ディスク及び該ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置
【課題】 高精度なディスクの製作の容易化と低コスト化、該ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の小型化と低コスト化とを図る。
【解決手段】 光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスク2が、試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口22−nと、該注入口22−nと対をなす複数のエア抜き穴23−nとを有する透明な材料からなる上部材16と、試液を保持するための放射状に配置された複数のルーム28−nであって、各一対の注入口22−nとエア抜き穴23−nとに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム28−nを有する中間部材18と、該中間部材18を受ける透明な材料からなる下部材17とから構成されている。光学式顕微鏡は、落射式顕微鏡として構成されている。
【解決手段】 光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスク2が、試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口22−nと、該注入口22−nと対をなす複数のエア抜き穴23−nとを有する透明な材料からなる上部材16と、試液を保持するための放射状に配置された複数のルーム28−nであって、各一対の注入口22−nとエア抜き穴23−nとに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム28−nを有する中間部材18と、該中間部材18を受ける透明な材料からなる下部材17とから構成されている。光学式顕微鏡は、落射式顕微鏡として構成されている。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、試液中の細胞の計数及び状態観察のために使用される試液保持用のディスク及び該ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置に関し、特にディスクの製作の容易化と低コスト化、計数観察装置の小型化と低コスト化とを図った、これらの器具及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試液中の細胞の計数及び状態観察のために使用される試液保持用のディスクとしては、試液を保持するための複数の収納部が放射状に配置されて凹状に形成された下部構造体の上部をカバ−部材が覆う構造のものが多く提案されている(特許文献1、2)。この場合、下部構造体及びカバ−部材は、透明なガラスや樹脂材料から製作されて、ディスクが間歇的に回転させられながら、順次、各収納部に収納された試液中の細胞の計数及び状態観察が、透過式顕微鏡により行われるようになっている。
【0003】
ここで、複数の試液収納部を有する下部構造体は、透明なガラスや樹脂材料の成形加工により製作されるので、試液収納部の寸法を高精度に仕上げるのが容易でない。また、透過式顕微鏡を用いた計数観察装置は、照明光源と光学系とを試液を挟んで対向して配置するので、装置が大型化するといった欠点がある。
【0004】
計数観察装置の大型化を避けるために、照明光源と光学系とを試液に対して同じ側に配置し、試液の背後には反射鏡を配置するようにした、いわゆる落射式顕微鏡を用いた細胞の計数観察装置も提案されている(特許文献3、4)。しかしながら、これらのものは、複数の試液収納部を有する容器として、非回転式の直方体形状の容器を使用するか(特許文献4)、特に容器の形状を明らかにしないものである(特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−082590号公報
【特許文献2】特許第2731423号公報
【特許文献3】特許第3434064号公報
【特許文献4】特開2004−348104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明は、従来の試液保持用のディスク及び光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置が有する前記のような問題点を解決して、高精度なディスクの製作の容易化と低コスト化、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の小型化と低コスト化とを図った、これらディスク及び該ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような課題は、本願の各請求項に記載された次のような発明により解決される。 すなわち、その請求項1に記載された発明は、光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスクが、前記試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口と、前記注入口と対をなす複数のエア抜き穴とを有する透明な材料からなる上部材と、前記試液を保持するための放射状に配置された複数のルームであって、各一対の前記注入口と前記エア抜き穴とに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム、を有する中間部材と、前記中間部材を受ける透明な材料からなる下部材とから構成されていることを特徴とするディスクである。
【0007】
請求項1に記載された発明は、前記のように構成されており、細胞を含む試液を保持するためのディスクが、上部材と中間部材と下部材との3層の積層構造から成っているので、ディスクの製作が容易である。しかも、試液収納部の寸法は、中間部材が有する、試液を保持するための放射状に配置された複数のルームの個々のルームの寸法により定まるので、試液収納部の寸法、特に深さ寸法を高精度に仕上げるのが容易になる。これらにより、高精度のディスクを容易に、低コストで製作することが可能になる。
【0008】
また、その請求項2に記載された発明は、請求項1に記載のディスクが、使い捨て可能な材料を用いて製作されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された発明は、この構成により、細胞の計数観察の効率性を格段に向上させることができる。
【0010】
また、その請求項3に記載された発明は、請求項1又は請求項2に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材、中間部材及び下部材が、打ち抜きした部品から構成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載された発明は、この構成により、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することが可能になる。
【0012】
さらに、その請求項4に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材、中間部材及び下部材が、接着剤により互いに接着されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載された発明は、この構成により、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することが可能になる。
【0014】
また、その請求項5に記載された発明は、請求項4に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する中間部材が、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成されており、上部材、中間部材及び下部材は、該フィルムの両面に付された接着剤により互いに接着されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載された発明は、この構成により、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することが可能になる。
【0016】
また、その請求項6に記載された発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面が、反射面とされていることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載された発明は、この構成により、そのディスクが落射式顕微鏡を用いた細胞の計数観察装置に用いられる場合に、その反射面を照射光の反射面として利用することができ、落射式顕微鏡の構成が容易になる。
【0018】
さらに、その請求項7に記載された発明は、請求項6に記載のディスクにおいて、その反射面が、アルミニウムもしくは銀又はその他の金属蒸着膜により形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項7に記載された発明は、この構成により、下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面を容易に反射面とすることができる。
【0020】
また、その請求項8に記載された発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材と下部材とのいずれかもしくは双方には、それらが対向する側の面に、親水性膜が蒸着されていることを特徴としている。
【0021】
請求項8に記載された発明は、この構成により、上部材の注入口から注入された試液を、試液収納部(この試液収納部は、中間部材のルームが上部材と下部材とにより封止されることにより形成される。)内に均一に分布させて、そこに確実且つ安定に保持させることができる。
【0022】
また、その請求項9に記載された発明は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材の外表面には、複数のルームの各ルーム毎に個別に剥がして取り去ることができる保護膜が貼着されていることを特徴としている。
【0023】
請求項9に記載された発明は、この構成により、ディスクを実際に使用するに際しては、必要個所のみ、そこに貼着されている保護膜片を剥がして、そこに顕れたルーム及び試液収納部を細胞の計数観察のために使用することができ、残りの個所のルーム及び試液収納部は、保護膜片で覆われたままの状態にしておいて、後で使用するときに、そこがゴミや埃に遮られて計数観察しにくくなるのを防ぐことができる。
【0024】
さらに、その請求項10に記載された発明は、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、前記ディスクを載置する載置部と、前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、前記試液に光を照射する照明部と、前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、装置全体を制御する制御部とを備え、前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされていることを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置である。
【0025】
請求項10に記載された発明は、前記のように構成されているので、高精度で、製作が容易で、低コストなディスクを用いて、信頼性が高く、正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストな、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。
【0026】
また、そのディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面が反射面とされている場合には、その反射面を照射光の反射面として利用して、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成することができ、計数観察装置を小型化することができる。
【0027】
また、その請求項11に記載された発明は、請求項10に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部は、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、複数のこれら支持体のうちの1つは、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されていることを特徴としている。
【0028】
請求項11に記載された発明は、前記のように構成されているので、ディスクは、3つ又はそれ以上の複数の支持体により支持・載置され、これら支持体の支持面上を滑りながら回転することになり、ディスクの回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができ、また、観察位置では、ディスクは対物レンズ直下又はその近傍の支持体により支持され、対物レンズと一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0029】
