ディスク媒体記録再生装置、並びに、マルチストリーム読み出しプログラム及びマルチストリーム読み出し方法
【課題】マルチストリーミング処理時に、一定以上の転送速度を確保することのできるディスク媒体の読み出し方法を提供する。
【解決手段】論理ブロックアドレスがディスク媒体の外周側から内周側へ向かって割り当てられた第1ディスク媒体と、これと反対に割り当てられた第2ディスク媒体とから、第1ストリームデータ及び第2ストリームデータの2つのストリームデータを読み出すときに、第1ストリームデータの論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の外周側で、かつ、第2ストリームデータの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の外周側に位置するときに、第1ストリームデータを第1ディスク媒体から読み出すと共に、第2ストリームデータを第2ディスク媒体から読み出す。
【解決手段】論理ブロックアドレスがディスク媒体の外周側から内周側へ向かって割り当てられた第1ディスク媒体と、これと反対に割り当てられた第2ディスク媒体とから、第1ストリームデータ及び第2ストリームデータの2つのストリームデータを読み出すときに、第1ストリームデータの論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の外周側で、かつ、第2ストリームデータの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の外周側に位置するときに、第1ストリームデータを第1ディスク媒体から読み出すと共に、第2ストリームデータを第2ディスク媒体から読み出す。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像、音声等の連続したストリームデータを異なるディスク媒体に対して記録・再生するディスク媒体記録再生装置、並びに、異なるディスク媒体からストリームデータを読み出すマルチストリーム読み出しプログラム及びマルチストリーム読み出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像、音声等の連続したストリームデータ(ビデオデータ等)の編集処理では、異なるディスク媒体に記録されているストリームデータを再生し、映像等の内容を確認しながらシーンの切り張りを行う、いわゆるマルチストリーミング処理が一般的に行われている。また、複数のディスク媒体でストリームデータを記録・再生するディスク媒体記録再生装置としては、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)の手法を用いた装置が知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、図13〜図15を参照して、従来のRAID(RAID0、RAID1、RAID1.5)手法を用いたディスク媒体へのデータの書き込み(記録)手法、並びに、ディスク媒体からの読み出し(再生)手法について、その概要を説明する。図13は、「ストライピング」と呼ばれるRAID0の記録・再生の手法を説明するための説明図である。図14は、「ミラーリング」と呼ばれるRAID1の記録・再生の手法を説明するための説明図である。図15は、RAID0とRAID1とを統合したRAID1.5の手法を説明するための説明図である。
【0004】
図13に示すように、RAID0は、映像、音声等のストリームデータを記録するための一方のディスク媒体である第1ディスクD1及び他方のディスク媒体である第2ディスクD2には、ストリームデータが分散的に記録されるように構成されている。すなわち、RAID0は、第1ディスクD1に複数の論理領域(データブロック)A−1,A−3,A−5,…,A−n−1が設けられると共に、第2ディスクD2に複数の論理領域A−2,A−4,A−6,…,A−nが設けられている。
そして、RAID0におけるデータの書き込み(記録)は、ストリームデータを、これら論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nに分散して書き込むことにより行われる。また、RAID0におけるデータの読み出し(再生)は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に記録されているストリームデータを、論理領域(データブロック)毎にディスク媒体を切り替えて読み出すことにより行われる。
【0005】
このRAID0は、ブロック単位で書き込みと読み出しが分散的に行われるため、書き込み速度及び読み出し速度が高速に行えるという特徴を有している。しかし、RAID0は、ストリームデータが第1ディスクD1及び第2ディスクD2に分散的に記録されるため、冗長性を持たず、耐障害性及び信頼性が低いという欠点を有している。
【0006】
また、図14に示すように、RAID1は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に、同一のストリームデータを並列型に記録するように構成されている。すなわち、RAID1は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に複数の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nがそれぞれ設けられていて、この2組の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nに並列にデータが記録されるように構成されている。
そして、RAID1におけるデータの読み出し(再生)は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2のいずれか一方からデータを読み出すことにより行われる。
【0007】
このRAID1は、2つの第1ディスクD1及び第2ディスクD2に並列してストリームデータを記録するため、データ保存の二重化で冗長性が図られ信頼性が高まるという特徴を有しているが、記憶容量が二倍になるという欠点を有すると共に、データをシリアルに読み出すため、RAID0に比べ、読み出し速度が遅くなるという欠点を有している。
【0008】
また、図15に示すように、RAID1.5は、前記RAID1と同様、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に、ストリームデータを並列に記録するように構成されている。すなわち、RAID1.5は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に複数の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nがそれぞれ設けられていて、この2組の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nに並列に記録されるように構成されている。そして、RAID1.5におけるデータの読み出し(再生)は、ストリームデータの読み出し(再生)は、前記RAID0と同様に、論理領域(データブロック)毎にディスク媒体を切り替えて読み出すことにより行われる。
【0009】
このRAID1.5は、前記RAID1(ミラーリング)と同様、ストリームデータを2つの第1ディスクD1及び第2ディスクD2に並列に記録するため、ストリームデータ保存の二重化で冗長性が図られて信頼性が高まるという特徴を有している。また、このRAID1.5は、前記RAID0(ストライピング)と同様、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に記録されているストリームデータを、論理領域(データブロック)毎にディスク媒体を切り替えて読み出すため、パイプライン処理が可能になり、読み出し速度の高速化を図ることができるという特徴を有している。
【0010】
また、前記したRAID0,RAID1,RAID1.5以外にも、3個以上のディスク媒体を用いるRAID3,RAID4,RAID5,RAID6の各方式も存在するが、これらは、書き込み・読み出し速度の高速化を図ることができるという特徴を有している反面、システム上のディスク容量が大きくなってコスト高になると共に、障害発生時の復旧に多くの時間を要するという欠点を有している。
【0011】
また、従来は、ディスク媒体の記録・再生方式として、ZCAV(Zone Constant Angular Velocity)方式が多く採用されており、ディスク媒体の角速度を一定に保つため、ディスク媒体の内周側と、外周側とでは、データの転送速度が異なっている。一般的には、外周側と内周側とでは、転送性能におよそ倍の速度差がある。
そこで、同一のストリームデータを、内周側からストリームデータを書き込んだディスク媒体と、外周側からストリームデータを書き込んだディスク媒体とを用い、読み出すストリームデータが外周側に存在するディスク媒体から、所望のストリームデータを読み出すことで、転送性能を向上させた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」、[online]、平成19年1月15日検索,インターネット<URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/RAID>
【特許文献1】特開2002−74847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、一般的なRAID方式を用いた場合、内周−外周の差により、ストリームデータの読み出しを行う際の転送速度にバラツキが生じてしまうという問題がある。
これによって、例えば、ストリームデータ(ビデオデータ)の編集において、ストリームデータを異なるディスク媒体にRAID1やRAID1.5方式を用いて書き込んでおき、編集者が、同時に2つのストリームデータを参照しながら編集を行おうとすると、一方のストリームデータが、ディスク媒体の内周側に記録され、他方のストリームデータが、ディスク媒体の外周側に記録されている場合、外周側に記録されているストリームデータの転送速度に対して、内周側に記録されているストリームデータを読み出すための転送速度が追いつかない場合があり、ストリームデータの再生時に、編集画面上でちらつきが発生し、編集作業に支障をきたすという問題がある。
【0013】
また、転送性能を向上させるため、ストリームデータを、異なるディスク媒体に、それぞれ外周側からと内周側から書き込んだ場合、2つの異なるストリームデータが、共に一方のディスク媒体の外周側に記録されることがある。この場合、編集者が、その2つの異なるストリームデータを編集しようとすると、1つのディスク媒体から同時に2つのストリームデータを読み出せないため、いずれか1つのストリームデータを内周側に記録されているディスク媒体から読み出さなければならない。この場合においても、ディスク媒体の外周側に記録されているストリームデータの転送速度に対して、内周側に記録されているストリームデータを読み出すための転送速度が追いつかない場合があり、前記同様、ストリームデータの再生時に、編集画面上でちらつきが発生し、編集作業に支障をきたすという問題がある。
【0014】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ディスク媒体からストリームデータを読み出して再生する際に、常に、一定以上の転送速度を確保することが可能なディスク媒体記録再生装置、並びに、マルチストリーム読み出しプログラム及びマルチストリーム読み出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のディスク媒体記録再生装置は、第1及び第2ディスク媒体に対して、それぞれ同一のストリームデータを複数記録すると共に、読み出し対象のストリームデータである第1及び第2読み出しデータを、それぞれ前記第1又は第2ディスク媒体の異なるディスク媒体から読み出して再生するディスク媒体記録再生装置であって、書込手段と、判定手段と、読出手段と、切替手段とを備える構成とした。
【0016】
かかる構成において、ディスク媒体記録再生装置は、書込手段によって、第1ディスク媒体の外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスでストリームデータを第1ディスク媒体に書き込むと共に、第2ディスク媒体の内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスでストリームデータを第2ディスク媒体に書き込む。これによって、同一のストリームデータが、一方のディスク媒体には外周側から書き込まれ、他方のディスク媒体には内周側から書き込まれることになる。
