態において、対応するディスクスプライサ7の動作の回数が寿命回数を上回っている錘No.のバー(棒グラフの棒)は、ディスク部材7a・7aの交換を強く促すために黒塗りで表示されるようになっている。
【0037】
一方、線81a・81bのうち比して細い破線である線81bは、ディスクスプライサ7のディスク部材7a・7aの交換の準備を求める指標である。従って、動作回数グラフ81において例えば錘No.5に係るディスクスプライサ7の動作の回数は寿命回数は上回っていないが線81bで示す動作回数(以下、警告回数と称する。)は上回っているので、該錘No.5に係るディスクスプライサ7のディスク部材7a・7aは使用により摩耗しもうじき寿命に到達しそうであるから交換用の新しいものを準備しておくべきである、ことを品質管理者あるいは保全員が容易に判断できるようになっている。なお、本実施形態において、対応するディスクスプライサ7の動作の回数が警告回数を上回っている錘No.のバー(ただし、寿命回数を上回っているものを除く。)は、ディスク部材7a・7aの交換の準備を促すために適宜のハッチング(例えば斜線など)が施されて表示されるようになっている。
【0038】
また、好ましくは、ディスクスプライサ7の動作の回数が寿命回数又は警告回数の何れかを上回ったときに、そのディスクスプライサ7に対応する巻取ユニット1に適宜に設けられたアラームランプ(アラーム手段)を点灯又は点滅させるとよい。これによれば、品質管理者あるいは保全員が、視覚的に容易に且つ迅速に、問題のある錘を特定できるからである。
【0039】
更に好ましくは、前記の巻取ユニット制御装置50には、ディスクスプライサ7の動作回数が寿命回数を上回った時点で巻取ユニット1の巻取動作を強制的に終了させる巻取ユニット停止部(巻取ユニット停止手段)を設けるとよい。これによれば、不良糸の生産を未然に防止できる。なお、品質よりも生産性を優先する場合は、この巻取ユニット停止部の動作を停止(無効化)させればよい。
【0040】
なお、上記の寿命回数や警告回数は、本図に示すグループボックス82内において、品質管理者あるいは保全員が変更できるようになっている。
【0041】
ところで、ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算され、記憶部71に記憶されている、ディスクスプライサ7の動作の回数は、品質管理者あるいは保全員により、初期化できるようになっている。即ち、任意の錘No.に対応するディスクスプライサ7の動作の回数を初期化したい場合は、品質管理者あるいは保全員は、グループボックス83内において該錘No.を特定し、同グループボックス83内に配置されている実行ボタン83aを押すだけでよい。すると、ディスクスプライサ動作回数初期化部74は、記憶部71に記憶されており品質管理者あるいは保全員により特定された錘No.の動作の回数を初期化するようになっている。なお、上記動作の回数の初期化を何れの錘No.で実行するか、その錘No.の特定方法は本実施形態において三つ、提供されている。即ち、第一に、グループボックス83内において「錘No.」として示唆するように、上記動作の回数の初期化を実行する錘No.を個別具体的に特定する方法である。第二に、同様に「グループNo.」として示唆するように、例えば紡績糸Yの巻取を開始する前に予め設定しておいた各錘のグループ分けに従って複数の錘No.をある程度まとめて特定する方法である。第三に、錘No.は具体的には一切特定せずに、すべての錘No.を、上記動作の回数の初期化の対象とする方法である。
【0042】
以上説明したように上記実施形態において、複数で設けられ、給糸ボビンBから解舒された紡績糸Yを巻取ボビンBfに巻き取るための巻取ユニット1と、前記複数の巻取ユニット1を制御するための機台制御装置70と、を備える自動ワインダ100は、以下のように構成されている。
【0043】
即ち、前記複数の巻取ユニット1の夫々は、一対のディスク部材7a・7aをすり合わせることにより、給糸ボビン側紡績糸としての下糸Y1と巻取ボビン側紡績糸としての上糸Y2を解撚・加撚して糸継するディスクスプライサ7と、該ディスクスプライサ7の動作を制御するためのディスクスプライサ制御部52と、を備える。
このディスクスプライサ制御部52は、前記機台制御装置70に対して、前記ディスクスプライサ7の動作を報告するように構成される。
前記機台制御装置70は、前記ディスクスプライサ制御部52から報告されたディスクスプライサ7の動作の回数を積算するディスクスプライサ動作回数積算部(ディスクスプライサ動作回数積算手段)72を備える。
【0044】
これによれば、ディスク部材7a・7aの摩耗の程度が把握可能となるので、ディスクスプライサ7の摩耗部品たるディスク部材7a・7aの交換の要否を適切に且つ容易に判断できる。
【0045】
また、前記機台制御装置70は、前記ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算された前記ディスクスプライサ7の動作の回数を初期化するディスクスプライサ動作回数初期化部(ディスクスプライサ動作回数初期化手段)74を備えることが好ましい。
【0046】
これによれば、ディスク部材7a・7aの交換と同時に、前記ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算された前記ディスクスプライサ7の動作の回数を初期化できるので、(1)ディスク部材7a・7aの摩耗の程度と、(2)前記ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算された前記ディスクスプライサ7の動作の回数と、の(1)と(2)を直感的に結びつけて解釈できる。