また、その請求項12に記載された発明は、請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、前記ディスクを載置する載置部と、前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、前記試液に光を照射する照明部と、前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、装置全体を制御する制御部とを備え、前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされている光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置であって、前記載置部の前記ディスクを載置する側の面は、反射面とされていることを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置である。
【0030】
請求項12に記載された発明は、前記のように構成されているので、高精度で、製作が容易で、低コストなディスクを用いて、信頼性が高く、正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。
【0031】
また、その載置部の反射面を照射光の反射面として利用して、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成することができ、計数観察装置を小型化することができる。
【0032】
さらに、その請求項13に記載された発明は、請求項12に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部は、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、複数のこれら支持体のうちの1つは、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されていることを特徴としている。
【0033】
請求項13に記載された発明は、前記のように構成されているので、ディスクは、3つ又はそれ以上の複数の支持体により支持・載置され、これら支持体の支持面上を滑りながら回転することになり、ディスクの回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができ、また、観察位置では、ディスクは対物レンズ直下又はその近傍の支持体により支持され、対物レンズと一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0034】
さらに、また、その請求項14に記載された発明は、請求項13に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面が、反射面とされていることを特徴とする。
【0035】
請求項14に記載された発明は、前記のように構成されているので、載置部のディスクを載置する側の面のうち、対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面のみ、反射面とされれば良く、載置部のディスクを載置する側の面を反射面とするための蒸着のコストを大幅に低減することができ、より低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。また、蒸着に代えて、鏡面体が該1つの支持体に付設される場合には、蒸着のコストを不要にすることができ、蒸着による品質不良の可能性もなくすることができる。
【発明の効果】
【0036】
前記のとおり、本願の発明のディスクによれば、これが上部材と中間部材と下部材との3層の積層構造から構成されているので、ディスクの製作が容易になる。しかも、試液収納部の寸法は、中間部材が有する、試液を保持するための放射状に配置された複数のルームの個々のルームの寸法により定まるので、試液収納部の寸法、特に深さ寸法を高精度に仕上げるのが容易になる。これらにより、高精度のディスクを容易に、低コストで製作することが可能になる。
【0037】
また、前記のとおり、本願の発明のディスクを備えた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置によれば、高精度で、製作が容易で、低コストなディスクを用いて、信頼性が高く、正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストな、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。
【0038】
また、そのディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面が反射面とされるか、ディスクを載置する載置部の該ディスクを載置する側の面が反射面とされる場合には、これらの反射面を照射光の反射面として利用して、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成することができ、計数観察装置を小型化することができる。
【0039】
さらに、その載置部が、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、複数のこれら支持体のうちの1つは、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されるようにされる場合には、ディスクは、3つ又はそれ以上の複数の支持体により支持・載置され、これら支持体の支持面上を滑りながら回転することになり、ディスクの回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができる。また、観察位置では、ディスクは対物レンズ直下又はその近傍の支持体により支持され、対物レンズと一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0040】
この場合において、対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面が反射面とされる場合には、載置部のディスクを載置する側の面のうち、対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面のみ、反射面とされれば良く、載置部のディスクを載置する側の面を反射面とするための蒸着のコストを大幅に低減することができ、より低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。また、蒸着に代えて、鏡面体が該1つの支持体に付設される場合には、蒸着のコストを不要にすることができ、蒸着による品質不良の可能性もなくすることができる。
その他、前記したような種々の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスクを、次の3つの部材から構成する。すなわち、試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口と、該注入口と対をなす複数のエア抜き穴とを有する透明な材料からなる上部材と、試液を保持するための放射状に配置された複数のルームであって、各一対の該注入口と該エア抜き穴とに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム、を有する中間部材と、該中間部材を受ける透明な樹脂材料からなる下部材とから構成する。
ディスクは、使い捨て可能な材料を用いて製作することとし、上部材、中間部材及び下部材は、打ち抜きした部品から構成するものとする。
【0042】
また、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を、前記ディスクと、該ディスクを載置する載置部と、該ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、試液に光を照射する照明部と、細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、撮像した画像データを記憶する記憶部と、該画像データから細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、装置全体を制御する制御部とを備えたものとし、且つ、これら記憶部、計数観察部及び制御部は、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにする。
【0043】
ディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面もしくはディスクを載置する載置部の該ディスクを載置する側の面を反射面とし、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成する。
【0044】
さらに、ディスクを載置する載置部は、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体(ピン)を備え、複数のこれら支持体のうちの1つが、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されるようにする。
【実施例1】
【0045】
次に、本願の発明の一実施例(実施例1)について説明する。
図1は、本実施例1の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図、図2は、同ディスクの構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図、図3は、同ディスクの試液収納部を中心とする部分を説明するための概略拡大断面図、図4は、同ディスクに保護膜が貼着された状態を示す図2と略同様の図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図、図5は、同保護膜の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図、図6は、同ディスクを構成する上部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、図7は、同ディスクを構成する中間部材(センターフィルム)の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図、図8は、同ディスクを構成する下部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【0046】
図1に図示されるように、本実施例1の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置1は、概略、細胞を含む試液を保持するためのディスク2と、該ディスク2を載置する載置台を有するターンテーブル3と、該ターンテーブル3及び該ディスク2を回転・位置決めするモータ4を含む回転・位置決め部5と、試液に光を照射する照明部6と、細胞を撮像(写真撮影)して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部をなすカメラ部7と、撮像した画像データを記憶する記憶部11と、画像データから細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部12と、装置全体を制御する制御部13とを備えている。ターンテーブル3は、他の部分と並べて称すれば、ディスク2の「載置部」に相当するものである。記憶部11と、計数観察部12と、制御部13とは、パーソナルコンピュータ10の情報処理・操作部として、その内部に設けられている。パーソナルコンピュータ10は、他に表示部14、入力部15を備えている。
【0047】
カメラ部7が取り付けられ、照明部6、対物レンズ8及び鏡筒部9を備えている光学系は、顕微鏡を構成しており、ディスク2の後述する試液収納部21−n内に収納された試液中の細胞が、照明部6から導かれた照明の下で、対物レンズ8を通して観察される。そして、観察されたその像は、カメラ部7で撮像される。実際には、照明部6から導かれた光が試液を透過して、ディスク2の後述する下部材17に設けられた反射面29により反射され、再び対物レンズ8を通ってカメラ部7へと導かれ、カメラ部7において受光しなかった影の部分が細胞の像として感知されるのである。このように、照明部6は、ディスク2に対して対物レンズ8と同じ側に配置されており、この光学式顕微鏡は、落射式顕微鏡として構成されている。このため、計数観察装置1の全高が低くなり、これを小型化することができる。
【0048】
カメラ部7は、この細胞の像を撮像するとともに、画像データに変換して、これをパーソナルコンピュータ10の記憶部11に送信(出力)する。記憶部11に送られた細胞の画像データは、リアルタイムで、あるいは適時記憶部11から読み出されて、計数観察部12により、その数や状態が計数・観察される。その結果は、随時表示部14に表示されるとともに、記憶部11にも記憶される。
【0049】
回転・位置決め部5を構成するモータ4は、ステッピングモータであり、所定時間間隔毎に所定角度回転して、ターンテーブル3を所定角度回転させ、同テーブルの載置台上に載置されたディスク2を同じ角度だけ回転させて、複数の試液収納部21−nのうちの1つを観察位置に位置決めする。計数観察装置1は、ディスク2が静止中の所定時間内に、観察位置に来た当該試液収納部21−n内に収納された試液中の細胞を計数・観察する。モータ4の回転制御は、パーソナルコンピュータ10の制御部13により行われる。