【0017】
そして、ディスク媒体記録再生装置は、判定手段によって、第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する。これによって、ストリームデータが、ディスク媒体の外周側に書き込まれているのか、内周側に書き込まれているのかを判定することができる。
【0018】
そして、ディスク媒体記録再生装置は、読出手段によって、判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、第1及び第2読み出しデータを読み出す。このように、外周側からデータを読み出すことで、転送速度を高速化することができる。
【0019】
また、ディスク媒体記録再生装置は、切替手段によって、第1及び第2読み出しデータが、共に第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、読出手段における第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える。これによって、読み出し対象のストリームデータが、共に同一ディスク媒体の外周側に書き込まれている場合であっても、第1ディスク媒体と第2ディスク媒体とを、第1及び第2読み出しデータ毎に切り替えることで、ほぼ均等な転送速度でストリームデータが読み出されることになる。
【0020】
また、請求項2に記載のマルチストリーム読み出しプログラムは、外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すために、コンピュータを、判定手段、読出手段、切替手段として機能させる構成とした。
【0021】
かかる構成において、マルチストリーム読み出しプログラムは、判定手段によって、第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する。そして、マルチストリーム読み出しプログラムは、読出手段によって、判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、第1及び第2読み出しデータを読み出す。また、マルチストリーム読み出しプログラムは、切替手段によって、第1及び第2読み出しデータが、共に第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、読出手段における第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える。
【0022】
さらに、請求項3に記載のマルチストリーム読み出し方法は、外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すマルチストリーム読み出し方法であって、判定ステップと、読出ステップとを含み、読出ステップにおいて、切替手段により、第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替えることを特徴とする。
【0023】
この手順において、マルチストリーム読み出し方法は、判定ステップにおいて、判定手段により、前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する。
【0024】
そして、マルチストリーム読み出し方法は、読出ステップにおいて、読出手段により、前記判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す。
このとき、読出ステップにおいて、切替手段により、第1及び第2読み出しデータが、共に第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、読出手段における第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、第1読み出し(ストリーム)データの論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の外周側で、且つ、第2読み出し(ストリーム)データの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の外周側に位置するときに、ディスク媒体の外周側からストリームデータを読み出すため、高い転送速度を確保することができる。これによって、ビデオデータの編集処理における転送速度の差に伴う編集画面上でのちらつきがなくなり、マルチストリーミング処理を円滑に行うことができる。
【0026】
また、第1読み出しデータの読み出し論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の外周側で、且つ、第2読み出しデータの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の内周側に位置するとき、又は、その第1ストリームデータの読み出し論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の内周側で、且つ、第2ストリームデータの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の外周側に位置するときには、所定の周期毎に第1ディスク媒体と第2ディスク媒体とを切り替えて2つのストリームデータを読み出すので、2つのストリームデータの転送速度は、少なくとも、ディスク媒体の外周端と内周端との中間点付近の一定以上の転送速度が確保される。これによって、ビデオデータの編集処理における転送速度の差に伴う編集画面上でのちらつきがなくなり、マルチストリーミング処理を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[ディスク媒体記録再生装置の機能構成]
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置Sの機能構成図であり、本発明のハード構成のブロック図である後記する図2の中央演算処理装置(CPU)1の機能に注目して図示されている。
【0028】
このディスク媒体記録再生装置Sには、第1ハードディスクドライブHDD1(以下、単に「HDD1」と呼ぶ。)及び第2ハードディスクドライブHDD2(以下、単に「HDD2」と呼ぶ。)の2つのハードディスクドライブが備えられている。これらHDD1,HDD2については、後に詳述するが、HDD1には、第1ディスク媒体に相当するハードディスクD1が設けられていると共に、HDD2には、第2ディスク媒体に相当するハードディスクD2が設けられている。これらハードディスクD1,D2には、CPU1の制御の下、映像、音声等の連続したストリームデータが書き込まれ、また、これらハードディスクD1,D2からは、書き込まれたストリームデータの読み出しが行われるように構成されている。
【0029】
CPU1は、本発明のマルチストリーム読み出し方法に係る第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータの読み出しの制御動作を担うと共に、本発明のディスク媒体記録再生装置に係る書込手段、判定手段、読出手段及び切替手段を担っている。ここでは、CPU1は、書込制御部1aと、論理ブロック割当部1bと、第1読み出しブロック検出部1cと、第2読み出しブロック検出部1dと、第1位置判定部1eと、第2位置判定部1fと、切替制御部1gと、切替部1hとして機能するように構成されている。
【0030】
書込制御部(書込手段)1aは、映像、音声等の連続したビデオデータ等の書き込み用のストリームデータを、論理ブロック割当部1bによって割り当てられたハードディスクD1,D2上に書き込むものである。
【0031】
論理ブロック割当部(書込手段)1bは、ハードディスクD1に対して、第1フォーマット処理により論理ブロックアドレスの割り当てを行うと共に、ハードディスクD2に対して、第2フォーマット処理により論理ブロックアドレスの割り当てを行うものである。
ここで、第1フォーマット処理は、ハードディスクD1の外周側から内周側へ向かって論理ブロックアドレス(logical block address)を昇順に割り当てる処理である。また、第2フォーマット処理は、ハードディスクD2の内周側から外周側へ向かって論理ブロックアドレスを昇順に割り当てる処理である。これら書込制御部1a及び論理ブロック割当部1bは、本発明に係る書込手段を構成している。
【0032】
第1読み出しブロック検出部(読出手段)1cは、後記する第1位置判定部1eから出力される論理ブロックアドレスに対応するストリームデータ(第1読み出しデータ)をハードディスクD1から読み出すものである。
【0033】
第2読み出しブロック検出部(読出手段)1dは、後記する第2位置判定部1fから出力される論理ブロックアドレスに対応するストリームデータ(第2読み出しデータ)をハードディスクD2から読み出すものである。これら第1読み出しブロック検出部1c及び第2読み出しブロック検出部1dは、本発明に係る読出手段を構成している。
【0034】
第1位置判定部(判定手段)1eは、外部から入力された読み出し要求のあったストリームデータ(第1読み出しデータ)の論理ブロックアドレスが、ハードディスクD1のどの場所に位置しているかを判定するものである。この第1位置判定部1eは、論理ブロックアドレスに基づいて、読み出し位置が、ハードディスクD1の外周側であるか内周側であるかを判定し、その判定結果を切替制御部1gに出力する。
【0035】
第2位置判定部(判定手段)1fは、読み出し要求のあったストリームデータ(第2読み出しデータ)の論理ブロックアドレスが、ハードディスクD2のどの場所に位置しているかを判定するものである。この第2位置判定部1fは、論理ブロックアドレスに基づいて、読み出し位置が、ハードディスクD2の外周側であるか内周側であるかを判定し、その判定結果を切替制御部1gに出力する。これら第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fは、本発明に係る判定手段を構成している。
【0036】
切替制御部(切替手段)1gは、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fで判定された論理ブロックアドレスの位置の判定結果に基づいて、ハードディスクD1とハードディスクD2との読み出し元を切り替えるものである。
ここでは、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fで判定された論理ブロックアドレスの位置の判定結果がいずれも外周側である場合、切替制御部1gは、切り替えを行わず、そのまま読み出しを継続する。また、判定結果がいずれも内周側である場合、切替制御部1gは、第1位置判定部1eに対して、第1読み出しブロック検出部1cを介してハードディスクD1から第2読み出しデータを読み出す旨の指示を行い、第2位置判定部1fに対して、第2読み出しブロック検出部1dを介してハードディスクD2から第1読み出しデータを読み出す旨の指示を行う。これによって、ハードディスクD1とハードディスクD2のいずれも外周側のデータを読み出すことになる。
【0037】
なお、論理ブロックアドレスの位置の判定結果が、一方が外周側、他方が内周側である場合、2つのストリームデータは、共に同一のハードディスクD1(又はハードディスクD2)の外周側に記録されていることになる。そこで、この場合、切替制御部1gは、2つのストリームデータを、それぞれ交互に、ハードディスクD1とハードディスクD2とで読み出し元を切り替える。これによって、いずれか一方のストリームデータが内周側のみから読み出されるという状態がなくなるため、2つのストリームデータの転送速度を均一にすることができる。
そして、切替制御部1gは、読み出し元の切り替えを行った場合、切替部1hに対して、ストリームデータの入力元(第1位置判定部1e又は第2位置判定部1f)を切り替える指示を通知する。
【0038】
切替部1hは、切替制御部1gからの切り替え指示に基づいて、ストリームデータの入力元を、第1位置判定部1e又は第2位置判定部1fに切り替えるものである。例えば、切替部1hは、第1ストリームデータ(第1読み出しデータ)を第1位置判定部1eから入力していた段階で、切替制御部1gから切り替えが指示されると、読み出し元を第2位置判定部1fに切り替える。これによって、切替部1hは、転送速度がほぼ均一化された2つのストリームデータを生成して出力することができる。
なお、これら書き込み処理及び読み出し処理については、後にフローチャートを用いて詳述する。
