ディスクブレーキ装置用ブレーキパッド
【課題】液圧ピストンと液圧シリンダーの勘合部の早期磨耗や、摩擦材の破壊、裏板との接着剥離を防止しながら、重量を増やさずに制動により発生する熱が作動液に伝わるのを防止する。
【解決手段】車輪と共に回転するブレーキディスクローターに対して接離可能に配置され、ブレーキディスクローターに対向状態で配置される摩擦材7と、この摩擦材7が固着され当該摩擦材7をブレーキディスクローターに圧接させる裏板8とを含み、当該裏板8に空洞、溝または穴12またはこれらを組み合わせたものを形成する。
【解決手段】車輪と共に回転するブレーキディスクローターに対して接離可能に配置され、ブレーキディスクローターに対向状態で配置される摩擦材7と、この摩擦材7が固着され当該摩擦材7をブレーキディスクローターに圧接させる裏板8とを含み、当該裏板8に空洞、溝または穴12またはこれらを組み合わせたものを形成する。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に使用するブレーキパッドに関し、詳しくは制動時にブレーキディスクローターとブレーキパッドとの摩擦面から発生する熱を効果的に遮断することで車体側のブレーキキャリパーなどに熱が伝わり難くするとともに、発生する熱を速やかに放出することが出来るブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の液圧作用部とブレーキディスクローターの外周部を跨ぎ両液圧作用部を繋ぐブリッジ部とを一体形成したモノコック構造の液圧ピストン対向型のキャリパーボデーは、これらを一体で鋳造乃至鍛造で成形した後、液圧作用部の液圧シリンダー穴を切削加工して液圧シリンダー部が形成されている。前記モノコック構造のキャリパーボデーは、それの出現以前から広く採用されている前記ブリッジ部で車両内側用と車両外側用の二つに分割して各々の液圧シリンダー穴を個別に切削加工で形成した後、両者をボルトで結合するタイプに比べて、キャリパーボデーの口開き剛性(液圧作用時に両液圧作用部の間隔が拡がる方向の剛性)が高いので高性能車やスポーツタイプ車に多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−228729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このモノコック構造のキャリパーボデーは、上記特許文献1に記載のように、片側の開口部から切削加工用の刃物を挿入させ加工するスペースを確保するため、両液圧作用部の間隔が構造上必要とする以上に拡がってしまうという問題があった。この広い間隔を埋めるために上記特許文献1では液圧ピストンをブレーキディスクローター側に延長しているが、制動に伴いブレーキディスクローターから作用する力によりキャリパーボデーの液圧シリンダーと液圧ピストンとの勘合部に大きな反力が作用し勘合部が早期に磨耗してしまうという問題があった。
【0005】
また、別の対処法として液圧ピストンは延長せずブレーキパッドの摩擦材の部分の厚みを増大して隙間を埋める方法が考えられるが、ブレーキディスクローターと裏板の間隔が拡がるので、ブレーキディスクローターから作用する力と前記間隔によるモーメントが大きくなり摩擦材と裏板の接着部の剥離が発生しやすく、なおかつ当該モーメントで摩擦材が破壊し易いので使用出来る摩擦材料が限定されるだけでなく、制動により発生した熱が摩擦材内部に溜まりやすく摩擦材が熱で変質し易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブレーキパッドは、これらの問題を鑑みてなされたもので、請求項1に記載の第一発明は、摩擦材が接着され当該摩擦材をブレーキディスクローターに圧接させる裏板の厚みを厚くして、当該裏板に裏板の厚み方向に直交する方向に空洞を形成するように構成されているものである。
【0007】
請求項2に記載の第二発明は、前記裏板の厚みを厚くして摩擦材が接着されている側の反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものを形成するように構成されているものである。
【0008】
請求項3に記載の第三発明は、第一発明乃至第二発明の前記裏板がアルミニウム合金などの非鉄系の材料で構成されているものである。
【0009】
請求項4に記載の第四発明は、第一発明乃至第二発明の前記裏板が樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料で構成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によりなる第一発明のブレーキパッドは、液圧ピストンをブレーキディスクローター側に延長することなく、なおかつブレーキパッドの摩擦材の部分を増大することなく、前記裏板の厚みを厚くして当該裏板の厚み方向に直交する方向に空洞を形成するように構成されているので、制動によりブレーキディスクローターから制動力が作用しても液圧シリンダーに対して液圧ピストンをこじる方向のモーメントが小さいので、キャリパーボデーの液圧シリンダーと液圧ピストンとの勘合部が早期に磨耗してしまうこともなく、なおかつ摩擦材と裏板の接着部の剥離をおこすこともなく、さらに摩擦材の使用材料が限定されることがないという効果を奏する。
【0011】