【0050】
次に、ディスク2の構造について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
ディスク2は、計数観察装置1が細胞を観察するのに便利なように、該細胞を含む試液を保持するために用いられ、図2に図示されるように、外観が薄い回転円盤状をなしている。そして、その外周部には、試液を保持するための複数(本実施例1においては、20個)の試液収納部21−n(n=1〜20)が円周方向に等間隔に放射状に並設されている。これら20個の試液収納部21−n(n=1〜20)は、モータ4の間歇回転により、ターンテーブル3及び該ターンテーブル3の載置台上に載置されたディスク2が間歇回転させられることにより、順次、計数観察装置1による観察位置にまで回転させられて、そこに位置決めされる。
【0051】
ディスク2は、基本構造として、3枚の薄い板あるいはフィルム、すなわち、上部材16、中間部材(センターフィルム)18、下部材17の積層体として構成されている。
上部材16は、透明な樹脂材料から成り、観察時、対物レンズ8に面する側にあって、図2及び図6に図示されるように、薄い円板状をなし、その外周側に試液収納部21−n(n=1〜20)に試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口22−n(n=1〜20)と、該注入口22−nと対をなす複数のエア抜き穴23−n(n=1〜20)とを有している。エア抜き穴23−nは、注入口21−nよりも内周側に形成されている。
【0052】
また、上部材16は、位置決め穴24と位置決め穴25とを有している。位置決め穴24は、これら3枚の薄い板あるいはフィルムが積層されてディスク2として構成されたとき、このディスク2をターンテーブル3の載置台上でX−Y方向に位置決めして、その回転のための中心出しを行う。また、位置決め穴25は、平面視長円状をなし、このディスク2をターンテーブル3の載置台上で円周方向に位置決めして、その回転時の初期位置を定める。
【0053】
下部材17も、透明な樹脂材料から構成されており、観察時、ターンテーブル3の載置台に接する側にあって、図2及び図8に図示されるように、平面視ドーナツのような環状の薄い板状をなし、中央部に比較的大径の中央穴26を有している。下部材17の厚さは、上部材16の厚さと略同じにされている。
【0054】
中間部材(センターフィルム)18も、樹脂材料から構成されるが、必ずしも透明な材料である必要はなく、図2及び図7に図示されるように、下部材17と同様に、平面視ドーナツのような環状の輪郭形状のきわめて薄いフィルム状をなし、中央部に比較的大径の中央穴27を有している。この中央穴27の径は、中央穴26の径と同じにされている。中間部材18の厚さは、上部材16及び下部材17の厚さの略1/5程度である。
【0055】
中間部材18の外周縁と中央穴27との間には、試液をフィルムの面方向において保持するための複数(本実施例1においては、20個)のルーム28−n(n=1〜20)が円周方向に等間隔に放射状に並設されている。このルーム28−nの平面形状は、中間部材18の中心側が小さくされ、4つの角部が丸められた略二等辺台形状をなしている。
【0056】
中間部材18は、上部材16から押さえられ、下部材17により受けられて、これらによりサンドイッチ状に挟まれ、これらと接着させられる。そして、全体が一体の積層構造体となって、ディスク2の骨格構造を形成している。この結果、中間部材18のルーム28−nは、これら上部材16と下部材17とにより封止されて、そこに、前記した試液収納部21−n(n=1〜20)が形成されている。この試液収納部21−nは、試液を収納・保持するための偏平な閉鎖室であって、上部材16に形成された注入口22−nとエア抜き穴23−nとを介してのみ外部と連通している。試液収納部21−nを中心とし、これを取り巻く部分の構造が図3に拡大図示されている。図3は、その部分の構造を分かり易くするために模式的に描かれており、正確な縮尺に従っていない。符号35は、細胞を示す。
【0057】
なお、ディスク2の上部材16、中間部材18及び下部材17の相互間の接着は、実際には、中間部材18が精密に厚みを制御された、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成されており、この両面の接着剤が利用されることにより行われている。中間部材18がこのようなフィルムとして構成されることにより、これら3つの部材が互いに接着させられて全体が一体の積層構造体となったとき、その内部には、高い寸法精度の試液収納部21−nが形成されることになる。
【0058】
ディスク2を構成する上部材16、中間部材18及び下部材17は、いずれも使い捨て可能な樹脂材料を用いて製作されており、これにより、細胞の計数・観察の作業効率が格段に向上する。また、公害を生じることもない。さらに、これらの部材は、それぞれの材料を打ち抜きした部品から構成されているので、その製作が、成形加工による場合に比べて、きわめて容易である。
【0059】
ディスク2を構成する下部材17のターンテーブル3の載置台と接する側の面、換言すれば、上部材16と対向する側と反対側の面は、図2及び図3に図示されるように、反射面29とされている。この反射面29は、下部材17の同面に、スパッタリング等の方法により、アルミニウムもしくは銀又はその他の金属蒸着膜19を形成することにより得られる。なお、この反射面29は、下部材17の上部材16と対向する側の面に形成されても良く、また、ターンテーブル3のディスク載置台面(但し、このディスク載置台面は、ディスク2の外径と略同程度に拡径されている。)に形成されても良い。
【0060】
ディスク2を構成する上部材16の下部材17と対向する側の面には、図2及び図3に図示されるように、親水性膜20が蒸着されている。この親水性膜20は、上部材16の同面に、スパッタリング等の方法により、酸化珪素SiO2の蒸着膜を形成することにより得られる。なお、この親水性膜20は、下部材17の上部材16と対向する側の面に蒸着されても良いし、上部材16と下部材17の双方の、それらが対向する側の面に蒸着されても良い。この親水性膜20は、上部材16の注入口22−nから注入された試液を、表面張力に抗して試液収納部21−n内に均一に分布させて、そこに確実且つ安定に保持させるのに役立つ。
【0061】
なお、ディスク2を構成する上部材16の外表面には、図4に図示されるように、保護膜30が貼着されている。この保護膜30は、中間部材18が有する複数のルーム28−n(n=1〜20)の個々のルーム28−n毎に、換言すれば、ディスク2の複数の試液収納部21−n(n=1〜20)の個々の試液収納部21−n毎に、同図の円32及び線分33の個所で個別に剥がして取り去ることができるようにされており、ディスク2を実際に使用するに際しては、必要個所のみ、そこに貼着されている保護膜片30a−n(n=1〜20)を剥がして、そこに顕れた試液収納部21−nを細胞の計数観察のために使用することができる。
【0062】
保護膜30の中央部には、比較的小径の中央穴31が形成されている。この中央穴31の径は、上部材16の位置決め穴24の径よりわずかに大きくされている。また、この中央穴31よりやや外方にずれた位置には、平面視長円状の逃がし穴34が形成されている。この逃がし穴34は、上部材16が有する位置決め穴25よりわずかに大きくされている。各保護膜片30a−nには、試液収納部21−n(n=1〜20)の番号01〜20が記され、中央穴31の周囲には、製作会社名及び品名を示す文字が記されている。なお、図5には、保護膜30の単品が図示されている。
【0063】
本実施例1のディスク2及び計数観察装置1を用いて細胞を計数・観察するには、先ず、試料数に合わせて、ディスク2の複数の試液収納部21−n(n=1〜20)のうちの所要数の試液収納部21−nの各上部を覆う保護膜片30a−nを剥がし、上部材16の注入口22−nから当該試液収納部21−n内に試液を注入する。次いで、ディスク2をターンテーブル3の載置台上に移して、モータ4を間歇回転させ、これにより、ターンテーブル3及びディスク2を間歇回転させて、所要数の試液収納部21−nを、順次、計数観察装置1による観察位置にまで回転移動させ、そこに位置決めする。そして、観察位置に位置決めされた所定の試液収納部21−n内に収納・保持された試液中の細胞を、計数観察装置1により計数・観察する。
【0064】
観察位置に位置決めされた所定の試液収納部21−n内に収納・保持された試液中の細胞を、計数観察装置1により計数・観察するのには、実際には、次のようにして行われる。すなわち、試液収納部21−nの全領域(換言すれば、ルーム28−nの全領域)を、一度に、計数観察装置1により撮像するのではなく、この試液収納部21−nを、図9に図示されるように、複数の視野36−n(n=1〜8)に分割し、隣接する視野36−nと36−(n+1)との間隔を1ピッチとして、ディスク2をモータ4によりさらに細かく間歇回転させて、各視野毎に計数観察装置1により写真を撮影して行き、その画像データから、例えば、細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定するものである。このようにすることにより、偏りがなく、正確な計数観察を行うことができる。各視野36−nの大きさは、0.5mm2 (0.7×0.7mm)程度である。なお、8個の視野36−nの全てを計数・観察するのに限られず、必要に応じ、1〜8個の視野36−nを選択して計数・観察することができる。また、視野36−nの総数は、8個に限定されない。
【0065】
本実施例1の試液保持用のディスク2及び該ディスク2を用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置1は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
細胞を含む試液を保持するためのディスク2が、上部材16と中間部材18と下部材17との3層の積層構造からなっているので、ディスク2の製作が容易である。しかも、試液収納部21−nの寸法は、中間部材18が有する、試液を保持するための放射状に配置された複数のルーム28−nの個々のルーム28−nの寸法により定まるので、試液収納部21−nの寸法、特に深さ寸法を高精度に仕上げるのが容易になる。これらにより、高精度のディスク2を容易に、低コストで製作することができる。
【0066】
また、ディスク2は、使い捨て可能な材料を用いて製作されているので、細胞の計数観察の効率性を格段に向上させることができる。また、公害を生ずることもない。
【0067】
また、ディスク2を構成する上部材16、中間部材18及び下部材17は、それぞれの材料を打ち抜きした部品から構成されており、かつ、これらの部材は、中間部材18が精密に厚みを制御された、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成され、この両面の接着剤が利用されることにより互いに接着されているので、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することができる。
【0068】
さらに、ディスク2を構成する下部材17の上部材16と対向する側の面もしくはそれと反対側の面は、反射面29とされているので、そのディスク2が落射式顕微鏡を用いた細胞の計数観察装置1に用いられる場合に、その反射面29を照射光の反射面として利用することができ、落射式顕微鏡の構成が容易になる。なお、ターンテーブル3のディスク載置台面が反射面とされる場合にも、同様の効果を奏することができる。
【0069】
また、ディスク2を構成する上部材16と下部材17とのいずれかもしくは双方には、それらが対向する側の面に親水性膜20が蒸着されているので、上部材16の注入口22−nから注入された試液を試液収納部21−n内に均一に分布させて、そこに確実且つ安定に保持させることができる。
【0070】
また、ディスク2を構成する上部材16の外表面には、個々のルーム28−n毎に個別に剥がして取り去ることができる保護膜30が貼着されているので、ディスク2を実際に使用するに際しては、当座の細胞の計数観察に必要な個所のみ、そこに貼着されている保護膜片30a−nを剥がして、そこに顕れたルームルーム28−n及び試液収納部21−nを細胞の計数観察のために使用することができ、残りの個所のルーム28−m及び試液収納部21−m(m≠n、m、n=1〜8)は、それらの上部が保護膜片30a−m(m≠n、m、n=1〜8)で覆われたままの状態にしておいて、後で使用するときに、そこがゴミや埃に遮られて計数観察しにくくなるのを防ぐことができる。
【0071】
さらに、ディスク2を用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置1は、高精度で、製作が容易で、低コストなディスク2を用いて、信頼性が高く、偏りがなく正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストなものとすることができ、また、その光学式顕微鏡は、落射式顕微鏡として構成することができるので、計数観察装置1を小型化することができる。
【実施例2】
【0072】
次に、本願の発明の他の実施例(実施例2)について説明する。