【0039】
[ディスク媒体記録再生装置のハードウェア構成]
次に、図2を参照して、ディスク媒体記録再生装置Sのハードウェア構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置のハードウェア構成を示すブロック図である。このディスク媒体記録再生装置SのCPU1は、前記したように、ディスク媒体記録再生装置Sを統括的に制御し、本発明に係る2つのストリームデータの読み出し制御動作を担うと共に、本発明に係る各手段を担っている。そして、このCPU1は、後記するメモリ4に記憶されているストリームデータの編集処理ができるように構成されている。
【0040】
図2中、2はCPU1が接続されているバスラインであって、このバスライン2には、インターフェース3を介して前記した2つのHDD1,HDD2が接続されている。そして、このバスライン2には、後記するようなシステムプログラムデータ及びワーキングデータを記憶するためのメモリ4と、ディスプレイ、キーボード、マウス等を備えた入出力であるコンソール5と、インターフェース6を介して取り外し可能に接続されるビデオ撮影機等の外部機器からなる外部媒体7とが接続されている。
【0041】
メモリ4には、図3に示されるように、複数の記憶領域4a〜4dが設けられている。このうち記憶領域4aは、所定のストリームデータ(以下、「ストリームデータ」を「ビデオデータ」として説明する。)の編集作業時にビデオデータを一時的に格納するときのビデオデータ編集作業エリアとして用いられる。記憶領域4bには、外部媒体7からのビデオデータをHDD1,HDD2(ハードディスクD1,D2)に記録すると共に、その記録したビデオデータを編集して外部媒体7に書き込むためのビデオデータ編集処理プログラムが格納される。
【0042】
記憶領域4cには、記憶領域4bに格納されている編集処理プログラムから呼び出されてHDD1,HDD2をアクセスするマルチストリーム処理プログラム(マルチストリーム読み出しプログラム)が格納されている。このマルチストリーム処理プログラムには、ハードディスクD1,D2を第1フォーマット処理、第2フォーマット処理する機能と、ビデオデータをハードディスクD1,D2へ書き込むと共に、ハードディスクD1,D2から記憶領域4aのビデオデータ編集作業エリアへビデオデータの読み出しを行う処理機能が含まれている。そして、記憶領域4dには、OS(オペレーティング システムプログラム)、ドライバプログラム等の制御プログラムが格納されている。
【0043】
また、HDD1,HDD2は、周知のHDDと同様に、所定の容積を有する筐体内に、磁気ディスク等からなるハードディスク(D1,D2)と、図示しないが、アクチュエータと、スピンドルモータと、データの読み出し及び書き込みを行うヘッド等からなる機器類が内蔵されている。
【0044】
[ディスク媒体記録再生装置の制御動作]
以下、図4を参照(適宜図1参照)して、ディスク媒体記録再生装置Sの制御動作を説明する。図4は、ビデオデータをハードディスクD1,D2へ書き込む前に行われるハードディスクD1,D2に対する第1フォーマット処理、第2フォーマット処理(第1初期化処理、第2初期化処理)の動作を示すフローチャートの例である。
【0045】
すなわち、図4(a)に示すように、CPU1が、HDD1に対し、ドライブのフォーマッティングパラメータを、ハードディスクD1への論理ブロックアドレスの割り当て方向がハードディスクD1の外周側から内周側に向けて昇順(後記する図6の矢印a参照)となるように設定し(ステップS100)、初期化指令を出す(ステップS102)。そして、HDD1において論理ブロックアドレスの割り当ての初期化処理が実行される(ステップS104)。
【0046】
一方、図4(b)に示すように、CPU1が、HDD2に対し、ハードディスクD2への論理ブロックアドレスの割り当て方向がハードディスクD2の内周側から外周側に向けて昇順(後記する図6の矢印b参照)となるように初期化処理を実行する。なお、図4(b)のステップS100´〜S104´は、論理ブロックアドレスの割り当て方向が異なるだけで、図4(a)で説明した動作と同様である。
【0047】
(書き込み処理動作)
次に、図5を参照(適宜図1参照)して、ビデオデータをハードディスクD1,D2に書き込む書き込み処理について説明する。図5は、ビデオデータを2つのハードディスクに書き込む書き込み処理の動作を示すフローチャートの例である。この書き込み処理においては、インターフェース6を介して外部媒体7から取り込まれたビデオデータが前記した論理ブロックアドレスの割り当てに従ってハードディスクD1,D2に並列的に書き込まれる。
【0048】
すなわち、書込制御部1aが、ハードディスクD1,D2の論理アドレスと、ビデオデータのデータ量とから空きエリアを探索する(ステップS200)。そして、空きエリアがある場合(ステップS202でYes)、書込制御部1aは、HDD1に対し、ハードディスクD1の外周側から内周側に向けてビデオデータの書き込みを指令し(ステップS204)、HDD2に対し、ハードディスクD2の内周側から外周側に向けて同じビデオデータの書き込みを指令する(ステップS206)。そして、全てのビデオデータの書き込み(転送)終了をもって書き込み処理が終了となる(ステップS208でYes)。
【0049】
前記した書き込み処理においては、データの書き込み時に書き込みエラーが発生した領域ではリトライせず、又は、所定の有限回数の書き込みでも書き込まれないときに書き込みを断念し、その書き込もうとしたデータを破棄すると共に、書き込みが失敗した旨の所定のデータを記録して書き込み処理が行われる。これによって、書き込みエラーが発生した場合であっても、書き込み処理が継続されることになる。
【0050】
また、この書き込み処理を継続するためには、前記の他に、書き込みエラー発生時に、書き込もうとしたデータを破棄すると共に書き込みが失敗した旨の所定のデータを記録し、他の領域にデータを書き込んで書き込み処理を継続するようにしてもよい。さらに、この書き込み処理は、後記する読み出し処理と共に、ハードディスクに対して、ファイルのアクセスタイム属性を参照しないこととする。これによって、ビデオデータが書き込まれたハードディスクD1,D2が他のシステムで修復や複製等が行われた場合であっても、当該ディスク媒体記録再生装置Sで、記録再生を行うことができる。
【0051】
(読み出し処理動作:単一ストリームデータ)
次に、図6及び図7を参照(適宜図1参照)して、ハードディスクD1,D2から1つのストリームデータ(単一ストリームデータ)を読み出す読み出し処理について説明する。図6は、単一ストリームデータの読み出し処理の概要を説明するための説明図である。図7は、2つのハードディスクから単一ストリームデータを読み出す読み出し処理のフローチャートの例である。この読み出し処理は、ハードディスクD1,D2に、図6の矢印a,bに示される論理ブロックアドレスの割り当てに従ってビデオデータが書き込まれていることを利用して行われる。
【0052】
すなわち、この読み出し処理は、第1位置判定部1eが、読み出し対象のストリームデータの論理ブロックアドレスの前半に位置するか後半に位置するかを判定する(ステップS300)。なお、論理ブロックアドレスが前半の場合、ストリームデータは、ハードディスクD1の外周側に書き込まれており、論理ブロックアドレスが後半の場合、ストリームデータは、ハードディスクD2の外周側に書き込まれている。
【0053】
そこで、論理ブロックアドレスが前半の場合(ステップS300(前半))、第1位置判定部1eは、読み出し元をHDD1(ハードディスクD1)として選択し(ステップS301)、第1位置判定部1eが、第1読み出しブロック検出部1cを介して、HDD1に対して、指定アドレスから指定量のデータをメモリ4に読み出す指令を出力する(ステップS304)。そして、読み出しが完了するまで、処理が継続される(ステップS306,S308)。
一方、論理ブロックアドレスが後半の場合(ステップS300(後半))、切替制御部1gによって、第1位置判定部1eから第2位置判定部1fに制御が切り替えられる。すなわち、読み出し元としてHDD2(ハードディスクD2)が選択される(ステップS302)。
【0054】
なお、図7のフローチャートでは省略されているが、前記の前半部と後半部の読み取りにおいて、一つの論理ブロックアドレスが中間点(外周端と内周端との中間)を跨っているときは、以下のように処理が行われる。例えば、一つの論理ブロックアドレス(その転送指定量を含む)の一部がハードディスクD1の外周側に近い前半部分側に位置し、その残部がハードディスクD1の内周側に近い後半部分側に位置しているときは、転送量を中間点までとその後の2つに分け、中間点までを識別情報を付して(フラグを立てて)ハードディスクD1から読み取り、残りはその付された識別情報を用いてハードディスクD2から読み出す。なお、この一つの論理ブロックアドレスが中間点を跨るときの読み出しは、後記する図9のフローチャートでも同様に行われる。
【0055】
このように、単一ストリームの読み出しにおいては、各HDD1,HDD2の図示しないヘッドが各ハードディスクD1,D2の外周端と内周端との中間点以上(ハードディスクD1,D2の半径の1/2の位置よりも外側)に位置することができるので、常に、一定以上の転送速度を確保することができる。これによって、ビデオデータの編集処理を円滑に行うことができる。
【0056】
(読み出し処理動作:マルチストリームデータ)
次に、図8及び図9を参照(適宜図1参照)して、2つのストリームデータを読み出すマルチストリーム処理について説明する。図8は、2つのハードディスクから第1ストリームデータ(以下、「ストリーム(1)」として説明する。)及び第2ストリームデータ(以下、「ストリーム(2)」として説明する。)の2つのストリームデータの読み出しを行うマルチストリーム処理を説明するための説明図である。図9は、マルチストリーム処理の動作を示すフローチャートの例である。
【0057】
すなわち、この読み出し処理は、第1位置判定部1eが、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスの位置について、第2位置判定部1fが、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスの位置について、それぞれ、ハードディスクD1又はハードディスクD2の外周側(論理ブロックアドレスが前半)であるか否かを判定する。
そして、切替制御部1gは、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fで判定された論理ブロックアドレスの位置の判定結果に基づいて、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS400(前半)、図8の矢印a参照)、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS401(後半)、図8の矢印b参照)である場合、第1位置判定部1eが、ストリーム(1)の読み出し元をHDD1(ハードディスクD1)として選択し、第2位置判定部1fが、ストリーム(2)の読み出し元をHDD2(ハードディスクD2)として選択する(ステップS404)。
【0058】
一方、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS400(後半))、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS402(前半))である場合、第1位置判定部1eが、ストリーム(2)の読み出し元をHDD1(ハードディスクD1)として選択し、第2位置判定部1fが、ストリーム(1)の読み出し元をHDD2(ハードディスクD2)として選択する(ステップS405)。
【0059】
そして、第1位置判定部1eが、第1読み出しブロック検出部1cを介して、HDD1に対して、指定アドレスから指定量のデータをメモリ4に読み出す指令を出力し、第2位置判定部1fが、第2読み出しブロック検出部1dを介して、HDD2に対して、指定アドレスから指定量のデータをメモリ4に読み出す指令を出力する(ステップS406)。そして、読み出しが完了するまで、処理が継続される(ステップS408,S410)。
【0060】
このマルチストリームの読み出しにおいては、前記した単一ストリームの読み出し処理と同様に、各HDD1,HDD2の図示しないヘッドが各ハードディスクD1,D2の外周端と内周端との中間点よりも外周側(ハードディスクD1,D2の半径の1/2の位置よりも外側)に位置することができるので、常に、一定以上の転送速度を確保することができると共に、2つのHDD1,HDD2は並行して動作できるので、RAID0以上の性能を確保することができる。従って、ビデオデータの編集処理を円滑に行うことができる。