なおかつ、当該裏板に裏板の厚み方向に直交する方向に空洞が形成されているので重量の増大を招くこともない。さらに、前記空洞部が制動に伴いブレーキディスクローターと前記摩擦材との間で発生し摩擦材を通して液圧ピストンに伝わる熱を遮断し、なおかつ当該空洞部には走行時の流体が流れこむことで前記裏板の冷却性が大幅に向上するので、制動に伴い発生した熱が前記液圧ピストンからブレーキキャリパーに伝わりにくく、ブレーキキャリパー内部の作動液が沸点を超えることでブレーキが効きにくくなる、いわゆるベーパーロックを起こすことがないという効果を奏する。
【0012】
上記構成によりなる第二発明のブレーキパッドは、前記裏板部分を厚くして当該裏板の摩擦材が接着されている側の反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものを形成するように構成されているので、第一発明と同様に液圧シリンダーと液圧ピストンの勘合部が早期に磨耗してしまうこともなく、なおかつ摩擦材と裏板の接着部の剥離をおこすこともなく、さらに摩擦材の使用材料が限定されることがないという効果を奏する。
【0013】
また、前記裏板の摩擦材が固着されている側の反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものが形成されているので、第一発明と同様に、重量の増大を招くこともなく、さらに前記溝または穴またはこれらを組合わせたものが、制動時に摩擦材を通して伝わる熱を遮断し、なおかつ当該溝または穴またはこれらを組合わせたもの部分に走行時の流体が流れこむので前記裏板の冷却性が大幅に向上することで、前記液圧ピストンに制動により発生した熱が伝わりにくく、ベーパーロックを起こすことがないという効果を奏する。
【0014】
さらに、第二発明は前記溝または穴またはこれらを組合わせたものが前記裏板の摩擦材が接着されている側の反対側の面に形成されているので、当該裏板をプレス加工などで比較的容易に製造することが出来るという効果を奏する。
【0015】
上記構成よりなる第三発明のブレーキパッドは、前記第一発明または第二発明の前記裏板がアルミニウム合金などの非鉄系の材料で構成されているので軽量であり、前記裏板を引き抜き加工、押し出し加工、プレス加工などの工法で安価に製造することが出来るという効果を奏する。
【0016】
上記構成によりなる第四発明のブレーキパッドは、前記第一発明または第二発明の前記裏板が樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料で構成されているので、軽量であり、前記裏板を射出成形などの工法で安価に製造することが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一発明の実施例を示すブレーキパッドの斜視図
【図2】第一発明の実施例を示すブレーキパッドの正面図
【図3】第一発明の実施例を示すブレーキパッドの平面図
【図4】図3におけるA−A線に沿う断面図
【図5】第一発明の別の実施例を示すブレーキパッドの斜視図
【図6】第一発明の別の実施例を示すブレーキパッドの正面図
【図7】第一発明の別の実施例を示すブレーキパッドの左側面図
【図8】図7におけるB−B線に沿う断面図
【図9】第二発明の実施例を示すブレーキパッドの背面図
【図10】図9におけるC−C線に沿う断面図
【図11】図3における力の伝わり方を示す説明図
【図12】従来のブレーキキャリパーを示す正面図
【図13】従来のブレーキキャリパーを示す平面図
【図14】図12におけるD−D線に沿う断面図
【図15】図12におけるD−D線に沿う別の従来例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図15に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図12に液圧ピストン3と液圧シリンダー5から成る一対の液圧作用部とブレーキディスクローター2の外周部を跨ぎ両液圧作用部を繋ぐブリッジ部とを一体形成したモノコック構造の液圧ピストン対向型のブレーキキャリパー1の正面図を、図14に図12のD−D線に沿う断面図を示す。このモノコック構造のブレーキキャリパー1はそれの出現以前に主流だった、ブレーキディスクローター2を跨ぐブリッジ部でキャリパーボデー4を車両内側用と車両外側用に二分割し各々を個々に切削加工した後で両者を締結ボルトで締付け結合して完成させるタイプに比べ、キャリパー剛性(ブレーキ液圧が作用しブレーキディスクローター2を両側からブレーキパッド6で挟む際に、キャリパーボデー4の開口部がブレーキディスクローター2からの反力によりブレーキディスクローター2の反対側に押し戻され膨らむ剛性)が高いので、図示しないブレーキペダルの踏力に対する制動力の立ち上がりが早く両者の比例関係が良いことからスポーツ車や高級車に採用されている。
【0020】
しかしながら、このモノコック構造のブレーキキャリパー1は前記先行技術文献が示すとおりキャリパーボデー2の片側の開口部から切削加工用の刃物を挿入するスペースが必要であり、なおかつ挿入した刃物を被加工長さだけ移動させても被加工物に駆動部が干渉しないように刃物取付け部の長さを長くしておく必要がある。また、切削加工する液圧シリンダー5の部分は非常に高い加工精度が要求されるので十分な刃物保持剛性が必要であり、このため刃物を保持し駆動する部分が大きくなる。この大きな切削刃物部分を前記開口部から挿入することになるので必然的に開口部(両液圧シリンダーの間隔)が拡がる。即ち開口部は本来、ブレーキディスクローター2の厚み、ブレーキパッド6の摩擦材7の厚み、同裏板8の厚みに各々の厚み方向の寸法余裕を加えた寸法で決まる開口部寸法に対してかなり大きくなる。