図10は、本実施例2の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図、図11は、同光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部にディスクを載置した状態を示す図10と同様の図である。なお、実施例1の同様の計数観察装置の各部分と対応する部分には、同一の符号を付している。
【0073】
本実施例2の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置41は、図10に図示されるように、実施例1の同様の計数観察装置1と比較すると、ディスク2の載置部43の構造のみが異なっている。
すなわち、その載置部43は、固定テーブル44の上面44aに、ディスク2を支持するための円周方向に等しい間隔を置いて配置された3つの支持体(ピン)45を備えており、そのうちの1つの支持体45は、画像検出部(カメラ部)7が備える対物レンズ8の直下に位置していて、これらの間に一定の距離dが保持されている。なお、支持体45の数は、3つに限られず、それより多くされても良い。また、ここで言われる「対物レンズ8の直下」とは、正確に対物レンズ8の直下である必要はなく、その近傍であれば良い。
【0074】
固定テーブル44の中心部の円筒状空洞内には、回転テーブル46が同心に挿入されて、そこに回転可能に支持されている。この回転テーブル46は、図示されないが、固定テーブル44の下方において、モータ4の出力端と伝動ベルト37を介して連結されており、このモータ4により、間歇回転駆動される。
【0075】
回転テーブル46の上面46aの中心部には、短い円柱状突起47が突出形成されており、また、それと所定の距離を置いて、上面46aの外周縁寄りの1個所には、ピン状突起48が突出形成されている。円柱状突起47の外径は、上部材16の位置決め穴24の直径と略等しく、ピン状突起48の外径は、上部材16の位置決め穴25の幅と略等しい。
【0076】
ディスク2は、載置部43の上に、次のようにして載置される。
すなわち、ディスク2は、載置部43の回転テーブル46の上面46aに突出形成された円柱状突起47にその位置決め穴24が嵌合させられ、また、同じくピン状突起48にその位置決め穴25が通された状態で、3つの支持体45の上面45a上に載置される。この時、ディスク2の裏面は、上面46aに接触してはおらず、これらの間には、適宜の間隔が設けられている。このようにして、円柱状突起47に位置決め穴24が嵌合させられることにより、ディスク2の回転のための中心出しが行われる。また、ピン状突起48に位置決め穴25が通されることにより、ディスク2の回転時の初期位置を定めることが可能になる。
【0077】
そこで、今、モータ4が作動を開始して、回転テーブル46が間歇回転駆動されると、ディスク2は、円柱状突起47の中心軸上に回転中心を定めつつ、ピン状突起48により円周方向に引っ張られて、3つの支持体45の上面45a上を滑りながら、間歇回転する。先ず、隣接する試液収納部21−nと試液収納部21−(n+1)との間隔を1ピッチとして、1回回転する。次いで、隣接する視野36−nと視野36−(n+1)との間隔を1ピッチとして、8回間歇回転する。この8回の間歇回転の間に、各視野の写真が撮影される。そして、このような間歇回転パターンが、試液収納部21−nの数だけ(本実施例2の場合、20回)繰り返されるものである。
【0078】
なお、3つの支持体45のうち、対物レンズ8の直下に位置させられる支持体45の上面45aが反射面に構成されると、好都合である。そのように構成されると、ディスク2を構成する下部材17の表裏何れかの面を反射面29にする必要がなくなる。
【0079】
本実施例2の試液保持用のディスク2を用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置41は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
ディスク2は、3つ又はそれ以上の複数の支持体45により支持・載置され、これら支持体45の支持面45a上を滑りながら回転することになり、ディスク2の回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができ、また、観察位置では、ディスク2は対物レンズ8直下又はその近傍の支持体45により支持され、対物レンズ8と一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0080】
また、対物レンズ8の直下に位置する支持体45の支持面45aが反射面とされる場合には、載置部43のディスク2を載置する側の面を反射面とするための蒸着のコストを大幅に低減することができ、より低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。また、蒸着に代えて、鏡面体が該支持体45に付設される場合には、蒸着のコストを不要にすることができ、蒸着による品質不良の可能性もなくすることができる。
【0081】
なお、本願の発明は、以上の実施例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本願の発明の一実施例(実施例1)の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図である。
【図2】同ディスクの構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図である。
【図3】同ディスクの試液収納部を中心とする部分を説明するための概略拡大断面図である。
【図4】同ディスクに保護膜が貼着された状態を示す図2と略同様の図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図である。
【図5】同保護膜の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図である。
【図6】同ディスクを構成する上部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【図7】同ディスクを構成する中間部材(センターフィルム)の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図である。
【図8】同ディスクを構成する下部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【図9】同細胞の計数観察装置により、実際に、試液収納部内に収納・保持された試液中の細胞を計数・観察する要領を説明するための図である。
【図10】本願の発明の他の実施例(実施例2)の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図である。
【図11】同光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部にディスクを載置した状態を示す図10と同様の図である。
【符号の説明】
【0083】
1…細胞の計数観察装置、2…ディスク、3…ターンテーブル(載置部)、4…モータ、5…回転・位置決め部、6…照明部、7…カメラ部(画像検出部)、8…対物レンズ、9…鏡筒部、10…パーソナルコンピュータ、11…記憶部、12…計数観察部、13…制御部、14…表示部、15…入力部、16…上部材、17…下部材、18…中間部材(センターフィルム)、19…金属蒸着膜、20…親水性膜、21−n(n=1〜20)…試液収納部、22−n(n=1〜20)…注入口、23−n(n=1〜20)…エア抜き穴、24、25…位置決め穴、26、27…中央穴、28−n(n=1〜20)…ルーム、29…反射面、30…保護膜、30a−n(n=1〜20)…保護膜片、31…中央穴、32…円、33…線分、34…逃がし穴、35…細胞、36−n(n=1〜8)…視野、37…伝動ベルト、41…細胞の計数観察装置、43…載置部、44…固定テーブル、44a…上面、45…支持体(ピン)、45a…上面、46…回転テーブル、46a…上面、47…円柱状突起、48…ピン状突起。
【技術分野】
【0001】
本願の発明は、試液中の細胞の計数及び状態観察のために使用される試液保持用のディスク及び該ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置に関し、特にディスクの製作の容易化と低コスト化、計数観察装置の小型化と低コスト化とを図った、これらの器具及び装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、試液中の細胞の計数及び状態観察のために使用される試液保持用のディスクとしては、試液を保持するための複数の収納部が放射状に配置されて凹状に形成された下部構造体の上部をカバ−部材が覆う構造のものが多く提案されている(特許文献1、2)。この場合、下部構造体及びカバ−部材は、透明なガラスや樹脂材料から製作されて、ディスクが間歇的に回転させられながら、順次、各収納部に収納された試液中の細胞の計数及び状態観察が、透過式顕微鏡により行われるようになっている。
【0003】
ここで、複数の試液収納部を有する下部構造体は、透明なガラスや樹脂材料の成形加工により製作されるので、試液収納部の寸法を高精度に仕上げるのが容易でない。また、透過式顕微鏡を用いた計数観察装置は、照明光源と光学系とを試液を挟んで対向して配置するので、装置が大型化するといった欠点がある。
【0004】
計数観察装置の大型化を避けるために、照明光源と光学系とを試液に対して同じ側に配置し、試液の背後には反射鏡を配置するようにした、いわゆる落射式顕微鏡を用いた細胞の計数観察装置も提案されている(特許文献3、4)。しかしながら、これらのものは、複数の試液収納部を有する容器として、非回転式の直方体形状の容器を使用するか(特許文献4)、特に容器の形状を明らかにしないものである(特許文献3)。
【特許文献1】特開平8−082590号公報
【特許文献2】特許第2731423号公報
【特許文献3】特許第3434064号公報
【特許文献4】特開2004−348104号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本願の発明は、従来の試液保持用のディスク及び光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置が有する前記のような問題点を解決して、高精度なディスクの製作の容易化と低コスト化、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の小型化と低コスト化とを図った、これらディスク及び該ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
前記のような課題は、本願の各請求項に記載された次のような発明により解決される。 すなわち、その請求項1に記載された発明は、光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスクが、前記試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口と、前記注入口と対をなす複数のエア抜き穴とを有する透明な材料からなる上部材と、前記試液を保持するための放射状に配置された複数のルームであって、各一対の前記注入口と前記エア抜き穴とに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム、を有する中間部材と、前記中間部材を受ける透明な材料からなる下部材とから構成されていることを特徴とするディスクである。
【0007】
請求項1に記載された発明は、前記のように構成されており、細胞を含む試液を保持するためのディスクが、上部材と中間部材と下部材との3層の積層構造から成っているので、ディスクの製作が容易である。しかも、試液収納部の寸法は、中間部材が有する、試液を保持するための放射状に配置された複数のルームの個々のルームの寸法により定まるので、試液収納部の寸法、特に深さ寸法を高精度に仕上げるのが容易になる。これらにより、高精度のディスクを容易に、低コストで製作することが可能になる。
【0008】
また、その請求項2に記載された発明は、請求項1に記載のディスクが、使い捨て可能な材料を用いて製作されていることを特徴としている。
【0009】
請求項2に記載された発明は、この構成により、細胞の計数観察の効率性を格段に向上させることができる。
【0010】
また、その請求項3に記載された発明は、請求項1又は請求項2に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材、中間部材及び下部材が、打ち抜きした部品から構成されていることを特徴としている。
【0011】
請求項3に記載された発明は、この構成により、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することが可能になる。
【0012】
さらに、その請求項4に記載された発明は、請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材、中間部材及び下部材が、接着剤により互いに接着されていることを特徴としている。
【0013】
請求項4に記載された発明は、この構成により、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することが可能になる。
【0014】