【0061】
なお、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS400(前半))、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS401(前半))である場合、ストリーム(1)及びストリーム(2)が、共にハードディスクD1の外周側(図8の矢印c)、ハードディスクD2の内周側(図8の矢印d)に記録されていることになる。
【0062】
また、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS400(後半))、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS402(後半))である場合、ストリーム(1)及びストリーム(2)が、共にハードディスクD1の内周側(図8の矢印e)、ハードディスクD2の外周側(図8の矢印f)に記録されていることになる。
【0063】
この場合、ストリーム(1)及びストリーム(2)を固定のハードディスクから読み出すと、内周側に記録されているストリームの読み出し時間が遅いため、転送時間に差が生じてしまう。そこで、ストリーム(1)及びストリーム(2)の論理ブロックアドレスが共に前半部、又は、共に後半部に位置しているときは、所定の周期毎に、例えば100ms毎にハードディスクD1,D2を切り替えて読み出しを行う。
以下、マルチストリームの読み出しにおいて、ハードディスクD1,D2を切り替えて読み出しを行う動作について、図10を参照(適宜図1参照)して説明する。図10は、マルチストリーム処理における読み出しの切り替え動作を示すフローチャートの例である。
【0064】
図10に示すように、ディスク媒体記録再生装置Sは、切替制御部1gによって、ハードディスクD1,D2の読み出しを切り替える時間(ドライバ切り替えタイマ)をセットする(ステップS500)。このドライバ切り替えタイマは、例えば、100ms(ミリ秒)とし、ハードウェアの割り込みタイマとする。
【0065】
そして、図10のステップS502〜S508に示すように、通常動作として、一方のストリーム(1)の読み出し元としてHDD1(ハードディスクD1)が選択され、他方のストリーム(2)の読み出し元としてHDD2(ハードディスクD2)が選択されて、図9で説明した動作と同様の動作により、並行してストリームが読み出される。
ここで、ドライバ切り替えタイマによるタイマ割り込みが発生すると、割り込み処理として、ステップS600〜S610の動作が実行される。
【0066】
すなわち、タイマ割り込みが発生すると、切替制御部1gによって、HDD1及びHDD2に対して読み出しの中断指令を出す(ステップS600)。そして、HDD1及びHDD2の読み出しの中断が完了した段階で(ステップS602でYes)、第1読み出しブロック検出部1c及び第2読み出しブロック検出部1dは、中断時のアドレスを、例えば、メモリ4に退避する。そして、切替制御部1gは、ストリーム(1)及びストリーム(2)の残りの読み出し量(指定残量)を計算する(ステップS604)。
【0067】
ここで、指定残量がまだ存在する場合(ステップS606でYes)、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fが、現在選択されている読み出し元のHDDを、他方のHDDに選択しなおす(ステップS608)。そして、第1読み出しブロック検出部1c及び第2読み出しブロック検出部1dが、ステップS604で退避したアドレスを、切り替えて設定(再セット)する(ステップS610)。その後、ディスク媒体記録再生装置Sは、ステップS504以降の動作を実行する。
一方、ステップS606において、指定残量が存在しない場合(ステップS606でNo)、ディスク媒体記録再生装置Sは、ステップS510に遷移し、タイマ(ドライバ切り替えタイマ)をオフにして動作を終了する。
【0068】
これによって、ストリーム(1)及びストリーム(2)の論理ブロックアドレスが共に前半部、又は、共に後半部に位置しているときに、読み出し元のHDDを周期的に切り替えることで、ハードディスクの内周側に偏ることなくビデオデータを読み取ることが可能となる。従って、ハードディスクの外周端と内周端との中間点(ハードディスクD1,D2の半径の1/2の位置)付近の転送速度を確保することが可能となる。このため、ビデオデータの編集処理を円滑に行うことができる。
【0069】
ここで、図11及び図12を参照して、マルチストリーム処理における2つのHDDの切り替えタイミングについて説明する。図11は、マルチストリーム処理において、2つのハードディスクから切り替えてストリームを読み出す際のタイムチャートの例である。図12は、ハードディスクからストリームを読み出す際の転送時間を説明するための説明図である。なお、図11では、横軸に時間、縦軸に各ストリームの転送量を示している。
【0070】
図11に示すように、ストリーム(1)をハードディスクD1の外周側から読み出し、ストリーム(2)をハードディスクD2の内周側から読み出すと、ストリーム(1)の転送量(HDD1転送量)が、ストリーム(2)の転送量(HDD1転送量)よりも多くなる。また、ストリーム(1)をハードディスクD1の内周側から読み出し、ストリーム(2)をハードディスクD2の外周側から読み出すと、ストリーム(1)の転送量(HDD1転送量)よりも、ストリーム(2)の転送量(HDD1転送量)の方が多くなる。
【0071】
そこで、読み出すHDDを切り替えることで、ストリーム(1)及びストリーム(2)の転送性能を平均化することができる。
この場合、2つのHDD1,HDD2を切り替えて読み出すときは、図12に示したように、シーク時間(T1)と回転待ち時間(T2)に伴う待ち時間(L)の損失が生じる。この損失を考慮したストリーム(1),(2)の平均転送性能は、以下の式によって求められる。
【0072】
ストリーム(1),(2)の平均転送性能=(HDD1の前半転送量+HDD2の後半転送量)/(ドライブ切替周期+シーク時間)≒HDD1,HDD2の中間転送量*2/(ドライブ切替周期+シーク時間)
【0073】
従って、例えば、データ転送時間(T0)が100msで待ち時間(ドライブ切替周期+シーク時間(=L))が10msであれば、10%減のハードディスクの中間点付近の転送速度を維持することができる。このように、ハードディスクの中間点付近の転送速度を維持することができるので、実用上何ら問題がない。
【0074】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更可能である。例えば、ハードディスクの代わりにフレキシブルディスクを用いることができ、あるいは光ディスクを用いることもできる。また、ストリームデータをビデオデータとしたが、音声だけのデータ等、他の種類のストリームデータとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置の機能構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置のメモリに格納されるプログラムデータの構成図である。
【図4】ディスクの初期化処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図5】ディスクへのストリームデータの書き込み処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図6】ディスクからストリームデータを読み出す読み出し処理の概要を説明するための説明図である。
【図7】単一ストリームの読み出し処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図8】マルチストリーム処理について説明するための説明図である。
【図9】マルチストリームの読み出し処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図10】マルチストリーム処理における読み出しの切り替え動作を示すフローチャートの例である。
【図11】マルチストリーム処理において、2つのハードディスクから切り替えてストリームを読み出す際のタイムチャートの例である。
【図12】ハードディスクからストリームを読み出す際の転送時間を説明するための説明図である。
【図13】従来のRAID0の手法を説明するための説明図である。
【図14】従来のRAID1の手法を説明するための説明図である。
【図15】従来のRAID1.5の手法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0076】
S ディスク媒体記録再生装置
HDD1 第1ハードディスクドライブ
HDD2 第2ハードディスクドライブ
D1 ハードディスク
D2 ハードディスク
1 中央演算処理装置(CPU)
1a 書込制御部
1b 論理ブロック割当部
1c 第1読み出しブロック検出部(読出手段)
1d 第2読み出しブロック検出部(読出手段)
1e 第1位置判定部(判定手段)
1f 第2位置判定部(判定手段)
1g 切替制御部(切替手段)
1h 切替部
2 バスライン
3 インターフェース
4 メモリ
4a〜4d 記憶領域
5 コンソール
6 インターフェース
7 外部媒体
【技術分野】
【0001】
本発明は、映像、音声等の連続したストリームデータを異なるディスク媒体に対して記録・再生するディスク媒体記録再生装置、並びに、異なるディスク媒体からストリームデータを読み出すマルチストリーム読み出しプログラム及びマルチストリーム読み出し方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、映像、音声等の連続したストリームデータ(ビデオデータ等)の編集処理では、異なるディスク媒体に記録されているストリームデータを再生し、映像等の内容を確認しながらシーンの切り張りを行う、いわゆるマルチストリーミング処理が一般的に行われている。また、複数のディスク媒体でストリームデータを記録・再生するディスク媒体記録再生装置としては、RAID(Redundant Arrays of Inexpensive Disks)の手法を用いた装置が知られている(非特許文献1参照)。
【0003】
ここで、図13〜図15を参照して、従来のRAID(RAID0、RAID1、RAID1.5)手法を用いたディスク媒体へのデータの書き込み(記録)手法、並びに、ディスク媒体からの読み出し(再生)手法について、その概要を説明する。図13は、「ストライピング」と呼ばれるRAID0の記録・再生の手法を説明するための説明図である。図14は、「ミラーリング」と呼ばれるRAID1の記録・再生の手法を説明するための説明図である。図15は、RAID0とRAID1とを統合したRAID1.5の手法を説明するための説明図である。
【0004】
図13に示すように、RAID0は、映像、音声等のストリームデータを記録するための一方のディスク媒体である第1ディスクD1及び他方のディスク媒体である第2ディスクD2には、ストリームデータが分散的に記録されるように構成されている。すなわち、RAID0は、第1ディスクD1に複数の論理領域(データブロック)A−1,A−3,A−5,…,A−n−1が設けられると共に、第2ディスクD2に複数の論理領域A−2,A−4,A−6,…,A−nが設けられている。
そして、RAID0におけるデータの書き込み(記録)は、ストリームデータを、これら論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nに分散して書き込むことにより行われる。また、RAID0におけるデータの読み出し(再生)は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に記録されているストリームデータを、論理領域(データブロック)毎にディスク媒体を切り替えて読み出すことにより行われる。
【0005】
このRAID0は、ブロック単位で書き込みと読み出しが分散的に行われるため、書き込み速度及び読み出し速度が高速に行えるという特徴を有している。しかし、RAID0は、ストリームデータが第1ディスクD1及び第2ディスクD2に分散的に記録されるため、冗長性を持たず、耐障害性及び信頼性が低いという欠点を有している。
【0006】