【0021】
実際、このタイプのブレーキキャリパー1は図14に示すように液圧ピストン3がブレーキパッド6側に突出している。制動時のブレーキ力BFはブレーキパッド6の裏板8と液圧ピストン3との当接面に、図14の紙面に直角な方向に負荷されるので液圧ピストン3と液圧シリンダー5の勘合部の端部Bには(BF×L1)/L2の力が、同じく端部Aには(BF×L1)/L2+BFの力が印加される。このため当該端部A,Bや液圧シリンダー5の内径および液圧ピストン3の外径の早期磨耗や勘合部のガタおよび液圧シール9のへたりや早期磨耗が発生する。
【0022】
これらの不具合を回避する方法として図15のようにブレーキパッド6の摩擦材7を厚くして液圧ピストン3の突出量L1を減らすことが考えられる。実際、図14のブレーキパッド6の場合は摩擦材7の厚み10mm、裏板8の厚み5mm程度に対して、図15の場合は裏板8の厚み5mmのままで摩擦材7の厚みが20mm以上の厚いものが存在している。しかしながらこの方法の場合、摩擦材7の厚みが本来必要な厚みに対してかなり厚くなるので、ブレーキディスクローターから作用する力とブレーキディスクローターと裏板の間隔によるモーメントが大きくなり摩擦材と裏板の接着部の剥離が発生しやすく、なおかつ当該モーメントで摩擦材が破壊し易いので使用出来る摩擦材料が限定されるだけでなく、制動により発生した熱が摩擦材7の内部に溜まりやすく摩擦材7が当該熱で変質し易いという問題があった。また摩擦材7の厚みが厚いので液圧ピストン3から作用するブレーキ液圧が摩擦材7の圧縮変形に費やされブレーキディスクローター2の押圧力として作用しにくいという問題があった。
【0023】
図1に第一発明の第一実施例のブレーキパッドの斜視図を、図2に正面図を、図3に平面図を、図4に図3のA−A線に沿う断面図を示す。本発明のブレーキパッド6は、厚さ10mmの摩擦材7と、頭頂部にブレーキパッド6をキャリパーボデー4に懸架するための係止ピンが通る係止ピン穴11が2個所設けられている厚さ15mmの鉄製の裏板8で構成されている。裏板8には図1の上下方向に貫通する直径6mmの貫通孔が2列交互に合計31個開いている。この構成により、ブレーキパッド6の摩擦材7の厚みを厚くすることなく、また液圧ピストン3のブレーキパッド6側への突出量を増やすことも必要ない。
【0024】
従って、液圧シリンダー5の内径および液圧ピストン3の外径の早期磨耗や勘合部のガタおよび液圧シール9のへたりや早期磨耗が発生しない。また、摩擦材7と裏板8の接着部の端部剥離が発生せず、摩擦材7が破壊することもない。従って、摩擦材7の使用材料が制限されることもない。
【0025】
さらに、前記貫通孔12の内部の流体は、制動によりブレーキディスクローター2とブレーキパッド6の摩擦材7が摺接することで発生した摩擦熱を液圧ピストン3に伝わりにくくする断熱効果がある。また、この貫通孔12に走行により流体が流入することで摩擦熱を速やかに放出する効果がある。これらの相乗効果により摩擦熱が液圧ピストン3に伝わり液圧室10および図示しない液圧配管内の作動液が沸騰して気泡が発生することでブレーキが効きにくくなるいわゆるベーパーロックが起こりにくい。また、本実施例の場合は貫通孔12が2列交互に配置されているので、図11に示すように液圧ピストン3のブレーキパッド6に対する押圧力Fが貫通孔12を圧縮するのを貫通孔12の両脇の部材の反力Rが効率よく支えるので、軽量化と剛性の確保の両立が図られる。
【0026】
本実施例の裏板8の貫通孔12は、厚さ15mmの鉄板にドリルで6mmの孔を開けることで成立するが、図3に示す平面図の方向に、加熱した鉄材を引き抜き加工または押し出し加工で孔を含めて連続的に成形した後に、レーザーなどで図2の正面図の形状に切断することが製造コスト面で好ましい。
【0027】
なお、本図面では前記先行技術文献に記載されているようなブレーキパッドの頭頂部中央に1個所の係止ピン穴を設けるタイプではなく一般的な頭頂部に2個の係止ピン穴12を設けるタイプを記載しているが、係止ピン穴数に無関係に本発明が適用可能であることはいうまでもない。
【実施例2】
【0028】
図5に第一発明の第二実施例のブレーキパッドの斜視図を、図6に正面図を、図7に平面図を、図8に図7のB−B線に沿う断面図を示す。本発明のブレーキパッド6の摩擦材7、裏板8の厚さの構成は第一実施例と同じである。本実施例の場合、当該貫通穴12は直径6mmで図6の左右方向に2列交互に合計18個開いている。この構成により、実施例1と同等の効果が得られる。
【0029】
また、ブレーキキャリパー1には通常ブレーキディスクローター2の制動力を受けとめる係止部がキャリパーボデー4に設けられており、ブレーキパッド6の貫通孔12が開いている側面部分がこの係止部に正対し、この貫通穴12の一部が塞がれるため走行時に裏板8の貫通孔12に流体が流入することによる放熱効果は減少するが、貫通穴12に泥などが詰まることは回避でき、なおかつ裏板8の内部に空洞があることによる断熱効果は維持される。