また、その請求項5に記載された発明は、請求項4に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する中間部材が、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成されており、上部材、中間部材及び下部材は、該フィルムの両面に付された接着剤により互いに接着されていることを特徴としている。
【0015】
請求項5に記載された発明は、この構成により、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することが可能になる。
【0016】
また、その請求項6に記載された発明は、請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面が、反射面とされていることを特徴としている。
【0017】
請求項6に記載された発明は、この構成により、そのディスクが落射式顕微鏡を用いた細胞の計数観察装置に用いられる場合に、その反射面を照射光の反射面として利用することができ、落射式顕微鏡の構成が容易になる。
【0018】
さらに、その請求項7に記載された発明は、請求項6に記載のディスクにおいて、その反射面が、アルミニウムもしくは銀又はその他の金属蒸着膜により形成されていることを特徴としている。
【0019】
請求項7に記載された発明は、この構成により、下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面を容易に反射面とすることができる。
【0020】
また、その請求項8に記載された発明は、請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材と下部材とのいずれかもしくは双方には、それらが対向する側の面に、親水性膜が蒸着されていることを特徴としている。
【0021】
請求項8に記載された発明は、この構成により、上部材の注入口から注入された試液を、試液収納部(この試液収納部は、中間部材のルームが上部材と下部材とにより封止されることにより形成される。)内に均一に分布させて、そこに確実且つ安定に保持させることができる。
【0022】
また、その請求項9に記載された発明は、請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のディスクにおいて、そのディスクを構成する上部材の外表面には、複数のルームの各ルーム毎に個別に剥がして取り去ることができる保護膜が貼着されていることを特徴としている。
【0023】
請求項9に記載された発明は、この構成により、ディスクを実際に使用するに際しては、必要個所のみ、そこに貼着されている保護膜片を剥がして、そこに顕れたルーム及び試液収納部を細胞の計数観察のために使用することができ、残りの個所のルーム及び試液収納部は、保護膜片で覆われたままの状態にしておいて、後で使用するときに、そこがゴミや埃に遮られて計数観察しにくくなるのを防ぐことができる。
【0024】
さらに、その請求項10に記載された発明は、請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、前記ディスクを載置する載置部と、前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、前記試液に光を照射する照明部と、前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、装置全体を制御する制御部とを備え、前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされていることを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置である。
【0025】
請求項10に記載された発明は、前記のように構成されているので、高精度で、製作が容易で、低コストなディスクを用いて、信頼性が高く、正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストな、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。
【0026】
また、そのディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面が反射面とされている場合には、その反射面を照射光の反射面として利用して、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成することができ、計数観察装置を小型化することができる。
【0027】
また、その請求項11に記載された発明は、請求項10に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部は、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、複数のこれら支持体のうちの1つは、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されていることを特徴としている。
【0028】
請求項11に記載された発明は、前記のように構成されているので、ディスクは、3つ又はそれ以上の複数の支持体により支持・載置され、これら支持体の支持面上を滑りながら回転することになり、ディスクの回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができ、また、観察位置では、ディスクは対物レンズ直下又はその近傍の支持体により支持され、対物レンズと一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0029】
また、その請求項12に記載された発明は、請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、前記ディスクを載置する載置部と、前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、前記試液に光を照射する照明部と、前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、装置全体を制御する制御部とを備え、前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされている光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置であって、前記載置部の前記ディスクを載置する側の面は、反射面とされていることを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置である。
【0030】
請求項12に記載された発明は、前記のように構成されているので、高精度で、製作が容易で、低コストなディスクを用いて、信頼性が高く、正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。
【0031】
また、その載置部の反射面を照射光の反射面として利用して、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成することができ、計数観察装置を小型化することができる。
【0032】
さらに、その請求項13に記載された発明は、請求項12に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部は、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、複数のこれら支持体のうちの1つは、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されていることを特徴としている。
【0033】
請求項13に記載された発明は、前記のように構成されているので、ディスクは、3つ又はそれ以上の複数の支持体により支持・載置され、これら支持体の支持面上を滑りながら回転することになり、ディスクの回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができ、また、観察位置では、ディスクは対物レンズ直下又はその近傍の支持体により支持され、対物レンズと一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0034】
さらに、また、その請求項14に記載された発明は、請求項13に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面が、反射面とされていることを特徴とする。
【0035】
請求項14に記載された発明は、前記のように構成されているので、載置部のディスクを載置する側の面のうち、対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面のみ、反射面とされれば良く、載置部のディスクを載置する側の面を反射面とするための蒸着のコストを大幅に低減することができ、より低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。また、蒸着に代えて、鏡面体が該1つの支持体に付設される場合には、蒸着のコストを不要にすることができ、蒸着による品質不良の可能性もなくすることができる。
【発明の効果】
【0036】
前記のとおり、本願の発明のディスクによれば、これが上部材と中間部材と下部材との3層の積層構造から構成されているので、ディスクの製作が容易になる。しかも、試液収納部の寸法は、中間部材が有する、試液を保持するための放射状に配置された複数のルームの個々のルームの寸法により定まるので、試液収納部の寸法、特に深さ寸法を高精度に仕上げるのが容易になる。これらにより、高精度のディスクを容易に、低コストで製作することが可能になる。
【0037】
また、前記のとおり、本願の発明のディスクを備えた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置によれば、高精度で、製作が容易で、低コストなディスクを用いて、信頼性が高く、正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストな、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。
【0038】
また、そのディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面が反射面とされるか、ディスクを載置する載置部の該ディスクを載置する側の面が反射面とされる場合には、これらの反射面を照射光の反射面として利用して、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成することができ、計数観察装置を小型化することができる。
【0039】
さらに、その載置部が、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、複数のこれら支持体のうちの1つは、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されるようにされる場合には、ディスクは、3つ又はそれ以上の複数の支持体により支持・載置され、これら支持体の支持面上を滑りながら回転することになり、ディスクの回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができる。また、観察位置では、ディスクは対物レンズ直下又はその近傍の支持体により支持され、対物レンズと一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0040】
この場合において、対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面が反射面とされる場合には、載置部のディスクを載置する側の面のうち、対物レンズの直下又はその近傍に位置する1つの支持体のディスクを支持する側の面のみ、反射面とされれば良く、載置部のディスクを載置する側の面を反射面とするための蒸着のコストを大幅に低減することができ、より低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。また、蒸着に代えて、鏡面体が該1つの支持体に付設される場合には、蒸着のコストを不要にすることができ、蒸着による品質不良の可能性もなくすることができる。
その他、前記したような種々の効果を奏することができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0041】
光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスクを、次の3つの部材から構成する。すなわち、試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口と、該注入口と対をなす複数のエア抜き穴とを有する透明な材料からなる上部材と、試液を保持するための放射状に配置された複数のルームであって、各一対の該注入口と該エア抜き穴とに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム、を有する中間部材と、該中間部材を受ける透明な樹脂材料からなる下部材とから構成する。
ディスクは、使い捨て可能な材料を用いて製作することとし、上部材、中間部材及び下部材は、打ち抜きした部品から構成するものとする。
【0042】