【0047】
また、前記機台制御装置70は、前記ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算された前記ディスクスプライサ7の動作の回数を表示するディスプレイ(ディスクスプライサ動作回数表示手段)73を備えることが好ましい。
【0048】
これによれば、『自動ワインダ100の品質管理者あるいは保全員が、ディスプレイ73による該表示を介して、何れの巻取ユニット1がディスク部材7a・7aの交換を必要としているのかをすばやく認識し且つ対処できる』、という効率的な作業環境が実現される。
【0049】
また、前記機台制御装置70は、前記ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算された前記ディスクスプライサ7の動作の回数を初期化するディスクスプライサ動作回数初期化部74と、前記ディスクスプライサ動作回数積算部72により積算された前記ディスクスプライサ7の動作の回数を表示するディスプレイ73と、を備え、前記ディスプレイ73は、上記動作の回数と共に、前記ディスクスプライサ7のディスク部材7a・7aの交換の目安となる動作の回数としてのディスクスプライサ交換目安動作回数(上記実施形態の寿命回数・警告回数に対応する。)を併せて表示することが好ましい。
【0050】
これによれば、各巻取ユニット1ごとに、ディスク部材7a・7aの残された寿命を容易に把握可能となるので、例えば交換用のディスク部材7a・7aの確保などを円滑に行え、もって、一層効率的な作業環境が実現される。
【図面の簡単な説明】
【0051】
【図1】本発明の一実施形態に係る自動ワインダの巻取ユニットの概略図
【図2】本発明の一実施形態に係る自動ワインダのブロック図
【図3】機台制御装置が備えるディスプレイの一表示例
【符号の説明】
【0052】
1 巻取ユニット
7 ディスクスプライサ
7a ディスク部材
52 ディスクスプライサ制御部
70 機台制御装置
72 ディスクスプライサ動作回数積算部(ディスクスプライサ動作回数積算手段)
Y1 下糸
Y2 上糸

【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数で設けられ、給糸ボビンから解舒された紡績糸を巻取ボビンに巻き取るための巻取ユニットと、前記複数の巻取ユニットを制御するための機台制御装置と、を備える自動ワインダであって、
前記複数の巻取ユニットの夫々は、一対のディスク部材をすり合わせることにより、給糸ボビン側紡績糸としての下糸と巻取ボビン側紡績糸としての上糸を解撚・加撚して糸継するディスクスプライサと、該ディスクスプライサの動作を制御するためのディスクスプライサ制御手段と、を備え、
このディスクスプライサ制御手段は、前記機台制御装置に対して、前記ディスクスプライサの動作を報告するように構成され、
前記機台制御装置は、前記ディスクスプライサ制御手段から報告されたディスクスプライサの動作の回数を積算するディスクスプライサ動作回数積算手段を備える、
ことを特徴とする自動ワインダ
【請求項2】
前記機台制御装置は、前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を初期化するディスクスプライサ動作回数初期化手段を備える、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動ワインダ
【請求項3】
前記機台制御装置は、前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を表示するディスクスプライサ動作回数表示手段を備える、
ことを特徴とする請求項1又は2に記載の自動ワインダ
【請求項4】
前記機台制御装置は、
前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を初期化するディスクスプライサ動作回数初期化手段と、
前記ディスクスプライサ動作回数積算手段により積算された前記ディスクスプライサの動作の回数を表示するディスクスプライサ動作回数表示手段と、
を備え、
前記ディスクスプライサ動作回数表示手段は、上記動作の回数と共に、前記ディスクスプライサのディスク部材の交換の目安となる動作の回数としてのディスクスプライサ交換目安動作回数を併せて表示する、
ことを特徴とする請求項1に記載の自動ワインダ

【図1】
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【図2】
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【図3】
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【公開番号】特開2008−74500(P2008−74500A)
【公開日】平成20年4月3日(2008.4.3)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2006−252101(P2006−252101)
【出願日】平成18年9月19日(2006.9.19)
【出願人】(000006297)村田機械株式会社 (4,916)
【Fターム(参考)】