【実施例3】
【0030】
第二発明の正面図は図2、図6と同じであるので省略する。図9に第二発明の実施例の背面図、図10に図9のC−C線に沿う断面図を示す。本発明のブレーキパッド6の摩擦材7、裏板8の厚さの構成は第一実施例と同じであるので、液圧シリンダー5の内径および液圧ピストン3の外径の早期磨耗や勘合部のガタおよび液圧シール9のへたりや早期磨耗が発生せず、また、摩擦材7と裏板8の接着部の端部剥離が発生せず、摩擦材7が剪断破壊することもなく、摩擦材7の使用材料が制限されることもないという基本的な効果はそのまま得られる。
【0031】
本実施例の場合、当該裏板8の摩擦材7が接着されている側の反対側の面に垂直に10列で交互に合計141個の直径6mmで深さ13mmの冷却穴13が設けられている。これにより、制動によりブレーキディスクローター2とブレーキパッド6の摩擦材7が摺接することで発生した摩擦熱を液圧ピストン3に伝わりにくくする断熱効果が得られる。また、この冷却穴13に走行風が通過することで摩擦熱を速やかに放出する効果があり、前記のベーパーロックが起こりにくいという効果も得られる。なお、本実施例の冷却穴13はドリルで開けることで成立するが、プレス加工などで裏板8の外周を打ち抜く時に同時に冷却穴を形成することが製造コスト面で好ましい。
【実施例4】
【0032】
第三発明の実施例に関する図は、前記の図1乃至図10と同じである。本発明のブレーキパッド6は、前記第一発明または第二発明における前記裏板8が鉄製であるのに対してアルミニウム合金などの非鉄系の材料で構成されている。アルミニウム合金などの非鉄系の材料は鉄材に比べて成形性がよく、鉄材が加熱してから成形しなければならない場合でも常温のまま成形が可能であり、前記裏板を引き抜き加工、押し出し加工、プレス加工などの工法で安価に製造することが出来る。また、本発明によるブレーキパッド6は前記のとおり制動に伴う裏板8の温度上昇を走行時の流体の導入などにより低く抑えることができるので、アルミニウム合金などの重量が軽く融点が低い材料でも使用できる。
【実施例5】
【0033】
第四発明の実施例に関する図は、前記の図1乃至図10と同じである。本発明のブレーキパッド6は、前記第一発明または第二発明における前記裏板8が鉄製であるのに対して、樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料で構成されている。樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料は鉄材に比べて軽量で成形性がよく、射出成形などの工法で安価に製造することが出来る。また、本発明によるブレーキパッド6は前記のとおり制動に伴う裏板8の温度上昇を走行時の流体の導入などにより低く抑えることができるので、樹脂などの高分子材料のように重量が軽く耐熱性が低い材料でも使用できる。
【0034】
上述の実施例は、説明のため例示したもので、ブレーキディスクローターの外周部を跨ぎ一対の液圧作用部を有するモノコック構造のブレーキキャリパーに用いるブレーキパッドに限定されるものではなく、従来の2分割タイプのブレーキキャリパーや片側のみに液圧作用部を有するブレーキキャリパーに用いるブレーキパッドにも適用可能ある。また、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から当業者が認識できる本発明の技術思想に反しない限り変更および付加が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ディスクブレーキ装置用ブレーキパッドに限定されるものではなく、被制動部材に対して接離可能に配置され、摩擦材と当該摩擦材を被制動部材に圧接させる裏板とを有し、例えば直線運動をする被制動部材の片面だけを押圧するタイプのブレーキパッドに対しても有効で産業用機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 ブレーキキャリパー
2 ブレーキディスクローター
3 液圧ピストン
4 キャリパーボデー
5 液圧シリンダー
6 ブレーキパッド
7 摩擦材
8 裏板
9 液圧シール
10 液圧室
11 係止ピン孔
12 貫通孔
13 冷却穴
【技術分野】
【0001】
本発明は、ディスクブレーキ装置に使用するブレーキパッドに関し、詳しくは制動時にブレーキディスクローターとブレーキパッドとの摩擦面から発生する熱を効果的に遮断することで車体側のブレーキキャリパーなどに熱が伝わり難くするとともに、発生する熱を速やかに放出することが出来るブレーキパッドに関する。
【背景技術】
【0002】
従来、一対の液圧作用部とブレーキディスクローターの外周部を跨ぎ両液圧作用部を繋ぐブリッジ部とを一体形成したモノコック構造の液圧ピストン対向型のキャリパーボデーは、これらを一体で鋳造乃至鍛造で成形した後、液圧作用部の液圧シリンダー穴を切削加工して液圧シリンダー部が形成されている。前記モノコック構造のキャリパーボデーは、それの出現以前から広く採用されている前記ブリッジ部で車両内側用と車両外側用の二つに分割して各々の液圧シリンダー穴を個別に切削加工で形成した後、両者をボルトで結合するタイプに比べて、キャリパーボデーの口開き剛性(液圧作用時に両液圧作用部の間隔が拡がる方向の剛性)が高いので高性能車やスポーツタイプ車に多く使用されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【特許文献1】特開2009−228729号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