また、図14に示すように、RAID1は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に、同一のストリームデータを並列型に記録するように構成されている。すなわち、RAID1は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に複数の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nがそれぞれ設けられていて、この2組の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nに並列にデータが記録されるように構成されている。
そして、RAID1におけるデータの読み出し(再生)は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2のいずれか一方からデータを読み出すことにより行われる。
【0007】
このRAID1は、2つの第1ディスクD1及び第2ディスクD2に並列してストリームデータを記録するため、データ保存の二重化で冗長性が図られ信頼性が高まるという特徴を有しているが、記憶容量が二倍になるという欠点を有すると共に、データをシリアルに読み出すため、RAID0に比べ、読み出し速度が遅くなるという欠点を有している。
【0008】
また、図15に示すように、RAID1.5は、前記RAID1と同様、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に、ストリームデータを並列に記録するように構成されている。すなわち、RAID1.5は、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に複数の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nがそれぞれ設けられていて、この2組の論理領域A−1,A−2,A−3,…,A−nに並列に記録されるように構成されている。そして、RAID1.5におけるデータの読み出し(再生)は、ストリームデータの読み出し(再生)は、前記RAID0と同様に、論理領域(データブロック)毎にディスク媒体を切り替えて読み出すことにより行われる。
【0009】
このRAID1.5は、前記RAID1(ミラーリング)と同様、ストリームデータを2つの第1ディスクD1及び第2ディスクD2に並列に記録するため、ストリームデータ保存の二重化で冗長性が図られて信頼性が高まるという特徴を有している。また、このRAID1.5は、前記RAID0(ストライピング)と同様、第1ディスクD1及び第2ディスクD2に記録されているストリームデータを、論理領域(データブロック)毎にディスク媒体を切り替えて読み出すため、パイプライン処理が可能になり、読み出し速度の高速化を図ることができるという特徴を有している。
【0010】
また、前記したRAID0,RAID1,RAID1.5以外にも、3個以上のディスク媒体を用いるRAID3,RAID4,RAID5,RAID6の各方式も存在するが、これらは、書き込み・読み出し速度の高速化を図ることができるという特徴を有している反面、システム上のディスク容量が大きくなってコスト高になると共に、障害発生時の復旧に多くの時間を要するという欠点を有している。
【0011】
また、従来は、ディスク媒体の記録・再生方式として、ZCAV(Zone Constant Angular Velocity)方式が多く採用されており、ディスク媒体の角速度を一定に保つため、ディスク媒体の内周側と、外周側とでは、データの転送速度が異なっている。一般的には、外周側と内周側とでは、転送性能におよそ倍の速度差がある。
そこで、同一のストリームデータを、内周側からストリームデータを書き込んだディスク媒体と、外周側からストリームデータを書き込んだディスク媒体とを用い、読み出すストリームデータが外周側に存在するディスク媒体から、所望のストリームデータを読み出すことで、転送性能を向上させた技術が開示されている(例えば、特許文献1参照)。
【非特許文献1】フリー百科事典「ウィキペディア(Wikipedia)」、[online]、平成19年1月15日検索,インターネット<URL: http://ja.wikipedia.org/wiki/RAID>
【特許文献1】特開2002−74847号公報
【発明の開示】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
しかし、一般的なRAID方式を用いた場合、内周−外周の差により、ストリームデータの読み出しを行う際の転送速度にバラツキが生じてしまうという問題がある。
これによって、例えば、ストリームデータ(ビデオデータ)の編集において、ストリームデータを異なるディスク媒体にRAID1やRAID1.5方式を用いて書き込んでおき、編集者が、同時に2つのストリームデータを参照しながら編集を行おうとすると、一方のストリームデータが、ディスク媒体の内周側に記録され、他方のストリームデータが、ディスク媒体の外周側に記録されている場合、外周側に記録されているストリームデータの転送速度に対して、内周側に記録されているストリームデータを読み出すための転送速度が追いつかない場合があり、ストリームデータの再生時に、編集画面上でちらつきが発生し、編集作業に支障をきたすという問題がある。
【0013】
また、転送性能を向上させるため、ストリームデータを、異なるディスク媒体に、それぞれ外周側からと内周側から書き込んだ場合、2つの異なるストリームデータが、共に一方のディスク媒体の外周側に記録されることがある。この場合、編集者が、その2つの異なるストリームデータを編集しようとすると、1つのディスク媒体から同時に2つのストリームデータを読み出せないため、いずれか1つのストリームデータを内周側に記録されているディスク媒体から読み出さなければならない。この場合においても、ディスク媒体の外周側に記録されているストリームデータの転送速度に対して、内周側に記録されているストリームデータを読み出すための転送速度が追いつかない場合があり、前記同様、ストリームデータの再生時に、編集画面上でちらつきが発生し、編集作業に支障をきたすという問題がある。
【0014】
本発明は、以上のような問題点に鑑みてなされたものであり、ディスク媒体からストリームデータを読み出して再生する際に、常に、一定以上の転送速度を確保することが可能なディスク媒体記録再生装置、並びに、マルチストリーム読み出しプログラム及びマルチストリーム読み出し方法を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0015】
本発明は、前記目的を達成するために創案されたものであり、まず、請求項1に記載のディスク媒体記録再生装置は、第1及び第2ディスク媒体に対して、それぞれ同一のストリームデータを複数記録すると共に、読み出し対象のストリームデータである第1及び第2読み出しデータを、それぞれ前記第1又は第2ディスク媒体の異なるディスク媒体から読み出して再生するディスク媒体記録再生装置であって、書込手段と、判定手段と、読出手段と、切替手段とを備える構成とした。
【0016】
かかる構成において、ディスク媒体記録再生装置は、書込手段によって、第1ディスク媒体の外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスでストリームデータを第1ディスク媒体に書き込むと共に、第2ディスク媒体の内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスでストリームデータを第2ディスク媒体に書き込む。これによって、同一のストリームデータが、一方のディスク媒体には外周側から書き込まれ、他方のディスク媒体には内周側から書き込まれることになる。
【0017】
そして、ディスク媒体記録再生装置は、判定手段によって、第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する。これによって、ストリームデータが、ディスク媒体の外周側に書き込まれているのか、内周側に書き込まれているのかを判定することができる。
【0018】
そして、ディスク媒体記録再生装置は、読出手段によって、判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、第1及び第2読み出しデータを読み出す。このように、外周側からデータを読み出すことで、転送速度を高速化することができる。
【0019】
また、ディスク媒体記録再生装置は、切替手段によって、第1及び第2読み出しデータが、共に第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、読出手段における第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える。これによって、読み出し対象のストリームデータが、共に同一ディスク媒体の外周側に書き込まれている場合であっても、第1ディスク媒体と第2ディスク媒体とを、第1及び第2読み出しデータ毎に切り替えることで、ほぼ均等な転送速度でストリームデータが読み出されることになる。
【0020】
また、請求項2に記載のマルチストリーム読み出しプログラムは、外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すために、コンピュータを、判定手段、読出手段、切替手段として機能させる構成とした。
【0021】
かかる構成において、マルチストリーム読み出しプログラムは、判定手段によって、第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する。そして、マルチストリーム読み出しプログラムは、読出手段によって、判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、第1及び第2読み出しデータを読み出す。また、マルチストリーム読み出しプログラムは、切替手段によって、第1及び第2読み出しデータが、共に第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、読出手段における第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える。
【0022】
さらに、請求項3に記載のマルチストリーム読み出し方法は、外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すマルチストリーム読み出し方法であって、判定ステップと、読出ステップとを含み、読出ステップにおいて、切替手段により、第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替えることを特徴とする。
【0023】
この手順において、マルチストリーム読み出し方法は、判定ステップにおいて、判定手段により、前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する。
【0024】
そして、マルチストリーム読み出し方法は、読出ステップにおいて、読出手段により、前記判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す。
このとき、読出ステップにおいて、切替手段により、第1及び第2読み出しデータが、共に第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、読出手段における第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える。
【発明の効果】
【0025】
本発明は、以下に示す優れた効果を奏するものである。
本発明によれば、第1読み出し(ストリーム)データの論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の外周側で、且つ、第2読み出し(ストリーム)データの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の外周側に位置するときに、ディスク媒体の外周側からストリームデータを読み出すため、高い転送速度を確保することができる。これによって、ビデオデータの編集処理における転送速度の差に伴う編集画面上でのちらつきがなくなり、マルチストリーミング処理を円滑に行うことができる。
【0026】
