説明

ディスク弁

【課題】固定ディスクおよび回転ディスクの組み合わせを有するディスク弁において、固定ディスクに対する回転ディスクの停止位置の精度を向上させ、もって流量調整および流路切り替えの精度向上を実現する。
【解決手段】同軸上に重ねられた固定ディスクに対し回転ディスクが回転することにより両ディスクに予め設けた連通孔の重なり具合が変わって流体の流量調整または流路の切り替えがなされるディスク弁において、両ディスクのうち一方のディスクは、他方のディスク側へ向けて突出する突起状の係合部を円周上一箇所に有する。前記突起状の係合部に対し他方のディスクに設けた係合部が円周上係合して回転ディスクの回転が停止することにより両ディスクの相対回転の原点位置を規定する構造が両ディスク間に直接設けられている。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、流体の流量調整または流路の切り替えに用いられるディスク弁に関するものである。本発明のディスク弁は例えば、温水洗浄便座における洗浄水流量調整、流路切り替えユニットなどで用いられ、あるいはその他の分野で用いられる。
【背景技術】
【0002】
従来から図4に示すディスク弁51が知られており、以下のように構成されている(下記特許文献1の図8参照)。
【0003】
すなわち先ず、弁室53の側面に流体の入力ポート54を備えるとともに弁室53の底面に所要数の出力ポート55を備えるハウジング52が設けられ、弁室53の底部に固定ディスク56が固定されている。固定ディスク56の上に回転ディスク57が同軸上に重ねられ、この回転ディスク57がロータシャフト58を介して回転駆動源であるステッピングモータ59の駆動軸59aに接続されている。ロータシャフト58はインナカラー60によって回転可能に保持されている。インナカラー60と回転ディスク57の間にロータスプリング61が介装され、両ディスク56,57間のシール性を高めるべく回転ディスク57を固定ディスク56に押し付けている。ハウジング52とインナカラー60の間、インナカラー60とロータシャフト58の間およびハウジング52と固定ディスク56の間にはそれぞれシール部品62が組み付けられている。
【0004】
回転ディスク57に入力ポート54に連通する連通孔57aが設けられ、固定ディスク56に出力ポート55に連通する連通孔56aが設けられている。両連通孔56a,57aは互いに対応してそれぞれ所要数設けられ、同軸上に重ねられた固定ディスク56に対し回転ディスク57が回転して所定位置で停止することにより両連通孔56a,57aの重なり具合が変わって流体の流量調整や流路の切り替えがなされることになる。
【0005】
そのため、固定ディスク56に対する回転ディスク57の停止位置の精度が良いこと、および両ディスク56,57の軸合わせ(回転中心の一致)の精度が良いことが、流量調整および流路切り替えの精度向上にとって極めて重要な事項とされるが、上記従来技術には以下の点で不都合がある。
【0006】
すなわち、固定ディスク56に対する回転ディスク57の停止位置の精度については、両ディスク56,57の相対回転の原点位置を正確に決定することがきわめて重要な要素をなすところ、上記従来技術では、ハウジング52とステッピングモータ59の間にプレート63を組み込んでこのプレート63に図上下向きの突起63aを設け、この突起63aに対しロータシャフト58に設けた係合部58aが円周上係合してロータシャフト58の回転が停止することにより両ディスク56,57の相対回転の原点位置を規定する構造となっている。したがってこの原点位置規定構造と両ディスク56,57の間に多くの部品が介在し、具体的には突起63aと固定ディスク56の間にプレート63およびハウジング52が介在するとともに係合部58aと回転ディスク57の間にロータシャフト58が介在するため、これら介在する部品の寸法精度や組み付け精度などの如何によって、両ディスク56,57の相対回転の原点位置に誤差が生じる虞がある。
【0007】
尚、本願発明者らは先に図5に示すように、ハウジング52の内周面に当接部52aを設け、この当接部52aに対し回転ディスク57に設けた突起57bが円周上係合して回転ディスク57の回転が停止することにより両ディスク56,57の相対回転の原点位置を規定する構造を提案している(下記特許文献1の図1参照)。この先行技術においては、原点位置規定構造と両ディスク56,57の間に介在する部品数が減少するため(介在するのはハウジング52のみ)、この分固定ディスク56に対する回転ディスク57の停止位置の精度を向上させることができるが、介在する部品数がまったくの零ではないため、未だ改良の余地がある。