このモノコック構造のキャリパーボデーは、上記特許文献1に記載のように、片側の開口部から切削加工用の刃物を挿入させ加工するスペースを確保するため、両液圧作用部の間隔が構造上必要とする以上に拡がってしまうという問題があった。この広い間隔を埋めるために上記特許文献1では液圧ピストンをブレーキディスクローター側に延長しているが、制動に伴いブレーキディスクローターから作用する力によりキャリパーボデーの液圧シリンダーと液圧ピストンとの勘合部に大きな反力が作用し勘合部が早期に磨耗してしまうという問題があった。
【0005】
また、別の対処法として液圧ピストンは延長せずブレーキパッドの摩擦材の部分の厚みを増大して隙間を埋める方法が考えられるが、ブレーキディスクローターと裏板の間隔が拡がるので、ブレーキディスクローターから作用する力と前記間隔によるモーメントが大きくなり摩擦材と裏板の接着部の剥離が発生しやすく、なおかつ当該モーメントで摩擦材が破壊し易いので使用出来る摩擦材料が限定されるだけでなく、制動により発生した熱が摩擦材内部に溜まりやすく摩擦材が熱で変質し易いという問題があった。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のブレーキパッドは、これらの問題を鑑みてなされたもので、請求項1に記載の第一発明は、摩擦材が接着され当該摩擦材をブレーキディスクローターに圧接させる裏板の厚みを厚くして、当該裏板に裏板の厚み方向に直交する方向に空洞を形成するように構成されているものである。
【0007】
請求項2に記載の第二発明は、前記裏板の厚みを厚くして摩擦材が接着されている側の反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものを形成するように構成されているものである。
【0008】
請求項3に記載の第三発明は、第一発明乃至第二発明の前記裏板がアルミニウム合金などの非鉄系の材料で構成されているものである。
【0009】
請求項4に記載の第四発明は、第一発明乃至第二発明の前記裏板が樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料で構成されているものである。
【発明の効果】
【0010】
上記構成によりなる第一発明のブレーキパッドは、液圧ピストンをブレーキディスクローター側に延長することなく、なおかつブレーキパッドの摩擦材の部分を増大することなく、前記裏板の厚みを厚くして当該裏板の厚み方向に直交する方向に空洞を形成するように構成されているので、制動によりブレーキディスクローターから制動力が作用しても液圧シリンダーに対して液圧ピストンをこじる方向のモーメントが小さいので、キャリパーボデーの液圧シリンダーと液圧ピストンとの勘合部が早期に磨耗してしまうこともなく、なおかつ摩擦材と裏板の接着部の剥離をおこすこともなく、さらに摩擦材の使用材料が限定されることがないという効果を奏する。
【0011】
なおかつ、当該裏板に裏板の厚み方向に直交する方向に空洞が形成されているので重量の増大を招くこともない。さらに、前記空洞部が制動に伴いブレーキディスクローターと前記摩擦材との間で発生し摩擦材を通して液圧ピストンに伝わる熱を遮断し、なおかつ当該空洞部には走行時の流体が流れこむことで前記裏板の冷却性が大幅に向上するので、制動に伴い発生した熱が前記液圧ピストンからブレーキキャリパーに伝わりにくく、ブレーキキャリパー内部の作動液が沸点を超えることでブレーキが効きにくくなる、いわゆるベーパーロックを起こすことがないという効果を奏する。
【0012】
上記構成によりなる第二発明のブレーキパッドは、前記裏板部分を厚くして当該裏板の摩擦材が接着されている側の反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものを形成するように構成されているので、第一発明と同様に液圧シリンダーと液圧ピストンの勘合部が早期に磨耗してしまうこともなく、なおかつ摩擦材と裏板の接着部の剥離をおこすこともなく、さらに摩擦材の使用材料が限定されることがないという効果を奏する。
【0013】
また、前記裏板の摩擦材が固着されている側の反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものが形成されているので、第一発明と同様に、重量の増大を招くこともなく、さらに前記溝または穴またはこれらを組合わせたものが、制動時に摩擦材を通して伝わる熱を遮断し、なおかつ当該溝または穴またはこれらを組合わせたもの部分に走行時の流体が流れこむので前記裏板の冷却性が大幅に向上することで、前記液圧ピストンに制動により発生した熱が伝わりにくく、ベーパーロックを起こすことがないという効果を奏する。
【0014】
さらに、第二発明は前記溝または穴またはこれらを組合わせたものが前記裏板の摩擦材が接着されている側の反対側の面に形成されているので、当該裏板をプレス加工などで比較的容易に製造することが出来るという効果を奏する。
【0015】