また、光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を、前記ディスクと、該ディスクを載置する載置部と、該ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、試液に光を照射する照明部と、細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、撮像した画像データを記憶する記憶部と、該画像データから細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、装置全体を制御する制御部とを備えたものとし、且つ、これら記憶部、計数観察部及び制御部は、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにする。
【0043】
ディスクを構成する下部材の上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面もしくはディスクを載置する載置部の該ディスクを載置する側の面を反射面とし、光学式顕微鏡を落射式顕微鏡として構成する。
【0044】
さらに、ディスクを載置する載置部は、ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体(ピン)を備え、複数のこれら支持体のうちの1つが、画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されるようにする。
【実施例1】
【0045】
次に、本願の発明の一実施例(実施例1)について説明する。
図1は、本実施例1の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図、図2は、同ディスクの構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図、図3は、同ディスクの試液収納部を中心とする部分を説明するための概略拡大断面図、図4は、同ディスクに保護膜が貼着された状態を示す図2と略同様の図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図、図5は、同保護膜の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図、図6は、同ディスクを構成する上部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、図7は、同ディスクを構成する中間部材(センターフィルム)の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図、図8は、同ディスクを構成する下部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【0046】
図1に図示されるように、本実施例1の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置1は、概略、細胞を含む試液を保持するためのディスク2と、該ディスク2を載置する載置台を有するターンテーブル3と、該ターンテーブル3及び該ディスク2を回転・位置決めするモータ4を含む回転・位置決め部5と、試液に光を照射する照明部6と、細胞を撮像(写真撮影)して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部をなすカメラ部7と、撮像した画像データを記憶する記憶部11と、画像データから細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部12と、装置全体を制御する制御部13とを備えている。ターンテーブル3は、他の部分と並べて称すれば、ディスク2の「載置部」に相当するものである。記憶部11と、計数観察部12と、制御部13とは、パーソナルコンピュータ10の情報処理・操作部として、その内部に設けられている。パーソナルコンピュータ10は、他に表示部14、入力部15を備えている。
【0047】
カメラ部7が取り付けられ、照明部6、対物レンズ8及び鏡筒部9を備えている光学系は、顕微鏡を構成しており、ディスク2の後述する試液収納部21−n内に収納された試液中の細胞が、照明部6から導かれた照明の下で、対物レンズ8を通して観察される。そして、観察されたその像は、カメラ部7で撮像される。実際には、照明部6から導かれた光が試液を透過して、ディスク2の後述する下部材17に設けられた反射面29により反射され、再び対物レンズ8を通ってカメラ部7へと導かれ、カメラ部7において受光しなかった影の部分が細胞の像として感知されるのである。このように、照明部6は、ディスク2に対して対物レンズ8と同じ側に配置されており、この光学式顕微鏡は、落射式顕微鏡として構成されている。このため、計数観察装置1の全高が低くなり、これを小型化することができる。
【0048】
カメラ部7は、この細胞の像を撮像するとともに、画像データに変換して、これをパーソナルコンピュータ10の記憶部11に送信(出力)する。記憶部11に送られた細胞の画像データは、リアルタイムで、あるいは適時記憶部11から読み出されて、計数観察部12により、その数や状態が計数・観察される。その結果は、随時表示部14に表示されるとともに、記憶部11にも記憶される。
【0049】
回転・位置決め部5を構成するモータ4は、ステッピングモータであり、所定時間間隔毎に所定角度回転して、ターンテーブル3を所定角度回転させ、同テーブルの載置台上に載置されたディスク2を同じ角度だけ回転させて、複数の試液収納部21−nのうちの1つを観察位置に位置決めする。計数観察装置1は、ディスク2が静止中の所定時間内に、観察位置に来た当該試液収納部21−n内に収納された試液中の細胞を計数・観察する。モータ4の回転制御は、パーソナルコンピュータ10の制御部13により行われる。
【0050】
次に、ディスク2の構造について、図面を参照しながら、詳細に説明する。
ディスク2は、計数観察装置1が細胞を観察するのに便利なように、該細胞を含む試液を保持するために用いられ、図2に図示されるように、外観が薄い回転円盤状をなしている。そして、その外周部には、試液を保持するための複数(本実施例1においては、20個)の試液収納部21−n(n=1〜20)が円周方向に等間隔に放射状に並設されている。これら20個の試液収納部21−n(n=1〜20)は、モータ4の間歇回転により、ターンテーブル3及び該ターンテーブル3の載置台上に載置されたディスク2が間歇回転させられることにより、順次、計数観察装置1による観察位置にまで回転させられて、そこに位置決めされる。
【0051】
ディスク2は、基本構造として、3枚の薄い板あるいはフィルム、すなわち、上部材16、中間部材(センターフィルム)18、下部材17の積層体として構成されている。
上部材16は、透明な樹脂材料から成り、観察時、対物レンズ8に面する側にあって、図2及び図6に図示されるように、薄い円板状をなし、その外周側に試液収納部21−n(n=1〜20)に試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口22−n(n=1〜20)と、該注入口22−nと対をなす複数のエア抜き穴23−n(n=1〜20)とを有している。エア抜き穴23−nは、注入口21−nよりも内周側に形成されている。
【0052】
また、上部材16は、位置決め穴24と位置決め穴25とを有している。位置決め穴24は、これら3枚の薄い板あるいはフィルムが積層されてディスク2として構成されたとき、このディスク2をターンテーブル3の載置台上でX−Y方向に位置決めして、その回転のための中心出しを行う。また、位置決め穴25は、平面視長円状をなし、このディスク2をターンテーブル3の載置台上で円周方向に位置決めして、その回転時の初期位置を定める。
【0053】
下部材17も、透明な樹脂材料から構成されており、観察時、ターンテーブル3の載置台に接する側にあって、図2及び図8に図示されるように、平面視ドーナツのような環状の薄い板状をなし、中央部に比較的大径の中央穴26を有している。下部材17の厚さは、上部材16の厚さと略同じにされている。
【0054】
中間部材(センターフィルム)18も、樹脂材料から構成されるが、必ずしも透明な材料である必要はなく、図2及び図7に図示されるように、下部材17と同様に、平面視ドーナツのような環状の輪郭形状のきわめて薄いフィルム状をなし、中央部に比較的大径の中央穴27を有している。この中央穴27の径は、中央穴26の径と同じにされている。中間部材18の厚さは、上部材16及び下部材17の厚さの略1/5程度である。
【0055】
中間部材18の外周縁と中央穴27との間には、試液をフィルムの面方向において保持するための複数(本実施例1においては、20個)のルーム28−n(n=1〜20)が円周方向に等間隔に放射状に並設されている。このルーム28−nの平面形状は、中間部材18の中心側が小さくされ、4つの角部が丸められた略二等辺台形状をなしている。
【0056】
中間部材18は、上部材16から押さえられ、下部材17により受けられて、これらによりサンドイッチ状に挟まれ、これらと接着させられる。そして、全体が一体の積層構造体となって、ディスク2の骨格構造を形成している。この結果、中間部材18のルーム28−nは、これら上部材16と下部材17とにより封止されて、そこに、前記した試液収納部21−n(n=1〜20)が形成されている。この試液収納部21−nは、試液を収納・保持するための偏平な閉鎖室であって、上部材16に形成された注入口22−nとエア抜き穴23−nとを介してのみ外部と連通している。試液収納部21−nを中心とし、これを取り巻く部分の構造が図3に拡大図示されている。図3は、その部分の構造を分かり易くするために模式的に描かれており、正確な縮尺に従っていない。符号35は、細胞を示す。
【0057】
なお、ディスク2の上部材16、中間部材18及び下部材17の相互間の接着は、実際には、中間部材18が精密に厚みを制御された、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成されており、この両面の接着剤が利用されることにより行われている。中間部材18がこのようなフィルムとして構成されることにより、これら3つの部材が互いに接着させられて全体が一体の積層構造体となったとき、その内部には、高い寸法精度の試液収納部21−nが形成されることになる。
【0058】
ディスク2を構成する上部材16、中間部材18及び下部材17は、いずれも使い捨て可能な樹脂材料を用いて製作されており、これにより、細胞の計数・観察の作業効率が格段に向上する。また、公害を生じることもない。さらに、これらの部材は、それぞれの材料を打ち抜きした部品から構成されているので、その製作が、成形加工による場合に比べて、きわめて容易である。
【0059】
ディスク2を構成する下部材17のターンテーブル3の載置台と接する側の面、換言すれば、上部材16と対向する側と反対側の面は、図2及び図3に図示されるように、反射面29とされている。この反射面29は、下部材17の同面に、スパッタリング等の方法により、アルミニウムもしくは銀又はその他の金属蒸着膜19を形成することにより得られる。なお、この反射面29は、下部材17の上部材16と対向する側の面に形成されても良く、また、ターンテーブル3のディスク載置台面(但し、このディスク載置台面は、ディスク2の外径と略同程度に拡径されている。)に形成されても良い。
【0060】
ディスク2を構成する上部材16の下部材17と対向する側の面には、図2及び図3に図示されるように、親水性膜20が蒸着されている。この親水性膜20は、上部材16の同面に、スパッタリング等の方法により、酸化珪素SiO2の蒸着膜を形成することにより得られる。なお、この親水性膜20は、下部材17の上部材16と対向する側の面に蒸着されても良いし、上部材16と下部材17の双方の、それらが対向する側の面に蒸着されても良い。この親水性膜20は、上部材16の注入口22−nから注入された試液を、表面張力に抗して試液収納部21−n内に均一に分布させて、そこに確実且つ安定に保持させるのに役立つ。
【0061】
なお、ディスク2を構成する上部材16の外表面には、図4に図示されるように、保護膜30が貼着されている。この保護膜30は、中間部材18が有する複数のルーム28−n(n=1〜20)の個々のルーム28−n毎に、換言すれば、ディスク2の複数の試液収納部21−n(n=1〜20)の個々の試液収納部21−n毎に、同図の円32及び線分33の個所で個別に剥がして取り去ることができるようにされており、ディスク2を実際に使用するに際しては、必要個所のみ、そこに貼着されている保護膜片30a−n(n=1〜20)を剥がして、そこに顕れた試液収納部21−nを細胞の計数観察のために使用することができる。
【0062】
保護膜30の中央部には、比較的小径の中央穴31が形成されている。この中央穴31の径は、上部材16の位置決め穴24の径よりわずかに大きくされている。また、この中央穴31よりやや外方にずれた位置には、平面視長円状の逃がし穴34が形成されている。この逃がし穴34は、上部材16が有する位置決め穴25よりわずかに大きくされている。各保護膜片30a−nには、試液収納部21−n(n=1〜20)の番号01〜20が記され、中央穴31の周囲には、製作会社名及び品名を示す文字が記されている。なお、図5には、保護膜30の単品が図示されている。
【0063】