【0008】
また、上記図4の従来技術においては、両ディスク56,57の軸合わせ(回転中心の一致)の精度についても、両ディスク56,57の間にロータシャフト58が介在するため、両ディスク56,57の軸合わせに誤差が生じやすいものとなっている。
【0009】
更にまた、上記図4の従来技術においては、回転ディスク57が円筒状の中心軸部57cとその外周に設けられる平板環状のディスク部57dとを一体に有するところ、中心軸部57cの外周側にロータスプリング61が配置され、ディスク部57dの一部がロータスプリング61の着座部57eとされている。したがってこの構造によると、着座部57eには連通孔57aを開口できず連通孔57aを着座部57eの外周側に配置しなければならないため、部品の小型化(ディスクの小径化)に対する障害となっている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0010】
【特許文献1】特開2008−261441号公報(図8,図1)
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は以上の点に鑑みて、固定ディスクおよび回転ディスクの組み合わせを有するディスク弁において、固定ディスクに対する回転ディスクの停止位置の精度を向上させ、あるいは加えて両ディスクの軸合わせ(回転中心の一致)の精度を向上させ、もって流量調整および流路切り替えの精度向上を実現することができるディスク弁を提供することを目的とする。
【0012】
またこれに加えて、回転ディスクのディスク部において連通孔を任意の箇所に開口させることができ、もって部品の小型化(ディスクの小径化)を実現することができるディスク弁を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0013】
上記目的を達成するため、本発明の請求項1によるディスク弁は、同軸上に重ねられた固定ディスクに対し回転ディスクが回転することにより前記両ディスクに予め設けた連通孔の重なり具合が変わって流体の流量調整または流路の切り替えがなされるディスク弁において、前記両ディスクのうち一方のディスクは、他方のディスク側へ向けて突出する突起状の係合部を円周上一箇所に有し、前記一方のディスクに設けた突起状の係合部に対し前記他方のディスクに設けた係合部が円周上係合して前記回転ディスクの回転が停止することにより前記両ディスクの相対回転の原点位置を規定する構造が前記両ディスク間に直接設けられていることを特徴とする。
【0014】
また、本発明の請求項2によるディスク弁は、上記した請求項1記載のディスク弁において、前記両ディスクのうち一方のディスクは、他方のディスク側へ向けて突出するボス形状を中心部に有し、前記一方のディスクに設けたボス形状が前記他方のディスクに設けた嵌め合わせ凹部に回転可能に挿入されることにより前記両ディスクの軸合わせをなす構造が前記両ディスク間に直接設けられていることを特徴とする。
【0015】
また、本発明の請求項3によるディスク弁は、上記した請求項1または2記載のディスク弁において、当該ディスク弁は、前記両ディスクのほかに、前記回転ディスクを回転駆動源に接続してトルクを伝達するロータシャフトと、前記回転ディスクを前記固定ディスクに押し付けて前記両ディスク間のシール性を高めるロータスプリングとを有し、前記回転ディスクは、円筒状の中心軸部と、その外周に設けられたディスク部とを有し、前記ロータシャフトは、前記回転駆動源の駆動軸に回り止めされるとともに軸方向変位可能な状態で外挿される筒状部と、前記回転ディスクの中心軸部に回り止めされた状態で差し込まれる軸部と、前記筒状部および軸部間に設けられた第2筒状部とを有し、前記ロータシャフトの筒状部が前記駆動軸に外挿されたときに前記第2筒状部の内周側であって前記駆動軸および軸部間に空間が形成され、前記空間内に前記ロータスプリングが組み付けられていることを特徴とする。
【0016】
上記構成を有する本発明のディスク弁においては、固定ディスクおよび回転ディスクのうち一方のディスクに、他方のディスク側へ向けて突出する突起状の係合部が円周上一箇所に設けられ、この突起状の係合部に対し他方のディスクに設けた係合部が円周上係合して回転ディスクの回転が停止することにより両ディスクの相対回転の原点位置を規定する構造が両ディスク間に直接設けられている。したがって両ディスクの相対回転の原点位置が両ディスクの相互関係のみによって規定され、他の部品がまったく介在しないため、固定ディスクに対する回転ディスクの停止位置の精度を向上させることが可能とされている。
【0017】