上記構成よりなる第三発明のブレーキパッドは、前記第一発明または第二発明の前記裏板がアルミニウム合金などの非鉄系の材料で構成されているので軽量であり、前記裏板を引き抜き加工、押し出し加工、プレス加工などの工法で安価に製造することが出来るという効果を奏する。
【0016】
上記構成によりなる第四発明のブレーキパッドは、前記第一発明または第二発明の前記裏板が樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料で構成されているので、軽量であり、前記裏板を射出成形などの工法で安価に製造することが出来るという効果を奏する。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【図1】第一発明の実施例を示すブレーキパッドの斜視図
【図2】第一発明の実施例を示すブレーキパッドの正面図
【図3】第一発明の実施例を示すブレーキパッドの平面図
【図4】図3におけるA−A線に沿う断面図
【図5】第一発明の別の実施例を示すブレーキパッドの斜視図
【図6】第一発明の別の実施例を示すブレーキパッドの正面図
【図7】第一発明の別の実施例を示すブレーキパッドの左側面図
【図8】図7におけるB−B線に沿う断面図
【図9】第二発明の実施例を示すブレーキパッドの背面図
【図10】図9におけるC−C線に沿う断面図
【図11】図3における力の伝わり方を示す説明図
【図12】従来のブレーキキャリパーを示す正面図
【図13】従来のブレーキキャリパーを示す平面図
【図14】図12におけるD−D線に沿う断面図
【図15】図12におけるD−D線に沿う別の従来例を示す断面図
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施の形態を図1乃至図15に基づいて詳細に説明する。
【実施例1】
【0019】
図12に液圧ピストン3と液圧シリンダー5から成る一対の液圧作用部とブレーキディスクローター2の外周部を跨ぎ両液圧作用部を繋ぐブリッジ部とを一体形成したモノコック構造の液圧ピストン対向型のブレーキキャリパー1の正面図を、図14に図12のD−D線に沿う断面図を示す。このモノコック構造のブレーキキャリパー1はそれの出現以前に主流だった、ブレーキディスクローター2を跨ぐブリッジ部でキャリパーボデー4を車両内側用と車両外側用に二分割し各々を個々に切削加工した後で両者を締結ボルトで締付け結合して完成させるタイプに比べ、キャリパー剛性(ブレーキ液圧が作用しブレーキディスクローター2を両側からブレーキパッド6で挟む際に、キャリパーボデー4の開口部がブレーキディスクローター2からの反力によりブレーキディスクローター2の反対側に押し戻され膨らむ剛性)が高いので、図示しないブレーキペダルの踏力に対する制動力の立ち上がりが早く両者の比例関係が良いことからスポーツ車や高級車に採用されている。
【0020】
しかしながら、このモノコック構造のブレーキキャリパー1は前記先行技術文献が示すとおりキャリパーボデー2の片側の開口部から切削加工用の刃物を挿入するスペースが必要であり、なおかつ挿入した刃物を被加工長さだけ移動させても被加工物に駆動部が干渉しないように刃物取付け部の長さを長くしておく必要がある。また、切削加工する液圧シリンダー5の部分は非常に高い加工精度が要求されるので十分な刃物保持剛性が必要であり、このため刃物を保持し駆動する部分が大きくなる。この大きな切削刃物部分を前記開口部から挿入することになるので必然的に開口部(両液圧シリンダーの間隔)が拡がる。即ち開口部は本来、ブレーキディスクローター2の厚み、ブレーキパッド6の摩擦材7の厚み、同裏板8の厚みに各々の厚み方向の寸法余裕を加えた寸法で決まる開口部寸法に対してかなり大きくなる。
【0021】
実際、このタイプのブレーキキャリパー1は図14に示すように液圧ピストン3がブレーキパッド6側に突出している。制動時のブレーキ力BFはブレーキパッド6の裏板8と液圧ピストン3との当接面に、図14の紙面に直角な方向に負荷されるので液圧ピストン3と液圧シリンダー5の勘合部の端部Bには(BF×L1)/L2の力が、同じく端部Aには(BF×L1)/L2+BFの力が印加される。このため当該端部A,Bや液圧シリンダー5の内径および液圧ピストン3の外径の早期磨耗や勘合部のガタおよび液圧シール9のへたりや早期磨耗が発生する。
【0022】
これらの不具合を回避する方法として図15のようにブレーキパッド6の摩擦材7を厚くして液圧ピストン3の突出量L1を減らすことが考えられる。実際、図14のブレーキパッド6の場合は摩擦材7の厚み10mm、裏板8の厚み5mm程度に対して、図15の場合は裏板8の厚み5mmのままで摩擦材7の厚みが20mm以上の厚いものが存在している。しかしながらこの方法の場合、摩擦材7の厚みが本来必要な厚みに対してかなり厚くなるので、ブレーキディスクローターから作用する力とブレーキディスクローターと裏板の間隔によるモーメントが大きくなり摩擦材と裏板の接着部の剥離が発生しやすく、なおかつ当該モーメントで摩擦材が破壊し易いので使用出来る摩擦材料が限定されるだけでなく、制動により発生した熱が摩擦材7の内部に溜まりやすく摩擦材7が当該熱で変質し易いという問題があった。また摩擦材7の厚みが厚いので液圧ピストン3から作用するブレーキ液圧が摩擦材7の圧縮変形に費やされブレーキディスクローター2の押圧力として作用しにくいという問題があった。
【0023】