また、第1読み出しデータの読み出し論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の外周側で、且つ、第2読み出しデータの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の内周側に位置するとき、又は、その第1ストリームデータの読み出し論理ブロックアドレスが第1ディスク媒体の内周側で、且つ、第2ストリームデータの論理ブロックアドレスが第2ディスク媒体の外周側に位置するときには、所定の周期毎に第1ディスク媒体と第2ディスク媒体とを切り替えて2つのストリームデータを読み出すので、2つのストリームデータの転送速度は、少なくとも、ディスク媒体の外周端と内周端との中間点付近の一定以上の転送速度が確保される。これによって、ビデオデータの編集処理における転送速度の差に伴う編集画面上でのちらつきがなくなり、マルチストリーミング処理を円滑に行うことができる。
【発明を実施するための最良の形態】
【0027】
[ディスク媒体記録再生装置の機能構成]
以下、本発明を実施するための最良の形態を、図面を用いて説明する。図1は本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置Sの機能構成図であり、本発明のハード構成のブロック図である後記する図2の中央演算処理装置(CPU)1の機能に注目して図示されている。
【0028】
このディスク媒体記録再生装置Sには、第1ハードディスクドライブHDD1(以下、単に「HDD1」と呼ぶ。)及び第2ハードディスクドライブHDD2(以下、単に「HDD2」と呼ぶ。)の2つのハードディスクドライブが備えられている。これらHDD1,HDD2については、後に詳述するが、HDD1には、第1ディスク媒体に相当するハードディスクD1が設けられていると共に、HDD2には、第2ディスク媒体に相当するハードディスクD2が設けられている。これらハードディスクD1,D2には、CPU1の制御の下、映像、音声等の連続したストリームデータが書き込まれ、また、これらハードディスクD1,D2からは、書き込まれたストリームデータの読み出しが行われるように構成されている。
【0029】
CPU1は、本発明のマルチストリーム読み出し方法に係る第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータの読み出しの制御動作を担うと共に、本発明のディスク媒体記録再生装置に係る書込手段、判定手段、読出手段及び切替手段を担っている。ここでは、CPU1は、書込制御部1aと、論理ブロック割当部1bと、第1読み出しブロック検出部1cと、第2読み出しブロック検出部1dと、第1位置判定部1eと、第2位置判定部1fと、切替制御部1gと、切替部1hとして機能するように構成されている。
【0030】
書込制御部(書込手段)1aは、映像、音声等の連続したビデオデータ等の書き込み用のストリームデータを、論理ブロック割当部1bによって割り当てられたハードディスクD1,D2上に書き込むものである。
【0031】
論理ブロック割当部(書込手段)1bは、ハードディスクD1に対して、第1フォーマット処理により論理ブロックアドレスの割り当てを行うと共に、ハードディスクD2に対して、第2フォーマット処理により論理ブロックアドレスの割り当てを行うものである。
ここで、第1フォーマット処理は、ハードディスクD1の外周側から内周側へ向かって論理ブロックアドレス(logical block address)を昇順に割り当てる処理である。また、第2フォーマット処理は、ハードディスクD2の内周側から外周側へ向かって論理ブロックアドレスを昇順に割り当てる処理である。これら書込制御部1a及び論理ブロック割当部1bは、本発明に係る書込手段を構成している。
【0032】
第1読み出しブロック検出部(読出手段)1cは、後記する第1位置判定部1eから出力される論理ブロックアドレスに対応するストリームデータ(第1読み出しデータ)をハードディスクD1から読み出すものである。
【0033】
第2読み出しブロック検出部(読出手段)1dは、後記する第2位置判定部1fから出力される論理ブロックアドレスに対応するストリームデータ(第2読み出しデータ)をハードディスクD2から読み出すものである。これら第1読み出しブロック検出部1c及び第2読み出しブロック検出部1dは、本発明に係る読出手段を構成している。
【0034】
第1位置判定部(判定手段)1eは、外部から入力された読み出し要求のあったストリームデータ(第1読み出しデータ)の論理ブロックアドレスが、ハードディスクD1のどの場所に位置しているかを判定するものである。この第1位置判定部1eは、論理ブロックアドレスに基づいて、読み出し位置が、ハードディスクD1の外周側であるか内周側であるかを判定し、その判定結果を切替制御部1gに出力する。
【0035】
第2位置判定部(判定手段)1fは、読み出し要求のあったストリームデータ(第2読み出しデータ)の論理ブロックアドレスが、ハードディスクD2のどの場所に位置しているかを判定するものである。この第2位置判定部1fは、論理ブロックアドレスに基づいて、読み出し位置が、ハードディスクD2の外周側であるか内周側であるかを判定し、その判定結果を切替制御部1gに出力する。これら第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fは、本発明に係る判定手段を構成している。
【0036】
切替制御部(切替手段)1gは、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fで判定された論理ブロックアドレスの位置の判定結果に基づいて、ハードディスクD1とハードディスクD2との読み出し元を切り替えるものである。
ここでは、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fで判定された論理ブロックアドレスの位置の判定結果がいずれも外周側である場合、切替制御部1gは、切り替えを行わず、そのまま読み出しを継続する。また、判定結果がいずれも内周側である場合、切替制御部1gは、第1位置判定部1eに対して、第1読み出しブロック検出部1cを介してハードディスクD1から第2読み出しデータを読み出す旨の指示を行い、第2位置判定部1fに対して、第2読み出しブロック検出部1dを介してハードディスクD2から第1読み出しデータを読み出す旨の指示を行う。これによって、ハードディスクD1とハードディスクD2のいずれも外周側のデータを読み出すことになる。
【0037】
なお、論理ブロックアドレスの位置の判定結果が、一方が外周側、他方が内周側である場合、2つのストリームデータは、共に同一のハードディスクD1(又はハードディスクD2)の外周側に記録されていることになる。そこで、この場合、切替制御部1gは、2つのストリームデータを、それぞれ交互に、ハードディスクD1とハードディスクD2とで読み出し元を切り替える。これによって、いずれか一方のストリームデータが内周側のみから読み出されるという状態がなくなるため、2つのストリームデータの転送速度を均一にすることができる。
そして、切替制御部1gは、読み出し元の切り替えを行った場合、切替部1hに対して、ストリームデータの入力元(第1位置判定部1e又は第2位置判定部1f)を切り替える指示を通知する。
【0038】
切替部1hは、切替制御部1gからの切り替え指示に基づいて、ストリームデータの入力元を、第1位置判定部1e又は第2位置判定部1fに切り替えるものである。例えば、切替部1hは、第1ストリームデータ(第1読み出しデータ)を第1位置判定部1eから入力していた段階で、切替制御部1gから切り替えが指示されると、読み出し元を第2位置判定部1fに切り替える。これによって、切替部1hは、転送速度がほぼ均一化された2つのストリームデータを生成して出力することができる。
なお、これら書き込み処理及び読み出し処理については、後にフローチャートを用いて詳述する。
【0039】
[ディスク媒体記録再生装置のハードウェア構成]
次に、図2を参照して、ディスク媒体記録再生装置Sのハードウェア構成について説明する。図2は、本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置のハードウェア構成を示すブロック図である。このディスク媒体記録再生装置SのCPU1は、前記したように、ディスク媒体記録再生装置Sを統括的に制御し、本発明に係る2つのストリームデータの読み出し制御動作を担うと共に、本発明に係る各手段を担っている。そして、このCPU1は、後記するメモリ4に記憶されているストリームデータの編集処理ができるように構成されている。
【0040】
図2中、2はCPU1が接続されているバスラインであって、このバスライン2には、インターフェース3を介して前記した2つのHDD1,HDD2が接続されている。そして、このバスライン2には、後記するようなシステムプログラムデータ及びワーキングデータを記憶するためのメモリ4と、ディスプレイ、キーボード、マウス等を備えた入出力であるコンソール5と、インターフェース6を介して取り外し可能に接続されるビデオ撮影機等の外部機器からなる外部媒体7とが接続されている。
【0041】
メモリ4には、図3に示されるように、複数の記憶領域4a〜4dが設けられている。このうち記憶領域4aは、所定のストリームデータ(以下、「ストリームデータ」を「ビデオデータ」として説明する。)の編集作業時にビデオデータを一時的に格納するときのビデオデータ編集作業エリアとして用いられる。記憶領域4bには、外部媒体7からのビデオデータをHDD1,HDD2(ハードディスクD1,D2)に記録すると共に、その記録したビデオデータを編集して外部媒体7に書き込むためのビデオデータ編集処理プログラムが格納される。
【0042】
記憶領域4cには、記憶領域4bに格納されている編集処理プログラムから呼び出されてHDD1,HDD2をアクセスするマルチストリーム処理プログラム(マルチストリーム読み出しプログラム)が格納されている。このマルチストリーム処理プログラムには、ハードディスクD1,D2を第1フォーマット処理、第2フォーマット処理する機能と、ビデオデータをハードディスクD1,D2へ書き込むと共に、ハードディスクD1,D2から記憶領域4aのビデオデータ編集作業エリアへビデオデータの読み出しを行う処理機能が含まれている。そして、記憶領域4dには、OS(オペレーティング システムプログラム)、ドライバプログラム等の制御プログラムが格納されている。
【0043】
また、HDD1,HDD2は、周知のHDDと同様に、所定の容積を有する筐体内に、磁気ディスク等からなるハードディスク(D1,D2)と、図示しないが、アクチュエータと、スピンドルモータと、データの読み出し及び書き込みを行うヘッド等からなる機器類が内蔵されている。
【0044】
[ディスク媒体記録再生装置の制御動作]
以下、図4を参照(適宜図1参照)して、ディスク媒体記録再生装置Sの制御動作を説明する。図4は、ビデオデータをハードディスクD1,D2へ書き込む前に行われるハードディスクD1,D2に対する第1フォーマット処理、第2フォーマット処理(第1初期化処理、第2初期化処理)の動作を示すフローチャートの例である。
【0045】
すなわち、図4(a)に示すように、CPU1が、HDD1に対し、ドライブのフォーマッティングパラメータを、ハードディスクD1への論理ブロックアドレスの割り当て方向がハードディスクD1の外周側から内周側に向けて昇順(後記する図6の矢印a参照)となるように設定し(ステップS100)、初期化指令を出す(ステップS102)。そして、HDD1において論理ブロックアドレスの割り当ての初期化処理が実行される(ステップS104)。
【0046】
一方、図4(b)に示すように、CPU1が、HDD2に対し、ハードディスクD2への論理ブロックアドレスの割り当て方向がハードディスクD2の内周側から外周側に向けて昇順(後記する図6の矢印b参照)となるように初期化処理を実行する。なお、図4(b)のステップS100´〜S104´は、論理ブロックアドレスの割り当て方向が異なるだけで、図4(a)で説明した動作と同様である。
【0047】
(書き込み処理動作)
次に、図5を参照(適宜図1参照)して、ビデオデータをハードディスクD1,D2に書き込む書き込み処理について説明する。図5は、ビデオデータを2つのハードディスクに書き込む書き込み処理の動作を示すフローチャートの例である。この書き込み処理においては、インターフェース6を介して外部媒体7から取り込まれたビデオデータが前記した論理ブロックアドレスの割り当てに従ってハードディスクD1,D2に並列的に書き込まれる。
【0048】
すなわち、書込制御部1aが、ハードディスクD1,D2の論理アドレスと、ビデオデータのデータ量とから空きエリアを探索する(ステップS200)。そして、空きエリアがある場合(ステップS202でYes)、書込制御部1aは、HDD1に対し、ハードディスクD1の外周側から内周側に向けてビデオデータの書き込みを指令し(ステップS204)、HDD2に対し、ハードディスクD2の内周側から外周側に向けて同じビデオデータの書き込みを指令する(ステップS206)。そして、全てのビデオデータの書き込み(転送)終了をもって書き込み処理が終了となる(ステップS208でYes)。