本実施例1のディスク2及び計数観察装置1を用いて細胞を計数・観察するには、先ず、試料数に合わせて、ディスク2の複数の試液収納部21−n(n=1〜20)のうちの所要数の試液収納部21−nの各上部を覆う保護膜片30a−nを剥がし、上部材16の注入口22−nから当該試液収納部21−n内に試液を注入する。次いで、ディスク2をターンテーブル3の載置台上に移して、モータ4を間歇回転させ、これにより、ターンテーブル3及びディスク2を間歇回転させて、所要数の試液収納部21−nを、順次、計数観察装置1による観察位置にまで回転移動させ、そこに位置決めする。そして、観察位置に位置決めされた所定の試液収納部21−n内に収納・保持された試液中の細胞を、計数観察装置1により計数・観察する。
【0064】
観察位置に位置決めされた所定の試液収納部21−n内に収納・保持された試液中の細胞を、計数観察装置1により計数・観察するのには、実際には、次のようにして行われる。すなわち、試液収納部21−nの全領域(換言すれば、ルーム28−nの全領域)を、一度に、計数観察装置1により撮像するのではなく、この試液収納部21−nを、図9に図示されるように、複数の視野36−n(n=1〜8)に分割し、隣接する視野36−nと36−(n+1)との間隔を1ピッチとして、ディスク2をモータ4によりさらに細かく間歇回転させて、各視野毎に計数観察装置1により写真を撮影して行き、その画像データから、例えば、細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定するものである。このようにすることにより、偏りがなく、正確な計数観察を行うことができる。各視野36−nの大きさは、0.5mm2 (0.7×0.7mm)程度である。なお、8個の視野36−nの全てを計数・観察するのに限られず、必要に応じ、1〜8個の視野36−nを選択して計数・観察することができる。また、視野36−nの総数は、8個に限定されない。
【0065】
本実施例1の試液保持用のディスク2及び該ディスク2を用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置1は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
細胞を含む試液を保持するためのディスク2が、上部材16と中間部材18と下部材17との3層の積層構造からなっているので、ディスク2の製作が容易である。しかも、試液収納部21−nの寸法は、中間部材18が有する、試液を保持するための放射状に配置された複数のルーム28−nの個々のルーム28−nの寸法により定まるので、試液収納部21−nの寸法、特に深さ寸法を高精度に仕上げるのが容易になる。これらにより、高精度のディスク2を容易に、低コストで製作することができる。
【0066】
また、ディスク2は、使い捨て可能な材料を用いて製作されているので、細胞の計数観察の効率性を格段に向上させることができる。また、公害を生ずることもない。
【0067】
また、ディスク2を構成する上部材16、中間部材18及び下部材17は、それぞれの材料を打ち抜きした部品から構成されており、かつ、これらの部材は、中間部材18が精密に厚みを制御された、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成され、この両面の接着剤が利用されることにより互いに接着されているので、高精度なディスクをさらに容易に、さらに低コストで製作することができる。
【0068】
さらに、ディスク2を構成する下部材17の上部材16と対向する側の面もしくはそれと反対側の面は、反射面29とされているので、そのディスク2が落射式顕微鏡を用いた細胞の計数観察装置1に用いられる場合に、その反射面29を照射光の反射面として利用することができ、落射式顕微鏡の構成が容易になる。なお、ターンテーブル3のディスク載置台面が反射面とされる場合にも、同様の効果を奏することができる。
【0069】
また、ディスク2を構成する上部材16と下部材17とのいずれかもしくは双方には、それらが対向する側の面に親水性膜20が蒸着されているので、上部材16の注入口22−nから注入された試液を試液収納部21−n内に均一に分布させて、そこに確実且つ安定に保持させることができる。
【0070】
また、ディスク2を構成する上部材16の外表面には、個々のルーム28−n毎に個別に剥がして取り去ることができる保護膜30が貼着されているので、ディスク2を実際に使用するに際しては、当座の細胞の計数観察に必要な個所のみ、そこに貼着されている保護膜片30a−nを剥がして、そこに顕れたルームルーム28−n及び試液収納部21−nを細胞の計数観察のために使用することができ、残りの個所のルーム28−m及び試液収納部21−m(m≠n、m、n=1〜8)は、それらの上部が保護膜片30a−m(m≠n、m、n=1〜8)で覆われたままの状態にしておいて、後で使用するときに、そこがゴミや埃に遮られて計数観察しにくくなるのを防ぐことができる。
【0071】
さらに、ディスク2を用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置1は、高精度で、製作が容易で、低コストなディスク2を用いて、信頼性が高く、偏りがなく正確で、効率的な自動計数観察が可能で、低コストなものとすることができ、また、その光学式顕微鏡は、落射式顕微鏡として構成することができるので、計数観察装置1を小型化することができる。
【実施例2】
【0072】
次に、本願の発明の他の実施例(実施例2)について説明する。
図10は、本実施例2の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図、図11は、同光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部にディスクを載置した状態を示す図10と同様の図である。なお、実施例1の同様の計数観察装置の各部分と対応する部分には、同一の符号を付している。
【0073】
本実施例2の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置41は、図10に図示されるように、実施例1の同様の計数観察装置1と比較すると、ディスク2の載置部43の構造のみが異なっている。
すなわち、その載置部43は、固定テーブル44の上面44aに、ディスク2を支持するための円周方向に等しい間隔を置いて配置された3つの支持体(ピン)45を備えており、そのうちの1つの支持体45は、画像検出部(カメラ部)7が備える対物レンズ8の直下に位置していて、これらの間に一定の距離dが保持されている。なお、支持体45の数は、3つに限られず、それより多くされても良い。また、ここで言われる「対物レンズ8の直下」とは、正確に対物レンズ8の直下である必要はなく、その近傍であれば良い。
【0074】
固定テーブル44の中心部の円筒状空洞内には、回転テーブル46が同心に挿入されて、そこに回転可能に支持されている。この回転テーブル46は、図示されないが、固定テーブル44の下方において、モータ4の出力端と伝動ベルト37を介して連結されており、このモータ4により、間歇回転駆動される。
【0075】
回転テーブル46の上面46aの中心部には、短い円柱状突起47が突出形成されており、また、それと所定の距離を置いて、上面46aの外周縁寄りの1個所には、ピン状突起48が突出形成されている。円柱状突起47の外径は、上部材16の位置決め穴24の直径と略等しく、ピン状突起48の外径は、上部材16の位置決め穴25の幅と略等しい。
【0076】
ディスク2は、載置部43の上に、次のようにして載置される。
すなわち、ディスク2は、載置部43の回転テーブル46の上面46aに突出形成された円柱状突起47にその位置決め穴24が嵌合させられ、また、同じくピン状突起48にその位置決め穴25が通された状態で、3つの支持体45の上面45a上に載置される。この時、ディスク2の裏面は、上面46aに接触してはおらず、これらの間には、適宜の間隔が設けられている。このようにして、円柱状突起47に位置決め穴24が嵌合させられることにより、ディスク2の回転のための中心出しが行われる。また、ピン状突起48に位置決め穴25が通されることにより、ディスク2の回転時の初期位置を定めることが可能になる。
【0077】
そこで、今、モータ4が作動を開始して、回転テーブル46が間歇回転駆動されると、ディスク2は、円柱状突起47の中心軸上に回転中心を定めつつ、ピン状突起48により円周方向に引っ張られて、3つの支持体45の上面45a上を滑りながら、間歇回転する。先ず、隣接する試液収納部21−nと試液収納部21−(n+1)との間隔を1ピッチとして、1回回転する。次いで、隣接する視野36−nと視野36−(n+1)との間隔を1ピッチとして、8回間歇回転する。この8回の間歇回転の間に、各視野の写真が撮影される。そして、このような間歇回転パターンが、試液収納部21−nの数だけ(本実施例2の場合、20回)繰り返されるものである。
【0078】
なお、3つの支持体45のうち、対物レンズ8の直下に位置させられる支持体45の上面45aが反射面に構成されると、好都合である。そのように構成されると、ディスク2を構成する下部材17の表裏何れかの面を反射面29にする必要がなくなる。
【0079】
本実施例2の試液保持用のディスク2を用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置41は、前記のように構成されているので、次のような効果を奏することができる。
ディスク2は、3つ又はそれ以上の複数の支持体45により支持・載置され、これら支持体45の支持面45a上を滑りながら回転することになり、ディスク2の回転駆動系の動揺、例えば、波打ち現象等の不安定要素を排除することができ、また、観察位置では、ディスク2は対物レンズ8直下又はその近傍の支持体45により支持され、対物レンズ8と一定の距離が保持されるので、より正確な自動計数観察が可能になる。
【0080】
また、対物レンズ8の直下に位置する支持体45の支持面45aが反射面とされる場合には、載置部43のディスク2を載置する側の面を反射面とするための蒸着のコストを大幅に低減することができ、より低コストな光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置を提供することができる。また、蒸着に代えて、鏡面体が該支持体45に付設される場合には、蒸着のコストを不要にすることができ、蒸着による品質不良の可能性もなくすることができる。
【0081】
なお、本願の発明は、以上の実施例に限定されず、その要旨を逸脱しない範囲において、種々の変形が可能である。
【図面の簡単な説明】
【0082】
【図1】本願の発明の一実施例(実施例1)の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図である。
【図2】同ディスクの構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図である。
【図3】同ディスクの試液収納部を中心とする部分を説明するための概略拡大断面図である。
【図4】同ディスクに保護膜が貼着された状態を示す図2と略同様の図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図、(C)は、(B)のC部の拡大図である。
【図5】同保護膜の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図である。
【図6】同ディスクを構成する上部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【図7】同ディスクを構成する中間部材(センターフィルム)の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、その側面図である。
【図8】同ディスクを構成する下部材の構成図であって、(A)は、その平面図、(B)は、(A)のB−B線断面図である。
【図9】同細胞の計数観察装置により、実際に、試液収納部内に収納・保持された試液中の細胞を計数・観察する要領を説明するための図である。
【図10】本願の発明の他の実施例(実施例2)の試液保持用ディスクを用いた光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置の概略構成図である。
【図11】同光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置において、その載置部にディスクを載置した状態を示す図10と同様の図である。
【符号の説明】
【0083】
1…細胞の計数観察装置、2…ディスク、3…ターンテーブル(載置部)、4…モータ、5…回転・位置決め部、6…照明部、7…カメラ部(画像検出部)、8…対物レンズ、9…鏡筒部、10…パーソナルコンピュータ、11…記憶部、12…計数観察部、13…制御部、14…表示部、15…入力部、16…上部材、17…下部材、18…中間部材(センターフィルム)、19…金属蒸着膜、20…親水性膜、21−n(n=1〜20)…試液収納部、22−n(n=1〜20)…注入口、23−n(n=1〜20)…エア抜き穴、24、25…位置決め穴、26、27…中央穴、28−n(n=1〜20)…ルーム、29…反射面、30…保護膜、30a−n(n=1〜20)…保護膜片、31…中央穴、32…円、33…線分、34…逃がし穴、35…細胞、36−n(n=1〜8)…視野、37…伝動ベルト、41…細胞の計数観察装置、43…載置部、44…固定テーブル、44a…上面、45…支持体(ピン)、45a…上面、46…回転テーブル、46a…上面、47…円柱状突起、48…ピン状突起。
【特許請求の範囲】