尚、一方のディスクに、他方のディスク側へ向けて突出する突起状の係合部を円周上一箇所に設けることにすると、当該ディスク弁の製造過程において、一方のディスクの他方のディスクに対する摺動面を研磨する工程を実施しにくくなることが懸念される(突起状の係合部が研磨治具と干渉してしまうため)。したがって本発明において一方のディスクの材質としては、研磨工程を必要としない例えば、非晶性樹脂(PPO(ポリフェニレンオキシド)樹脂、PPE(ポリフェニレンエーテル)樹脂など)等とするのが好ましい。
【0018】
突起状の係合部を設ける一方のディスクは、固定ディスクおよび回転ディスクのうち何れであっても良いが、例えば固定ディスクのほうに突起状の係合部を設けるものとする。
【0019】
また、本発明のディスク弁においては、固定ディスクおよび回転ディスクのうち一方のディスクに、他方のディスク側へ向けて突出するボス形状が中心部に設けられ、このボス形状が他方のディスクに設けた嵌め合わせ凹部に回転可能に挿入されることにより両ディスクの軸合わせをなす構造が両ディスク間に直接設けられている。したがって両ディスクの軸合わせが両ディスクの相互関係のみによって規定され、他の部品がまったく介在しないため、両ディスクの軸合わせの精度を向上させることが可能とされている。
【0020】
ボス形状を設ける一方のディスクは、固定ディスクおよび回転ディスクのうち何れであっても良いが、例えば回転ディスクのほうにボス形状を設けるものとする。
【0021】
また、本発明のディスク弁においては、回転ディスクが円筒状の中心軸部とディスク部とを有し、ロータシャフトが筒状部と軸部と第2筒状部とを有し、ロータシャフトの筒状部が駆動軸に外挿されたときに第2筒状部の内周側であって駆動軸および軸部間に空間が形成され、この空間内にロータスプリングが組み付けられる構成とされている。ロータスプリングはロータスプリングを介して回転ディスクを固定ディスクに押し付ける。この構造によれば、ロータスプリングが前記空間内に組み付けられるものであって回転ディスクの中心軸部の外周に組み付けられるものではないため、回転ディスクのディスク部にスプリング着座部が設定されないことになる。したがって回転ディスクのディスク部をその内周縁部に至るまですべて連通孔形成領域として利用することが可能とされている。
【発明の効果】
【0022】
本発明は、以下の効果を奏する。
【0023】
すなわち、本発明のディスク弁においては上記したように、固定ディスクおよび回転ディスクのうち一方のディスクに、他方のディスク側へ向けて突出する突起状の係合部が円周上一箇所に設けられ、この突起状の係合部に対し他方のディスクに設けた係合部が円周上係合して回転ディスクの回転が停止することにより両ディスクの相対回転の原点位置を規定する構造が両ディスク間に直接設けられているために、両ディスクの相対回転の原点位置が両ディスクの相互関係のみによって規定され、他の部品がまったく介在しないことになる。したがって介在部品の寸法誤差や組み付け誤差などが一切介入しないため、固定ディスクに対する回転ディスクの停止位置の精度を向上させることができる。
【0024】
また、固定ディスクおよび回転ディスクのうち一方のディスクに、他方のディスク側へ向けて突出するボス形状が中心部に設けられ、このボス形状が他方のディスクに設けた嵌め合わせ凹部に回転可能に挿入されることにより両ディスクの軸合わせをなす構造が両ディスク間に直接設けられているために、両ディスクの軸合わせが両ディスクの相互関係のみによって規定され、他の部品がまったく介在しないことになる。したがって介在部品の寸法誤差や組み付け誤差などが一切介入しないため、両ディスクの軸合わせ(回転中心の一致)の精度を向上させることができる。
【0025】
したがって以上により、固定ディスクに対する回転ディスクの停止位置の精度を向上させ、また両ディスクの軸合わせの精度を向上させることができ、もって流量調整および流路切り替えの精度向上を実現することができる。
【0026】
また、回転ディスクが円筒状の中心軸部と平板環状のディスク部とを有し、ロータシャフトが筒状部と軸部と第2筒状部とを有し、ロータシャフトの筒状部が駆動軸に外挿されたときに第2筒状部の内周側であって駆動軸および軸部間に空間が形成され、この空間内にロータスプリングが組み付けられているために、回転ディスクのディスク部には従来技術のようにスプリング着座部が設定されないことになる。したがって回転ディスクのディスク部をその内周縁部に至るまで連通孔形成領域として利用することができるため、部品の小型化(ディスクの小径化)に貢献することができる。また、部品を小型化しないときには連通孔の配置について設計の自由度を高めることができ、またロータスプリングが上記空間内に配置されて流体流路から外れた位置に配置されるため、ロータスプリングが流路抵抗となるのを防止することもできる。