図1に第一発明の第一実施例のブレーキパッドの斜視図を、図2に正面図を、図3に平面図を、図4に図3のA−A線に沿う断面図を示す。本発明のブレーキパッド6は、厚さ10mmの摩擦材7と、頭頂部にブレーキパッド6をキャリパーボデー4に懸架するための係止ピンが通る係止ピン穴11が2個所設けられている厚さ15mmの鉄製の裏板8で構成されている。裏板8には図1の上下方向に貫通する直径6mmの貫通孔が2列交互に合計31個開いている。この構成により、ブレーキパッド6の摩擦材7の厚みを厚くすることなく、また液圧ピストン3のブレーキパッド6側への突出量を増やすことも必要ない。
【0024】
従って、液圧シリンダー5の内径および液圧ピストン3の外径の早期磨耗や勘合部のガタおよび液圧シール9のへたりや早期磨耗が発生しない。また、摩擦材7と裏板8の接着部の端部剥離が発生せず、摩擦材7が破壊することもない。従って、摩擦材7の使用材料が制限されることもない。
【0025】
さらに、前記貫通孔12の内部の流体は、制動によりブレーキディスクローター2とブレーキパッド6の摩擦材7が摺接することで発生した摩擦熱を液圧ピストン3に伝わりにくくする断熱効果がある。また、この貫通孔12に走行により流体が流入することで摩擦熱を速やかに放出する効果がある。これらの相乗効果により摩擦熱が液圧ピストン3に伝わり液圧室10および図示しない液圧配管内の作動液が沸騰して気泡が発生することでブレーキが効きにくくなるいわゆるベーパーロックが起こりにくい。また、本実施例の場合は貫通孔12が2列交互に配置されているので、図11に示すように液圧ピストン3のブレーキパッド6に対する押圧力Fが貫通孔12を圧縮するのを貫通孔12の両脇の部材の反力Rが効率よく支えるので、軽量化と剛性の確保の両立が図られる。
【0026】
本実施例の裏板8の貫通孔12は、厚さ15mmの鉄板にドリルで6mmの孔を開けることで成立するが、図3に示す平面図の方向に、加熱した鉄材を引き抜き加工または押し出し加工で孔を含めて連続的に成形した後に、レーザーなどで図2の正面図の形状に切断することが製造コスト面で好ましい。
【0027】
なお、本図面では前記先行技術文献に記載されているようなブレーキパッドの頭頂部中央に1個所の係止ピン穴を設けるタイプではなく一般的な頭頂部に2個の係止ピン穴12を設けるタイプを記載しているが、係止ピン穴数に無関係に本発明が適用可能であることはいうまでもない。
【実施例2】
【0028】
図5に第一発明の第二実施例のブレーキパッドの斜視図を、図6に正面図を、図7に平面図を、図8に図7のB−B線に沿う断面図を示す。本発明のブレーキパッド6の摩擦材7、裏板8の厚さの構成は第一実施例と同じである。本実施例の場合、当該貫通穴12は直径6mmで図6の左右方向に2列交互に合計18個開いている。この構成により、実施例1と同等の効果が得られる。
【0029】
また、ブレーキキャリパー1には通常ブレーキディスクローター2の制動力を受けとめる係止部がキャリパーボデー4に設けられており、ブレーキパッド6の貫通孔12が開いている側面部分がこの係止部に正対し、この貫通穴12の一部が塞がれるため走行時に裏板8の貫通孔12に流体が流入することによる放熱効果は減少するが、貫通穴12に泥などが詰まることは回避でき、なおかつ裏板8の内部に空洞があることによる断熱効果は維持される。
【実施例3】
【0030】
第二発明の正面図は図2、図6と同じであるので省略する。図9に第二発明の実施例の背面図、図10に図9のC−C線に沿う断面図を示す。本発明のブレーキパッド6の摩擦材7、裏板8の厚さの構成は第一実施例と同じであるので、液圧シリンダー5の内径および液圧ピストン3の外径の早期磨耗や勘合部のガタおよび液圧シール9のへたりや早期磨耗が発生せず、また、摩擦材7と裏板8の接着部の端部剥離が発生せず、摩擦材7が剪断破壊することもなく、摩擦材7の使用材料が制限されることもないという基本的な効果はそのまま得られる。
【0031】
本実施例の場合、当該裏板8の摩擦材7が接着されている側の反対側の面に垂直に10列で交互に合計141個の直径6mmで深さ13mmの冷却穴13が設けられている。これにより、制動によりブレーキディスクローター2とブレーキパッド6の摩擦材7が摺接することで発生した摩擦熱を液圧ピストン3に伝わりにくくする断熱効果が得られる。また、この冷却穴13に走行風が通過することで摩擦熱を速やかに放出する効果があり、前記のベーパーロックが起こりにくいという効果も得られる。なお、本実施例の冷却穴13はドリルで開けることで成立するが、プレス加工などで裏板8の外周を打ち抜く時に同時に冷却穴を形成することが製造コスト面で好ましい。
【実施例4】
【0032】
第三発明の実施例に関する図は、前記の図1乃至図10と同じである。本発明のブレーキパッド6は、前記第一発明または第二発明における前記裏板8が鉄製であるのに対してアルミニウム合金などの非鉄系の材料で構成されている。アルミニウム合金などの非鉄系の材料は鉄材に比べて成形性がよく、鉄材が加熱してから成形しなければならない場合でも常温のまま成形が可能であり、前記裏板を引き抜き加工、押し出し加工、プレス加工などの工法で安価に製造することが出来る。また、本発明によるブレーキパッド6は前記のとおり制動に伴う裏板8の温度上昇を走行時の流体の導入などにより低く抑えることができるので、アルミニウム合金などの重量が軽く融点が低い材料でも使用できる。
【実施例5】
【0033】