【0049】
前記した書き込み処理においては、データの書き込み時に書き込みエラーが発生した領域ではリトライせず、又は、所定の有限回数の書き込みでも書き込まれないときに書き込みを断念し、その書き込もうとしたデータを破棄すると共に、書き込みが失敗した旨の所定のデータを記録して書き込み処理が行われる。これによって、書き込みエラーが発生した場合であっても、書き込み処理が継続されることになる。
【0050】
また、この書き込み処理を継続するためには、前記の他に、書き込みエラー発生時に、書き込もうとしたデータを破棄すると共に書き込みが失敗した旨の所定のデータを記録し、他の領域にデータを書き込んで書き込み処理を継続するようにしてもよい。さらに、この書き込み処理は、後記する読み出し処理と共に、ハードディスクに対して、ファイルのアクセスタイム属性を参照しないこととする。これによって、ビデオデータが書き込まれたハードディスクD1,D2が他のシステムで修復や複製等が行われた場合であっても、当該ディスク媒体記録再生装置Sで、記録再生を行うことができる。
【0051】
(読み出し処理動作:単一ストリームデータ)
次に、図6及び図7を参照(適宜図1参照)して、ハードディスクD1,D2から1つのストリームデータ(単一ストリームデータ)を読み出す読み出し処理について説明する。図6は、単一ストリームデータの読み出し処理の概要を説明するための説明図である。図7は、2つのハードディスクから単一ストリームデータを読み出す読み出し処理のフローチャートの例である。この読み出し処理は、ハードディスクD1,D2に、図6の矢印a,bに示される論理ブロックアドレスの割り当てに従ってビデオデータが書き込まれていることを利用して行われる。
【0052】
すなわち、この読み出し処理は、第1位置判定部1eが、読み出し対象のストリームデータの論理ブロックアドレスの前半に位置するか後半に位置するかを判定する(ステップS300)。なお、論理ブロックアドレスが前半の場合、ストリームデータは、ハードディスクD1の外周側に書き込まれており、論理ブロックアドレスが後半の場合、ストリームデータは、ハードディスクD2の外周側に書き込まれている。
【0053】
そこで、論理ブロックアドレスが前半の場合(ステップS300(前半))、第1位置判定部1eは、読み出し元をHDD1(ハードディスクD1)として選択し(ステップS301)、第1位置判定部1eが、第1読み出しブロック検出部1cを介して、HDD1に対して、指定アドレスから指定量のデータをメモリ4に読み出す指令を出力する(ステップS304)。そして、読み出しが完了するまで、処理が継続される(ステップS306,S308)。
一方、論理ブロックアドレスが後半の場合(ステップS300(後半))、切替制御部1gによって、第1位置判定部1eから第2位置判定部1fに制御が切り替えられる。すなわち、読み出し元としてHDD2(ハードディスクD2)が選択される(ステップS302)。
【0054】
なお、図7のフローチャートでは省略されているが、前記の前半部と後半部の読み取りにおいて、一つの論理ブロックアドレスが中間点(外周端と内周端との中間)を跨っているときは、以下のように処理が行われる。例えば、一つの論理ブロックアドレス(その転送指定量を含む)の一部がハードディスクD1の外周側に近い前半部分側に位置し、その残部がハードディスクD1の内周側に近い後半部分側に位置しているときは、転送量を中間点までとその後の2つに分け、中間点までを識別情報を付して(フラグを立てて)ハードディスクD1から読み取り、残りはその付された識別情報を用いてハードディスクD2から読み出す。なお、この一つの論理ブロックアドレスが中間点を跨るときの読み出しは、後記する図9のフローチャートでも同様に行われる。
【0055】
このように、単一ストリームの読み出しにおいては、各HDD1,HDD2の図示しないヘッドが各ハードディスクD1,D2の外周端と内周端との中間点以上(ハードディスクD1,D2の半径の1/2の位置よりも外側)に位置することができるので、常に、一定以上の転送速度を確保することができる。これによって、ビデオデータの編集処理を円滑に行うことができる。
【0056】
(読み出し処理動作:マルチストリームデータ)
次に、図8及び図9を参照(適宜図1参照)して、2つのストリームデータを読み出すマルチストリーム処理について説明する。図8は、2つのハードディスクから第1ストリームデータ(以下、「ストリーム(1)」として説明する。)及び第2ストリームデータ(以下、「ストリーム(2)」として説明する。)の2つのストリームデータの読み出しを行うマルチストリーム処理を説明するための説明図である。図9は、マルチストリーム処理の動作を示すフローチャートの例である。
【0057】
すなわち、この読み出し処理は、第1位置判定部1eが、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスの位置について、第2位置判定部1fが、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスの位置について、それぞれ、ハードディスクD1又はハードディスクD2の外周側(論理ブロックアドレスが前半)であるか否かを判定する。
そして、切替制御部1gは、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fで判定された論理ブロックアドレスの位置の判定結果に基づいて、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS400(前半)、図8の矢印a参照)、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS401(後半)、図8の矢印b参照)である場合、第1位置判定部1eが、ストリーム(1)の読み出し元をHDD1(ハードディスクD1)として選択し、第2位置判定部1fが、ストリーム(2)の読み出し元をHDD2(ハードディスクD2)として選択する(ステップS404)。
【0058】
一方、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS400(後半))、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS402(前半))である場合、第1位置判定部1eが、ストリーム(2)の読み出し元をHDD1(ハードディスクD1)として選択し、第2位置判定部1fが、ストリーム(1)の読み出し元をHDD2(ハードディスクD2)として選択する(ステップS405)。
【0059】
そして、第1位置判定部1eが、第1読み出しブロック検出部1cを介して、HDD1に対して、指定アドレスから指定量のデータをメモリ4に読み出す指令を出力し、第2位置判定部1fが、第2読み出しブロック検出部1dを介して、HDD2に対して、指定アドレスから指定量のデータをメモリ4に読み出す指令を出力する(ステップS406)。そして、読み出しが完了するまで、処理が継続される(ステップS408,S410)。
【0060】
このマルチストリームの読み出しにおいては、前記した単一ストリームの読み出し処理と同様に、各HDD1,HDD2の図示しないヘッドが各ハードディスクD1,D2の外周端と内周端との中間点よりも外周側(ハードディスクD1,D2の半径の1/2の位置よりも外側)に位置することができるので、常に、一定以上の転送速度を確保することができると共に、2つのHDD1,HDD2は並行して動作できるので、RAID0以上の性能を確保することができる。従って、ビデオデータの編集処理を円滑に行うことができる。
【0061】
なお、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS400(前半))、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが前半(ステップS401(前半))である場合、ストリーム(1)及びストリーム(2)が、共にハードディスクD1の外周側(図8の矢印c)、ハードディスクD2の内周側(図8の矢印d)に記録されていることになる。
【0062】
また、ストリーム(1)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS400(後半))、ストリーム(2)の論理ブロックアドレスが後半(ステップS402(後半))である場合、ストリーム(1)及びストリーム(2)が、共にハードディスクD1の内周側(図8の矢印e)、ハードディスクD2の外周側(図8の矢印f)に記録されていることになる。
【0063】
この場合、ストリーム(1)及びストリーム(2)を固定のハードディスクから読み出すと、内周側に記録されているストリームの読み出し時間が遅いため、転送時間に差が生じてしまう。そこで、ストリーム(1)及びストリーム(2)の論理ブロックアドレスが共に前半部、又は、共に後半部に位置しているときは、所定の周期毎に、例えば100ms毎にハードディスクD1,D2を切り替えて読み出しを行う。
以下、マルチストリームの読み出しにおいて、ハードディスクD1,D2を切り替えて読み出しを行う動作について、図10を参照(適宜図1参照)して説明する。図10は、マルチストリーム処理における読み出しの切り替え動作を示すフローチャートの例である。
【0064】
図10に示すように、ディスク媒体記録再生装置Sは、切替制御部1gによって、ハードディスクD1,D2の読み出しを切り替える時間(ドライバ切り替えタイマ)をセットする(ステップS500)。このドライバ切り替えタイマは、例えば、100ms(ミリ秒)とし、ハードウェアの割り込みタイマとする。
【0065】
そして、図10のステップS502〜S508に示すように、通常動作として、一方のストリーム(1)の読み出し元としてHDD1(ハードディスクD1)が選択され、他方のストリーム(2)の読み出し元としてHDD2(ハードディスクD2)が選択されて、図9で説明した動作と同様の動作により、並行してストリームが読み出される。
ここで、ドライバ切り替えタイマによるタイマ割り込みが発生すると、割り込み処理として、ステップS600〜S610の動作が実行される。
【0066】
すなわち、タイマ割り込みが発生すると、切替制御部1gによって、HDD1及びHDD2に対して読み出しの中断指令を出す(ステップS600)。そして、HDD1及びHDD2の読み出しの中断が完了した段階で(ステップS602でYes)、第1読み出しブロック検出部1c及び第2読み出しブロック検出部1dは、中断時のアドレスを、例えば、メモリ4に退避する。そして、切替制御部1gは、ストリーム(1)及びストリーム(2)の残りの読み出し量(指定残量)を計算する(ステップS604)。
【0067】
ここで、指定残量がまだ存在する場合(ステップS606でYes)、第1位置判定部1e及び第2位置判定部1fが、現在選択されている読み出し元のHDDを、他方のHDDに選択しなおす(ステップS608)。そして、第1読み出しブロック検出部1c及び第2読み出しブロック検出部1dが、ステップS604で退避したアドレスを、切り替えて設定(再セット)する(ステップS610)。その後、ディスク媒体記録再生装置Sは、ステップS504以降の動作を実行する。
一方、ステップS606において、指定残量が存在しない場合(ステップS606でNo)、ディスク媒体記録再生装置Sは、ステップS510に遷移し、タイマ(ドライバ切り替えタイマ)をオフにして動作を終了する。
【0068】
これによって、ストリーム(1)及びストリーム(2)の論理ブロックアドレスが共に前半部、又は、共に後半部に位置しているときに、読み出し元のHDDを周期的に切り替えることで、ハードディスクの内周側に偏ることなくビデオデータを読み取ることが可能となる。従って、ハードディスクの外周端と内周端との中間点(ハードディスクD1,D2の半径の1/2の位置)付近の転送速度を確保することが可能となる。このため、ビデオデータの編集処理を円滑に行うことができる。
【0069】
ここで、図11及び図12を参照して、マルチストリーム処理における2つのHDDの切り替えタイミングについて説明する。図11は、マルチストリーム処理において、2つのハードディスクから切り替えてストリームを読み出す際のタイムチャートの例である。図12は、ハードディスクからストリームを読み出す際の転送時間を説明するための説明図である。なお、図11では、横軸に時間、縦軸に各ストリームの転送量を示している。
【0070】