【図面の簡単な説明】
【0027】
【図1】本発明の実施例に係るディスク弁の要部断面図
【図2】同ディスク弁の分解斜視図
【図3】同ディスク弁における固定ディスクおよび回転ディスクの斜視図
【図4】従来例に係るディスク弁の断面図および斜視図
【図5】他の従来例に係るディスク弁の断面図
【発明を実施するための形態】
【0028】
本発明には、以下の実施形態が含まれる。
【0029】
(1)現在、ロータの停止方法については、プレートとロータシャフト間に原点を設け、この原点からステッピングモータにて任意のパルスで移動させた位置をロータの停止位置としている。そのため、原点を確定するプレート、ロータシャフトおよびボディについて寸法精度が必要な部品となっている。またロータとステータとのセンターの軸の合わせについてもロータおよびステータ共にシール面の研磨工程が必要なため、別パーツ(ロータシャフト)を介しての軸合わせとなっている。そのため、原点位置および軸合わせにおいてバラツキが発生し、停止位置に誤差が発生し、流量精度に欠ける原因となっている。
【0030】
(2)従来のディスク弁においては、流量特性を確保するため、ディスクシール面を研磨する工程を設けていたため、ディスクの形状については突起等を設置することができない制約がある。そのため、本課題を解決すべくディスクシール面の研磨工程を廃止しても流量特性を確保できるディスク材質に変更することにより、研磨工程無しでも流量特性を確保することができる。研磨工程の廃止により従来の研磨工程が有るディスクでは設置することができなかった突起等をステータに設けることが可能となる。それによりトルク伝達の末端部であるロータに原点位置を制御する突起を設け、相手側のステータに直接相対する原点突起を設けることにより、停止位置の精度が向上する。併せて、ロータおよびステータのいずれかに軸合わせとなる突起を設置することによって、仲介部品がなくなり、軸合わせの精度が上がり、流量精度も向上する。
【0031】
(3)原点位置の精度としても従来はプレートに原点出し突起があったため、ボディに位置決めされたステータからネジ締めされたプレートを介することで、組立バラツキによる精度不足が発生している。これに対し本発明では、相手方の原点出し突起がステータとなったことで組立バラツキ発の一因であるプレートを必要としない構成となる。ロータおよびステータの2部品で原点位置が決定するため、中継する部品のバラツキに左右されることが無くなるため、停止位置精度が向上する。軸ズレの精度としても従来はロータシャフトを中継してステータとロータの軸合わせを実施していたが、今回の構成ではステータとロータで直接軸合わせを実施するため、軸ズレの精度が向上する。
【0032】
(4)原点精度および軸合わせ精度をロータおよびステータに集中することにより、その他の中継部品の精度を一定値まで落とすことが可能となり、よって部品コストの低減を実現することもできる。
【0033】
(5)ロータスプリングの機能としては低圧状態でのディスクの摺動面方向の荷重をサポートする役割でロータとロータシャフト間に設置されている。そのためロータ上にスプリングが設置されるため、ロータ上の流路の位置としてはスプリング座面位置から逃げた位置に設定する必要が出てくるため、ディスクサイズに影響を与え、ディスクの小型化の障害となっている。
【0034】
(6)そこで、従来のロータスプリングの位置(ロータとロータシャフト間)からロータシャフトとモータ軸間に位置を変更することで、ロータの流路位置および通常位置に影響を与えない構成とすることが可能となる。
【0035】
(7)上記構成によれば、ロータに設置する流路の位置がロータ平面上での最大(最内周)まで設定することが可能となり、ロータおよびステータのディスク部の面積を有効に使用可能となる。そのため、ディスクサイズの小型化に寄与することが可能となる。
【0036】
(8)また、流路内からロータスプリングが取り除かれることにより、流量の不安定要素としての要因を除去することが可能となる(スプリングの存在が流路抵抗となり、流量の不安定要素となっている。スプリングには座巻き箇所があり、対称形状ではないため、組立位置によって流路に与える影響が変化することがある)。
【実施例】
【0037】
つぎに本発明の実施例を図面にしたがって説明する。
【0038】
図1は、本発明の実施例に係るディスク弁1の要部断面図、図2は同ディスク弁1の分解斜視図、図3は同ディスク弁1における固定ディスク6および回転ディスク7を組み合わせた状態の斜視図をそれぞれ示している。当該実施例に係るディスク弁1は、温水洗浄便座における洗浄水流量調整・流路切り替えユニットとして用いられるものであって、以下のように構成されている。