【請求項1】
光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスクが、
前記試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口と、前記注入口と対をなす複数のエア抜き穴とを有する透明な材料からなる上部材と、
前記試液を保持するための放射状に配置された複数のルームであって、各一対の前記注入口と前記エア抜き穴とに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム、を有する中間部材と、
前記中間部材を受ける透明な材料からなる下部材と
から構成されていることを特徴とするディスク。
【請求項2】
前記ディスクは、使い捨て可能な材料を用いて製作されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク。
【請求項3】
前記ディスクを構成する前記上部材、前記中間部材及び前記下部材は、打ち抜きした部品から構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディスク。
【請求項4】
前記ディスクを構成する前記上部材、前記中間部材及び前記下部材は、接着剤により互いに接着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項5】
前記ディスクを構成する前記中間部材は、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成されており、
前記上部材、前記中間部材及び前記下部材は、前記フィルムの両面に付された接着剤により互いに接着されていることを特徴とする請求項4に記載のディスク。
【請求項6】
前記ディスクを構成する前記下部材の前記上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面は、反射面とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項7】
前記反射面は、アルミニウムもしくは銀又はその他の金属蒸着膜により形成されていることを特徴とする請求項6に記載のディスク。
【請求項8】
前記ディスクを構成する前記上部材と前記下部材とのいずれかもしくは双方には、それらが対向する側の面に、親水性膜が蒸着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項9】
前記ディスクを構成する前記上部材の外表面には、複数の前記ルームの各ルーム毎に個別に剥がして取り去ることができる保護膜が貼着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、
前記ディスクを載置する載置部と、
前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、
前記試液に光を照射する照明部と、
前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、
前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、
前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、
装置全体を制御する制御部と
を備え、
前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、
前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされている
ことを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項11】
前記載置部は、前記ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、
複数の前記支持体のうちの1つは、前記画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されている
ことを特徴とする請求項10に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、
前記ディスクを載置する載置部と、
前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、
前記試液に光を照射する照明部と、
前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、
前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、
前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、
装置全体を制御する制御部と
を備え、
前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、
前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされている光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置であって、
前記載置部の前記ディスクを載置する側の面は、反射面とされていることを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項13】
前記載置部は、前記ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、
複数の前記支持体のうちの1つは、前記画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されている
ことを特徴とする請求項12に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項14】
前記対物レンズの直下又はその近傍に位置する前記1つの支持体の前記ディスクを支持する側の面が、反射面とされていることを特徴とする請求項13に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項1】
光学式顕微鏡による細胞の計数観察に用いられ、細胞を含む試液を保持するためのディスクが、
前記試液を注入するための放射状に配置された複数の注入口と、前記注入口と対をなす複数のエア抜き穴とを有する透明な材料からなる上部材と、
前記試液を保持するための放射状に配置された複数のルームであって、各一対の前記注入口と前記エア抜き穴とに対応して、これらに連通するようにして設けられた複数のルーム、を有する中間部材と、
前記中間部材を受ける透明な材料からなる下部材と
から構成されていることを特徴とするディスク。
【請求項2】
前記ディスクは、使い捨て可能な材料を用いて製作されていることを特徴とする請求項1に記載のディスク。
【請求項3】
前記ディスクを構成する前記上部材、前記中間部材及び前記下部材は、打ち抜きした部品から構成されていることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載のディスク。
【請求項4】
前記ディスクを構成する前記上部材、前記中間部材及び前記下部材は、接着剤により互いに接着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項3のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項5】
前記ディスクを構成する前記中間部材は、厚みが一定の両面接着剤付きフィルムとして構成されており、
前記上部材、前記中間部材及び前記下部材は、前記フィルムの両面に付された接着剤により互いに接着されていることを特徴とする請求項4に記載のディスク。
【請求項6】
前記ディスクを構成する前記下部材の前記上部材と対向する側の面もしくはそれと反対側の面は、反射面とされていることを特徴とする請求項1ないし請求項5のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項7】
前記反射面は、アルミニウムもしくは銀又はその他の金属蒸着膜により形成されていることを特徴とする請求項6に記載のディスク。
【請求項8】
前記ディスクを構成する前記上部材と前記下部材とのいずれかもしくは双方には、それらが対向する側の面に、親水性膜が蒸着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項7のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項9】
前記ディスクを構成する前記上部材の外表面には、複数の前記ルームの各ルーム毎に個別に剥がして取り去ることができる保護膜が貼着されていることを特徴とする請求項1ないし請求項8のいずれか1項に記載のディスク。
【請求項10】
請求項1ないし請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、
前記ディスクを載置する載置部と、
前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、
前記試液に光を照射する照明部と、
前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、
前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、
前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、
装置全体を制御する制御部と
を備え、
前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、
前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされている
ことを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項11】
前記載置部は、前記ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、
複数の前記支持体のうちの1つは、前記画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されている
ことを特徴とする請求項10に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項12】
請求項1ないし請求項5、請求項8、請求項9のいずれか1項に記載のディスクと、
前記ディスクを載置する載置部と、
前記ディスクを回転・位置決めする回転・位置決め部と、
前記試液に光を照射する照明部と、
前記細胞を撮像して、画像データとして出力する機能を備えた画像検出部と、
前記撮像した画像データを記憶する記憶部と、
前記画像データから前記細胞の数や状態を計数・観察する計数観察部と、
装置全体を制御する制御部と
を備え、
前記記憶部と、前記計数観察部と、前記制御部とは、パーソナルコンピュータの情報処理・操作部として、その内部に設けられており、
前記ルームを複数の視野に分割し、各視野毎に前記細胞を撮像して、その画像データから細胞数を計測し、それらの平均値により細胞濃度を決定することが可能なようにされている光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置であって、
前記載置部の前記ディスクを載置する側の面は、反射面とされていることを特徴とする光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項13】
前記載置部は、前記ディスクを支持するために円周方向に適宜間隔を置いて配置された3つ又はそれ以上の複数の支持体を備え、
複数の前記支持体のうちの1つは、前記画像検出部が備える対物レンズの直下又はその近傍に位置していて、これらの間に一定の距離が保持されている
ことを特徴とする請求項12に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【請求項14】
前記対物レンズの直下又はその近傍に位置する前記1つの支持体の前記ディスクを支持する側の面が、反射面とされていることを特徴とする請求項13に記載の光学式顕微鏡による細胞の計数観察装置。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【公開番号】特開2007−78614(P2007−78614A)
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2005−269818(P2005−269818)
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(500201406)株式会社 エフェクター細胞研究所 (12)
【出願人】(391032358)平田機工株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成19年3月29日(2007.3.29)
【国際特許分類】
【出願日】平成17年9月16日(2005.9.16)
【出願人】(500201406)株式会社 エフェクター細胞研究所 (12)
【出願人】(391032358)平田機工株式会社 (107)
【Fターム(参考)】
[ Back to top ]