図11に示すように、ストリーム(1)をハードディスクD1の外周側から読み出し、ストリーム(2)をハードディスクD2の内周側から読み出すと、ストリーム(1)の転送量(HDD1転送量)が、ストリーム(2)の転送量(HDD1転送量)よりも多くなる。また、ストリーム(1)をハードディスクD1の内周側から読み出し、ストリーム(2)をハードディスクD2の外周側から読み出すと、ストリーム(1)の転送量(HDD1転送量)よりも、ストリーム(2)の転送量(HDD1転送量)の方が多くなる。
【0071】
そこで、読み出すHDDを切り替えることで、ストリーム(1)及びストリーム(2)の転送性能を平均化することができる。
この場合、2つのHDD1,HDD2を切り替えて読み出すときは、図12に示したように、シーク時間(T1)と回転待ち時間(T2)に伴う待ち時間(L)の損失が生じる。この損失を考慮したストリーム(1),(2)の平均転送性能は、以下の式によって求められる。
【0072】
ストリーム(1),(2)の平均転送性能=(HDD1の前半転送量+HDD2の後半転送量)/(ドライブ切替周期+シーク時間)≒HDD1,HDD2の中間転送量*2/(ドライブ切替周期+シーク時間)
【0073】
従って、例えば、データ転送時間(T0)が100msで待ち時間(ドライブ切替周期+シーク時間(=L))が10msであれば、10%減のハードディスクの中間点付近の転送速度を維持することができる。このように、ハードディスクの中間点付近の転送速度を維持することができるので、実用上何ら問題がない。
【0074】
なお、本発明は、前記した実施形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲において変更可能である。例えば、ハードディスクの代わりにフレキシブルディスクを用いることができ、あるいは光ディスクを用いることもできる。また、ストリームデータをビデオデータとしたが、音声だけのデータ等、他の種類のストリームデータとすることもできる。
【図面の簡単な説明】
【0075】
【図1】本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置の機能構成図である。
【図2】本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置のハードウェア構成を示すブロック図である。
【図3】本発明の一実施形態に係るディスク媒体記録再生装置のメモリに格納されるプログラムデータの構成図である。
【図4】ディスクの初期化処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図5】ディスクへのストリームデータの書き込み処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図6】ディスクからストリームデータを読み出す読み出し処理の概要を説明するための説明図である。
【図7】単一ストリームの読み出し処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図8】マルチストリーム処理について説明するための説明図である。
【図9】マルチストリームの読み出し処理の動作を示すフローチャートの例である。
【図10】マルチストリーム処理における読み出しの切り替え動作を示すフローチャートの例である。
【図11】マルチストリーム処理において、2つのハードディスクから切り替えてストリームを読み出す際のタイムチャートの例である。
【図12】ハードディスクからストリームを読み出す際の転送時間を説明するための説明図である。
【図13】従来のRAID0の手法を説明するための説明図である。
【図14】従来のRAID1の手法を説明するための説明図である。
【図15】従来のRAID1.5の手法を説明するための説明図である。
【符号の説明】
【0076】
S ディスク媒体記録再生装置
HDD1 第1ハードディスクドライブ
HDD2 第2ハードディスクドライブ
D1 ハードディスク
D2 ハードディスク
1 中央演算処理装置(CPU)
1a 書込制御部
1b 論理ブロック割当部
1c 第1読み出しブロック検出部(読出手段)
1d 第2読み出しブロック検出部(読出手段)
1e 第1位置判定部(判定手段)
1f 第2位置判定部(判定手段)
1g 切替制御部(切替手段)
1h 切替部
2 バスライン
3 インターフェース
4 メモリ
4a〜4d 記憶領域
5 コンソール
6 インターフェース
7 外部媒体
【特許請求の範囲】
【請求項1】
第1及び第2ディスク媒体に対して、それぞれ同一のストリームデータを複数記録すると共に、読み出し対象のストリームデータである第1及び第2読み出しデータを、それぞれ前記第1又は第2ディスク媒体の異なるディスク媒体から読み出して再生するディスク媒体記録再生装置であって、
前記第1ディスク媒体の外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記ストリームデータを前記第1ディスク媒体に書き込むと共に、前記第2ディスク媒体の内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記ストリームデータを第2ディスク媒体に書き込む書込手段と、
前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する判定手段と、
この判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す読出手段と、
前記第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、前記読出手段における前記第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える切替手段と、
を備えることを特徴とするディスク媒体記録再生装置。
【請求項2】
外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すために、コンピュータを、
前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する判定手段、
この判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す読出手段、
前記第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、前記読出手段における前記第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える切替手段、
として機能させることを特徴とするマルチストリーム読み出しプログラム。
【請求項3】
外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すマルチストリーム読み出し方法であって、
判定手段により、前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する判定ステップと、
読出手段により、前記判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す読出ステップとを含み、
前記読出ステップにおいて、切替手段により、前記第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、前記読出手段における前記第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替えることを特徴とするマルチストリーム読み出し方法。
【請求項1】
第1及び第2ディスク媒体に対して、それぞれ同一のストリームデータを複数記録すると共に、読み出し対象のストリームデータである第1及び第2読み出しデータを、それぞれ前記第1又は第2ディスク媒体の異なるディスク媒体から読み出して再生するディスク媒体記録再生装置であって、
前記第1ディスク媒体の外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記ストリームデータを前記第1ディスク媒体に書き込むと共に、前記第2ディスク媒体の内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記ストリームデータを第2ディスク媒体に書き込む書込手段と、
前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する判定手段と、
この判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す読出手段と、
前記第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、前記読出手段における前記第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える切替手段と、
を備えることを特徴とするディスク媒体記録再生装置。
【請求項2】
外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すために、コンピュータを、
前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する判定手段、
この判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す読出手段、
前記第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、前記読出手段における前記第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替える切替手段、
として機能させることを特徴とするマルチストリーム読み出しプログラム。
【請求項3】
外周側から内周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで複数のストリームデータが記録された第1ディスク媒体と、内周側から外周側へ向かって割り当てられた論理ブロックアドレスで前記第1ディスク媒体と同一のストリームデータが記録された第2ディスク媒体とから、第1読み出しデータ及び第2読み出しデータの2つのストリームデータを読み出すマルチストリーム読み出し方法であって、
判定手段により、前記第1及び第2読み出しデータのそれぞれの論理ブロックアドレスに基づいて、それぞれの読み出しデータの前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置を判定する判定ステップと、
読出手段により、前記判定手段で判定された第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体における読み出し位置が、それぞれのディスク媒体の外周側に位置するディスク媒体から、前記第1及び第2読み出しデータを読み出す読出ステップとを含み、
前記読出ステップにおいて、切替手段により、前記第1及び第2読み出しデータが、共に前記第1又は第2ディスク媒体の一方のディスク媒体の外周側に位置する場合に、前記読出手段における前記第1及び第2読み出しデータの読み出し元を、前記第1ディスク媒体及び第2ディスク媒体とで切り替えることを特徴とするマルチストリーム読み出し方法。
【図1】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
【図13】
【図14】
【図15】
【図2】
【図3】
【図4】
【図5】
【図6】
【図7】
【図8】
【図9】
【図10】
【図11】
【図12】
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【図14】
【図15】
【公開番号】特開2008−181595(P2008−181595A)
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2007−14026(P2007−14026)
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(503002167)株式会社高速屋 (4)
【出願人】(599063217)株式会社エヌエイチケイコンピューターサービス (5)
【Fターム(参考)】
【公開日】平成20年8月7日(2008.8.7)
【国際特許分類】
【出願日】平成19年1月24日(2007.1.24)
【出願人】(503002167)株式会社高速屋 (4)
【出願人】(599063217)株式会社エヌエイチケイコンピューターサービス (5)
【Fターム(参考)】
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