【0039】
すなわち先ず、弁室3の側面に流体の入力ポート4(図2参照)を備えるとともに弁室3の底面に所要数(複数)の出力ポート5を備えるハウジング(ボディ)2が設けられ、弁室3の底部に固定ディスク(ステータ)6が固定されている。固定ディスク6の上に回転ディスク(ロータ)7が同軸上に重ねられ、この回転ディスク7がロータシャフト8を介して回転駆動源であるステッピングモータ9の駆動軸9aに接続されている。ロータシャフト8はインナカラー10によって回転可能に保持されている。ハウジング2とインナカラー10の間、インナカラー10とロータシャフト8の間およびハウジング2と固定ディスク6の間にはそれぞれシール部品(Oリング、Yパッキン、ステータシール)11,12,13が組み付けられている。
【0040】
回転ディスク7に、入力ポート4に連通する連通孔7aが設けられ、固定ディスク6に、出力ポート5に連通する連通孔6aが設けられている。両連通孔6a,7aは互いに対応してそれぞれ所要数(複数)設けられ(図2参照)、同軸上に重ねられた固定ディスク6に対し回転ディスク7が回転して所定位置で停止することにより両連通孔6a,7aの重なり具合が変わって流体の流量調整や流路の切り替えがなされることになる。
【0041】
固定ディスク6に、回転ディスク7側へ向けて突出する突起状の係合部6bが円周上一箇所に一体に設けられ、この突起状の係合部6bに対し回転ディスク7に一体に設けた係合部7b(図2または図3参照)が円周上係合して回転ディスク7の回転が停止することにより両ディスク6,7の相対回転の原点位置を規定する構造が両ディスク6,7間に直接設けられている。突起状の係合部6bは、固定ディスク6の上面外周部であって回転ディスク7の外周側に上方へ向けての突起として設けられている。一方、係合部7bは、回転ディスク7の外周面に径方向外方へ向けての突起として設けられ、互いに円周方向に係合することが可能とされている。
【0042】
回転ディスク7は、円筒状の中心軸部7cと、その外周に設けられた平板環状のディスク部7dとを一体に有し、中心軸部7cの下端部に固定ディスク6へ向けて突出する円筒状のボス形状(ボス部)7eが一体に設けられている。このボス形状7eは、固定ディスク6の中心部に設けた嵌め合わせ凹部6cに回転可能に挿入され、これにより両ディスク6,7の軸合わせをなす構造が両ディスク6,7間に直接設けられている。ディスク部7dには上記連通孔7aが設けられている。
【0043】
ロータシャフト8は、ステッピングモータ9の駆動軸9aに対し回り止めされるとともに軸方向変位可能な状態で外挿される筒状部8aと、回転ディスク7の中心軸部7cに回り止めされた状態で差し込まれる軸部8bと、筒状部8aおよび軸部8b間に設けられた第2筒状部8cとを一体に有し、筒状部8aが駆動軸9aに外挿されたときに第2筒状部8cの内周側であって駆動軸9aおよび軸部8b間に空間14が形成され、この空間14内にロータシャフト8を介して回転ディスク7を固定ディスク6へ押し付けるロータスプリング15が組み付けられている。したがって当該ディスク弁1では、回転ディスク7の中心軸部7cの外周側にスプリングは設けられていない。
【0044】
上記構成のディスク弁1においては、固定ディスク6に、回転ディスク7側へ向けて突出する突起状の係合部6bが円周上一箇所に一体に設けられ、この突起状の係合部6bに対し回転ディスク7に設けた係合部7bが円周上係合して回転ディスク7の回転が停止することにより両ディスク6,7の相対回転の原点位置を規定する構造が両ディスク6,7間に直接設けられている。したがって両ディスク6,7の相対回転の原点位置が両ディスク6,7の相互関係のみによって規定され、他の部品がまったく介在しないため、固定ディスク6に対する回転ディスク7の停止位置の精度を向上させることができる。
【0045】
また、回転ディスク7に、固定ディスク6側へ向けて突出するボス形状7eが中心部に一体に設けられ、このボス形状7eが固定ディスク6に設けた嵌め合わせ凹部6cに回転可能に挿入されることにより両ディスク6,7の軸合わせをなす構造が両ディスク6,7間に直接設けられている。したがって両ディスク6,7の軸合わせが両ディスク6,7の相互関係のみによって規定され、他の部品がまったく介在しないため、両ディスク6,7の軸合わせの精度を向上させることができる。
【0046】
したがって以上により、固定ディスク6に対する回転ディスク7の停止位置の精度を向上させ、また両ディスク6,7の軸合わせの精度を向上させることができ、これにより流量調整および流路切り替えの精度向上を実現することができる。