第四発明の実施例に関する図は、前記の図1乃至図10と同じである。本発明のブレーキパッド6は、前記第一発明または第二発明における前記裏板8が鉄製であるのに対して、樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料で構成されている。樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料は鉄材に比べて軽量で成形性がよく、射出成形などの工法で安価に製造することが出来る。また、本発明によるブレーキパッド6は前記のとおり制動に伴う裏板8の温度上昇を走行時の流体の導入などにより低く抑えることができるので、樹脂などの高分子材料のように重量が軽く耐熱性が低い材料でも使用できる。
【0034】
上述の実施例は、説明のため例示したもので、ブレーキディスクローターの外周部を跨ぎ一対の液圧作用部を有するモノコック構造のブレーキキャリパーに用いるブレーキパッドに限定されるものではなく、従来の2分割タイプのブレーキキャリパーや片側のみに液圧作用部を有するブレーキキャリパーに用いるブレーキパッドにも適用可能ある。また、本発明としてはそれらに限定されるものではなく、特許請求の範囲の記載から当業者が認識できる本発明の技術思想に反しない限り変更および付加が可能である。
【産業上の利用可能性】
【0035】
本発明は、ディスクブレーキ装置用ブレーキパッドに限定されるものではなく、被制動部材に対して接離可能に配置され、摩擦材と当該摩擦材を被制動部材に圧接させる裏板とを有し、例えば直線運動をする被制動部材の片面だけを押圧するタイプのブレーキパッドに対しても有効で産業用機器にも適用できる。
【符号の説明】
【0036】
1 ブレーキキャリパー
2 ブレーキディスクローター
3 液圧ピストン
4 キャリパーボデー
5 液圧シリンダー
6 ブレーキパッド
7 摩擦材
8 裏板
9 液圧シール
10 液圧室
11 係止ピン孔
12 貫通孔
13 冷却穴
【特許請求の範囲】
【請求項1】
車輪と共に回転するブレーキディスクローターに対して接離可能に配置され、ブレーキディスクローターに対向状態で配置される摩擦材と、この摩擦材が固着され当該摩擦材をブレーキディスクローターに圧接させる裏板とを含んで構成されるディスクブレーキ装置用ブレーキパッドであって、当該裏板に裏板の厚み方向に直交する方向に空洞を形成してなることを特徴とするディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【請求項2】
前記裏板の摩擦材が接着されている側と反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものを形成してなることを特徴とするディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【請求項3】
前記裏板がアルミニウム合金などの非鉄系の材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【請求項4】
前記裏板が樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【請求項1】
車輪と共に回転するブレーキディスクローターに対して接離可能に配置され、ブレーキディスクローターに対向状態で配置される摩擦材と、この摩擦材が固着され当該摩擦材をブレーキディスクローターに圧接させる裏板とを含んで構成されるディスクブレーキ装置用ブレーキパッドであって、当該裏板に裏板の厚み方向に直交する方向に空洞を形成してなることを特徴とするディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【請求項2】
前記裏板の摩擦材が接着されている側と反対側の面に溝または穴またはこれらを組合わせたものを形成してなることを特徴とするディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【請求項3】
前記裏板がアルミニウム合金などの非鉄系の材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【請求項4】
前記裏板が樹脂などの高分子材料や炭素繊維などの非金蔵系の材料であることを特徴とする請求項1または請求項2に記載のディスクブレーキ装置用ブレーキパッド。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【公開番号】特開2012−149674(P2012−149674A)
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2011−7497(P2011−7497)
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(310008147)株式会社クリエイトエンジニアリング (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成24年8月9日(2012.8.9)
【国際特許分類】
【出願日】平成23年1月18日(2011.1.18)
【出願人】(310008147)株式会社クリエイトエンジニアリング (5)
【Fターム(参考)】
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