【0047】
また、回転ディスク7が円筒状の中心軸部7cと平板環状のディスク部7dとを一体に有し、ロータシャフト8が筒状部8aと軸部8bと第2筒状部8cとを一体に有し、筒状部8aが駆動軸9aに外挿されたときに第2筒状部8cの内周側であって駆動軸9aおよび軸部8b間に空間14が形成され、この空間14内にロータスプリング15が組み付けられているために、回転ディスク7のディスク部7dには上記従来技術のようにスプリングの着座部が設定されないことになる。したがって回転ディスク7のディスク部7dをその内周縁部に至るまで連通孔形成領域として利用することができるため、部品の小型化(ディスクの小径化)に貢献することができる。また、部品を小型化しないときでも連通孔7aの配置について設計の自由度を高めることができる。また、ロータスプリング15が空間14内に配置されて流体流路から外れた位置に配置されるため、ロータスプリング15が流路抵抗となるのを防止することもできる。
【符号の説明】
【0048】
1 ディスク弁
2 ハウジング
3 弁室
4 入力ポート
5 出力ポート
6 固定ディスク
6a,7a 連通孔
6b 突起状の係合部
6c 嵌め合わせ凹部
7 回転ディスク
7b 係合部
7c 中心軸部
7d ディスク部
7e ボス形状
8 ロータシャフト
8a 筒状部
8b 軸部
8c 第2筒状部
9 ステッピングモータ(回転駆動源)
9a 駆動軸
10 インナカラー
11,12,13 シール部品
14 空間
15 ロータスプリング

【特許請求の範囲】
【請求項1】
同軸上に重ねられた固定ディスクに対し回転ディスクが回転することにより前記両ディスクに予め設けた連通孔の重なり具合が変わって流体の流量調整または流路の切り替えがなされるディスク弁において、
前記両ディスクのうち一方のディスクは、他方のディスク側へ向けて突出する突起状の係合部を円周上一箇所に有し、
前記一方のディスクに設けた突起状の係合部に対し前記他方のディスクに設けた係合部が円周上係合して前記回転ディスクの回転が停止することにより前記両ディスクの相対回転の原点位置を規定する構造が前記両ディスク間に直接設けられていることを特徴とするディスク弁。
【請求項2】
請求項1記載のディスク弁において、
前記両ディスクのうち一方のディスクは、他方のディスク側へ向けて突出するボス形状を中心部に有し、
前記一方のディスクに設けたボス形状が前記他方のディスクに設けた嵌め合わせ凹部に回転可能に挿入されることにより前記両ディスクの軸合わせをなす構造が前記両ディスク間に直接設けられていることを特徴とするディスク弁。
【請求項3】
請求項1または2記載のディスク弁において、
当該ディスク弁は、前記両ディスクのほかに、前記回転ディスクを回転駆動源に接続してトルクを伝達するロータシャフトと、前記回転ディスクを前記固定ディスクに押し付けて前記両ディスク間のシール性を高めるロータスプリングとを有し、
前記回転ディスクは、円筒状の中心軸部と、その外周に設けられたディスク部とを有し、
前記ロータシャフトは、前記回転駆動源の駆動軸に回り止めされるとともに軸方向変位可能な状態で外挿される筒状部と、前記回転ディスクの中心軸部に回り止めされた状態で差し込まれる軸部と、前記筒状部および軸部間に設けられた第2筒状部とを有し、
前記ロータシャフトの筒状部が前記駆動軸に外挿されたときに前記第2筒状部の内周側であって前記駆動軸および軸部間に空間が形成され、前記空間内に前記ロータスプリングが組み付けられていることを特徴とするディスク弁。


【図1】
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【図2】
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【図3】
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【図4】
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【図5】
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【公開番号】特開2010−249148(P2010−249148A)
【公開日】平成22年11月4日(2010.11.4)
【国際特許分類】
【出願番号】特願2009−95857(P2009−95857)
【出願日】平成21年4月10日(2009.4.10)
【出願人】(000004385)NOK株式会社 (1,527)
【Fターム(参考)】